「国際的な環境ビジネスの潮流と日本の課題」『SIBA』

松岡俊二(2008),「国際的な環境ビジネスの潮流と日本の課題」,『SIBA』
(静岡県国際経済振興会),
Vol.68, pp.3-7
国際的な環境ビジネスの潮流と日本の課題
松岡
俊二
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科・教授
1.
日本の環境ビジネスの推移
日 本 に お い て「 環 境 ビ ジ ネ ス 」と い っ た 用 語 が 一 般 化 し た の は 1990 年 代 で あ り 、と
り わ け 1990 年 代 の 後 半 に は 環 境 ビ ジ ネ ス 市 場 そ の も の が 急 速 に 拡 大 し た 。環 境 省 の 環
境 ビ ジ ネ ス に 関 す る 調 査 で は 、 1997 年 の 市 場 規 模 が 24.7 兆 円 、 雇 用 規 模 が 69.5 万 人
で あ っ た の に 対 し て 、 2000 年 に は 市 場 規 模 が 29.9 兆 円 、 雇 用 規 模 が 76.9 万 人 へ と 拡
大 し て い る ( 表 1 参 照 )。 ま た 、 環 境 省 の 定 義 す る 環 境 ビ ジ ネ ス の 範 囲 よ り 広 め の 考
え 方 に 立 つ 経 済 産 業 省 の 環 境 ビ ジ ネ ス 調 査 で み る と 、 2000 年 の 環 境 ビ ジ ネ ス 市 場 は
48.1 兆 円 、 雇 用 規 模 は 136 万 人 と 推 計 さ れ て い る 。
さ ら に 日 本 の 環 境 ビ ジ ネ ス の 将 来 予 測 と し て は 、環 境 省 調 査 で は 2010 年 の 市 場 規 模
を 47.2 兆 円 、雇 用 規 模 を 111.9 万 人 、2020 年 の 市 場 規 模 を 58.4 兆 円 、雇 用 規 模 を 123.6
万 人 と 予 測 し て お り 、よ り 広 い 定 義 に 基 づ く 経 済 産 業 省 調 査 で は 2010 年 の 市 場 規 模 を
67.3 兆 円 、 雇 用 規 模 を 170 万 人 と 予 測 し て い る 。
表1 環境ビジネスの市場規模及び雇用規模の推計結果
1997 年
2000 年
2010 年
2020 年
資料
市場規
247,426
-
400,943
-
1999 年 度 ・ 環 境 庁 調 査
模
-
299,444
472,266
583,762
2002 年 度 ・ 環 境 省 調 査
481,210
673,460
-
2005 年 度 ・ 経 産 省 調 査
(億円)
雇用規
695,145
-
867,007
-
1999 年 度 ・ 環 境 庁 調 査
模
-
768,595
1,119,343
1,236,439
2002 年 度 ・ 環 境 省 調 査
1,359,380
1,703,700
-
2005 年 度 ・ 経 産 省 調 査
(人)
2.
環境ビジネスとは?
