デジタルカメラを用いた天体写真撮影

(天体4)
天体写真に挑戦しよう
デジタルカメラを用いた天体写真撮影
<目
1.ねらい<目的と概要> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.材料集めの情報やヒント ・・・・・・・・・・・・・・・1
2-1.コンパクトデジタルカメラの長所
2-2.コンパクトデジタルカメラの短所
2-3.準備品
3.撮影の方法と問題点の克服 ・・・・・・・・・・・・・・2
3-1.接眼鏡とカメラの接続
3-2.カメラと望遠鏡の保持
3-3.対象導入
3-4.ピント合わせ
3-5.感度と露出
3-6.シャッターぶれ
3-7.画像処理
3-8.大気の揺れ
次>
3-9.活動の形態
3-10.活動の発展
4.安全対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
5.科学する心を育てるための具体的なヒント ・・・8
6.この教材を行う(用いる)ことのできる子どものレベル
・・・・・8
7.この教材を行う(用いる)ことのできる活動団体の
経験年数 ・・・・・8
8.関連項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
8-1.学習指導要領との関連
8-2.活動総覧(活動マップ)
8-3.教材系統図(カリキュラムマップ)
8-4.キーワード
9.補足資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
本教材は宇宙とのつながりを軸として科学を身近に感じてもらうために作った
科学教材です。本教材の利用による事故等については一切責任を持ちかねます
ので、本教材の利用は、経験のある指導者の指導の下に行って下さい。
2006年(平成18年)3月31日
「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会
天体写真に挑戦しよう
- デジタルカメラを用いた天体写真撮影 -
1.ねらい<目的と概要>
子供たちが天体写真を撮ることに、どんな意義があるのだろうか。学
問的に意義のある写真はそう簡単には撮れない。それでは、何の意義も
ないのだろうか。
実際にやってみるとわかるのだが、ある程度機材の能力を生かした写
真が撮れるようになるまでには、いくつか乗り越えなければならない課
題がある。特に小口径の、ダンボールの筒で作った望遠鏡で撮影するよ
うな場合には、既製品の望遠鏡で撮るほど簡単ではない。この課題を乗
り越えていく過程に、教育的な意義があるのではないか。
写真1は口径5センチのダンボールの筒で作った望遠鏡で撮影した月
面である。写真2は同じ望遠鏡で撮影した土星と金星である。いずれも
写真1
望遠鏡を三脚に載せて固定して撮影した。
意外によく写っている。子供たちが天体写
真撮影に挑戦していくことを通して、様々
な事に感動し、くふうする機会を与えるこ
とができる。
※本教材では、レンズとカメラが一体で一
眼レフではない、比較的安価なデジタル
カメラをコンパクトデジタルカメラと称
写真2
している。
2.材料集めの情報やヒント
2-1.コンパクトデジタルカメラの長所
コンパクトデジタルカメラがかなり普及してきた。人間の目の代わりにカメラで望遠鏡を覗け
ば天体も撮影できる。コンパクトデジタルカメラで撮影する長所は以下の通りである。
1)いったん機材を揃えれば、フィルム代や現像代が不要で、何枚でも撮影することができる。
2)電子シャッターのため、撮影時にカメラがぶれる心配がない。レンズ交換式の一眼レフカメ
ラでは、ミラーショックや機械シャッターによるブレのため、小型の望遠鏡では鮮明な写真
を撮ることが困難である。
3)レンズ交換式ではないので、カメラにほこりが入って撮像素子に付着する心配がない。
4)付属のズームレンズを広角側にすれば対象を画面に入れやすく、撮影時には適切な大きさに
