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2007年度部誌 - 灘校数学研究部

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目次
「RSA 暗号について」
中学3年3組 村上賢
・
・
・1p
中学2年2組 清水元喜
・
・
・8p
中学3年2組 小野海
・
・
・20p
中学3年3組 西川秀明
・
・
・26p
「エジプト分数」
「楕円曲線と n = 4」
「角度について」
「ライフゲーム」
高校2年1組 浅野知紘 ・
・
・46p
「楕円曲線暗号アルゴリズム」
高校2年3組 平野正浩
・
・
・58p
高校2年4組 関典史
・
・
・66p
高校3年1組 大道修
・
・
・88p
高校3年2組 二枝翔司
・
・
・96p
高校3年3組 河口祐輝
・
・
・108p
高校3年3組 吉田雄紀
・
・
・128p
「平方和についての考察」
「ブラックジャックにおける親のバーストの可能性」
「整域について」
「公理的集合論による自然数∼実数の構成」
「合同分割」
[表紙] ボロノイ図 (Voronoi diagram)
平面上にいくつかの点があらかじめ与えられている。平面上の全ての点に関
して、それらの与えられた点のうちどの点が最も近いか、を考える。それに
したがって平面全体を分割した図を、ボロノイ図という。ボロノイ図は、情
報科学、生物学、考古学など、さまざまな分野に広い応用を持つ。
RSA 暗号について
暗号について
M3-3 村上 賢
1.公開鍵暗号と共有鍵暗号
さていきなり RSA 暗号だ何だと言われてもわからない方も多いかと思いますの
で、ここでまず暗号について簡単に話しておきます。
【1】共有鍵暗号
共有鍵暗号とは送信する文字列を送信者がある秘密鍵 A を使って暗号化し、
受信者は送信者からの暗号文に秘密鍵 A を用いて解読します。
例えば「すうけん」という文章を送りたいとします。その時送信者は
「あいうえお順に 3 文字後にずらす」という秘密鍵を用意して暗号化し、送信
します。
「すうけん」⇒「たかしう」
そして「たかしう」という文章を受け取った受信者は秘密鍵を知っているので
そのステップを逆に行い解読します
「たかしう」⇒「すうけん」
しかし、共有鍵暗号には致命的な欠陥があります。それは送信者が受信者と共
有すべき秘密鍵をどのようにして受信者に知らせるかという問題です。
これを解決するために生み出された暗号方式が公開鍵暗号です。
【2】公開鍵暗号
さて上で述べたように共有鍵暗号は秘密鍵をいかにして秘密裏に相手に渡すか
という問題があります。そこで考え出されたのが公開鍵暗号です。
公開鍵暗号とは、まず受信者が公開鍵と秘密鍵を用意し、公開鍵のみを公開し
ます。送信者は送りたい文面を公開鍵を用いて暗号化し受信者に送ります。
受信者はその暗号文を自分の持っている秘密鍵によって解読します。
この暗号方式のすごいところは公開鍵で暗号化した文章を公開鍵を用いて解読
する事が出来ない、という点です。つまり、これによって鍵をいちいち秘密裏
に配送せずとも、おおっぴらに電話で公開鍵だけをしらせれば暗号通信を行う
事が出来ます。また共有鍵暗号では n 人の人間がお互いに通信しようと思えば
nC2 通りの鍵が必要ですが、この方式なら 2n 個の鍵で十分だという事になりま
す。この特徴はインターネットなど不特定多数が参加する際にとても役に立ち
ます。
さて、簡単な理論はこのくらいにしておきます。説明が下手なのでよくわから
ないという方はインターネットなどで調べてはいかがでしょうか。(たぶんそ
の方がわかりやすく書いてあります。)
1
、下準備
さて本題に入る前に少し下準備といいますか、説明をしておきましょう。ここ
で説明しておいた方が RSA 暗号の説明がわかりやすいからです。
【1】時計代数
ある正の整数 N を定め、0 以上 N 未満の整数のみを考え、N 以上になれば N を
引き、0 未満になれば N を足すという動作を行い、この範囲の整数のみ扱うの
を N を法とする代数と言います(時計代数とも呼ばれる)。また、A、B を N
で割った余りが等しい時「A,B は N を法として合同」と言い「A≡B (mod N)」
と書きます。またこのような体系を Z と書くとします。この時 Z での加法、
減法には特に問題がありませんが、乗法ではいくつか困った現象が起こります。
例えば、
3×6≡0 (mod 2)
のように A も B も 0 でないのに A、B の積が 0 になることがあります。
また
3×5≡3×9 (mod 12)
のように 0 でない A を B,C に掛けた積が同じなのに B≠C になることもありま
す。こうなると割り算が成り立ちませんし、A×B=0 ならば A=0、B=0 という
基本法則が成り立たないので因数分解が成立しません。
しかしこれは N が素数ならばこの現象は起きないのです。
何故起きないのかは以下で説明します。
【2】互除法
互除法とは二つの正の整数 M と N の最大公約数を求めるアルゴリズムで
1、M と N を比較し必要なら入れ替えて M≧N とする。
2、M を N で割り、商を Q 余りを R とする。
3、余り R が 0 ならば、そのときの除数 N が最大公約数である。これで完了
4、余り R が 0 でなければ、除数 N と余り R を M、N とおきなおして 2 へ戻
る。
という手順です。
【3】有限体
さて、上の互助法を応用すれば次のことが言えます。
正の整数 M、N の最大公約数を D とすると、適当な整数 U、V を取って
MU+NV=D
2
N
N
2
とすることが出来る。
さて、これの証明をします。
N =M、N =N とすると
互除法を用いて
N を N で割り、商を Q 、余りを N とする。
N =Q N + N
これは
N =- Q N +N
と書ける。
同様に NM-1を N で割った商を Q 、余りを N のようにして互除法をする
N =-Q N +N と
N =-Q N +N
の右辺が M を整数倍したものと、N を整数倍したものの和になっているとする
と、N =-Q N +N の右辺は M を整数倍したものと、N を整数倍したもの
の和になっていることが言える。
今、N =1×M+0×N、N =0×M+1×N が成り立つので
数学的帰納法よりすべての自然数Xにおいて
N =-Q N +N の右辺が M を整数倍したものと、N を整数倍したものの和
になっていると言える。また D は互除法の余りの中に出てくるから
これにより上記の MU+NV=D は示された。
さて、ここからある重要なことがわかります。
MU+NV=1 とすると MU=1-NV。
よって
MU≡1 (mod N)
これによりUはMの逆数となる、
逆数が存在するので素数 N を法とする代数において
除法を定義する事ができる。
さらに
AB≡0 (mod N)の時 A≡0 (mod N)かつ B≡0 (mod N)
が成り立つ。
0
1
0
0
1
1
2
1
1
2
1
1
0
M
k
k
k+1
k-1
k-2
k
k-1
k
k+2
k+1
k+1
0
X+1
2
M
M+1
k
1
X
X
X-1
3
よって素数Nを法とする代数において四則計算、交換法則、結合法則、分配法
則が全て成り立つ。
このように四則計算ができ、交換法則、結合法則、分配法則が全て成り立つ体
系を体という。よって素数 P を法とする体系Zp はP個の数からなる有限体で
ある。
【4】フェルマーの小定理
素数 P を法とする体系Zp において 0 以外の数 A を取ります
そしてZp の 0 以外の数全てにAを掛けます。
この時計算後のどの二数の差をとっても A では割り切れないので
計算後の数は P を法として全て相異なり、また 0 ではない。
したがってこれはZp の 0 以外の数を全て並べ替えたものである。
よってこの数を全て掛ければZp の 0 以外の数を掛けたものと等しい。
すなわち
A (P-1)!≡(P-1)!
が言える。
また(P-1)!は素数Pでは割り切れないので
A ≡1 (mod P)
つまり素数Pの倍数でない整数Aは、(P-1)乗すれば、常にPを法として 1 に
等しい。
これがフェルマーの小定理である。
さてこの定理から A - ≡1 (mod N) でなければNは素数ではないという事
が導ける。
これは有効な素数判定法であり、フェルマー・テストと呼ばれる。
P-1
P-1
N 1
、RSA 暗号の数理
さて、ここまでが前置きであったわけだが、これから RSA 暗号の数学的な理論
を書いていきたいと思う。
【1】理論
まず受信者は十分大きな素数P、Qを選びN=P×QとなるNをとります。
またある指数Eをとります。そしてNとEを受信者は鍵として公開します。
送信者はある法則に従って平文(送信する文)を符号化します。
符号化は高度な工夫をする必要はあまりありません。
符号化された文をMとします。
そして送信者はMを公開鍵N、Eを用いて
4
4
M ≡C (mod N)
となるCを導き、それを受信者に送信します。
受信者は受信した暗号文CをEの対する「逆演算」をあらわす指数Dを用いて
暗号文Cを復号します。
M≡C (mod N)
これで受信者は文を受け取ることが出来ます。
【2】指数
さて、理論は上に示したがここで少し問題があります。
それは上の操作に当てはまるような指数D、Eの組み合わせがあるかどうか、
という問題であり、また公開鍵から秘密鍵Dが特定できるようでは不適です。
さて、そんな都合のいい指数の組み合わせがあるのか、と言うかも知れません
が、この指数の組合せはちゃんと存在します。
さて、上の合同式M ≡C (mod N)とM≡C (mod N)より
M ≡M(mod N)
です。
つまりMを DE 乗して M と合同になるような組み合わせがあればいいわけです。
ここで N の素因数 P、Q で P-1、Q-1 が共に偶数で P-1、Q-1 の公約数が
2 のみであるようなP、Qを選びます。公約数が 2 でなければいけないという
事はないですが、あまり公約数が多いと解読の手がかりとなってしいます。
そして E はP-1、Q-1 と互いに素であるものを選びます。
ある自然数 A が P でもQでも割り切れなければフェルマーの小定理より
M ≡1 (mod P) と M ≡1 (mod Q)が言えます
つまりP-1 とQ-1 の最小公倍数をLとした場合
M ≡1(mod P,Q) つまり、M ≡1(mod N)が成り立ちます
この時、P-1 とQ-1 の公約数が 2 だけなら L=(P-1)(Q-1)÷2 であり
P-1、Q-1 はそれぞれEと互いに素だから、LはEと互いに素です。
よって互除法の所で述べたように
E
D
E
D
DE
P-1
L
Q-1
L
ED+LV=1
を満たす整数 D,V が存在することがいえます。
よってED=1-LVなので
5
≡M - ≡M×(M )- (mod N)
となり、またM
≡1(mod N)より
M×(M )- ≡M (mod N)
よって M ≡M(mod N)
つまりこのD、Eの組み合わせならば M を DE 乗して M と合同になります。
しかもNの素因数P、Qがわからないと秘密鍵Dを導き出すのは非常に難しく、
またPとQを知っていれば秘密鍵Dを計算するのは非常に簡単です。よってこ
のD、Eの組合せはRSA暗号を使用する際に有効な指数の組み合わせである
といえます。
【3】素数判定法
さて、上で理論を満たす指数の組み合わせがあるのはわかりましたが、実際に
用いられるような素数とはある程度の大きさを持った素数でなければいけませ
ん。よってある整数が素数であるかどうかを判別できる方法が必要です。しか
もその方法は整数N対して 2 から√Nまでの整数で割れるかどうか一つずつ計
算する、というような計算量が膨大すぎる問題では実用的ではありません。
まず、先ほども少し述べたフェルマー・テストです
これは「A - ≡1 (mod N) でなければNは素数ではない」という物でしたが
これをいくつかの任意のAで行い、それをパスした場合このNは素数である確
- ≡1 (mod N)
率が高いといえます。しかし勘違いしてはいけないのは「A
-
でなければNは素数ではない」は真であっても「A ≡1 (mod N) ならばN
は素数である」は偽なのです(反例 N=341)。よってこれだけではNが素
数だと言い切る事はできません
そこでこの判定法を精密化したものとして強概素数というものがあります。
N-1=2 U(Uは素数)とおいて の 乗×
A ≡1 (mod N) が成立するかまたはA
≡-1 (mod N)がT未満のあるS
で成立する時、NをAに対する強概素数と呼び、Nが素数ならNで割り切れな
いAに対して必ずこれが成り立つ。しかし、これもカンペキでなくこれを満た
すが素数では無いという強擬素数と呼ばれる物も存在します。これはNが奇数
の合成数の時N-1 までの整数Aのうち少なくとも四分の三に対してNはAに
対する強擬素数で無い事が証明されているので十分多くのAに対してNが強概
素数であることを証明すればNは素数であるという正しい判定になります。
【5】まとめ
以上の事からRSA暗号は実用に十分に耐えられる暗号である事がわかります。
いろいろな事情があってかなり中途半端というか薄い内容になってしまいまし
た。いやホントにすいません。もっと深い内容が知りたいと思われる方は本屋
で探されてはどうかと。灘生の方々なら、図書室に良く書かれている本が数札
あるので興味があったら読んで見てください。
図書室にある資料
MDE
1 LV
L
V
L
V
L
DE
N 1
N 1
N 1
T
T
2
S
6
U
『暗号の数理』 著 一松 信
『暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで』 著 サイモン・シン
他にもあると思います。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
7
ライフゲーム
高校2年1組
浅野知紘
はじめに
1
本日は数学研究部におこしくださりくださり、ありがとうございます。
この記事では「セル・オートマトン」と言うものの中でも、特に一次元の
ものと「ライフゲーム」と呼ばれるものを紹介したいと思います。
セル・オートマトンには無限に並ぶ「セル」と呼ばれる細胞(普通は正方
形や立方体とする)があり、それぞれのセルには何種類かの状態1 があり、セ
ル達は近くのセルの状態に影響を受け時刻ごとにその状態をあるルールに基
づいて変えていきます。
これから幾つかのルールについてどんな感じになっているのか見ていきます。
定義 1
セル達の初期状態を時刻 0 の状態とし第 1 世代とする。
任意の自然数 t に対し第 t 世代の次の状態を第 (t + 1) 世代、第 t 世代の時刻
を時刻 (t − 1) とする。
セルの状態が生きているか死んでいるかの 2 通りの場合、生きているセル
を黒セル、死んでいるセルを白セルと呼ぶ。
一次元セル・オートマトン
2
一次元セル・オートマトンは直線状で、それぞれのセルは両隣の 2 つのセ
ルと接している。ある時刻でのあるセルの状態はその直前の時刻のそのセル
自身と両隣のセル(合計 3 つのセル)の状態によって決まる。1 つのセルの
状態を 2 種類とするなら 3 つのセルの状態は (23 =)8 通りなのでその 8 通り
それぞれに次のセルの状態を決定すればそれで 1 つのルールが出来上がる。
定義 2
1
ここではそのセルが「生きている」か「死んでいる」かの 2 つの状態しか考えません
46
ある一個のセルを 0 番セルと名づけ、0 番セルから(右隣を 1 番目と数え
て)右に a 番目のセルを a 番セル、0 番セルから(左隣を 1 番目と数えて)
左に a 番目のセルを −a 番セルと名づける。
時刻 t で a 番セルが黒セルとなっている全ての整数 a の集合を Bt と表し、
Bt の補集合(時刻 t で a 番セルが白セルとなっている全ての整数 a の集合)
を Wt と表す。
b(a,t) を a 番セルの時刻 t での黒白を表すとし、
b(a,t) = 1(a ∈ Bt )
b(a,t) = 0(a ∈
/ Bt )
という値を持たせる。
定理 1 二つの時刻 t1 、t2 を考える(但し t1 ≤ t2 )。
時刻 t1 の a 番セルの状態は、時刻 t2 の |b − a| ≤ t2 − t1 なる b 番セルにのみ
影響を与える2 。
証明 1 t2 = t1 の時
(同時刻なので)明らかに成り立つ。
t2 = t1 + k のとき成り立つとして t2 = t1 + k + 1 の時
時刻 (t2 − 1) を考えると、その時刻には |c − a| ≤ k なる c 番セルだけが影響
を受ける。その次の時刻(時刻 t2 )にはそれぞれの c 番セルは隣までしか影
響を与えないので、|b − a| ≤ k + 1(= t2 − t1 ) なる b 番セルにのみ影響を与
える。
よって数学的帰納法により証明された。
証明終
そしてここからは特に断らない限り B0 = {0}(つまり初期状態に黒セルは 1
つだけある)として考える。
2.1
ルールの表し方
たとえばルール 99 というルールを書いてみる。
2
影響を与えるセルの状態を変えると、
「影響を受けるセルの状態が変化する。」は成り立たな
いが、「影響を受けないセルの状態は変化しない。」は成り立ちます。
47
111
110
101
100
011
010
001
000
0
1
1
0
0
0
1
1
1 は黒セル、0 は白セルを表している。
この表の例えば左からに 2 列目は「ある時刻に左隣のセルが黒で右隣のセル
が白、それ自体は黒セルであるセルは次の時刻に黒セルになる」と言うこと
を意味している。
このルールをルール 99 と言う理由を説明しておく。表の上段は二進法表示
として見ると、左から 7、6、… … 1、0 と並んでいる。下段を見ると数字が
01100011 と並んでいる。これを二進法表示と見れば十進法の 99 と等しいの
でルール 99 と名前がついている。
つまりルール 0 からルール 255 まで 256 種類のルールが存在する。
しかし議論を簡単にするためここではルールの表し方を変えることにする。
定義 3 ルール (m, n)
下の表の下段に 0,1 を書き入れ3 、左 4 つと右 4 つをそれぞれ別に二進法表
示と見て、左側の数を m、右側の数を n(0 ≤ m ≤ 15, 0 ≤ n ≤ 15)とする
とそのルールをルール (m, n) と表す4 。
➀
➁
➂
➃
➄
➅
➆
➇
010
011
110
111
101
100
001
000
0
0
1
0
1
0
1
1
定義 4 複数のルールについて一度に考える場合 Bt 、Wt 、b(a,t) では不十分な
ので、ルール (m, n) において、時刻 t で a 番セルが黒セルとなっている全て
の整数 a の集合を B(m,n)t と表す。またルールが同じでも初期条件などを変
′
えて複数のパターンについて考える場合 Bt 、B(m,n)t に対して Bt′ 、B(m,n)t
等として区別する。(例えば b′(m,n)(a,t) といったように)Wt 、b(a,t) に対して
も同様に定義する。
2.2
ルール (12, 6)
これは規則的なパターンとランダムなパターンが混在する複雑なパターン
の代表例である。
010 011 110
111
101
100
001
1
1
0
0
0
1
1
直線状のセルを時間順に下へ並べていく。
3
4
ここではルール 99 を書き込みました。
ルール 99 はルール (2, 11) と表されます。
48
000
0
これを更に続けていった時の模様(ここにかけないのが残念だが)に似てい
るものが自然界で発見されている。
ルール (6, 6)
2.3
010
011
110
111
101
100
001
000
0
1
1
0
0
1
1
0
このルール (6, 6) を図のように並べるとシェルピンスキーのギャスケットと
言うフラクタクル図形5 に近づいていく。このことが分かる次の事実を示す。
定理 2 ルール (6, 6) において、t, n ∈ Z として 2n ≤ t < 2n+1 なる時刻
(t − 2n ) で a 番セルが黒セルの時、時刻 t で (a ± 2n ) 番セル 2 つも黒セルで
ある。
また、時刻 t で b 番セルが黒セルの時、b > 0 ならば (b − 2n ) 番セル、b < 0
ならば (b + 2n ) 番セルが時刻 (t − 2n ) で黒セルである。
5
(正しい定義ではないが)図形の部分と全体が自己相似になっている図形
49
証明 2 B1 = {1, −1} であることから、時刻 1 で 0 番セルは白セルである。
ルールの表よりこの後は(0 を対称の中心として)左右対称を保ち続ける。つ
まり常に −1 番セルと 1 番セルの状態は同じであるので、表より 0 番セルが
黒セルになることはない。
さらに
B2n = {−2n , 2n }
を示す。これが示されれば、定理 1 より(t1 = 2n , t2 = t と考えて)、時刻 t
での b 番セルの状態は、0 < −t + 2n+1 ≤ b ≤ t ならば時刻 2n の 2n 番セル、
−t ≤ b ≤ t − 2n+1 < 0 ならば −2n 番セルからのみ(黒セルからの)影響を
受ける。ここで、その影響の受け方は時刻 (t − 2n ) の −t + 2n ≤ a ≤ t − 2n
なる a 番セルが時刻 0 の 0 番セルから受けるものと同じである。そして b が
それらの範囲に無い b 番セルは黒セルの影響を受けないので白セルとなる。
これらより B2n = {−2n , 2n } を示せばよいことがわかる。
このことを数学的帰納法で示す。
n = 0 の時、(t ∈ Z より n ≥ 0)
B1 = {−1, 1}
