メンズビオレの開発について 花王 ビューティーケア スキンケア・ヘアケア

メンズビオレの開発について
花王㈱
1. ビューティーケア スキンケア・ヘアケア事業ユニット
スキンケア事業グループ 開発グループ
開発マネージャー 奥井一之
メンズビオレの誕生とその後の展開
メンズビオレは 1995 年にビオレの洗顔料の当時まだ珍しいメンズ専用ラインナップと
して発売された。シェービング関連で男性用の洗顔料はあったが、本格的なスキンケア
ブランドからの普及価格帯のメンズ専用を標榜した洗顔料は市場になく、発売直後から
大ヒットとなった。
その後、バリエーションやカテゴリーの拡張を重ね、現在は日本国内で 50 億円近い規模
の売上となっている。
比較的早く中華圏および東南アジアにも展開し、当時はまだ市場が未成熟で競合もいな
かったため、多くの国で 70%近いシェアを有していたが、その後、大手競合からのメン
ズ普及価格帯商品市場の参入もあり、現在は熾烈なシェア争いを各国で繰り広げている。
2. メンズビオレのブランド育成方針
メンズ普及価格帯の化粧品は、各国での男性の身だしなみ意識にあわせて開発されてい
る。メンズビオレはスキンケアを中心に展開しているが、日本ではメンズのスキンケア
ブランドであってもヘアケア、特に男性専用のヘアスタイリングの拡張ブランドが多い
のが特徴的で、日本の若年男性の関心が髪型にあることを反映しているともいえる。
一方、中華圏および東南アジアでは女性用のスキンケアブランドの男性向けとしてブラ
ンドが拡張され○○for MEN.などとオリジナルの女性ブランドのスキンケアイメージを
生かした展開がなされている。確かに各国の街を見渡してみると普及価格帯商品が対象
とするようなアジアの一般男性は日本ほど長髪も多くなくアレンジも乏しい。男性専用
の強いヘアスタイリングブランドもあまり存在していないことからも、中華圏および東
南アジアの男性は当初からスキンケアを目的としたブランド選択がされていると考えら
れる。
このような違いから、メンズビオレの商品の開発は日本と中華圏および東南アジアでは
異なったアプローチで商品開発を行っている。
すなわち、日本では多くのヘアケア出身の競合ブランドに対し、ビオレで培った洗浄を
中心にしたスキンケア出身のブランド特性を生かした、肌へのこだわり、やさしさを重
視する男性ニーズに合わせた商品の開発を行っている。一方、中華圏および東南アジア
ではクリームなど保湿シリーズを有した本格的スキンケアブランドに対し、スキンケア
エントリーユーザーが最初に購入する洗顔料に特化した、わかりやすい洗顔の専門ブラ
ンドとして存在を高めている。
3. メンズビオレの商品開発
ターゲットニーズの違いから、商品の開発も日本と中華圏および東南アジアでは異なっ
ている。ビオレである以上、洗浄をコアにした商品作りは共通であるが、日本では消費
者の肌に対するこだわるユーザーに対し、「泡」や「使用後の肌の感じ」「タイプ別に違
う繊維を使用したシート商品」などの形で「肌へのこだわり(やさしさ)」を具現化し、
わかりやすく提供している。
一方、中華圏および東南アジアでは洗浄に対するプロのブランドとエントリーユーザー
へのわかりやすさを目指し、「機能別のバリエーション」「独自開発のノンポリエチレン
系スクラブ剤により高洗浄力」などの技術を軸に展開している。
今後も各国の男性のニーズの変化に合わせ、ビオレの技術を組み合わせた、良心的な商
品作りを続けていきたい。
ブロス 『着心地快適』を形にする商品開発
㈱ワコール ウイングブランド事業本部
メンズインナー商品営業部 商品企画課
課長 赤野美紀
〇メンズインナービジネスについて
ワコールのメンズビジネスは、量販店ブランド「BROS」が1991年にデビューし、今
年で24年目となる。
その間に量販店市場では、2010年にシニア世代を応援するメンズインナーブランド「H
AI」を、2012年同じくシニア世代向け「BROS
GRANDE」がデビューしてい
る。
世の女性に美しくなっていただきたいと願い続けてきたワコールの一員として、男性にも美
しさに対して様々な知見を発揮すること、マニアックなまでに男性の心地よさを追求するこ
とを信条として日々活動している。
〇ブロスのアンダーウェアだからこそできること
ワコールには人間科学研究所があり、
「かたちの研究」、
「動きの研究」、
「ここちよさの研究」、
「新製品の開発と製品評価研究」
「女性美の研究」これらの領域について、研究が進められて
いる。
これらから得られる人間情報をもとに、フィッティング中に感じる不満・問題を解決し、着
心地快適を形にしている。
〇通気性の良さ
脇やひざ裏といった皮膚が重なる部分は熱がこもりやすく、ムレやすい。同じようにヒップ
部分やフロント部分も熱がこもりやすく、ムレやすい。この問題解決の一つの方法として開
発されたのが「ダブルエアスルーパンツ」である。
コンセプトはアンダーウェア内に風を通す。メッシュ素材と通常素材の通気度に差を持たせ
