およびデスエチルアミオダロン

《制作者:山崎》 Title:アミオダ̲一般20̲岸田 Page:93
.
.
(
.
): 〜 一般講演 1
8
アミオダロン
(AMD)
およびデスエチルアミオダロン
(DEA)のeNOS由来一酸化窒素産生に及ぼす効果
―アミオダロンの心血管保護作用―
岸田
信也
Ma
中島
敏明
飯田
Ji
陽子
岩沢
邦明
大沼
仁
永井
良三1)
藺牟田宏之2)
り測定し,real time PCR法によりNOSの定量も行った.
はじめに
また,アポトーシスの検出は専用キットを用いて行っ
不整脈の発生は,カテコールアミンなどのホルモン,
ている.
アンジオテンシン変換酵素などの酵素に加え,サイト
結
カイン,一酸化窒素
(NO)などによる構造的ならびに
電気的リモデリングが関与しているものと考えられる.
また,アミオダロンの心血管保護作用は,血管系,
果
1.アミオダロン,およびDEA投与によるNOS発現へ
の影響
および心筋への作用に分けて考えるべきであろう.血
左 心 房 お よ び 左 心 室 心 筋 細 胞 に お い て,iNOS,
管系では,―デスエチルアミオダロン(DEA)やアミ
eNOS,nNOSのすべての発現がみられた.これに対し
オダロンによる
での血管拡張作用が知られて
てHUVECでは,iNOSやnNOSの発現は認められず,
1―3)
いる
.また,心筋に対しては,抗不整脈効果のほか,
2+
心筋リモデリング,Ca 過負荷抑制作用が知られてい
eNOSのみの発現が認められた.
Real time PCR法による定量では,ヒトの心臓細胞に
4)
おいて,eNOSが心房および心室で高濃度に発現して
こうした背景を踏まえ,今回われわれは,アミオダ
いることが確認された.HUVECでも同様にeNOSの発
る .
ロンが心血管系において心保護的に作用するeNOSの
活性化を来し,NO濃度を上昇させる結果,心血管保護
作用を来すか否かについて実験を行った.
現が多く認められた
(図1左)
.
また,免疫染色法によりeNOSの発現をみたところ,
negative controlと比較して,心内膜および心室筋細胞
のいずれもが濃染され,eNOSの発現が確認された
(図
実験方法
.
1右)
実 験 に 用 い た 細 胞 は,ヒ ト 臍 静 脈 内 皮 細 胞(HU-
2.アミオダロン,およびDEA投与によるNO産生への
VEC)
である.アミオダロンおよびDEAを1μMから
影響
30μMまで,様々な処理時間を設定して検討を行った.
図の上段が蛋白補正前,下段が蛋白補正後である.
NOの測定方法は,灌流液中の代謝物である亜硝酸イ
10μM,
30μM
図2Aが,アミオダロン1μM,3μM,
オンの濃度をGriess法を用いて測定した.さらに,NO
で処理し,測定した結果である.アミオダロン3μM
選択的高感受性微小電極を用いて直接的に測定した.
から3
0μMにかけて濃度依存的にNO産生の有意な上
NO合成酵素
(NOS)のmRNAの発現は,RT―PCRによ
昇が認められている.また,図2Bの時間依存性をみた
結果では,2時間以上で有意な産生の亢進が認められ
1)S. Kishida, J. Ma, K. Iwasawa, R. Nagai:東京大学大学院医
学系研究科循環器内科 2)T. Nakajima, Y. Iida, H. Onuma, H.
Imuta:同虚血循環生理学
ている.
0287―3648/06/¥500/論文/JCLS
μMから3
0μMまで調べた結果,1μM以上で有意な
代謝物であるDEAについて,アミオダロンと同様1
―
(
1477)―
《制作者:山崎》 Title:アミオダ̲一般20̲岸田 Page:94
.