当然ながら、環境省と経済産業省の推計値の相違は、環境ビジネスの定義や範囲が
異 な っ て い る た め で あ る 。 環 境 省 調 査 は OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 、 パ リ に 本 部 を お
く 先 進 国 の 政 策 調 整 機 関 ) に よ る 環 境 ビ ジ ネ ス の 定 義 を 使 用 し て い る 。 OECD は 環 境
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ビ ジ ネ ス を「『 水・大 気・土 壌 等 の 環 境 に 影 響 を 与 え る 悪 影 響 』と『 廃 棄 物・騒 音・エ
コシステムに関連する問題』を計測し、予防し、削減し、最小化し、改善する製品や
サ ー ビ ス を 提 供 す る 活 動 」 と 定 義 し 、( A)「 環 境 汚 染 防 止 」、( B)「 環 境 負 荷 低 減 技 術
お よ び 製 品 」、( C)「 資 源 有 効 利 用 」 と い う 3 つ の 大 項 目 か ら 構 成 さ れ て い る ( OECD
1999)。
( C) の 「 資 源 有 効 利 用 」に は 、「 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 」 や「 省 エ ネ ル ギ ー 」 だ け で
はなく、
「 持 続 可 能 な 農 業 ・漁 業 」、
「 持 続 可 能 な 林 業 」、
「 自 然 災 害 防 止 」、
「 エ コ ・ツ ー リ
ズム」といったグリーン系(自然環境)と密接に関連した経済活動も項目化されてい
るものの、統計的数値把握が難しいため、実際の環境省調査ではこれらの項目は含ま
れていない。地域社会の持続可能性や地球温暖化問題を考えると、環境ビジネスをブ
ラウン系(公害・ごみ・エネルギー)だけで考えるのではなく、持続可能な農林水産
業やエコ・ツーリズムの創造といったグリーン系環境ビジネスを含めて考えることが
重要である。こうした点では、先の環境省の環境ビジネスの推計値は限定的な推計で
あり、実際にはもっと大きな値を想定する必要がある。
この点は、環境省調査よりかなり大きな推計値を示している経済産業省調査でも同
じ で あ る 。経 済 産 業 省 調 査 は「 廃 棄 物 処 理・リ サ イ ク ル 」ビ ジ ネ ス を か な り 広 く 考 え 、
「環境修復・環境創造」ビジネスも環境ビジネスに含めているが、やはりブラウン系
環境ビジネスが主であり、グリーン系環境ビジネスは十分に把握されていない。
い ず れ に し ろ 、気 候 変 動 な ど の 地 球 環 境 問 題 の 深 刻 化 を ふ ま え 、
「 環 境 の 世 紀 」と し
て の 21 世 紀 を 考 え た 時 、お よ そ 全 て の ビ ジ ネ ス が 環 境 ビ ジ ネ ス 化 す る こ と が 必 要 で あ
るが、本稿では人間活動に伴う環境への負の影響(負の環境価値)を軽減・除去する
従来型の環境ビジネス、および環境負荷の少ない製品開発や環境創造などにより積極
的に正の環境価値を作り出す新しい環境ビジネスをあわせて環境ビジネスと定義して
議論を進める。
3.
経済成長と環境問題・環境ビジネス
環境ビジネスの生成や発展は、経済成長にともなう環境問題の深刻度や社会の関心
とこうした環境問題に対処する制度・政策・技術に依存している。ここで経済成長と
環境問題の関係を整理しておくと、以下のようになる。
日本を含むアジア諸国の急速な経済成長は、しばしば「圧縮型工業化」と特徴づけ
られ、イギリスやドイツなどの西欧諸国が数百年から百単位でたどった工業化プロセ
ス を 、わ ず か 数 十 年 に 圧 縮 し て 突 き 進 ん だ 結 果 、硫 黄 酸 化 物( SOx)や 窒 素 酸 化 物( NOx)
などによる大気汚染やカドミウムなどの重金属排水などによる水質汚濁といった「工
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業型環境問題」が深刻化することとなった。こうした「工業型環境問題」は、日本で
は 1960 年 代 か ら 1970 年 代 、 韓 国 ・ 台 湾 で は 1970 年 代 か ら 1980 年 代 に 、 東 南 ア ジ ア
諸 国 や 中 国 で は 1980 年 代 以 降 に 深 刻 な 社 会 問 題 と な っ た 。汚 染 源 が 工 場 な ど の 固 定 発