ることによって歩くことによって生じる風を股のメッシュ部分から入れて、フロント上部や
バック上部に配置されたメッシュ部分から抜けさせるようにしている。
〇はきごこちの良さ
歩くときの股部分、座るときのヒップ部分等、動いたり姿勢が変わることで、カラダの一部
の皮膚が大きく伸びたり、縮んだりする。通常は生地の伸縮性で対応するが、例えば座った
時のヒップの皮膚の伸びは通常の2倍になる等、生地の伸縮性だけでは対応しきれないこと
もある。結果、特定箇所に負荷がかかり引っ張られることによって、下着がずれてしまう。
この課題に対して、皮膚の伸び方向と生地の伸び方向を合わせる、例えばヒップの場合、ヨ
コ方向に伸びる生地を配置するといった工夫をすることで、皮膚の伸び縮みに対応し、ずれ
にくく快適な着用感が得られるようになる。
〇さまざまな着心地快適
男性部に対する設計仕様や寒い、暑いといった感覚に対しての着心地快適についても紹介す
る。
コンプレッションウェア素材について
セーレン㈱
研究開発センター
商品開発第二グループ
主管 坪田俊弘
1.コンプレッションウェアについて
コンプレッションウェアとはスポーツを科学することで生まれてきたスポーツウェアです。
筋肉または体の一部をサポートすることで運動のパフォーマンスを向上させるものであり、
筋肉の振動を抑制することによる筋肉の疲労軽減、スタミナの向上や筋肉の感覚を調整して
集中力を高めることで実現しています。また、体の一部や関節などの動きを制御することで
運動フォームの安定化などの目的にも使用されています。
各スポーツアパレルメーカーはコンプレッションウェアを独自のスポーツ運動理論に基づ
き各競技向けに適したウェアを開発しており、野球、サッカー、ゴルフのトッププロの選手
がそれらを着用している場面をよく目にします。また、ランニングブームの中、一般の方も
コンプレッションウェアを着用してランニングする姿を多く見かけるようになってきました。
また、同様な素材、技術を用いて女性用の体型補正やシェイプアップを目的としたガードル
などのインナーウェアへも応用されています。
2.コンプレッションウェア素材の現状
コンプレッションウェアは、全体または部分的に着圧機能を設けて筋肉をサポートすると
いう主目的から、体に密着させるアンダーウェアが主流となっており、密着させる観点から
素材は主にポリウレタン糸を使用した伸縮性を有するニット素材が多く用いられています。
このような素材において、体のある部分は伸縮性を大きくして体の動きを阻害しないように、
ある部分は伸縮性を抑えて、筋肉をサポートするということが、ウェア自体に求められます。
ウェアにおいては部分的に異なる伸縮性の制御が必要であり、このような物性要求に対して、
一般的に伸縮性の異なる素材(伸長応力の異なる素材)の組み合わせや素材の重ね合わせに
よる組み合わせを、縫製のパターン切り替えにより対応しています。また、伸長応力特性の
異なる樹脂シートを貼り合わせた製品、編み組織により伸長応
力を制御させた製品なども数多く見受けられます。最近では
種々の競技において必要な関節、筋肉の動きに対応したコンプ
レッション理論が進化し、それに基づいて制御のパターンも複
雑化しており、そのような要求に合わせて縫製パターン数も多
くなっています。さらに、一般の消費者へもコンプレッション
ウェアの認知が進む中、単に運動機能だけではなく、意匠性、
肌に対する触感やダメージを意識したものなど、様々な要望に
対応した商品が求められるようになってきています。
このような現状の中、当社におきましてもコンプレッション
ウェア用の素材を各スポーツアパレルメーカーに対して提案
を行っており、それらの素材内容についていくつかご紹介します。
3.ご紹介するコンプレッション素材について
①樹脂を接着、または繊維素材に直接塗布して硬化させた素材
②抜蝕技術(繊維の分解)を応用した素材
③編み組織を応用した素材
コンプレッションウェア例
化粧品における紫外線防御と紫外線吸収剤の国内外の動向について
BASF ジャパン㈱ 高性能製品統括本部
テクニカルサービス
ケア・ケミカルズ事業部
マネージャー 正木功一
紫外線の皮膚への有害な影響が消費者に広く認知されたことにより、世界のサンケア市場
(日焼け止め)は、毎年 5%を超える伸びを示している。日本においても日焼け止め化粧品と
いうカテゴリーで 400 億円を超える市場規模となっている。
日本でも光老化を考慮した UVA 防御への意識の高まりに伴い、2013 年 1 月から UVA 防
御に対して新たな基準として PA4+の表示が始まり、日焼け止めだけでなくデイリーケア製
品でも、比較的高い紫外線防御効果を訴求する製品の増加がみとめられる。
サンケア化粧品では、まず製品の安全性が高いこと、紫外線防止効果が高いこと、また、
自然な仕上がりが消費者に好まれる化粧品では塗布時に透明であること等が、必須条件であ
