アーシャ=アジアの農民と歩む会 第25号 2010年6月1日

アーシャ=アジアの農民と歩む会
第25号
と思います。
一方インドで生活しながら食について考えると、
平和と食、アーシャの活動
2010年6月1日
味噌、醤油つくりについての技術協力の報告書
ルだけではなくメンバー全員が自信を持って確認で
高丸和彦 (JAICAF 派遣専門家)
きるためのトレーニングが必要である。そのために
日本と異なる土壌や風土が生みだす野菜やお米そし
米を噛んで確認し、指でつぶして確認することを習
て何よりも水の違いを体で感じ、日本の豊かな食そし
2月に専門家として派遣された
慣づけた。
近年実施している日本の食品加工技術を利用した
て自然に感謝せずにはいられません。それぞれの土地
高丸さんの報告書より
④蒸し方以外での改善と工夫
生産者組合プロジェクトについて考えました。
には延々と続く営みの中からつぐまれた知恵から作
インド製の味噌をするための機械を購入した。こ
られている独自の食がはぐくまれています。どの食文
の機械は味噌のような水分のあるものをペーストに
化も生きる人々が豊かな生活を求めてそれぞれに知
本会活動地域であるアラハバード農村部では、盗
Ⅰ指導目的と内容
恵を出して育んできたものだと思われます。そのよう
するだけでなく乾燥した穀類も粉砕することができ
食品加工の専門家派遣は今年で3回目になる。販
難、騙し合い、高利貸しなど金銭トラブルが日々起
な食文化の中でも、日本の食文化は独自の変遷を経て、
売開始から順調に思えた味噌、
醤油も昨年から1年経
こっています。貨幣経済の急激な流入により伝統的
素晴らしい知恵、技術の集約として世界中から理解さ
過して
な人間関係がぐらつき、集落同士のいがみ合い、ま
れている貴重な文化と認知されています。
た。
た集落内での妬みなど人が互いに信頼し合うことが
非常に難しい状況を生み出しています。
しかし多くの日本人がそのことに理解、関心を示
いろいろな問題が生じていることがわかっ
ることから醤油作りの際の小麦の粉砕にも利用でき
る。
また在庫として残っている味噌もすり味噌とし
て出荷することができるとわかったことは、大きな
今回消費者からのクレームをもとに問題を分析し、
収穫であった。
していません。国際協力に関わって初めて日本での生
改善策を立てること、
マーケティングの方法にもメス
真の平和は経済的向上によってのみもたらされ
活、そして文化、宗教を省みたという声を多くの若者
を入れアラハバードでの活動の理解とここでのブラ
るものではないと日本人がいくら訴えても、アラハ
が口にします。本会はそんな若者に彼らが考える機会
ンドの信頼と広げるための方法を考える。
バードの農民がまず考えるのはいくら現金、支援物
を与えることも国際協力に関わる団体として大きな
資がもらえるかということである。そしてライフス
責任であると考えています。田畑で懸命に汗を流しな
Ⅱ品質向上のための指導と助言活動
黒い味噌を敬遠するのでチャナ味噌(白)を半分混
タイルの変化した農民の生活には確かに経済的な安
がらも、お互いに協力しながら働く農民の姿を見て思
1
味噌について
ぜて出荷している。
定が欠落しています。
うことは、目の前にある食物、そして食事を共に囲む
①
問題
そのような過酷な状況の中で農民の要求を満た
噌くらいの黒さである。インドにいる日本人はこの
家族や共同体で共に生きる人々に多くの思いをはせ、
これについては味噌貯蔵庫の温度管理が影響が
米麹を作るときに米の蒸し方に問題があるため米
本当に心から感謝する心。日本人、インド人などの人
なプロジェクトを展開するために上記の有機農業組
種に関わらず、そのような心があれば人々の生活はよ
合を組織しました。
り豊かなものになるのではないかと日々アーシャの
め麹が十分生育できず味噌の中にざらざらした舌触
活動にかかわりながら考えています。
りの米が残りこれが味噌の品質を下げていた。
彼らがお互いの生活に関与しあい、地域のために助
(町上
広子
に十分熱が通らず芯が残ってしまう。
日本米と違いインドの米は蒸されにくい
アーシャ派遣食品加工担当)
そのた
がら生活を改善していく。そのプロセスの中には活
問題があった。
動に関わる全ての人への多くの学びの機会があり、
②
改善策
そして真の人間的な成長のプロセスがあるのではな
日本から新しく持ち込んだ蒸篭を使って米を蒸し
いか。このプロセスを共有しながら、実際的に農村
た。蒸し方のマニュアルを作成して実行してもらうこ
の生活を改善し、また一方で世界に住むすべての人
とにした。
蒸し方は
上下2段の蒸篭を使って上の蒸篭から
んでいく。そのような場所、すなわち共同体を作り、
蒸気が確認されてから30分待つ。水を上下それぞれ
少しでも多くの日本人、そしてインドの農村の人々
の蒸篭にふりかけ上下の蒸篭を入れ替えて30分蒸
に学びの機会を届けることが本会のささやかではあ
す。30分後上の蒸篭は、完成下の蒸篭は 10 分に完
るが着実な平和への寄与であると考えています。平
自分たちのプロジェクトに自信を持ち始めた食品
成。この繰り返しで米を蒸していく
和はただ望むだけではなく、確かなビジョン、経験、
加工担当の農村女性たちと高丸さん、町上広子
③結果
P6
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場でも30度以下で管理できることが望ましい。
また出来上がった味噌を使うときに、消費者にと
ってこの米が気になり悪い印象を与えているという
人間的成長を伴って初めて立ち現われるものである
大きい。現在の貯蔵庫の温度よりもさらに低く管理
できるようにすることが求められる。少なくても夏
け合い、そしてそれぞれの技術、知識をもちあいな
が共有しなければならない今日的な諸問題に取り組
インドの気候の関係から味噌の熟成が進み黒く
なってしまう問題があった。この黒さは愛知の豆味
しながら、日本人として彼らと協働し、真に自立的
有機農業組合、農村産業という共同体を通じて、
⑤その他
芯が無く 安定して米を蒸すことができた。マニュア
商品開発、マーケッテング開発に関する会議を
担当スタッフ、組合女性らと会議をする JAICAF
専門家。右から 2 番目高丸氏、3 番目、石原氏。
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