生体親和性バイオセラミックスの開発と実用化に関する研究

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生体親和性バイオセラミックスの開発と実用化に関する
研究
近藤, 和夫
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2000
http://repo.lib.nitech.ac.jp/handle/123456789/428
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遜 ⑳
生体親和性バイオセラミックスの開発と
実用化に関する研究
2000年
Kazuo
近藤
Kondo
和 夫
目
次
序論
第1章
1.1本研究の背景
1
1.2
従来の研究
2
1.3
本研究の目的
6
1.4
本研究の概要
7
引用文献
8
バイオセラミックスの歴史と種類について
第2章
2.1
緒言
10
2.2
バイオセラミックス●の歴史
10
2.3
リン酸塩化合物と生体との関係
14
2.4
結語
15
図表及び引用文献
第3章
16
リン酸カルシウムセラミックスの原料合成
3.1緒言
19
3.2
合成方法
20
3.3
合成リン酸カルシウム粉末の粉体特性
22
3.4
結語
23
引用文献
第4章
23
高強度リン酸カルシウムセラミックスの焼結技術
4.1緒言
24
4・2
24
高強度水酸アパタイトセラミックスの焼結の研究
4・2-1リン酸カルシウム焼結体の製造方法
24
4・2-2水酸アパタイトの焼結
27
4・2-3アパタイトセラミックスの焼結性
30
4・2-4高強度アパタイトセラミックスの調整
34
4.2-5高強度リン酸カルシウム焼結体の製造方法
41
4.2-6高強度リン酸カルシウム焼結体
44
4.3
47
結語
引用文献
第5章
49
高強度リン酸カルシウムセラミックスの特性評価
5.1
緒言
50
5.2
実験
50・
5.3
結果
51
5.4
結語
53
引用文献
54
第6章
医療用具としての評価
6.1
緒言
55
6.2
医療用具の要求条件
55
6.3
承認申請資料
55
6.4
臨床試験
56
6.5
評価方法及び結果
57
A
生物学的安全性試験
57
B
動物試験による骨誘導能の確認
60
結語
66
6.6
図表及び引用文献
第7章
68
リン酸カルシウムセラミックスの臨床応用
実施例Ⅰ:臨床応用(Ⅰ)
7.(Ⅰ).1緒言
74
7.(Ⅰ).2
リン酸カルシウムセラミックス焼結体の特徴
74
7.(Ⅰ).3
対象症例及び投与方法
76
7.(Ⅰ).4
評価法
78
7.(Ⅰ).5
症例呈示
79
7.(Ⅰ).6
結果
7.(Ⅰ).7
考察
7.(Ⅰ).8
結語
実施例Ⅱ:臨床応用(Ⅱ)
86
7.(Ⅱ).1緒言
7.(Ⅱ).2
材料及び動物実験
86
7.(Ⅱ).3
結果
87
7.(Ⅰ).4
考察
87
7.(Ⅱ).5
結語
88
実施例Ⅲ:臨床応用(Ⅲ)
7.(Ⅲ).1
緒言
88
7.(Ⅲ).2
材料及び動物実験
88
7.(Ⅲ).3
結果
89
7.(Ⅲ).4
考察
90
7.(Ⅲ).5
結語
90
引用文献
第8章
92
医療用具の開発
8.1
ジルコニアセラミックス製人工骨頭
8.1.1生体ジルコニアインプラント材
1)緒言
94
2)実験
94
3)結果
p5
4)結語
96
8.1.2
UT
Z-3
0ジルコニアの組織親和性と力学的検索
1)緒言
97
2)実験
97
3)結果
99
4)考察
101
5)結語
102
8.1.3
人工股関節の疲労強度試験
1)緒言
103
2)実験
103
3)結果及び考察
104
4)結語
105
関節シミュレータによるジルコニア人工股関節の性能評価
8.1.4
1)緒言
105
2)実験
106
3)結果及び考察
106
4)結語
108
図表
109
8.2
アルミナセラミックス製人工骨頭
8.2.1高純度アルミナセラミックスの力学的検索と組織親和性
1)緒言
119
2)実験
119
3)結果
119
4)考察
121
5)結語
123
図表及び引用文献
124
第9章
9.1
バイオセラミックス材の実用化
一商品展開-
人工骨
9.1-1
緒言
136
9.ト2
セラタイトの特徴
136
9.卜3
セラタイトの物理的、化学的性質
137
9.卜4
セラタイトの優れた生体適合性と骨形成能
138
9.1-5
セラタイトの生物学的安全性
138
9.卜6
商品適用
139
9.1-7
結語
140
図表及び引用文献
141
9.2
人工股関節骨頭
9.2-1緒言
145
9.2-2
ジルコニアヘッドの特徴
145
9.2-3
製品形状
146
引用文献
第10章
総括
147
148
本文に関する著者の特許・論文
150
謝辞
156
第1章
序論
1.1本研究の背景
今後の高齢化社会では2010年には65歳以上が我が国では4人に一
人という世界に類をみない超高齢化社会になると言われている。そのよう
な状況下で骨粗髭症や骨腫瘍などの骨の病気や交通事故などによって、身
体機能の一部を失ったり、局部的な欠陥や欠損を生じた場合に、その部分
に補填し、修復する目的で使用されるのが生体材料であり、骨や歯などの
硬組織の機能や形態の修復を目的としたものを硬組織代替材料と呼ばれて
いる。その代表的なものには人工歯根、人工関節、人工骨などがある。こ
れらは生体内に埋入されるため、インプラント材料と言われている1)。
セラミックスは一般に金属や有機に比べ、生体内で化学的に安定であり、
毒性がなく、異物反応を示さない所から、近年、注目されてきており、人
工歯根や人工関節としてすでに実用化されている。それらの代表的な材料
としてはアルミナとハイドロキシアパタイトである。アルミナは機械的性
質に優れ、工業製品やエレクトロニクスセラミックスとして利用されてい
るが生体親和性も良好なため、人工歯根や人工関節として実用されている。
一方、ハイドロキシアパタイトは脊椎動物の硬組織を構成する無機成分で
あり、生化学的な見地から最適な代替材料として考えられ、バイオセラミ
ックスとしての利用の研究が急速に進んでいる。一時人工歯根として実用
化されたが、機械的強度不足などで改善が必要になっている。
そのような中で脊椎動物の硬組織を構成している無機成分であるハイド
ロキシアパタイトの高強度化と任意の形に成形加工できる方法が試みられ
ており、人骨と同程度の機械的強度が得られればその材料は患者や医者
(D
r.)にとってよいインプラント材料となるだろう。
-1-
従来の研究
1.2
青木ら2)は水酸アパタイト(以下HAPと表す))を原料とし、優れた
機械的強度をもつセラミックス材料を開発する目的で、以下の研究を行っ
た。湿式法並びに乾式法による合成で得られるアパタイトと生体の骨や歯
から有機物を除いた生体アパタイトはいずれも粉末であるので、これをな
んらかの方法で成形・加工し、人工骨、人工歯根としての機能を果たす機
械的強度の大きいものにすることが必要である。
青木らはアパタイトなどのリン酸カルシウム化合物の加熱による相変化
を調べた結果、アパタイトは1000℃付近から焼結することを認めたので、
この焼結によりアパタイトを成形し、これを空気中、900∼1300℃
で焼結させる常圧焼結法とホットプレス装置3)により、900∼1300
℃、9.8∼19.6MP
aの高温・高圧下で焼結させるホットプレス法
を用いて、強度の大きいアパタイト焼結体とすることを試みた。
各種アパタイトをこの2通りの方法で焼結させると、いずれもホットプ
レス法による焼結体の方法が、細孔度が小さく、圧縮強度やヌープ硬度の
大きいものとなることがわかった。例えば、水熱合成法により調整された
水酸アパタイトを空気中、1100℃で焼結させたものは圧縮強度が約88.
2MP
aであるが、同じ温度で13.23MP
aの圧力をかけたホットプ
レス焼結体では117.6MP
aとなり、さらに1200℃以上の高温で
は常圧焼結体は強度が低くなるのに比べ、ホットプレス焼結体は196M
P
aを越える圧縮強度をもつものが得られた。
一方犬の骨や歯の生体アパタイトは常圧焼成でも焼結がよく進み、歯ア
パタイトを1200℃、1時間焼結させたものの圧縮強度は245MP
となり、1300℃における最高値117.6MP
HアパタイトとβC
a
aの2倍強となり、O
Pと表す)の複合物のもの
a3(PO4)2(以下TC
が優れた性質を示したと報告している。
赤尾ら4)は湿式法で合成された水酸アパタイト粉末(C
9)を金型プレスで60∼80MP
12
0
0、12
5 0、130
a/P=1.6
aの常圧で成形し、大気中で1150、
0℃の各温度で3時間焼成した。それらの焼
-2-
結体の機械的性質について調べ、その1300℃で焼結した焼結体が圧縮
強度で509MPa、曲げ強度で113MPa、ねじり強度は76MPa
であった。この焼結体の構成相はHAP相のみでTCPは検出されなっか
た。この物性(509MP
8MP
a)は皮質骨の圧縮強度(88.3∼163.
a)の3∼6倍の強度を示す。曲げ強度(113MP
の引っ張り強度(88.9∼113.8MP
a)は皮質骨
a)に非常に近い値を示した
ことを報告している。
Ja
r
c
h
oら5)は湿式法で合成したTCPに(NH。)2SO。をドープ
された粉末(C
a/P=1.5)を1、200℃で焼成した焼結体は圧縮強
度が687MP
a、引張り強度は154MP
aの機械的特性をもち、骨補
填材料として期待されると報告している。
川村ら6)はTCPセラミックスの高強度焼結体について研究している。
それはTCP乾式合成粉末を焼結して、184.24MP
達成している。また湿式合成粉末(C
で191・1MP
aの曲げ強度を
a/P=1.5、反応温度>70℃)
aの曲げ強度が得られた。更に添加物を加えた研究の中
で、SiO2のリン酸カルシウムの焼結強度に及ぼす影響について研究し、
254・8MP
aという高い曲げ強度を達成している。高強度化の原因と
して、シリカ添加系試料では液相の存在が電子顕微鏡観察より認められる
ことにより、それらが高強度化の原因と考えている。
小久保ら7)はMgO-C
aO-SiO2-P205系結晶化ガラス粉末を作
ったうえ成形し1200℃にて焼結させると、アパタイト・ウオラストナ
イト(A-W)含有結晶化ガラスからなる高強度複合材ができ、動物実験
での評価でも、骨との接合強度が強く、複合材の機械的性質も通常の骨と
同等以上の性質を有していると報告している。
阿部ら8)はC
a
O-P205系ガラスの一方向結晶化により、従来のセラ
ミックスの脆いという欠点を克服した強靭性リン酸カルシウムー方向結晶
化ガラスを開発し、更に表層をアパタイト化することにより、化学的安定
性、生体親和性の向上を得た一方向結晶化ガラスを、動物実験により、4
週以降部分的に骨と直接接することを報告している。
門間ら9)は水和反応で合成されたC
a-HAPから作製したセラミック
-3-
スの内、化学量論C
a/P比よりも若干低いC
a/P比を持つものが高い
曲げ強度を示すことを報告している。
浅田ら10)は門間らの研究に基き、C
a/P比を変化させたときの、原料
粉末の焼結性並びに焼結体の微細構造及び機械的性質への影響を検討し、
低C
a/P比のものはど、赦密化の始まる温度は高くなり、焼結性も悪く、
機械的性質は、全般的に高密度焼結体が高い値を示すことを報告している。
この時の圧縮強度の最大値は、(平均約1009.4MP
は1.52MP
a、破壊靭性値
a・ml/2であった。
以上のごとく、各研究者により、リン酸カルシウムの高強度化の研究が
精力的に行われている。ここで、これまでに報告された水酸アパタイトや
リン酸三カルシウムの焼結体の力学的性質を表1に示す11
体硬組織の力学的性質を表2に示す。19)
-4-
18)。また、生
Mechanicalproperties
・Tablel
Phosphate
Compressive
Sintering
temp・
Strength
(℃)
HAP
after
(MPa)
hydroxyapatite
of
tricalcium
and
sintering
Bending
Tensile
strength
Elasticity
Refere-
Fracture
toughness
strength
nce
(MPa)
(MPa)
(GPa)
117
34.5
1.16
11,12)
(MPaml/2)
1100
917
196
1250
800
115
112
1.0
5)
1300
509
113
87.8
0.69
13,14)
15)
TCP
1100
687
154
33.0
l150
459
138
89・2
1100
Table2
1・14
Mechanicalproperties
Strength
(MPa)
89-164
Bending
strength
(MPa)
160-180
18)
of
bio-hardtissue19)
Tensile
Torsional
strength
(MPa)
52
l.9-7.0
(GPa)
15.8
0.18-0.33
bone
Dentine
295
51.7
‖璧=萎
Ename1
384
10.3
82.4
-5-
Fracture
toughness
strength
(MPa)
88-114
Elasticity
bone
Spongy
1、5,17)
181
Compressive
Compact
16)
(MPaml/2)
2.2-4.6
1.3
本研究の目的
リン酸カルシウム系の代表的なセラミックスは水酸アパタイトとリン酸
三カルシウムである。水酸アパタイトは工業的に重要な物質でその物理的、
化学的性質に従来から合成法、結晶構造、溶解性、吸着特性などの研究が
行われている18)。水酸アパタイトは生体硬組織(骨、歯)を構成する無機
成分である炭酸含有アパタイトの基本化合物であるが、撤密質焼結体が得
られにくいということから、水酸アパタイトの焼結及び焼結体の製法に関
する研究が行われた。その水酸アパタイトは古くやらタンパク質、核酸を
分離するためのカラムクロマトグラフィーの吸着媒として用いられていた。
この事は水酸アパタイトが細胞その他の生体組織及びその構成成分と高い
親和性を持つことを示すものであり、水酸アパタイトの焼結体のインプラ
ントへの応用が検討された。1974年、1975年に米国や日本で同時
に水酸アパタイトの焼結体が開発され、これらは骨と歯のミネラル成分に
極めて近い組成のセラミックスで、自家骨と同程度に親和性が優れている
ことが確認され、今日世界的に活用されるに至った20)。
一方、リン酸三カルシウムは1971年に西ドイツで骨や歯のミネラル
組成に近いリン酸三カルシウムセラミックスとして開発され、その多孔体
は骨置換材として極めて優れていることが動物実験により実証された。リ
ン酸三カルシウムの級密質焼結体の開発は大分遅れて始まり、一応評価さ
れる強度が得られたのは1982年ごろである21)。このようにリン酸カル
シウムセラミックスの生体への応用研究は、多くの大学で精力的に行って
いるが、人骨の皮質骨と同等以上のセラミックスの研究は未だこれからの
研究成果に待たれる。我々はできるだけ生体の骨に近い成分で如何に高強
度のセラミックスが得られるにはどのような手法があるか、また得られた
セラミックスの焼結体がはたして、人工骨として利用できるのかを研究開
発し、世の中にこのような生体親和性に優れたセラミックスを待ち望んで
いる患者やD
r.の為に研究に着手した。
本研究の目的はセラミックスの通常の製法でかつ成形の形状付与が容易
な手法で、骨皮質と同等以上の強度をもつ高強度リン酸カルシウム系セラ
-6-
ミックス焼結体を得ることを目的とし、更に得られた焼結体の特性を明ら
かにし、医療分野への応用(人工骨)として可能かどうかを検証し、イン
プラント材料として商品を開発することを目的とする。
1.4
本研究の概要
本研究の概要について、以下各章別に概要を述べる。
第1章では本研究の背景及びリン酸カルシウム系セラミックスに関する
従来の研究の概要及び本研究の目的を示した。
第2章ではバイオセラミックスの歴史及びセラミックスの種類を述べ、
更に生体親和性に優れるセラミックスに要求される項目を明らかにした。
第3章では第1章で述べたリン酸カルシウム系材料の合成方法及びそれ
らの特性について述べた。
第4章ではリン酸カルシウム系材料の焼結方法について既往の研究と本
研究の焼結方法の違いを明らかにし、本研究の焼結手法で高強度な焼結体
が得られることを示した。
第5章では第4章で述べた本研究の焼結方法で得られた焼結体の諸特性
を既往の方法で得られたものと比較し、その特性の違いを明らかにした。
第6章では本研究で得られたリン酸カルシウムセラミックス焼結体が医
療用具と使用されるために必要な生物学的安全性の評価結果を明らかにし、
臨床応用への基礎データを示した。
第7章ではリン酸カルシウムセラミックスの.臨床応用の内容及び評価結
果を明らかにし、具体的な実施例を掲げ各々について考察を加え有効性を
実証した。
第8章では高強度リン酸カルシウムセラミックス材料の他に医療用具と
して人工股関節骨頭(ジルコニア、アルミナ)の開発及び実用化について
述べた。
第9章では本研究で開発した生体親和性に優れたリン酸カルシウムセラ
ミックスの人工骨及びジルコニア、アルミナの人工股関節骨頭の医療用具
としての商品について概略説明した。
-7-
第10章「総括」では各章で記述した研究結果を総括するとともに今後
の課題を示した。
引用文献
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(1979)142-150
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[11]M.Jarcho、C.H.Bolen、M.B.Thomas、J.Bobick、J.F.Kay、
R.H.Doremus:J.Mater.Sci.,11、2027(1976)
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J.Mater、Sci.,15、891(1980)
[13]M.Akao、H.Aoki、K.Kato:J.Mater.Sci.,16,809(1981)
[14]G.DE.With、H.J.A.Vandijk、N.Hattu、K.Prijs:
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15、17
Inst.Med.Dent.Eng.
(1981)
[16]M.Akao、N.Miura、H.Aoki:Yogyo-Kyokai-Shi、92、674(1984)
-8-
[17]M.Akao、H.Aoki、K.Kato:J.Mater、Sci.,17、343(1982)
[18]川村資三:第2回名工試におけるセラミックスの研究に関する講演会概要集
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[19]赤尾
勝、青木秀希:第1回アハ0タイト研究会、16-24(1985)
[20]金沢孝文、門間英毅:化学の領域、27[8]、662-72、[9]、752-61(1973)
[21]八一ィオセラミックスの開発・利用動向に関する調査研究報告書、JFCA(1986)
-9-
第2章
2.1
バイオセラミックスの歴史と種類について
緒言
セラミックスは金属や高分子と比べ、生体内で安定で、且つ生体組織と
の一親和性がよく、腐食や拒絶反応がほとんど認められないため、現在人工
骨、人工関節、骨代替材料、人工歯として用いられ、バイオセラミックス
としての製品群を形成している。最近では、更に生体に近い材料、生体と
同じような特性を持った材料を創製することに、最新のセラミックス製造
技術が適用され進められている。第2章ではバイオセラミックスの歴史及
びバイオセラミックスの種類について述べる。
2.2
バイオセラミックスの歴史
(1)バイオセラミックスとは
バイオセラミックスとは「生体の構造・機能の代替を行い、あるいは生
体情報を収集する事を目的とし、主構成物質が無機、非金属である材料と
製品の製造及びその利用に関する技術と科学である。」と定義できる。従
って、失われた生体の構造・機能を人工材料で補ってその部分の機能と形
態の回復を図ることを目的とするインプラント(補綴)にとどまらず、医
用・生体計測に用いられている感温素子、音響振動子、圧電素子、放射線
検出素子、光電導、ひずみゲージ等のセラミックスセンサをも含んでいる
1)。義歯を除けば、むしろ後者の方がバイオセラミックスとしての歴史は
古い。
医療・生体計測に用いられる材料に対して、体内にインプラントされ生
体を代替する材料には厳しい条件が課される。生体内にインプラント材を
挿入した際の組織反応としては、まず外科的処置の際の組織損傷に対する
反応、生体内の厳しい環境による表面の酸化、加水分解による材料の劣化、
繰り返し応力による材料の疲労損傷、表面の摩擦、腐食などに関係した組
ー10-
織の反応がある2)。特に、腐食した金属はインプラント材近傍や周辺組織
ばかりでなく、血中や尿中にもイオンが遊出するといわれている0
セラミックスは金属や高分子材料と比較して、一般に生体内で極めて安
定で、且つ生体組織との親和性がよく、腐食や拒絶反応がほとんど認めら
れない3)。これはセラミックスが既に安定な酸化物として素材を形成して
おり、イオン結合や共有結合による原子間結合が大きいためである。
(2)バイオセラミックスの歴史
口腔内でのインプラントの試みは古くは古代エジプトにまでさかのぼり、
文献としては1954年Marzianiがセラミックスの人工歯根をインプラン
トした報告がある4)。この当初に試みられた医用人工材料のはとんどが金
属と有機ポリマーに関するもので、無機材料では人工歯根としてのPorce1ainが主であった。
骨置換材料としては従来ポリマーと金属が主に使用されていた。金属は
ステンレス鋼、C
o-C
r合金、チタンまたはチタン合金であり、ポリマ
ーはシリコン、ポリエチレン、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)
などであった5)。ポリマーや金属は機械的性質に優れるが、金属イオンや
モノマーの溶出が避けられず、生体親和性に問題があり、長期に埋入する
にはより親和性に優れた材料が求められていた。
一方、ファインセラミックスの進歩により、優れた機械的性質や化学的
特性を持ったファインセラミックスが作成できるようになり、その化学的
な安定性から医療材料として注目されていた。このような最初の材料とし
て、1971年以降、Hulbert6)、Grenoble7)、Hench8)らの一連の広範な
研究成果の公表による多孔質セラミックス9)、Vitreous
Carbon7、10)Bio
glass8、10)などの生体適合性を示すセラミックス人工材料の出現により、
セラミックスが一躍脚光を浴びるようになった。1970年代後半からア
ルミナセラミックスが開発され、機械的性質と生体親和性にも優れ、人工
股関節の骨頭やその他の関節材料、人工骨や人工歯根、骨折固定用のスク
リューなどとして実用化されるようになった-1)。しかし、アルミナセラミ
-11-
ツクスは金属やポリマーに比べ親和性に優れて、条件が良いときには骨と
の直接接合がみられるが、骨と材料の界面では骨との結合が得られない。
a
一方、1971年に米国のHenchらはC
O-N
a20-P205-SiO
2系ガラスが骨と直接結合することを世界で最初に示し、このガラスをbio
glassと名付けた8)。
その後、西ドイツのライツ社でBromerらにより一部組
成を改善し、ガラスセラミックス、Ceravital12)が開発された。バイオガ
ラスの組成に酸化マグネシウムを5∼10mass%、フッ化カルシウム1ma
SS%添加でセラミックスのイオン組成を生理学的生体組織組成に変え、炭
酸アパタイトを生成させ親和性を改善した。また1976年に米国のJarc
hoらと日本の青木らにより焼結水酸アパタイトが作られ骨と結合すること
が示され、それぞれ臨床に適用されてきた。TC
Pが置換性材料として評
価されたのは1920年Albee13)に始まるといわれるが、リン酸カルシウ
ムがセラミックスとして形をなしたのは1970年代に入ってからである。
TC
Pの人工骨材へ利用が考えられたのは1971年西ドイツのBhaskarら
14)による。このTCPは初めの頃は多孔質体の開発が先行し、同時に生体
反応テストが盛んに行われ、骨補填部への充填用や頭蓋骨などに応用され
た。TC
Pの赦密焼結体の開発は多孔質より大分遅れて始まり、一応評価
される程度の強度が得られたのは1981年ごろからである。しかし、こ
れらの材料は機械的強度が皮質骨に比べ低く、荷重下では破断する心配が
あり、非荷重下でのフィラーとしてのみに限られたものであった。そこで、
Bioactiveで皮質骨より強度の優れた人工骨が望まれていた。
ガラスセラミックスのアパタイトーウオラストナイト(A-W)結晶化ガ
ラスは1982年に京大の小久保ら15)により開発され、骨と化学的に結合
するBioactiveな性質を持ち、且つ機械的強度が皮質骨より高いため、基礎
的な研究を経て人工骨としての可能性が示され、臨床に適用されてきた。
阿部ら川)は1976年に燐酸カルシウム系一方向配向結晶化ガラスにお
ける結晶成長温度は通常のガラスではガラスの転移点(Tg)付近あるいは
それ以下の低温では硬い状態であるが、この燐酸カルシウム系ガラスでは
例外的に成長結晶化速度が異常に大きいことを見出した。メタリン酸カル
シウム(C
a
O/P205=1)組成付近のガラスを温度勾配化で、且つガラ
-12-
ス転移点(Tg)付近で熱処理することにより、1983年17)に高配向結晶
化ガラスを得ている。また阿部らのグループは燐酸カルシウム系の高強度
結晶化ガラスの骨インプラント材料としての研究を行い、燐酸カルシウム
系のガラス融液の鋳造成形(遠心)-結晶化により、・結晶化ガラス人工歯
冠の開発研究が1984年に行われた18)。
C
aO-P205系主体のガラスの体積結晶化は難しいので、ガラス粉末
の焼結一結晶化により一種の結晶化ガラスを作る研究が行われた。この方
法は成形性、強度の点で体積結晶化ガラスに劣るが、多孔質体の製造には
適している。人工骨材料の適用の際には気孔(特に連続気孔)の中に天然
骨が成長してからみ合うので、気孔の存在が望ましいとされている。
Pernotら19)はC
a
O-P205系及びC
O-A1203-P205系のガラ
a
a
ス粉末(<270メッシュ)に発泡剤としてC
CO3を加え、600∼650
℃付近で焼結一結晶化させて気孔率30∼80%のセラミックスを作った。
主結晶相はβ-C
a(PO3)2であり、気孔系15∼100LLm、曲げ強度
6.86∼39.2MP
1203pP205系、C
a
aのものを得ている。その他、C
O-K20-A
aO-Al203-P205-SiO2系の同様の多孔質
20)。
結晶化ガラス(焼結一結晶化体)についての報告がある
一方、Zbuら2】)は同様に、C
aO-A1203-P205系ガラス粉末(少
量のTiO2、アルカリ、MgO、Fを含む)とC
aHPO4粉末との焼結
一結晶化体を作った。21)気孔率12%、気孔径20∼200/上m、主結晶
相はβ-C
a2P207であり、インプラント実験は好結果であったとしてい
る。
今後は本研究が目的とするBioactiveなリン酸カルシウムセラミックスを
常圧焼結法で皮質骨と同等以上の強度をもつセラミックスを開発し、生物
学的安全性試験及び臨床応用で高強度リン酸カルシウムセラミックス焼結
体の安全性や機能性を確認し、世の中で医療用具を望んでいる医師や患者
のために役にたつセラミックスを提供することが望まれる。
-13-
リン酸塩化合物と生体との関係
2.3
生体内にはどこにどれだけの燐酸塩が分布しているのか。人体を構成す
る主要成分は表2-1,22、23)に示す。燐は体内で酸素、炭素、水素、窒素、
カルシウム、についで6番目に多く含まれており、体重の1%程度(50
0∼800g)を占めている。表2-2に示すように体内に含まれる燐の内、
約8
5%程度が骨や歯などの硬組織に、他の15%が軟組織や血液に分布
している。
セラミックスが骨や歯にどれだけ近づけられるのか、まず骨と歯の構造
について述べる。人骨は206個からなり、骨の役割は体を隅々まで支え、
脳や内臓を保護し、生体活動に必須のカルシウムとリンを貯蔵する。即ち、
骨は約7
0%の水酸アパタイトと約30%の繊維性蛋白のコラーゲンから
なる。図2-124)に示すように水酸アパタイトは長さ20∼40nm、幅
1.5∼3nmの微細な板状晶の形をとり、コラーゲン繊維の上に規則正
しく並び、そのコラーゲン繊維が平行に並んで層板を形成し、層板が同心
円状に巻いて骨単位を形成し、骨単位が何本か並んで長管骨の皮質部を形
成している。骨は極めて巧みな無機一有機複合体である。骨単位の中心には
血管が走り、そこから骨単位内部の細胞に栄養が補給され細胞は絶えず骨
の吸収と増殖をしている。
骨に荷重が加わると、骨はかなり大きい応力に至るまで弾性変形(粘弾
性変形)を示し、その後かなりの永久変形を示してついに破壊に至る。弾
性変形率のヤングー率は7∼30GP
2
00MP
a、曲げ及び圧縮強度は共に100∼
a程度である。骨の力学的性質はセラミックスのそれとかなり
似ているが、セラミックスの場合には一般に粘弾性や永久変形を示さず圧
縮強度が曲げ強度の数倍になる。
歯はまたかなりの荷重にたえることを要するので、その構造も骨の構造
によく似ている。ただし、最外層のエナメル質の部分だけは97%水酸ア
パタイトからなり、その性質はセラミックスのそれにより近く、ヤング率
50G
P
a、曲げ強度10MP
a、圧縮強度240MP
骨や歯の代替材料に要求される条件は骨の場合は次の様である。
ー14-
a程度である。
1)生物学的条件
・毒性、組織刺激性、発ガン性などの有害な作用を示さないこと。
・周囲の組織とよくなじむこと。
・周囲の骨と強い化学結合をつくること。
2)力学的条件
・骨と同等かそれ以上の機械的強度を有し、それが生体内の応力下に
おいても低下し難いこと。
・骨に近い弾性率をもつこと。
・低い摩擦係数と摩耗速度を示すこと。
3)製造、使用上の条件
・成形、加工が容易なこと。
・滅菌処理の際変質しにくいこと。
歯の場合も皆の場合とほとんど同じである。ただし、歯冠材料の場合に
は、天然歯に近い色調と透光性、硬度、熱膨張係数、熱伝導度などの条
件がいる。
2.4
結語
バイオセラミックスの歴史及びセラミックスの種類について述べた。ま
た生体親和性にすぐれたセラミックスの開発に必要な項目を明らかにする
とともに、本研究の目的との関連を明らかにした。
-15-
舶in
Table2-1
0:
6
C:
18
ConpornlentS
5
H:10
P
TabLe2-2
80ne
Conponent
K
O.3
1.5
S
O,2
】
Total:9
Hunan
Soft
O.4
80dy(爪aSS%)
Hunan
3
in
85
Tooth
i●n
tissue
Blood
9
Body(nass%)
14
O.3
関壬
節軟骨
art icuIarcartilage
海綿骨ト
SpOngy
骨梁
)ne
trabecul
判
緻密骨 (骨質)
COmpaC
Ctbone
骨膜
periosteu
栄養動脈
ヨ
≡草書
/
潤
骨単位
狙
OSteOn
_.ノー
(3∼7JJm)
/
ノ
/
ヾ■
ス管
ハーノ\-
haversian
アパタイト結晶
canal
(長さ200-400Å)
apatitecrystal
ー.