拡大できる。
5)最大の利点はスルー画面で画像がモニターできることである。(デジタル一眼レフカメラは、
一部を除いて撮影後でなければモニター画面で画像を確認することができない。)オートフォ
ーカスはもちろん利用できるが、マニュアルでもデジタル拡大画面で精密にピント合わせが
できる。
1
2-2.コンパクトデジタルカメラの短所
1)アイピースとカメラのレンズの両方を光が通過するので、両方のレンズの欠点が加算される。
良質のアイピースを使わないと、画面の端がぼけたり、色収差が出たりする。前ページの写
真1の月の場合は月面の縁に青色の色収差が出ていることがわかる。写真2の金星の縁に出
ている収差は、低空による大気の色収差である。
2)撮像素子が小さいため、デジタル一眼レフに比べればノイズが多くなりがちである。感度を
高くしたり、露出時間を長くしたりすると顕著に出る。
3)付属のレンズは暗い場合が多く、また、たいていのコンパクトデジタルカメラは長時間露出
に対応していないため星野写真には向いていない。星野写真の撮影にはデジタル一眼レフカ
メラに、口径比の明るいレンズが必要となる。従って、本教材では月・惑星の撮影に限定し
て解説している。
2-3.準備品
1)予備のバッテリー
デジタルカメラのバッテリーが切れて活動が途中で出来なくなっては困るので、予備のバッ
テリーを準備しておくことを忘れないように。
2)記録メディア
データを入れるメディアの容量や数についても、活動形態に合わせて準備しておくこと。
3)ドライヤー
湿度や気温の変化でレンズに露が付いて、ドライヤーが必要な場合がある。もしドライヤー
がなければ、自動車の暖房で乾かすこともできる。
3.撮影の方法と問題点の克服
本教材では、コルキットの KT-5cm望遠鏡(定価 3,650 円)を、専用の木製三脚キット(定価
2,415 円)にのせて、コリメート方式で月面と惑星を撮影する。コリメート方式とは、人間の目の代
わりにカメラでのぞいて撮影する方式で、カメラに付いているレンズをそのまま利用する。
この望遠鏡は口径5センチの屈折式で、焦点距離は600ミリ、接眼鏡の焦点距離は12ミリで、
倍率は50倍になる。眼視では月の全体を見るのに適切であるが、カメラでは月面の一部しか入ら
ない。撮影には主としてペンタックスの XL-12mm アイピースを使用した。この望遠鏡キットは子
供でも1時間程度で組み立てることができる。木製三脚も1時間程度で組み立てられる。
詳しくはオルビィス株式会社(http://www.orbys.co.jp )まで。また、2005 年度版の本教材集の
「手作り望遠鏡」も参照されたい。
撮影までに取り組まなければならない課題には次のようなものがある。
1.接眼鏡(アイピース)とカメラの接続
2.カメラと望遠鏡の保持
3.対象導入
4.ピント合わせ
5.感度と露出
6.シャッターぶれ
7.画像処理
2
3-1.接眼鏡(アイピース)とカメラの接続
これが一番大変で、最近のデジタルカメラは、レンズ部分に
フィルターネジがなく、しかもズームレンズが飛び出してくる。
これをアイピースに接続するには、以下のような器具を使用す
る方法がある。
1)LV デジカメアダプター汎用型(写真3)
(ビクセン LV アイピース専用、誠報社オリジナル
http://www.seihosha.co.jp)
このアダプターには、カメラ三脚用のネジが付いているデ
ジタルカメラなら大抵取り付けることができる。ただし、
このアダプターを KT-5cm の抜き差し式ダンボール製接眼
部に固定することはできない。もちろん接眼部が強固な通
常の望遠鏡なら大丈夫である。
2)ニコン Coolpix-885 専用アダプター(写真4)
写真3
アダプター(撮影時に出て
くるズームレンズが接眼鏡
にぶつからないようにする
ための筒)を付け、これに
プラスチックのフィルムケ
ースを切ったものを接眼部
にはめこんで、ビニールテ
ープでつないだものである。
