札幌太田病院 「疾患・心理療法に関する勉強会」 薬物依存症とは 平成27年1月29日 内観療法課 根本忠典 薬物依存症とは ○麻薬や覚醒剤などの薬物は「依存性が高い薬物」であ ることは、よく知られている ○病気の治療に必要な薬でも、誤った使い方を続けてい る内に、「やめたくてもやめられない」状態を作り出す 薬がある ○この「やめたくてもやめられない」状態が薬物依存症 ○「薬が欲しい」の欲求が抑えられず、自分の意思や理 性では抑えることができない 薬物依存症のきっかけ ○薬物を始める多くのきっかけは、「一度くらいなら」な どの好奇心から ○この何気ない1回が、警戒心の壁を越える重大な1回 となる ○この1回が、仲間が集まった時、機会があった時に薬 物を使う「機会的使用」 知らず知らずに依存症へ ○習慣的に使用する「常用」に移行 薬物依存症の治療 ○薬物依存症を慢性疾患と捉え、薬を使わない 生活を続ける自己コントロールが目標になる ○そのため、薬物使用に関係していた状況(人 間関係、物、場所など)を整理、整頓すること が重要 ○認知行動療法・自助グループに参加しながら、 新しい仲間と健全な生活を構築していくことが 大切 薬物依存症の治療の過程 ①離脱期(0~15日):薬物を長く使っていたダメージによ り、体が疲れている状態 ②ハネムーン期(16~60日):体が少しずつ元気になり、 良い気分になる。「もう大丈夫だ」、「薬なしでもやってい ける」と自信を持つ時期 ③壁期(61~180日):「退屈さ」を感じる時期。運動・趣 味・ボランティア活動が有効 ④適応期(180~360日):断薬し、半年以上が経過すると、 薬物への欲求が軽減する。健全なせいかつに少しずつ 慣れてくる ⑤解決期(360日~):規則正しい生活、学校、仕事、自助 グループなど、健全な社会生活が実現する時期 当院の薬物依存症の主な入院治療 ①生活療法 ②疾患教育 ③内観療法 ④専門認知行動療法 ⑤家族療法 ⑥集団療法 ⑦運動・作業療法 ⑧自助グループ 薬物CBT調査結果① 60代(2人)11% 年齢比率 N=19 男女比率 N=19 50代(1人) 5% 男性7人 37% 20代(5人) 40代(1人) 女性12人 63% 26% 5% 1 2 30代(10人) 53% 1 2 3 4 5 H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果② 大卒(2人) 最終学歴 婚姻率 N=19 N=1 9 11% 専門学卒(3人) 16% 既婚5人 26% 中卒(6人) 32% 独身14人 1 高卒(8人) 2 3 41% 74% 4 1 2 H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果③ 同居率 N=19 主病名 N=19 シンナー( 1人) 5% AL(2 人) 11% 処方薬依存 ( 5人) 1 単身9人 47% 家族と同居10人 ^ 53% 覚醒剤・大麻 (3人) 26% 21% 3 4 5 6 16% 覚醒剤( 4人) 2 7 処方薬+AL ( 4人) 21% H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果④ 40~49才 (1人) 5% 乱用開始年齢 N =1 9 50才~(1人) 5% 依存症専門治療歴 N=19 無(5人) 21% 30~39才(2人) 11% 1 14~18才 (10人) 19~29才 (5人) 26% 53% 1 2 2 3 4 有(15人) 5 79% H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑤ 治療形態 N=15 20% 会社員( 1人) 有職率 公務員(1 人) 5% N=19 5% 通院(3人) 自営(3人) 入院(12人) 1 2 16% 1 無職(1 4人) 2 3 4 74% 80% H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑥ 病識(RE)スコ ア平均 迷い(Am )スコ ア平均 50 20 45 18 40 16 35 31 .82 1 5.8 8 1 5 .53 14 32 30 12 25 10 1 20 2 2 8 15 6 10 4 5 2 0 1 0 開始1時 2 修了時 1 時 開始 修2 了時 H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑦ 総 得点 平 均 実行( Ts)スコア平均 50 100 45 90 40 35 34.41 35.93 82.11 83.46 80 70 30 60 25 1 20 2 50 1 2 40 15 30 10 20 5 10 0 1 開始時 2 修了時 0 開始時 1 修了時 2 H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑧ WAIS検査結 果①(平均値)N=7 WAIS検査結果②全検査 N=7 1 20 IQ50以下(1人) 1 00 85 80 77 .42 IQ101以上(2人) 74.62 14% 29% 60 1 2 系列1 IQ51~70(3人) 40 IQ71~100(1人) 3 4 43% 14% 20 0 1 言 語性 (VI Q) 2 動 作性 (PI Q) 3 全検査(FIQ) H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑨ 知 能減退率 N=7 D(1人) YGタイプ結果 N= 16 AE'(1人) 年齢相応(1人) 6% 6% 14% A'(3人) 5~10歳年上(1人) 14% 17~21歳年上 (2人) 19% 減退見られず (3人) 43% 50% BorB'(8人) 1 2 3 4 1 2 3 4 5 EorE'(3人) 19% 29% H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑩ CBT修了率 N=19 中断(2人) 11% 少年院(1人) 内観体験場所 N=19 5% 1 2 1 2 修了(17 人) 89% 当院(18人) 95% H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑪ 予後調査② N=19 予後調査① N= 19 連絡取れず(5 人) 再発・不明(6人) 2 6% 32% 1 1 2 2 面談o r電話(1 4人) 断薬 ・断酒中(13人) 7 4% 68% H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物CBT調査結果⑫ 無職(1人) 予後調査③ N=13 就労継続支援 B型通所中(1人) 8% 8% 就労(6人) 専業主婦(2人) 46% 15% 1 2 3 4 5 デイケア通所中(3人) 23% H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 結果とまとめ1 ○全体の半数が境界線知能。 ○知能減退率の調査結果、約半数は薬物による 知能の減退が見られた。 ○YG検査の結果、半数がB or B’タイプ(情緒が不 安定で行動的)だった。 ○半数以上が、思春期の14~18歳に乱用開始。 ○逮捕・少年院・服役などは42%、それ以外もほと んどが警察沙汰。 ○その後の進路、生活に多大な影響があるため、 思春期症の早期対応が重要である。 H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 結果とまとめ2 ○調査結果(断薬・断酒率)から、病識向上、認知 修正、断酒・断薬の強化など、CBTの有効性を 認めた。 ○また、今回の薬物依存専門CBTは、 ①内観療法・家族療法による認知の修正、改善 ②機能別デイケア・就労支援施設・共同住居・ 各種自助会(断薬会)などの退院後の支援な ど包括的システム 以上の相乗効果が有効性を高めたと考える H24.8.31~9.2.第31回日本思春期学会(長野) 薬物依存症の自助グループ ①ニドムの会(当院の薬物依存症退院者の集まり) ②NA(薬物依存症者本人の集まり) ③ナラノン(薬物依存症者の家族と友人の集まり) ④ダルク(ドラック・リハビリテーション・センター) 引用・参考文献 ①厚生労働省HP 「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘ ルス」 ②松本俊彦、国立精神・神経センター精神保健研究所、SMARPP -Jr.改訂第2版、2009. ③太田耕平、「十段階心理療法」、第11版第3刷発行、2014.
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