l
-l
.ヤ
.1■′
1l
;狩I`
跡= ・●イも
・㌔
払
Fi
g.2-1骨の構造24)
Bonestructure
ー16-
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-18-
第3章
リン酸カルシウムセラミックスの原料合成
3.1緒言
バイオセラミックスとして利用されている種々のリン酸カルシウム化合
物の組成式、略号および溶解度積を表3-1に示す1)。図3-1に種々のリン酸
カルシウム化合物の蒸留水中での溶解度(37℃)を縦軸にカルシウム濃
度(対数比)、横軸にPHに対して目盛ったものである。蒸留水のPH調
整は塩酸及び水酸化ナトリウムを用い、これらPH調整材はイオン強度の
P及びT
みに関与するとした。α-TC
e-C
Pは乾式合成で得られるも
C
ので、通常の水溶液下では生成しない。またβ-T
PもMgなどが共存
しないと水溶液中では生成しにくいことが知られている2)。この図から、
中性からアルカリ領域ではHAPが安定相で他のリン酸カルシウム化合物
が生成しても最終的にはHA
Pが安定相として析出することが解る。リン
酸カルシウム化合物の代表的なセラミックスは水酸アパタイト(HAP)
C
とリン酸三カルシウム(T
Table3-1
Solubility
applied
Compound
P)である。
products
of
phosphate
compounds
bioceramics
as
Abbreviation
Solubility
products
CaHPO4・2H20
DCPD
2.34×10
6
CaHPO4
DCPA
9.50×10
7
CaH(PO。)3・5/2Ⅲ20
0CP
5.02×10
50
Ca5(PO。)3(OH)
HAP
2.13×10
59
βCa3(PO。)2
β一TCP
2.19×10
30
αCa3(PO。)2
α-TCP
3.16×10
26
Te-CP
8.32×10
31
Ca。0(PO。)2
ー19-
-
(三\用∪卜)どl・
■
-
-
I
-
フし
3
バ「
5
6
7
4
5
6
8
7
9
111Z
10
P卜1
Fig.3-1Solubility
as
3.2
a
products
function
of
of
calcium
phosphate
salts
pH
合成方法
HAPの原料合成は表3-2に示すように①乾式法、②水熱法、③湿式法、
④メカノケミカル法、⑤アルコキシド法があり、それぞれに生成物に特徴
がある3▼5)。乾式法はリン酸カルシウムあるいはC
カルシウム)とC
a
a2P205(ピロリン酸
CO3を水蒸気下で加熱処理する。生成物の化学組成比
を正確に制御でき、各粒子の性状も比較的均一であるが、粒子の大きさが
5-8〃′mであり、微粒子をつくることは困難である。
水熱法は比較的大きな単結晶を得るために行われる。この方法は乾式法
と湿式法の中間にあたり、オートクレーブを用い200∼450℃で水蒸
PDもしくはD
気圧下(高圧窒素ガスなどで加圧する場合もある)でDC
C
PAを加水分解してHAPを合成、もしくは湿式法などで得たfiAPを
熟成する方法、またフラックスを用いた引き上げ法で単結晶HAPを合成
している。
湿式法はカルシウム塩(C
a(OH)2、C
a(NO:i)2等)とリン酸塩
(H3PO.、(NI-Ⅰ。)2IiPO。等)を適当なPI-Ⅰに調節した溶液中で混合し、
-20-
沈殿反応をすすめ、熟成を行う。この方法で生成する粉末は非化学量論組
成(C
a/P=1・5∼1・7)のものが生じやすいので、溶液のPH、温
度、混合速度、撹拝速度などの反応条件の制御を正確に行う必要がある。
しかし、湿式合成では熟成時間をかなり長く(1週間から2週間)するこ
とにより化学量論比の水酸アパタイトを合成している。こうした水溶液反
応では10nmオーダーの微粉末を作ることができ、工業的製造法として
現在最も普通に行われている。
メカノケミカル法は、C
a
aHPO4・2H20とC
CO3を湿式で混合粉
砕し、750℃で仮焼するだけで簡単に合成できる新しい合成法である。
これは粉末に摩砕、摩擦、衝撃などの機械的エネルギーを加えることによ
り、反応活性な新鮮断面の生成、結晶表面の無定形化、相転移等の過程を
経て化学変化を起こさせるものである。またTC
と同様な方法で、C
Pの合成はHAPの場合
a/P=1.5になるように行えばよい。
Table3-2
Preparations
(1)Dry
method
hydroxyapatite
of
Steam
l.3CaO(PO.)2+CaO--->HAP
Steam
2.3Ca2P207+4CaCO3--->HA
P+CO2
Air
3.6CaHPO4+4CaCO3---->HA
(2)Hydrothermal
P+2H20+4CO2
method
1.CaHPO4・2H20(brushite)--->HA
P
2.10CaHPO4(monetite)+2H20--->HA
P
3.CaHPO4+H3PO4--->HA
(3)wet
P
method
1.CaC12+H3PO.--->HA
P
-21-
NaOH
P
2.Ca(NO3)2+KH2PO4--->HA
P
3.Ca(OH)2+H3PO。--->HA
NH3
P
4.Ca(NO3)2+(NH4)2HPO4--->HA
P
5.Ca(NO3)2+NH。H2PO.+NH.OH--->HA
(4)Mechano-Chemical
Wet
method
mix
P
1.CaHPO。・2H20+CaCO3------>HA
(5)Alkoxid
method
P
1.Ca(NO3)2・4H20+(CH30)3PO--->HA
合成リン酸カルシウム粉末の粉体特性
3.3
表3-3に示すように原料粉末の合成法により粉体特性が大きく異なるが、
主として湿式法で調整される粉末が通常用いられる。この方法は一次粒子
を非常に細かく作ることができ、原料粉末の粒子径が小さいはど焼結体の
強度は増加するので好ましい合成法といえる。
Table3-3
Characterization
Synthesis
Crystal
phase
of
Mean
synthesized
particle
size(LLm)
Dry
method
β-TCP
Wet
method
HAP
Wet
method
WET
method
(Rapid
Low
HAP
powders
Specific
amorphous
O.44
method
-22-
4)
59-65
(i)丁)
50-90
H)
100-150
9)
mix)
Mechano-Chemicalβ-TCP
Ref.
area(m2/g)
5.3
4-8
surface
27.4
3.4
結語
リン酸カルシウム系材料の合成方法及びそれらの特性について明らかに
するとともに、高強度リン酸カルシウムセラミックス焼結体を得る粉末特
性を明らかにした。
引用文献
[1]土井豊,Eanes,E,D:歯科基礎医誌,29,25-33(1987)
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[9]梅垣高士、金沢孝文:第5回無機リン化学討論会,72-73
ー23-
(1985)
第4章
4.1
高強度リン酸カルシウムセラミックスの焼結技術
緒言
焼結の目的は成形体における組成、組織及び寸法形状を制御して所定の
特性を持つ多孔質材料や均一高密度材料あるいは多成分複合材料などをつ
くることである。焼結の種類としては①固相焼結、②液相焼結、③加圧焼
結(プラズマ、レーザーあるいはマイクロウエーブなどの熱源)、④スパ
ーク放電焼結、などがあるが1)、本研究の目的である高強度リン酸カルシ
ウムセラミックスを得るために、従来水酸アパタイト(以下HAPと表す)
のみでは焼結しにくく高強度のセラミックスが得られなかったが、水酸ア
パタイトと構成成分が類似のリン酸カルシウム系ガラスを添加物として加
え、常圧焼結で高強度セラミックスが得られないかを研究した。
4.2
高強度水酸アパタイトセラミックスの焼結の研究
4.2-1リン酸カルシウム焼結体の製造方法2)
1)
緒言
高強度且つ撤密質リン酸カルシウムセラミックスの開発、を目的として、
最近注目されている生体硬組織の主要成分である水酸アパタイト(HA
及びリン酸三カルシウム(以下T
してリン酸(H3P
C
Pと表す)の焼結について、添加物と
O。)を用いた。その焼結性と焼結体の微構造、抗折強
度について検討した。
2)
実験
市販のHA
P粉末、T
C
P粉末を用い、H3P
O4を表4-1に示すように
それぞれ規定量添加混合し、バインダーとしてカンファー3mass%をエー
テルに溶解して添加混合し、プレス圧78.4MP
-24-
aにて成型し、成型品
P)
を300℃/hで昇湿し、1000∼1500℃の焼成温度の範囲内で各1
時間保持して焼結体を得た。
3)
結果
これら各温度における焼結体の内、最大強度を有するものを各試料の曲
げ強さの値とした。その結果を表4-1に示す。図4-1にHAP粉末のみ
(Samplel)とH3P
O4を添加物に加えたもの(Sample3)の焼結体の焼
成温度と曲げ強さの関係を表す。縦軸は曲げ強さ(MP
a)、横軸は焼成
温度(℃)を表す。
HAP及びTC
P粉末にH3P
O。を添加した焼結体の結晶粒径は2∼2
0LLm位であり、HAPのみ、その他の添加物(SiO2、A1203、Z
O2)を加えたものに比べ粒成長が抑制されることが判った。
添加物として加えるH3P
O。の添加量は5mass%が最適で、最高強度を
示した。15mass%以上では低融点の化合物が生じ強度が向上しなかった。
4)
結語
高強度リン酸カルシウムセラミックス焼結体を得るには、リン酸の添加
が効果があることがわかった。添加量も5mass%が最適であることがわか
った。
ー25-
r
Table4-1
after
Sample
between
Relationship
Main
H
Ca/p
component
2
HA
3
H
4
A
and
strength
maximum
sintering
Sintering
(100mass%)
1
compositions
Ådded
aid
bending
strength
amount(mass%)(MPa)
無し
O
78.4
H3PO4
0.1
90.2
1.67
H3PO4
5
P
1.67
H3PO4
15
A
P
1.67
H3PO4
20
68.6
C
P
1.5
H3PO4
10
98.0
P
‖=麗蜘
P
1.67
A
P
H
A
5
H
6
T
102.9
IiAP:TCP=1:1
1.58
H3PO4
10
102.9
8
Ca2P207:CaO=8:2‡
l.67
H3PO4
10
96.0
9
同上
‖=莞拍
TCP
9
76.4
10
同上
‖=現出
SiO2
5
引壁=壁
11
同上
1.67
A1203
5
39.2
12
同上
‖=麗鵬
Zr O2
10
46.1
(空車)雲亘お上S
ぎ右u遥
Tcmp.(℃)
Average
bending
strength
vs
-26-
sintering
week
110.7
7
Fig.4-1
Ref.
tempcrature
‡1000℃
水酸アパタイトの焼結二う、7)
4.2-2
緒言
1)
高強度且つ撤密質リン酸カルシウムセラミックスの開発を目的として、
最近注目されている生体硬組織の主要成分である水酸アパタイトの焼結に
ついて、添加物としてリン酸カルシウムガラス4)を用い、その焼結性と焼
結体の微構造、粉末Ⅹ繰回折による構成物について検討した。
実験
2)
市販のHAP粉末を用い、予め調べた仮焼条件に基づいて、1050℃
2時間仮焼し、ガラス無添加品(HAP)、ガラス(組成C
aO/P205=
0・9)を含む(5mass%、10mass%)試料を作成した。焼成は1000∼
1500℃で各1時間行った。各温度で焼成した焼結体の密度、粉末Ⅹ繰
回折及びS
EM観察を行った。
結果
3)
①焼結密度は1300℃焼成より高くなり始め、1350∼1500℃
で最大となり、高温側では主としてHAPの粒成長またはTCPのβ型か
らα型への転移(ガラス添加品)の為に低下する。
②各焼結体の粉末Ⅹ線回折による構成物について図4-2に示す様に、ガ
ラス無添加品(HAP)は1450℃以上に微量のαTC
Pが認められる
他は全てHAPであり、しかも高温になるに従いHAPの回折線強度は弱
くなる。それに反しガラス5mass%含む試料は温度1200℃でHAPが
主成分で一部βTC
Pが認められ高温になる程TC
Pの生成が多くなり且
つβ型からα型の生成比率が高くなる。ガラス10mass%含む試料は5ma
SS%含む試料に比べ低温でTCPの生成が多く、高温になると同様にα型
TC
Pが多くなる。温度1400℃以上になるとβ型TC
かった。
-27-
Pは認められな
4)
考察
①リン酸カルシウムガラスの効果
・HAP粉末にリン酸カルシウムガラスを添加することにより、焼結体
の構成成分はβ型TCPの成長を助長する事が判った。これはHAPとリ
ン酸カルシウムガラスとが反応し、液相焼結で反応部分ではTCPが成長
していることが考えられる。
Pの生成
・高温で焼成した焼結体の構成成分はHAPの脱水によるTC
及びTCPのβ型からα型への転移が促進されることが判った。
・各焼結体のS
EM写真より求めた最大粒径を焼成温度の関数として図
4-3に示す。ガラスを含む試料は含まない試料に比べ最大異常粒径が小さ
く且つ赦密質であることが判り、リン酸カルシウムガラスの効果としては
焼結体の最大異常粒成長を抑制しているものと考えられる。
・今回使用したリン酸カルシウムガラスは約630℃で結晶化し、C
2P207の結晶が析出するが、今回の焼結体での構成物では認められなかっ
た。これはリン酸カルシウムガラスとHAPが反応し、TCPを生成させ
ているものと考える。
5)
結語
HAPのみでは焼結しにくい粉末を同類の構成成分からなるリン酸カル
シウムガラスを添加し、液相焼結により、低温で緻密な焼結体を得ること
ができた。また、焼結体の構成物もHAPとTC
Pの複合体であることが
判ったので、強度の強い焼結体がえられるものと期待される。
ー28一
a
1500
(sdU)き叫S已3亡叫出雲dおJ・択
10 ∞
1000
1200
1400
Temp.(℃)
Fig・4-2X-ray
rlng
---HAP(2.81Å)
・…・一α-TCP(2.90Å)
Of
Peakintenslty
sintered
compositions
vs
sinte-
temPerature・
(∈「こs記叫S亡叫巴餌∈n∈叫誓言
50
40
30
20
10
1000
1200
1400
Temp.(℃)
Fig・4-3Maximum.graモnsizes(ObservedbySEM)ofsintered
COmPOSitions
vs
slnterlng
temPerature・
-29-
4.2-3
アパタイトセラミックスの焼結性5、7)
-リン酸カルシウムガラスの添加効果-
1)
緒言
高強度且つ撤密質リン酸カルシウムセラミックスの開発を目的として、
生体硬組織の主要成分である水酸アパタイトの焼結性について、4.2-2で報
告した3)水酸アパタイトの焼結促進剤としてのリン酸カルシウムガラスは
β型TC
Pの生成を助長し、焼結体の異常粒成長を抑制するので、高強度
の焼結体が得られることを見いだした。
今回、そのリン酸カルシウムガラスの組成比を変えた場合の、焼結体の
強度、微構造,粉末Ⅹ繰回折による構成相について検討した。
2)
実験
市販のHAP粉末(原子比C
a/P=1.68)を用い、予め調べた仮焼条件
に基づいて1050℃2時間仮焼し、ガラス無添加品(HAP)及びガラ
ス組成(原子比C
a/P=0.3、0.45、0.6)を含む(5mass%、
10mass%)試料を作成した。焼成は1000∼1500℃で各1時間行
EM観察を
った。各温度で焼成した焼結体の抗折強度、粉末Ⅹ繰回折、S
行った。
3)
結果及び考察
①各組成物を1000∼1500℃で各1時間焼成した中で最も曲げ強
度が強かった温度(最適温度で焼結した場合)の焼結体の抗折強度(平均
値)を図4-4に示す。フリット添加量5mass%品はフリットのC
a/P比
が異なっても、抗折強度は差程変わらないが、添加量10mass%品は顕著
な強度差が認められた。その原因調査のため、焼結体のS
EM観察を行っ
た。
②各焼結体の組織、粒径を調べた所、4.2-2で報告したと同じく、フt」ッ
ト添加は焼結性の異常粒成長を抑制する。(図4-5)フリットのC
比が異なる焼結体の組織はC
a/P比が高くなる程、粒成長を抑制し、内部
-30-
a/P
気泡が少なくなる傾向にある。
その内部気泡はフt」ット中の残留水分の揮発によると考えられ、一般にC
a/P比が下がると残留水分が多いことが知られている6)。C
a/P比が小
さいフリット程ガラス化しやすく、HAPとの反応性も高いので、粒径が
大きくなるものと推察する。
フリットのC
a/P比が0.6以上になると、添加量5mass%と10mas
S%品の抗折強度の差が縮まり、添加量の影響の影響は少なくなる。ただC
a/P=0・6より高い組成比のガラスを得ることは困難であった。
③各焼結体の粉末Ⅹ繰回折による構成相は表4-2に示す。各焼結体の全
体のC
a/P比が決まれば、構成相は添加されたフリットC
をあまり受けていないことを示している。即ち、C
a/P比の影響
a/P比が高ければ、H
AP相が主結晶として生成し、Ca/P比が小さければβ型TCP相が主結
晶として生成する。高温になるとβ型からα型TCPへの転移が起こる。
④さらに圧縮強度は曲げ強度の約3-4倍の値を示し、例えば表4-2の
試料4では約4倍の圧縮強度を示した。
4)
結語
リン酸カルシウムガラスを水酸アパタイトの焼結促進剤として使用し、
高強度のアパタイトセラミックスを得る為にはC
a/P比が高いフリットを
使用し、添加量も5mass%前後が適当であることがわかった。
焼結体の構成相はC
a/P比が決まれば、一義的に決まることがわかった。
-31-
20
(内包冥)`一ぎ巴}Ⅵぎ葛已遥
00
80
60
40
20
0
0.3
0.6
0.45
Ca/P
Fig,4-4
tered
Relation
between
compositions
Apatite
and
average
bending
strength
ofsin-
fritcompositions
90%
Apatile
Frit(Ca/P=0.3)10%
90%
Frit(Ca/P=0.6)10%
Fig・4-5
SEM
of
Photographs
sintered
bodies
-32-
of
the
at1350℃
surface
Table4-2
Crystalline
phases
of
Composition
No
HAP
2
frit
phase
sintered
Ca/P
0
-
llOO℃Xlh1300℃Xlh1500℃Xlh
1.68
H
H
H、α
95
5
∩.6
l.63
H、β
H、β、α
H、α
95
5
0.45
1.62
H、β
H、β、α
H、α
4
95
5
0.3
1.61
H、β
H、α、β
H、α
5
90
10
0.6
1.57
β、H
α、H、β
α、H
6
90
10
0.45
l.56
β、H
β、H、α
α、H
7
90
10
0.3
l.54
β
8
100
0
1.69
H
l.68
H、α
1.57
β、H
Present3
Jarcho
samples
crystalline
(mass%)(mass%)Ca/P
1100
sintered
(1976)9100
10100
0
0
-
-
-
(*:H;HAP、α;α-TC
ー33-
β、α
β、α
P、β;β-TC
P)
高強度アパタイトセラミックスの調整8、=)
4.2-4
1)
緒言
水酸アパタイトは人間の骨に最も適合する材料の一つとして知られてい
る。しかし、水酸アパタイトの強度の高い焼結体はまだ開発されていない。
現在開発されている水酸アパタイトセラミックスの曲げ強度では骨として
埋め込むのは不十分である。一方C
aO-P205ガラスセラミックスも生物
の骨との生体適合性により、生体材料としての使用に向け研究がなされて
いる。4)
本論文ではC
aO-P205フリットとP205/金属酸化物フリット添加物
が水酸アパタイトの焼結物に与える効果について述べる。この研究は高強
度アパタイトセラミックスを普通焼結(常圧焼結)して作るという目的で
行われた。
実験
2)
原子比1・68のC
a/Pを持った水酸アパタイト原料を沈殿法によって
作製した。9'沈殿した物質を1050℃2時間で予め加熱した。その結果
生じた粉末状の物質は約2.5m2/gの比表面積を持つ。フリットA、B、
C(表4-3)は1100∼1300℃で約2時間白金相場の中でH。PO
4、C
a
CO3、B
a
CO3とA1203の混合物を溶融して作製した。溶融物
は水冷され、固まったガラスは約2.3m2/gの比表面積を持つ粉末状に
粉砕した。そのフリットと水酸アパタイトと3mass%(9g)の有機バイ
ンダーと最適量(300ml)の有機溶媒を加え、湿式混合した。溶媒が
蒸発した後、混合物は78.4MP
a下で幅12mm、長さ40mm、厚
さ4mmの大きさにプレス成形した。こうして4種類の組成物の成形体を
作製した。即ち、NO.1はフリットのない水酸アパタイト、NO.2は
水酸アパタイト+5%のフリットA、NO.3は水酸アパタイト+5%の
フリットB、NO・4は水酸アパタイト+5%のフリットC、更に、NO.
3,4は成形後更に147MP
各成形体はその後、300℃/h
aの静水圧で圧縮した成形休も作製した。
rの条件で1200℃∼1350℃で焼成
-34-
され、各温度で1時間保持される。
各焼結体の曲げ強度、電子顕微鏡による微細構造、粉末Ⅹ繰回折による
構成相を調べた。曲げ強度は2表面が研磨された後にスパンが20mmで
3点曲げ方法によって測定した。クロスヘッドスピードは0.5mm/min.
で行った。
Table4-3
Frit
N
Frit
compositions
Composition(mol%)
o.
P205
CaO
BaO
45.5
54.5
47
49
3
46
20
32
A120。
MO/P205
結果及び考察
3)
焼結温度の関数としての焼結体の平均曲げ強度を図4-6に示す。フリッ
トを含んだ焼結体(NO.2,3,4)は全くフリットを含んでいない焼
結体(NO.1)に比べ曲げ強度において明らかな改善がみられ、曲げ強
度は焼結助剤として使うフリットのタイプに依存するものとわかった。最
も高強度の焼結体(1250℃で焼結されたNO.4;C
少量のB
8M
P
a
aOのかわりに
OとA1203が含まれているもの)の平均曲げ強度は205.
aであった。
図4-7では最大粒径の大きさがNO.1>NO.2>NO.3>N
O.