生源である場合は、工場における公害対策の強化によって汚染削減が可能であり、日
本や韓国などは工業型環境問題を克服してきた。しかし、東南アジア諸国や中国・イ
ンドではいまだに十分な環境対策がとられていない。
「圧縮型工業化」のプロセスは、空間形態としては「爆発的都市化」として現れ、
生活様式も大量消費型に変化し、必然的に廃棄物(ごみ)問題などの「都市型環境問
題 」も 重 大 な 問 題 と な っ て い る 。ご み 問 題 は し ば し ば「 消 費 型 環 境 問 題 」と も い わ れ 、
いまや先進国だけではなく、途上国も含む全ての国において大きな社会問題となって
い る 。ご み 問 題 は 人 々 の 消 費 行 動 に 関 連 し て お り 、
「 工 業 型 環 境 問 題 」に 比 べ る と 問 題
の発生源(ごみ排出源)が無数にあり、排出量抑制が難しい。どうしても排出された
ごみの収集・運搬・処理といった後工程に対する負荷が大きくなり、社会的環境管理
能力の低い途上国ではごみの河川などへの不法投棄や最終処分場からの水質汚濁など
の深刻な環境問題を引き起こしやすい。
さらに重要なことは、工業化にともなう大気汚染や水質汚濁などの「工業型環境問
題 」 や 都 市 化 に と も な う ご み 問 題 と い う 「 都 市 型 環 境 問 題 」・「 消 費 型 環 境 問 題 」 と い
った「ブラウン系環境問題」の裏側には、農村や自然環境の荒廃という「グリーン系
環境問題」が存在し、同時に都市スラムや農村の貧困にともなう安全な飲料水の欠如
といった「貧困型環境問題」も存在する点である。また、アジア地域は中国に代表さ
れ る よ う に 資 源 ・ エ ネ ル ギ ー の 不 効 率 な 大 量 消 費 に と も な い 、 CO 2 な ど の 温 暖 化 効 果
ガ ス ( GHGs) の 大 量 排 出 に よ り 、 地 球 環 境 問 題 の 主 要 な 原 因 地 域 と な っ て い る 。
こ の よ う な 「 貧 困 型 環 境 問 題 」、「 工 業 型 環 境 問 題 」、「 都 市 型 環 境 問 題 ( 消 費 型 環 境
問 題 )」、
「 自 然 環 境 問 題 」、
「 地 球 環 境 問 題 」は 、西 欧 先 進 国 で は ほ ぼ 歴 史 的 に 順 々 に 経
験し、克服してきた環境問題であるが(もちろん地球環境問題など先進国だけでは克
服 で き な い 問 題 が あ る が )、 ア ジ ア 地 域 で は こ う し た 環 境 問 題 が ほ ぼ 同 時 に あ ら わ れ 、
問題が相互に複雑に絡み合っている点が大きな特徴である。図 1 に、横軸に経済成長
(一人当り所得)を、縦軸に環境問題の深刻さ(汚染濃度など)をとり、経済成長と
環境問題との関係が環境問題の性格によって異なることを示している。
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図 1
(A)貧困関連型
公衆衛生、水
経済成長と環境問題の類型
(B)工業開発型
SOx、SPM
(C)消費関連型
CO2
経 済 成 長
( 出 所 )松 岡( 2004)、原 図 は Bai 他 (2000)。
環境ビジネスとの関連で重要なのは、環境問題が発生し、人々の健康や自然環境へ
の悪影響が出ているからといってすぐに環境ビジネスが発展するわけではないという
ことを理解することである。環境ビジネスの発展のためには、環境問題への社会的関
心 が 高 ま り 、環 境 保 全 の た め の 環 境 基 準 や 排 出 基 準 な ど の 環 境 政 策( 制 度 )が 作 ら れ 、
国や地方自治体によって環境政策が効果的に実施されることが不可欠である。社会的
意識や制度がつくられることにより、環境ビジネス市場は創造され、環境技術の研究
開発が進むのである。
日 本 の 風 力 発 電 量 の 停 滞 と 比 べ 、ド イ ツ が 圧 倒 的 に 延 び て い る 要 因 を 、ド イ ツ の「 再
生可能エネルギー法」
(電力会社に自然エネルギー発電量を固定価格で買い取ることを
義 務 付 け た 法 律 )と 日 本 の「 新 エ ネ ル ギ ー 利 用 特 別 措 置 法 」
(電力会社に発電の一定量
を自然エネルギーでまかなうことを義務付けた法律)との違いに求めた朝日新聞の最
近の記事「自然エネ
制 度 に 大 差 」( 2008 年 10 月 26 日 ) は 、 環 境 ビ ジ ネ ス 発 展 に お
ける制度設計の重要性を分かりやすく伝えている。
4.
