研究報告書 沖縄県立那覇西高等学校 Ⅰ 研究主題 1 研究主題 2 研究テーマ Ⅱ 中高連携による英語教育 毎日の学校生活を英語で楽しくかっこよく過ごそう 研究主題の設定理由 平成 14 年度県立高等学校編成整備計画において、沖縄インターナショナル中等教育学校(仮称) 構想が示された。そして平成 19 年 1 月、 「県立学校編成整備計画に関する懇話会報告の概要につ いて」において、沖縄県教育委員会は英語関連学科を持つ学校を指定して数学・理科など各教科 を英語で教える「イマージョン教育」の研究を行う方針を発表し、球陽高校、山内中学校で研究 が行われた。本校ではこれら「イマージョン教育」の研究成果を引き継ぎ、より生活に密着した 英語教育の実践を目指して、研究にとりくむこととなった。 本校は昭和 62 年に開校した国際人文科と体育科を有する普通高校であり、文武両道の精神の 下、部活動と進路指導に力を入れている。約7割の生徒が部活動に加入し、県高校総体ではこれ まで 14 回の総合優勝を誇る。生徒の多くが大学進学を目指しており、部活動と両立させながら 勉学に励んでいる。国際交流活動にも積極的にとりくんでおり、米軍基地内高校との交流やアジ ア各国からの高校生訪問団の受け入れ、交換留学生の受け入れ等を盛んに行っている。さらに国 際人文科では授業の一環として海外研修を導入し、今年度 3 月には 3 回目のオーストラリア研修 に国際人文科 2 年生全員、約 80 名が出発する予定である。 本校の教育目標のひとつ、 「国際化・情報化に対応した幅広い教養と品格を身につけた人材の育 成」を目指し、多くの異文化理解の機会を提供しているが、生徒に興味を持たせる段階に留まっ ており、彼らが日常生活で英語を使う機会は英語授業以外でほとんどないのが現状である。今回 の研究では、普段の生活の場面で英語を使う機会を増やすことで、英語の運用能力の育成につな げることを目標にし、近隣の金城中学校と連携して研究を行う。 Ⅲ 研究の内容 1 研究仮説 日常生活の中、特に学校生活において英語に触れる機会を増やし、英語を使う環境を整 えることで、生徒たちの英語への興味関心をさらに高められるのではないか。 2 研究の基本方針 (1) 研究目標 ① 生徒を英語に浸す環境をつくる。 ② 生徒が英語を使用する環境をつくる。 ③ 生徒が研究の意義を理解し参加できるようにする。 ④ 職員も英語に親しむ機会をつくる。 ⑤ 継続可能なプログラムにする。 (2) 研究方法 ① 校内の掲示物、教室表示等を英語表記、またはバイリンガル表記にし、生徒が英語 に接する機会をつくる。 ② 学級活動や校内放送(PA: Public Announcement )を英語、またはバイリンガルで行 い、生徒が英語を聞く機会と英語を使用する機会をつくる。 ③ 生徒が中心となって活動できるようサポートする。 ④ 英語の運用能力の必要性について講演を通して生徒に伝える機会をつくる。 ⑤ 各教科でとりくむ。 (1教科1企画) 3 研究組織図 県教育委員会 研究協力校(金城中学校) 校長 教頭 教務主任 英語科職員 推進委員会 (研究推進のための企画及び連絡調整) 校長 教頭 教務主任 研究主任 教科部代表 職員会議 推進委員会、各部からの提案事項の検討及び共通確認 特別活動部会 生徒会・放送部 英会話クラブ 校内放送などを英語 またはバイリンガル で行う。 生徒会顧問 各部活動代表 4 教科部会 学年部会 英語を取り入れた授 業や学校行事を各教 科で行う。 校内の掲示物や表示 等を英語表記または バイリンガル表記に する。学級活動で英 語を取り入れる。 1教科1企画 スペリングバトル等 各教科代表 研究計画 (1) 各部会のとりくみ概要 特別活動部会 2010 年度 教科部会 各学年代表 学年部会 総合学習部会 講演会を企画する 総合的な活動の時間 担当者 総合学習部会 校内放送等をバイ 各教科で何か一つ 学級活動や学校行 講 演 会 を 企 画 す リンガルで行う。 英語に関係する活 事で英語を取り入 る。 動にとりくむ。 れる。例)各クラ 例)英語ラジオ体 スに英語のことわ 操(体育) ざなどを掲示す る。 (2) 各部会とりくみのスケジュール(平成 22 年度~平成 23 年度) 特別活動部会 教科部会 学年部会 月 (齊藤憲) (川門久美子) (中村哲哉・下地保) 総合学習部会 (富田正光) 4 御園先生による講演会 5 (5.15)&アンケート① 6 7・8 各教科で企画案を作成 特別活動部会 (齊藤憲) 教科部会 (川門久美子) 学年部会 (中村哲哉・下地保) 総合学習部会 (富田正光) 生徒会・放送部で企画 各教科 1 企画の実施ス 各学年で企画案を作成 総学委員会で企画案を 案を作成 タート 体育祭のとりくみ 研究授業(中学) 月 9 10 作成 創立記念講演会 11 (11.22)アンケート② 生徒会英語 DJ 12 各教科活動報告提出 英語掲示物の掲示 1 中間報告会 1 月 13 日(木)午後 4 時~5 時 英語講話(職員向け) 