4の順になる。つまりフリットを加えることにより焼結中、粒子が大きく
なるのを阻止しているのである。"B
a2+、"A12十"を含んだフリット
はより効果的であるように思われる。何故なら、そのフリットはC
205フリットよりも粘性があり、イオンの拡散が阻止されると考えられる
からである。さらに147MP
aで静水圧圧縮された焼結体の気孔サイズ
はより小さい。(図4-8,4-9)
図4-10は、焼結体の強度と焼結バルク密度との関係を示したものであ
-35-
a
O-P
る。静水圧下で圧縮されたNO.3の、焼結していない物と、した物のバ
ルク密度はそれぞれ1.93と3.08g/cm3である。図4-10にみられ
るように、密度は必ずしも強度とは比例しない。表4-4では、フリットの
水酸アパタイトヘの添加はTC
Pを生成させる。3)
最大曲げ強度を備える1250℃で焼結されたNO.4は多量のHAPと
β型T
C
Pと少量のα型T
C
Pからなっていた。
焼結した水酸アパタイトの曲げ強度はC
a
O-P205または、P205/金
属酸化物の添加により高められることがわかった。3)何故なら、水酸アパ
タイトの粒子が大きくなるのが阻止されるからである。ここで考えられる
のは、フリットが焼結温度で溶融して水酸アパタイトの粒子の表面と反応
し、TCPを作り出すということで、この焼結体の粒成長が妨げられる′と
いうことである。フリットにおいて部分的にC
a
Oの代わりにB
a
OやA
1203を使用すると粒成長の抑制には特に効果的である。
最大曲げ強度(205.8MP
強度を高めるのに有効である。しかし一方で、α型T
るだろうとはいえ過度のα型TC
のα型TC
Pは曲げ
a)を持つ焼結体において、β型TC
C
P相が強度を高め
Pは著しく曲げ強度を減少させる。少量
Pは焼結体に部分的なひずみを与え、組織を補強すると考えら
れる。
このように焼結され、生体的にも適合する水酸アパタイトセラミックス
はこの論文では高い強度が得られることが述べられており10)、生体材料と
しての使用が期待される。
-36-
(巾d≡)〓トロ山∝トSロZl凸Z山皿
1200
1100
1300
TEMPERATURE(℃)
Fig・4-6Relationbetweenaveragebendingstrengthofsinteredcom-
POSitionsandsinterlngtemPerature;*indicatesthatsampleswereisoStaticallypressed・
(∈ヱ山N一SZ一<止再二≡⊃≧×<≡
1100
1200
1300
1400
1500
TEMPERATURE(Oc)
Fig・4-7Maximumgraillヲi子eS(ObservedbyscanningelectronmicrosCOpy)ofsinLeredcomposltlOnSVSSinteri11gtemPerature;*indicates
thatsampleswereisostaticallypressed・
-37-
CrYStalline
Table4-4
of
phases
sintered
Crystalline
Composition
samples
phase
NO.C
a/P
1250℃
1300℃
1350℃
l
l.68
H
H
H
2
1.65
H〉〉β
H〉〉β〉α
H〉〉α〉β
3
1.64
H〉〉β
H〉〉β〉α
H〉〉α〉β
4
1.64
H〉〉β〉α
H〉〉α〉β
H〉〉α〉β
H=C
α=α-C
O4)3(OH)、β=β-C
a5(P
a3(P
O。)2
-38-
a3(P
O4)2
Fig・4.8scannlng
fracture surfaces
electron
of products
Fig・4-9scannlng
中CrOgraphsof
forlh
slntered
fracture surfaces
at12500C.G4)Compositionl,100%hydro又y-
of
electron
products
of
micrographs
sintered forlh
チt12500C・(A)Composition3sinteredwithout
apa!i!e(bendingstrength68・6MPa);(B)comhydroxyapatite+5%
lSOStaticpre苧*ng(bendingstrengthlO7・8MPa),
(B)composlt10n3sinteredwithisostaticpress-
(bending
ing(bendingstrength147.8MPa),and(C)comPOSi(ion4sinteredwithisostaticpressing(bend1ngS(rength205.8MPa).
fritA
POSltlOn2,95%
tion3,95%
strengthl17.8MPa);(C)composihydroxyapatite+5%
frit
B
(bendingsけengtblO7.8MP叶
-39-
(佃d三工卜望山∝トS
2.80
2.90
4)
Sanple
3.10
3.20
DENS(TY(g火m3)
BULK
Fig・4■10
3.00
strength
vs
fired
bulk
density
結語
高強度焼結アパタイトはC
aO-P205フリット/金属酸化物系フリット
を用いることにより得られた。フリット組成のC
aOの一部をB
aOまた
はA120こうで置換したときに、焼結体は粒成長が抑制されるために、より
高強度のものが得られた。最も強い焼結体の平均強度は205.8MP
であった0
この焼結体は生体的にも適合する水酸アパタイトセラミックス
であり、骨の皮質骨に相当する強度があるので、生体材料としての使用が
、、期待される。
-40-
a
4.2-5
1)
高強度リン酸カルシウム焼結体の製造方法12)
緒言
高強度焼結アパタイトはC
aO-P205フt」ット/金属酸化物系フリット
を用いることにより得られた。フリット組成のC
a
Oの一部をB
a
Oまた
はA1203で置換したときに、焼結体は粒成長が抑制されるために、より
高強度のものが得られ、4.2-4で報告したように最も強い焼結体の平均曲げ
強度は205.8MP
aであった。この系でさらに高強度を得ることを検
討した。
2)
実験
表4-5に示す組成となるようにH。P
O4、B
CO3、C
a
a
CO3および
A1203を秤量混合し、該混合物を1300∼1400℃でアルミナ相
場中に入れて溶解し、溶融物をカーボン板上に流し、放冷してフリットを
得た。フリットの特性値を表4-5に併記する。
上記フリットをアルミナ製ボールミルで時間を変えて粉砕し、フリット
A,Bそれぞれ比表面積0.6、2.5および4.5m2/gの3種類のも
のを調整した。上記比表面積の異なるフリットと比表面積2.4m2/gの
水酸アパタイト、比表面積2.4m2/gの第三リン酸カルシウムおよびこ
れらの混合物(混合比1/1)と表4-6に示す含有量で湿式混合し、結合剤
として全無機粉末100重量部は対して3重量部のカンファーをエーテル
に溶かして添加し、乾燥後圧力78.4MP
aで幅12×長さ40×厚さ
4mmの大きさに成形し、昇温速度30
0℃/h
r、1000∼1500℃
の各段階温度で保持時間1時間の条件で焼成して焼結体を製造した。
3)
結果及び考察
上記各温度で焼結体中、抗折強度を測定して一番強度の高いものを最適
例として表4-6に示す。
カルシウムのリン酸塩を主体とする粉末の比表面積が2.Om2/gに満
たないと撤密で高強度の焼結体が得られず、3.Om2/gを越えると超微
-41-
粉となり取り扱いが困難のため2.0∼3.Om2/gに限定した。
フリットの比表面積がカルシウムのリン酸塩を主体とする粉末(比表面
積2・0∼3・Om2/g)より小さいとフリットが均一に分散せず焼結体
の強度が低下し、他方、該粉末の比表面積の3倍を越えると超微粉となり
凝集したり、水和層が生じたりして逆に焼結体内部の空孔が多くなり強度
が低下することがわかった。
4)
結論
カルシウム/リン原子比1.4∼1.75のカルシウムのリン酸塩を主体
とする粉末に、焼成後のリン酸カルシウム焼結体に対し0.5∼15mass
%のアルカt」金属、亜鉛及び/またはアルカリ土類金属の酸化物-リン酸系
フリットを添加して焼成する方法において、リン酸塩を主体とする粉末の
比表面積が2・0∼3・Om2/gであり、フリット粉末の比表面積とリン
酸塩を主体とする粉末の比表面積との比が1/1∼3/1であることが高強
度リン酸カルシウム焼結体の製造に適していることがわかった。今回の焼
結体No・4の例では最高強度は229.3MP
aであった。
-42-
Compositions
Table4-5
Frit
N
properties
and
frit
of
Composition(mol%)
B
o・P205
A
4
6
3 2
B
4
7
3
Table4-6
Relation
ered
O
a
C
a
O
Al203
T
g
αXlO
2 0
2
525℃
120
4
1
535℃
120
between
and
properties
specific
9
average
bending
strength
7℃
1
of
sint-
areas
bending
N
(MPa)
o.
(mass%)
(m2/g)(mass%)
1
HAP*
2
HAP
95
A
3
HAP
95
4
HAP
5
1(川
0
78.4
O.6
5
142.1
A
2.5
5
203.8
95
A
4.5
5
229.3
HAP
95
B
O.6
5
117.6
6
HAP
95
B
2.5
5
177.4
7
HAP
95
B
4.5
5
196.0
8
TCP
95
A
2.5
5
171.5
9IiAP・TCP
95
A
2.5
5
163.7
‡)ⅢAP:Ca5(PO。)30Ⅲ
TCP:Ca3(PO。)2
‡*)week
Ref.
heatshock
ー43-
week‥
高強度リン酸カルシウム焼結体13)
4.2-6
緒言
1)
より高強度のリン酸カルシウム焼結体を得る目的で既にカルシウムのリ
C
ン酸塩を主体とする粉末(HAP、T
P)にカルシウム・リン酸系フリ
ットを添加し、常圧焼結で高強度の焼結体を得る方法について前報で述べ
たが、製造する上で強度の強い焼結体が得られる焼成温度範囲が広いこと
が望ましい。
高強度リン酸カルシウム焼結体を得るために、カルシウムのリン酸塩及
びカルシウム・リン酸系フリット粉末混合原料に予備実験として各種の酸
化物(A1203、Z
C
r203、L
r
SiO4、Z
r
O2、SiO2、F
O2、
e203、Mn
a20。、Y203)を添加し、強化材としての効果を確認した
ところ、Y203の酸化物添加が高強度化に効果があることがわかったので
最適な添加量について検討した。
実験
2)
表4-7に示すようにC
。とC
a
C
O
a/P原子比0.3∼0.6となるようにH3P
O3とを混合し、その混合物を1300∼140
ボ内で約2時間加熱して溶融し、急水冷した後粉砕して,C
0℃、白金ルツ
a
O-P205
系粉末フリットを得た。次に水酸アパタイト、リン酸三カルシウム(TC
P)およびこれらの両者の混合物を出発原料粉末として、上記フリット粉
末及びY20:うを所定量添加湿式混合し、バインダーとしてカンファー3%
を適量のエーテルと共に混合して加え、プレス圧78.4MP
し、成形体を昇温速度300℃/h
r、焼成温度1000∼1500℃の範
囲内で各1時間保持して焼結体を得た。焼結体は曲げ強度を調べた。曲げ
強度は2表面が研磨された後にスパンが20mmで3点曲げ方法によって
測定した。クロスヘッドスピードは0.5mm/min.で行った。
-44-
aにて成型
結果
3)
(1)試料3∼6
これらの各焼結温度による焼結体の内、強度の一番高いものを表4-7に掲
げた。さらに1000∼1500℃の各焼成温度における焼成品の強度に
ついて、試料3(Y203を含むもの)と試料2(Y203を含まないもの)
と比較して測定した結果を図4-11に示す。図4-11から高強度焼成温
度範囲の顕著な広がりが明らかである。Y203無添加の対照試料2に比べ
て、添加した試料3∼5は強度が向上している。
(2)試料7∼9
Y203を含むものと含まないものとの対比において、試料3∼6と同様
な方法でC
a/P原子比0.3及び0.45のフリットを使用して焼成体を
得た。いずれの場合も試料3∼6と同様に、Y203添加の効果が高強度化
と高強度焼成温度範囲の顕著な広がりが認められた。
(3)試料10∼11
リン酸カルシウム原料として、水酸アパタイトの代わりに第三リン酸カ
ルシウムを用いて、その他は(2)と同様の方法で焼結体を得た。この系
でもY203の補強効果が認められた。
Table.4-7
Relation
between
the
maximum
strength
and
the
COmPOSition
Frit
N
o.
Ca/P
mass%
Strength
additive
mass%
MPa
mass%
1
HAP
2
ⅢAP
95
0.6
5
3
HAP
85
0.6
9
Y203
6
137.7
4
HAP
85
0.6
6
Y203
9
152.9
5
HAP
70
0.6
12
Y203
18
133.3
lOO
78.4
127.4
t45-
Ref.
weeek
heatshock
7
1
95
0.3
5
122.5
00
An DI
85
0.3
6
Y203
9
132.3
9
An DI
85
0.45
6
Y203
9
142.1
85
0.6
6
Y203
9
147.0
95
0.6
5
0
98.0
一0-Sample2
-X-SanlPle3
(吋dき雲ぎ巴}S
ぎ竃u月
島巴むAく
100011001200130014001500
Tem【〕.(Oc)
Fig・4-11Relation
Sintered
conpositio【一S
between
and
average
sintering
-46一
bending
tenlPerature
strength
of
4)
考察
Y203の添加の効果はさらに最高強度を得るための最適焼成温度範囲が,
Y203無添加のものに比して一段と広くなることにも存する。この結果、
実際の工業的製造において高強度のリン酸カルシウム焼結体の製造が容易
になるという利点がある。
強化剤Y203がなぜこのような優れた効果を発揮するかについては未だ
さだかではないがA1203、Z
r
SiO。、Z
r
O2、SiO2などではいず
れもリン酸カルシウムもしくはフリットと反応し、低強度の結晶を生成し
てしまうため効果がなく、また、F
e20。、Mn
O2、C
r203、L
a20
3などではある程度フリットに対し不溶性であるもののY203に比べて焼結
体への溶け込み量が大きいため、やはり強化効果が発揮されないものと推
察される。
さらに高強度を有する他にその他にも優れた性質を備えている。即ち、
乳酸に対しての溶解度が低く生体材料特に歯科材料に使用した場合極めて
有用である点があげられる。
本方法で得られる高強度リン酸カルシウム焼結体は緻密質であり、さら
に熱膨張係数がα=120∼150×10
7/℃と金属に近似する程度に大
きいので、金属としての組み合わせ材料として用いることができる。
5)
C
結語
a/P原子比0.6のフリット(6mass%)を水酸アパタイト粉末(8
5mass%)に添加しさらに強化剤としてのY20。(9mass%)を加えた混
合物を大気中で常圧焼結した焼結体の曲げ強度は152.9MP
値を示した。さらに高い強度を実現するための最適焼成温度範囲が広いこ
とが判った。このことは実際に工業的製造においては高強度リン酸カルシ
ウム焼結体の製造が容易となる。
4.3
結語
従来、水酸アパタイト(以下HAP)のみでは焼結しにくく高強度のセ
ラミックスが得られなかったが、水酸アパタイトと構成成分が類似のリン
-47-
aの高い
酸カルシウム系ガラスを焼結助剤として加え、常圧焼結で高強度セラミッ
クスが得られることを明らかにし、以下のように結語することができた。
①焼結助剤の検討
水酸アパタイトはそのままでは焼結しにくく、撤密な焼結体が得られ
にくいので、種々の酸化物を検討した結果、リン酸の添加が緻密な焼結
体が得られることがわかった。リン酸添加量も5mass%が最適で、その
焼結体の曲げ強度は110MP
a程度であった。
②リン酸カルシウムガラス添加効果
水酸アパタイト粉末にリン酸カルシウムガラスを焼結促進剤として使
用した結果、高強度アパタイトセラミックスを得るにはC
a/P比が高い
フリットを使用し、添加量も5mass%前後が適当であることがわかった。
得られた焼結体の曲げ強度は140MP
a程度であり、焼結体の構成相
は水酸アパタイトとリン酸三カルシウムの複合体であった。
③リン酸カルシウム/金属酸化物系フリット添加効果
更に高強度アパタイトセラミックスを得るために、リン酸カルシウム
フリット組成のC
aOまたはA1203で置換したときに、
aOの一部をB
焼結体は粒成長が抑制されるために、より高強度の焼結体が得られた。
最も強い焼結体の平均曲げ強度は205.8MP
aであった。
以上の如く、水酸アパタイトを常圧焼結で、高強度化する技術を確立
した。この技術により得られたセラミックスは構成相が水酸アパタイト
とリン酸三カルシウムの複合体であるので、生体親和性を有し、且つ強
度においても、骨の皮質骨に相当する強度を有する為に、生体材料とし
ての使用が期待される。
-48-
引用文献
[1]渡辺龍三:「セラミックス」32No.6
p429-435(1997)
[2]近藤和夫、高見昭雄:リン酸カルシウム焼結体の製造方法、
特許公報
昭60-25383
[3]近藤和夫、高見昭雄、柴田良昌、福浦雄飛:水酸アハ0タイトの焼結について,
昭和55年窯業協会年会講演予稿集p30(1980)
[4]阿部良弘他:歯科理工学雑誌
Vol.1,16,No36,p196-202(1975)
[5]近藤和夫、高見昭雄、柴田良呂、福浦雄飛:アハ0タイトセラミックスの焼結性(リ
ン酸カルシウムがラスの添加効果)第4回無機リン化学討論会講演予稿集
pll-12(1983)
[6]成瀬、阿部、井上:窯業協会誌p36-50[2]76(1968)
[7]高見昭雄、近藤和夫:高強度リン酸カルシウム焼結体の製造方法
特許公報
昭60-44267
[8]K.Kondo,M.Okuyama,H.Ogawa,Y.Shibata
Jounal
of
the
American
Ceramic
Y.Abe:The
and
Society,Vol.67,No.11,
November,C-222∼223(1984)
[9]M・Jarcho,C.H.Bolen,M.B.Thomas,J.Bobick,J.F.Kay,and
R.H.Doremus:J.Mater.Sci.,11,2027-2035
[10]A.Takamiand
(1976)
K.Kondo,"phosphate
of
Calcium
"u.s.pat.4308064,Dec.29,(1981)
[11]高見昭雄、近藤和夫:高強度リン酸カルシウム焼結体
特許公報
昭60-50744
[12]近藤和夫、小川英俊、奥山雅彦:高強度リン酸カルシウム焼結体の製造方法
特許公報
昭64-10464
[13]高見昭雄、近藤和夫:高強度リン酸カルシウム焼結体の製造方法、
特許公報
昭60-44268
ー49一
Ceramics,
第5章
5.1
高強度リン酸カルシウムセラミックスの特性評価
緒言
臨床的に適用されるためには高強度でかつ生体親和性のよい材料を用い
ることが必要と考えられる。今まで研究してきた水酸アパタイトにリン酸
カルシウム系フリットを添加することを報告したが、この高強度リン酸カ
ルシウムセラミックス(開発記号:ⅩVC-56)の特性値を明らかにする
ことは必要である。本章では機械的強度、熱的特性、化学的特性、電気的
特性について明らかにする。
5.2
1)
実験
高強度アパタイト試料の作製
水酸アパタイト粉末(HAP)は湿式法によって合成し、これを予め調
べた仮焼条件の1050℃で2時間加熱したもので、C
a/P(原子比)1.
68,比表面積2.5m2/gである。焼結助剤として、フリット組成がC
O。,C
a/P=0.53(モル比)となるようにH3P
さらに粒成長抑制のためにB
a
a
CO3の混合物に
CO3とA120。を微量添加した混合物を1
100∼1300℃で約2時間白金ルツボの中で溶解しブリットを作製した。
このHA
Pとフリットを湿式混合し、混合物を78.4MP
12×40×4mmの大きさにプレス成型した。成型後147MPaで静水
圧圧縮し、常圧下で300℃/h
rで加熱、1200℃∼1350℃で1時
間保持して焼結させた試料を実験に用いた。対照として、同様に湿式合成
にて作製、1250℃で常圧焼成したHAP単体の焼結体を用いた。
2)
機械的特性
曲げ強度の測定は4点曲げ試験で行い、幅4mm、厚さ3mm、長さ4
0mmの試験片を用い、試験片の個数を10個とし、表面は400番のエメ
-50-
aの加圧下で
リイ川0一により仕上げを行った。測定には万能試験機(島津製作所製、島
津オーげラフAC-5000C)を用いた。
熱的特性
3)
熱伝導率は室温から800℃までの測定を理学電機製熱伝導率測定装置
及び熱膨張係数も同様に室温から800℃までを理学電機製熱膨張係数測
定装置でそれぞれ測定した。
電気的特性
4)
誘電体損失及び誘電率を1MHz(室温)でそれぞれ測定した。
化学的特性2)3)
5)
5)-1
化学的特性として、顆粒の溶解性試験を行った。試料は高強度アパタ
イトと市販のアパタイト(アパセラムR)各1gを用い、純水及び酢酸緩衝
液(PH5・0)各500mlに浸漬し、37℃に保持し毎分60回転で
水平浸湯した。5時間浸漬後、0.2〃mのフィルターで濾過して得られ
た溶液をIC
P発光分光分析装置(日本シーヤーレルアッシュ社製)を用いてC
Pを測定し、溶出量を算定した。2)
5ト2
更に、撤密体の顆粒(0.6∼1.Omm)と多孔体の顆粒(0.5∼
1・Omm)を調整した。その試験は純水および酢酸緩衝液(PH5.0)
に試料を入れ、37℃に保持し、毎分60回転で水平浸湯した。5、20、
40、80時間ごとに0.2〃′mのフィルターで濾過して得られた溶液を
ICP発光分光分析装置(日本シーヤーレルアッシュ社製)を用いてC
し、溶出量を算定した。3)
5.3
1)
結果
機械的強度1)
-51-
aとPを測定
aと
4点曲げ試験の結果、試料10個の平均値はHAP単体:71.5MP
高強度アパタイト:161.2MP
a、
aであり、高強度アパタイトはHAP
の約2倍の強度を示した。
1
HAP
69
181172
ⅠVC-56
2
55
3
4
5
6
81
66
93
91
176
163
159
145
7
8
9
10
64
71
53
72
71.5
162
153
155
147
161.2
ave.
熱膨張係数(ⅩVC-56)
3)
5)化学的特性2)3)
5)-1
5時間浸漬後の溶解性
Dissolution
test2)
Sample
SoIvent
Amount
Dissolution(ppm)
of
(600-1000′上m)
Pure
water
XVC-56(dense)
Apaceram2)
Acetic
(PH5.0)
acid
12
‡VC-56(den.se)
3
Apaceram
12
ー52-
6
5 8
0
1810
9
0
4
3
7
純水中でのⅩVC-56のC
aの溶解性は市販品のアパタイトのそれの約
0.4倍であるが、Pの溶解性は市販品のアパタイトに比べ、13倍の値
を示した。また、酢酸緩衝液中でのⅩVC-56のC
C
aの溶解性は市販品の
a溶解性に比べ約2.8倍の値を示し、Pの溶解性についても、XVC
-56は市販品に比べ約4倍の値を示した。この結果より、ⅩVC-56は
酢酸緩衝液中ではC
a、Pとも市販品に比べ、溶けやすい性質が有ること
がわかった。
5)-2
80時間浸漬後の溶解性3)
更に、ⅩVC-56の多孔体と撤密体及び市販品のアパタイトの溶解性に
ついてはHAP/TC
孔体にC
P=8:2重量比で構成されているXVC-56の多
aとPの溶出が顕著であり、ついでXVC-56の撤密体が続き、
比較として市販品のものは低い値を示した。
表面粗さ(ⅩVC-56)
6)
5.4
研磨前
1.05〃′m
研磨後
0.3〃ノm
結語
高強度リン酸カルシウムセラミックス(ⅩVC-56)の諸特性(機械
的強度、熱的性質、化学的特性、電気的特性)を明らかにし、以下のよう
に結語することができた。
機械的強度
1)
高強度リン酸カルシウムセラミックス(ⅩVC-56)は161.2
MP
aでアパタイトの71.5MP
aに比べ、約2倍強の曲げ強さを示
した。これは人間の皮質骨に近い値である。
化学的特性
2)
市販のアパタイトに比べ、ⅩVC-56は純水及び酢酸緩衝液にたい
し、C
a、Pの溶出が顕著であり、これが早期の骨新生に寄与する事が
期待される。
3)
その他の物性
ー53-
熱伝導性、熱膨張性、電気的特性なども明らかにし、生体材料以外
での用途等にも展開できる。
引用文献
(1992)
[1]松前信作:岐阜歯科学会雑誌、第19巻、第2号、P448
[2]M.ISOGAI,N.KANEMATSU,K.UNO,K.NAGAHARA
OralImplantology
and
Biomaterials,P21-26
and
(1989)
[3]田辺俊一郎、磯貝昌彦、島村憲優、亀谷明秀、宇野克美、近藤和夫、
服部呂晃:第21回日本口腔インフ○ラント学会総会、抄録集、P121(1991)
ー54-
K.KONDO:
第6章
6.1
医療用具としての評価
緒言
前述した高強度リン酸カルシウム焼結体が実際に医療用具として用いら
れるには、その材料の機械的特性のはかに、医学的、生物学的安全性を確
認することが必要である。今回開発した高強度リン酸カルシウム焼結体が
医療用具として使用できるか各種評価を行った。
6.2
医療用具としての要求条件
生体に対する毒性に関しては、厚生省のガイドラインに基き、使用さ
れる材料が各種の安全性確認試験(発熱性物質試験、急性毒性試験、溶
血性試験、移植試験、溶出物試験、組織培養試験)において全く異常が
みとめられないことが必要である。さらに動物実験にても生体活性を有
し骨組織に対する優れた骨誘導能をもつことも確認する必要がある。
以上のような厳しい各種試験で使用される材料が異常がないことを確認
して初めて人間での臨床試験での有用性、安全性を実施することになる。
そして、医療用具を新たに製造しようとする際には、事前に事業所に対
する「許可」と医療用具に対する「承認」の両方を取得しなければなら
ない。その「許可」は事業所が医療用具を製造するにあたり、十分な品
質管理、工程管理などのできる資格を有する人員と製造設備や検査設備
を有するかどうかなどを審査した上で与えられる。また、「承認」は医
療用具が製造され、使用されるにあたって、その有効性と安全性が適切
であるかどうかを審査した上で与えられる。
6.3
承認申請に必要な資料と内容1)
厚生省の審査を受けるにあたり、その有効性と安全性を裏付けるもの
ー55-
として、客観的に判断される資料が準備されなければならない。その承
認申請時に添付すべき資料の範囲について以下に示す。
①起源または発見の経緯及び外国における使用例等に関する資料
1.起源または発見の経緯に関する資料
2.外国における使用例に関する資料
3・原理、特性及び他の類似医療用具との比較検討等に関する資料
②物理的、化学的性質ならびに規格および試験方法等に関する資料
1.物理的、化学的性質に関する資料
2.規格および試験方法の設定の根拠となる資料
3・規格および試験方法を裏付ける実測値に関する資料
③安全性に関する資料
1.長期保存試験に関する資料
2.苛酷試験に関する資料
④生物学的安全性に関する資料とその他の安全性に関する資料
1・急性毒性試験、亜急性毒性試験、慢性毒性試験、皮膚刺激試験、
発ガン性試験、催奇形性試験、発熱性物質試験、移植試験、溶血
性試験等生物学的安全性に関する資料
2・耐圧試験、耐熱試験、強度試験など機械的安全性に関する資料
3.滅菌に関する資料
⑤性能に関する資料
1.性能を裏付ける試験に関する資料
⑥臨床試験の試験成績に関する資料
1.臨床試験の試験成績に関する資料
これらの各項目については、必ずしも全ての資料の提出が必要とい
うことではなく、この中から申請しようとする医療用具について学
問的水準で公知と認められる場合は、その理由を示すことによって
添付しなくてもよいとされている。
6.4
臨床試験関連の資料
-56-
医療用具の承認を受ける際に、臨床試験が要求されるのは次の3つの
場合である。
①日本国内では新規である医療用具
②既存のものであっても、その目的、用途を拡大しようとする医療用
具
③既存のものであっても、安全性をとくに考慮しなければならない医
療用貝
原則として2施設以上の大学病院や公的医療機関などにおいて、各3
0症例以上について実施されたものが必要とされている。
以上の述べた各資料を厚生省に提出し、審査され差し支えないとの結
論が出れば、承認されて製造販売可能となる。
製造承認申請の際に厚生省に提出すべき資料の収集のために行われる
臨床試験については、従来個々に医療用具の申請者が妥当と考えた項
目と方法で実施していたが、厚生省に「医療用具の臨床試験の実施に関
する検討委員会」が設けられ、試験の実施に関する遵守事項の検討が進
められ、平成4年7月1日「医療用具の臨床試験の実施に関する基準
(GC
P:Good
Clinical
Practice)として制定され、全国に通知され
た。2)
6.5
評価方法及び結果
A.生物学的安全性試験
①発熱性物質試験3)
<試験方法>
体重1.5kg以上のウサギ9匹を用い、厚生省告示第298号
(昭45.8.10)Ⅰト(3)ア.発熱性物質試験の項を準用して3検
体実施した。
<試験結果>
接種後いずれのウサギも体温上昇は0.6℃以下で、総て陰性であ
った。
-57-
<判定>
適合
②急性毒性試験4)
<試験方法>
体重20gの純系雄マウス30匹を用い、厚生省告示第ⅠⅠ-(3)イ.
