中国株ウィークリーレポート(0912-0918)

内藤証券 中国部
~中国株ウィークリーレポート~
2009 年 9 月 18 日
景気回復への期待感を背景に堅調な地合い、ただ需給悪化の懸念は根強い
本土市場
~主要統計が好感
され 3000 ポイン
トを挟んで推移~
8 月の大幅調整を経た本土市場は、9 月に入り回復基調を鮮明にしてきた。9 月 11
日に発表された主要統計内容が好感され、上海総合指数は 11~15 日にかけて続伸。約
1 カ月ぶりに 3000 ポイントの大台を回復した。その後は大台を挟んでのもみ合いが続
いている。18 日は需給悪化懸念などから大きく下げ、結局 3000 ポイントを維持できな
かった。
売買代金も 14 日には約 5 週間ぶりに 2500 億元を突破。その後も活発な商いが続い
ており、投資家心理は改善の方向にあるようだ。
香港市場
~回復基調は変わ
らず、海外からの
資金流入も~
香港市場も本土と同じく、9 月に入り堅調な地合いが続いている。ハンセン指数は先
週、約 1 カ月ぶりに 2 万 1000 ポイントを回復した後は、同ポイント付近でのもみ合い
が続いた。だが、9 月 16 日に 2.57%の大幅高。17 日も上昇し、年初来の高値を更新。
2 万 2000 ポイント台が視野に入ってきている。
様子見ムードから売買代金は本土に比べると伸び悩んでいたものの、17 日は約 6 週
間ぶりに 800 億 HK ドルを超える活発な商いとなった。海外からの投資資金が流入して
いるもようだ。
需給関係の悪化懸
念が相場の重しに
本土、香港ともに、主に以下の点が背景として挙げられよう。
◆景気回復への期待感が堅調な地合いを作っている。特に 9 月 11 日に発表された 8 月
の本土主要統計が概ね市場予想を上回り、買い安心感を与えている。注目された新
規貸出額は 4104 億元に上り、大きなプラスのサプライズとなった。7 月の主要統計
が嫌気され、これが 8 月の大幅調整に繋がっただけに、今回はこれとは逆の様相に
なっている。
◆景気の底入れ・回復という認識が当局から相次いで出され、これがマクロ経済の先
行き不透明感を後退させている。本土では国家統計局のスポークスマンが、インフ
レは生じておらず、8%成長という目標達成に向け基礎は固まったと論評。米国でも、
米連邦準備理事会(FRB)が景気は底入れしたとの認識を示しており、世界的に景気
回復への期待感が広がっている。
◆政策調整への警戒感が後退しており、これも地合いを下支えしている。中国共産党
の第 4 回全体会議(四中全会)が 18 日までの日程で開催中。さらに来週には G20 の
金融サミットが米国で開かれるなど、重要会議が続く。これらの会議で景気下支え
の政策スタンスを維持するという認識が改めて確認されるという観測が強い。
◆需給悪化への警戒感は引き続き根強く、重しとなっている。IPO(新規公開)が活発
であり、建設大手の中国冶金科工股フン有限公司は 9 月 21 日に上海、24 日に香港に
上場する予定。このほか、万科企業(200002)の 112 億元に上る大型増資など、今
後も市場からの資金調達は増える見込み。
来週のポイント
~大型 IPO に注目
~
本土、香港市場ともに、概ね 3000 ポイント、2 万 1000 ポイントという水準付近で推
移しており、今後はこれら節目を下値として固められるかが注目されよう。ある程度
固まれば、景気回復への期待感を背景に投資家心理は徐々に回復してきており、堅調
な地合いが続く可能性がある。だが、IPO、増資は来週も続き、特に両市場ともに大型
株の中国冶金科工の上場を控えている。需給悪化が地合いを冷やす可能性も否定でき
ないだろう。
注目ニュース
◆マクロ
9 月 11 日:当局が 8 月の主要統計を発表。新規貸出額は 4104 億元、CPI、PPI はそ
ろって 1.2%、7.9%のマイナス、工業生産は 12.3%増、小売総額は 15.4%増、固定
資産投資は 1-8 月累計で 33.0%増(物価指数は前月比でマイナス幅が縮小したほか、
投資も引き続き高水準を維持。生産、消費も底堅く、景気回復のトレンドは継続)。
9/18 審査済
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内藤証券 中国部
◆国内市場
9 月 17 日:まもなくスタートする予定の創業板(成長企業市場)について、初回の
