第1号 - オミックス基盤研究領域

理化学研究所
オミックス基盤研究領域
OSC ニュースレター No.1 2008 年 5 月
トピックス
HUGO 理研シンポジウム
理研シンポジウム
2008 年 4 月 5 日、OSC は、フィリピンで行われた HUGO-AP2008 ミーティングにおいて
「Transmissible Nucleic Acids」 と題するシンポジウムを主催し、日欧米の研究者たちによる最新の研究
成果の発表が行われました。
中でも会場から反響が大きかったのはフランス人研究者 Minoo Rassoulzadegan 博士の発表で、変異
マウスを用いた解析により、DNA 以外の物質が遺伝情報物質として機能している可能性を示したもので
す。詳細な解析から、DNA ではなく RNA が親から子に伝わることにより、子が親の特殊な形質を受け継
理研シンポジウムの招待講演者とオーガナイザー。
ぐことを示唆しました。(Nature 441, 469-474 (2006))。さらに、Rassoulzadegan 博士は、特定の RNA
でも同様の現象が起こることを紹介し、今まで知られていなかった RNA の新たな機能を報告しました。ま
た、OSC の川野光興 研究員は、遺伝情報物質として機能する RNA の同定を目的として、精子の中に
含まれる RNA を塩基配列決定法で同定した報告を行いました。
このセッションは昼食前の忙しい時間帯に行われたにもかかわらず、終了後も発表者と聴衆との間で白
熱した議論が交わされるなど、大変充実したものとなりました。
林崎領域長就任あいさつ
林崎領域長就任あいさつ
2008 年 4 月 10 日、オミックス基盤研究領域のスタートにあたり、林崎良英領域長が全所属員に向けて
所信を表明しました。
林崎領域長は「私たちの過去・現在・未来」と題してスピーチを行い、OSC の研究活動の方向性を示しま
した。この中で、林崎領域長は「OSC の 6 つの柱」を示し、これまでに行ってきた FANTOM の活動を多
角的に発展させる方向で研究を進めていくと述べました。
さらに、これを実現するためには、OSC の研究活動をこれまで以上に国際化すること、また、産業・大学・
その他教育・文化的機関など、外部との戦略的協力体制の構築に向けて一層の努力が必要であり、同
時に理研内部における連携、例えば施設の共同利用や共同研究も重要であるとの考えを示しました。中
でも、広報活動を充実させ、OSC の研究成果をより広く理解していただけるよう積極的に取り組む必要
性について強調しました。
今後 OSC では、社会に貢献できる組織の構築を目指しており、広報のあり方、女性研究者の育成、職
員や学生のキャリアパスの充実に向けてどのような取り組みができるかなどを検討するワーキンググル
ープを設立し、これらの課題に組織的に取り組む予定です。
サイエンスカフェ
2008 年 4 月 15 日、河合副領域長は、文部科学省に新設された「情報ひろば」で開催されたサイエンス
カフェに参加しました。サイエンスカフェとは、飲み物を飲みながら科学者と一般の参加者が科学に関す
るテーマについて気軽に語り合い、理解を深める催しです。河合副領域長は「あなたのゲノム解読しま
す」というテーマで、最近の技術の進歩で一気に身近になってきた遺伝子検査の現状を紹介する短いス
ライドを上映した後、約 20 名の人たちとの活発な意見交換や議論を楽しみました。とくに、自分のゲノム
情報を知りたいかという問題には多くの参加者がさまざまな考えを述べてくださいました。今後も、オミック
サイエンスカフェでは、活発な意見交換が行われま
した。
ス基盤研究領域では、技術の進歩とそれに伴うさまざまな情報を提供し、意見交換をする機会を積極的
に設けていく予定です。
南研究棟ギャラリー
南研究棟ギャラリー完成
ギャラリー完成
OSC の研究成果や、研究の社会的意義をより広く一般の方々に理解していただくための活動の一環とし
て、横浜研究所内の南研究棟に展示コーナーを設置しました。このギャラリーは 3 つのセクションから成
り立っており、最初のセクションはグラフィックを用いて、分子生物学の基礎的概念である“セントラルドグ
マ”を紹介しています。次のセクションでは理研マウスエンサイクロペディアプロジェクトで開発した機器が
展示されており、理研の歴史を垣間見る事が出来ます。展示されている機器は独自に開発したライブラリ
作成技術などとあわせて、“RNA 大陸”の発見や、その他の生命科学の分野における多くの発見に貢献
してきました。最後のセクションでは、OSC の現在の研究や技術について紹介しています。見学者の
方々にはガラス越しに最新鋭のシーケンサーが並ぶ解析施設を見ることができます。
ニュース
2008 年 3 月 24 日
南研究棟に新設した展示コーナーでは、研究の歴
史やこれまで活躍した機器を展示しています。
NHKラジオ
NHKラジオ第一放送