の急性毒性試験の項を準用して3検体実施した。
<試験結果>
5日間観察したが、死亡マウスは認められず、又、生存したマウス
にも異常は認められなかった。
<判定>
適合
③溶血性試験5)
<試験方法>
厚生省告示第278号(昭46.7.19)ⅤⅠⅠ-3.溶血性試験の項
を準用して3検体実施した。
<試験結果>
37℃で24時間放置し観察したが、いずれも陰性であった。
<判定>
適合
④移植試験6)
<試験方法>
体重2.5kg以上のウサギ6匹を用い、日本薬局方(第11改正)
一般試験法(44)1-(12)移植試験の項に従って3検体実施し
た。
<試験結果>
移植72時間後に試験動物を麻酔死させ観察したが、出血、被包形
成などはいずれも認められなかった。
-58-
<判定>
適合
⑤組織培養試験7)
<試験目的>
本材料(高強度リン酸カルシウム焼結体)の生物学的安全性に閲し、
本材料の細胞毒性の有無及び細胞分裂増殖機能への影響を確認するた
め、培養細胞を用いて定性実験、定量試験を実施する。
<試験方法>
・定性実験
C3Hマウス繊維芽細胞由来のL株細胞(L929株)をEagle's
MEMに10%の割合で牛胎児血清を添加した組織培養液中で3時間静
置培養し、そこに平板状の本材料を浸漬させ培養細胞への為害性を
確認した。
対照として99.9%C
o及び硬質ガラスも同様に確認した。
・定量試験
定性試験と同様な方法で実験し、更に10日間静置培養を行い、培
養細胞の形成するコロニー数を算定し、細胞分裂増殖機能への影響
を確認した。
<試験結果>
・定性試験結果
3時間、24時間、48時間、96時間、144時間後に観察した
が、本材料は培養細胞に対し全く為害性を示さず、細胞毒性は全く
認められなかった。(図6-1)
・定量試験結果
コロニー形成率、細胞生存率ともに、硬質ガラスと差がなく、細胞
-59-
分裂増殖機能に全く悪影響を及ぼさなかった。
⑥変異原性試験8)
「細菌による変異原性試験報告」食品薬品安全センター秦野研究所
<試験目的及び試験方法>
本材料の変異原性の有無を確認する為、厚生省GL
P基準及び毒性
試験法ガイドラインに準拠してエームス試験を実施する。
サルモネラTLAlO
O,TA1535,TA98,TA1537及び
大腸菌WP2を用いた検定菌液と、本材料粉末懸濁液及びリン酸緩衝
液(直接試験)又はS-9混液(代謝活性化試験)を混合し、37℃で
48時間培養を行い、発生した変異集落を算定する。
<試験結果>
直接試験、代謝活性化試験共に、コントロールに比較して変異コロ
ニーの増加は認められず、使用した試験系について変異原性を有しな
い(陰性)ことが判定された。
B.動物試験による骨誘導能の確認(生体親和性)
①動物実験(1)9)
<目的及び試験方法>
本材料の生体親和性及び骨組織への影響を確認するため、Z
ラミックス、Si3N。セラミックスと共に動物実験を行った。平均4kg
の家兎を用い、その大腿骨近位骨幹部の中枢と中央に小孔を穿ち、骨
髄内に本材料粉末を注入、又大腿骨顆部を有窓し本材料ねじ螺子を埋
入し、2週、4週で屠殺後、脱灰標本、非脱灰標本を作製、HE染色
し組織学的観察を行った。
<試験結果>
ー60-
r
O2セ
2週の組織学的所見で、骨髄空内の粉末の周囲には新生骨が網目状
に認められ、試料と骨との間には介在物はなく異物巨細胞の出現もな
い(図6-2)。4週の所見で螺子の山、谷部共に自家海面骨骨梁が接
し、試料表面の大部分に新生骨が形成され、全く軟部組織の介在は認
められない。
これにより本材料が生体親和性に優れ、骨組織に対し
bioactiveな性質を有する事が確認された。
②動物実験(2)1())
<目的及び試験方法>
動物実験(1)において本材料の生体親和性が確認されたが、更に
焼成温度の違いによる生体親和性、骨形成能への影響を確認する。対
照としてジルコニアも用いた。
<試験方法>
約2.5kgの家兎(日本白色種)の、大腿骨顆部、脛骨顆部を開窓
し、焼成温度900℃、1100℃、1300℃の3種類の三角錐の
HA
P試料を円柱状に削り、またジルコニアは三角錐のまま本材料を
骨髄内に圧入した(図6-3)。術後、1週、4週、8週、6カ月で屠
殺し、Ⅹ線撮影後脱灰標本を作製、HE染色し光顕にて組織学的検討
を行った。尚、対照としてジルコニアセラミックスも埋入した。
<試料>
HAPはC
a
O-P205系ガラスフリットをHA
焼成することにより、HA
P粉末に添加して
Pとリン酸三カルシウムの二相構造として
粒成長を抑制させ、高強度な焼結体を得ることができた。このため、
フィラー等の充填物のみでなく、腸骨スペーサ等の機械的強度を必要
とする骨補填材としても使用できる。焼成温度900℃、110
のHAP-TC
P複合材はそれぞれ吸水率28%、16%で気孔径5
-15,5-10〟mの連続気孔の多孔体であるのに対して、焼成温
度1300℃のHA
P-T
C
P複合材は吸水率0.2%、気孔径1-
-61一
0℃
5′↓mの独立気孔でほぼ級密体となっている。ジルコニアは焼成温度
1500℃で気孔はなく、見掛け密度が6.O
C
g/cm3とHAP-T
P複合材に比較して極めて高く、また抗折強度も980MP
AP-T
C
aとH
E
Pのそれに比較しても格段に高い。図6-4に各試料のS
M写真を示す。
<試験結果>
術後、創は一次的に治癒し、腫脹、アレルギー反応、炎症反応等の
異状反応はなく、Ⅹ線検査では3種類の本材料間には差がなく、新生
骨の増生に伴い材料と骨との境界は次第に不鮮明となった。組織学的
には、3種類の本材料ともに炎症細胞、異物巨細胞の介在は見られず、
4週頃より新生骨が増生し本材料と骨が直接結合しているのが認めら
れたが、900℃焼成品のほうにより多くの新生骨の増生が認められ
た。これにより本材料が、焼成温度が高くなるにつれてバイオイナー
トな傾向にはあるが、どの焼成温度品にも生体親和性、骨形成能に優
れており、使用部位用途に応じ使い分けが可能な材料であることが確
認された。図6-5の左には1100℃で焼成したHAP・TC
P複合
材の8週後のⅩ線写真を、右には同材料の6ケ月後のⅩ線写真を示す。
P複合材(C
図6-6の左には900℃で焼成したHAP・TC
号)の8週後の脱灰標本の写真を示す。材料周辺に新生骨が形成され、
多くの骨芽細胞が認められる。図6-6の右には同じ材料の6ケ月後の
脱灰標本写真を示す。同材料の周囲に成熟した層状骨が見られ密に接
している。
③動物実験(3)11)
<試験目的及び試験方法>
高強度アパタイト(HAP80%、TC
P20%)を実験材料とし、
その機械的強度試験、細胞毒性試験、サル下顎骨への埋入による生体
親和性試験ならびに骨との結合強度試験を行い、臨床応用の可能性を
-62-
Eの記
検討する。
1)
機械的強度試験(曲げ強度試験)
曲げ強度の測定は4点曲げ試験で行い、JIS規格で推奨されている幅
4mm、厚さ3mm、長さ40mmの試験片を用い、試験片の個数を10個
とし、表面は400番のエメリーへ○-ハ0一により仕上げを行った。測定には
コンヒ0ユータ計測制御式精密万能試験機(島津製作所製、島津オーげラフAC-5
000C)を用いた。
2)
細胞毒性試験
C3Hマウス線維芽細胞由来であるL株細胞を用いた。培養液はEagle'
S
Minimum
Essential
Medium(MEM、日水製薬製)に10%の割合
で牛胎児血清を添加した組織培養液を用いた。高強度アパタイトと対
照の硬質ガラスを組織培養液中に浸漬した。培養細胞に及ばす影響を
細胞播種後、24時間、96時間、144時間後に倒立位相差顕微鏡を
用いて観察し、細胞毒性について検討した。
3)
生体親和性試験
顎骨との結合状態並びに結合強度の検討には、高強度アパタイト、
HA
Pともに直径5mm、高さ5mmの円柱型の試料を用いた。実験動物
はニホンザルを使用。手術後1ケ月、3ケ月、6ケ月に脱血屠殺し、
試料を周囲骨とともに摘出した。
4)
インプラント体と骨との結合強度試験
生体親和性試験で埋入した6ケ月群の2個体の片顎のうち1片顎
(2試料)を用いて押し出し試験を行った。試料端面を出し、周囲に骨
を1cm付けて測定に用いた。測定には4点曲げ試験で用いた万能試験
機を用いて、クロスヘッドスヒ0-ド0.5mm/min,チャートスヒ0-ド50mm/minの条
件で試験を行った。
一63-
<試験結果>
1)
4点曲げ強度
試料10個の平均値はHAP:71.5MP
a、高強度アパタイト
aであり、高強度アパタイトはHAPの約2倍の強
:161.2MP
度を示した。
細胞毒性
2)
培養24時間後の所見は両材料とも材料周囲の細胞はその大部分
は星状あるいは長菱形を呈していた。培養プラスティックシャーレ底
面に付着した後に活発に分裂増殖した所見が認められた。培養96時
間後、144時間後の所見でも両材料とも周囲の細胞は活発に分裂増
殖した結果試料にもよく接着してシャーレ底面全体に増殖し、その細胞形
態は正常で、細胞膜、核ともに健全であった。
骨組織との親和性
3)
動物実験において高強度アパタイトはHAPに比べやや材料周囲の
骨形成が遅れるものの、埋入3ケ月後には材料周囲は全て骨組織によ
り囲まれ、また、6ケ月後の組織所見では、材料と骨との接合部が鋸
歯状になっており新生骨が材料に入り込む像が認められた。材料周囲
C
に形成された骨が鋸歯状であったことは、材料表面のT
Pの溶解に
伴う現象と考えられる。(図6-7)
この組織像より、材料はより強く骨と接着していると考えられる。
インプラント体と骨との結合強度
4)
HA
均243.O
7.4Nおよび2
Pの最大押し出し荷重は22
58.7Nで平
Nであった。高強度アパタイトの最大押し出し荷重は3
97.9N及び433.2Nで平均415.5Nであった。これは高
強度アパタイトの材料周囲に形成された骨が鋸歯状であったことに因
をなすと思われる。
-64-
<結論>
構成比HA
A
P80%:T
C
P2
0%の高強度アパタイトについてH
P単体と比較して機械的強度に優れ、骨形成後の材料と骨との機械
的結合にも優れていた。
動物実験において高強度アパタイトはHA
P単体と比較して材料周囲
の骨の形成はやや遅れるものの、形成された皆の成熟度は高いもので
あった。
以上の事から、高強度アパタイトは、組織親和性も良くインプラント
材料13)として臨床応用の有用性の高いことが判明した。
④動物実験(4)14)
<目的>
C
HAP・T
P複合体の骨親和性及び骨誘導能を調べる目的で、白
色家兎の血管柄付骨膜を用いて、顆粒状のセラタイトを用いて検討す
る。
<実験>
実験に用いたHAP・TC
ラタイト(G
Pは直径0.3∼0.6mmの顆粒状セ
Ol-S)である。実験モデルとして白色家兎の血管柄
付肋骨骨膜弁および血管柄付下腿骨膜弁を使用。両者とも2,4,8,
16、24週目において検体を採取した。
<結果>
1)
血管柄付肋骨骨膜弁群
術後2週目より軟Ⅹ線上で、顆粒状セラタイトの周囲にすでに骨形
成が認められた。4週目ではセラタイトの周りに、元の肋骨と同径位
の骨形成を認めた。以後、大きな変化は認められなかった。
H.E.染色標本では、2週目までは軟骨と骨が混在し、軟骨から骨
が形成される軟骨内骨化が認められた。4週目以後では、内腔に骨髄
-65-
を含む成熟した骨組織を認めた。4週目以後のCMRおよびH.E.
染色標本像では、セラタイトの顆粒をとり囲むように新生骨が形成さ
れているのが明らかとなった。(図6-8)
2)
血管柄付下腿骨膜弁群
このモデルにおいても、血管柄付肋骨骨膜弁群とほぼ同様な経過が
観察された。
<考察>
今回、術後2週という早期から、HAP・T
C
Pの周囲に軟骨内骨
化による良好な骨形成が認められた。従来の血管柄付骨膜弁のみの場
合では6週まで軟骨内骨化が広範囲に認められたのに対し、両群とも
に術後2週に軟骨内骨化を認め、4週以後では、すでに骨組織で充填
され、HA
HAP・T
両者にHAP・T
HAP・TC
P・T
C
C
Pの充填が骨化を促進させた可能性が示唆される。
Pの骨親和性をみると、脱灰標本および非脱灰標本の
C
Pと新生骨が直接結合しているのが認められた。
P顆粒を取り囲むように新生骨が形成され、その顆粒の
中にも新生骨が侵入しているのが認められた。
<結論>
水酸アパタイト・リン酸カルシウム複合体(HAP・TC
P)の骨
親和性および骨誘導能を調べる目的で、直径0.3-0.6mmの顆
粒状セラタイトを用いて実験を行った。実験には白色家兎を用い、血
管柄付肋骨骨膜弁と血管柄付下腿骨膜弁を使用した。両群とも、術後
2週より良好な骨形成を呈した。HAP・TC
が認められ、骨親和性および骨誘導能とも良好であった。
P顆粒を中心に新生骨
6.6
結語
今回開発した高強度リン酸カルシウム焼結体(開発記号:ⅩVC-56)
-66-
は各種生物学的安全性試験に全て適合した。この実験データに基き、厚
生省へ臨床試験の申請を行う事ができた。
一67-
ヂー誉アま
十●一一しい.
ト∴り.・♪●
叫骨試射h現.絶れ
甘揃軋唖離研削
昔
◆′
bours
144
C三
亡ラウイ
after
Cytotoxic
Fig.6LI
t
e
s
--
t
∵軋」
・■CE
。■/パ凍
■1
..
.../†
ヽ■
「ゞ.
after
granules
implantation
Fig.6-2
Inplantation
ー68一
test
of
the
rabbits
ー..■
weeks
二×
2
川 nU
HAP
900℃
Z
llOO℃
Fig・6-3
HA
P
filler(sintered
1300℃)and
Fig.6-4
1300℃
Z
Scanning
face
in
of
air
HA
and
O2
r
Z
micrograph
sintered
r
O2
1500℃
900、1100
filler(sintered
electron
P
at
at
sintered
-69-
and
at1500℃)
of
[racLure
900℃、1100℃
at
r
】500℃
surr
、1300℃
in
air.
O2
Fig・6-5
Ⅹ-ray
pictures
dyle・left=打AP・TCP
鋸P・TCP
of
co叩Ound
rigbl;〕Aア・TCP
co町0□ndimp18ntedimplantedinto
sinlered
compoロmd
a11100℃、8
sinteJed
▼eek5
l=川℃、6
at
fenoral=n-
tbe
months
●
ltl
嶺ト
ー 仁=
CE・叫
f,.
J
-■
:ナLH■
定蟄
㌧′
●
∵‥"メl∵
■、
.・.巧.寸
ヽ
1÷㌧■
碧草庵
■.
■
タ;.・
◆】卜・l
Fig・6-6
恥
tbe
8
HAP・TCP・Bylhe
Surface
of
at
bone-EÅトTCPin【erface
tbe
rigbi;EAp・TCP
sintered
formed
veeks、ne両y
6
a山
nonlhs、theinterlocking
was
a1900℃、6
bone
口a叩
grovth
se印.1erl;HAp・TCp
月On=柑(‡80)
-70-
剛re
OSteめIas15
5i…red
olthe
at
・.康一ぎ
¢bserved
calciFying
900℃、g
on
tissue
Week5(‡80)
tbe
==l
∵
1ュ■■
J
⊥′.
l
■
・■::
ナ了
CE∵ヒラウイト.ぺ100
土人卜豆けH].円キ葺.)
卜IA
ヒラタイトの表面は鋸刃状で新生骨が認められる。
6
months
フ】く蛮アパタイト
ぺに忙
水酸アパタイトの表面は滑らかでセラタイトと異なる。
implantation
after
ユニⅥニ丁,屯
紅蛋寮箋碧空
■
1--1【1一
、.,ノO「語
'(J
__+-+.._.._J..
てこご茫∴
声∵.二∴無感 毎雛デ壱
_.、
1-†ヽ′一
.さ丁苧
■l:〆、ふイtl.
二■=き■±
し_、ここq
ー・やノ∼.」
・′・・一
り1=′七;ヽ・.・、
・・∴,.責1∴モ、
■
ヽ
ナ、■
.、■「L.
■-㌻ニ∴,彗
一二十王1、
CE∵ヒラタイト
ラタイトの粒子の中の一部に、骨による置き換えが見られる。■2'
6
months
a=er
CE二Cera=te
graTlules'implanta=on
HA:Hydroxyapat=e
Fig・6-7
Implantation
test
ー71-
of
the
monkey
ぺ1つ
ふ∴
享・
■・一
1
⊂フ:
.
∴-しJ.・_■.
(〔;【コ】elsl
1
仁巨・:
てLOし)〉
4週日以後、セラタイトの顆粒をとり囲むように新生骨が
形成されている。
8
weeks
after
ー`ンー∵_、ノ
-二二.
・仁
granules'implantation
≡=・[=ニ
.
■
/・1
耳力持∫イ〃いノ
-ノ
ト.月ザ一一
■
J‖ケ
川〔†ll 仁lル忙
∵∵な土工(チ孔†・り
8週日以後、骨組織に被覆され直凍結合が認められた
8
weeks
Fig.6-8
after
poraus
Implantation
body's
test
-72-
implantation
of
the
rabbits
引用文献
[1]厚生省薬務局医療機器開発課監修:医療用具製造申請の手引(第6版)
薬事日報社
(1991)
[2]厚生省薬務局長通知薬発第615号:医療用具の臨床試験の実施に関する
基準について(1992)
[3]高橋喜八郎:北里研究所(社団法人)食品衛生センター試験報告書(昭和
61年7月21日)
[4]高橋喜八郎:北里研究所(社団法人)食品衛生センター試験報告書(昭和
61年7雪22日)
[5]高橋喜八郎:北里研究所(社団法人)食品衛生センター試験報告書(昭和
61年7月22日)
[6]高橋喜八郎:北里研究所(社団法人)食品衛生センター試験報告書(昭和
61年7月14日)
[7]M.ISOGAI,N.KANEMATU,K.UNO,K.NAGAHARA
Implantology
and
andK.KONDO:Oral
Biomaterials,21-26
(1989)
[8]高島浩介:(財)食品薬品安全センター秦野研究所試験報告書(昭和63年
10月18日)
[9]宗宮正典:Orthopaedic
[10]新城
Ceramic
Implants,Vol.3,95T98(1983)
清、坪井声示、牧山友三郎、近藤和夫:Orthopaedic
Implants.Vol.7,155-163
Ceramic
(1987)
[11]松前信作:岐阜歯科学会雑誌,第19巻,第2号,446-459,(1992)
[12]翁
熊佐、他:第34回日本歯周病学会総会、A-、(1989)
[13]近藤和夫、高見昭雄‥乳白色リン酸カルシウム.焼結体の製造法:
特許公報
[14]高戸
昭6卜12876
特許登録番号
第1346586号
毅、波利井清紀、小室裕造、米原啓之:日本形成外科学会会誌、
12(10)、660-667
(1992)
-73-
(1986)
7章
リン酸カルシウムセラミックスの臨床応用
<実施例Ⅰ:臨床応用(Ⅰ)>】)2)
7.(Ⅰ).1
緒言
近年、整形外科領域の外科的治療は悪性腫瘍の患肢温存手術、人工関節
の入れ換え術、脊椎のinstrumentation
surgeryなど、年々その数も増し、
手術侵襲も大きくなってきている。それに伴って移植骨の需要も増加して
きた。一方、従来の自家骨移植では、採取できる移植骨の量に生理的限界
があり、また手術侵襲をさらに骨部に加えねばならず、患者に余計な負担
を負わせることとなり、それによって生ずる合併症、血腫形成、痩孔形成、
骨盤の変形、知覚神経損傷による手術部位の不快な知覚障害等危供される。
近年、欧米においては冷凍保存同種骨移植が盛んに行われるようになって
きたが、本邦においては死体より同種骨を採取することは立法化されてお
らず、人工関節手術時の大腿骨骨頭、外傷その他の原因による切断肢より
採取することに頼らざるを得ない。従って、十分な量健常な同種骨を採取
することは困難である。また、同種骨は保存、運搬方法などが繁雑であり、
提供者からの持ち込み感染症、対宿主移植反応(graf卜VerSuS-host
tion)が問題となる。これらに対処する臨床的課題として生体親和性が高
く、骨誘導能があり、且つ安全性の高い生体材料の開発が要請されている。
この章では開発したリン酸カルシウム系生体材料の臨床応用の実施例1)2)
を中心に述べる。
7.(Ⅰ).2
リン酸カルシウムセラミックス焼結体の特徴
ⅩVC-56とは日本特殊陶業株式会社における開発記号で、その特徴は
硬組織における無機質の主成分であるリン酸カルシウム系の水酸アパタイ
トとリン酸三カルシウムを複合させたセラミックスであることで、その製
法は近藤ら3)による特許にて詳細を明らかにしている。この複合セラミッ
クスのⅩ繰回折図形を図7-1に示す。このⅩVC-56を材料に用いた骨補
填材は、構造的には平均曲げ強度166.6MPaの高強度を有する撤密体と、
-74-
reac
C
2∂(∩)
Ⅹ-raY
Fig.7し1
diffraction
patterns
Kα
of
し1□D'c焼成品
98ロdc焼成品
Fig.7-2
u
Scanning
surface
clectron
and
of
xvc-56
1.3ロローC焼成品
micrographs
products
sintered
1300℃
-75-
of
fracture
at
900℃、1100℃
連続気孔を有する多孔体の2種類の構造があり、製造工程及び焼成温度等
によりコントロールされており適用部位、目的、形状により使い分けが可
能である。図ト2に各焼成温度品の破断面を示す。たとえばスぺ-サー等で
強度が必要とされる適用例には緻密体を用い、骨髄内に補填するフィラー
等においては骨誘導能の優れた多孔体を用いる。なお、形状的には、人体
の各欠損部位に適用しうる形状が制作可能である。
材料的に生体内活性を有し骨組織に対する優れた骨誘導能を有すること
は、動物実験により明らかにしており、また生体に対する毒性に関しても
各種安全性確認試験(発熱性物質試験、急性毒性試験、溶血性試験、移植
試験、溶出物試験、組織培養試験)は前述に述べたごとく全く異常が認め
られていない。本試験に用いたⅩVC-56の物性値を表7-1に示す。
Properties
Table7-1
XVC-56
of
Hydroxyapatite
Material
(xvc-56)
Properties
Sintered
9
Temp.(℃)
Pore
7.(Ⅰ).3
0
1300
2.72
2.84
28
16
0.2
5∼15
5∼10
absorption(%)
size(um)
0Pen
Bending
110
2.96
Density(g/cm3)
Water
00
POre
OPen
POre
1∼5
Closed
166.6
strength(MPa)
対象症例及び投与方法
昭和61年1月より何らかの疾患の治療で病巣部あるいは自家骨採取部
に骨欠損部が生じ、水酸アパタイトセラミックスⅩVC-56製骨補填材
(以下HAPと.略)の補填が可能な症例を対象とした。あらかじめ医師が
対象として不適当と判断した患者は除外した。
症例は全部で66症例であり、その内訳は男性38症例、女性28症例
であった。年齢分布は12-84歳で平均年齢は39.5歳であった。
-76-
pore
(男性37・9歳、女性41.6歳)。体重は31-88k
O k
g(男性61・9k
gで平均57.
g、女性50.3k
g)で栄養状態は比政的良好
な症例ばかりであった。
HAPを骨羅患部の切除、掻爬により生じた骨欠損部に補填した症例-
-
<良性骨腫瘍>:骨巨細胞株6例(大腿骨5例、脛骨1例)、内軟骨腫
9例(足指基節骨1例、手指の基節骨4例、中手骨2例、中節骨2例)、
線維性骨異形成5例(大腿骨3例、脛骨1例、肩甲骨1例)、非骨化性線
維腫2例(排骨2例)、骨硬化性病変2例(大腿骨転子間2例)、良性線
維性組織球腫(大腿骨)、類上皮嚢腫(手指末節骨)、線維腫(手指中節
骨)各1例であり、また骨腫瘍類似疾患として孤立性骨嚢腫2例(大腿骨
2例)、踵骨骨嚢腫1例であった。
.<悪性腫瘍>:傍骨性骨肉腫(大腿骨)、軟骨肉腫(座骨)、多形型横
紋筋肉腫の骨侵潤(上腕骨)と、痺転移として大腿骨への乳癌転移、恥骨
への前立腺痺転移が各1例であった。
<骨の炎症性疾患>:陳旧性大腿骨骨髄炎、大腿骨大転子結核、非特異
性足関節炎による脛骨嚢腫様病変が各1例あった。また、結核性脊椎炎
(第3、4腰椎)で椎体病巣切除後スペーサーを補填した症例が1例あっ
た。
-HAPを外傷により生じた骨欠損部に補填した症例一
下腿骨開放骨折、脛骨平原骨折が各1例あった。
-HAPを先天性および後天性変形部位の形成により生じた骨欠損部に補
填した症例一
変形性股関節症の白蓋形成術5例があった。
-HAPを自家骨採取により生じた骨欠損部に補填した症例一
結核性脊椎炎(脊椎カリエス)2例、変形性脊椎症2例(頚部2例)、
椎間板ヘルニア4例(頚部1例、腰部3例)、脊椎分離・すべり症3例、
脊椎外傷6例(頚椎2例、胸椎2例、腰椎2例)などの脊椎疾患と、膝蓋
骨偽関節1例、前腕骨粉砕複雑骨折1例において腸骨スペーサーを補填し
た。また、大腿骨開放性骨折に対して脛骨より自家骨採取し、その欠損部
にフィラーを補填した症例が1例あった。
ー77-
荷重骨や病巣の大きな症例には、自家骨ないしは同種骨を併用して少し
でも早い新生骨の増生と機能回復をめざし、荷重骨でないものや荷重骨で
も病巣の小さな症例では、患者の負担や合併症の問題でHAP単独投与を
原則とした。手指骨では工夫して、HAPフィラーを粉砕し顆粒として単
独投与したものもあった。
スぺ-サーの使用において、腸骨スペーサーは、自家骨採取後の腸骨欠
損部に補填し、断端部をワイヤーで締結固定した。また軟骨肉腫、恥骨へ
の前立腺癌転移症例では、軟部支持組織再建のためにHAPスペーサーに
ポリエチレンテレフタレート(以下dacronと略)繊維により造られたdacT
ron
fabricを筒状に巻き、生体材料複合材として補填再建した。
HAPフィラーは900℃、1100℃、1300℃と3種類の異なる
焼成温度で、図7-2のごとき種々の形態のものを作製した。
またHAPスぺ-サーは強度のある焼成温度1300℃の撤密体で、骨
欠損部の形態に合わせて作製した。
使用に際しては、121℃で20分間以上、または132℃で5分間以
上のオートクレーブ滅菌し、無菌的に補填した。
7.(Ⅰ).4
評価法
7.(1).4-1.全身及び局所症状(臨床症状)
手術後の全身症状(発熱、アレルギー反応等)、自覚症状及び局所症状
(発赤、腫脹、熱感、痺痛等)について注意深く観察し、局所症状は5段
階に評価した。副作用及び合併症が発生した場合、その経過を追跡し、診
断名、処置、副作用、及び合併症の重大性,HAPとの因果関係について
詳細に記録した。
7.(1).4-2.