が成立。
n = k で成立するとして、n = k + 1 の時、
定理 1 より(t1 = 2k , t2 = 2k+1 と考えて)、時刻 2k+1 で、−2k+1 ≤ b ≤ −1
なる b 番セルは時刻 2k の −2k 番セルからのみ(黒セルからの)影響を受け、
1 ≤ b ≤ 2k+1 なる b 番セルは時刻 2k の 2k 番セルからのみ影響を受け、0 番
セルは両方からの影響を受ける。
これらより、時刻 2k+1 で、−2k+1 ≤ b ≤ −1 なる b 番セルが時刻 2k の
−2k 番セルからの影響の受け方は、時刻 2k での −2k ≤ a ≤ 2k − 1 なる a
番セルが時刻 0(の 0 番セル)から受ける影響と同じなので、時刻 2k+1 で、
−2k+1 ≤ b ≤ −1 なる b 番セルのうちで黒セルであるのは −2k+1 番セルのみ。
同様に 1 ≤ b ≤ 2k+1 のうちで黒セルになるのは 2k+1 番セルのみ。0 番セル
が白であることは証明しているので、
B2k+1 = {−2k+1 , 2k+1 }
が成立。よって全ての 0 以上の整数について示された。
証明終
50
n ≡ 0(mod.8) の場合
2.4
定理 3 n ≡ 0(mod.8) のとき、t を任意の自然数とすると
Bt = {0}(m ≥ 8)
Bt = ∅(m ≤ 7)
証明 3 n ≡ 0(mod.8) は前出の表において➅➆➇が全て 0(白)であること
と同値である。すると B0 = {0} より、時刻 1 に 0 番セル以外は全て白セル
(a 6= 0 なら b(a,1) = 0)である。m ≥ 8 の時、➀が 1(黒)なので、b(0,1) = 1。
この状態がその後も変化せずに続くので上側の式は示される。m ≤ 7 の時は、
➀は 0(白)なので b(0,1) = 0。全てのセルが白で➇も 0(白)なのでこの状態
も変化せず続く。これによって下側の式も示される。
証明終
2.5
m + n = 15 の場合
この小節では初期状態はどのような状態でもいいことにする。
定理 4 B0′ = W0 という関係がある二つの初期状態があるとする。全ての B0
と自然数 t について Bt′ = Wt であることは、m + n = 15 と同値である。
証明 4 t = 1 の場合のみ示せば良い。
010
011
110
111
101
100
001
000
a1
a2
a3
a4
a5
a6
a7
a8
表の a1 から a8 にはそれぞれ、0 または 1 が入る。
a1 から a4(つまり m)を任意に定めれば、
(n が一意に定まり)a5 から a8 が
定まるので、m + n = 15 であることは、全ての 1 ≤ h ≤ 4 なる自然数 j につ
いて ah + ah+4 = 1 が成り立つことと同値であることが分かる。
まず m + n = 15 ⇒ B1′ = W1 を示す。
任意の a 番セルに注目し、初期状態が B0 で表される方は b(a−1,0) 、b(a,0) 、
b(a + 1,0) を表と照らし合わせて b(a,1) が定まる。ここで b(a,1) には表の ai (0 ≤
i ≤ 8) が対応していたとする。初期状態が B0′ で表される方は b′(a−1,0) 、b′(a,0) 、
b′(a + 1,0) を表と照らし合わせて b′(a,1) が定まる。ここで b′(a,1) には表の aj (0 ≤
j ≤ 8) が対応していたとする。
51
B0′ = W0 より、例えば b(a,0) + b′(a,0) = 1 であるから、|i − j| = 4 が成り立
つ。よって b(a,1) + b′(a,1) = ai + aj = 1。つまり B1′ = W1 が成り立つ。
次に m + n 6= 15 ⇒ B1′ 6= W1 なる B0 が存在することを示す。
m + n 6= 15 ならば、ah = ah+4 なる自然数 h(1 ≤ h ≤ 4) が存在するので、
B0 中に表の ah の上側に対応する 3 つのセルの並びを含ませ、その 3 つ並び
の真ん中のセルを a 番セルとすれば、b(a,1) = ah = ah+4 = b′(a,1) が成り立つ
ので、B1′ 6= W1 となる。
証明終
定理 5 ルール (m, n) に対してルール (n, m) を考える。B(m,n)0 = B(n,m)0 の
時、任意の自然数 t に対して B(m,n)2t = B(n,m)2t が成立する。
証明 5 t = 1 の場合のみ示せば良い。
ルール (n, m) はルール (15 − m, 15 − n) とみれば、ルール (m, n) の表の下段
の 0 と 1 を入れ替えたもであることが分かる。よって任意の自然数 a につい
て b(m,n)(a,0) = b(n,m)(a,0) より、b(m,n)(a,1) + b(n,m)(a,1) = 1 である。
B(n,m)1 の状態にルール (m, n) を適用したものを考え、その状態(a 番セ
ルが黒セルである a の集合)を B2′ とすると、定理 4 より W(m,n)2 = B2′ と
なる。
また、B(n,m)1 の状態にルール (n, m) を適用したもの(つまり B(n,m)2 )
と B(n,m)1 の状態にルール (m, n) を適用したもの(つまり B2′ )を比べて、
W(n,m)2 = B2′ となる。
よって W(m,n)2 = W(n,m)2 、つまり B(m,n)2 = B(n,m)2 が成り立つ。
証明終
ライフゲーム
3
3.1
二次元セル・オートマトン
無限に広がる正方形状のセルが敷き詰められた平面があり、それぞれのセ
ルは他の 8 個のセルと接していて、それらと影響を及ぼしあう。次の世代(時
刻)にそのセルが白か黒かは周り 8 個と自分自身の状態によって決まるので、
(29 =)512 通りについて次のセルの状態を決めてやれば一つのルールが出来
上がる。そしてそのルールは 2512 種類考えられ、ライフゲームはそのうちの
1 つである。
52
3.2
ライフゲーム
まずライフゲームのルールを書く。
• 黒セルの周りに(8 個中)2 つ若しくは 3 つ黒セルがあった場合、次の
世代も黒セルである。(維持)
• 白セルの周りに丁度 3 つの黒セルがあった場合、次の世代は黒セルにな
る。(誕生)
• それ以外の場合は次の世代には白セルになる。(死)
このルールは生命にとって過疎も過密も個体の生存には適さないという考え
による。このルールに従って色々な初期状態から始めてみると、黒セルがなく
なる(死滅する)場合も多いが、そうでない場合最終的にセルの集まりを固
定型、周期型、移動型、繁殖型の 4 種類に分類6 できる。
3.3
固定型
固定型は世代が進んでも場所や形など状態が全く変わらないものをいう。
実際に少し例を挙げてみる。
左から順に「ブロック」
「タブ」
「ボート」
「蜂の巣」
「釣り針(イーター)」と
言う名前がついている。3 セル(黒セルが 3 つ)以下の固定型は存在せず、4
セルの固定型は「タブ」と「ブロック」のみで、5 セルの固定型は「ボート」
のみである。
6
ここやそれ以降に書かれている種類やセルの集まりの名前は一般的ではないかもしれませ
ん。
53
3.4
周期型
周期型はある周期で同じ状態に戻るものをいう。
左から順に「ブリンカー(周期 2)」
「ヒキガエル(周期 2)」
「十五種競技(周
期 15)」「銀河(周期 8)」
3.5
移動型
移動型は一定のパターンを繰り返しながら移動していくものをいう。
上のセル(の集まり)はグライダーと呼ばれ、最も頻繁に現れる移動型である。
その外の移動型の例 左から順に「軽量級宇宙船」「中量級宇宙船」「重量級
宇宙船」
54
3.6
繁殖型
繁殖型は黒セルの数が(単調続増加である必要はないが)限りなく増え続
けるパターンである。
この代表例が上の「グライダーガン」で、周期的な動きをするが、30 世代ご
とにグライダーを一台ずつ作り出し発射する。
他にも繁殖型はあるが、上 2 つは比較的単純な繁殖型の初期状態で 10 セルの
ものは最少数である。
そして「max」と呼ばれるものは最も速く成長し、平面を覆うように成長し
ていく。
3.7
ライフゲームのバリエーション
ライフゲームをヒントにしたり、応用したりして様々な発展版(?)のライ
フゲームを考えることができる。その例を幾つか書いてみる。
(ただこれらの
例の中の多くはセル・オートマトンの範疇に属している。)
3.7.1
ルールを変える
ライフゲームでは周りに黒セル 2 個又は 3 個で維持し 3 個で誕生するルー
ル(これをルール 23/3 と書くことにする)だがそれを変えてみる。それぞれ
のルールに特有の周期型や移動型等がある。
55
例:ルール 245/3
左から三つは周期型で(順に周期 2、4、4)、一番右側は移動型である。
3.7.2
状態を増やす
ライフゲームではセルの状態は 2 通りしかないがそれを変えて、
「各黒セル
に生命力のような数字を与えて、生命力の高いセルは過酷な状況でもすぐに
は死なず、自分の生命力を消費する」といったルールも考えられる。
若しくは種類の違う生命(例えば青セルと赤セル)を考えれば 2 人(以上)
で対戦ゲームのようなことができるかもしれない。
3.7.3
セルの形を変える
ライフゲームでは正方形が敷き詰められているが、正三角形や正六角形も
平面に敷き詰められる。それらをセルとして同じようなルールを考えられる。
更に言えば、正八角形と正方形を組み合わせて敷き詰める(一つの頂点に 2
つの正八角形と 1 つの正方形を集める)ことも可能なのでこれをセルとして
も(正方形のセルと正八角形のセルでルールを変えるべきだが)可能だろう。
3.7.4
次元を変える
3 次元空間を立方体(に限らず正四面体や正八面体)で埋め尽くしてその一
つ一つをセルとしても(手作業でセルの様子を追っていくのは難しいが)可
能である。勿論 4 以上の次元でも可能。
4
あとがき
この記事を読んでくださりありがとうございました。
私にとっては初めての部誌で、初めての TEX でした。なので読みにくい所や
56
分かりにくい所、杜撰な所が多々あるかも知れません。内容に関しては、意
味のある数学的な考察(何をもって「意味がある」というのかも難しいです
が)もできず、単に「ライフゲームを紹介した」と言うような形になってし
まった気がします。やはり初めてだと言うのに取り掛かるのが遅かったと思
います。来年はこの反省を活かして良いものを書きたいです。
まあ、つまらない言い訳はここまでにして、この記事を読んでライフゲーム
で遊んでみたいと思った方は、インターネット上には沢山ライフゲームが遊
べるフリーソフトがあるので探してみてください(私は 2 種類しか使ったこ
とが無いのでここで具体的にどれがオススメかは書けませんが)。
また TEX を使う時に、
『LATEX 2ε 美文書作成入門』(奥村晴彦 著 技術評論社)
ならびに先輩方の過去の記事を参考にさせて頂きました。
ライフゲームの様々なセルの集まりについては
Eric Weisstein’s Treasure Trove of the Life C.A.
(http://www.ericweisstein.com/encyclopedias/life/)
等のサイトを中心に参考にさせて頂きました。
最後にスペースが余ったので記事内で紹介した「max」の初期状態を書い
て終わりにしたいと思います。
57
楕円曲線暗号アルゴリズム
高校2年3組38番 平野正浩
はじめに
灘校数学研究部にお越しいただきありがとうございます。この記事は、楕円曲線と
いう物を用いた暗号アルゴリズムにかんして書いてみました。研究が至らない部分
多々あり、読みづらい部分もあるかと思いますが了承願えたらなと思います。あと、
Cryptography(暗号) に関する内容です。その分野の基本的な定義をいちおうは書い
ておきますが、独自に勉強なさったほうがいいかと思います。
Introduction
楕円曲線暗号とは、1985 年に Koblitz という人物と Miller という人物によって独立
に考え出された暗号アルゴリズムです。大体の公開鍵アルゴリズムがそうであるよう
に、楕円曲線暗号系も離散対数問題に安全性が依存しています。しかし、その後通称
MOV 攻撃という離散対数問題に攻撃する手段が MOV という三人組によって考え出
されました。この方法は後に示す参考文献に詳しく載っているので参照してください。
58
暗号ことはじめ
1
ある文 P (plain text, 平文) という普通に意を解せる文書や、バイナリデータがあっ
たとします。これをだれが見ても読めないような文章にするという作業を暗号化す
るといいます。この暗号化された文章を暗号文といい、C(Complex text) で表します。
さらに、正規の利用者がこの C から P を求める作業を復号化といいます。そして、
第三者が暗号文を平文に変換する操作を解読といいます。さて、これぐらいが暗号と
いうものを理解するのに必要な最低限の知識です。まず、公開鍵暗号アルゴリズムの
概要から説明します。公開鍵暗号では、「暗号化の鍵」と「復号化の鍵」を分けます。
送信者は、
「暗号化の鍵」を使ってメッセージを暗号化し、受信者は「復号化の鍵」を
使って暗号文を復号化します。
公開鍵暗号を理解するためには、「暗号化の鍵」と「復号化の鍵」をはっきりと区別
することが大切です。ここで、対称暗号で問題になった鍵配送問題を解決できている
ことがわかりますか?盗聴者は「暗号化の鍵」を持っていても「復号化の鍵」を持っ
ていなければ解読することができないからです。つまり、「暗号化の鍵」は暗号化の
ために送信者が使うもので、
「復号化の鍵」は復号化のために受信者が使うものです。
公開鍵暗号では「暗号化の鍵」は一般に公開することができます。この鍵の事を公開
鍵 (public key) と呼びます。一方、
「復号化の鍵」は絶対に公開してはいけません。こ
の鍵の事をプライベート鍵(秘密鍵, private key) と呼びます。そして、公開鍵とプ
ライベート鍵は、2 本 1 対になっているのでこの鍵の対の事を鍵ペアと呼びます。公
開鍵暗号アルゴリズムとは、この公開鍵と秘密鍵を出すのに使われるものの事です。
楕円曲線暗号
2
2.1
概要
有限体上定義された楕円曲線の点が群をなすことを利用した暗号を楕円曲線暗号と
いいます。上にも書きましたが、楕円曲線暗号の安全性は、この群の離散対数問題の
困難さに依存しています。のちにもこのことに関して詳しく述べます。
この楕円曲線上の離散対数問題の解を求めるための計算量が、有限体の大きさ logq の
指数関数オーダーになるのに対し、通常の有限体における離散対数問題や大きな合成
数の素因数分解問題は、準指数時間で解を求めることが可能です。
つまり、RSA 暗号や ElGamal 暗号と同等の安全性を実現するために必要な有限体の
大きさを、それに必要な大きさに比べて比較的小さくできます。たとえば、RSA 暗
号では 1024 ビット必要なところが、楕円曲線暗号では有限体の大きさを 160 ビット
で抑えることができます。
公開鍵を秘密鍵の配送に用いた場合、1 回のやり取りで必要な公開鍵の暗号化、復号
59
化には一部ロックで十分なので楕円曲線暗号は RSA 暗号に比べて 10 倍以上高速であ
ることが知られています。
2.2
ElGamal 暗号
楕円曲線暗号は公開鍵暗号で用いられます。そこで、公開鍵暗号の最も初歩的な
ElGamal 暗号を紹介したいと思います。離散対数問題とは、有限体における対数を求
める問題であり、素数 p に対して、y ≡ g x
(mod p) なる関係式があるとき x 以外
のすべてからこの x を求めるという問題です。g の位数が小さければ x に brute force
attack をすれば求まりますが g の位数が大きく、その位数の素因数に大きな素数が
含まれている場合 x を求めることは困難でありその計算量は logp の準指数関数オー
ダーとなります。ここで具体的な手順を説明します。
1. 大きな素数 p を生成する。但し、この p は攻撃に対して十分安全な素数とする)
2. 有限体 Fp の原始根を求める。
3. 乱数 x ∈ Zp − 1 を生成し、y ≡ g x
(mod p) により y ∈ Fp を得る。
4. g,y,p を公開鍵とし、x を秘密鍵とする。
秘密鍵:x ∈ Zp − 1 公開鍵:p, g ∈ Fp , y ≡ g x
(mod p)
暗号化:
ElGamal 暗号は、平文 1 ブロックに対して、暗号文は 2 ブロックとなるので、平分
m に対応する暗号文を c = c1 , c2 と表すことにする。平文 m を暗号化して、暗号文
c = c1 , c2 を得るには公開鍵 g,y,p を用いて
c1 ≡ g k
(mod p)c2 ≡ my k
(mod p)
を計算すればよい。ただし、k は暗号化に際して生成する乱数である。ここで乱数と
は擬似乱数といって完全な乱数ではないものの事を言います。まあ普段ではあまり意
識しなくてもいいのですが(笑)
復号化:
暗号文 c = c1 , c2 を復号化し、平文 m を得るには秘密鍵 x, 公開鍵 p を用いて、
c2
m ≡ x (mod p)
c1
を計算する。ここで正しく復号されることを確認しておきましょう。
my k
my k
c2
≡
≡
≡ m (mod p)
cx1
(g k )x
yk
こんな具合です。この後に紹介する楕円 ElGamal 暗号はこれの key pair を楕円曲線
暗号で作成したものです。
60
2.3
有限体上の楕円曲線
本当は一般的にやるのが筋なのですが簡単に話を進めるため、有限体を素体とし、
素体 Fp の標数 p は、p 6= 2, 3 とします。
(いや、これも本当は全部調べるのがいいんですが、時間が足りない感があり少々物
足りない記事になってしまいました。)
有限体上の楕円曲線 E/Fp は次の式で表されます。
y 2 = x3 + ax + b,
a, b ∈ Fp
(1)
上の式を満たす F に属する元 x, y ∈ Fp の組からなる点 (x, y) を有理点という。有理
点全体と無限遠点 O は次に示す加法において群をなします。但し、無限遠点はこの
群の単位元であり、射影平面上では (0:1:0)と表すことができます。つまり xy 平面
上には存在しないが、xy 平面上の任意のある点と無限遠点を通る直線は、y 軸と平行
な直線となります。
楕円曲線の点と点の加法: 有理点 P = (x1 , y1 ) と Q = (x2 , y2 ) は次のように定義でき
ます。まず、有理点 P = (x1 , y1 ) と Q = (x2 , y2 ) を通る直線と楕円曲線との第3の交
点を P ∗Q とする。そして、この点 P ∗Q と、x軸に対して対称な点を P +Q = (x3 , y3 )
として、この点を点 P と点 Q の加算結果とします。
1. Q が無限遠点 (零点)O の場合
P +Q =Q+P =P
(2)
(O は加法における単位元)
2. x2 ≡ x1
(mod p), y2 ≡ −y1
(mod p) の場合
P +Q= Q+P =O
(3)
(この時、Q = −P と表す)
3. P ≠ Q かつ x1 6≡ x2
(mod p)7 の場合 (すなわち、P と Q のx座標が異なる
場合)
点 P と点 Q を通る直線を l : y = mx + n とし、次の連立方程式を考える。
y 2 = x3 + ax + b
(4)
y = mx + n
(5)
(5) を (4) に代入して整理すると
x3 − m2 x2 + (a − 2mn)x + b − n2 = 0
61
(6)
という三次方程式が得られる。この三次方程式の三つの解が x1 ,x2 ,x3 となるの
で、この方程式の左辺は次のように因数分解することができる。
x3 − m2 x2 + (a − 2mn)x + b − n2 = (x − x1 )(x − x2 )(x − x3 )
= x3 − (x1 + x2 + x3 )x2 + (x1 x2 + x2 x3 + x3 x1 )x − x1 x2 x3
従って、両辺の x2 の係数に着目すると
x3 = m2 − x1 − x2
(7)
となり、この式に点 P と点 Q を通る直線の傾きを代入すると
x3 =
y2 − y1
x2 − x1
2
− x1 − x2
(8)
が得られる。また、x3 を (5) に代入すると以下の式が得られる。
x3
y3
2
y2 − y1
≡
− x1 − x2 (mod p)
x2 − x1
y2 − y1
≡
(x1 − x3 ) − y1 (mod p)
x2 − x1
62
(9)
(10)
4. P = Q の場合
3. の場合は簡単に導くことができました。同じノリでいきましょう。点 P と Q
が異なる場合との差は、x1 = x2 であること、さらに直線の方程式の傾きが楕
円曲線の点 P における接線の傾きで与えられることである。ここで (1) を x で
偏微分すると、
2y
ϑy
= 3x2 + a
ϑx
(11)
となるので、点 P における接線の傾き m は
m=
ϑy
3x2 + a
= 1
ϑx
2y1
(12)
となり、これを (7) に代入すると以下の式が得られる。
x3
y3
2
3x21 + a
− 2x1 (mod p)
2y1
2
3x1 + a
≡
(x1 − x3 ) − y1 (mod p)
2y1
≡
(13)
(14)
この場合は、2P =P +P と表す。
1. の場合、点 P と点 O を結ぶ直線は、第三の点-P で楕円曲線と交わり、-P を x 軸
に関して折り返すと点 P 自身となり P + O = P となる。また、2. の場合は点 P と
点-P を通る直線は、第三の点 O で曲線と交わる。O を x 軸に関して折り返すと O 自