上場審査委員会が開催。審査された 7 社すべてが上場を認可された(創業板の導入
により、企業の資金調達ルートの拡大などが期待される)。
◆産業・個別企業
9 月 11 日:米国政府が乗用車と小型トラック向けの中国製タイヤに対し、特別セー
フガード(緊急輸入制限)の発動を発表(中国側も対抗措置を発表するという観測
も。世界的な景気回復基調を背景に、米中間の通商問題が再燃する懸念も)。
本土、香港両市場ともに、今年に入りエクイティファイナンスが増加している。9 月
増加するエクイテ
16 日付の報道によると、本土での上場企業による資金調達額はこれまでのところ 1810
ィファイナンス
億元に上っており、過去最高を更新しているという。7 月に再開された IPO も活発で、
7 月末には中国建築股フン有限公司(601668)が約 400 億元もの大型 IPO を成功させた。
香港市場でも IPO が続いており、調達額は現時点で約 214 億 HK ドルに達している。
積極的なファイナンスは同時に需給悪化への警戒感を生み出す。特に売却条件付き
流通株の売買解禁が直接影響する本土市場は、需給について敏感であると思われる。
エクイティファイナンスに関するトピックスをまとめると以下の通り。
◆創業板(成長企業市場)の導入
長年検討されてきた創業板のスタートが秒読みになっている。これにより中小、新
興企業による資金調達ルートの拡大が期待される。
◆銀行などによる大型増資
招商銀行(03968)をはじめ、銀行による大型増資計画の発表が相次いでいる。当局
が銀行への自己資本比率規制を強めており、一部の銀行は資本強化に迫られている
もようだ。銀行以外にも万科企業(200002)などが巨額の増資計画を発表している。
◆レッドチップ企業・海外企業による A 株上場の動き
年内にもレッドチップ企業による A 株上場が実現するのではという観測が強まって
いる。レッドチップには中国移動(00941)や、中国海洋石油(00883)など著名な
大企業が多い。中国事業を重視する海外企業も、A 株上場の動きが活発化している。
匯豊控股(00005)は上場準備のために主幹事を選定したという観測も流れている。
レッドチップ企業、海外企業ともに A 株上場には制度的な面をクリアする必要があ
るが、今後も市場の注目を集めると思われる。
9/18 審査済
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内藤証券 中国部
各指数の動き
12%
10%
8%
6%
4%
NYダウ(前営業日終値)
ハンセン指数
H株指数
上海総合指数
2%
0%
9月3日
9月4日
9月7日
9月8日
9月9日
9月10日
9月11日
9月14日
9月15日
9月16日
9月17日
出所:ブルームバーグのデータより内藤証券作成
8、9 月の参考銘柄の動き
コード
9 月 3 日終値
9 月 17 日終
値
騰落率(%)
上海総合指数
2,845.02
3,060.26
+7.6
ハンセン指数
19,761.68
21,768.51
+10.2
H 株指数
11,429.21
12,668.25
+10.8
ミスター康
00322
14.02
14.84
+5.8
上海実業
00363
38.25
38.80
+1.4
中国石油化工
00386
6.70
6.92
+3.3
中興通訊
00763
36.20
40.35
+11.5
世茂房地産
00813
12.96
14.92
+15.1
華潤電力
00836
18.56
18.14
-2.3
聯華超市
00980
15.62
16.98
+8.7
中国工商銀行
01398
5.38
6.23
+15.8
中国人寿保険
02628
33.35
36.10
+8.2
中国南玻集団
200012
6.87
7.37
+7.3
出所:ブルームバーグのデータより内藤証券作成
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香港市場の業種別騰落率(9/10-9/17)
(%)
6
5.07
5
4
2.82
3
2.47
2.36
2.04
2
1.66
1.30
1.06
1
0.20
0
-0.18 -0.29
-1
出所:CEIC
9/18 審査済
4/4
通
信
消
費
財
公
益
素
材
IT
建
設
・不
動
産
サ
ー
ビ
ス
エ
ネ
ル
ギ
ー
工
業
製
コ
品
ン
グ
ロ
マ
リッ
ト
金
融
-2