写真4
写真5
写真5はこの組み合わせで撮った月で、倍率が高すぎて月全体を撮ることはできない。月全
体を撮るためには、焦点距離がもっと長いアイピースが必要である。また、天頂付近を撮影
する時はカメラ付属のモニター画面を下からのぞく必要があるが、非常に困難である。
3)ペンタックス XL-28mm(写真6)
これは差し込み部分の直径が 31.7mm の、いわゆるアメリ
カンサイズのアイピース。見掛け視野 55 度で、生産打ち切
り品を 15,000 円で購入。現在は見掛け視野 70 度の XW シ
リーズになっていて3万円以上する)に誠報社特製のアダプ
ターを付けてニコン Coolpix4500 に接続したもの。この組
み合わせだと、カメラのズームレンズを広角側にしても、四
隅が少し蹴られるだけで、対象を画面に入れやすくなり、月
写真6
全体も十分撮影できる。またモニター画面が回転できるスイ
バル式なので、モニター場面をのぞきやすい角度にできて、
対象の導入やピント合わせが楽になる。KT-5cmの抜き差
し式接眼部がアイピースの径 31.7mm とほぼ同じなので、
ガムテープでつないでいる。
4)Wide Angle 18 ㎜(写真7)
28 ㎜径のフィルターネジがあるデジタルカメラ専用のアイ
ピース(笠井トレーディング:http://www.kasai-trading.jp/
3
写真7
8,000 円)を使用。アイピースにネジが切ってあるので、アダプターが不要。画面周辺のシャ
ープさや色収差はペンタックスの XL-28mm の方が優れている。
レンズの前にフィルターネジがあるカメラは現在ではほとんど生産が完了していて、中古市場
で探さなければならない。しかし、中古品なら発売当時より非常に安く入手できるので、天体専
用に購入してみてはいかがだろうか。(Nikon COOLPIX の 900 シリーズ、950, 990, 995 及び
4500 は、ズームレンズが飛び出さず、28mm のフィルターネジが付いていて液晶のモニター画面
の角度が変えられるのでおすすめ。)
また、接眼レンズとカメラレンズの間隔次第では、ブラックアウトを起こすことがある。望遠
鏡に付けた接眼鏡を自分の目で覗いて見ればわかるが、接眼鏡からある一定の位置に目を置けば
視野全体が見渡せるが、目の位置によっては視野が狭くなったり真っ暗になって見えなくなった
りすることがある。このような現象をブラックアウトという。アダプター購入の際は販売店に十
分相談し、できれば実際に自分のデジタルカメラと組み合わせて確かめてから購入して欲しい。
望遠鏡販売店については、月刊天文雑誌の広告等を参照のこと。
3-2.カメラと望遠鏡の保持
カメラと望遠鏡の保持には 10cm×90cm の桐集成材(190
円 )を切った台を利用する(写真8)。鏡筒を上に向けると
筒がずり落ちてくるので、配管留め金具(45 円)を使って固
定する。微調整は蝶ねじ付きボルトと、木に埋めた鬼目ナット
でおこなう(写真9)。接眼部とカメラ側でピント調整でき
れば、もっと使いやすくなる。
カメラ側の固定は、アイピース部分をガムテープで止める。
写真8
作例の場合には、偶然、対物レンズ側の筒と、アイピースの太
さがほぼ同じなので、高さ調節が不要であった。大きさに違い
がある場合には、光軸がすれないように接眼部の筒に支えが必
要である。
3-3.対象導入
低倍率のアイピースを使用し、デジタルカメラのレンズを広
角側にしておき、ファインダーでほぼ方向を定めれば、比較的
容易に対象を画面に導入することができる。しかし、この木製
三脚は微動装置がなく、なかなか思い通りのところで止まっ
写真9
てくれない。月を画面いっぱいにズームアップして、画面中央
に正確に入れるのは大変である。
解決方法の1つとして、微動装置付きの手動経緯台を使う方法がある。(例:「オリジナル K1
経緯台」 国際光器
16,800 円
http://www.kkohki.com)