Expression of eNOS in human heart
Human Heart
Endocardium
0.00004
0.00003
eNOS
Neçative
0.00002
0.00001
0
nNOS A nNOS V eNOS A eNOS V
HUVEC
0.00007
0.00005
0.00003
0.00001
0
nNOS
eNOS
Ventricular cells
図1 ヒト心筋細胞ならびにHUVECにおけるeNOS,nNOSの発現
NO産生量
Ami1
NO産生量
(μM)
35
30
25
20
15
10
5
0
cont
B
(μM)
6
**
5
**
4
**
3
2
1
0
Ami3 Ami10 Ami30(μM)
0h
(μM)
14
**
**
12
10
**
8
6
4
2
0
Ami3 Ami10 Ami30(μM)
0h
NO産生量
NO産生量
A
(μM)
12
10
8
6
4
2
0
cont
Ami1
図2
**
**
**
**
2h
4h
8 h 12 h
**
**
**
**
2h
4h
8 h 12 h
アミオダロン投与によるNO産生への影響
図上段は蛋白補正前,下段は蛋白補正後.また,Aはアミオダロン用量別,Bはアミ
オダロン作用時間別の結果である.**:p<00
. 1.
B
(μM)
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
Effects of desethylamiodarone
図3
**
**
**
(μM/mç)
4
3.5
3
2.5
2
1.5
DEA3 DEA10 DEA30(μM)
1
0.5
0
**
DMSO
Ami10
DEA10
**
NO産生量
NO産生量
(μM)
3.5
3
2.5
2
**
1.5
1
0.5
0
DMSO DEA1
**
NO産生量
A
**
DMSO
Ami10
DEA10
アミオダロン,デスエチルアミオダロンのNO産生に与える影響
Aはデスエチルアミオダロンの用量別の効果,Bはアミオダロンとデスエチルアミオ
ダロンの比較;上段は蛋白補正前,下段は蛋白補正後.
―
(
1478)―
《制作者:山崎》 Title:アミオダ̲一般20̲岸田 Page:95
第10回アミオダロン研究会講演集
LDH産生量(IU/L)
A
B
**
DMSO
Ami1
control
図5
(nM)
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
Amiodarone 10μM
図4
Amiodarone 100 μM
(×10−5)
18Sを内部コントロール
とした相対量
DEA
0
Ami 30(μM)
アミオダロン投与によるLDHを指標とした細胞障害への影響
10
0
Ami 6
20
40
60
s
3
2
1
0
高感受性微小電極を用いたNOの測定
DMSO
Ami 10
Ami 30
図6 アミオダロン6時間処理によるeNOS mRNA発現に
及ぼす効果
上昇が認めれ(図3A)
,濃度依存性を示した.図3Bは
アミオダロンとの比較であるが,代謝物であるDEAの
Real time PCR法によりeNOS mRNAの発現をみた
方がNO産生力が強いことが示されている.
アミオダロン1μM,3μMおよび10μMで24時間
後のNO産生をみたところ,1μMから有意な上昇が
ところ,アミオダロン1
0μM,および3
0μMの6時間処
理では統計的な有意差はみられなかった(図6).
認められ,濃度依存性を示すことが確認された.
考
高感受性微小電極を用いてDEA 3
0μM投与による
NOへの影響をみたところ,投与直後より速やかなNO
の上昇が認められた
(図4)
.
察
アミオダロンおよび―デスエチルアミオダロンは,
臨床血中濃度において細胞障害を来すことなくeNOS
細胞障害についてLDHを指標として検討した.臨床
由来のNO産生を亢進し,心血管保護作用をもたらす
血中濃度を超えるアミオダロン6μMにおいてもLDH
と考えられる.この機序には,細胞内Ca2+濃度の上昇
の有意な上昇は認めなかったが,さらに高濃度の3
0μ
が関係している可能性が高いと推測される7,8).
MではLDHの上昇が認められた(図5A)
.また,細胞数
さらに近年,心房細動症例ではNOレベルが低下し
および形態について2
4時間処理の影響を観察したとこ
ている9),あるいはeNOSの産生がdown―regulateされ
ろ,1
0μMまではほぼ変化がみられなかったのに対し,
ているとする報告10)がみられる.
1
0
0μMでは著明な細胞数の減少,および細胞の不整形
が認められた
(図5B)
.
NOは血小板凝集能を低下させ,血栓形成を抑制す
ることが知られている.本研究の結果から,心房細動
HUVECsを用いてアポトーシスの誘導を確認した
患者に対するアミオダロン投与はNO合成を亢進させ
ところ,アミオダロン3μM 2
4時間処理では確認でき
ることにより血栓形成を抑制するものと推測できる.