身となり、P + (−P ) = O となる。4. の場合は P において二重に交わる点は、P に
おける接線、まさにそれである。この直線は第三の点 P ∗ P で交わり P ∗ P を x 軸に
関して折り返した点が P + P = 2P であり、この点 2P を点 P の 2 倍点という。さら
に、(k − 1)P + P = kP と記述し、kP を P の k 倍点と呼ぶ。
2.4
楕円 ElGamal 暗号
楕円曲線状の離散対数問題を解く困難さを利用した公開鍵暗号として楕円 ElGamal
暗号があります。この暗号は、ElGamal 暗号における、有限体の乗法群の演算を楕円
曲線の有理点がなす加法群の演算に置き換えたもので、key pair は次のようになりま
す。
秘密鍵:d
公開鍵:有限体 Fq 上の楕円曲線 E/Fq : y 2 = x3 + ax + b 有理点 P, Q=dP ∈ E(Fq ) こ
こで、点 Q は点 P を d 倍したものであり、P ,Q から d を求めることが楕円曲線上の
離散対数問題になっていることに注意してくださいね。(こんな言い方をするとすご
く直感的なイメージができていいですね)
63
暗号化:
平文に対応する楕円曲線上の有理点 Pm から暗号文 C = (C1 , C2 ) への暗号化は適当
な乱数(もちろん擬似乱数… ) を生成し、楕円曲線上の点の k 倍算、および加算によ
り次のように行われる。
C1 = kP
(15)
C2 = Pm + kQ
(16)
復号化:
復号化は、ElGamal 暗号の場合と同様の原理に基づいて次のように行います。
C2 − dC1 = Pm + kQ − d(kP ) = Pm + kQ − k(dP ) = Pm
3
(17)
おわりに
ほんとは、もっともっと書きたかったのですが、諸制限がありほんとにさわりのさ
わり位しか触れることができませんでした。楕円曲線暗号はかなり奥が深い世界で今
もなお研究が日進月歩である学問です。こんな駄記事で一人でも興味を持っていただ
けたらなと祈っております。HP には余力があればもっと面白い事をあげておこうか
なと思っておりますが、いつになるかはわかりませんwあまり期待しないでいてくだ
さい。
参考文献
[1] Bruse Schneier 著, Applied Cryptography
[2] イアン・F・ブラケ, 他 2 人共著, 楕円曲線暗号
64
Column
さて、奇数ページで終わってしまったのでここで一つ小話を。
先ほど乱数と述べましたが、これも奥が深いのです。そのあたりの世界をちょっとの
ぞいてみましょう。
まず、乱数の性質を分類してみましょう。
• 無作為性
統計的に偏りがなく、でたらめな数列になっているということ。
• 予測不可能性
過去の数列から次の数を予測できないという性質。
• 再現不可能性
同じ数列を再現できないという性質。再現するためには数列そのものを保存し
ておく必要がある。
この三つの性質は下に行くほど厳しくなります。また、下にあるものを満たせば上に
あるものを満たします。ここでそれぞれに関してもう少し踏み込んでみましょう。
・無作為性
たとえば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,0,1,2,3,4,5· · · でも統計的に等しく分布されているので無
作為性があるといえます。また、一見でたらめに見えても数列に一個も 8 が入ってい
なかったりした場合はそれは無作為性があるとはいえません。
・予測不可能性
これは、過去に出力した擬似乱数列を知られても、次に出力する擬似乱数を言い当て
ることはできない、というものです。seed を用いたアルゴリズムなんかはこれをもつ
といえますね。これを実装するのは他の暗号技術で行います。
・再現不可能性
上であげた seed を知られても再現するにはそのものを保存しておくしかないような
性質の事を言います。擬似乱数生成器はその名の通り、完全な乱数を作り出すことは
できません。
再現不可能性を持つ乱数は、周りの温度とかからのみ得られます。このような再現
不可能性を持つ乱数を「真の乱数」といいます。
こんな感じで乱数にも何種類かあるのですね。
65
平方和についての考察
高校 2 年 4 組 27 番 関 典史
1
はじめに
この記事では、与えられた整数 a, b, n に対して ax2 + by 2 = n を満たす整数 x, y は
存在するか、またそのような (x, y) の組はいくつあるか、という問題を扱います。
2
準備
必要な定義・定理を書いておきます。
定義 2.1 (二次体)
m ∈ Z は平方因子を持たないとするとき
√
x + y m(x, y ∈ Q)
√
の形の数全体の集合は体をなす。これを二次体といい、K( m) と表す。
有理数体 Q の中に Z があるように、二次体に対しても「整数」を定義します。
定義 2.2 (二次体の整数)
Z 係数の二次方程式
x2 + ax + b = 0
の解となるような数を二次体の整数という。
二次体の整数は次のように書けます。
定理 2.3
√
二次体 K( m) の整数は、x, y ∈ Z として
√
m ≡ 2, 3 (mod 4) のとき x +√
y m
x+y m
, x ≡ y (mod 2)
m ≡ 1 (mod 4) のとき
2
となる。
66
定義 2.4 (共役、ノルム)
√
√
√
二次体 K( m) に属する 2 数 α = x + y m, α = x − y m を互いに共役という。
N (α) = αα = x2 − my 2 と定め、これを α のノルムという。
定義 2.5
√
√
α
K( m) の整数 α, β について、 が K( m) の整数となるとき、α は β で割り切れ
β
るといい、β | α と書く。
定義 2.6 (単数)
√
K( m) の整数 ǫ が N (ǫ) = ±1 を満たす ( すなわち ǫ | 1 となる ) とき、ǫ を単数と
いう。
定理 2.7 (基本単数)
√
m > 0 のとき、K( m) には無数に単数があり、それらは一つの単数 ǫ0 によって次
の形に表される。
±ǫn0 (n ∈ Z)
このような単数 ǫ0 を基本単数という。
定理 2.8
√
m < 0, m 6= −1, −3 のとき K( m) の単数は ±1 の 2 個である。
√
√
√
−1 + −3 −1 − −3
また、K(i) の単数は ±1, ±i の 4 個、K( −3) の単数は ±1, ±
,±
2
2
の 6 個である。
定義 2.9 (同伴数)
√
α
K( m) の整数 α, β について、 が単数となるとき、α, β を互いに同伴数といい、
β
α ∼ β と書く。
定義 2.10 (素元)
√
K( m) の 0 でも単数でもない整数 π について、π | αβ ⇒ π | αまたはπ | β が成り
√
立つとき、π を K( m) の素元という。
定義 2.11 (イデアル)
√
K( m) の整数からなる集合 A が次の条件 (1), (2) を満たすとき、A をイデアルとい
う。
(1) α, β ∈ A ⇒ α + β, α − β ∈ A
√
(2) λ : K( m) の整数, α ∈ A ⇒ λα ∈ A
ただし、0 のみからなる集合はイデアルでないとする。
67
定義 2.12
√
√
K( m) の整数 α1 , · · · , αn について、集合 {λ1 α1 +· · ·+λn αn | λ1 , · · · , λn : K( m) の
整数 } はイデアルである。これを α1 , · · · , αn で生成されるイデアルといい、(α1 , · · · , αn )
と表す。
√
K( m) の整数 α で生成されるイデアル、すなわち (α) の形のイデアルを単項イデア
ルという。
定理 2.13
(α) = (β) ⇔ α と β は同伴数
定理 2.14
任意のイデアルは (α1 , · · · , αn ) の形に表される。
定義 2.15 (イデアルの積)
イデアル A = (α1 , · · · , αm ) と B = (β1 , · · · , βn ) の積を、イデアル
AB = (α1 β1 , · · · , αµ βν , · · · , αm βn )
で定義する。
すなわち、AB は
k
X
i=1
ai bi (ai ∈ A, bi ∈ B) の形の数全体の集合である。
イデアル A, B, C について C = AB が成り立っているとき、C は A または B で割り
切れるという。
定義 2.16 (共役イデアル)
イデアル A = (α1 , · · · , αn ) に対して、A = (α1 , · · · , αn ) と定義し、これを A の共役
イデアルという。
定理 2.17
任意のイデアル A に対し、ある n ∈ N が存在し、AA = (n) となる。
この正整数 n をイデアル A のノルムといい、N (A) = n と書く。
定義 2.18 (素イデアル)
イデアル P (P 6= (1)) が (1) と P 以外のイデアルで割り切れないとき、P を素イデア
ルという。
次の定理は非常に重要です。
定理 2.19 (イデアル論の基本定理)
(1) 以外のイデアルは一意的に素イデアルの積に分解できる。
68
素イデアルとは Z における素数のようなもので、Z で素因数分解の一意性が成り立つ
ように、素イデアル分解の一意性が成り立つということです。
√
p を素数とし、二次体 K( m) でのイデアル (p) の素イデアル分解を考えると、以下
が成り立ちます。
定義 2.20 (判別式)
√
二次体 K( m) に対し
• m ≡ 2, 3 (mod 4) のとき d = 4m
• m ≡ 1 (mod 4) のとき d = m
√
により d を定め、この d を K( m) の判別式という。
定理 2.21
√
二次体 K( m) において、素数 p は (p) の素イデアル分解によって以下の三種に分か
れる。
d
= 1 なる奇素数 p について1 、(p) = P P , P 6= P , N (P ) = p
p
d ≡ 1 (mod 8) ならば (2) = P P , P 6= P , N (P ) = 2
d
= −1 なる奇素数 p について、(p) = P, N (P ) = p2
第二種
p
d ≡ 5 (mod 8) ならば (2) = P, N (P ) = 4
第一種
第三種 d の素因数 p について、(p) = P 2 , N (P ) = p
定義 2.22 (イデアルの類別)
√
二次体 K( m) において、イデアル A の各数に、ある数 ρ ( 整数でなくてもよい ) を
かけたときに、その積が全て整数であるならばそれらの積の集合はイデアルである。
このイデアルを ρA と表す。このように、二つのイデアル A, B の間に
B = ρA
という関係があるとき、A と B は対等であるといい、A ∼ B と書く。
この対等という関係は同値関係であるので、これによってイデアルを類に分けること
ができる。単項イデアルは互いに対等であるので、単項イデアル全ての集合は一つの
類をなす。これを主類という。
1
p : 奇素数, a 6≡ 0 (mod p) に対して、x2 ≡ a (mod p) なる x ∈ Z が存在するかしないかによって
a
p
= 1, −1
とする。(Legendre 記号 )
69
定理 2.23
√
二次体 K( m) のイデアルの類の数は有限である。
√
これを K( m) の類数という。
定理 2.24
√
二次体 K( m) のイデアルの類全体の集合は群をなす。
証明
C1 , C2 を二つの類とする。C1 , C2 に属するある一定のイデアルを A1 , A2 とし、任意
のイデアルを B1 , B2 とすれば、B1 = ρA1 , B2 = σA2 より、B1 B2 = ρσA1 A2 とな
る。すなわち、B1 B2 は A1 A2 を含む一定の類 C3 に属する。このように C1 , C2 によっ
て定まる類 C3 を、C3 = C1 C2 と表すことにすると
• 任意の類 C1 , C2 , C3 に対して、(C1 C2 )C3 = C1 (C2 C3 )
• 主類 E, 任意の類 C に対して、EC = C
• 任意の類 C に対して、C に属する各イデアルの共役イデアルは一つの類をなし、
この類を C −1 と書くと CC −1 = E
となることが確かめられる。
証明終
これで準備は終わりです。
解の個数∼有限個か無限個か∼
3
ax2 + by 2 = n (a, b, n ∈ Z, 6= 0) の Z 解 (x, y) の個数が有限個か無限個かを考えま
す。
a, b, n を ak, bk, nk(k ∈ Z) に置き換えても同値なので、a と b は互いに素で、a > 0
であるとしておきます。
次の定理が成り立ちます。
定理 3.1
ax2 + by 2 = n (a, b, n ∈ Z, a > 0, b, n 6= 0, a と b は互いに素) の Z 解 (x, y) の個数
は、
(1) b > 0 のとき有限個 (2) b < 0 かつ −ab が平方数のとき有限個 (3) b < 0 かつ −ab が平方数でないとき 0 個または無限個 である。
70
定理の証明に入る前に補題を一つ用意します。この補題は (3) の証明に用います。
補題 3.2
平方数でない任意の自然数 m に対して、x2 − my 2 = 1 を満たす x, y ∈ N が存在する。
証明略
二次体による証明や連分数展開による証明が知られています。
では定理の証明に入りましょう。
定理 3.1 の証明
(1) a, b > 0 より、ax2 + by 2 > 0 なので、n < 0 のときは解なし。
r
n
となり、同様に a > 0
n > 0 のとき、b > 0 より ax2 = n − by 2 ≤ n なので |x| ≤
a
r
n
より |y| ≤
となる。したがって解は有限個。
b
(2) a と b は互いに素でかつ −ab が平方数なので、a と −b はともに平方数。
a = p2 , −b = q 2 (p, q ∈ N) とおくと、n = ax2 + by 2 = (px + qy)(px − qy) なので、
組 (px + qy, px − qy) として有り得るのは有限通り。
r−s
r+s
,y =
と定まるので、解は有限個。
px + qy = r, px − qy = s のとき、x =
2p
2q
2
2
(3) ax + by = n が解を持つとき、無限個の解があることを示せばよい。
(x0 , y0 ) が ax2 + by 2 = n の Z 解であるとする。x0 , y0 ≥ 0 としてよい。
√
√
ax20 +by02 = n ⇔ (ax0 )2 +aby02 = an ⇔ (ax0 +y0 −ab)(ax0 −y0 −ab) = an · · · (∗)
補題 3.2 より、t2 + abu2 = 1 なる t, u ∈ N (t > 1) がとれる。
√
√
このとき (t + u −ab)(t − u −ab) = 1 · · · (∗∗)
(∗) と (∗∗) を辺々かけて、
√
√
√
√
−ab)(t − u −ab) = an
(ax0 + y0 −ab)(t + u −ab)(ax0 − y0 √
√
⇔ atx0 − abuy0 + (aux0 + ty0 ) −ab atx0 − abuy0 − (aux0 + ty0 ) −ab = an
2
⇔ (a(tx0 − buy0 )) + ab(aux0 + ty0 )2 = an
⇔ a(tx0 − buy0 )2 + b(aux0 + ty0 )2 = n
よって (tx0 − buy0 , aux0 + ty0 ) も ax2 + by 2 = n の Z 解である。
したがって、(xk+1 , yk+1 ) = (txk − buyk , auxk + tyk ) (k = 0, 1, · · · ) により (xm , ym )
を定めると、全ての m に対して (xm , ym ) は ax2 + by 2 = n の Z 解である。
また、xk , yk ≥ 0 のとき、n 6= 0 より xk = yk = 0 となることはないので、t > 1 より
xk+1 = txk − buyk > xk , yk+1 = auxk + tyk > yk
よって (xm , ym ) は全て異なるので、解が無限個あることが示された。
証明終
71
解を持つ条件と解の個数
4
ax2 + by 2 = n が解を持つ条件と解の個数を、いろいろな場合について調べていき
ます。以下、a と b は互いに素で、a, b はどちらも平方因子を持たないとします。
4.1
a = 1 のときへの帰着
次が成り立ちます。
定理 4.1
a と b が互いに素で、a, b が平方因子を持たないとき、ax2 + by 2 = n の解の個数は
x2 + aby 2 = an の解の個数と等しい。
証明
at2 + bu2 = n (t, u ∈ Z) が成り立つとすると、(at)2 + abu2 = an より (at, u) は
x2 + aby 2 = an の解である。
逆に、v 2 +abw 2 = an (v, w ∈ Z) が成り立つとすると、v 2 は a の倍数であり、a は平方
v 2
1
+bw2 = (v 2 +abw 2 ) = n
因子を持たないので、v は a の倍数。また、このとき a
a
a
v となるので、 , w は ax2 + by 2 = n の解である。
a
以上より、ax2 + by 2 = n の解と x2 + aby 2 = an の解は (t, u) ↔ (at, u) により一対
一対応する。よって示された。
証明終
この定理により、x2 − my 2 = n (m ∈ Z, m は平方因子を持たない) について調べれば
よいことが分かります。ここから先は、最初に準備した二次体論を使います。
√
√
√
x2 − my 2 = n ⇔ (x + y m)(x − y m) = n より、αα = n となるような K( m) の
√
整数 α で、α = x + y m (x, y ∈ Z) の形であるものを求めればよいことになります。
√
この記事では K( m) の類数が 1 の場合と 2 の場合を考えます。
4.2
√
x2 − my 2 = n について∼K( m) の類数が 1 の場合∼
√
K( m) の類数が 1、すなわちイデアルが全て単項イデアルであるときを考えます。
このとき、(α) が素イデアル ⇔ αが素元 が成り立ちます。したがって、類数 1 の二
次体では素元分解の一意性が成り立ちます。
例えば、K(i) (類数 1) において、8 + i = (2 − i)(3 + 2i) は素元分解です。8 + i =
(1 + 2i)(2 − 3i) も素元分解ですが、2 − i ∼ 1 + 2i, 3 + 2i ∼ 2 − 3i となっています。
このように同伴数で置き換えた分解は同じと考えると、一意性が成り立つわけです。
72
m < 0 のとき
√
m < 0 のとき、K( m) の類数が 1 であるような m は
4.2.1
m = −1, −2, −3, −7, −11, −19, −43, −67, −163
の 9 個のみであることが知られています。
これらの m の値について、x2 − my 2 = n を考えていきましょう。
n < 0 のとき明らかに解はないので、以下 n > 0 とします。
定理 4.2
x2 + y 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件は、n の素因数分解
n = 2a pe11 · · · pekk q1f1 · · · qlfl (p1 , · · · , pk ≡ 1
(mod 4), q1 , · · · , ql ≡ 3 (mod 4))
において f1 , · · · , fl がすべて偶数であることであり、このとき解の個数は 4(e1 +
1) · · · (ek + 1) 個である。
証明
K(i) の整数は x + yi(x, y ∈ Z) なので、x2 + y 2 = n が解を持つことは αα = n なる
K(i) の整数 α が存在することと同値。
p
: 奇素数に対して、
−1
= 1 ⇔ p ≡ 1 (mod 4),
p −1
= −1 ⇔ p ≡ 3 (mod 4)
p
なので ( このことの証明は省略 ) 定理 2.21 より、K(i) において
第一種 : p ≡ 1 (mod 4) なる奇素数 p について、p = ππ (π : 素元)
第二種 : p ≡ 3 (mod 4) なる奇素数 p について、p は素元
第三種 : p = 2 について、2 = (1 + i)(1 − i) ∼ (1 + i)2
となる。
したがって n を素元分解すると、
n =
∼
(1 + i)a (1 − i)a π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
(1 + i)2a π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
となる。
よって、αα = n なる K(i) の整数 α が存在するとき、β | α ⇔ β | α に注意して
• 1 + i ∼ 1 − i より ord1+i α = ord1+i α であり2 、ord1+i α + ord1+i α = 2a なの
2
で、ord1+i α = ord1+i α = a · · · (1)
α が π で最大 N 回割れるとき ordπ α = N と書く。( オーダー )
73
• j = 1, · · · , k について、ordπj α = ordπj α, ordπj α+ordπj α = ej より、ordπj α+