既製の赤道儀にのせれば、対象導入の問題はなくなる。自動追尾の赤道儀架台に載せた場合、
恒星は追尾できるが、月は少しずつ画面からずれていく。これは恒星とちがって、月が地球の周
りをまわっているせいであり、絶えず微調整が必要である。
3-4.ピント合わせ
ピント合わせは、オートフォーカスの調節範囲内に接眼部の筒を止めれば、自動でできる。惑
星など、対象が小さくてオートフォーカスが効かない場合には、マニュアルモードでピント合わ
4
せをする。モニター画面をデジタル拡大にできれば精密にピント合わせができる。撮影した画像
のピントが合っているかどうかは、撮影後、すぐに再生画面に切り替えて、デジタル拡大して確
認できる。再生画面が小さくて、正確なピントが分からない場合は、画像をパソコンに取り込ん
で、ピクセル等倍にして確認して見るとよい。
3-5.感度と露出
感度設定は低くするほうが滑らかに写る。しかし、そのために露出時間が長くなるとノイズが
出てくる。また、固定撮影のため、遅いシャッタースピードでは地球の自転により画像がぶれて
しまう。まずは、低感度の ISO-100 のなめらかな画面で撮影し、露出が 1/4 秒以上かかるようで
あれば、感度を上げてシャッター速度を上げる。よほど細い月や低空の透明度の悪い時でなけれ
ば、ISO-100 で十分である。作例(P.1の写真1)の上弦の月は ISO-100 で 1/60 秒前後で撮影
できた。作例(P.2の写真2)の土星は 1/8 秒かかった。露出は望遠鏡の口径、拡大率、カメラ
の感度設定、空の透明度などによって変わる。
月が画面の大部分を占めている場合には、オート露出でうまく写る。三日月や惑星のように、
対象の面積が狭い場合には露出オーバーになるので、露出補正をマイナスにして写す。それでも
露出オーバーになるようなら、マニュアル露出で撮影する。いずれにしても、撮影後、画像を再
生して、適正露出になっているかどうかを確認する。
マニュアル露出での撮影は普段使い慣れていない場合が多いので、使用説明書を読む必要がで
てくるが、これもまた勉強である。機種によっては、マニュアルに切り替えることができないも
のもあるので、購入前に機能を確認しておく必要がある。
マニュアル露出はシャッター速度の調節で行なう。絞りは望遠鏡の口径によって決まっている
ので、デジタルカメラのレンズの絞りでは調節できない。絞りは開放にしておかないと、露出メ
ーターが暗すぎるものとして露出オーバーの誤動作をすることがある。
ストロボは発光禁止モードにしておく(ストロボは遠い月や惑星を照らすことはできない)。
3-6.シャッターぶれ
指でシャッターを直接押したのでは画像がぶれてしまう。そのカメラに合ったレリーズがあれ
ば購入して使う。
(例:「汎用レリーズステーn」トミーテック
7,000 円
http://www.tomytec.co.jp/borg/)
自分のカメラに合わせて、金具で自作することも可能。望遠鏡にさわったあと、ぶれが収まって
からシャッターを切ること。レリーズ取り付け用具も販売されている。
レリーズがなければセルフタイマーを使う。ただし、シャッターが切れるまでの約 10 秒間の天
体の移動を予測して構図を決める必要がある。
3-7.画像処理
カメラ側を固定しているために、画像の傾きを撮影時に修正することができない。撮影後、パ
ソコンに取り込んで、フォトショップなどの画像処理ソフトで画像を回転し、きちんとした向き
にしてみる。余白ができたら、その部分はスタンプツールで夜空の色に塗りつぶす。必要なら、
明るさ、コントラスト、トーンカーブ、シャープネスなどを調節する。また、撮影データを画像
に書き込めば画像の整理が容易になる。
3-8.大気の揺れ
本教材の内容は、カメラにとっては超望遠で撮影することに相当する。このような超望遠に設
定した撮影では、大気の揺れによる光波の乱れのため、画像がぶれてしまう。上弦前後の月を撮
5