ラジオ第一放送、
第一放送、ラジオ夕刊
ラジオ夕刊
林崎領域長が『ラジオ夕刊』の番組の中で“RNA大陸”の発見と iPS 細胞作製への貢献について話をし
ました。
2008 年 4 月 3 日
日経新聞
山中伸弥教授(京都大学)の iPS 細胞の作製にあたり、FANTOM データベースが大きく貢献したことが
掲載されました。
国際学会における
国際学会における発表
における発表
エリック・アーナー:
エリック・アーナー: ”Transcriptomics leveraging the Genome Analyzer”, イルミナユーザーグループミ
ーティング、2008 年 4 月1日
ピエロ・カルニンチ:
ピエロ・カルニンチ: ”Transcriptome complexity analyzed by high-throughput sequencing analysis”,
BioRange Fonsortium Meeting (2008 年 3 月 5 日-6 日)、オランダ
ピエロ・カルニンチ、
ピエロ・カルニンチ、林崎良英:
林崎良英: “Cap-Analysis Gene Expression (CAGE) analysis of transcriptional
complexity and regulation.” ARG-Genomics Conference, 2008 年 4 月 9 日、エジンバラ国際会議セ
ンター、英国
林崎良英:
林崎良英: “Transcriptome Analysis – A Nay to Illuminate the Genome Network Joint Human
Genome”. Organization Meeting (HUGO) – Pacific meeting, 2008 年 4 月、セブ島、フィリピン
川野 光興:
光興: “RNA IN SPERM:Towards an identification of RNAs transmitting genetic information to
zygote” Organization Meeting (HUGO) – Pacific meeting, 2008 年 4 月、セブ島、フィリピン
ピエロ・カルニンチ他
ピエロ・カルニンチ他: ”Identification and cloning of an antisense transcript to the Parkinson
Disease-associated gene Uchi-1”. Keyston Symposia, 2008 年 3 月 25 日、ウィスラーリゾート、カナ
ダ
論文
英文原著
Omi N, Kiyokawa E, Matsuda M, Kinoshita K, Yamada S, Yamada K, Matsushima Y, Wang Y,
Kawai J, Suzuki M, Hayashizaki Y, Hiai H. Mutation of Dock5, a member of the guanine exchange
factor Dock180 superfamily, in the rupture of lens cataract mouse. Exp Eye Res. 2008 Mar 2;
[Epub ahead of print]
Kumamoto T, Togo S, Ishibe A, Morioka D, Watanabe K, Takahashi T, Shimizu T, Matsuo KI,
Kubota T, Tanaka K, Nagashima Y, Kawai J, Hayashizaki Y, Shimada H. Role of nitric oxide
synthesized by nitric oxide synthase 2 in liver regeneration. Liver Int. 2008 Apr 1; [Epub ahead of
print]
Nagashima T, Suzuki T, Kondo S, Kuroki Y, Takahashi K, Ide K, Yumoto N, Hasegawa A, Toyoda
T, Kojima T, Konagaya A, Suzuki H, Hayashizaki Y, Sakaki Y, Hatakeyama M. Integrative
genome-wide expression analysis bears evidence of estrogen receptor-independent transcription
in heregulin-stimulated MCF-7 cells. PLoS ONE. 2008 Mar 19;3(3):e1803.
和文総説
河合 純.ゲノム解析技術が可能にしたトランスクリプトーム研究とその応用, 水産育種, 37, 1-6 (2008)
Mar.