る。そして効果的な UVB 防御を実現するために、これまで汎用的に使用されている UVB 吸
収剤のメトシキケイヒ酸エチルヘキシル(EHMC)だけでなく UVB 防御効果の高いエチル
ヘキシルトリアゾン(EHT)が配合された製品も増加している。一方で UVA 防御に対しては
光安定性の低い UVA 吸収剤に代わって、光安定性が高い UVA 吸収剤であるジエチルアミノ
ヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(DHHB)や UVB から UVA までブロードにカバー
するメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(MBBT)やビスエチ
ルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(BEMT)の配合された製品も増
えてきている。
更に、従来の紫外線吸収剤での防御が充分でなかった UVAII 領域に強い吸収能をもつ紫外
線吸収剤トリスビフェニルトリアジン(TBPT)も近年開発され、ポジティブリストへの登録
が進められている。
最近のヨーロッパ市場では、いくつかの消費者団体によって フリー・フロム
処方が評価
され、紫外線吸収剤では、これまでのベンゾフェノンだけでなくオクトクリレン(OCR) な
どが フリー・フロム の対象となっている。
また長波長紫外線 A 波(ロング UVA)防御や高エネルギー可視光線、赤外線への防御を訴求
した製品が上市され始めている。
日焼け止め化粧品を皮膚に塗布して適切に紫外線から防御するためには、効果の高い紫外線
吸収剤を選択することに加えて、日焼け止め化粧品の皮膚上での塗膜形成の状態を正しく評
価することが重要である。Vitro での評価方法についての検討の一例を紹介する。
長波長紫外線 A 波(ロング UVA)の防御効果向上とテクスチャーの追及
日本ロレアル㈱
リサーチ&イノベーションセンター 学術部
部長 實川節子
地表に届く紫外線エネルギーの内で大きな部分を占める紫外線 A 波(UVA、320-400 nm)
は、皮膚に深く浸透し、活性酸素種(ROS)を発生させ、生体に免疫抑制や発癌などの障害を与
えることがこれまでの研究で示されています。また、皮膚においてはシミ、シワ、タルミな
どの光老化の原因と考えられており、UVA 防御の重要性が一般にも広く知られてくるように
なりました。
UVA の中でも長波長領域の UVA-1(340-400 nm)は地表に届く紫外線の 75-80%を占め、
地球上の生物は年間を通じてこの長波長の UVA(ロング UVA)にさらされています。
紫外線の照射によって、皮膚の細胞では遺伝子の情報がタンパク質や細胞機能に変換される
過程である「遺伝子発現」に変化が起こることはわかっていましたが、ロレアルリサーチ&
イノベーション(R&I)では、29,000 もの遺伝子を研究することによってロング UVA でも
遺伝子発現に変化が起こることが確認されました。
再構築皮膚モデルを用いた実験では、ロング UVA の照射直後に皮膚モデル中に ROS の発生
が確認され、48 時間後には真皮上層の線維芽細胞の消失が見られました。さらに照射 6 時間
後には検討した 29,000 遺伝子のうち、ケラチノサイトや線維芽細胞においてそれぞれ 400
以上の遺伝子の発現が変化していました。特に発現量が大きく変化した遺伝子(2 倍以上に
増加あるいは半分以下に減少)は、ケラチノサイトで 111 個、繊維芽細胞で 110 個ありまし
た。その中ではあらかじめ生体に備わっている免疫力(先天性免疫)に関する遺伝子、発達
−増殖−細胞死−ガンに係る遺伝子、UV や ROS などのストレスに対応する遺伝子が多く、
また繊維芽細胞では細胞外マトリックスに関連する遺伝子の変化も観察されました。これら
の遺伝子発現の影響変化により、ROS が起こすメラニンの酸化による皮膚の色の変化、細胞
外マトリックスを始めとする皮膚構造の変化、皮膚細胞の機能の変化が生じ、これらを通し
て、シミ、シワ、タルミなどの光老化症状を引き起こすと考えられます。
ラ ロッシュ ポゼ から今夏日常の紫外線対策用に発売された UV イデア アクア フレッシ
ュジェル クリーム
SPF 30/PA++++は、紫外線防御剤を数種組み合わせることによって、
このロング UVA 領域に対する防御効果をこれまで以上に向上させています。また、この製品
はアジアの気候に合わせたさっぱりとしたみずみずしいテクスチャーが特徴で、
処方開発では UV 防御剤を含む油層と水層のバランスに注力しました。また、伸びがよくス
ムースなテクスチャーを得るためにテストを繰り返し、多くの界面活性剤の中から最良のも
のを選択し、最適な配合量を決定することに努力を払いました。こうして出来上がった製品
は日本をはじめとするアジアの消費者の方々から高い評価を得ています。