2 講演会③&アンケート 3 4 講演会④&アンケート 5 6 7・8 講演会⑤&アンケート 9 10 11 講演会⑥&アンケート 12 1 最終報告会 2 3 5 具体的な実践 (1) 特別活動部会 ① 活動の概要 2010 7 学校行事に関する Countdown Board 作成・・・・・・・・・・・ア 8 全国インターハイ練習校向け Welcome Board 作成・・・・・・・イ 10 第 8 回体育祭来場者向け英訳プログラム作成 ・・・・・・・・・ウ 12 「英語 DJ によるクリスマスソング」放送・・・・・・・・・・・エ ② 活動の内容 ア 学校行事に関する Countdown Board 作成 研究主任および用務員の全面的な協力を得て、木製の大きな Countdown Board を 作成し、10 月初旬の体育祭への日数を掲示した。現在は進路部の協力を得て、セン ター試験へのカウントダウンを行っている。 イ 全国インターハイ練習校向け Welcome Board 作成 本校が全国インターハイの水泳及びなぎなた競技の練習会場に指定されていたこ とから、生徒会執行部で Welcome Board を作成し、 体育館への渡り廊下に設置した。 ウ 第 8 回体育祭来場者向け英訳プログラム作成 第 8 回体育祭にあたり、来場者に配布するプログラム作成が生徒会執行部の担当で あったので、英語科職員や ALT の協力を得て種目名を英訳して作成した。 エ 「英語 DJ によるクリスマスソング」放送 生徒の中から英語 DJ 希望者を募り、英語科職員の協力を得て原稿をチェックした 後、MC 部分を録音した。そして放送部の協力を得て、クリスマスソング音源と合わ せて 12 月 21・22 日の 2 日間昼食時間に放送した。 ③ 成果と課題 ア 成果 ・生徒の日常の学校生活の中に無理なく導入できる活動のモデルを構築できた。 イ 課題 ・活動自体がまだ職員による指示に依存している面が大きい。生徒会執行部も通常の取 り組みがあるため、この活動に力を割くことが難しく、広報活動なども不足していた。 この研究の意義を全生徒で共有し、生徒がより主体的に活動できるような体制を構築 していきたい。 ・英語 DJ プロジェクトは計画通りに進めることができず、直前に研究主任の協力を得 て何とか実現できた。今後は早めに計画を立て、軌道に乗るよう心がけたい。 ・生徒発の企画を行うことができなかった。アンケートなどで活動への評価あるいは要 望などを吸い上げ、それをふまえて新たな企画も実施していきたい。 (2) 教科部会 ① 活動の概要 「各教科1企画」・・英語に関連する活動を、各教科で一つ企画・実施する。企画する際 の留意点として、以下を示した。 ・英語に関連したもの。 ・継続的な企画でなくともよい。 ・教科の中でできる範囲での企画を出す。 ② 活動の内容 各教科から出された企画を、2学期中にそれぞれの教科で実施した。活動後は、以下の 項目について「活動事後報告」の様式に記録し、校内 LAN に保存した。 ア 「活動事後報告」の項目 ・実施の目的・・・それぞれの教科にどう関わるのか ・実施の概要・・・①実施形態(授業 or 課題)②使用した教材③活動内容 ・生徒の感想・・・授業中の反応や生徒の感想 イ 実施する際の留意点 ・先生方が自ら楽しめる範囲でやってみる。 ・生徒から感想を聞き、記録する。 ・先生自身の感想も記録する。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ウ 各教科のとりくみ内容 教科名 とりくみ内容 国語 文学作品タイトルの英語訳・日本語訳を紹介。県名を英語にしてみよう! 地歴公民 アメリカ独立宣言の和訳に挑戦! 数学 章・単元を英語表記にする。微分(Differential)積分(Integral)等。 理科 授業の中で実験の器具名や物質名などの英語名も紹介する。 体育 体育祭での英語ラジオ体操実施 芸術 音楽:英語の歌詞 美術:色の名前を英語で書写する 書道:英語の書道に挑戦 外国語 アイルランド高校生とのペンパル 家庭 保育の分野で幼児向けの遊びの音楽を英語版を用いて行う。 情報 Word や Excel 等のメニューを英語表示にして各操作の英単語を覚える。 ③ 成果と課題 ア 成果 ・各教科の担当者が意欲的にとりくみ、生徒の反応も良かった。報告書には担当者自身 が楽しんでとりくめたとの回答もあり、今後の継続性に期待できる。 イ 課題 ・今年度は全国高校総体のため夏休み以降のとりくみとなった。次年度は1年間継続で きるとりくみを増やしたい。 (3) 学年部会・総合学習部会 ① 活動の概要 ア 英語掲示物を作成・掲示 ・校内の掲示物を英語あるいはバイリンガル表示にすることで、生徒が英語に触れる環 境をつくる。 イ 英語に関する講演会を企画・実施 ・各学期1回講演会を実施。英語に対する興味関心を高める事を目的とした。 ・各講演会でアンケートを実施。講演の感想や英語に対する興味関心の変化をみた。 ② 活動の内容 ア 英語掲示物 ・横幕“We whole-heartedly support those who take part in independent-learning.” 「自ら学ぶあなたをメッチャ応援します」 (PTA 作成の懸垂幕を英語に) ・「社会が求める人材めざせ」掲示内容 Aim to become a person who contributes positively to society. A person who greets everyone politely. A person who is punctual. A person who is sincere. A person who appreciates others. A person who is patient. A person who dresses suitably. A person who has a sense of responsibilities. A person who has a spirit of cooperation. 社会が求める人材めざせ 挨拶が出来る人 時間を守れる人 誠実な人 感謝の心を持つ人 忍耐強い人 身だしなみが整っている人 責任感のある人 協調性のある人 イ 講演会の内容 ・1学期「なぜ、今 英語が必要か-で、どうしたら英語はできるようになるのか」を テーマに、関東学院大学教授の御園和夫先生を講師に迎え、講演会を実施した。 ・2学期「那覇西高校創立 24 周年記念講演会」と題し、総務省『知的財産権教育普及 セミナー』の一環として、本校7期生安原亜湖 弁理士の卒業生講話を実施した。 ③ 成果と課題 ・講演会は、生徒には大変好評だった。アンケートの記述欄から、1学期の講演会は英 語をどう学べばよいか具体的な方法論が中心で、生徒の英語をもっと学びたいという 意欲を高めることができることがわかった。2学期の講演会では、実際に海外で英語 を駆使して活躍する卒業生の話に刺激を受けた生徒が多かった。 《参考》アンケート結果(1 学期 5 月、2 学期 11 月) 1. 英語は好きですか。 1 学期 → 嫌い, 13.0% どちらか といえば 嫌い, 28.7% Ⅳ 好き, 25.9% どちらか といえば 好き, 32.4% 2 学期 嫌い, 9.7% どちらか といえば 嫌い, 25.2% 好き, 31.0% どちらか といえば 好き, 34.1% 研究の成果と課題 御園和夫氏による講話「なぜ、今英語が必要か」でスタートした本研究は、本校全職員、生徒 と金城中学校の協力を得てすすめられてきた。今年度前半は、本校の総合優勝奪還を目指した県 高校総体や美ら島全国総体を控え、本格的に研究にとりくむことはできなかったが、推進委員会 はじめ研究組織を立ち上げた頃から、それぞれの担当者が活動を行ってきた。職員も楽しめる範 囲で始めたそれらの活動が、この中間報告で 1 つの形となった。 生徒を英語に浸し、英語を使う環境をつくり、研究の意義を理解させるために、推進委員会の 下、4 つの部会が様々なとりくみを行ってきた。特別活動部会では、体育祭のプログラム作りや 英語 DJ 等、生徒が中心となった活動にとりくんだ。教科部会ではすべての教科で英語に関連した とりくみを行った。その他、掲示物作成や講演会の実施等、できるかぎりバラエティに富んだ活 動を行ってきた。 1 学期(5 月)と 2 学期(11 月)に行われた本校生徒へのアンケート結果の推移をみると、 「英 語は好きですか」という問いに「好き」 「どちらかといえば好き」と答えた割合がそれぞれ増え、 合計約7%の増加となっている。この数字と本研究を関連つけることは現時点では難しいが、次 年度の研究を通して、顕著な変化が見られるように努力したい。伸ばしたい英語力に関しては「聞 く力」 「話す力」が約6%増加。よりコミニカティブな能力を身につけたいという意欲がうかがえ る。英語を使う機会があったかという問いには「メールで英語を使った」と答えた者が 8%から 倍増した。英語科によるペンパルの活動と関係しているか明らかでないが、注目すべき変化であ ると考える。 今後も本校で「毎日の学校生活を英語で楽しくかっこよく過ごそう」というテーマを実現させ ていくためには、下記の項目を深化させる必要がある。 ① 各教科のとりくみ(1 教科 1 企画)の継続 ② バイリンガル、英語表示掲示物の充実 ③ 学校全体のとりくみとして英語に関わる行事を定期的に開催すること・・・等 次年度は今年度残された課題を解決し、生徒の要望を踏まえて、できるだけ多忙化に結びつけ ずに、生徒、職員双方が英語に触れる機会を増やせるよう工夫を重ねる必要がある。 「職員も英語 に親しむ機会を作る」という目標を活かし、次年度も研究を深めていきたい。この機会に、英語 を学校生活で使っていくという新しい校風をつくり、生徒の英語運用能力を向上させる一助とし たい。
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