海洋の環境を脅かすプラスチックごみを減らすために,国際連携の輪を

海洋の環境を脅かすプラスチックごみを減らすために,国際連携の輪を広げたい
日本各地の海岸に流れ着き,回収されたごみの量は 2013 年度,約4万 5000 トンだった。
環境省は,未回収分を合わせた漂着ごみ全体では 31~58 万トンに上ると推計している。
海水浴シーズンの前後などに行われる清掃の費用は年々増え,13 年度は全国で 43 億円に
達した。
ごみの大半はペットボトルや洗剤の容器などのプラスチックだ。内陸で投げ捨てられた
ものが川から海に流れ込むほか,九州や本州の日本海側では,中国や韓国など海外から漂
着するものも多い。
海洋ごみの総量を抑制するには,プラスチック製品の使用減や再利用,ポイ捨て防止な
どを徹底することが欠かせない。
世界のプラスチック生産量が増加する中,少なくとも年間 800 万トン分が海に流出して
いるとされる。中国や東南アジア諸国などが上位を占めるとの試算もある。
5月に富山市で開かれた先進7か国(G7)環境相会合でも,G7が主導し,国際協力を
推進することを確認した。
日本は既に,中韓両国やロシアとの間で,プラスチックごみ関連政策の情報交換や,海
洋汚染の実態調査の研修,海岸清掃の共同実施などの取り組みを進めている。こうした対
策を関係国にさらに拡大することが求められよう。
海洋ごみは海岸の景観を損ねるだけでなく,水産物にごみが混ざって商品価値を下げた
り,漁網を破損したりする。魚や鳥が誤ってのみ込み,死ぬケースも多い。
近年,深刻化しているのが,大きさが5ミリ以下の「マイクロプラスチック」の増加で
ある。ペットボトルなどが,太陽光の紫外線や波の力などで細かく砕かれたものだ。既に
地球全体の海に広がっており,回収はほぼ不可能だ。
影響は,より小さな生物にも及ぶ。東京農工大が昨年,東京湾で行った調査では,カタ
クチイワシ 64 匹の8割近くからマイクロプラスチックが発見された。海底にすむ貝からも
見つかっている。
PCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を吸着する性質も要注意だ。食物連鎖の
中で蓄積され,海洋生物の繁殖や人体への影響も懸念される。
マイクロプラスチックの研究は日米欧が先行している。だが,研究者はまだ少なく,測
定や影響評価の方法が標準化されていない。日本は経験を生かし,対策の基盤作りをリー
ドしたい。