なかった.しかし,アミオダロン3
0μM 2
4時間処理で
はアポプトーティックな細胞が多数認められた5,6).
―
(
1479)―
《制作者:山崎》 Title:アミオダ̲一般20̲岸田 Page:96
.
おわりに
血管内皮細胞や心内膜において,アミオダロンは
eNOSの活性化をもたらすことが,心血管保護作用を
呈する一因であろう.また,アミオダロンはeNOSの活
性化により血小板凝集,血栓形成の抑制をもたらすこ
とにより,心房細動における左房内血栓形成の抑制を
介して,発作予防に関わる可能性も考えられ,今後の
さらなる研究が期待される.
文
献
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causes endothelium―dependent vasodilation in human
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induced coronary vasodilation in guinea pig heart. Eur
7.
J Pharmacol 2004;49
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4)Tachikawa H, Kodama M, Watanabe K, et al:Amiodarone improves cardiac sympathetic nerve function
to hold norepinephrine in the heart, prevents left ventricular remodeling, and improves cardiac function in
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05;1
1
1:
9.
89
4―89
5)Bargout R, Jankov A, Dincer E, et al:Amiodarone induces apoptosis of human and rat alveolar epithelial
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2
000;278:L10
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6)Choi IS, Kim BS, Cho KS, et al:Amiodarone induces
2 human lung epithelial cell line.
apoptosis in L―13
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02;1
32:4
7―55.
7)Himmel HM, Dobrev D, Grossmann M, et al:N―desethylamiodarone modulates intracellular calcium concentration in endothelial cells. Naunyn Schmiedebergs
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Arch Pharmacol 200
0;36
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8)Powis G, Olsen R, Standing JE, et al:Amiodarone―mediated increase in intracellular free Ca2+ associated
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9
0;10
3:15
6―
16
4.
9)Minamino T, Kitakaze M, Sato H, et al:Plasma levels
of nitrite/nitrate and platelet cGMP levels are decreased in patients with atrial fibrillation. Arterioscler
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5.
Thromb Vasc Biol 1997;1
7:3
19
1―3
10)Cai H, Li Z, Goette A, et al:Downregulation of endocardial nitric oxide synthase expression and nitric oxide production in atrial fibrillation:potential mechanisms for atrial thrombosis and stroke. Circulation
58.
20
02;106:2
854―28
―
(
1480)―
《制作者:山崎》 Title:アミオダ̲一般20質疑̲岸田.ec5 Page:97
第10回アミオダロン研究会講演集
質疑応答
座長/鎌倉
史郎(国立循環器病センター心臓血管内科部長)
堀江
稔(滋賀医科大学内科学講座循環器内科教授)
演者/岸田
信也(東京大学大学院医学系研究科循環器内科)
堀江
(座長) どうもありがとうございました.アミ
検討が必要だと考えています.
オダロンがeNOSを介して心血管,特に血管保護作用
また,イオンチャンネルに関してお示しした微小電
を示すのではないかというご検討ですが,ご質問,コ
極のデータでは,非常に速やかなNO濃度の上昇が認
メントはありませんでしょうか.
められており,Ca2+濃度の関与が考えられます.
中谷
(千葉大) アミオダロンは歴史的には狭心症予
中谷 Ca2+を介するとすると,アミオダロンはイオ
防薬として使われましたので,血管拡張効果は昔から
ン チ ャ ン ネ ル に 作 用 し ま す の で,例 え ば Ca2+ acti-
知られており,そういう意味で非常におもしろい結果
vated K channelをブロックしたり,Ca2+濃度の減少を
だと思います.
抑制して二次的に作用するなどが考えられると思いま
eNOSの活性化に関して,電極内からNOを測定され
す.血管平滑筋のイオンチャネルについての研究で,
ていますが,NOSなどの酵素に直接作用するのか,あ
そうした作用をみられているのか,あるいはこれから
るいはCa濃度やカルモジュリンなどを介してNOSを
みる予定があるのか,教えていただけますか.
活性化しているのか,先生のお考えをお聞かせくださ
い.
岸田
現在計画していまして,どのような方法が最
適かを検討しているところです.
岸田
(演者) 今回,NOS mRNAに関しては有意差
中谷
どうもありがとうございました.
はみられませんでしたが,様々な濃度や処理時間での
堀江
先生,どうもありがとうございました.
―
(
1481)―