影する場合、春の宵の月が高度が高く、大気のゆれの影響が少ない(シーイングがよい)。活動
日を決める際に考慮して頂きたい。
気象条件としては、移動性高気圧の後ろ側(天気が崩れる直前)や、夏に日本列島が太平洋高
気圧に覆われた時が、大気の揺れによる乱れが少なく、好シーイングとなることが多い。自然を
相手にした場合、辛抱強くチャンスを待つ必要があることも、子どもたちに学んで欲しい。
3-9.活動の形態
1)撮影画像の配布や利用
全員がそれぞれ、自分の撮影装置を作って撮影することは、現実的に不可能である。リーダ
ーが撮影装置を作って準備し、実際の撮影操作を子供たちに体験させ、できればその場でプリ
ントアウトして持ち帰らせることができれば印象に残る。全員分のプリントアウトをする時間
がなければ、一番シャープに撮れた画像をプリントアウトして、仕上がりを確認するだけでも
よい。
人数が多い場合には、プロジェクターを準備し、撮影後にパソコン等を用いて作品をスクリ
ーンに投影して鑑賞するとよい。画像を活動団体のホームページに載せれば、各自がダウンロ
ードして利用することもできる。
2)待ち時間の利用
この活動のむずかしいところは、一人が撮影しているとき、他の子供たちが待っていなけれ
ば ならないので退屈することである。そこで、待っている間に各自が自分の望遠鏡を使って
「月面地形スケッチコンテスト」をしてはどうだろう。スケッチは時間もかかり、なかなかう
まくできない。写真という方法が発明されたとき、それがいかに画期的だったか身にしみてわ
かるだろう。特にその場で結果が確認でき、画像加工もできるデジタルカメラを使えば、自然
観察における写真の便利さが理解できると思う。
3)その他の使用可能な機器
本教材では、安い望遠鏡でも工夫次第で意外に天体写真が撮
れるのだという経験をしてもらうために、敢えて KT-5cmに
よる撮影方法を紹介したが、このような準備に手間がかけられ
ない場合には、普通の望遠鏡の接眼部にアイピースとカメラを
接合したものを差し込むだけで容易に撮影ができる。写真10
は同じ口径5センチの小型屈折望遠鏡であるが、接眼部がしっ
かりしているので容易にピント合わせができる。回転装置も
つけているので、構図が決めやすくなっている。赤道儀による
写真10
自動追尾なので拡大撮影をして露出時間が長くなっても対象が
ぶれない。
微動装置付きの経緯台に載せた望遠鏡でも撮影はずっと容易
になる。写真11は口径15センチの反射望遠鏡にアイピース
とデジタルカメラを組み合わせたものである。望遠鏡の焦点距
離が1280ミリあり、光量も十分なので、拡大撮影も可能で
ある。上下左右の微動装置がついているので、構図も容易に決
められる。月全体を撮る時には、誰が撮っても同じ写真になっ
てしまいがちであるが、拡大撮影なら一人一人、違った構図の
写真を撮ることができ、活動としても変化がつけられる。カメ
6
写真11
ラが常に水平位置にあるので、どんなカメラでもファインダーが見やすく、カメラが抜け落ち
て落下するおそれもない。
また、野鳥観察用のスポッティング・スコープにデジタルカメラを組み合わせたものでも撮
影できる。「デジスコ超望遠撮影パーフェクトガイド」(学習研究社)などを参照のこと。
各活動団体の状況と活動目的に合わせて活動計画を考えてほしい。
3-10.活動の発展
この活動を参考に、各自が自宅で撮影装置を作って、様々な月齢の月の写真を活動団体のホー
ムページに投稿し、掲載してもらえるようになれば面白い。写真12は KT-5cmで2005年
12月から約1ヶ月かけて撮影した月面である。年間を通して撮影すると、同じ月齢でも南中高
度が違ったり、クレーターも少し違ったところが見えていることがわかり、月の軌道や秤動運動
にも気づくことができる。写真13(次ページ)は主に口径15センチの反射経緯台式望遠鏡の
固定撮影で、2005年に1年間かけて撮影した月齢別の写真である。
また、この装置で日の出や日没を撮ったり、対物レンズの前にフィルターを付けて太陽黒点を