ordπj α = ej · · · (2)
• r = 1, · · · , l について、ordqr α = ordqr α より、fr = ordqr α + ordqr α =
2ordqr α · · · (3)
となる。(3) より f1 , · · · , fl はすべて偶数である。
逆に f1 , · · · , fl がすべて偶数であるとき
f1
fl
αα = n ⇔ α ∼ (1 + i)a π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 (t1 , · · · , tk ∈ Z, 0 ≤ tj ≤ ej )
となる。(⇒: (1), (2), (3) より , ⇐: K(i) の単数が ±1, ±i であることより )
0 ≤ tj ≤ ej より t1 , · · · tk のとり方は (e1 + 1) · · · (ek + 1) 通りで、素元分解の一意性
f1
fl
より (e1 + 1) · · · (ek + 1) 個の (1 + i)a π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 はどの 2 つ
も互いに同伴数でない。
K(i) の単数は 4 個あるので、αα = n を満たす α の個数は 4(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個。
よって解の個数は 4(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個である。
以上より示された。
証明終
以下の証明で、この定理 4.2 の証明と同様な部分はとばして書くことがあります。
定理 4.3
x2 + 2y 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件は、n の素因数分解
n = 2a pe11 · · · pekk q1f1 · · · qlfl (p1 , · · · , pk ≡ 1, 3 (mod 8), q1 , · · · , ql ≡ 5, 7 (mod 8))
において f1 , · · · , fl がすべて偶数であることであり、このとき解の個数は 2(e1 +
1) · · · (ek + 1) 個である。
証明
√
√
K( −2) の整数は x + y −2(x, y ∈ Z) なので、x2 + 2y 2 = n が解を持つことは
√
αα = n なる K( −2) の整数 α が存在することと同値。
√
定理 2.21 より、K( −2) において
第一種 : p ≡ 1, 3 (mod 8) なる奇素数 p について、p = ππ (π : 素元)
第二種 : p ≡ 5, 7 (mod 8) なる奇素数 p について、p は素元
√
√
√
第三種 : p = 2 について、2 = ( −2)(− −2) ∼ ( −2)2
となる。
したがって n を素元分解すると、
√
√
n = ( −2)a (− −2)a π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
√
∼ ( −2)2a π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
74
となる。
√
よって、αα = n なる K( −2) の整数 α が存在するとき f1 , · · · , fl はすべて偶数であ
る。
逆に f1 , · · · , fl がすべて偶数であるとする。このとき
fl
f1
√
αα = n ⇔ α ∼ ( −2)a π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 (t1 , · · · , tk ∈ Z, 0 ≤ tj ≤ ej )
となる。
√
t1 , · · · , tk のとり方は (e1 +1) · · · (ek +1) 通りで、K( −2) の単数は 2 個あるので、αα =
n を満たす α の個数は 2(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個。よって解の個数は 2(e1 + 1) · · · (ek + 1)
個である。
以上より示された。
証明終
定理 4.4
x2 + 3y 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件は、n の素因数分解
n = 3a pe11 · · · pekk q1f1 · · · qlfl (p1 , · · · , pk ≡ 1
(mod 3), q1 , · · · , ql ≡ 2 (mod 3))
において f1 , · · · , fl がすべて偶数であることであり、このとき解の個数は n が奇数な
らば 2(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個、n が偶数ならば 6(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個である。
証明
√
√
x + y −3
(x ≡ y (mod 2)) なので、x2 + 3y 2 = n が解を持つこ
K( −3) の整数は
2
√
√
とは、αα = n なる K( −3) の整数 α であって α = x + y −3 (x, y ∈ Z) の形であ
るものが存在することと同値。
√
定理 2.21 より、K( −3) において
第一種 : p ≡ 1 (mod 3) なる奇素数 p について、p = ππ (π : 素元)
第二種 : p ≡ 2 (mod 3) なる奇素数 p と p = 2 について、p は素元
√
√
√
第三種 : p = 3 について、3 = ( −3)(− −3) ∼ ( −3)2
となる。
したがって n を素元分解すると、
√
√
n = ( −3)a (− −3)a π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
√
∼ ( −3)2a π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
となる。
√
よって、αα = n なる K( −3) の整数 α が存在するとき f1 , · · · , fl はすべて偶数であ
る。
75
逆に f1 , · · · , fl がすべて偶数であるとする。このとき fl
f1
√
αα = n ⇔ α ∼ ( −3)a π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 (t1 , · · · , tk ∈ Z, 0 ≤ tj ≤ ej )
となる。t1 , · · · , tk のとり方は (e1 + 1)√· · · (ek + 1) 通りある。
√
√
√
x + y −3
−1 + −3 −1 − −3
,±
の 6 個なので、
(x ≡
ここで、K( −3) の単数は ±1, ±
2
2
2
y (mod 2)) の同伴数は
√
√
√
x + y −3 −x − 3y + (x − y) −3 −x + 3y − (x + y) −3
,
,
,
2
4
4
√
√
√
−x − y −3 x + 3y − (x − y) −3 x − 3y + (x + y) −3
,
,
2
4
4
の 6 個である。
x ≡ y (mod 2) より、(x, y) は mod 4 で (1, 1), (1, 3), (3, 1), (3, 3), (0, 0), (0, 2), (2, 0), (2, 2)
のいずれかであり
• (x, y) が mod 4 で (1, 1), (1, 3), (3, 1), (3, 3), (0, 2), (2, 0) のとき、x2 + 3y 2 ≡ 4
x2 + 3y 2
は奇数である。また、このとき
(mod 8) より、上の 6 個の数のノルム
4
√
上の 6 個の数のうち x + y −3 (x, y ∈ Z) の形のものは 2 個。
• (x, y) が mod 4 で (0, 0), (2, 2) のとき、x2 + 3y 2 ≡ 0 (mod 8) より、上の 6 個
x2 + 3y 2
の数のノルム
は偶数である。また、このとき上の 6 個の数すべてが
4
√
x + y −3 (x, y ∈ Z) の形である。
√
√
したがって、αα = n なる K( −3) の整数 α であって α = x + y −3 (x, y ∈ Z)
の形であるものの個数は、n が奇数のとき 2(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個、n が偶数のとき
6(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個である。
よって解の個数は n が奇数のとき 2(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個、n が偶数のとき 6(e1 +
1) · · · (ek + 1) 個である。
以上より示された。
証明終
定理 4.5
x2 + 7y 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件は、n の素因数分解
n = 2a 7b pe11 · · · pekk q1f1 · · · qlfl (p1 , · · · , pk ≡ 1, 2, 4 (mod 7), q1 , · · · , ql ≡ 3, 5, 6 (mod 7))
において a 6= 1 かつ f1 , · · · , fl がすべて偶数であることであり、このとき解の個数は
a = 0 ならば 2(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個、a ≥ 2 ならば 2(a − 1)(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個で
ある。
76
証明
√
√
x + y −7
K( −7) の整数は
(x ≡ y (mod 2)) なので、x2 + 7y 2 = n が解を持つこ
2
√
√
とは、αα = n なる K( −7) の整数 α であって α = x + y −7 (x, y ∈ Z) の形であ
るものが存在することと同値。
√
定理 2.21 より、K( −7) において
第一種 : p ≡ 1, 2, 4 (mod 7) なる奇素数 p と p = 2 について、p = ππ (π : 素元)
第二種 : p ≡ 3, 5, 6 (mod 7) なる奇素数 p について、p は素元
√
√
√
第三種 : p = 7 について、7 = ( −7)(− −7) ∼ ( −7)2
となる。
1+
√
−7 1 −
·
√
−7
と素元分解される。
2
2
したがって n を素元分解すると、
√ a √ a
√
√
1 + −7
1 − −7
n =
( −7)b (− −7)b π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
2
2
√ a √ a
√
1 + −7
1 − −7
∼
( −7)2b π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl
2
2
2 は第一種の素数で、2 =
となる。
√
よって、αα = n なる K( −7) の整数 α が存在するとき f1 , · · · , fl はすべて偶数であ
る。
逆に f1 , · · · , fl がすべて偶数であるとする。このとき αα = n √ a−t
√ t fl
f1
√
1 − −7
1 + −7
( −7)b π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2
⇔α=±
2
2
(t, t1 , · · · , tk ∈ Z, 0 ≤ t ≤ a, 0 ≤ tj ≤ ej ) となる。
√ a−t
√ t fl
f1
√
1 − −7
1 + −7
( −7)b π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 ,
α=±
2
2
fl
f1
√
t
β = ( −7)b π11 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 とおく。
ββ = 7b pe11√· · · pekk q1f1 · · · qlfl より ββ は奇数。
x + y −7
β=
(x ≡ y (mod 2)) と書けるが、x, y が奇数であるとすると x2 +7y 2 ≡ 0
2
x2 + 7y 2
は偶数となり矛盾するので、x, y は偶数。
(mod 8) より ββ =
4
√
よって β = u + v −7 (u, v ∈ Z) の形である。
ββ = u2 + 7v 2 が奇数なので u, v はどちらか一方が奇数、もう一方が偶数である。
√
a = 0 のとき、α = ±β より α = x + y −7 (x, y ∈ Z) の形で、t1 , · · · , tk のとり方よ
り α は 2(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個あるので、解の個数は 2(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個。
以下
√
a√≥ 1 とする。
r
1 + −7
x + y −7
(r ∈ N) が
(x, y : 奇数, x ≡ y (mod 4)) の形であることを
2
2
r に関する数学的帰納法により示す。
77
(1) r = 1 のとき明らか。
(2) r = j のとき成り立つと仮定する。
√
√ j
x + y −7
1 + −7
=
とすると、(x, y) は mod 4 で (1, 1), (3, 3) のいずれか。
2
2
√
√ √ j+1 √ √
x−7y
+ x+y
−7
1 + −7
1 + −7
x + y −7
x − 7y + (x + y) −7
2
2
=
=
=
2
2
2
4
2
x − 7y x + y
,
はとも
であり、(x, y) が mod 4 で (1, 1), (3, 3) のいずれかであるので、
2
2
に奇数。
x − 7y
x+y
x − 7y x + y
−
= −4y ≡ 0 (mod 4) より
≡
(mod 4)
また
2
2
2
2
よって r = j + 1 のときも成り立つ。
(1), (2) より示された。
√
√ r
x + y −7
1 − −7
同様にして、
(r ∈ N) は
(x, y : 奇数, x ≡ −y (mod 4)) の
2
2
形である。
したがって
√ √
√
x + y −7
xu − 7yv + (xv + yu) −7
(u+v −7) = ±
2
2
√
x + y −7
(x, y : 奇数) の形である。
となり、x, y, u, v の偶奇より α は
2
√ t √ a−t
√
√
1 + −7
1 − −7
x + y −7 x′ + y ′ −7
• 1 ≤ t ≤ a−1 のとき
=
·
=
2
2
2
2
√
xx′ − 7yy ′ + (xy ′ + x′ y) −7
となり、x, y, x′ , y ′ : 奇数, x ≡ y, x′ ≡ −y ′ (mod 4)
4
√ a−t
√ t √
1 − −7
1 + −7
より
は x + y −7 (x, y ∈ Z) の形であるので、α
2
√2
は x + y −7 (x, y ∈ Z) の形である。
√
a = 1 のとき、t = 0, 1 なので α = x + y −7 (x, y ∈ Z) となる α は存在しない。
√
a ≥ 2 のとき、α = x + y −7 (x, y ∈ Z) となるのは 1 ≤ t ≤ a − 1 のときで、このと
• t = 0, a のとき α = ±
き t, t1 , · · · , tk のとり方より α の個数は 2(a − 1)(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個。よって解の
個数は 2(a − 1)(e1 + 1) · · · (ek + 1) 個である。
以上より示された。
証明終
√
√
x+y m
m = −11, −19, −43, −67, −163 のとき、K( m) の整数は
(x ≡ y (mod 2))
2
です。
√
K( m) において、第一種の素数 p は p = ππ と素元分解されますが、この分解におい
√
て π = x + y m (x, y ∈ Z) であるときすなわち p = x2 − my 2 となるような x, y ∈ Z
が存在するとき、p を良い素数ということにします。( これは筆者の造語です。他で
は通用しません。)
78
定理 4.6
m = −11, −19, −43, −67, −163 とする。
x2 − my 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件は、n の素因数分解
e
e
j+1
n = pe11 · · · pj j pj+1
· · · pekk q1f1 · · · qlfl (−m)a (p1 , · · · , pj : 良い素数でない第一種の素
数, pj+1 , · · · , pk : 良い素数, q1 , · · · , ql : 第二種の素数)
において、[n が偶数かつ f1 , · · · , fl がすべて偶数] または [n が奇数かつ f1 , · · · , fl がす
べて偶数かつ e1 + · · · + ej ≥ 2] であることである。
定理の証明の前に補題を一つ用意します。
補題 4.7
m ≡ 1 (mod 4) とする。
x1 , y1 , x2 , y2 が奇数のとき
√
√
√
√
x1 + y 1 m x2 + y 2 m x1 + y 1 m x2 − y 2 m
·
,
·
2
2
2
2
√
√
x+y m
(x, y : 奇数) の形で、もう一方が x + y m (x, y ∈ Z) の
のどちらか一方が
2
形である。
証明 √
√
√
x1 + y 1 m x2 + y 2 m
x1 x2 + my1 y2 + (x1 y2 + y1 x2 ) m
·
=
,
2 √
2 √
4
√
x1 x2 − my1 y2 − (x1 y2 − y1 x2 ) m
x1 + y 1 m x2 − y 2 m
·
=
2
2
4
x1 x2 , y1 y2 , x1 y2 , y1 x2 はすべて奇数で、(x1 x2 )(y1 y2 ) = (x1 y2 )(y1 x2 ) なので、
(x1 x2 , y1 y2 , x1 y2 , y1 x2 ) は mod 4 で (1, 1, 1, 1), (1, 1, 3, 3), (1, 3, 1, 3), (1, 3, 3, 1), (3, 1, 1, 3),
(3, 1, 3, 1), (3, 3, 1, 1), (3, 3, 3, 3) のいずれか。
それぞれの場合について分子を mod 4 でみることにより示される。
証明終
定理 4.6 の証明
√
√
x+y m
(x ≡ y (mod 2)) なので、x2 − my 2 = n が解を持つこと
K( m) の整数は
2
√
√
は、αα = n なる K( m) の整数 α であって α = x + y m (x, y ∈ Z) の形であるも
のが存在することと同値。
n の素元分解は √
√
n = π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl ( m)a (− m)a
√
∼ π1e1 π1 e1 · · · πkek πk ek q1f1 · · · qlfl ( m)2a
である。
√
よって、αα = n なる K( m) の整数 α が存在するとき f1 , · · · , fl はすべて偶数であ
79
る。
逆に f1 , · · · , fl がすべて偶数であるとする。このとき αα = n
fl √
f1
⇔ α = ±π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 ( m)a (t1 , · · · , tk ∈ Z, 0 ≤ ti ≤ ei ) と
なる。
fl √
f1
α = ±π1t1 π1 e1 −t1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 ( m)a ,
t
β = π1t1 π1 e1 −t1 · · · πjj πj ej −tj ,
fl √
f1
tj+1
πj+1 ej+1 −tj+1 · · · πktk πk ek −tk q12 · · · ql 2 ( m)a とする。
γ = ±πj+1
√
√
πj+1 , · · · , πk はすべて x+y m (x, y ∈ Z) の形であるので、γ = X +Y m (X, Y ∈ Z)
と書ける。
√
x+y m
(x, y : 奇数) であるとすると、m ≡ 5 (mod 8)
2
2
2
√
x − my
は奇数となり矛盾するので、α = x + y m (x, y ∈ Z) の形であ
より αα =
4
る。よって x2 − my 2 = n は解を持つ。
n = αα が奇数のとき、(ββ)(γγ) = αα = n より γγ = X 2 − mY 2 は奇数なので、
n = αα が偶数のとき、α =