臨床検査
血液学的検査即ち血沈、CRP、赤血球数、ヘモグロビン値、白血球数、血
小板数、白血球分画、生化学的検査としてS-GOT、S-GPT、アルカリフォス
ファターゼ、BUmクレアチニン、Na、E、Cl、Ca、P、尿検査として蛋白、
糖、ウロビリノーゼ、沈査等を、原則として手術前、手術直後、1週、4
-78-
週、3ケ月、6ケ月後に検査して評価した。
以上の臨床症状、臨床検査成績により安全性について、5段階評価を行
った。
7.(1).4-3.
X線評価
原則として、手術前、手術直後、1ケ月、3ケ月、6ケ月後にHAP補
填部位のⅩ線写真を撮影した。撮影されたⅩ線写真像について注意深く観
察し、骨内に補填したフィラー、スペーサーのHAPと骨とのinterfaceの
骨新生、間隙の有無及び濃淡像から、骨形成能について4段階評価を行っ
た。また、スぺ-サーについては骨性架橋の程度からの評価も参考にした。
有効性については、このⅩ線評価に基つ"き補填部位の親和性、骨形成
能について、6段階に評価した。
有用性については安全性、有効性から総合的に判定し、6段階に評価し
た。
7.(Ⅰ).5
症例呈示
以下に、代表的な症例のⅩ裸像を示す。
症例1.:48歳、女性、右示指中節骨内軟骨腫
病巣掻爬後、HAPフィラーを粉砕して顆粒状にして骨欠損部に補填、
骨移植は併用していない。術後1ケ月後のⅩ線所見でHAP周辺に骨申請
を認め、術後6ケ月でHAP周辺に間隙は観察されず、境界面に骨形成が
見られhomogenousになっている。現在、示指の可動域も良く、痺痛等なく
経過良好である。(図7-3)
症例2.:22歳、男性、左大腿骨骨巨細胞腫
大腿骨外顆部病巣を十分掻爬後、HAPフィラーを腸骨より採取した自
家骨と共に、骨欠損部に補填した。術後1ケ月で若干の新生骨が見られ、
3ケ月で骨形成でHAPと骨との境界部の間隙が少なくなっている。6ケ
月で間隙はなくなり、骨形成でhomogenousとなっている。現在、無痛の独
-79-
歩可能で日常生活動作に支障なく、経過良好である。(図7-4)
症例3:19歳、男性、左大腿骨傍骨骨性骨肉腫
約3年前大腿骨骨幹部病巣切除後、排骨支持骨移植とキュンシュナー髄
内釘にて大腿骨形成を行う。その後、自家骨の同化良好であったが、荷重
骨として十分でなかったため、今回HAPスペーサーと腸骨より採取した
自家骨を併用して、大腿骨を補強形成した。術後1ケ月で僅かにHAP近
位部に骨性架橋が見られ、6ケ月で骨性架橋が成長してHAPの周辺を覆
ってきている。1年後、骨性架橋は成長し、HAP遠位部でも見られるよ
うになり、大腿骨と一体化してきている。現在、脚長差による軽度のびっ
こがあるが、無痛の独歩可能で日常生活動作に支障なく、経過良好である。
(図7-5)
函
Fig.7-3
Case23、age48
the
left
female、enChondroma
right
second
:before
middle
of
phalanx
operation
Center:1Month
after
operation
right
after
operation
:6Months
ー80一
Fig.7-4
Case36
left
age22Inale、giant
after
operation
Center:3Months
after
operation
rigbt:6Montbs
after
operation
:1Montb
一過⊥
:… 荊
川音貴1乃円
l
Case3、age19
the
left
tumor
of
the
femor
1eft
Fig.7-5
ce11
left
:before
male、Juxtacortical
femor
operation
Center:1Month
after
operation
right:2.5Year
after
operation
-Sl-
両緩2_5年
osteosarcoma
of
7.(Ⅰ).6
結果
臨床症状、局所所見:術後手術創は一次的に治癒し、痺痛も経時的に軽
快して、HAP補填によると思われる全身的アレルギー反応、局所炎症所
見は見られなかった。
安全性については高い安全性が確かめられ、年齢別、体重別に検討して
も共に差異は認められなかった。
7.(1).6-1
Ⅹ線評価
Ⅹ線写真所見判定による骨形成の状態を見ると、骨新生は術後1ケ月目
に見られた症例もあったが、多くは3ケ月前後で見られ、3-6ケ月でH
APは骨形成で周辺骨と一体化しhomogenousとなっていた。
焼成温度900℃、1100℃、1300℃の3種類のHAPフィラーを
無作為に使用したが、その結果は特に差異は認められなかった。
7.(1).6-2
有効性
有効性についても高い有効性が確かめられ、性別、年齢別、体重別でも
差異は認められなかった。HAPの形状別有効性についても検討したが、
スペーサー95.8%、フィラー100%と高い有効率を示した。また投
与方法別有効性でも高い値であった。
有用性を、以上の評価を基に判定した。年齢別、体重別で差異は認めら
れず、高い有用性を示し、補填部位やHA
Pの形状についても検討したが、
いずれも大きな差異はなく高い有用性を示した。また、HAP補填の方法
としてHAP単独、自家骨あるいは同種骨移植の併用について検討しても
差異はあ見られず、高い有用性を示した。
以上の結果、安全性は100%、有効性は98.5%、有用性は98.
5%と極めて高く評価された。(表7-2)
-82-
Table7,2
Summary
clinical
of
evaluation
1.Safety
〔AS〔
NO
MUM8〔R
〔ONSID〔RA8し〔
T〔MPORARY
A8NORMAしlTY
ABNORMAし汀Y
A8NORMAし】TY
A8NORMAし汀Y
∼AF〔TYNUM8【R∼
;Af〔TY
RAT〔
UND〔〔ID〔D
JUDG〔D
NUM8〔R∼
(u)
MAし〔
38
29
9
0
0
0
】8/38
100
F〔MAし〔
28
28
0
0
0
0
28/28
100
9
0
0
0
66/66
100
TOTAL
57
Th‥8fetyrate∼
Were(al(山8tedfrom-Noabno「mality′`p両`Temporaryabnorm∂一ity・〔a;e;
2.Efficacy
∨〔RY
⊂A5〔
MUMB〔R
MAしE
F〔MAし【
〔FF〔〔TlV〔
TOTAし
The
〔FF〔⊂TIV〔
WORS〔
UN⊂HANG〔D
UND〔⊂1D〔D
【一戸l〔A⊂Y NUM8〔RS
ルOG【D
NUM8〔RS
【Ffl(A〔Y
RAT〔
(%)
19
19
0
0
0
0
38/38
100(100)
四
14
l
0
0
0
27/28
96.4(100)
田
田
口
0
0
0
65/66
98.5(100〉
ヨ8
28
SしIGHTしY
〔FFE〔TlV〔
effi〔a(y
rateS
efイe(tive
Were=両ulated(rom'very
FAIR
():ZN(LUDING
p(u5'E(fe(tLve"(a∼e5
3.Usefulness
(A5〔
∨〔RY
MAし〔
FEMAし〔
;HOUしD
SしIGHTしY
USEFUし
MUM8〔R
∪;〔FUし
US〔しESS
US〔FUし
8E
NOT
U5〔D
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U;【′UしH臼;NUM‖スi
US〔FUしN〔SS
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0
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98.5(100)
TOTAし
The
u;亡一山∩亡;=ate∼Were(al⊂Ulated
from■very
-83-
u∼erイ山一-p山l-∪;e一山-(aiei.()ノIN⊂しUD削G
100(100)
FA周
7.(Ⅰ).7
考察
整形外科の手術において、骨移植術を併用する機会は非常に多い。骨移
植の対象としては、外傷等による骨損傷、骨腫瘍あるいは骨腫瘍類似疾患
や骨の炎症疾患の掻爬切除等の治療による骨欠損部位への補填や、人工関
節の入れ換え等による骨欠損部への補填、その他脊椎固定術、関節固定術、
骨形成手術、人工関節等の関節形成、及び移植骨採取後の骨欠損部への補
填等がある。従って、移植骨の需要も次第に多くなってきた4)。従来、移
植骨の採取は、自家骨、近親者または他人よりの同種骨、あるいは異種骨
(Kiel
bone等)で行われてきたが、供給に多くの問題を抱えている。
自家骨は、最も理想的な移植骨と思われる。しかし、採取時に患者に負
担をかける。即ち、余計な皮切を加えなければならず、手術時間の延長を
伴うと共に、採取部位の変形、痺痛、血腫形成、手術はん痕、感染、
形成、知覚神経損による不快な知覚障害、腫瘍細胞の幡種等の合併症も起
こりやすい。また、採取量の生理的限界があり、形状についても採取骨を
理想の形態にはできず、関節部の摺動面には使用困難等の問題もある。
同種骨は、現在死体よりの骨採取は立法化されていないため5)、健常で十
分な量の同種骨の採取が困難で倫理的、宗教的背景も加わり、近親者に道
徳的、精神的苦痛を与えることも稀ではない。また、提供者からの持ち込
み感染症の問題もある。同種骨の抗原性を低下させる処理として、冷凍保
存法が多く用いられているが6
8)、しばしば対宿主移植反応が起こり発熱、
皮疹、肝障害、疲孔形成、鼻症状の合併症が起こることがある。貯蔵方法
に関しても繁雑で長期保存や持ち運びが困難という問題もある9】11)。
異種骨は、同種骨と同じく倫理的、宗教上の問題や、骨形成因子(BM
P:bone
morphogenetic
protein)12)の欠除により同化に長期を要し、
成績不良等の問題があり、例えばKiel
boneは子牛骨脱蛋白人工骨で、従
来よく用いられていたが以上のような理由で、最近は用いられなくなって
きた13・14)。これらに対処する臨床的課題として、生体親和性が高く、骨
形成能があり、かつ安全性の高い生体材料の開発が要請されてきた。
このたび、臨床応用したHA
Pは、上記の自家骨、同種骨、異種骨の持
つ問題に対し、貯蔵、運搬、滅菌が容易で、持ち込み感染症や副作用がな
ー84-
孔
く、各種の形状、構造が可能で骨疾患部位等への必要形状および構造が選
択でき、強度的にも現在までに報告されている多孔質水酸アパタイトセラ
ミックスに対し最も高い値を示しており、力学的負荷が加わる骨にも適用
できた。また、骨誘導能、生体適合性に優れ15)、人体の骨欠損部および空
隙部に移植骨の代用として充填、補填または置換した場合、当該欠損部位
ならびにその周辺部における造骨作用を促進し骨組織欠損部位の構造機能
を修復および回復せしめるため、優れた臨床評価が示された。
また、従来スぺ-サーを単独に骨欠損部に補填する際、筋、腱、靭帯、
関節包、骨膜等南部支持組織の再建の良い方法がなかった。これまでHA
Pに貫通穴を作製し、それを利用して縫合糸や、それに筋膜を用いて錨着
する方法が発表されているが、いずれも不十分で失敗に終わる事が多かっ
た16▼18)。かかる問題に対し、HAPスぺ-サーにdacron
fabricを筒状
に巻き付け骨接合面は袖状にして、HA
Pと骨とは直接接合させて、周辺
の南部支持組織を、巻きつけたdacron
fabricを介して容易に再建するこ
P単独で用いるより、HA
とができた。さらに術直後より、HA
Pとdacr
fabricを組み合わせ生体材料複合材として用いた方が、安全性、支持
on
性が良好で経時的に周辺から線維組織がdacron
fiber内に侵入増殖して一
体化し、機能的にも優れていた1∼'、28)。なお、現在dacron
fabricは心臓
・血管外科で広く応用されており、その安全性、自家組織誘導能に優れて
いることは、既に立証されている。
今後、さらに適応の拡大、形態の工夫や、他の生体材料(HD
density
dacron
polyethylene、アルミナ、ジルコニア等の他のセラミックス、
fabric等)との組み合わせによる複合材として用いれば、将来さ
らに用途が広がり、有望な生体材料となりうると思われる20・21)。
7.(Ⅰ).8
結語
1)ⅩVC-56製骨補填材を、骨腫瘍、外傷、炎症性疾患、先天性及
び後天性変形部位の治療、自家骨採取後に生じた骨欠損部位に補填して、
臨床症状、臨床検査値に直接影響することなく、安全性が確かめられた。
2)Ⅹ線写真判定にて、ⅩVC-56製骨補填材の周辺に3ケ月前後か
-85-
P:high
ら新生骨の形成が認められるようになり、3∼6ケ月で骨形成により周辺
骨と一体化してhomogenousとなり、生体適合性、骨誘導能が優れていた。
その有効性が有効と評価された。
3)ⅩVC-56製骨補填材の有用性は極めて有用および有用の判定が
98.5%を占め、その有用性は有用と評価され、骨欠損部への補填に対
し、将来有望な方法になることが予想された。
<実施例Ⅱ:臨床応用(Ⅱ)>22)
7.(Ⅱ).1
緒言
水酸アパタイト・リン酸三カルシウム複合骨補填材の頭蓋顎顔面領域へ
の応用例を述べる。
近年、種々の人工骨補填材が開発され、手術手技の発達とともにその需
要は増加の一途をたどりつつある。その一つに水酸アパタイトがあるが、
化学的に安定し無害であるとはいえ強度の点では問題があった。そこで我
れは、水酸アパタイトとリン酸三カルシウムの複合セラミックス(日本特
殊陶業社製:セラタイト)の使用を試み、有効性を確認する。
7.(Ⅱ).2
材料及び動物実験
7.(2).2-1.材料
水酸アパタイト・リン酸三カルシウム複合セラミックスを用いた。本材
は生体内活性を有する骨補填材で、添加フリット、焼成温度の調整により
多孔体、微密体を作成することができる23)。多孔体は気孔率35%、気孔
径5-10/上mと極めて小さく、その強度は三点曲げ抗折試験において気
孔率55%の水酸アパタイトと比べ、気孔率35%の多孔体で約2.5倍、
紋密体で約20倍であり、破損をきたしにくく加工性に優れている。また、
周囲骨組織の造骨作用を促進し早期より新生骨を形成、新生した骨組織と
直接結合して欠損部を修復し、さらに、成分のリン酸三カルシウムが補填
後徐々に骨に置換されるなどの特徴をもつ。
-86-
動物実験
7.(2).2-2
日本白色家兎鼻骨部に5×5mmの欠損を作成し、本材多孔体をはめ込
むように補填した。固定は骨膜縫合により行い、結合状態を経時的に組織
学的に検討した。
7.(Ⅱ).3
結果
移植後2ケ月の組織所見では、周囲に異物反応、不良肉芽の形成なく、
欠損縁にも何ら介在物を認めずよく適合し、優れた生体親和性が確認され
た。また、欠損緩から本材内部へOSteOblastが侵入し、セラタイト周囲に
はosteoclastの存在や一部osteoid様の変化も認め、良好な皆伝導、造骨、
結合経過を示唆する所見がえられた。
<臨床応用>
1991年5月より頭蓋骨欠損、眼筒底骨折、骨腫瘍など頭蓋骨顔面領
域13症例の骨補填に本材を使用した。3例では術前の手術シュミレーシ
ョンにより欠損の形状に適合した製品を作成した。術中の細工や穴あけな
どの加工は破損をきたすことなく容易に行え、全例、異物反応による感染
や創離開などの合併症もなく一次的に治癒した。
術後のレ線、CT・3D-CT所見でも欠損部によく適合し、整容的にも
満足すべき結果が得られた。
7.(Ⅱ).4
考察
現在、一般に骨欠損の修復再建には自家骨移植が行われている。しかし、
移植骨の採取には新たな手術侵襲を加えることとなり、採取部の形態、機
能、合併症などに対する配慮が必要となる。そのため著者らは、採取部の
犠牲を少しでも軽減させるべく、頭蓋骨外板25)やフィプリン骨板24)など
を用いた骨移植を報告してきた。また同時に、小さな欠損などに対しては
水酸アパタイトも用いていたが、従来の水酸アパタイトでは強度が劣り、
破損しやすいなど加工面にも問題を残していた。
-87-
7.(Ⅱ).5
結語
セラタイトは、整形外科領域での報告はあるものの頭蓋骨顔面領域では
いまだ使用されておらず、動物実験を含めた我々の経験では、強度、加工
性、骨形成結合能に優れ、任意の形状の製品ができるなど多くの利点を持
っていた。また成分が骨の無機成分であるリンとカルシウムだけからでき
ているため生体に対し無害で、異物反応もなく、今後、頭蓋骨顔面外科領
域の各種骨欠損の修復補填に、大いに期待できると思われた。
<実施例Ⅲ:臨床応用(Ⅲ)>26)
緒言
7.(Ⅲ).1
HA
P・T
C
P複合体(セラタイトーく)の骨伝導能に関する研究で単独埋
入と新鮮自家骨髄混合埋入との比較について述べる。
我々はセラタイトの強度と埋人後の骨接合の状態を報告すると共に、比
較的簡便に入手可能な、未分化間葉系細胞を多く含んだ新鮮自家骨髄をセ
ラタイトと混合埋入した実験を行い、興味ある知見が得られたので報告す
る。
材料及び動物実験
7.(Ⅲ).2
材料
7.(3).2-1
HAP・T
C
P複合体の強度を確認するために3点曲げ抗折強度試験を
実施した。セラタイト撤密体が174.4MP
a.と一番強度が強く、以
9.2MP
Fセラタイト多孔体(気孔率35%)が3
a.アパセラムBタイフ0(気孔率4
ーP(気孔率38.5%)が10.5MP
2M
9.2%)が4.0
a.、ボーンセラム
P
a.の順であった。
セラタイトの多孔体の性状は気孔径5∼15/上m、気孔率35%であり、
他のHA
P単独材に比し、強度と加工性に優れている。
7.(3).2-2
動物実験
実験には体重約3kgを越える日本白色家兎を使用。家兎の鼻骨を骨膜下
-88-
に剥離して露出させ、ドリルを用い5Ⅹ5Ⅹ2mmの骨欠損を作製した。
そこに①セラタイトブロック単独、②セラタイト顆粒単独、③新鮮自家骨
髄に浸したセラタイトブロック、④新鮮自家骨髄とセラタイト顆粒を混合
して埋人後、骨膜固定を行った。標本は経時的に2,4,8,12,24
週目に摘出し、光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡(S
EM)を用い観察した。
新鮮自家骨髄は各家兎の大腿骨骨幹中央部より採取した。
結果
7.(Ⅲ).3
7.(3).3-1
光学顕微鏡観察
セラタイト単独のブロックと新鮮自家骨髄を混合埋入した群では、新鮮
自家骨髄を混合した群の方が単独埋入群より早期に、つまり埋人後約2週
目よりセラタイト辺縁や周囲に新生骨梁が見られ、単独埋入群に見られた
と同様に、時間の経過と共に新生骨梁の成長や結合範囲が増していくのが
観察された。これらの親生骨梁は単独移植群とは異なり、母床骨より離れ
た部位にも認められ、セラタイト周囲の骨梁形成の量は単独埋入群の同時
期に比し明らかに多く、自家骨髄を混入することで埋入したセラタイト周
囲には骨誘導能の克進した状態が観察された。次に顆粒についても、新鮮
自家骨髄を混入した群ではブロック群同様に約2週目より始まり、12週
目では顆粒は新生骨梁と一体化していた。しかし、単独埋入群や新鮮自家
骨髄混入群のいずれの時期の標本においても、セラタイトの辺縁より内部
に骨組織が侵入するような所見は見られなかった。また、すべての標本に
異物反応や炎症性細胞の所見は認められなかった。
7.(3).3-2
S EM観察
骨とセラタイトが直接結合している部分は、単独埋入群でも自家骨髄混
入群の標本でも辺縁部で一層のセラタイトの溶解層が存在した。この部分
では、T
C
Pが溶解したために、セラタイトの気孔径がほかの部位より大
きくなっており、残ったHA
P骨格内に骨組織が直接接し、密に結合して
いるのが観察された。しかし、セラタイト内部に骨組織が奥まで入り込む
ような所見は観察されなかった。
ー89-
7.(Ⅲ).4
考察
セラタイトのブロックと顆粒を埋入した場合の違いは、顆粒と顆粒との
間隙がある種の大きな気孔の役割を果たすので新生骨梁が十分入り込むた
め、自然な骨の再構築ができると考えられる。しかし、形態の再建という
点においてはブロックの方が造かに優れている。
Klawitterら27)は最小連結孔経と組織との関係について、1石灰化骨が
入り込むためには100〟m、2骨様組織が入り込むためには40∼10
0/上m、3繊維組織が入り込むためには5∼15〝mが必要と述べている。
我々もセラタイトの辺縁より骨組織が進入しない理由として、気孔径が5
∼15〝mと小さいために組織・細胞などが入り込めないのではないかと
推測した。S
EMによるセラタイトと新生骨の接合部の微細構造の観察で
は、辺縁ではやや気孔径が大きくなっておりそこに骨組織が直接接し、密
に接合しているのが確認された。これは、辺縁部でTC
Pが溶解しHAP
骨格のみが残り、気孔径が拡大したのではないかと推定される。
また、このために低倍率の検鏡で骨接合部は鋸歯状に観察されるのであろ
う。これらの結果からセラタイトの骨結合様式は、内部の気孔内に骨が進
入し、材料が固定されるのではなく、骨と材料の界面での結合で固定が得
られ、次第にその周囲を新生骨が取り囲むように形成していくものと考え
られる。この点、セラタイトは、細工を行いやすいため、頭蓋骨顔面領域
の複雑な形態を再現するために非常に有用な人工骨補填材と思われる。し
かし、セラタイト内部への皆伝導を期待するには、さらに大きな気孔径の
開発とともに気孔内をつなぐ通路(連結孔)の拡大にも工夫が必要と考え
られる。
7.(Ⅲ).5
結語
我々はbioactive
materialの中の一つであるHAP・TC
990年6月より臨床応用して良好な結果を得ている。我々はセラタイト単独、
及びセラタイトと新鮮自家骨髄との混合物を日本白色家兎の鼻骨骨髄下に
埋入し、セラタイトの骨形成能にどのような影響を及ぼすかという実験を
-90-
P複合体を1
行った。その結果、セラタイトは単独埋入では約4週目より、新鮮自家骨
髄を混入すると約2週目よりセラタイトの周囲に未熟な新生骨梁が出現し、
一部は介在組織なしに直接結合し、週を経るとともに結合の範囲は広がっ
ていった。しかし、セラタイトの内部に骨組織が進入していく所見は認め
られなかった。セラタイト内部への骨伝導を期待するには、さらに大きな
気孔径と連結孔の拡大にも工夫が必要と思われた。
ー91-
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8章
医療用具の開発
8.1
ジルコニアセラミックス製人工骨頭
8.1.1生体用ジルコニアインプラント材l)
1)
緒言
従来、医療用インプラント材はステンレス、チタン合金などの耐腐食性
に富んだ金属の他に、金属イオン溶出のないアルミナセラミックスが多用
されている。さらに近年、アルミナセラミックス同様金属イオン溶出がな
く、しかも高強度、高靭性を持つ部分安定化ジルコニアが生体用インプラ
ント材として試用されつつある。
しかしながら、上記従来のものにおいては、ステンレス、チタン合金な
どの場合、長時間体内に埋設された時、体液の影響により部分的に腐食が
進行してしまったり、埋設部位の形状に合わせて加工する技術が大変困難
なため、その加工コストが上昇し、また、部分安定化ジルコニア(Z
2)の場合、長期間の体内埋設により表面の正方晶Z
r
r0
r
O2が漸次単斜晶Z
o2に転移してしまい、この転移がある程度以上進行すると強度の劣化を
招く。そこで、本研究で開発したインプラント材は上記従来のものの持つ
欠点を改善するものであり、生体用インプラント材として優れた性質を持
つ、部分安定化ジルコニア(P
S Z)を使用することができるようにした
ものである。
2)
実験
<試料>
Y203を2mol%以上6mol%未満含有し、共沈法又は加水分解法等によ
って得られる。Y203の分散性の良好な部分安定化ジルコニアの微粉末を
成形焼結した焼結体の粒径が0.8/↓m以下である生体用ジルコニアイン
プラント材を作製した。更に、A120:う及びTiNをジルコニアの150
-94-
mass%以下加えて、成形焼結し、結晶粒径0.8LLm以下とした生体用ジ
ルコニアインプラント材を作製した。
A:Y203量2.6mol%の共沈YS
Z(Y203部分安定化シすルコニア)原料
を使用し、その焼結体粒径0.8〃′mとしたもの。
S
B:Y203量2.6mol%の共沈Y
Z原料にA1203を50mass%添加
した原料を粒径0.8/上mに焼結したもの。
C:Y203量2.6mol%、Y203・Z
r
O2単味原料混合、粒径0.8〝
mとしたもの。
S
D:Y203量2.6mol%の共沈Y
Z原料、粒径1.5LLmとしたもの。
E:Y203量1.9mol%、共沈原料、焼結体粒径0.8LLmとしたもの。
以上の試料を準備した。
<実験>
A∼Eの5種類の骨頭球を37℃生理的食塩水及び乳酸リンゲル液に浸
漬する耐腐食性実験を行った。700日間浸漬し、定期的に各試料の表面
をⅩ線検査を実施した。さらに各試料の抗折強度試験を行った。
3)
結果
(相転移量)
1.A、Bの各試料においては試料表面部の結晶相の変化が20%以下
であり、経時的に飽和状態を示した。
2.C,D,Eの各試料はその変化量が40%を越え、さらに増大する
傾向を示していた。
(抗折強度)
1.A,Bの各試料は当初の強度を保持した。
2.C,D,Eの各試料は強度の劣化が見られた。
図8-1は人工股関節であり、この人工股関節(1)はソケットに回転自
在に遊放される骨頭球(2)と、人工股関節として固持できるように、体
内に埋設される支持部(3)から構成される。この骨頭球(2)はY203
を2mol%以上6mol%未満含有する。共沈法又は加水分解法で得られた微
-95-
粉末原料を用いた。平均粒径を0.8/上m以下とした焼結体である。このため、
この人工股関節(1)を体内に埋設、遊放することによって体液にさらさ
れても、骨頭球(2)の表面の結晶が正方晶Z
r
O2から単斜晶Z
r
O2に
変化することが最小限に防げるため、相転移によって生じる強度の劣化を
防ぐことができた。また、上述した部分安定化ジルコニア微粉末に対して、
A1203やTiNを15
0mass%以下添加したもので、同様の骨頭球(2)
を製作したものでも十分に強度の劣化を抑制できた。
体内中において長期間さらされても、表面のZ
r
O2の結晶状態の変化を防
ぐことができ、強度の劣化も防ぐこともできるものである。
4)
結語
以上のごとく、生体用ジルコニアインプラント材の結晶相の転移を抑制
することで、その相転移によって生じる強度の劣化を防ぎ、長期間人体内
に埋設しても、十分に機能を発揮できる優れた効果をもつことがわかった。
1.artificial
hip
2.ball
JOint
head
3.suspension
Fig.8-1Cross
sections
-96-
of
artificial
hip
JOint
UT
8.1・2
Z-30ジルコニアの組織親和性と力学的検索2)
緒言
1)
アルミナセラミックス(以下アルミナ)は骨や関節の置換材料として、
種々の基礎的研究がなされ、人工関節の関節面に使用した場合、セラミッ
クス関節面は金属関節面よりも超高分子ポリエチレン(HDP)面との耐
摩耗性が優秀であることなどが判明しており、臨床応用の評価もはぼ確立
されていると考えられる。しかし、アルミナには脆弱性があり、その欠点
のために、人工関節設計上、また手術手技上の制約がある。そこで現在、
より優れた強度と破壊靭性を有し、はさみ、包丁等の刃にも実用化されて
いる部分安定化ジルコニアセラミックス(以下ジルコニア:開発記号UT
Z-30)に着目し、人工関節への応用のために耐摩耗性を調べるため、
骨頭の表面性状と組み合わせ関節の力学的特性を調べ、さらに生物学的組
織への影響を観察した。
実験
2)
2)-1表面性状
試
料
セラミックス・28mm径ジルコニア骨頭(未使用)
・28mm径アルミナ骨頭(未使用、2年使用品)
金属・28mm径S
U
o-C
・28mm径C
方
S316(9年使用品)
r合金(5年使用品)
法
・走査型電子顕微鏡(S
EM)
・東京精密㈱ロンコム5A型真円度計
・東京精密㈱サーフコム550A型表面粗さ計
2ト2力学的特性
試
料
r-FH-28)
・28mm径ジルコニア骨頭(以下:Z
・Ti-6Al-4V合金製試験用頚部
ー97-
方
法
<静荷重破壊試験>
28mm径ジルコニア骨頭とTi-6Al-4V合金製試験用頚部を
組み合わせ、厚さ20mmの超高分子ポリエチレンシートを介して、骨
頭頂部に頚部軸方向より静荷重を加え、サンプル骨頭が破壊するときの
荷重を万能試験機により測定
<衝撃破壊試験>
28mm径ジルコニア骨頭とTi-6Al-4V合金製試験頚部を組
み合わせ、衝撃破壊試験装置により衝撃力をMCナイロン製シートを介
して、頸部軸方向より骨頭頂部に当たるようにセットした。衝撃力は2
5Jから開始し、試料骨頭が破壊しなかったら衝撃力を5Jずつ増大さ
せて、同一の試料骨頭に繰り返し試験し、骨頭が破壊するまで継続して
実施した。
<疲労破壊試験>
垂直振動試験機により28mm径骨頭の耐疲労破壊性を確認するため
に、生理的食塩水中(37±2℃)にて、振動荷重(6.5±5.5K
N)、振動荷重振動数(30H
z)とした。振動荷重を厚さ20mmの
超高分子ポリエチレンシートを介して頚部軸方向に、107回かけたが超
高分子ポリエチレンシートの破壊を認めたため107回より108回まで
ポリメチルメタアクリレート(PMMA)シートを介在片とし、同時に
生理的食塩水中より疑似体液中で試験を実施した。この疲労破壊試験後、
表面粗度、兵円度の測定を実施した。
2)-3生物学的試験
<組織学的試験>
体重約3k
gの家兎をエーテル全身麻酔下に両側大腿骨外側顆部付近
に小切開を加え、外顆部を2.4mmKirschner鋼線にて開窓した。右側
大腿骨骨髄内には生理的食塩水と混合した粉末試料を注入し、左側大腿
-98-
骨骨髄内にはスクリュー型焼結体試料を刺入して創を閉鎖した。試料お
よび手術器具は全てオートクレーブ滅菌を行い、操作も全て無菌的に実
施した。Ⅹ線撮影は術直後、2週、4週、45週後に行った。術語2週
(2週群)、4週(4週群)および45週(45週群)経過した家兎を
屠殺し、両側大腿骨顆部を採取した。脱灰標本はHE染色、非脱灰標本
はトルイジンブルー染色法を実施して、光学顕微鏡にて観察した。また
別に非脱灰標本をメチレンブルー・フクシン表面染色を行い、走査型電
子顕微鏡S
3)
EMにて観察、写真撮影を行った。
結果
3)-1骨頭の表面性状
金属、アルミナおよびジルコニアの28mm経骨頭表面の走査型電子顕
微鏡S
EM所見を図8-2に示しているが、アルミナ骨頭の表面は未使用の
ものも、2年使用のものも、創状痕や隆起した創縁の箇所はなく、所々に
小孔が存在する(図8-2b、C)。ジルコニア骨頭では、アルミナの粒子
が散見されるが、ほぼ一面に平滑である(図8-2a)。一方金属骨頭にお
いては、SUS316製骨頭ボール9年使用例では創状痕が著明であり
(図8-2d)、C
o-C
r製骨頭ボール5年使用例ではそれほど著明では
ないが創状痕が存在した。(図8-2e)。
東京精密㈱製ロンコム5A型真円度計を用いて、未使用のジルコニア骨
頭ボールの真円度を測定した所0.1/上mであった。同社のサーフコム5
50A型表面粗さ計を用いて面粗度を測定したところ0.03〟m(0.