撮影したり、惑星の撮影に挑戦する子も出てくるかも知れない。(例:「アストロソーラー太陽
フィルター」国際光器
8,190 円
http://www.kkohki.com)
本教材で紹介した撮影装置は、野鳥撮影にも使用できる。この活動をきっかけに子供たちが自
然観察記録にデジタルカメラを活用するようになれば、活動は成功といえるのではないだろうか。
写真12
4.安全対策
4-1.製作においては、工具を使うのでその使い方の注意が必要。
4-2.望遠鏡やカメラでの撮影では、第3項に記した諸注意の他に、夜間に望遠鏡で見る事にな
るので、一般的注意事項に留意されたい(本教材集の「小望遠鏡による天体観察」を参照のこ
と)。
4-3.撮影会の際のマナー
撮影会を成功させるためには、参加した子供たちに次のようなことを説明し納得してもらって、
マナーを守らせる。資料プリントに印刷しておくと効果的。
7
<プリント例>
1)いくら元気でも走り回らないこと。
・暗いところで走り回ると、思わぬケガをしてしまいます。
・望遠鏡にぶつかると、精密に位置合わせをしたものが、台無しになります。
・超望遠撮影をしているので、細かい振動でも写真がぶれてしまいます。
・特に、乾燥している時には、ほこりが舞い上がり、レンズや鏡が十分な性能を発揮でき
なくなってしまいます。
2)望遠鏡を筒の先から覗き込むのはサイテーです。
・望遠鏡の筒先の前に立つと、体温の影響で空気が乱れてシャープな写真が撮れなくなり
ます。また、レンズに息がかかると見えなくなってしまいます。
・いったん観測が始まったら、望遠鏡の筒先をのぞきこんだり、望遠鏡の前に立ったりす
るのはやめましょう。自分の無知を証明するようなものです。
・懐中電灯で他人の顔を照らすのは失礼なのでやめましょう。懐中電灯は足元を確認する
ために使いましょう。
5.科学する心を育てるための具体的なヒント
5-1.デジタルカメラで天体写真が撮れることを体験するだけで、すばらしいことになる。そこ
から、自ずと次の興味・関心が芽をふくことになる。
5-2.器具を組み合わせるとか、接合させる過程を通して、器具の使い方に工夫がなされる。ま
た、失敗から学ぶことも沢山あるはずである。
5-3,写真撮影をすることで、天体に関する知識がますます増加してくることも予想される。ま
た、興味、趣味への深まりにもなるであろう。
5-4.天体写真を記録するなり、見比べる中に天体のすごさに感動し、記録から天体を見る目が
変化していくに違いない。素晴しいヒントの機会でもある。
5-5.この活動を参考に、各自が自宅で撮影装置を作って、様々な月齢の月の写真をホームペー
ジに取り入れたり、掲載してもらえるようになれば面白い。
5-6.第3-10項にも記したとおり、撮影経験を重ねることで気付きが生まれたり、より高度
な撮影や継続的な撮影、あるいは天体以外の撮影に挑戦したりなど、興味の深まり、広がりが生
じる。
6.この教材を行う(用いる)ことのできる子どものレベル
6-1.指導者についていけるレベルや黙々と組み立てることが好きになる年齢を考慮すると、小
学校高学年以上が目安となるであろう。
6-2.年齢も大切だが、性格に合っているという面がやはりあるのではないか。自立心、忍耐力、
観察力に富む子どもには特に適しているであろう。
7.この教材を行う(用いる)ことができる活動団体の経験年数
7-1.カメラ・望遠鏡に親しみがもてる指導者であれば挑戦できることで、まず自分なりに試み
てみるところから始めよう。どうも無理かもしれないと思えば、それができる指導者を探すこと
で、チャンスは出てくる。
8
7-2.自力でできる指導者は、仲間を少しでも増やし、その仲間を引き込んで、活動に協力いた
だく方向でお誘いすれば、活動の活性化にもつながる。
7-3.指導者自身のレベルが高い場合には、いかにわかりやすく教えることができるか、その教
材の工夫ができれば幸いである。また、いかに簡易に作れるかの工夫が多くの理解者を増やすこ