X, Y はどちらか一方が奇数、もう一方が偶数である。
√
x+y m
(x, y :
e1 +· · ·+ej = 1 すなわち j = 1, e1 = 1 のとき、t1 = 0, 1 であり、β =
2
√
xX + myY + (xY + yX) m
奇数) となるので、α = βγ =
となり、x, y, X, Y の偶
2
√
x+y m
奇より α は
(x, y : 奇数) の形である。よって x2 − my 2 = n は解を持たな
2
い。
e1 + · · · + ej ≥ 2 のとき x2 − my 2 = n が解を持つことを示す。 √
x+y m
t
(x, y : 奇数)
まず、e1 + · · · + ej ≥ 1 のとき、π1t1 π1 e1 −t1 · · · πjj πj ej −tj が
2
の形になるような t1 , · · · , tj がとれることを e1 + · · · + ej に関する数学的帰納法で示
す。
(1) e1 + · · · + ej = 1 のとき このとき j = 1, e1 = 1 で、π1 は
ばよい。
√
x+y m
(x, y : 奇数) の形なので、t1 = 1 とすれ
2
(2) e1 + · · · + ej = s − 1 のとき成り立つと仮定する。
e1 + · · · + ej = s のとき、e1 + · · · + ej−1 + (ej − 1) = s −√
1 なので、帰納法の仮定よ
m
x
+
y
tj−1
t
り π1t1 π1 e1 −t1 · · · πj−1
πj−1 ej−1 −tj−1 πjj πj ej −1−tj が
(x, y : 奇数) の形とな
2
るような t1 √
, · · · , tj がとれる。
x+y m
(x, y : 奇数) の形なので、補題 4.7 より
πj は
2
t
t
t
t
j−1
πj−1 ej−1 −tj−1 πjj πj ej −1−tj πj ,
π1t1 π1 e1 −t1 · · · πj−1
j−1
π1t1 π1 e1 −t1 · · · πj−1
πj−1 ej−1 −tj−1 πjj πj ej −1−tj πj
80
√
x+y m
(x, y : 奇数) の形である。
2
よって e1 + · · · + ej = s のときも成り立つ。
のどちらかは
(1), (2) より示された。
e1 + · · · + ej ≥ 2 のとき、e1 + · · · + ej−1 + (ej − 1) ≥ 1 なので
t
t
j−1
πj−1 ej−1 −tj−1 πjj πj ej −1−tj
π1t1 π1 e1 −t1 · · · πj−1
√
x+y m
(x, y : 奇数) の形になるような t1 , · · · , tj がとれる。
2 √
x+y m
πj は
(x, y : 奇数) の形なので、補題 4.7 より
2
が
t
t
t
t
j−1
πj−1 ej−1 −tj−1 πjj πj ej −1−tj πj ,
π1t1 π1 e1 −t1 · · · πj−1
j−1
π1t1 π1 e1 −t1 · · · πj−1
πj−1 ej−1 −tj−1 πjj πj ej −1−tj πj
√
√
のどちらかは x + y m (x, y ∈ Z) の形である。すなわち β が x + y m (x, y ∈ Z) の
形になるような t1 , · · · , tj がとれる。
√
したがって、αα = n なる α であって α = x + y m (x, y ∈ Z) の形であるものが存
在する。よって x2 − my 2 = n は解を持つ。
証明終
これで m < 0 のときは終わりです。
4.2.2
m > 0 のとき
m > 0 のとき、定理 3.1 より、x2 − my 2 = n が解を持つならばそれは無限個あり
ます。解を持つ条件を調べましょう。
√
√
m ≡ 2, 3 (mod 4) のとき、K( m) の整数は x + y m (x, y ∈ Z) で、次が成り立ち
ます。
定理 4.8
√
m ≡ 2, 3 (mod 4) とし、K( m) の基本単数を ǫ0 とする。
e
n の素因数分解を n = pe11 · · · pj j q1f1 · · · qkfk r1g1 · · · rlgl (p1 , · · · , pj : 第一種, q1 , · · · , qk :
第二種, r1 , · · · , rl : 第三種) とすると • N (ǫ0 ) = 1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n のどちらか一方のみが Z 解
を持つ ⇔ f1 , · · · , fk がすべて偶数
• N (ǫ0 ) = −1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n がどちらも Z 解を持つ
⇔ f1 , · · · , fk がすべて偶数
81
が成り立つ。
証明
√
√
K( m) の整数は x+y m (x, y ∈ Z) なので、x2 −my 2 = n が解を持つことは αα = n
√
なる K( m) の整数 α が存在することと同値。
第一種の素数 p は p = ǫππ (ǫ : 単数, π : 素元) と書けて、N (π) = ±p なので p = ±ππ
である。
第三種の素数 p は p = ǫπ 2 (ǫ : 単数, π : 素元) と書けて、N (π) = ±p なので p = ±ππ
である。
よって、n の素元分解は e
n = ±π1e1 π1 e1 · · · πj j πj ej q1f1 · · · qkfk ρg11 ρ1 g1 · · · ρgl l ρl gl
と書ける。
√
したがって、αα = ±n なる K( m) の整数 α が存在するとき f1 , · · · , fk は偶数であ
る。
逆に f1 , · · · , fk が偶数であるとする。
このとき、αα = ±n ならば
f1
t
fk
α = ǫπ1t1 π1 e1 −t1 · · · πjj πj ej −tj q12 · · · qk2 ρu1 1 ρ1 g1 −u1 · · · ρul l ρl gl −ul (ǫ : 単数)
であり
e
αα = ǫǫπ1e1 π1 e1 · · · πj j πj ej q1f1 · · · qkfk ρg11 ρ1 g1 · · · ρgl l ρl gl
である。
N
N (ǫ0 ) = 1 のとき、ǫǫ = ǫN
= (ǫ0 ǫ0 )N = 1 より
0 ǫ0
e
αα = π1e1 π1 e1 · · · πj j πj ej q1f1 · · · qkfk ρg11 ρ1 g1 · · · ρgl l ρl gl
√
である。よって、αα = n, αα = −n のどちらか一方のみが K( m) での整数解を持
つ。
N (ǫ0 ) = −1 のとき
ǫ = ǫ0 とすると、ǫ0 ǫ0 = −1 より
e
αα = −π1e1 π1 e1 · · · πj j πj ej q1f1 · · · qkfk ρg11 ρ1 g1 · · · ρgl l ρl gl
ǫ = ǫ20 とすると、ǫǫ = ǫ20 ǫ0 2 = (ǫ0 ǫ0 )2 = 1 より
e
αα = π1e1 π1 e1 · · · πj j πj ej q1f1 · · · qkfk ρg11 ρ1 g1 · · · ρgl l ρl gl
82
√
よって、αα = n, αα = −n はどちらも K( m) での整数解を持つ。
以上より示された。
証明終
例 x2 − 2y 2 = n
√
√
√
K( 2) の基本単数は 1 + 2 で、N (1 + 2) = −1 である。
x2 − 2y 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件は、n の素因数分解において p ≡ 3, 5
(mod 8) なる素数がすべて偶数冪になっていることである。
√
x+y m
(x ≡ y (mod 2)) です。
m ≡ 1 (mod 4) のとき K( m) の整数は
2
√
√
√
x+y m
K( m) の基本単数が
(x, y : 奇数) の形のときと x + y m (x, y ∈ Z) の形
2
のときに分けて考えましょう。
√
定理 4.9
√
√
x+y m
(x, y : 奇数) の形のとき、定
m ≡ 1 (mod 4) で K( m) の基本単数 ǫ0 が
2
理 4.8 と同様の主張が成り立つ。
証明
定理 4.8 の証明と同様にして
√
• N (ǫ0 ) = 1 のとき αα = n, αα = −n のどちらか一方のみが K( m) での整数
解を持つ ⇔ f1 , · · · , fk がすべて偶数
√
• N (ǫ0 ) = −1 のとき αα = n, αα = −n がどちらも K( m) での整数解を持つ
⇔ f1 , · · · , fk がすべて偶数
が示せる。
√
したがって、
「x2 − my 2 = n が Z 解を持つ ⇔ αα = n が K( m) での整数解を持つ」
が成り立つことを示せばよい。
⇒ は明らか。
√ ⇐ を示す。
√
x+y m
α=
(x, y : 奇数) に対して、N (ǫ) = 1 でかつ ǫα が x + y m (x, y ∈ Z) の
2
形となるような単数 ǫ √
がとれることを示せばよい。
t+u m
基本単数を ǫ0 =
(t, u : 奇数) とおくと
2
√
√
t2 +mu2
+ tu m
t2 + mu2 + 2tu m
2
2
ǫ0 =
=
4
2
√
a+b m
であり、t, u は奇数なので ǫ20 =
(a, b : 奇数) とおける。
2
√
x+y m
このとき α =
(x, y : 奇数) に対して
2
√
ax + mby + (bx + ay) m
ǫ20 α =
4
83
ǫ0 2 α =
√
ax − mby − (bx − ay) m
4
√
であり、a, b, x, y : 奇数, m ≡ 1 (mod 4) より、ǫ20 α, ǫ0 2 α のどちらかは x+y m (x, y ∈
Z) の形である。
また N (ǫ20 ) = N (ǫ0 2 ) = N (ǫ0 )2 = 1 である。
よって示された。
証明終
先ほど定義したように、第一種の素数 p に対して p = x2 − my 2 なる x, y ∈ Z が存在
するとき、p を良い素数といいます。
定理 4.10
√
√
m ≡ 1 (mod 4) で K( m) の基本単数 ǫ0 が x + y m (x, y ∈ Z) の形であるとする。
(1) m ≡ 1 (mod 8) のとき
e
n の素因数分解を n = 2a pe11 · · · pj j q1f1 · · · qkfk r1g1 · · · rlgl (p1 , · · · , pj : 2 以外の第一種
, q1 , · · · , qk : 第二種, r1 , · · · , rl : 第三種) とすると
• N (ǫ0 ) = 1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n のどちらか一方のみが Z 解
を持つ ⇔ a 6= 1 かつ f1 , · · · , fk がすべて偶数
• N (ǫ0 ) = −1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n がどちらも Z 解を持つ
⇔ a 6= 1 かつ f1 , · · · , fk がすべて偶数
が成り立つ。
(2) m ≡ 5 (mod 8) のとき
e
e
i+1
n の素因数分解を n = pe11 · · · pei i pi+1
· · · pj j q1f1 · · · qkfk r1g1 · · · rlgl (p1 , · · · , pi : 良い素
数でない第一種の素数, pi+1 , · · · , pj : 良い素数, q1 , · · · , qk : 第二種, r1 , · · · , rl : 第三
種) とすると
• N (ǫ0 ) = 1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n のどちらか一方のみが Z 解を
持つ ⇔ [n が偶数かつ f1 , · · · , fk がすべて偶数] または [n が奇数かつ f1 , · · · , fk
がすべて偶数かつ e1 + · · · + ei ≥ 2]
• N (ǫ0 ) = −1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n がどちらも Z 解を持つ
⇔ [n が偶数かつ f1 , · · · , fk がすべて偶数] または [n が奇数かつ f1 , · · · , fk がす
べて偶数かつ e1 + · · · + ei ≥ 2]
が成り立つ。
証明略
今までの証明と同じような手法を用いればできるので、やってみてください。
これで類数 1 の場合は終わりです。
84
4.3
√
x2 − my 2 = n について∼K( m) の類数が 2 の場合∼
類数 2 のときは類数 1 のときのような素元分解ができないので、イデアルの素イデ
アル分解を考えます。
類数 2 のとき、イデアル類群は {E, A} (E : 主類, A : 単項イデアルでないイデアルの
なす類) で、A2 = E となっています。すなわち、単項イデアルでないイデアル 2 つ
の積は単項イデアルになります。
そこで、定理 2.21 において、第一種と第三種をさらに 2 タイプに分けて
第一種 −A (p) = P P , P : 単項イデアル
第一種 −B (p) = P P , P : 単項イデアルでないイデアル
第二種 (p) : 素イデアル
第三種 −A (p) = P 2 , P : 単項イデアル
第三種 −B (p) = P 2 , P : 単項イデアルでないイデアル
とします。
√
x+y m
m ≡ 1 (mod 4) の場合、αα = n なる α が
(x, y : 奇数) の形であるか
2
√
x + y m (x, y ∈ Z) の形であるかを判定するのが困難なので、以下 m ≡ 2, 3 (mod 4)
の場合のみを考えます。
m < 0 のとき、次が成り立ちます。
定理 4.11
m < 0, m ≡ 2, 3 (mod 4), n > 0 とする。
x2 − my 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件は、n の素因数分解 e
n = ua1 1 · · · uahh v1b1 · · · vibi pe11 · · · pj j q1f1 · · · qkfk r1g1 · · · rlgl (p1 , · · · , pj : 第一種−A, q1 , · · · , qk :
第一種 − B, r1 , · · · , rl : 第二種, u1 , · · · , uh : 第三種 − A, v1 , · · · , vi : 第三種 − B) に
おいて b1 + · · · + bi + f1 + · · · + fk が偶数かつ g1 , · · · , gl がすべて偶数であることで
あり、このとき解の個数は 2(e1 + 1) · · · (ej + 1)(f1 + 1) · · · (fk + 1) 個である。
証明には次の補題を用います。
補題 4.12
√
類数 2 の K( m) において、単項イデアルでないイデアル偶数個の積は単項イデアル
であり、奇数個の積は単項イデアルでないイデアルである。
証明
イデアル類群 {E, A} において EA = A, A2 = E となっていることから示せる。
証明終
85
定理 4.11 の証明
n > 0 より αα ∼ n ⇔ αα = n なので、αα = n ⇔ (α)(α) = (n)
(n) を素イデアル分解すると
e1
e
ej
f1
s
ej −sj
fk
(n) = U12a1 · · · Uh2ah V12b1 · · · Vi2bi P1e1 P1 · · · Pj j Pj Qf11 Q1 · · · Qfkk Qk (r1 )g1 · · · (rl )gl
なので、(α)(α) = (n) なる α が存在するとき g1 , · · · , gl はすべて偶数であり
(α) = U1a1 · · · Uhah V1b1 · · · Vibi P1s1 P1
e1 −s1
· · · Pj j Pj
Qt11 Q1
f1 −t1
· · · Qtkk Qk
fk −tk
(r1 )
g1
2
gl
· · · (rl ) 2
である。
e1 −s1
U1a1 · · · Uhah P1s1 P1
ので単項イデアル。
s
· · · Pj j Pj
V1b1 · · · Vibi Qt11 Q1
(r1 )
f1 −t1
g1
2
gl
· · · (rl ) 2 は単項イデアルいくつかの積な
fk −tk
は単項イデアル。
· · · Qtkk Qk
fk −tk
tk
は単項イデアルでないイデアル b1 + · · · + bi +
· · · Qk Qk
よって V1b1 · · · Vibi Qt11 Q1
f1 −t1
ej −sj
f1 + · · · + fk 個の積なので、補題 4.12 より b1 + · · · + bi + f1 + · · · + fk は偶数。
逆に b1 + · · · + bi + f1 + · · · + fk が偶数かつ g1 , · · · , gl がすべて偶数であるとき、
U1a1 · · · Uhah V1b1 · · · Vibi P1s1 P1
は単項イデアルであり
(α)(α) = (n)
e1 −s1
s
· · · Pj j Pj
⇔ (α) = U1a1 · · · Uhah V1b1 · · · Vibi P1s1 P1
となる。
ej −sj
e1 −s1
Qt11 Q1
s
· · · Pj j Pj
f1 −t1
ej −sj
· · · Qtkk Qk
Qt11 Q1
f1 −t1
fk −tk
(r1 )
· · · Qtkk Qk
g1
2
fk −tk
s1 , · · · sj , t1 , · · · , tk のとり方は (e1 + 1) · · · (ej + 1)(f1 + 1) · · · (fk + 1) 通りで、単数
は 2 つなので、α は 2(e1 + 1) · · · (ej + 1)(f1 + 1) · · · (fk + 1) 個ある。よって解の個
数は 2(e1 + 1) · · · (ej + 1)(f1 + 1) · · · (fk + 1) 個である。
証明終
例 x2 + 5y 2 = n
√
K( −5) は類数 2
x2 + 5y 2 = n が Z 解をもつための必要十分条件は、n の素因数分解
e
n = 5a 2b pe11 · · · pj j q1f1 · · · qkfk r1g1 · · · rlgl (p1 , · · · , pj ≡ 1, 9 (mod 20), q1 , · · · , qk ≡ 3, 7
(mod 20), r1 , · · · , rl ≡ 11, 13, 17, 19 (mod 20)) において b + f1 + · · · + fk が偶数かつ g1 , · · · , gl がすべて偶数であることであり、こ
のとき解の個数は 2(e1 + 1) · · · (ej + 1)(f1 + 1) · · · (fk + 1) 個である。
m > 0 のとき、次が成り立ちます。
定理 4.13
√
m > 0, m ≡ 2, 3 (mod 4) とし、K( m) の基本単数を ǫ0 とする。
n の素因数分解を定理 4.11 と同じようにおくと
• N (ǫ0 ) = 1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n のどちらか一方のみが Z 解
を持つ ⇔ b1 + · · · + bi + f1 + · · · + fk が偶数かつ g1 , · · · , gl がすべて偶数
86
gl
· · · (rl ) 2
(r1 )
g1
2
g
· · · (rl ) 2
• N (ǫ0 ) = −1 のとき x2 − my 2 = n, x2 − my 2 = −n がどちらも Z 解を持つ
⇔ b1 + · · · + bi + f1 + · · · + fk が偶数かつ g1 , · · · , gl がすべて偶数
が成り立つ。
証明略
これも今までの証明と同じような手法でできます。
類数 2 の場合はこれで終わりです。
5
最後に
√
この記事で扱った K( m) の類数が 1, 2 の場合だけをみても分かるように、x2 −
my 2 = n が Z 解を持つための必要十分条件を求めるという問題には、それぞれの m
の値によって大きな違いがでてきます。しかも類数が大きくなると、イデアル類群の
構造も複雑になるため、積が単項イデアルであるかどうかを判定するのが困難になっ
てしまいます。扱っている問題の性質上、統一的な議論をすることができなかったの
が少々残念ですが、今回この問題を考えてみて、数論に対してより興味を持つように
なりました。これからもっと勉強していきたいと思います。
いくつか参考文献を挙げておきます。この記事を読んで数論に興味を持たれた方は是
非読んでみてください。壮大な世界が広がっています (笑)
初等整数論講義(高木貞治 著
共立出版)
数論 I(加藤和也, 黒川信重, 斎藤毅 著
岩波書店)
質問・感想がある方は、是非 n [email protected] までメールください。
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました!