15/上mRmax)であった。一方未使用のアルミナ骨頭は真円度0.1〝m、
面粗度0.04〝m(0.6/上mRmax)とほぼ同等であった。また9年使
用のSUS316骨頭の真円度と面粗度は、それぞれ47LLm、0.04
o-C
LLm(0.85LLmRmax)であり、5年使用のC
r骨頭はそれぞれ2
4.6LLm、0.04〃′m(0.20LLmRmax)であった3)。また後述す
る疲労破壊試験後のジルコニア骨頭の表面性状は創状痕もなく真円度、面
粗度共に変化のないことが判明した。
-99-
3)一2
骨頭部分の力学的試験
<静荷重破壊試験>
28mm径ジルコニア骨頭(Z
r-FH-28)とTi-6Al-4V合金
製試験用頸部を組合せ、厚さ20mmのUltra
High
Molecular
Weight
Poriethyrene(UHMWP)シートを介して、骨頭頂部に頸部軸方向よ
り静荷重を加え、サンプル骨頭が破壊するときの荷重を万能試験機(図817)により測定した。
ショートネックの骨頭で71.54KN、ミディアムネックの骨頭で8
14.7-2
1.34KNと、28mm径アルミナ骨頭ボールの
7.4
4KN7)と比較して、2.6-3倍の強度を有する。ショートネックはミ
ディアムネックに比較し、構造上骨頭のセラミックの厚みが薄いため、強
度的に劣るが、アルミナのそれより2.6倍の強度となっている。
<衝撃破壊試験>
Z
r-FH-28骨頭とTi-6Al-4V合金製試験用頚部を組み合わせ、
衝撃破壊試験装置(図8-18)により、衝撃力をMCナイロン製シートを介
して、頚部軸方向より骨頭頂部に当たるようにセットした。衝撃力は25
Jから開始し、試料骨頭が破壊しなかったら衝撃力を5Jずつ増大させて、
同一の試料骨頭に繰り返し試験し、骨頭が破壊するまで継続して実施した。
本骨頭の耐衝撃力は115J以上と強力であった。しかし、これは骨頭
と頚部の接合面の状態の影響を受け易く、接触の悪かった1試料では6
Jの結果を得た。それでもアルミナ骨頭の15.1Jより優れた結果であ
った。
<疲労破壊試験>
ショートネック、ミディアムネックいずれも荷重振幅1KN-12KN、
繰り返し回数107回の疲労試験に合格した。また引き続き実施した疑似体
液中でPMMAを介する試験でも9×107回、合計108回の疲労試験に
もUT
Z-30骨頭の疲労破壊は起こらなかった。試料骨頭の面粗度は試
験前と同様0.03′↓mであった。真円度は試験前0.4〃′mであったも
のが試験後0.3〃mと不変であった。
-100-
5
3)-3
生物学的試験
<組織学的試験>
大腿骨顆部への試料刺入時および、いずれの群の家兎も屠殺して標本も
採取した際、肉眼的に特に感染を疑わせる所見もなく、病的肉芽の存在も
認めなかった。
Ⅹ線上、大腿骨顆部は2週、4週、45週後で術直後の所見と変わり無く、
試料周辺の反応性の骨形成もまた骨吸収像の所見も認めなかった(図8-3)。
組織学的検索では、ジルコニア焼成前原料粉末(図8-4a)は種々の大き
さで不整な粉状を呈していた。2週群、4週群、45週群共に試料周辺お
よび内部への異物巨細胞、炎症性細胞の出現も認められず、正常骨髄との
境界は不鮮明であった。ジルコニア焼成後の粉末(図8-4b)は、球状を呈
していた。またその組織では、前者と同様にいずれの群にも異物巨細胞、
炎症性細胞の出現は認められなかった。スクリュー型試料についても、い
ずれの群も同様の結果であった(図8-4c、8-5ab)。以上、家兎において
ジルコニア(UT
Z-30)は、組織異物反応も、炎症反応も認められず、
組織親和性がよいことが判明した。
Electron-Probe
Micro-Analyzer(E
Y(イットリウム)、C(炭素)、C
PMA)を用いてZ
r(シールコニウム)、
a(カルシウム)、P(リン)の元素について濃度
分布状況を面分析および線分析した結果、焼成前粉末群、焼成後粉末群、
スクリュー群のいずれの群も、また2週、4週、45週群のいずれの群で
も、Z
r、Yの元素の近接骨組織内への拡散は全く認められなかった(図
8-5c、d)。
またエネルギー分散型分光器(E
D
る点分析でも、当然のことながら、Z
く、反対にジルコニア内へのC、C
S)を用いた定性スペクトラムによ
r、Yの元素の組織内への拡散は無
a、Pの元素の流入も認められなかっ
た(図8-5e、f)。
4)
考察
現在、臨床的に人体に使用されている骨および関節置換材料としてのセ
-101-
ラミックスではアルミナがあり、その組織親和性、骨親和性についてはい
ろいろ詳細な報告もあり、実際人工関節、人工骨として使用する場合この
組織親和性についての問題はないようである。しかし、アルミナは人工関
節の一部として、または全体として使用する場合も、その脆弱性が欠点で
あり、そのために、金属のように板状に薄く、または棒状に細くして使用
する場合には問題が多い。そこでアルミナと同様に組織親和性がよく、か
つ破壊靭性の優れたジルコニアの臨床応用の可能性が近年脚光をあびてき
Z-30を用い
た5ず6,8)。われわれは日本特殊陶業社製のジルコニアUT
て各種の検索を実施した。ジルコニア関節面は金属と異なりアルミナ同様
硬度が大きいため手術中の操作で傷が付き難く、手術時操作が非常に容易
である。その球面は真円度、面粗度もアルミナ骨頭と同等か、またはそれ
以上に優秀であり、臨床応用上相対するHD
P白蓋カップ摩耗が少ないも
のと期待される。さらに力学的試験でもUT
Z-30骨頭の静荷重、衝撃
および疲労破壊強度はアルミナより強いことが判明した。組織親和性およ
び骨親和性については家兎の大腿骨を用いて45週まで追跡検索した。その
結果、ジルコニア周囲には組織異物反応、あるいは炎症反応を認めず、骨
組織と接する部分では非常に薄い軟部組織を介して接している所見が見ら
れた。また細胞毒性についてはL株細胞の組織培養法を用いた検索にてジ
ルコニア試料は全く毒性のないことが確かめられ既に報告している4)。す
Z-3
なわちジルコニア(開発記号:UT
0)はbioinertであることが判
明した。
5)
結語
ジルコニア(UT
Z-30)は、アルミナに比較して力学的強度、破壊
靭性が優れていた。さらに生体親和性についても調査した結果、優れた成
績であった。これらの結果より本ジルコニア(UT
び関節置換材料として優秀な材料と考える。
-102-
Z-3
0)は、骨およ
8.1.3
1)
人工股関節の疲労強度試験9)
緒言
生体材料の力学的適合性試験を行うにあたり、摩擦摩耗試験のような
「材料」レベルでの評価、及び、人工関節疲労試験のような「デバイス」
レベルでの両面からの評価を進めてきた。今回は、ジルコニアおよびアル
ミナセラミックス製の人工股関節骨頭に繰り返し荷重を108回負荷する疲
労試験、およびスリットを有する高密度ポリエチレン製人工股関節ソケッ
トの疲労破壊を観察することを目的とした。
2)
実験
人工股関節骨頭疲労試験
2ト1
2)-1.1
試料
骨頭:22mm径ジルコニアセラミックス製人工股関節骨頭
26mm径アルミナセラミックス製人工股関節骨頭
ステム:チタン(Ti-6Al-4V)合金製疲労試験用ストレート
ステム
2)一1.2
実験方法
装置:垂直荷重型疲労試験機による(図8-6)
荷重:6.55±5.5KNで垂直荷重を負荷
荷重条件:3
環境液:3
0H
zのサイン波
7℃疑似体液*
*ion:N
mM:142.0
a+
K十
Mg2+
c
5.0
1.5
2.5
a2十
cI
HC
148.8
4.2
O3
ソケット側:同径のPMMA製人工関節ソケット
検定:108回の荷重負荷で破壊するかどうかの確認、破壊しなかっ
た場合は、試験前後で破壊強度、表面粗度、真円度を比較
2ト2
人工股関節ソケット疲労試験
-103-
HPO.
1.0
2)-2.1
試料
ソケット:高密度ポリエチレン製ステム(骨頭保持のためのスリッ
ト入り形状)
ステム:ステンレススチール製疲労試験用ステム
2ト2.2
実験方法
装置:3軸関節シミュレータ
荷重:1.75±1.25KNで垂直荷重
荷重条件:12H
環境液:3
zのサイン波
7℃疑似体液
設定条件:ソケットを垂直からの傾斜角62度で設定、ステム側傾
斜角48度(図8-7,8-8参照)
スウインク●:0.12
5H
z±15deg
検定:破壊にいたるまで荷重負荷。107回ごとに表面を観察
3)
3)-1
結果及び考察
人工股関節骨頭疲労試験
108回荷重を負荷した状態で、アルミナセラミックスおよびジルコニア
セラミックス製のいずれの骨頭も破壊しなかった。また疲労試験後の骨頭
の静荷重破壊強度は平均で60KN以上あり、衝撃荷重強度は130Jを
越えても破壊することなく、表面粗度、真円度においても試料前後におい
て有為な差はなかった。このことより、テストしたジルコニアセラミック
ス製骨頭はその実用に信頼を示しているといえる。
今回、加速試験のために荷重を1KNと12KNと設定し、30H
う周波数を用いたが(サンプルあたり108回を試験するのに約40日)、
通常の高密度ポリエチレンでは局部的な温度上昇が起こり、クリープが生
じやすくなる。このため熱の影響を受けにくいPMMAやナイロンにて実
験を進める必要があった。また、今回は、実験は試料を37℃に保った環
境液の中で行ったが、環境液の破壊に対する影響を確認するには、環境液
ー104-
zとい
の構成および体内での数十年という影響を再現して、加速する試験条件を
さらに考える必要が有ろう。
3ト2
人工股関節ソケット疲労試験
ソケットは、3・8×107回の荷重負荷時点において、スリット形状部
より破壊が起こった。1日約5000歩歩くと仮定すると、年間で1.8
×10`う歩、つまりこの場合約20年以上は試験的には耐久性があったわけ
である。ただ、1.75±1.25KNという荷重は、実生活では十分に
関節に負荷される値であるので、ソケット部および骨頭角度の設定によっ
ては、破壊が促進される可能性もあり、形状を変化させるなどさらに安全
係数をあげる必要があろう。
ソケットの設計においては、現在市販されている多くの人工股関節のよ
うに、応力集中箇所を少なくするために、スリットなどは極力避けるべき
と言える。
4)
結語
22mm径ジルコニアセラミックス製人工股関節骨頭及び26mm径ア
ルミナセラミックス製人工股関節骨頭は共に苛酷な疲労試験にも十分耐え
信頼性の高い事が確認できた。人工股関節用骨頭として十分使用できると
考えられる。
8・1・4
1)
関節シミュレータによるジルコニア人工股関節の性能評価1()、11)
緒言
これまで人工股関節は、ステンレス鋼やC
o-C
r合金と超高分子量ポリ
エチレンの組合せが大多数を占めていたが、最近アルミナがその耐摩耗性
と生体適合性の良さを売り物に注目を集めている。一方、アルミナの脆性
を改善すべく、ジルコニアの導入も検討されているが、関節シミュレータ
を用いた長期耐久性評価は生体内に近い環境下ではほとんどなされていな
い。
-105-
本報告では、実働負荷37℃疑似体液中で、ジルコニア骨頭とポリエチ
レンソケットの組合せについてポリエチレンのクリープ○変形による摩擦ト
ルクの経時変化を測定し、C
o-C
r-Ni合金、アルミナボール対ポリエ
チレンの実験結果と比較した。
実験
2)
人工関節の摩擦トルク、耐久性を評価するために開発した3軸負荷関節
シミュレータ(図8-8)を用い、表8-1に示すような3つの異なる負荷様
E C
式により、37℃疑似体液(P
F)中で試験を行った。
試料は26mm径のジルコニアセラミックス製、アルミナセラミックス製
人工股関節骨頭及びC
o-C
r-Ni合金製骨頭を用いた。ソケットは超高
分子ポリエチレン、ステムはチタン(Ti-6Al-4V)合金製疲労試験用
ストレートステムを用いた。図8-9に実験に用いた試料の外観写真を示す。
①0.25H
z±10度のねじり振動下で、垂直荷重を変化させて摩擦ト
ルクを測定する。
②0.25H
z±10度のねじり振動と垂直荷重を連続的に負荷し摩擦ト
ルクを測定する。
③0.25H
z±10度のねじり振動と1∼50H
z、2.0±0.5、
2.0±1.0、2.0±1.5KNの垂直振動荷重を負荷して摩擦トル
クを測定する。
骨頭ボールとソケットとの角度は骨頭軸とソケット底部の法線とのなす
角が0度及び生理的な使用状態に近い17度とした。
骨頭ボールは、径26mmのジルコニア、アルミナ及びC
o-C
製のものを用いた。
3)
結果及び考察
図8-10は0.2
す。ジルコニア、C
5H
o-C
zのねじり振動下におけるトルクの荷重依存性を示
r合金ともに荷重の増加に伴い摩擦トルクは増
大する。これはポリエチレンのクリープ変形が起こり、ボールとソケット
の接触面積が大きくなることが一因である。骨頭ボールとソケットとのな
ー106-
r合金
す角が、0度と17度とでトルクが異なるのは、おそらく非対称的な荷重
負荷がソケットに対してなされた結果、17度の方がより大きなクリープ
変形を起こしたものと思われる。荷重増加に対する摩擦トルクの増加がC
O-C
r合金の方が顕著なのは、C
o-C
r合金がジルコニアに比べて対
ポリエチレンの摩擦係数が大きいことによるものと考えられる。
図8-11は0.2
5H
zのねじり振動と垂直荷重を連続的に負荷したとき
の摩擦トルクの変化を示す。累積的な荷重負荷を行った場合、プロセスの
初期の段階では静的荷重負荷による摩擦トルク試験と同様な傾向を示した
が、繰り返し数104程度に達すると、摩擦トルクは各試料とも急激に増大
する傾向を示した。
これは、ソケット表面が粗くなるため摩擦係数が増加し、それにより温
度が上昇し、ポリエチレンの変形が促進されてボールが沈み込んでいき、
摩擦トルクが急激に上がったものと考えられる。また、ボールにポリエチ
レンの摩耗粉が凝着し、その結果ポリエチレンとポリエチレンの摩擦とな
って摩擦係数が上がったものとも考えられる。なお、この場合は、ポリエ
チレン膜が脱落すれば、また摩擦係数が下がることも考えられる。
図8-12は0.2
5H
zのねじり振動と1∼50H
zの垂直振動荷重を負
荷したときの摩擦トルクの変化を示す。振動荷重を加えることにより、ボ
ールとソケットの接触面への疑似体液の侵入は容易になる。ポリエチレン
の圧縮応力が小さくなったときに、ボールとソケットの境界面に潤滑液が
送り込まれる。また、振幅が大きくなれば最低圧縮荷重は小さくなり、潤
滑に有利に働く。
振動を与えると見かけの摩擦係数が下がる。流体を介在させれば、より
潤滑液が侵入し易くなる。また、振動数を上げると摩擦トルクは下がって
いる。
臨床的にも人工関節の使用状態では、歩行の場合コンポーネントの間に
振動荷重が負荷されており、実験室で摩擦トルク試験を考える場合でも、
振動を加えて人工関節の使用状態に近づける必要がある。ところが、静的
な垂直荷重を加えた場合の方が垂直振動荷重を加えるより摩擦トルクが大
きい。したがって、静的な垂直荷重を負荷した実験を行っておけば安全側
-107-
での評価をすることができる。
4)
結語
実働負荷37℃疑似体液中で、ジルコニア骨頭とポリエチレンソケット
の組み合わせについてポリエチレンのクー」-プ変形による摩擦トルクの経
時変化をC
o-C
r合金骨頭、アルミナ骨頭対ポリエチレンの実験結果と
比較検討した所、ジルコニア骨頭はポリエチレンのクリープ変形が少ない
ことがわかり、人工股関節骨頭として優れているといえる。
-108-
a.Brand-neW
Zirconia
ceramics
femoral
b.Brand-neW
head
c.2-Year-uSed
alumina
ceramics
bead
alumlna
Ceramics
d・9-year-uSedSUS316femoralhead
femoral
bead
e・5-Year-uSedCo-Cralloyfemoralhead
Fig.8,2
S EM
photos
of
femoral
-109-
head
surface(x3000)
femoral
a.Roentgenogran
implantation
Fig.8-3
into
and
powder
into
the
weeks
after
corldylc
condyle
femur一
ー110一
inplanta=on
a=er
ceranic
material
the
femurs
material
zirconia
inserted
injectcd
4
at
Screw-Shape
raw
the
of
b.Roentgenogram
both
the
of
was
material
of
of
one
femur
zirconia
of
the
was
other
a・Raw
powder
materialor
zirconiain
bonemarrow(×100)
b.Sinteredpowdermaterialofzirconiain
』onemarrow(×200)
c.Screw-Shape
Tberei5nO
materialin
bone(×100)
COnneCtive
tbickintervenlng
tissueinbetweenzirconiaandbonetissue.
Fig.8¶4
Histology
anY
Cells
at
granulation
or
any
45weeks
or
giant
implantation
after
proliferation
cells
bodies
ー111-
of
phagocytosing
without
inflamatory
foreign
a.SEMfindingsatscrewedgeinthebone
b・Sarne
tissue45week5afterimplantation(×75).
Zirconiaandleftportionisbone.
tissue(×750)・Right
d.EPMA
c.EPMA(Electron,PrObeMicro-Analyz-
portionis
ofCa.
er)ofZr.
抗
覇
,r▼T†
WSヽ
臥㈱
e・EDS(Energy
Dispersive
819之
ヨ・12¢
nl■什¶=廿h¶
VF5・■¢96
巧.間匂
f・EDS
Spectroscopy)
atbonemarrowareaofFig・4b
(1eft portion)sbows止ほ5peCtrum
atzirconiaareaofFig・4b・(rightportion)
ShowsthespectrumofZrandY・
and
Fig.8-5
ー112-
Ca.
5.12匂
Of
p
Fig.8-6
Fatigue
test
of
-113-
art=icial
joint
head
_ヱp
□
Sしainlcss
SしeelSLem
ロ
ロ
ゝ、H
DPolyc山yleneSocke【
SockcしHoIJcr
ヽ
巳
\
ロ
u
l
Fig.8-7
Schematic
artificial
l
diagram
socket
ー114-
of
fatigue
test
of
Fig.8-8
Joint
simulator
-115-
Table
81
Loading
conditions
Pulsating
Torsio爪al
CondiLion
Vertical
oscillatio爪
0.25Hz.±100
①
②
0.25】lz.±100.105cycle
vertic∂1
axialload
aXialload
Angle
or
a
0r
and
sockeし
0・5∼3・OkN
00
0r17ロ
2.5kN
00
0r170
const・
tip
bal】bead
ユ∼5011z.2.0±D.5kN
③
O¢
2.0±1.OkN
□.2511z.±1日P
2,0±1.5川
Zirconia
Co-CT-NiAlloy
AIuロina
(a)Ballわeads
b)U=ra
higb
socketin
Fig.8-9
Photographs
of
molecular
tbe
weighlpolyeしhylene
jig
experimented
-116一
ballheads
and
socket
Torsion
1.5
¢=00
O.25日z,±100
¢=Ⅰ70
Ball
Socket
U1日川PE
1
Ileads
_
P
′
E
C
F
370c
うー
●:7rn2.