とになる。そのことによって、活動の魅力化と理解者を増やすことにつながる。
8.関連項目
8-1.学習指導要領との関連
小学校編:天体は理科の内容C「地球と宇宙」
中学校編:天体は理科の第1分野(1)身近な物理現象
第2分野(6)地球と宇宙
技術・家庭科の技術分野の内容、A
技術とものづくり
8-2.活動総覧(活動マップ)
天文・天体との関連(科学工作・観察・体験分野)
「天体観察」、「星座観察」、「天体写真撮影」
天文・天体との関連(観察・観測分野)
「太陽黒点観測」、「月を見よう」、「日食観測」など
8-3.教材系統図(カリキュラムマップ):「天体(観察)」4)写真に撮ろう
カメラに関連する系統図はない
8-4.キーワード:デジタルカメラ・天体写真撮影・天体観測
9.補足資料
9-1.参考文献等
1)「デジスコ超望遠撮影パーフェクトガイド」(学習研究社)¥1,995
2)「エリア別ガイドマップ・月面ウォッチング」A.ルークル著
山田卓訳(地人書館)¥5,040
イラストによる月面の詳細な地図。月面には歴史的人物や科学に功績のあった人の名前がつ
けられているが、その人物紹介が載っている。
3)「図説・月面ガイド-観察と撮影」白尾元理・佐藤昌三
共著(立風書房)
¥2,100
フィルム撮影したシャープな月面写真と、火山学者白尾氏が各月面地形の形成過程を解説し
ている。
4)「太陽系ビジュアルブック」と付録 CD-ROM・マルチメディア太陽系図鑑(発行:株式会社
アストロアーツ、販売:株式会社アスキー) ¥1,980
http://www.astroarts.co.jp/products/
9-2.参考WEBサイト
1)アストロクラブふくやま
http://www.onomichi.ne.jp/~fk-astro/
上記「図説・月面ガイド」の共著者・佐藤昌三氏が会長をしているアマチュア天文家クラブ
のホームページ。佐藤氏の月面写真をはじめ、会員が試行錯誤して撮影した様々な天体画
像が載っている。
2)Lunar and Planetary Institute(月惑星研究所)
http://www.lpi.usra.edu/resources/cla/
地球から撮影した月面の写真、月周回衛星ルナー・オービターが撮影した詳細な月面写真、
アポロで月に行って宇宙飛行士たちが撮影した写真などの膨大な画像がある。
9
9-3.教材入手先
1)オルビィス株式会社
〒542-0066
望遠鏡販売部
テレスコハウス
大阪府大阪市中央区瓦屋町 2-16-12
TEL.06-6762-1538
FAX.03-6761-8691
http://www.orbys.co.jp
2)株式会社誠報社
TEL.0120-03-1155(注文専用フリーダイヤル)
03-3234-1033(商品問い合わせ)
http://www.seihosha.co.jp
3)株式会社笠井トレーディング
TEL.03-5355-1851
http://www.kasai-trading.jp/
4)国際光器
〒615 -8217 京都府京都市西京区松尾東ノ口町 93
TEL.075-394-2625
FAX.075-394-2612
http://www.kkohki.com
5)株式会社トミーテック
TEL.03-3693-8902
BORG(ボーグ)天体望遠鏡
http://www.tomytec.co.jp/borg/
教材提供
:日本宇宙少年団備後ローズスター分団
児玉 英夫氏
追記、編集:「宇宙教育のためのリーダー育成」委員会
教材開発グループ
お問合せ先:財団法人日本宇宙少年団
TEL.03-5542-3254 FAX.03-3551-4870
e-mail [email protected]
発行
:宇宙航空研究開発機構 宇宙教育センター
©JAXA 無断転載を禁じます
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