87
整域について
高校3年2組32番 二枝 翔司
はじめに
本日は数学研究部にお越しいただき、ありがとうございます。
本文では、まず群や環について述べて整域を定義した後、単項イデアル整
域や一意分解整域について述べ、それらの関連について書いていこうと思
っています。
初めは定義ばかりで少々退屈かもしれませんが、どうか最後までおつきあ
いください。
(1)群について
まず、整域を考える上で必要な群や環の概念を導入しようと思いま
す。この章で群、次の章で環を定義します。
空ではない集合 S を考え、S の任意の2元 a, b に対し S の元 c を
対応させる法則を2項演算といいます。
記号では
S×S
(a, b)
→
→
S
a・b=c
と書きます。和や積などの概念がこれにあたります。又、a・b
を ab と書くこともあります。
群を定義しましょう。
定義 1.1
G を空でない集合とし、2項演算
G×G →
G
96
(a, b) → a・b=c
が与えられており、次の3条件を満たすとき、G を群
(group)という。
(G1)結合法則
任意の a,b,c∈Gに対し、
a・
(b・c)=(a・b)
・c
が成り立つ
(G2)単位元の存在
e∈Gが存在して、任意の a∈Gに対し、
e・a=a・e=a
が成り立つ。この e をGの単位元という。
(G3)逆元の存在
任意の a∈Gに対し、a に対応した元x∈Gが
存在し、
ax=xa=e
が成り立つ。このxを a の逆元という。
さらに群Gが次の条件を満たすとき、Gを可換群という。
(G4)交換法則
任意の a,b∈Gに対し、ab=ba が成り立つ。
これで群が定義されました。いくつか命題を証明しておきましょ
う。
命題 1.2 群Gに対して単位元は1つしかない
証明 条件(G2)で保障された単位元 e のほかに、もうひとつ
単位元 e’が存在したとすると、任意の元 a に対して、e・
a=a・e=a e’
・a=a・e’=a が成り立つ。
よって
e=ee’=e’
が成り立ち、単位元はただひとつである。
97
命題 1.3 元 a∈Gに対し、その逆元はただひとつ存在する
証明 条件(G3)で保障された逆元xのほかに、もうひとつ逆
元y∈Gが存在したとすると、ax=xa=e
、ay=ya=e
が成立する。したがって
x=xe=x(ay)=(xa)y=y
がなりたち、a∈Gの逆元はただひとつ存在する。
次に、環について定義します。
(2)環について
群では2項演算が1つしか与えられていませんでしたが、環では2
項演算が2つ与えられます。
定義 2.1 Rを空でない集合とする。Rに2つの2項演算、和「+」
と積「・」が与えられていて、次の3条件を満たすときR
を環(ring)という。
(R1)和について可換群である。
(R2)積について結合法則を満たす。
(R3)分配法則を満たす。すなわち、任意の a,b,c∈Rに
対し、
a・
(b+c)=ab+ac
(a+b)・c=ac+bc
が成り立つ。
また、環Rが次の条件を満たすときRを可換環という。
(R4)交換法則
任意の a,b∈Rに対し、ab=ba が成り立つ。
98
環が定義されたところで、いくらか環にたいする定義を補足して
おきます。
定義 2.2 e∈Rで任意の a∈Rに対し、
e・a=a・e=a
が成り立つものが存在するとき、Rを単位元を持つ環とい
い、この e をRの単位元という。(以下単に単位元というと
きは積に対する単位元を意味するものとします。)
定義 2.3 Rを単位元 e を持つ環とする。ある a∈Rに対し、
ax=xa=e
が成り立つような元xが存在するとき、a をRの単元、ま
たは可逆元という。
例 0のみからなる環{0}を零環という。
2項演算は
0+0=0 0・0=0
で与えられる。
(3)整域について
整域について定義する前に、次の定義をします。
定義 3.1 Rを環とする。a∈Rに対し、0でないb∈Rが存在して、
ab=0となるとき、a を左零因子という。また、0でない
c∈Rが存在して、ca=0となるとき、a を右零因子とい
う。
Rが可換群のときは右零因子と左零因子の区別はないの
で、単に零因子とよぶ。
また、Rが可換群でないときも、右零因子と左零因子を総
99
称して、零因子ということもある。
これで整域が定義できます。
定義 3.2 単位元を持つ可換環が0以外に零因子を持たないとき、R
を整域という。
(4)単項イデアル整域について
定義 4.1 Rを環、IをRの部分集合とする。Iが次の条件、(ⅰ)、
(ⅱ)を満たすとき、IをRの左イデアルという。
(ⅰ)a,b∈I ⇒ -a+b∈I
(ⅱ)a∈I,x∈R ⇒ xa∈I
(ⅰ)と次の(ⅲ)をみたすとき、IをRの右イデアルと
いう。
(ⅲ)a∈I,x∈R ⇒ ax∈I
Iが(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)をみたすとき、Iを両側イデアル
という。
Iが可換環ならば、左右の区別はないから、たんにイデア
ルという。また、非可換環の場合でも、左、右、両側イデ
アルを総称してイデアルということもある。
Rを単位元を持つ環、R∋a ,・・・, a とする。
I={ x a ,・・・, x a │ x ,・・・, x ∈R }
とおけば、IはRの左イデアルになる。このイデアルを a ,・・・, a
で生成されたRの左イデアルといい、(a ,・・・, a )と書きます。
1
1 1
n n
n
1
n
1
1
100
n
n
右イデアルについても同様の概念があるが、以後断りのない限り、左
イデアルを考えることにします。
命題 4.2 (a ,・・・, a )は a ,・・・, a を含むようなRの最小の
イデアルである。
1
n
1
n
証明 Jを a ,・・・, a を含むような左イデアルとすれば、J∋
x a ,・・・, x a (x ∈R,i=1,・・・,n)からJ⊃Iとな
る。
1
1 1
n
n n
i
定義 4.3 環Rの1元 a によって生成されるイデアル(a)を単項左イ
デアルという。Rが可換環のとき、1元 a によって生成さ
れるイデアル(a)を単項イデアルという。
定義 4.4 単位元を持つ可換環Rのすべてのイデアルが単項イデアル
あるとき、Rを単項イデアル環という。整域Rのすべての
イデアルが単項イデアルであるとき、Rを単項イデアル整
域という。
これで単項イデアル整域が定義されました。これについては(5)で
素元や既約元の概念を導入してから(6)で詳しく述べたいと思い
ます。
(5)一意分解整域について
本章では、Iを整域、e をIの単位元、UをIの単元のなす群としま
す。
定義 5.1 a,b∈I(a≠0,b≠0)に対し、a=bc となるような c∈
Iが存在するとする。
101
このとき、
「a は b で割れる」
、又は「a は b の倍元」
、又は
「b は a を割る」
、又は「b は a の約元」といい、
b│a と書く。
定義 5.2 a,b∈I(a≠0,b≠0)に対し、u∈Uが存在して b=ua
となるとき、a と b は同伴であるといい a~b とかく。
命題 5.3 a と b が同伴であるための必要十分条件は a│b かつ b│a
となることである。
証明 必要性は同伴の定義より明らか。
十分性を示す。a│b より、b=ua となる元 u∈Iが存在する。
又、b│a より a=u’b となる元 u’∈Iが存在する。よって、
b=uu’b となるが、Iは整域だから e=uu’となり、u は単元
となる。
次に、素元、既約元という概念を導入しましょう。
定義 5.4 単元でないp∈I、p≠0について、
a,b∈I、p│ab ⇒ p│a または p│b
が成り立つとき、pを素元という。
定義 5.5 単元でない a∈I、a≠0について、
d∈I、d│a ⇒ d~e または d~a
が成り立つとき、a を既約元という。
命題 5.6 素元は既約元である。
証明 pを素元とする。a∈Iが a│p ならb∈Iが存在して、p=ab
となる。
102
ゆえにp│ab だからpが素元であることからp│a またはp
│b となる。
p│a ならば a~p を得る。p│b ならば、c∈Iが存在してb
=pc となる。よってp=acp となるが I は整域より ac=e とな
り、a は単元となる。
よって、p は既約元となる。
一意分解整域を定義します。
定義 5.7 任意の a∈I、a≠0が
a=p1p2・・・pr
と有限個の素元pi(i=1,2,
・・・,r)の積に順序と単元
の積を除いて一意的に分解されるとき、Iを一意分解整域
という。
(6)
単項イデアル整域、一意分解整域について
この章では(4)
(5)で述べた単項イデアル整域と一意分解整域に
ついて詳しく述べていこうと思っています。
まず、素イデアルと極大イデアルの概念を導入します。
p
a,b∈R,ab∈p ⇒ a∈p または b∈p
となるときpを素イデアルという。
定義 6.1 環Rのイデアル ≠Rに対して
定義 6.2 環Rのイデアル m≠Rに対して
m ⊊ a ⊊ R
となるイデアル a が存在しないとき、m をRの極大イデアル
という。
103
補題 6.3 Rを単項イデアル整域、R∋a≠0を既約元とする。この
とき、イデアル(a)は極大イデアルである。
b
b
証明 (a)⊂ となるイデアル ⊂Rがあるとする。Rは単項イデア
b
b
ル整域だからb∈ が存在して =(b)となる。ゆえにc∈
Rがあって a=cb となる。ゆえに b│a となるから a が既約元
であることから b~a または b~e となる。
b~a なら(b)=(a)
、b~e なら(b)=(e)=Rとなる。
よって、
(a)は極大イデアルである。
これを使ってつぎの命題を証明します。
命題 6.4 Rを単項イデアル整域とする。R∋p≠0が素元であるため
の必要十分条件は既約元であることである。
証明 必要条件であることは命題 5.6 からしたがう。十分条件である
ことを示す。pは既約元であるので、単元でなく、
(p)は極大
イデアルとなる。a,b∈Rに対してp│ab とする。
(ab)⊂(p)
となる。他方(p)⊂(a,p)より(a,p)=(p)または(a,p)=R
となる。
(p)⊂(b,p)より、(b,p)=(p)または(b,p)=R
となる。
(a,p)=Rかつ(b,p)=Rと仮定すると、単位元 e∈Rに対し
て、c,d,f,g∈Rが存在して、
e=ca+dp かつ e=fb+gp
と表すことができる。これらを辺々かけて
e=cfab+(cga+dfb+dgp)p
となる。右辺は(p)に含まれるから e∈(p)となる。ゆえに
(p)=Rとなり(p)が極大イデアルであることに反する。
したがって、
(a,p)=(p)または(b,p)=(p)となる。
104
前者ならば a∈(p)となり、p│a、後者ならば b∈(p)とな
り、p│b となる。
ゆえに、p は素元である。
命題 6.5 単項イデアル整域Rの(0)以外の素イデアルは極大イデア
ルである。
証明
を(0)以外の素イデアルとする。Rは単項イデアル整域であ
るから、p∈R、p≠0があって p=(p)となる。p は素イデアル
であるから p は素元である。ゆえに、p は既約元であるから、補
題 6.3 より、p は極大イデアルである。
p
命題 6.6 Rを一意分解整域とする。R∋a≠0が素元であるための必要
十分条件は既約元であることである。
証明 必要条件であることは命題 5.6 からしたがう。十分条件であるこ
とを示す。
a を既約元であるとする。よって、a は単元でない。
a の素元への分解を
a=p p ・・・p (p (i=1,2,・・・n)は素元)
とする。a は既約元であるから、n=1にならざるを得ない。
よって、a は素元である。
1 2
n
i
定理 6.7 単項イデアル整域は一意分解整域である。
証明 Rを単項イデアル整域であるとする。
まず、Rの任意の元 a≠0が有限個の素元の積に分解されること
を示す。
a は単元でないとしてよい。a が有限個の素元の積に書けないとす
る。a は素元ではないから、既約元でもない。ゆえに、
105
a=bc
b≁a c≁a
となる b,c∈Rが存在する。b,c のいずれかは有限個の素元の積に
書けないから、書けないほうを a1 とする。このとき、
a1│a
a≁a1
が成り立つ。同様にして、素元の有限個の積には書けない元 a2∈
Rが存在して、
a2│a1
a1≁a2
となる。これを繰り返せば、素元の有限個の積には書けない元 ai+1
∈R(i=1,2,・・・)が存在して、
ai+1│ai
ai≁ai+1
となる。したがって、イデアルの列
(a1)⊂(a2)⊂・・・⊂(ai)⊂・・・
を得る。
J=⋃(ai) (i=1,・・・,(∞)の和)
とおけば、これはイデアルとなる。
Rは単項イデアル整域であるから、d∈Jが存在してJ=(d)と
なる。したがって、d│ai(i=1,2,・・・)となる。
他方、d∈Jより、自然数 m が存在して、d∈(am)となる。ゆえ
に、am│d。
したがって、am~d を得る。
d│am+1 より、am│am+1。他方、am+1│am だから am~am+1 となるが、こ
れは am+1 のとり方に反する。
次に、a∈Rが
a=p1・・・ps=q1・・・qt
と素元の二通りの積に分解したとする。
p│a より、ある q があって p│q となるが、q は素元であるから既
約元であり、したがって、p~q となる。両辺からこれらを約して、
次々と同様にしていき、番号を適当につけかえれば、
s=t, pi~qi(i=1,2,・・・t)
を得る。
106
定理 6.8 有理整数環Zは単項イデアル整域である。
証明 IをZのイデアルとする。I=(0)なら単項イデアルであるか
ら、I≠(0)の場合を考えればよい。このとき、I∋a≠0が存
在するが、a<0なら(-1)a∈Iで-a>0となるからIは自然
数を含む。したがって、
I+={a∈I│a>0}
とおけば、I+≠φである。I+に含まれる最小の自然数を b とす
ればI⊃(b)である。
ここで、Iの任意の元 c をとると
c=qb+r, 0≤r<b
となる整数 q,r∈Zが存在する。r=c-qb と書けば、右辺はIに
含まれるから r∈Iとなる。I+に含まれる最小の自然数がbだっ
たので、r∉I+を得る。
したがって、r=0となり、c=qb∈(b)
、すなわち(b)⊃Iとな
る。ゆえに、I=(b)となり、Iは単項イデアルである。
あとがき
これでおわりです。私の力量不足のため、煩雑なところ、説明不足のた
めに意味の通らなかったところなどがあったかもしれませんが、最後ま
でお読みいただき、ありがとうございました。最初は定義ばかりで最後
のほうは証明ばかりで難があったかもしれません。今後の参考にしてい
こうと思います。最後に、お読み頂いた方々にもう一度感謝を申し上げ
ます。
参考文献
「代数学Ⅰ 群と環」 桂 利行 著
107
東京大学出版会
1
はじめに
1, 2, 3, . . .
1
2
3
1, 2, 3 . . .
3
1+1
2
2
集合とは
∈
108
ZF C 公理系について
2.1
ZF C
(1)
x, y
x
y
y
x
y
x
(2)
:
(∅)
(3)
x, y
:y = x
{x, y}
x y
{x, y} = {x}
(4)
x
x
(5)
x+ = x ∪ {x}
x
x+
:
x
(6)
x
x
:
:y
x
(P(x))
x
y
(7)
x
x
109
x
(8)
x
P (X)
x
y
P (y)
(9)
x
:x, y
x
y
x, y
x, y
(10)
x
x
x
ZF C 公理系から保証される概念
2.2
ZF C
x, y
x∩y
(1)
x, y
x
x−y
x−y
y
(2)
x, y
{x, y}
y
x∩y
x∪y
x∪y
x
y
x
y
x
(3)
x
y
x
a y
(a, b)
b
{{a}, {a, b}}
110
(a, b)
P(P(x ∪ y))
{{a}, {a, b}}
P(P(x ∪ y))
(a, b)
(a, b)
x×y
x, y
f :x→y
(4)
f
a
x×y
b∈y
x
(a, b)
y
b
f
a∈x
x
f
x
y
{(1, 2), (2, 4), (3, 1)}
a
{1, 2, 3}
a
y
{1, 2, 3, 4}
(5)
∼
x
∼
x
(a, b) ∈∼
x
∼⊆ x × x
a∼b
• ∀a ∈ x, a ∼ a
• a, b ∈ x, a ∼ b =⇒ b ∼ a
• a, b, c ∈ x, a ∼ b, b ∼ c =⇒ a ∼ c
w ∈ P(P(x))
x
a, b ∈ x
b∈v⇔a∼b
∃v ∈ w, a ∈ v
w
a
a∼b
b
v
w
∼
w
w
v, u
a ∈ v, a ∈ u ⇒ ∀b, (b ∈ v ⇔ a ∼ b ⇔ b ∈ u) ⇒ v = u
v 6= u ⇒ v ∩ u = ∅
w
x
(x/ ∼)
∼
x
111
w
x
∼
(6)
λ
{aλ }λ∈Λ
∀λ aλ ∈ x
Λ
λ 7→ aλ
x
自然数
3
(a)
(b)
(c)
(d)
ZF C
3.1
自然数の構成
(a), (b)
a
M (a)
x+ = x ∪ {x}
x
M
M
a0
a0
M
a0
a0
ωa0 =
\
∀y ∈ a¯0 , ∅ ∈ y
a¯0 , x+ ∈ y ⇒ x+ ∈ ωa0
a¯0 = {b ∈ P(a0 )|M (b)}
a¯0 = {x|∀y ∈ a¯0 , x ∈ y}
∅ ∈ ωa0
ωa0
x ∈ ωa0 ⇒ ∀y ∈ a¯0 , x ∈ y ⇒ ∀y ∈
a¯0
ωa0
112
ωa0
定理 1 a0 , a′0
M
証明 1 ωa0 6= ωa′0
∃x ∈ ωa0 , x 6∈ ωa′0
ωa0 = ωa′0
∃x ∈ ωa′0 , x 6∈ ωa0
∃x ∈ ωa0 , x 6∈ ωa′0
x 6∈ ωa0 ∩ ωa′0
M
ωa0 ∩ ωa′0
′
∅ ∈ ωa0 ∩ ωa0 z ∈ ωa0 ∩ ωa′0 ⇒ z ∈ ωa0
z + ∈ ωa′0
ωa0 ∩ ωa′0 ⊆ ωa0 ⊆ a0
ωa0
∩ ωa′0
ωa0
ωa0 ∩ ωa′0 ∈ a¯0
ωa0 ⊆ ωa0 ∩ ωa′0
∃x ∈ ωa′0 , x 6∈ ωa0
a0
∅ ∈ ωa0 ∅ ∈ ωa′0
z ∈ ωa′0 ⇒ z + ∈ ωa0
x ∈ ωa0
ω 6∈
ωa0 = ωa′0
ωa0
ω
x 6= ∅ ⇒ ∃y ∈ ω, y + = x
系 2 x∈ω
証明 2 ∀y ∈ ω, y + 6= x
+
z ∈ ω − {x} ⇒ z ∈ ω − {x}
ω
x 6= ∅
3.2
y+ = x
y
x ∈ ω
ω − {x}
∅ ∈ ω − {x}
x−
自然数の間の順序
ω
ω
(c)
(d)
ω
定理 3 ω
x
P (x)
• P (∅)
113
• ∀x ∈ ω, P (x) =⇒ P (x+ )
∀x ∈ ω, P (x)
証明 3
ωP = {x ∈ ω|P (x)}
x ∈ ω P ⇒ x+ ∈ ω P
∅ ∈ ωP
ω ⊆ ωP
ω
ωP = ω
ω
ωP ⊆ ω
P
≤
a≤b
x
x×x
ωP
(a, b) ∈≤
≤⊆
• ∀a ∈ x, a ≤ a
• a, b ∈ x, a ≤ b, b ≤ a =⇒ a = b
• a, b, c ∈ x, a ≤ b, b ≤ c =⇒ a ≤ c
ω
x≤y
補題 4 x, y ∈ ω
証明 4
x=∅
x⊆y
y ⊂ x ⇒ {y} ⊆ x
∀x, y ∈ ω, y ∈ x ⇒ y + ∈ x
∀y ∈ ω, y ∈ x ⇒ y + ∈ x
y+ = x
y ∈ x ∪ {x} ⇒ y ∈ x
y=x
y∈x
y + ∈ x ⊂ x ∪ {x}
y=x
y + = x+
x
114
y+ = x
y + = x ∈ x ∪ {x} = x+
y ⊂ x ⇒ {y} ⊆ x
y ⊂ x ⇒ y − ∪ {y − } ⊂ x ⇒ y − ∈ x ⇒ (y ∈ x
⇒ y ∈ x y 6= x
⇔ {y} ⊆ x
y 6= ∅
y=∅
+
∅ ⊆ (x− ) = x
∅ ⊆ ∅+ ∅ ⊆ z + ⇒ ∅ ⊆ z + ∪ {z + } = (z + )
∀z ∈ ω, ∅ ⊆ z + ∅ ⊂ x
x 6= ∅
y = x)
+
z
x−
ω
X
X
∀y ∈ A, x ≤ y
A
A
A
x
定理 5 ω
証明 5
ω
{x ∈ ω|∀y ∈ A, x ⊆ y}
∅∈B
x ∈ B ⇒ x+ ∈ B
ω⊆B
A
B
y∈A
x0 ⊆ y 0
x0 ∈ A
y
x0
x0 ⊂ y 0
x+
=
x
∪
{x
}
0
0 6⊆ y0
0
x0
ω
+
y 6∈ B
y
∃x ∈ B, x+ ∈
6 B
+
x0 6∈ B
∃y ∈ A, x+
0 6⊆ y
x0 ∈ B
x0 = y 0
B=
x x0
y0
A
4
{x0 } ⊆ y0
A
x≤y
x⊆y
系6 ω
x⊆y
証明 6
B⊂ω
x<y
x, y ∈ ω
y⊆x
ω
115
{x, y}
x⊂y
x ⊂ y ⊂ x+
系 7 x∈ω
y∈ω
証明 7 x ⊂ y ⊂ x+ = x ∪ {x}
z 6∈ x
z
z
x ∪ {x} ⊂ y ⊂ x ∪ {x}
x
x+
3.3
∅
z∈y
x ∪ {x}
z=x
y
x
x
ω の構造の感覚的理解
∅=0
0+ = 1
ω
0
1
+
+
1 = 2, 2 = 3 . . .