J}二=
∩:ZrO2.
¢=-王70
0〔
Soc
kc
ts
■■ヽ
∈1.O
Z
こI:Cn-Cr←Nl.¢
ヽ_一′
=17∩
む
⊃
F
β0.5
0.5
1.5
1.0
2.0
2.5
3.0
し00d(kN)
Fig.8,10
Inherent
loading
characteristic
of
frictional
torque
W=2.5kN
Torsion
2.5
O.25Hz,±100
U椚川PE
P
2.0
E
¢=00
C
F
Ball
370c
ads
●:ZrO2,
¢=
0:ZrO2,
¢=170
越e
00
Socket
′■ヽ
∈
Z
¢=170
Socket
□:Co-Cr-Ni,¢=170
、ノ1.5
むコbJOト
0
101
102
103
Motion
Fig.8-11
Frictional
load
ln
torque
change
SerleS
ー117一
10`
105
Cycles
under
vertical
axia1
0
10
The
Fig.8-12
Variation
of
20
Number
30
of
frictional
load
-118-
40
50
VibrQtion(Hz)
torque
under
pulsating
8.2
アルミナセラミックス製人工骨頭12)
8.2.1高純度アルミナセラミックスの力学的検索と組織親和性
1)
緒言
S
アメリカの生体用アルミナ材料の規格A
TM-F603を満足する高
純度アルミナセラミックス(開発記号:ⅩFA-40日本特殊陶業㈱製)
を開発したので、その臨床応用、特に人工股関節の骨頭部分としての力学
的試験、及び家兎を用いた本材料の生物学的検索を実施したので報告する。
2)
実験
高純度アルミナセラミックス(X
FA-40)の研磨鏡面のS
EM観察、
骨頭表面の面粗度、真円度の測定、さらに生体組織新和性をⅩ線撮影、顕
微鏡(光学、電子)で観察しE
PMAにより、Al、C
a、Pの溶出、拡
散を調べた。
X
FA-40を用いて作製した26mm径骨頭を立石ら20)の報告の試験
方法に準じて静荷重破壊試験および衝撃破壊試験を実施した。前者はTi
合金製ステムを骨頭に挿入し、20mm厚UHMWP板を介して骨頭頂部
に頚部軸方向に静荷重を加え、試料骨頭が破壊するときの荷重を万能試験
機により測定した(図8-17)。後者は衝撃破壊試験装置により、衝撃力を
25Jから開始し、試料骨頭が破壊しなかった場合は、衝撃力を5Jずつ
増大させて、同一の試料骨頭が破壊するまで継続して実施した(図8-18)。
また骨頭を9Jで打ち込み、引き抜き速度0.5mm/min.で引き抜き
力を測定する引き抜き試験も実施した。
3)結果
-119-
<材料及び研磨鏡面>
本アルミナ(ⅩFA-40)はイットリウムを含まない99.7%以上
の高純度アルミナセラミックスであり最大粒子径は4〃mと従来品の15
EMで観察すると従来品より気孔(pore)
LLmより小さく、研磨鏡面をS
が非常に小さく、その数も少ない(図8-13)。一方、既使用の金属骨頭の
表面電顕像(図8-14)を観察すると、金属骨頭は多数の創状痕を認め、一
部は爪状に盛り上がっており、人工股関節挿入後関節運動によりこれらの
創状痕が発生し、またその結果相接しているHD
P製白蓋カップを削り、
その摩耗を速めることは容易に推察できる。
ついで骨頭表面の面粗度(図8-15)はR
a
m、Rm
a:0.004-0.0
x:0.07-0.18LLmであった。真円度(図8-16)は水
平部が0.12-0.14〟mで20度傾斜部が0.39/上mであった。
従来のアルミナセラミックス骨頭に比較して陥凹が少なくかつ小さい点で
面粗度は優れており、一方貞円度は同等である(表8-2)。
本アルミナ(ⅩFA-40)の材料試験としての曲げ強度は最低500
(MP
ング率は最低38
8
S
a)、平均620でA
3(G
P
TM-F603基準の400以上を越え、ヤ
S
a)、平均389でA
TM-F603基準の3
0以上を越えている(表8-3)。
<本アルミナ(ⅩFA-40)骨頭の力学的強度>
結果は表8-4に示しているが、静荷重破壊試験では従来品28mm径骨
頭の約3倍の強度を有していた。衝撃破壊試験では平均105Jで、従来
品骨頭の5倍以上の強度を示した。引き抜き試験は平均6.08KNで、
すべて5.8
8KN以上であった。
<生体組織親和性>
約3k
gの成熟家兎の大腿骨外顆部に径3mmキルシュナー鋼線で穿孔
し、アルミナ(ⅩFA-40)の末焼成粉末、焼成粉末およびスクリュー型
焼結体の3試料をそれぞれ別の大腿骨外顆部に挿入した(図8-19)。術後
-120-
0
5′1
2,4,8,12,24過程過した後、Ⅰ線撮影を実施し、ついで大腿骨顆
部の組織を採取し、固定、染色の後、光学顕微鏡および電子顕微鏡を用い
て観察した。ついでE
PMAによるAl、C
a、P元素の溶出、拡散の有
無を調査した。大腿骨顆部採取時、いずれの家兎においても肉眼的に感染
や異常肉芽を認めなかった。Ⅹ線写真像による観察では未焼成粉末、焼成粉
末、スクリュー型焼結体を埋入した各大腿骨顆部は、いずれの時期のもの
も骨透亮像や異常仮骨像は認めず、骨髄炎等を示唆するような異常所見は
認められなかった。(図8-20,21)
スクー」ユー除去後の大腿骨顆部標本はHE染色およびトルジンブルー染
色した。標本の光学顕微鏡による観察では、いずれの時期の標本もスクリ
ュー型焼結体周囲組織に炎症性細胞の浸潤や異物巨細帽の浸潤は認められ
なかった。4週以降でスクリュー周囲に骨組織が増加しているが、骨髄炎
のような異常仮骨形成は認められなかった。スクリューの周囲には一部軟
部組織も認めるが、骨組織が直接、または細胞一層の薄い軟部被膜を介し
てスクリューに接している部分が多い。また周囲の骨組織も経時的に増加
しているが、肉芽様組織の増加は認められなかった(図8-22∼26)。
非脱灰標本の切片を表面研磨し、S
EMにより観察した。標本作成上に
発生したと考えられる骨組織と試料間の狭い間隙は認められるが、いずれ
の時期の標本でもアルミナ粒子およびスクリューに接して骨組織が存在し
ていると考えられた。(図8-27a、C、8-28a、C、8-29a,C)
E
PMAによる面分析、線分析、点分析によると、いずれの時期の標本
においてもアルミニュウム元素はアルミナセラミックス粒子内に、またカ
ルシウム、リンの元素は骨組織内に留まっており、これらの元素の他の組
織内への溶出、拡散は認められなかった。(図8-27b、d-h、8-28b,d-h、
8-29b、d-h)
4)
考察
従来から臨床応用されているアルミナセラミックスは骨、関節置換材料
として種々の基礎的研究と臨床応用が重ねられ、ほぼ期待通りの臨床評価
-121一
が得られている14、15、19)。たとえば組織親和性が良好であること、アルミ
P
ナ骨頭の球面は金属骨頭に比較して真円度、面粗度は優秀であり、HD
臼蓋カげ摩耗が少なく、関節摺動面への応用に利点が大きいことなどであ
る。また長年月使用しても骨頭表面に金属骨頭のような創状痕を生じず、
未使用骨頭と同様の滑らかさである23)。また手術中の操作によっても非常
に硬いアルミナセラミックス骨頭表面への損傷はほとんどない。一方人工
股関節全置換術の長期成績より、22mm径の骨頭を有するCharnley型人工
股関節全置換術の成績が長期に優れているということも認められていると
いう事実もあり13、18、21)、骨頭径を22mmまで小さくしたいという要望も
ある。また人工股関節のステムの頚部長をアルミナ骨頭内で調節すること
が可能となれば、手術中にステムの挿入後でも頚部長を微調整することが可能
となり、より有用性が高くなる。しかし、アルミナセラミックスには脆弱
性があり、その欠点のために人工関節設計上また手術手技上の制約がある。
そこで当然のことながら、より強度の高いセラミックスが追求されている
22)。ジルコニアは強度と破壊靭性の点で優れているセラミックスであるが、
まだ解決されなければならない点があり、臨床上いまだ応用されていない
現状である16・17)。従来臨床応用されているアルミナセラミックス骨頭は、
小さくするにしても、主に力学的強度より、骨頭径26mmまでが安全であ
った。
S TM-F603を
我々はアメリカの生体用アルミナ材料の規格であるA
満足する高純度アルミナセラミックス(開発記号:ⅩFA-40日本特殊陶
業㈱製)を開発したので、このアルミナ(ⅩFA-40)骨頭の強度試験、
およびこの試料片の家兎大腿骨を用いた組織親和性を調査した。26mm径
骨頭では静荷重破壊強度で72、912N、衝撃破壊強度で105Jと強
固であった。一方2,4,8,12,24週後の試料埋入の家兎大腿骨顆
部組織を採取し、光学顕微鏡観察、およびS
EMで観察したが、アルミナ
(ⅩFA-40)試料埋入のいずれの組織にもまたいずれの時期の組織にも
異物巨細胞や、炎症性細胞の浸潤を認めなかった。E
PMA分析ではAl、
Ca、P等元素は本来の材料および骨組織からの溶出や拡散は認められなかっ
た。その結果、本アルミナ(X
FA-40)は十分強固でbioinertであると
-122-
考えられた。
5)
結語
本アルミナ(ⅩFA-40)は従来のアルミナセラミックス製品より力学
的に強固であり、組織親和性も従来品同様に良好でbioinertであると考え
られ、臨床応用が可能であると結論した。これにより小さな骨頭および骨
頭内での頚部長の調節可能なアルミナセラミックス製骨頭が製作、臨床応
用可能であると考えられる。
-123-
従れ■..≠由ホーー′しりヾ両)
ⅩFA-40紬r帖.(人面)
Fig.8-13
SEM
pbotos
femoral
SEM
Fig.8-14a
head
surface
or
at
head
SUS316
9YearS
肝A-40
of
COnVentional
and
alumina
surface
femoral
implanta=on
Fig.8-14b
Cr
at
一124-
fenoralhead
5YearS
SEM
of
Co-
surface
implantation
倍
率:×10,000
かノトオフ:0.08U/R
測道長さ:1.Onlnl
Fig.8-15
Surface
†∴
roughness
of
XFA-40
率:×10,000
カ‥トオフ:15U/R
Fig.8-16
Roundness
of
femoral
XFA-40
-125-
head
femoral
head
Table
8-2
Surface
roughness
従来丁′L二十
各杵一廿軸
州肌度
Roundness
and
TノL
o[
ba11heads
しトCl▲
C(トCl→
し5一申岨≠
りミ仙川)
ミ十
り隷い=
(2叶・仙川〉
Ra
(Il州d-(仁()()5
い.胴
l)()
().()d
Ⅰそ.、一山
().()7-().川
(ト6()
(),5()
(ト2()
(仁15
().l
‖」
l(う.4
2.1
克Ilj度
りくユlミ部)
SUS:-‖(i
4()
XFA
=」
しりて卜†小IJ〉
=」‖
().‖4
り.85
四
\ⅠごA一月‖は2ホIllIll借廿恒、他日却11m廿け川
/l亘■.′二二〟】11
8r3
Table
Alu肝Iina
material
戊分わよび吊刊
癌
グヰく
*:ノISTM
Fig.8-17
((iI)il)
仙-=..■.(.ち考`1
9〔).7ちキ,111
m.‡)%
合.il・≦(=):うー_キ,
(1′=0=1二8.()%1
り(う
巨」`f」7/J111
(Ml-';l)
head
XIJA-4‖
二・i.シ)山ソ、卜
小均粧イ暦
ヤン
femoral
AさrTMりい=告*
J具(gノ/c111‥l〉
曲げ丑度
of
d.()
MとLゝ15/川1
M侶くル111
4()日ソ、r
M晶15川)ドJ■ユ」(i2(l
二・;HUlリ、t
Mi11二うH:う、ドJ■f」:うH〔)
F仙:う:卜しil】1(1ill・〔l叫てけiし;山(11†軒ll厄廿里し■l叫■(1しl‖トl・Hhl血T-し=1-=\i(】し、r川'ざ几=
Static
load
tesI
Fig.8r18
-126-
Inpact
load
tcst
只i〔=11j・1-l)】刷l川)1iし
8-4
Table
Applied
force
test
of
静荷重破壊頻度
XFA-4()11eCk長
平均値(kgf)
7.440
¢26nlInShort
¢28他祉-1二【'-(参考文献伯)
femoral
alumina
衝撃破壊強度
引き抜き試験
平均値(J)
平均値(kgf)
105
1,500∼2、500
head
620(打込力9J)
10∼20
`木瓜(含3kg)
ノ(り削†柑=■引;
∴こ二■∴打阻成材木
∵ナ触友松未
エーテル仝府守工
¢3ⅠⅥmキ′しン_L十一猫:克て
00スクリュー里地結休
'射■L後試料・を州人
Fig.8-19
test
Histocompatibility
at
rabit's
of
XFAr40
Alumina
ceramic
femur
右大服汗・順部にスクリュー竺■川払紬体.
8.;卦後の同乗兎大腿骨写真像:異端
恨
Fig・8▼20a左大腿邦雄離附二焼成粉末を挿入し・そFig・8【20bノ昌・∴;ふ1云f妄妄言
の術後のX線写真像,
Fig.8-21b24週後の同豪兎大腿骨7真條=阻常仮
骨,骨透亮像等を認めち・い〔
Fig.8-21a右側糾j・掛甑ニスク■jユーノ■封肘柚休.
左大り追†一日舶l;に焼成相木を押入L.そ
の術ほのX軸′7j二川象.
-127-
之ふ、
三㌔襲′
㌔;騨二′感
∨?:ふ
澱
虔覿三
睾うu′
準
遠細密
′ごぎ
汐
Fig.8-22
てクリユー里焼結≠対局2迎彼の人肌
4週彼の組織像(HE梁色):スクリュー
Fig・8-23
周囲lの骨射L札か宮的11しているい
骨惜別机織イ象(l-1E梁色):炎症性制lり包
の浸il■削まJ2.めない
Fig.8-24b8週彼の納札條(HE梁軋×200)
Fig-8-24a8・;坦彼の組織像(11E梁軋×11)()〉
スクリュー周囲に成熟Lた骨組絶を
・巨蛸描L他の介入は少ない,ほとんどノ妄■」
認める「
組織と概して1クリユーがイJイl・二L/二
と甘えりノLる
摩鞄ン
鞄:
、●
、
†■■
均転
、・
∴・・一・
--
-ヽ
Fig.8-2512迎接の組織條(HE梁色)ニーl・分な≠
Fig.8-2b
組織に取り匪ま八ている√
24.1坦彼の刹L織條(卜′し仁ノンフ′し-梁
色1:liり様に
ト分ち・′け組織がス
り∴一丁八川ヒlに
は少ない
オ)ち・し-
-128-
別
ッ
存在し,l椚肺腑軌の介べ
■川悌制職パ描湖・i■j`い一と.
Fig・8-27b
Fig・8-27aてクリューt…と右目本別脚lし入ノJ腿眉
帆†l;SEM條rxこぅ6):lj一組織と焼新潮
ルミナセラミ・・′クてであり,そJtぞれ
ヒグり別机`ミ好で,▲軋邪拙納の介入は少
のP,Ca,Al元素の分布を示している
(×1,50(〕)。
ち`い
Fig.8-27c
右はア
EPMA線分析:左は骨組徽
Fig.8-27d同部のAl元素の点分析像:アルミナ
同部のSEM像(×800〉:/[二は骨組弧
イl■は7′レミ十セラミ・リクて..
セラミ‥ノクス内に高密度に存在,骨組
織困はハ・・/クグラウンドとして描化
されている.、
Fig・8-27e【司邪′Ca′已」キの∴■・相即
Fig・8-27f同部のP化素の点分析:骨組瀾が情
甘組矧ノ引二
のみ甘.軒要に榛山きれる
のふrl.宥密度に附侶封しる。
-129-
l
】
‖
I
u
u
1
山
L
1
ll
u
‖
1
口
‖
lt
u
H
l
!
-
口
‖
l
f
口
口
口
l
1
口
‖
u
l
i
‡
ー
P
u
u
切
n
I
「
0.0¢0
50
‖
t
l
l
l
ヨ
l
0.000
VFS=409610.240
vFS=10241(〉.別O
50
Potn12
poiれtl
EDSlこよるアルミナセラミ■′タス内
EDSによる甘岨軌内の乾性スペクト
の定性スペクトラム:A一元粟のヒー
タのみ観照される。
机
ラム:P.C引元来のと-クを認める
Al電粟は字l:改しなかりた.,
Fig.8-27h
Fig.8-27g
El)MA線分析:中火灘は・i■欄1札.ん
性戚糊来2右軌哩入一万阻骨蝿部SEM像
イ=まア′し≡ナセラミ・′クスてあり、そ
【×36):一け組織と税収粉末との接触
れぞハの1).Cこl.Al止ぶの分布を′Jこし
良好で、軟郡机組の介入は少か、(
ている(×】.50(=
だM珊瑚吋二牛し
たと考▲え▲■フれる骨剥L絶とセラ≡・・′ク
ス問に亀裂をこばめる、.
Fig.8-28b
Fig.8-2ぬ
-130-
同部のSE九1條(×80()):左ヰ丁はアル
l司郎のAl元素の.t.‡分析條:アルミ十
ミ十セラ三・ワ7∵て骨軋L識がこれそ
セラミ■ソクス内に高密度に存在して
111り囲′Lて■いる
いる
Fig.8-28c
Fig.8-28d
頗済野攣撃開平
同部のしaJ亡索の.小こ分析:骨ご机桃内に
同部のP元素の点分析:骨組織内に
高暦腰に行宮■「る、
高密度に存在する。
Fig.8-28e
Fig.8-28r
A
【
A
L
P
C
A
】
0.000
50
Fig.8-28g
VFS=409610.240
0.000
vFS=102410.240
Poi両124W2466L
Fig・8-28h
EDSによるアルミ十セラミ・・′クス困
の定件てヘクトラム:AI元素のと-
EDSにj:る骨組織内の定性スペクト
ラム:P、Caノ己素のど-クを.認める
クのLみ祝賀{きれる.
が.Al元素は存:在しなかった.1
-131-
朱焼成柑珠24遇規人大腿骨順郡SEM
EPMA線分析二左は骨組織.Ll=lF
像(×36):骨組瀾と粉末雌との接触
は未焼成粉末の細かい粒子が多数認
良好てある〔.
め1、⊃れ.石の大きな魂は末焼成粕ネの
凝集塊である..それぞれのP,Ca.Al
元宋の分布をホLている(×1.500)〔.
Fig.8-29b
Fig.8-29a
同部のSEM像(×800)〔
同部のAI元来の点分析像二7/しミ十
セラミ■′クて内に紆れ斐に存在する.
Fig.8-29d
Fig.8-29c
同部のCa
竹組織内に
l石川=1;のP7亡其の1一,・二分仰
元素の.・.`∴分析 ′i・-j■紬胱伸二
㍍強度に存在するL
高漕度に存作する.
Fig.8-29r
Fig.8-29e
-132-
0.000
\ノ′FS=409610
240
VFS=102410
501」01rlLIJ4し\∠444H
P。け=2
Fig.8-29g
Fig8-29h
-133-
24W2444R
24U
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験"日本機械学会第2回八○ィオエンシーニアリンク○シンポシ♪ウム講演論文集、
p145-146、(1992)
[10]T.TATEISHI,K.KONDO
andK.MIURA:"関節シミュレタによるシールコニア人
33rd
工股関節の性能評価"The
RESEARCH
JAPAN
Vol.3
ON
MATERIAL
p141-146(1990)
[11]T.Tateishi,K.Hyodo,K.Kondo
MECHANICAL
CONGRESS
PROPERTIES
pll「卜126
K.Miura:EVALUATION
and
OF
ZIRCONIA
HIP
JOINT,Bioceramics
(1990)
[12]大橋俊郎、井上四郎∴小口光昭、太田万郷、大東芙生、亀谷明秀、
近藤和夫:"高純度アルミナセラミックス(ⅩFA-40)の力学的検索と家兎におけ
-134-
OF
No.10
る組織親和性について"基礎と臨床,Vol.25
[13]Cupic,Z.:Long-term
Of
follow-uP
Of
Charnley
Aug.(1991)
arthroplasty
hip.Clin.Orthop.,141,28-43,(1979)
the
[14]川内邦雄、黒木良克つ、斉藤
進ほか:セラミックス型人工股関節全置換術
Ceramic
一特にWearに関して、Orthopaedic
Implants,4,253-257,
(1984)
[15]大橋俊郎、井上四郎、梶川
験,Orthopaedic
究他:Bioceram5型人工股関節の使用経
Ceramic
Implants,3,199-204,(1983)
[16]大橋俊郎、井上四郎ほか:シールコニア骨頭を用いた新しい人工股関節の開
発,中部整災誌,31,11L20,(1988)
[17]大橋俊郎、井上四郎、梶川
井
究、茨木和博、多田道彦、小口光秀、荒
敦、亀谷明秀、村松泰徳、近藤和夫:ロTZ-30シールコニアの組織親和性と
力学的検索,Orthopaedic
Ceramic
Implants,7,173-179,(1990)
[18]奥村秀雄、山室隆夫:Charnley型全人工股関節置換術の術後成績の検
討,整形外科MOOE,45,88-97,(1986)
[19]大西啓靖、敷田卓治:アルミナ・セラミックス人工股関節,別冊整形外科,3,
264-279,(1983)
[20]立石哲也、柚木博行:高性能人工股関節の開発と評価,整形外科MOOE,
45,13-29,(1986)
Stenport、J.:Charnley
[21]Wejkner、B.&
arthoplasty、A
lO∼14-year
total
follow-uP
hip
Study.Clin.Orthop.,2
31,113-119,(1988)
[22]山村隆夫:人工関節材料に望まれる性質と機能,整形外科MOOK,45,
13-29,(1986)
[23]T.Ohashi、S.Inoue、K.Kajikawa、K.Ibaragi、T.Tada、
M.Oguchi、T.Arai
lst
International
and
K.Kondo:Bioceramics(Proceeding
Bioceramic
-135t
Symposium)p278-283
of
(1989)
第9章
バイオセラミックス材の実用化
一商品展開-
バイオセラミックス材として実用化する場合、厚生省の承認申請を行い、
承認番号及び製造業許可を得ることが大変重要であり、これがないと販売
もできない。本章では製造承認を得た人工骨(HAP/TCP複合材;骨補
填材セラタイト)と人工股関節用骨頭(ジルコニア;セラヘッドーZ、ジ
ルコニアヘッド)の特徴や物理的、化学的性質、製品形状について述べる0
9.1
9.1-1
人工骨
緒言
ⅩVC-56製骨補填材の臨床応用の結果をもとに厚生省へ製造承認の申
請を行い、厚生省の薬事承認を平成元年に得た。(承認番号:01B第1
573号)C
a3(PO4)2との複合材(HAP/
al。(PO。)6(OH)2とC
TCP複合材)で商品名を骨補填材セラタイトR(CERATITE)で発
売することになった。さらに製品の滅菌済包装品の申請を厚生省へ行い、
平成3年に滅菌済製造承認を得た。(承認番号:03B第810号)
製造承認を得た製品の特徴や物理的、化学的性質、製品形状などについて
述べる。
9.1-2
セラタイトの特徴
1)優れた生体適合性と骨形成能
セラタイトを骨欠損部に補填すると、補填部位周辺の造骨作用を促進し
て早期より新生骨の形成が見られ、新生した骨組織と直接結合して骨欠損
部を修復し、更に成分中のリン酸三カルシウムが徐々に骨に置換される0
2)多彩な製品形態
-136-
骨欠損部位の形態に応じた各種の構造と形状が対応でき、なかでも皮質
骨より高い曲げ強度を有する級密体は、大きなSpacer(スペーサー)も製
作できるので、荷重部位など広く適用できる。
3)広範な症例適用
臨床試験において広範な症例に種々のスぺ-サーやフィラーなどを骨欠
損部に適用して、その有用性が確認されている。骨欠損部にセラタイトを
補填することにより、自家骨採取の必要がなくなるか、または僅かな採取
ですみ、患者の負担が緩和される。また自家骨採取部位へも補填できる。
図9-1に人工骨・人工関節の適応例を示す。
4)Ⅹ線造影性
生体組織内でⅩ線造影性があり、補填の状況の確認が容易でる。
5)優れた保存安定性
化学的に安定しているので、保管、貯蔵が容易で滅菌済包装されている。
9.1-3
セラタイトの物理的、化学的性質1)
化学式
式
alO(PO4)6(OH)2及びC
量
一般名
性
:C
a3(PO。)2の複合材
1004.7
及び
310.2
P)
:水酸ア八0タイト(HAP)及びリン酸三カルシウム(TC
状
多孔体
級密体
白色又は淡青色多結晶
焼成温度:
1100∼13
曲げ強度:10∼60MP
0
17
a
気孔率
3
気孔径
1∼15〃m
0℃
0∼50%
-137-
0M
P
a
9.1-4
セラタイトの優れた生体適合性と骨形成能
セラタイトを骨欠損部に補填すると、補填部位周辺の造骨作用を促進し
て早期より新生骨の形成が見られ、新生した骨組織と直接結合して骨欠損
部を修復し、更に成分中のリン酸三カルシウムが徐々に骨に置換される。
性状、形状の違いによる実際に埋入した例を以下に示す。
1)家兎埋入試験
・埋人後8週(多孔体)2)
8週目以後、セラタイト多孔体は骨組織に被膜され直接結合が認めら
れた。
・埋人後8週(顆粒)3)
4週目以後、セラタイトの顆粒を取り囲むように新生骨が形成されて
いる。
・埋人後4週(ネジ)4)
セラタイトの表面の大部分に新生骨が形成され、セラタイトと骨とは
直接結合している。
2)猿埋入試験
・埋人後6ケ月(円柱)5)
セラタイトは埋入6ケ月においてその一部が溶解し、セラタイトの表
面は鋸刃状で新生骨が認められる。
水酸アパタイトの表面は滑らかでセラタイトと異なる。い
・埋人後6ケ月(顆粒)6)
セラタイトの粒子の中の一部に、骨による置き換えが見られる。
9.1-5
セラタイトの生物学的安全性
急性毒性試験(マウス)7)、発熱性物質試験(家兎)8)、移植試験(家兎)
9)、溶血性試験(in
vitro)1())、細胞毒性試験(in
-138-
vitro)1I)、変異原
性試験(in
vitro)12)などにおいて異常所見は認められていない。
更にセラタイトとともにL929細胞を144時間静置培養したが、細胞
への為害性は認められなかった11)。
9.1-6
商品適用
開発した人工骨"セラタイト"は特定保険医療材料として保険適用がな
されており、以下のような適用範囲に対し、各種の形態の水酸アパタイト
セラミック骨補填材料として用いられている。(図9-2、図9-3)
名称
顆
適用範囲
粒
骨髄炎、骨、関節関節症、慢性関節疾患、代謝性骨疾患
もしくは外傷性骨疾患、骨腫瘍の病巣掻爬後の補填又は
これらの疾患の治療のために自家骨移植を行った結果そ
の欠損部位の補填を目的として使用した場合又は頭蓋欠
多
孔
体
損部若しくは骨窓部の充填又は鼓室形成術に使用した場
合に適用できる。
腸骨スペーサ
腸骨陵を移植骨として採取した後の欠損部位の補填を目
的として用いた場合に適用できる。
人工椎体材料
原発性脊椎悪性腫瘍又は悪性腫瘍の脊椎転移後の際の脊
腰椎スペーサ
椎固定又は脊椎症、椎間板ヘルニア若しくは脊椎分離・
頚椎スペーサ
すべり症に対する脊椎固定を行う場合に適用できる。
トルコ鞍
下垂体又は視床下部の腫瘍摘除の結果としてトルコ鞍の欠損
プレート
補填を行う場合に適用できる。
眼商底
眼裔床骨折整復を行う場合に適用できる。
スペーサ
-139-
下顎骨補填材
下顎骨腫瘍又は、下顎骨外傷の治療として欠損補填を行
う場合に適用できる。
9.1-7
結語
開発したHAP/TC
P複合体は各種安全性試験(発熱性物質試験、急性
毒性試験、溶血性試験、移植試験、組織培養試験)において全く異常が認
められないことが確認できた。また、この材料が骨組織に対する優れた皆
伝導能を持つことは、動物実験により明らかにされた。この複合体は医療
業界でも類似商品はなく、骨補填材(商品名:セラタイトR)として発売さ
れており、医療分野で数多く使用されている。(年間約8
-140-
00例程度)
Fig.9-1ApplicaLions
of
arti[icial
ー141-
bone
and
hip
JOint
顆粒
多孔体
腰骨スへ○一サ
(緻密体)
⊥J・二
Jゝ二さ享
享J∠
てゝ
きl
亘
こ1・∴、_・ニ、・∫、′ノ
ゝ-ヽこ‥
ヽヽヽ
腰椎スへ○-サ
頚椎スへ0-サ
(緻密体)
(多孔体)
(緻密体/多孔体)
後頭蓋裔フ■レート
外耳道後壁補綴材
眼裔底スへ○-サ
(緻密体/多孔体)
(多孔体)
(多孔体)
八'-ホールボタン
、
l
しd!