国際的な環境ビジネスの潮流
環境ビジネスの発展のためには、環境政策だけではなく、人々の行動を規定する社
会的意識なども含めた広い意味での社会における制度設計が重要であることを述べた
が 、制 度 設 計 と の 関 係 で 今 後 の 国 際 的 な 環 境 ビ ジ ネ ス の 潮 流 と 日 本 の 課 題 を 考 え る 時 、
次の 3 つの動向が注目される。
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第 1 は、排出量取引制度などの地球温暖化対策における制度設計の行方であり、第
2 は 、 EU( 欧 州 共 同 体 ) に よ る RoHS 指 令 や REACH 規 制 と い っ た 化 学 物 質 管 理 制 度
で あ る 。 第 2 の 制 度 設 計 は EU( 欧 州 共 同 体 ) イ ニ シ ア テ ィ ブ で あ る が 、 第 1 の 温 暖
化 対 策 に か か わ る 制 度 設 計 も EU( 欧 州 共 同 体 ) イ ニ シ ア テ ィ ブ が 非 常 に 強 い 。 第 3
は 、 日 本 に よ る ア ジ ア に お け る 循 環 型 社 会 形 成 の た め の 3R イ ニ シ ア テ ィ ブ で あ る 。
ここでは、誌面の関係上、温暖化対策と環境ビジネスとの関係に焦点を当て、環境ビ
ジネスの発展のためには国(政府)や社会のイニシアティブによる制度設計が決定的
に重要であることを述べる。
国 連 気 候 変 動 枠 組 条 約( 1992 年 )や 京 都 議 定 書( 1997 年 )に か か わ ら ず 、長 ら く 温
暖化対策は環境政策とは言えなかった。環境政策は目標とすべき環境基準を明確にす
る こ と が 必 要 で あ る が 、温 暖 化 対 策 に つ い て は CO 2 濃 度 基 準 を 明 確 に 示 す こ と な く き
た 。し か し 現 在 で は 、2006 年 の ス タ ー ン 報 告 や 2007 年 の IPCC 第 4 次 報 告 に よ り 、2050
年 頃 に CO 2 濃 度 を 450ppm 程 度 で 安 定 さ せ る こ と が 必 要 と の 認 識 が 共 有 さ れ て い る 。
こ う し た 温 暖 化 対 策 に 要 す る 年 間 費 用 は 、ス タ ー ン 報 告 で は 世 界 全 体 の GDP の 1%
と 推 計 し( ス タ ー ン 報 告 は 500ppm か ら 550ppm と い う IPCC よ り ゆ る い 目 標 濃 度 の 設
定 を し て い る )、 IPCC 第 4 次 報 告 で は 世 界 GDP の 3% か ら 5.5% と 推 計 し て い る 。 温
暖 化 対 策 に は CO 2 の 排 出 削 減 を す す め る「 緩 和( mitigation)策 」と 温 暖 化 に と も な う
様 々 な 影 響 へ の「 適 応( adaptation)策 」と い う 2 つ の 対 策 が あ る が 、ス タ ー ン 報 告 や
IPCC 第 4 次 報 告 に お け る 対 策 費 用 の 多 く は 緩 和 策 を 主 と し て お り 、適 応 策 ま で 含 め て
考えるともっと大きな対策費用が必要となる。温暖化対策市場は間違いなく今後の環
境ビジネスの最大の市場となるだけでなく、全ての産業に関わる問題であり、全ての
産業・企業に対してビジネス・チャンスを提供する。
問 題 は 、2050 年 に お け る CO 2 濃 度 450ppm へ ど の よ う に 効 率 的 か つ 効 果 的 に 到 達 す
るのかであり、そのための制度設計が重要となる。現在の日本の温暖化対策は、経団
連・産業界による自主行動計画か排出量取引制度導入かといった、二者択一的な極め
て 偏 っ た 議 論 を 展 開 す る こ と に 終 始 し て い る が 、EU( 欧 州 )で は 使 え る も の は 全 て 使
うという立場である。したがって、炭素税も使うし、排出量取引制度も使うし、もち
ろ ん 規 制 的 ア プ ロ ー チ も 自 主 的 ア プ ロ ー チ も 使 っ て い る の で あ る 。 言 わ ば EU は 、 こ
うした様々な環境政策や制度に関する社会実験を行っている。
