ハバナーダ

NATALの定番
ハバナーダ
改めて言うまでもなくブラジルはキリスト教の国。なので、年間を通して最も盛り上がる季節イベント
は、カーニバルとナタールになります。ナタール。はい、クリスマスのことです。ヨーロッパの伝統的なキリ
スト教国には、それぞれ独自の、あるいは共通したクリスマス料理がたくさんあります。ターキーやチキン
の丸焼きはほぼ世界共通のクリスマス料理といえますし、逆にイタリアならばパネトーネ、ドイツならば
シュトーレン、フランスやオーストリアならばクーゲル・ホッフ、などなど国ごとに微妙に違うパンがあっ
たり、とひと口にクリスマス料理と言っても、とても奥深いものです。
移民国家・ブラジルでは、一般的なお料理も南欧由来のものもあればロシア由来だったり、アジア由来だ
ったり、アフリカのもの、アラブのもの、そして先住民だったインディオたちのものなどが、渾然一体、溶け
合っています。当然、ナタールのお料理も、色々な国の影響が垣間見えるラインナップです。チキンの丸焼
きと、イタリア渡来のパネトーネが最右翼となりますけれど、それ以外にも北米からやってきたテンダー
ロイン・ハムがメインを飾ったり、そうかと思うとその付け合せに、生粋のブラジルで生まれたお料理・フ
ァロッファが添えられたり。ポトガル渡来のバカリャウも、ナタールの人気食材です。ですが、特に興味深
いブラジルのナータル料理を挙げよ、と問われたならば、わたしはこう答えるかもしれません。ハバナー
ダ、と。
ハバナーダ。下記の材料と作り方をご覧いただければ、どんなお料理がすぐに察していただけるでしょ
う。そう、わたしたち日本人にも馴染み深いフレンチ・トーストそっくりです。
そもそもフレンチ・トーストはその名の通りフランス発祥。彼の国では pain perdu(パンペルジュ)と呼
ばれていて、直訳すれば“失われたパン”となります。・・・はい、イタリアのアクアコッタ同様に、古くなっ
て硬くなってしまったフランス・パンを、牛乳に卵を溶いたアパレイユに浸して焼くことで美味しく食べ
よう、という発想から始っているお料理なんですね。もちろん、今でこそ本場フランスでも、様々なアレン
ジがされてとてもゴージャスなパンペルジュもあります。が、それでも一般家庭では相変わらず残り物整
理を兼ねた朝食メニューと言いますか、いずれにせよ素朴なものです。
なのに、そのパンペルジュも大西洋と赤道を越えたブラジルでは、クリスマス料理の一翼を担っている
わけで、文化が伝わる過程で起こる変異・変質は、本当に不思議なものです。
ブラジルのパンペルジュ=ハバナーダ。恐らくはドイツ系移民がブラジルに伝えたのだろう、と推測さ
れます。いや、ブラジルにはフランス系移民が殆どいませんよし。また、ナタール以外の時も、ハバナーダは
ブラジルで食べられていますし、それは牛乳と卵に浸したパンを焼いただけ、というシンプルで質素なも
の。けれども、ナタールではコンデンスミルクも加えた、まるでブラジルのプジンのような味わいにして、
シナモン・シュガーを塗した、ゴージャス版のハバナーダがテーブルにのるわけですね。
近年は日本国内でもカフェのメニューなどに卵とオレンジジュースのアパレイユに浸したものや、カフ
ェオレと卵に浸したものが登場してします。トッピングも、メイプル・シロップや生クリーム、ベリー類や
粉砂糖、とバリエーション豊かなフレンチ・トーストたち。ですが、そんなバリエーションの究極の形の1
つに、ブラジルのハバナーダがあることも、ぜひ覚えていてくださいね。
ハバナーダ
材料(12~15 個分)
パリジャン(フランスパン)
1本
全卵
2個
砂糖
適宜
コンデンスミルク
240g
牛乳
180g
シナモンパウダー
適宜
作り方
1) 砂糖とシナモンパウダーを合わせ、スプーンの背などで砂糖の塊をつぶしながら
よく混ぜる。
2) フランスパンを斜めにスライスする。
3) コンデンスミルクと卵、牛乳をひとつのボウルに入れ、泡立てずによく混ぜる。
4) 3)に 2)じっくり浸す。
5) フライパンに植物油を薄く敷き、軽く熱したら 4)を弱火で焼く。焦げやすいので
注意。
6) 5)の全体に 1)を塗す。