Cf
Fig・9L2
Products
of
artificial
ー142-
bone「CERATITE尺」
円筒形ダイヤモンド′く-で多孔体のコーナーの面取りを、又ディスク形ダイヤモンド
パーで多孔体の切断を行っています。
Fig.9-3
A
of
different
machinabilitY
of
spacers(ordermade)and
in
porus
医者より発注された受注形状晶の一例
-143-
body
examples
引用文献(人工骨関連)
[1]K.Kondo,M.Okuyama,H.Ogawa,Y.Shibata
and
Y.Abe:J.Am.
Ceram.Soc.,Vol.67,C222-223,(1984)
[2]高戸
毅.他:日本形成外科学会会誌,13(7),413-421,(1993)
[3]高戸
毅,波利井清紀,小室裕造,米原啓之:日本形成外科学会会誌,
12(10),660-667,(1992)
[4]宗宮正典:承認申請添付資料
[5]松前信作:岐阜歯科学会雑誌,19(2),446-459,(1992)
[6]翁
熊佐,林
浩之,石川
成忠,峯岸大造,的場弘一,河村道夫,木下淳博,富田
烈:第32回日本歯周病学会総会,A-10,(1989)
[7]高橋喜八郎:北里研究所(社)食品衛生センター試験報告書(昭61年7月22
日)
[8]高橋喜八郎:北里研究所(社)食品衛生センター試験報告書(昭61年7月21
日)
[9]高橋喜八郎:北里研究所(社)食品衛生センター試験報告書(昭61年7月14
日)
[10]高橋喜八郎:北里研究所(社)食品衛生センター試験報告書(昭61年7月2
2日)
[11]M.ISOGAI,N.KANEMATU,K.UNO,K.NAGAHARA
OralImplantology
and
and
Biomaterials,2l-26、・(1989)
[12]高鳥浩介:(財)食品薬品安全センター秦野研究所試験報告書(昭63年10
月18日)
-144-
K.KONDO:
9.2
人工股関節骨頭
緒言
9.2-1
ジルコニア人工股関節用骨頭の臨床応用の結果をもとに厚生省へ製造承
認の申請を行い、厚生省の薬事承認を平成5年に得た。(承認番号:5B
第852弓)商品名を"セラヘッドーZ"や"ジルコニアヘッド"で発売す
ることになった。
製造承認を得た製品の特徴や諸特性、製品形状などについて述べる。
9.2-2
ジルコニアセラヘッドの特徴
人工股関節の長期的な臨床評価が進むにつれて、近年、関節面から発生
する摩耗粉が人工股関節の「ゆるみ」の原因の一つとなることが指摘され
ている。従来、金属製の骨頭が使用されていたが、関節面に用いられる材
料ポリエチレンとの組み合わせにおいて耐摩耗性が劣るため、耐摩耗性を
発揮する材料として、これまでアルミナセラミックスが臨床応用され、そ
の優れた耐摩耗特性によって再置換率を減少させ得ることがわかっている。
しかし、アルミナセラミックスの欠点である「脆さ」を指摘され、これ
まで拡大使用されなかった現状がある。この「脆さ」を克服する新しいセ
ラミックス材料として、高強度・高靭性ジルコニアが注目され開発が進め
られてきた。著者らは、この耐摩耗性に優れ、変性・腐食が起こりにくく
かつ高強度・高槻性を示すジルコニアを人工股関節の骨頭材料として実現
した。
①
ジルコニアの材料特性
密
度
(g/cm3)
5.9以上
平均粒子径
(〟m)
平均0.3
三点曲げ強度
(MPa)
ヤング率
(Gpa)
1.0×103以上
210
-145-
②
製品特性
FDAがイドライン
面粗度R
真円度
<0.2
a(〟m)
(〟m)
静荷重破壊強度(EN)
<3
実測値
0.01∼0.02
0.1∼0.3
平均46.06以上
適合
最低値19.6以上
③
諸特性
1)優れた耐久性一高靭性・高強度
静荷重破壊試験、衝撃破壊試験、疲労強度試験1)のいずれの機械強度
試験結果もジルコニアはアルミナを上回る強度を示す。
2)良好な耐摩耗特性
ジルコニアあるいはアルミナセラミック骨頭がなぜ耐摩耗特性を示す
かは、その結晶構造にある。金属は表面に傷がついた場合、鋭利なバリ
が傷の周囲に発生してこのバリがポリエチレンの摩耗を促進する原因に
なる。セラミックスの場合、表層が細かい結晶構造であり、もし傷が付
いた場合においても、結晶単位で脱落し、凹の状態となり、凸の部分を
生じない。このことがセラミック骨頭が耐摩耗性能を発揮する大きな理
由である。また、ジルコニアの場合、アルミナより表層の結晶がより滑
らか状態であるためさらに摩耗特性に優れている。2)
3)生物学的安全性
急性毒性試験や発熱性物質試験、溶出物試験などの他、細菌を用いる
復帰変異試験、培養細胞による染色体異常試験を行った生物学的・化学
的試験のすべてにおいて安全性が確認された。
9.2-3
製品形状3)、
優れた破壊強度をもつジルコニアヘッドは従来のアルミナでは不可能
であったサイズを可能にした。22、26,28mm径の豊富なサイズ
のバリエーションを可能にした。(図9-4)
-146-
_ノ
、、一.ノ
ノ〆
Fig.9-4
Products
of
a
different
ZrO2
of
femoral
heads
引用文献(人工骨頭関連)
[1]立石哲也、近藤和夫、三浦一別:関節シュミレータによるシ'ルコニア人工股関節の
性能評価
THE
33rd
JAPAN
[2]大橋俊郎、井上四郎、梶川
CONGRESS
ON
RESEACH
MATERIALS
究、茨木和博、多田道彦、小口光昭、荒井
敦、亀谷明秀、村松黍徳、近藤和夫:UTZ-30シ■ルコニアの組織親和性と力
Ceranic
学的検索、Orthopaedic
P173-179
[3]戸次勝利、杉本
lmplants
(1987)
浮、三浦一則、近藤和夫:人工骨頭の製造方法:
特許登録番号
第2579218号(1996)
-147-
Vol.7
第10章
総括
高齢化社会の状況下で骨粗髭症や骨腫瘍等の骨の病気や交通事故などに
よって、身体機能の一部を失ったり、局部的な欠陥や欠損を生じた場合に、
その部分に補填し、修復する目的で使用されるのが生体材料であり、代表
的なものには、人工骨、人工股関節、人工歯根などがある。現在各種の料
が開発商品化されているが、まだ、改善すべき課題が残されているこ
本研究では、セラミックスの通常の製法でかつ成形の形状付与が容易な
手法で、骨皮質と同等以上の強度を持つ高強度リン酸カルシウム系セラミ
ックス焼結体を得ること、及び、小型で高強度、高信頼性の人工股関節骨
頭の材料開発と医療分野への応用(人工骨、人工骨頭)への可能性を検証
し、インプラント材料として実用化を図った。
第1章では本研究の背景及びリン酸カルシウム系セラミックスに関する
従来の研究の概説及び本研究の目的を示した。
第2章ではバイオセラミックスの歴史及びセラミックスの種類を述べ、
生体親和性に優れたセラミックスの開発に必要な項目を明らかにした。
第3章では第1章でのべたリン酸カルシウム系材料の合成方法およびそ
れらの特性について述べた。
第4章ではリン酸カルシウム系材料の焼結方法について従来の研究と本
研究の焼結方法の違いを明らかにし、本研究の焼結手法で高強度な焼結体
が得られることを示した。
第5章では第4章で述べた本研究の焼結方法で得られた焼結体の諸特性
を従来の方法で得られたものと比較し、その特性の違いを明らかにした。
第6章では本研究で得られたリン酸カルシウムセラミックス焼結体が医
療用具として使用されるための前生物学的安全性の評価方法および評価結
果について明らかにし、臨床応用への基礎データを示した。
第7章では本研究で開発したリン酸カルシウムセラミックス焼結体の臨
床応用の内容および評価結果を明らかにし、具体的な実施例を掲げ各々に
ついて考察を加え有効性を実証した。
第8章では高強度リン酸カルシウムセラミックス材料の他に医療用具と
ー148-
して人工股関節骨頭(ジルコニア、アルミナ)の開発及び実用化について
述べた。
第9章では本研究で開発した生体親和性に優れたリン酸カルシウムセラ
ミックスの人工骨及びジルコニア、アルミナセラミックスの人工股関節骨
頭の実用化について述べた。
これらの研究により水酸アパタイトに独自のリン酸カルシウム系フリッ
トを添加する焼結技術法を確立し、水酸アパタイトとリン酸三カルシウム
のバイオアクティブ複合材の実用化に成功した。その技術レベルは高く、
医療業界でも類似商品はなく、また補填材として、その評価は高い。本補
填材は平成2年に上市されて以来今日まで使用されている。
また、従来主として金属製の骨頭が用いられていたが、生体親和性のあ
る高強度の部分安定化ジルコニアセラミックス製人工股関節用骨頭を開発
し、国内で初めて厚生省の製造承認を取得し製品化に成功した。このジル
コニア製人工骨頭は、原料の粒径、安定化剤の種類や配合比に技術の特色
を有し、生体内で安定で、高靭性・耐摩耗性に優れ、高強度であるため日
本人に合った小径の人工骨頭にも適用可能となった。また、高純度・高強
度のアルミナセラミックス製骨頭の製品化にも成功した。平成6年に上市
されて以来、股関節疾患の患者治療に多大な貞献をしている。本股関節用
骨頭は上市以来、今日まで使用されており、今後益々必要とする患者に多
大の福音となろう。
<生産・販売実績>
・1998年(1998年4月∼1999年3月)の生産実績は
骨頭
人工骨
450
0個/年
約80
0個/年
以上、バイオセラミックスの高い生体活性と安全性・有用性を確立し、
製品化し、医療分野で高い評価を得ている。
今後の課題として生体用材料は有効で且つ長期にわたる安全性の確保が
不可欠であり、生体内で長期間安定に使用できる材料開発が期待される。
今後は生体に優しい高強度、高靭性、可塑性のある材料等、更なる新材料
開発が期待される。
ー149-
本論文に引用した特許・論文
1
特許
1)近藤和夫、高見昭雄:リン酸カルシウム焼結体の製造方法:
日本公開特許公報、特開昭55-42240(1980)特公昭60-25383
特許登録番号
第1299970号(1986)
(第1,4章)
2)高見昭雄、近藤和夫:高強度リン酸カルシウム焼結体の製造方法:
日本公開特許公報、特開昭55-56062(1980)特公昭60-44267
特許登録番号
第1315179号(1986)
(第1,4章)
3)高見昭雄、近藤和夫:高強度リン酸カルシウム焼結体:
日本公開特許公報、特開昭55-80771(1980)特公昭60-44268
特許登録番号
第1315182号(1986)
(第1,4章)
4)高見昭雄、近藤和夫:高強度リン酸カルシウム焼結体:
日本公開特許公報、特開昭55-140756(1980)特公昭60-50744
特許登録番号
第1324242号(1986)
(第1,4章)
5)近藤和夫、高見昭雄:乳白色リン酸カルシウム焼結体の製造方法:
日本公開特許公報、特開昭5ト22168(1982)特公昭61-12876
特許登録番号
第1346586号(1986)
(第6章)
6)近藤和夫、西尾信二:人工関節:
日本公開特許公報、特開昭59-40851(1984)特公昭62-22631
特許登録番号
第1412706号(1987)
(第8章)
7)西尾信二、近藤和夫:薬液含浸繊維質セラミックス:
日本公開特許公報、特開昭59-135053(1984)特公平03-64482
特許登録番号
第1706776弓(1992)
(第9章)
8)福浦雄飛、近藤和夫:人工関節:
日本公開特許公報、特開昭59-155250(1984)特公昭63-11908
特許登録番号
第1463555(1988)
(第8章)
9)近藤和夫、西尾信二:人工関節:
日本公開特許公報、特開昭60-116361(1985)特公平01-36383
特許登録番号
第1551726号(1990)
-150-
(第8章)
10)近藤和夫、小川英俊、奥山雅彦:高強度リン酸カルシウム焼結体の
製造方法:日本公開特許公報、特開昭60-161368(1985)
特公昭64-10464
特許登録番号
第1522351号(1989)(第4章)
11)近藤和夫、小川英俊:高強度リン酸カルシウム焼結体の製造法:
日本公開特許公報、特開昭60-171265(1985)特公平0卜38070
特許登録番号
第1560799号(1990)
(第4章)
12)近藤和夫、奥山雅彦、渡辺正一■、飯尾
聡:インプラント用セラミ
ック体の製造法:日本公開特許公報、特開昭60-203262(1985)
特公平01-36381
特許登録番号
第1551729弓(1990)(第4,8章)
聡:インプラント用セラミ
13)近藤和夫、奥山雅彦、渡辺正一、飯尾
ック体の製造法:日本公開特許公報、特開昭60-203263(1985)
特公平0卜36382
特許登録番号
第1551730号(1990)(第4,8章)
14)近藤和夫、奥山雅彦:歯冠用結晶化ガラス:
日本公開特許公報、特開昭60-210546(1985)特公平02-51854
特許登録番号
第1623430号(1991)
(第4章)
15)近藤和夫、服部昌晃:アパタイト複合インプラント:
日本公開特許公報、特開昭63-143072(1988)特公平03-58744
特許登録番号
第1688270号(1992)
(第4,8章)
16)近藤和夫、服部昌晃:アパタイト複合インプラント:
日本公開特許公報、特開昭63-143073(1988)特公平03-60274
特許登録番号
第1691999号(1992)
(第4,8章)
17)近藤和夫、西尾信二:生体インプラント:
日本公開特許公報、特開昭63-153071(1988)特公平06-22568
特許登録番号
第1893484号(1994)
(第4章)
18)近藤和夫、服部昌晃、西尾信二:セラミック被覆インプラント:
日本公開特許公報、特開昭63-160665(1988)特公平06-22576
特許登録番号
第1892987号(1994)
(第4,8章)
19)近藤和夫、西尾信二:セラミック被覆インプラント:
日本公開特許公報、特開昭63-160666(1988)特公平06-22577
特許登録番号
第1892988号(1994)
-151-
(第4,8章)
2
0)西尾信二、近藤和夫:弾性を有する生体用部材:
日本公開特許公報、特開昭63-270049(1988)特公平03-52742
特許登録番号
第1685006号(1992)
(第4章)
21)服部昌晃、近藤和夫:生体用ジルコニアインプラント材:
日本公開特許公報、特開平01-40058(1989)特公平06-22572
特許登録番号
第2121472号(1996)
(第8章)
22)柴田良呂、服部昌晃、近藤和夫:義歯装着用歯科インプラント:
日本公開特許公報、特開平0卜290611(1989)特公平06-6139
特許登録番号
第1880690号(1994)
(第4章)
23)川村資三、烏山素弘、伊藤ゆかり、松尾康史、近藤和夫、服部昌晃
:リン酸カルシウム被覆セラミックス及びその製造法:
日本公開特許公報、特開平02-153886(1990)
特許登録番号
第2623315号(1997)
(第4,8章)
24)久保恵子、柴田良呂、近藤和夫、服部昌晃:持続型薬物含有セラミ
ックス体及びその使用方法:日本公開特許公報、特開平02-198560
(1990)、特許登録番号
25)戸次勝利、杉本
第2631890号(1997)
(第9章)
淳、三浦一則、近藤和夫:人工骨頭の製造方法:
日本公開特許公報、特開平03-111043(1991)
特許登録番号
第2579218弓(1996)
(第8,9章)
26)都築正詞、宮田英次、服部昌晃、三浦一則、近藤和夫:リン酸カル
シウム被覆セラミックス体:日本公開特許公報、特開平03-137079
(1991)特公平0ト74109
特許登録番号
第2052597号
(第4,8章)
27)奥山雅彦、服部昌晃、近藤和夫:生体インプラント材料:日本公開
特許公報、特開平5-161707(1993)特許登録番号
第2934090号
(第4,9章)
-152-
2
論文
1)K.Kondo、M.Okuyama、H.Ogawa、Y.Shibata
Preparation
Journal
High-Strength
of
the
of
Apatite
Ceramic
American
Society、Vol.67、No.11
(第4,7,9章)
2)K.Shinjo、T.Makiyama、I.Sugiura
al
Application
K.Kondo:"clinic-
and
Hydroxyapatite
the
of
lst
of
ramics(Proceedings
The
Ceramics"
(1984)
November、C-222-223
Y.Abe:"
and
Implants"
International
Bioce-
Bioceramic
Sy-
(1989)
mposium)p124-129
(第7章)
3)T.Ohashi、S.Inoue,K.Kajikawa、K.Ibaragi、T.Tada、M.OT
guchi、T.Arai
Of
Acetabular
Head"
mic
al
K.Kondo:"The
and
Component
Clinical
Accompanied
Bioceramic
lst
of
OF
VIVO
Cera-
Internation-
Symposium)p278-283(1989)
(第8章)
4)M.ISOGAI、N.KANEMATSU、K.UNO、K.NAGAHARA
"IN
Rate
Alumina
with
Bioceramics(Proceedings
Wear
AND
IN
VITRO
STUDIES
FOR
BIOCOMPATIBILITY
XVC-56(HYDROXYAPATITE-TRICALCIUMPHOSPHATE
OralImplantology
COMPOUND)"
(1989)
Biomaterials、P21-26
and
K.KONDO:
and
(第5,6,9章)
5)T.Tateishi、K.Hyodo、K.Kondo
OF
MECHANICAL
Bioceramics
PROPERTIES
Volume
OF
3
ZIRCONIA
APPLICATION
OF
NE
TUMOR"Bioceramics
CONIA
HIP
33rd
JAPAN
and
THE
HYDROXYAPATITE
Volume
7)T.TATEISHI、K.KONDO
3
CONGRESS
BY
THE
USING
ON
JOINT"
(第8章)
K.Kondo:"cLINICIMPLANTS
FOR
MATERIALS
(1990)
JOINT
BO-
(1990)(第7章)
p287-293
K.MIURA:"EVALUATION
and
JOINT
HIP
(1990)
pl17-126
6)0.Shinjo、T.Makiyama、Ⅰ.Sugiura
AL
K.Miura:"EVALUATION
and
OF
SIMULATOR"
RESEARCH
ZIRThe
p141-146
(第8章)
ー153-
8)大橋俊郎、井上四郎、小口光昭、太田万郷、大東芙生、亀谷明秀、
近藤和夫:"高純度アルミナセラミックス(肝A-40)の力学的検索と家兎にお
第25巻第10号
ける組織親和性について"基礎と臨床
p303-314
(1991)
(第8章)
9)M.Tsuzuki、K.Kondo、Y.Matsuo、T.Suzuki
"preparation
Composite
of
Coating
Apatite
Volume
10)K.Shinjo、K.Bekki
"Bioceramics
Its
of
Biological
Characterization"
(第4,8章)
K.Kondo:"Development
Volume
Type
Ba11Bearing
a
5
S.Kawamura
Phosphate
p17卜174(1992)
and
Testing
ulator
Hydroxyapatite-Tricalcium
and
l
and
Sim-
and
Hip
Prosthesis
(第8章)
p38ト388(1992)
大、近藤和夫、
11)西山智弘、中島龍夫、吉村陽子、中西雄二、山田
奥山雅彦:"HAP・TCP複合体(セラタイド)の皆伝導能に関する研究"
形成外科
37(11)p1273-1280(1994)
敬、山田
12)西山智弘、中島龍夫、中西雄二、米田
"EAP・TCP複合体の骨伝導能について"
P60ト613
(第7章)
形成外科
大、近藤和夫:
39(6)
(1996)
(第7章)
著書・報文・解説等
著書(分担執筆)
1)"ハ○ィオセラミックスの開発と臨床"p91-98クインテッセンス出版
(1987)
2)"我が国の知的集約型産業の今後の動向調査研究"(財)日本産業
技術振興協会
(1985)
3)最新技術"機能性セラミックス"p270-274(社)日本ファインセラミックス協会
(1989)
-154-
報文
1)新城
清、坪井声示、牧山友三郎、近藤和夫:"焼成温度の異なる
3種類のハイドロキシアハ0タイトシールコニアの組織親和性に対する実験的研究"
Orthopaedic
Ceramic
Implants
2)大橋俊郎、井上四郎、梶川
荒井
Vol.7
p155-163
(1987)
究、茨木和博、多田道彦、小口光昭、
敦、亀谷明秀、村松泰徳、近藤和夫:"uTZ-30シールコニアの組織
親和性と力学的検索"orthopaedic
Ceramic
Implants
Vol.7
(1987)
P173-179
解説等
1)柴田良昌、近藤和夫:"リン酸カルシウムセラミックス"FC
No.10、Oct.JFCA
(1987)
2)近藤和夫:"当社の)l♪ィオセラミックスの研究動向"NEW
P68-70
(1993)
3)近藤和夫:"生体用セラミックスの現状"金属「まてりあ」生体材料の現
状と展望、第37巻、第10号
p841」849
(1998)
4)近藤和夫:"高強度リン酸カルシウム焼結体の開発と実用化"
「PHOSPHORUS
Report、Vol.6、
LETTERJNo.36
10月
一155-
(1999)
CERAMICS
No.6
謝辞
鈴木
本論文を纏めるに当たり、名古屋工業大学セラミック研究施設
傑教授に終始懇切丁寧なご指導を賜り又、材料工学科
材料工学科
大里
葬教授、応用化学科
引地康夫教授、
平岡節郎教授から貴重なご意見、
ご教示をいただきました。ここに厚く御礼申し上げます。
また、本論文の作成を進めるに当たり、終始ご親切な指導と激励を賜り
阿部良弘先生に心から御礼申し上げます。
ました名古屋工業大学名誉教授
又、動物試験、臨床試験などで大変お世話になりました愛知医科大学整形
外科名誉教授
丹羽滋郎先生、国立名古屋病院形成外科部長
生、朝日大学歯学部助教授
病院整形外科教授
新城
清先
磯貝昌彦先生、朝日大学医学部付属村上記念
大橋俊郎先生、東京医科歯科大学歯学部教授
石川
中島龍夫先生、更に人工骨頭
烈先生、慶磨義塾大学医学部形成外科教授
等の材料の評価試験で大変お世話になりました通産省工業技術院産業技術
立石哲也先生他本研究の遂行に対しお世
融合領域研究所統括融合研究官
話になりました多くの先生方に感謝申し上げます。
本論文の発表のお許しをいただきました日本特殊陶業株式会社代表取締
役会長
金川重信氏、取締役副社長
岡村鐘雄氏、代表取締役社長
羽賀
征治氏に御礼申し上げます。
本論文は日本特殊陶業株式会社総合研究所において実施したものであり、
生体親和性の良いバイオセラミックスの開発と商品化に至る過程をまとめ
たものです。本研究にあたり、多くの上司、先輩、同僚のご指導、応援、
ご協力をいただきました。特に、同社元専務
柴田良昌氏、同社常勤監査役
小島英男氏、同社取締役総合研究所長
高見昭雄氏、同社総合研究所研究部
藤倫朗氏、同社取締役知的財産部長
長
福浦雄飛氏、同社元専務
松尾康史氏、同社奥山雅彦氏、服部昌晃氏、西尾道一氏、倉地辰則氏
はじめ多くの方々にお世話になったお陰です。ここに、研究の遂行ならび
に本研究の発表等の機会が与えられたことに心から感謝を申し上げる次第
です。
-156-
加