ω
+
0 = {}, 1 = {0}, 2 = {0, 1}, 3 = {0, 1, 2}, . . .
ω
ω
3.4
自然数の間の演算
x, y
x+y
ω
x+
ω
+ : ω×ω → ω
ω
+(x, y)
x+1
x+y
x+y
x +1 + 1 + · · · + 1
{z
}
|
y
x
y
116
+
x, y ∈ ω
y=0
y = y0
x
y=
x, y
x+y
x∈ω
x
x+0 = x
x+y
x+y0+
x+y
y0+
x
x, y
ω×ω
ω
x×0 = 0
x ∈ ω
x, y ∈ ω
x ×y = x+x+···+x
{z
}
|
x×y
(x+y0 )+
x+y
x, y
x × y+ = x × y + x
y
+, ×
x + y = y + x, x + (y + z) = (x + y) + z, x × y =
y × x, x × (y × z) = (x × y) × z
×
+
x × (y + z) = x × y + x × z, (y + z) × x = y × x + z × x
ω
ω
ω
117
整数、有理数、実数
4
−50000
0
ω − {0}
4.1
0
N
1
整数
z+y = x
x−y
z+5 = 3
z
z
Z = {0} ∪ (N × {0, 1})
(n, 1)
補題 8 x, y ∈ ω
(n, 0)
0
y ≤ x ⇒ ∃z ∈ ω, z + y = x
証明 8 x
x=0
y≤0
x=0
(∀y, 0 ≤ y
y=0
) 0+0 = 0
x = x0
y ≤ x+
0
y = x+
0
y ≤ x0
y = x+
0
x = x+
0
y ≤ x0
y = x+
z + y = x0
0 + y = y = x+
0
7
z + + y = x+
0
z
x
118
x0 < y ≤ x+
0 ⇒
Z
a. 0
∀n ∈ Z, 0 + n = n + 0 = n − 0 = n
b.
(i) −0 = 0
(ii) −(x, 0) = 0 − (x, 0) = (x, 1), −(x, 1) = 0 − (x, 1) = (x, 0)
c.
(i) (x, 0) + (y, 0) = (x + y, 0)
(ii) (x, 1) + (y, 1) = (x + y, 1)
(iii) (x, 0) + (y, 1) =


 y<x
x<y


x=y
(x − y, 0) x − y
(y − x, 1) y − x
z+y =x
z+x=y
z
z
8
8
0
(iv) (x, 1) + (y, 0) = −((x, 0) + (y, 1))
d.
(i) (x, 0) − (y, 0) = (x, 0) + (y, 1)
(ii) (x, 0) − (y, 1) = (x, 0) + (y, 0)
(iii) (x, 1) − (y, 0) = (x, 1) + (y, 1)
(iv) (x, 1) − (y, 1) = (x, 1) + (y, 0)
Z
(x, 0)
x
x
(x, 1)
−x
5
3
d.(i), c.(iii)
2
Z
(i) ∀n ∈ Z, n × 0 = 0 × n = 0
(ii) (x, 0) × (y, 0) = (x × y, 0)
119
3−5
−2
(iii) (x, 0) × (y, 1) = (x × y, 1)
(iv) (x, 1) × (y, 0) = (x × y, 1)
(v) (x, 1) × (y, 1) = (x × y, 0)
(i) 0 ≤ 0
(ii) ∀n ∈ N, 0 ≤ (n, 0), (n, 0) 6≤ 0, (n, 1) ≤ 0, 0 6≤ (n, 1)
(iii) ∀n, m ∈ N, (n, 1) ≤ (m, 0), (n, 0) 6≤ (m, 1)
(iv) ∀n, m ∈ N, (n, 0) ≤ (m, 0) ⇔ n ≤ m
(v) ∀n, m ∈ N, (n, 1) ≤ (m, 1) ⇔ m ≤ n
≤
Z
0
0
N
Z
N
N
n∈N
N Z
Z
N
4.2
0
(n, 0) ∈ Z
Z
有理数
120
Z
6÷2 =3
2
7
7÷3
6
21
Q̄ = Z × (Z − {0})
(a, b), (c, d) ∈ Q̄
∼Q
Q = Q̄/ ∼Q
(a, b) ∼Q (c, d)
a×d = b×c
Q
Q
(a, b) ∈ Q̄
Q
Q(4, 14) = {(2, 7), (4, 14), (6, 21), . . .}
(a, b) ∈ x, (c, d) ∈ y
Q(a, b)
x, y ∈ Q
a.
(i) 0 ≤ a, b
x≤y ⇔ a×d ≤b×c
(ii) a ≤ 0 ≤ b
(iii) a, b ≤ 0
x≤y
x≤y ⇔ b×c≤a×d
x≤y
(a, b), (c, d)
≤
Q
14
15
5
2
=
≤
=
3
21
21
7
b.
x±y
Q(a × d ± b × c, b × d)
(a, b), (c, d)
121
c.
x×y
Q(a × c, b × d)
(a, b), (c, d)
d.
y 6= 0
x÷y
c=0
(a × d, b × c)
y=0
x÷y
(a, b), (c, d)
y=0
Q
Q
(n, 0)
Q
0
(n, 0)
0
N
Z
n 7→ Q(n, 1)
Z
Z
Q
(n, 1)
Q
4.3
実数
Q
√
2
π
1, 1.4, 1.41, 1.414, . . .
2
122
2
2
√
2
2.2(6)
f :N→Q
f (1), f (2), f (3), . . .
{an }n∈N
f
a1 , a2 , a3 . . .
0
∀n, m(∈ N) ≥ N, |an − am | < q
N ∈N
0≤x
x x<0
{an }n∈N
x∈Q
−x(= 0 − x)
q∈Q
|x|
√
√
2
1, 1, 1, 1, 1, . . .
2
0, 1, 1, 1, 1, . . .
0
q∈Q
{an }n∈N
N ∈N
{an }n∈N , {bn }n∈N
∼R {bn }n∈N
∀n(∈ N) ≥ N, |an | < q
∼R
⇔ {an }n∈N − {bn }n∈N = {a1 − b1 −, a2 − b2 , . . .}
C
R = C/ ∼R
R
R
R({an}n∈N )
{an }n∈N ∈ C
x, y ∈ R
R
{an }n∈N ∈ x, {bn }n∈N ∈ y
123
a.
x≤y
{an }n∈N − {bn }n∈N
∀n(∈ N) ≥ N, an − bn < 0
N ∈N
R
{an }n∈N , {bn }n∈N
b.
x ± y = R({an }n∈N ± {bn }n∈N ) = R({a1 + b1 , a2 + b2 , . . .})
x × y = R({an }n∈N × {bn }n∈N ) = R({a1 × b1 , a2 × b2 , . . .})
y 6= 0
0
0
,y
R
y 0
x ÷ y = R({an }n∈N ÷ {bn }n∈N ) = R({a1 ÷ b1 , a2 ÷ b2 , . . .})
x÷y
y=0
{a1 ÷ b1 , a2 ÷ b2 , . . .}
{an }n∈N , {bn }n∈N
Q
5
q 7→ R({q, q, q, . . .})
Q
R
{q, q, q, . . .}
R
まとめ
N
Z
Z
Q
Q
R
Q⊂R
124
N⊂Z⊂
x × x = −1
R
C
ZF C
6
あとがき
125
x
R
7
おまけ
m
m
0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 0, +, −, ×, ÷
m+1
m
m−2
n
+
n
×
m
n+0+0+· · ·+0
m
m
n − 10 + 0 + 0 + · · · + 0
n + 10
′
m
n′
10
m−1
99
m
126
π e
m=4
98.9
8
おまけのおまけ
a×b
a+a+···+a
|
{z
}
b
ab
a×a×···×a
|
{z
}
a
a·
··
a
b
a ↑↑ b
b
TEX
a ↑↑ a ↑↑ · · · ↑↑ a
|
{z
}
a ↑↑↑ b
b
↑
9
最後のあとがき
[email protected]
http://ja.wikipedia.org/
http://ufcpp.net/study/
http://math.cs.kitami-it.ac.jp/~fuchino/tmp/kikaku03.pdf
127
合同分割
高校 3 年 3 組 53 番 吉田 雄紀
1
はじめに
こんにちは。本日は数学研究部までお越しくださいまして、ありがとうご
ざいます。
「合同分割」というのは、ある多角形を、いくつか (但し 2 個以上) の合同
な小多角形 (元の多角形と相似である必要はない) に分割することです。例え
ば、下の図は、合同分割の一例です。
この「合同分割」1 というのは、自分が 2 年前に思いついた (既に思いつか
れている可能性は大いにありますが) テーマであり、当時の自分は、それに関
して少し研究をして、当時の部誌にその記事を載せました。それ以来、合同
分割に関してはほとんど研究を進めていなかったのですが、最近になって再
び少し研究をしてみたところ、いくらか進展があり、特に 2 年前から未解決
になっていた 1 つの事項:
「合同分割不可能な多角形は存在するか?」が解決
したので、今年の部誌に載せることにしました。
なお、この記事は、2 年前の記事とは、全く独立して読むことが出来ます。
30◦
◦
−→
◦
◦
X3
小図形:
X1
◦
X2
1 [余談] 多角形にとどまらず、合同分割の概念を一般の点集合で考えることも出来そうです。
しかしその場合は、もう少し定義をしっかりしないといけなさそうです。
128
準備
2
この節では、この後必要になるいくつかの言葉について触れておきます。
また、それらに関するいくつかの基本的事項を述べておきます (証明を省略
しているものもあります)。
定義 1
数 α1 , α2 , · · · , αn が Q 上 1 次独立であるとは、a1 α1 +a2 α2 +· · ·+an αn = 0
を満たす有理数 a1 , a2 , · · · , an が、それらが全て 0 である場合を除いて、存在
しないことをいう。
例えば、1,
√
2 は Q 上 1 次独立です。
この記事では、この言葉に関する高級な知識は仮定していません。
定義 2
ある平面上の領域 D が凸であるとは、D 内に含まれる任意の 2 点を結ぶ線
分がその領域に必ず含まれることをいう。
領域 D が多角形の場合は、D が凸であることと、D の内角が全て 180◦ 未
満であることが同値になります。
ここで、1 つだけ命題を示しておきます。
命題 1
D1 , D2 が凸領域のとき、D1 ∩ D2 も凸領域である。
証明
D1 ∩ D2 内の任意の 2 点をとると、その 2 点間を結ぶ線分は (凸である D1
内にその 2 点が存在することにより)D1 内にあり、かつ (凸である D2 内にそ
の 2 点が存在することにより)D2 内にある。よって、2 点を結ぶ線分は必ず
D1 ∩ D2 内にあるので、示された。
■
次に、凸包の定義をし、その性質を挙げます。
定義 3
平面上のいくつかの点達に対して、それらの点を全て含む面積最小の凸多
角形を、それらの点の凸包という。また、多角形 P に対して、P の頂点達の
凸包を、多角形 P の凸包といい、P で表す。
129
次の命題の証明は省略します。
命題 2
多角形の凸包は、もとの多角形を含む。また、多角形の凸包の頂点達は、
全て、もとの多角形の頂点のいずれかである。
勿論 P が凸多角形の場合は、P の凸包は P 自身です。
前の凸包の定義のところで「面積最小」の凸多角形と書きましたが、実際
は集合の包含関係における「最小」の凸多角形をとることが出来ます (命題 1
による)。2
さて、ここで、凸包に関する 1 つの命題を示しておきます。
命題 3
多角形 P と Q があり、P ⊂ Q のとき、P ⊂ Q である。
証明
P ⊂ Q とすると、P ⊂ P 、P ⊂ Q ⊂ Q であるため P ⊂ P ∩ Q。ここで、
命題 1 より P ∩ Q は凸であり、これと凸包の定義 (と、少し上の注意書き) よ
り P ⊂ P ⊂ P ∩ Q(⊂ P )。これより P = P ∩ Q なので P ⊂ Q。
■
3
合同分割できない多角形の存在
ここから、合同分割不可能な多角形が存在するかどうかについて考えてい
きます。
この先、合同分割される全体の多角形のことを「大図形」、合同分割後の
小片である多角形を「小図形」とよぶことにします。小図形の頂点にはあら
かじめ X1 , X2 , · · · , Xm という記号を振っておきます (最初の図参照。なお、
ここでの X に関しては、添え字の順番が多角形の周に現れる順番と一致し
ている必要はない)。また、ある合同分割を考えている時、それを構成する小
図形達を、小図形 1, 小図形 2, · · · , 小図形 h などと呼び表します。さらに、そ
の合同分割の図中において「小図形 i 中の頂点 Xj 」の位置を特に表したい時
は、記号 Xi,j を使うことにします。(当然このとき、任意の i について、点
X1 , X2 , · · · , Xm をそれぞれ点 Xi,1 , Xi,2 , · · · , Xi,m に移すような合同変換が存
在します)
さて、そろそろ本題に入ります。実は、次の結果が成立します。
2 そもそも面積最小の多角形の存在をいきなり仮定するのも、本当はまずい。
130
定理 1 大図形 A がある。A の凸包 A を多角形 A1 A2 A3 · · · An とする。3 そ
して、次が成立しているとする (次図参照)。
• A の周と A の周の共通部分は、{A1 , A2 , · · · , An } だけである。
• 点 Ai における A の内角の大きさを αi とおくと (1 ≤ i ≤ n)、
α1 , α2 , · · · , αn は Q 上 1 次独立である。
このとき、A は、合同分割できない。
A6
A1
A2
α2
A5
α6
α5
α1
α4
α3
A4
A3
以下の補題を示しつつ、この定理を示すことにします。
補題 1 Q 上 1 次独立な n 個の角 6 A1 = α1 , 6 A2 = α2 , · · · , 6 An = αn を持
つ大図形が合同分割されている時、
(i) 小図形には、少なくとも n 個の角が存在する。
(ii) ある s1 , s2 , · · · , sn (これらは重複しても良い) とある i1 , i2 , · · · , in (これら
は重複してはならない) が存在し、
Xs1 ,i1 = A1 , Xs2 ,i2 = A2 , · · · , Xsn ,in = An
が成立。
この補題の証明には、少しだけ線形代数の知識を使います。
証明
(i)6 A1 = α1 , · · · , 6 An = αn が小図形の角たちによってどう分割されてい
るかを考える。6 A1 = α1 , · · · , 6 An = αn の分割に関わる小図形の角が (小図
形が持つ角の総数のうち)n 個以上あることを、代数的に示す。
今、m 個の角が大図形のそれらの角の分割に関わっているとする。それら
m 個の角の大きさを χ1 , · · · , χm とおく。まず、成分が全て整数である、ある
n 行 m 列の行列 Z を用いて
3 「多角形 AB · · · C 」という表現の時は、折れ線 AB · · · CA には自己交差がないものとし
て考える。
131

χ1

 χ2
Z
 ..
 .
χm


 
 
=
 
 
α1
α2
..
.
αn






(1)
と表せる。左辺の χ 達がなすベクトルを x で表すことにする4 。
ここで、Z の n 個の行ベクトル z1 , z2 , · · · , zn が 1 次独立でないとすると、
ある (u1 , · · · , un ) 6= (0, 0, · · · , 0) ∈ Qn を用いて u1 z1 + · · · + un zn = 0 とか
ける。ところがこの時
u1 α 1 + · · · + un α n
= u1 z 1 · x + · · · + un z n · x
= (u1 z1 + · · · + un zn ) · x = 0
であり、これは、α1 , · · · , αn の Q 上 1 次独立性に反する。
よって Z の n 個の行ベクトルは 1 次独立である。つまり、Z の階数は n で
ある。しかし Z の階数は (その列数である)m 以下であるので、m ≥ n が示
された。
(ii) Z の階数が n であることより、Z 内には 0 でない n 次の小行列式が存
在する。すなわち、Z からうまく n 個の列 (第 j1 列、第 j2 列、· · ·、第 jn 列
とする) を取り出してきて、それらによって出来る n 次の正方行列で、その
行列式が 0 でないものが存在する。このとき、その行列式が 0 でないという
ことは、行列式の定義に戻って考えると、
ある i1 , · · · , in [: j1 , · · · , jn の並び替え] が存在し、
任意の t(1 ≤ t ≤ n) について、Z の第 t 行第 it 列の成分は 0 でない。
がすぐに導かれる。結局これは、ある互いに異なる i1 , · · · , in 5 が存在し、任
意の t について、大図形の頂点 At に小図形の角 Xit が少なくとも1つ「差
し込んで」いることを意味する (角 At の分割に少なくとも1つの角 Xit が関
わっている)。つまり、小図形 st が「分割に関わる角 Xit 」を持つように各 st
を定めてやると、題意は示された。
■
さて、ここから定理の証明に入ります。この証明では、大図形と小図形の
凸包に注目し、両者が一致することを途中で示し、その後合同分割の不可能
性を示そうと思います。
4 以下、太字の英小文字や数字は原則ベクトルを表す。
5 この
i 達は、正確には上の i 達と別である (6 Xi′ = χit なる i′t 達を指す)。
t
132
定理 1 の証明
大図形 A が合同分割されていると仮定する。このとき、補題より、ある
s1 , s2 , · · · , sn (重複しても良い) とある i1 , i2 , · · · , in (互いに異なる) が存在し、
At = Xst ,it (1 ≤ t ≤ n) となっている。ここで、必要ならば小図形の頂点の
X の添え字をつけかえて、At = Xst ,t (1 ≤ t ≤ n) が成り立つとして考えるこ
とにしてよい (X の添え字に関する、3 章の最初の注意を参照)。
次図のように、点 At における A の凸包多角形 A の内角の大きさを、βt と
おく (1 ≤ t ≤ n)。
A6 = Xs6 ,6
A5 = Xs5 ,5
β6
A1 = Xs1 ,1
β5
β1
「大図形の図」
A
A2 = Xs2 ,2
β2
β4
β3
A4 = Xs4 ,4
A3 = Xs3 ,3
さらに、1 つの小図形にも着目する。点 X1 , X2 , · · · , Xn 達の凸包を考え、
それを多角形 Xc1 Xc2 · · · Xck とおくと、「以下の議論」より k = n が示され
る (つまり c1 , · · · , ck は 1, · · · , n の並び替えとなる)。
「以下の議論」
:
命題 2 より、k ≤ n である。さて、k < n とする。このとき、凸多角形
Xc1 Xc2 · · · Xck の内部に点 Xt (1 ≤ t ≤ n) が 1 つ以上存在することになるが、
この時、直線 Xc1 Xt が Xc1 Xc2 · · · Xck の周と交わる点のうち Xc1 でない方
を P とおくと、
1. P = Xu なる u が存在する場合
小図形は、点 Xt を中心とする大きさ βt の「ある角」の内側に収まらな
..