EU の こ う し た 温 暖 化 対 策 の 実 験 か ら 、 例 え ば 排 出 量 取 引 制 度 に お い て は 、 オ ー ク
ション方式によるキャップ・アンド・トレード制度といった新たな制度が提案されて
いる。新たな排出量取引制度はアメリカの東部や西部の州にも普及し、アメリカは新
し い 大 統 領 の 下 で 国 と し て の 排 出 量 取 引 制 度 を 整 備 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 EU イ ニ
シアティブとしてスタートした排出量取引制度は、今やグローバル・スタンダードと
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なりつつある。
こ う し た EU イ ニ シ ア テ ィ ブ に よ る グ ロ ー バ ル な 制 度 形 成 は 、 温 暖 化 対 策 だ け で は
な く 、 第 2 の RoHS 指 令 や REACH 規 制 と い っ た 工 業 製 品 に 対 す る 化 学 物 質 管 理 制 度
に お い て も 同 様 で あ る 。 EU の 化 学 物 質 規 制 制 度 は ア メ リ カ の カ リ フ ォ ル ニ ア 州 や 中
国へ波及し、グローバルな基準となっている。
5.
日本の課題
EU に 対 し て 日 本 は 温 暖 化 対 策 や 化 学 物 質 規 制 で は 出 遅 れ て い る が 、 ご み の 3R( 発
生抑制、再利用、リサイクル)に基づく循環型社会形成では、日本はイニシアティブ
を発揮している。
2004 年 の G8 サ ミ ッ ト ( ア メ リ カ ・ シ ー ア イ ラ ン ド ・ サ ミ ッ ト ) お い て 当 時 の 小 泉
首 相 が 提 唱 し た 3R イ ニ シ ア テ ィ ブ が 合 意 文 書 に 採 択 さ れ 、 2006 年 に は ア ジ ア 3R 推
進 会 議 が 結 成 さ れ 、2008 年 3 月 に は ア ジ ア 等 の 19 カ 国 が 参 加 し 、第 2 回 ア ジ ア 3R 推
進 会 議 が 開 催 さ れ た 。 こ う し た 日 本 の 3R イ ニ シ ア テ ィ ブ は 、 日 本 発 の 循 環 型 社 会 形
成に関するグローバル・スタンダードとなる可能性があるものの、日本的な精密でか
つ 高 価 な 3R 技 術 の 普 及 を 中 心 と し た 取 り 組 み の 将 来 性 へ の 疑 問 の 声 も ま た 存 在 す る 。
日本発の制度設計がグローバル・スタンダードとなるためには、コストをかけても
よいものを精密に作りこんでゆくという日本のよき伝統は踏まえながらも、透明性・
汎用性・経済性のある基準・制度作りが大切であり、こうした点が今後の日本の環境
ビジネスの国際的展開とってキーポイントとなるであろう。そのためにも日本の制度
設計(制度改革)が重要であり、緊張感のある政府・企業・市民社会の共働関係(環
境ガバナンス)の形成が必要であろう。
参考文献
松 岡 俊 二 ( 編 )( 2004) ,『 国 際 開 発 研 究 』 東 洋 経 済 新 報 社
日 本 総 合 研 究 所 ( 編 )( 2008) ,『 地 球 温 暖 化 で 伸 び る ビ ジ ネ ス 』 東 洋 経 済 新 報 社
NTT デ ー タ 経 営 研 究 所 ( 編 )( 2008) ,『 環 境 ビ ジ ネ ス の い ま 』 NTT 出 版
OECD (1999), The Environmental Goods and Service Industry, OECD
Stern, N. (2007), The Economics of Climate Change, Oxford UP (報 告 発 表 は 2006 年 10 月 )
IPCC,気 象 庁 他 仮 訳 (2007), 『 IPCC 第 4 次 評 価 報 告 書・統 合 報 告 書・政 策 決 定 者 向 け 要
約 』 http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th/interim-j.pdf
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