ければならない ( . 「大図形の図」において、Xst ,t を中心とする大き
さ βt の「ある角」の内側に小図形 st がすっぽり収まっているため)。し
かし、この状況では、Xc1 , Xt , Xu がこの順に同一直線上にあり、両側の
2 点を、Xt を中心とする大きさ βt (< 180◦ ) の角の中に収めることは不
可能。
133
2. その他の場合
この場合、線分 Xci Xci+1 6 が点 P を含むような i が存在するわけだが
(図参照)、このとき、3 点 Xc1 , Xci , Xci+1 を、Xt を中心とする大きさ
βt (< 180◦ ) の角の中に収めることは不可能。
よって k < n ではなく、かつ k ≤ n であったので、k = n。
Xc(i+1)
X c1
Xt
P
X ci
「以下の議論」終わり
定理 1 の証明の続き
こうして、点 X1 , X2 , · · · , Xn 達が小図形の凸包を為すことが分かったが、
さらにこのとき、各 i について 6 Xci−1 Xci Xci+1 ≤ βci (< 180◦ ) が成立 (「以
下の議論」中の議論と同じ議論による)。ところが、全ての i について左辺、
右辺の和をそれぞれとると、どちらも 180(n − 2)◦ となるので、結局各 i につ
いて 6 Xci−1 Xci Xci+1 = βci が成立。
X5
β5
X3
β3
X1
β1
β6
小図形 · · ·
X6
β4
X4
β2
「小図形の図」
X2
なお、このとき多角形 Xc1 Xc2 · · · Xcn は小図形の凸包となっていることに
注意。つまり、小図形の凸包の n 個の内角は、β1 , β2 , · · · , βn を並び替えたも
6 この辺りの文章中で i + 1 とある場合、i = n のとき i + 1 = 1 とします (つまり i は「1
に戻ってくる」と考える)。i − 1 などについても同様です (i = 1 のとき i − 1 = n)。i に対す
る足し引きの多くは、これと同様に考えることにします。
134
のとなっている。この小図形の凸包と、大図形の凸包が、合同となることを
示す。
ここで、補題を示すことにする。
補題 2
D を自然数とする。このとき、任意の i について、次のうち少なくとも一
方が成立する (どちらが成立するかは i に依存してよい)。
P1. 任意の 0 ≤ d ≤ D について、
(Xsci ,ci−d , Xsci ,ci+d ) = (Aci−d , Aci+d ) かつ
(βci−d , βci+d ) = (βci −d , βci +d ) が成立。
P2. 任意の 0 ≤ d ≤ D について、
(Xsci ,ci−d , Xsci ,ci+d ) = (Aci+d , Aci−d ) かつ
(βci−d , βci+d ) = (βci +d , βci −d ) が成立。
補題の証明
D に関する数学的帰納法で示す。
(i) D = 1 のとき
Xsci ,ci−1 Xsci ,ci Xsci ,ci+1 = βci が成り立っているが、これと同時に
Xsci ,ci−1 , Xsci ,ci+1 ∈ A を実現するためには、(Xsci ,ci−1 , Xsci ,ci+1 )
6
= (Aci −1 , Aci +1 )or(Aci +1 , Aci −1 ) 7 とならなければならない。さらに、
前者が成立する時は、Xsci ,ci−2 , Xsci ,ci+2 ∈ A より
βc(i−1) ≤ βci −1 , βc(i+1) ≤ βci +1
後者の場合も同様にして
βc(i−1) ≤ βci +1 , βc(i+1) ≤ βci −1
であるため、いずれにしても βc(i−1) + βc(i+1) ≤ βci −1 + βci +1
が成立。ここで、全ての i についてこの式の左辺、右辺の和をそれぞ
れとると、両方とも 360(n − 2)◦ となり一致するので、各 i について
βci−1 + βci+1 = βci −1 + βci +1 が成立。上の式のどちらか一方と、この
式により、P1 か P2 のどちらかが成立する。
(ここで使った「角度の不等式条件より点の位置が定まる」議論や、
「点
の位置の条件から角度の不等式条件を得る」議論を「角度範囲の制約の
議論」と今後呼ぶことにする。)
7 右辺の式中の添え字は c
i+1 ではなく ci + 1 です。これについても i + 1 と同様に扱います
(前の脚注参照)。
135
(ii) 上の命題を仮定して、D が D + 1 であっても上の命題が成立しているこ
とを示す。各 i に対して P1 か P2 が成り立っている。P1 が成り立って
いる場合、「角度範囲の制約の議論」を上と同様に行うことで、
(Xsci ,ci−D−1 , Xsci ,ci+D+1 ) =
(Aci −D−1 , Aci +D+1 )
βc(i−D−1) ≤ βci −D−1
βc(i+D+1) ≤ βci +D+1
,
(2)
を得る。8 P2 が成り立っている場合は、同様にして
(Xsci ,ci−D−1 , Xsci ,ci+D+1 ) =
(Aci +D+1 , Aci −D−1 )
βc(i−D−1) ≤ βci +D+1
βc(i+D+1) ≤ βci −D−1
,
(3)
を得る。いずれにしても、各 i に対して、
βc(i−D−1) + βc(i+D+1) ≤ βci −D−1 + βci +D+1
が成立することが分かる。ここで、全ての i についてこの式の左辺、右
辺の和をそれぞれとると、両方とも 360(n − 2)◦ で一致するので、結局
全ての i について
βc(i−D−1) + βc(i+D+1) = βci −D−1 + βci +D+1
が成立する。
i が P1 を満たしていた場合、(2) が得られており、これと上の式より
βc(i−D−1) = βci −D−1 , βc(i+D+1) = βci +D+1
であり、D が D + 1 となっても P1 を満たしている。i が P2 を満たし
ていた場合、(3) が得られており、これと上の式より
βc(i−D−1) = βci +D+1 , βc(i+D+1) = βci −D−1
であり、D が D + 1 となっても P2 を満たしている。つまり、補題は、
D が D + 1 となっても成立する。
■ (補題 2)
定理 1 の証明続き
8 この周辺の式、添え字の階層を明確にするために、本来なら不要な括弧をつけていることが
ある。
136
補題より、任意の d ≥ 0 について {Xsci ,c(i−d) , Xsci ,c(i+d) }
= {Aci−d , Aci+d }
となる。この式で i を固定して (例えば ci = 1 なる i をとって)d を全体に動
かすことで、ようやく {Xs1 ,1 , Xs1 ,2 , · · · , Xs1 ,n } = {A1 , A2 , · · · , An } を得る。
これは、
「ある小図形」が存在し、その凸包は、大図形の凸包 A1 A2 · · · An に
一致する、ということを意味している!
ここまでくると、後少しである。ここでは「ある小図形」は s1 であったが、
s1 以外に小図形が存在しないことを示せば、合同分割の不可能性が示される。
命題 3 より、任意の小図形の凸包は、大図形の凸包に含まれる。ところが
今、小図形の凸包と大図形の凸包が合同であり、面積が等しいことが示され
ているので、任意の小図形の凸包は、大図形の凸包に一致しなければならな
い。すなわち、任意の小図形 (但し、境界を含むとする) は点 A1 , A2 , · · · , An
を領有することになる。
しかし、それは不可能であることが示される。今、小図形 s1 の内部に、折
れ線を引くことを考える。点 A1 から A2 へ、(端点を除いて) 小図形 s1 の内
部しか通らないような折れ線 l を引いてやることが出来る (小図形の連結性に
よる)。さらに、その折れ線上に点 P を適当にとって、点 A3 から P へ、(端
点を除いて) 小図形 s1 の内部しか通らないような折れ線 m を引いてやること
が出来る (図参照)。但しこの時、点 P までに折れ線 m が折れ線 l に重なった
場合、最初に重なった点を改めて P とし、折れ線 m はそこで止めることに
する。こうして、折れ線 l と m によって大図形は 3 つの領域に分割される。
A3
m
P
l
A2
A1
ここで、もし s1 以外の小図形が存在するとすると、その小図形 (境界を含
む) は、その 3 つの領域 (境界を含む) のいずれかに含まれなければならない。
また、上で示したように、その小図形は、A1 , A2 , A3 の 3 点を全て含まなけ
ればならない。しかし、折れ線 l, m によって生じた 3 つの領域 (境界を含む)
は、いずれもその 3 点全ては含まない (l, m は、端点を除いて、小図形 s1 の
「内部」を通っていることに注意)。よって、s1 以外に小図形は存在しない。
よって、A が合同分割不可能であることが示された。
137
■
こうして、合同分割不可能な多角形の存在が示されました。ここで、定理
1 において、大図形の凸包が三角形の場合をもう少し考えてみましょう。
定理 1 の仮定で、大図形とその凸包が共有点を A1 , A2 , · · · , An だけしか持
たないとしていたのは、その証明中、「小図形の凸包の内角が βi を並べ替え
たものになっている」を示してから、
「ある小図形の凸包が大図形の凸包に一
致する」を示すまでの間、つまりもっと限定して言うと、補題 2 の証明中の、
「角度範囲の制約の議論」によって小図形の頂点の位置が定まっていくところ
でのみ使われています。しかし、凸包が三角形の場合は、ここの面倒な議論
はほぼ不要になります。
実際、三角形の場合は、少しだけ条件を緩めた次の命題がすぐに示されます。
系1
次の図 1 や図 2 の図形は、α1 , α2 , α3 が Q 上 1 次独立のとき、合同分割不
可能。
A1
A1
α1
α1
α3
α2
A3
α2
α3
A2
A2
A3
図2
図1
証明
「小図形の凸包の内角が βi を並べ替えたものになっている」を示すまでは
定理 1 と同じ。その後、
• 図 1 の場合
6
Xs2 ,1 Xs2 ,2 Xs2 ,3 = β2 であり、これと Xs2 ,1 , Xs2 ,3 ∈ A を実現しよう
とすると、{Xs2 ,1 , Xs2 ,3 } = {A1 , A3 } とならざるをえない。この時点
で s2 と A の凸包が一致していることが示されたので、あとは定理 1 と
同じ。
• 図 2 の場合
Xs2 ,1 Xs2 ,2 Xs2 ,3 = β2 であり、これと Xs2 ,1 , Xs2 ,3 ∈ A を実現しよう
とすると、Xs2 ,1 , Xs2 ,3 のうちどちらか一方は A3 に一致し、もう一方
は辺 A1 A2 上になければならない。また、6 Xs3 ,2 Xs3 ,3 Xs3 ,1 = β3 であ
6
り、これと Xs3 ,1 , Xs3 ,2 ∈ A を実現しようとすると、Xs3 ,1 , Xs3 ,2 のう
ちどちらか一方は A2 に一致し、もう一方は辺 A1 A3 上になければなら
138
ない。これより s2 と s3 が大図形の領域を「分け合えない」ことが示さ
れる (定理 1 の最後と同様、内部に折れ線をとる方針で示される)。
せっかくなので、合同分割できない多角形の例をいくつか挙げてみます。
A = 1◦ , 6 B =
割できない。
例1
6
√
◦
2 ,6 C =
√
◦
3 を満たす凹四角形 ABCD は、合同分
これは定理 1(の系) そのままです。1,
√ √
2, 3 が Q 上 1 次独立であることは
容易に確かめられます。
もう少し卑近な例を挙げてみます。
例 2 次図の四角形は、合同分割できない。
A1
2
2
3
A4
A3
4
A2
これは、90◦ , 6 A2 , 6 A4 が Q 上 1 次独立、或いはそれと同値な
u1 , u2 を (u1 , u2 ) 6= (0, 0) を満たす整数とする時、
u1 6 A2 + u2 6 A4 が 360◦ の倍数となることはない。
を示せば、示されます。これを証明しておきます (Z[i] の理論を用います)。
証明
u1 6 A2 + u2 6 A4 が 360◦ の倍数であるとする。6 A2 = arg(2 + i), 6 A4 =
arg(3 + 2i), −6 A2 = arg(2 − i), −6 A4 = arg(3 − 2i) に注目して、α を 2 + i か
2 − i のいずれか、β を 3 + 2i か 3 − 2i のいずれかとして αu1 β u2 ∈ R(u1 , u2
は非負整数) と書ける。さらにこの式は Z[i] の元であるため αu1 β u2 ∈ Z を
得る。さらに、これより αu1 β u2 = αu1 β
u2
が得られる。
9
しかし、Z[i] は一意分解環 であり、また α, β, α, β 、つまり 2 + i, 3 + 2i, 2 −
i, 3 − 2i は、互いに同伴でない素元である。よって上の式は (u1 , u2 ) = (0, 0)
でない限り成り立ち得ない。よって示された。
■
9Z
における素因数分解と同じような概念を、Z[i](= {a + bi|a, b ∈ Z}) において考えたも
のを「素元分解」という。Z[i] が一意分解環であるとは、その素元分解が (Z での素因数分解の
ように)1 通りに定まる、ということをいったものである。
139
こうして、合同分割不可能な多角形が様々存在することが分かりました。
しかし、ここまで見つけてきた合同分割不可能な多角形は、全て凹多角形で
す。そこで、次の章では、合同分割出来ない凸多角形の存在を示します。
合同分割不可能な凸多角形
4
実は、次の定理が成り立っています。
定理 2 n 個の内角の大きさが Q 上 1 次独立な凸 n 角形 (但し n ≥ 4) は、合
同分割不可能。
証明
「小図形の凸包の内角が βi を並べ替えたものになっている」を示すまでは定
理 1 と同じ。つまり、大図形を A1 A2 · · · An (= A) とし、6 At = αt (1 ≤ t ≤ n)
とするとき、補題 1 より At = Xst ,t (1 ≤ t ≤ n) なる st 達をとれ、その後の
議論によって、小図形の凸包は n 角形であり、さらにそれを Xc1 Xc2 · · · Xcn
とおくと、6 Xci−1 Xci Xci+1 = αci が成立 (定理 1 の証明中で定義した β は、
ここでは大図形が凸のため α に一致する)。
ここから、小図形が凸多角形でなければならないことを示す。
各 i について Aci = Xsci ,ci であるが、6 Xsci ,ci−1 Xsci ,ci Xsci ,ci+1 = αi か
つ Xsci ,ci−1 , Xsci ,ci+1 ∈ A を実現するためには、点 Xsci ,ci+1 は大図形の辺
Aci A(ci −1) 上か辺 Aci A(ci +1) 上になくてはならない。ここでは、辺 Aci A(ci +1)
上にあるとする。このとき、
「小図形 sci の周を点 Xsci ,ci から点 Xsci ,c(i+1) ま
で辿った折れ線 (辿り方は 2 通りあるが、その出発時の方向が点 Xsci ,c(i+1) の
いる方向に「近い」方の辿り方を行う)」と線分 Aci Xsci ,c(i+1) によって囲ま
れる領域 (境界は含まない) を D とし、これを考える。D が空となることを
示す。
Aci = Xsci ,ci
D
Xsci ,c(i+1)
Aci +1
140
D は、小図形 sci (境界を含めて考える) が全く領有しておらず、しかも他
の部分と連結していない領域となっている。つまり、D は、(もし空でなけれ
ば)sci でないいくつか (1 個以上) の小図形によって合同に分割されている。
それらの小図形のうちの 1 つを S(境界を含む) とおく。
..
また、D は、小図形 sci の凸包 sci (境界を含む) に含まれている ( . D の境界
は全て凸包に含まれている。また、D の内部の任意の点に対し、その点を通
る適当な直線を 1 本引き、D の境界との 2 交点をとると、その 2 点はどちら
も凸包に含まれており、最初にとった点はその 2 点がなす線分上にあるので、
やはり凸包に含まれる)。
しかし、このとき S ⊂ D(の境界も含めたもの) ⊂ sci であるため S ⊂ sci
であり、さらにこの 2 つは合同な多角形であり面積が等しいため S とsci が
一致する。しかし、S(の内部) ∩ sci (の内部) = φ , S ⊂ S であるため sci が
潰れる。よって不適。つまり D は空である。すなわち、D の定義にあった
「小図形 sci の周を点 Xsci ,ci から点 Xsci ,c(i+1) まで辿った折れ線」は、線分
Xsci ,ci Xsci ,c(i+1) である。sci を取っていうと、「小図形の周を点 Xci から点
Xc(i+1) まで辿った折れ線」は、線分 Xci Xc(i+1) である、ということになる。
これが全ての i で成立するので、小図形は凸となる。
さて、小図形が凸と分かったことにより、小図形の内角が α の並び替えで
あることが分かる。(小図形の凸包がそうであり、またそれが小図形と一致す
るため) ここで、α 達が Q 上 1 次独立であることを思い出すと、次が従う。
u1 α1 + u2 α2 + · · · un αn = 180◦ なる
u1 , · · · , un ∈ Z は存在しない。
..
( . 180◦ =
1
(α1
n−2
+ · · · + αn )、また
1
n−2
6∈ Z に注意)
これは、小図形の角をいくつか集めることで 180◦ になることは決してない、
ということを示している。これより、
大図形 A の周上にある任意の小図形の頂点は、
A の頂点のどれかに一致する。
(4)
が従う (つまり、大図形の周上で頂点でない場所には小図形の頂点は存在し
得ない、ということ)。
実はここから先は再び定理 1 と同じである。すなわち、補題 2 が示される。つ
まり、(4) が示されたおかげで、
「大図形とその凸包が共有点を A1 , A2 , · · · , An
だけしか持たない」という (定理 1 における) 仮定がなくとも、補題 2 で使わ
れていた「角度範囲の制約の議論」で小図形の点の位置を決定していけるよ
うになったのである (11 ページ目の前半を参照)。
141
なお、補題 2 が示され、その後すぐに、ある小図形の凸包が大図形の凸包
に一致することが示された時点で、後の議論は不要となる (小図形、大図形
ともに凸であることが分かっているため)。
■
5
あとがき
結局、合同分割出来ない多角形が予想通り見つかって、しばらく未解決だっ
たものが解決しました。これは、嬉しいことです。しかし、常識的な考えと
して「ほとんどの図形は合同分割不可能だろう」というのがあると思うので、
合同分割の不可能性が分かっても、あまり面白くなかったかもしれません。
今後、合同分割に関する研究をするときは、むしろ「意外にも合同分割可能
な図形」を発見したいです。
また、この「合同分割」に関して何らかの研究をしていらっしゃるという
方がいれば、是非 [email protected] にメールしてくださると幸い
です。この記事に関する質問や感想もこちらへどうぞ。
今回、高校最後の部誌ということもあって、やはり自分の好きな幾何の分
野にしようかと思って記事を書いたのですが、幾何分野の記事を TEX で打つ
のは初めてだったので、図の作成などが大変に疲れました (kpic.sty を使用)。
それに加えて、毎年の反省点である「締め切りギリギリ」は、今年も改善さ
れることなく、時間の余裕がない状況で研究をし、記事を書かなければなり
ませんでした。こればかりは、来年以降、何としてでも改善したいですね。
校正をしてくれた関君、編集責任者の佐藤君に、この場を借りて感謝の意
を表しておこうと思います。最後になりましたが、この記事を読んでくださっ
た皆様、ありがとうございました。
6
参考文献
「線型代数学」佐武一郎著 裳華房
142
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