エコフィードの肉豚給与に関する研究(第3報) −脂肪融点の低下を防ぐ給与体系の検討− お お が ともひで お お た たけひろ あきともいちろう おかむら ゆ か 大賀友英・太田壮洋 * ・秋友一郎・岡村由香 要 旨 都市厨芥を乾燥後に脱脂して製造したエコフィードを用い、市販配合飼料に対するその代替率を、肥育前期及 び肥育後期を通して30%として肥育豚に給与すると、豚の体脂肪の融点が低下するため、脂肪融点の低下を抑え ることのできる給与体系を検討した。 市販配合飼料の重量比10%をエコフィードで代替し、肥育前期及び後期を通して給与する10-10%区、肥育前 期で30%、肥育後期で10%を代替し給与する30-10%区を設けた。また、エコフィードの代替率は30-10%区と同 じとし、市販配合飼料の一部を安価なふすまで置き換えて、給与飼料のTDNを市販配合飼料と同等に調整した 30-10%調整区を設けた。 1 30-10%区は対照区に比べて飼料要求率が低くなる傾向にあり、発育成績は最も良好であった。30-10%調整 区は、対照区と比べて肥育前期でDGが低く、飼料要求率が高くなる傾向があった。 2 いずれの区分でも、格付を含めた枝肉成績に影響は認められなかった。 3 体脂肪中のリノール酸やα−リノレン酸の比率が対照区に比べて高くなる区分が認められたが、いずれの区 分でも脂肪融点に差はなかった。 4 30-10%区は飼料費の低減に有効であったが、10-10%区及び30-10%調整区では必ずしも飼料費の低減に効 果があるとは言えなかった。 以上のことから、エコフィードを肥育豚に給与する場合、代替率を肥育前期で30%、肥育後期で10%とするこ とにより、豚肉の脂肪融点の低下を抑えることができる。また、飼料要求率は低くなり、上物率も市販配合飼料 を給与する場合と遜色なく、肥育に掛かる飼料費を低減することができる。 Ⅰ 緒 言 た。しかし、代替率が30%を超えると豚の体脂肪の融 本県では、平成18年4月から食品製造工場 、コンビ 点が低下し、解決すべき課題として残った。 ニエンスストア 、学校給食などから発生する調理屑 、 そこで 、本研究では、肥育後期 でエコフィードの代 売れ残り食品や食べ残しなどの都市厨芥 を乾燥・脱脂 替率を低くし、脂肪融点の低下を抑える給与体系を検 した飼料(以下、エコフィード)の製造・販売がスター 討した。また、エコフィードの代替により高くなった トしたが、近年の配合飼料価格高騰の影響もあり、安 可消化養分総量 (以下、TDN)を、より安価な単味飼 価なエコフィードは一部の養豚農家で利用され始めて 料を加えることで市販配合飼料と同等に調整し、飼料 いる。しかし、養豚農家では給与飼料を変えることに 費をさらに低減させることを目的として、ふすまの 利 よる豚の肉質の変化を危惧しており、肉質への影響が 用について検討した。 ない給与方法の確立が求められている。 第2報1 )では、市販配合飼料に対するエコフィード の代替率(以下、代替率)を、肥育前期及び肥育後期 を Ⅱ 1 材料及び方法 試験期間 通して一定として肥育豚に給与し、エコフィードは飼 試験1:平成19年7月18日∼平成19年11月14日 料要求率の改善や飼料費の低減に有効であり、代替率3 試験2:平成19年11月14日∼平成20年2月28日 0%程度を上限に利用するのが適当であることを報告し *現田布施農林事務所 - 34- 2 供試家畜 エコフィードは、試験期間中に数回のロットに分け 試験1では2頭の繁殖雌豚から生産された三元交雑種 て調達し、それぞれ一般成分を分析した。また、試験 (LWD、平均体重32.3±4.0kg、平均日齢79.8±4.3日) 1及び試験2で給与したエコフィードのTDNについ 16頭(去勢雄4頭、雌12頭)を用い、体重及び性の影響 ては、(社)日本科学飼料協会に分析依頼した。分析に を考慮して1群4頭に振り分け、試験2では3頭の繁 当たっては、平成15年度リサイクル飼料調査事業にお 殖雌豚から生産された三元交雑種(LWD、平均体重38. いて作成された検量線を用いて、近赤外分析 により栄 5±5.5kg、平均日齢95.4±3.4日)20頭(去勢雄12頭、雌 養価が推定された。 8頭)を用い、試験1と同様に1群5頭に振り分けた。 5 飼料は不断給餌 、飲水はウォーターカップによる自由 発育調査 毎週1回の体重測定並 びに飼料給与量と残飼量か 飲水とした。 ら、1日平均増体量(以下、DG)、飼料摂取量及び飼 3 料要求率を求めた。 試験区分 肉豚肥育用の市販配合飼料(以下、市販配合飼料)の 試験豚は体重が105 kgを越えたものから 、数回に分 重量比10%をエコフィード で代替した飼料を、肥育前 けて公設と畜場に出荷した。 期及び後期を通して給与する試験区を設け10-10%区と 6 枝肉調査 した。また、市販配合飼料の重量比30%をエコフィー 試験豚はと畜場において1日絶食した後にと畜し、 ドで代替した飼料を肥育前期 で、10%を代替した飼料 と畜後2日間冷蔵庫内で放冷した後、右半丸枝肉を用 を肥育後期で給与する30-10%区を設けた。 いて、日本養豚協会と体審査標準 に従って枝肉歩留 、 また、肥育前期で市販配合飼料の重量比30%をエコ と体長、と体幅、背腰長Ⅰ、背腰長Ⅱ、肩脂肪厚、背 フィード、14%をふすまで代替し、肥育後期で10%を 脂肪厚、腰脂肪厚及びロース断面積を測定した。なお、 エコフィード、6%をふすまで代替し、TDN を市販 ロース断面積は、試験1では雌2頭、試験2では去勢 配合飼料と同等に調整した30-10%調整区を設けた。な 雄及び雌それぞれ1頭について測定した。 お、配合設計に当たって、エコフィード のTDNは、 7 2) 第1報 1) 及び第2報 でTDNを調査した12サンプル の平均値88.7%を採用した。 ロース断面積を測定した各区2頭について、枝肉調 査を行った後に部分肉にカットし、2日間冷蔵保管 し 対照区には市販配合飼料を給与した。 たロース の最後胸椎部分を切断し、最後胸椎 から後方 なお、市販配合飼料の形状は肥育前期及び肥育後期 の胸最長筋を採材して肉質調査を実施した。 ともにマッシュ であり、前後期飼料の切り換えは、平 均体重が70kgを超えた時点で行った。 肉色については 、測色色差計(JS555、(株)カラーテ クノシステム製)により色調を調査した。肉の水分は、 給与飼料のTDNは〔表1〕のとおりである。 4 肉質調査 ミンチにした試料肉を105℃で16時間加熱乾燥して測定 給与飼料 し、筋肉内脂肪量(以下、IMF )は、水分測定に使用 給与したエコフィードは、食品製造工場の調理屑、 学校給食の食べ残し、コンビニエンスストアの廃棄弁 した乾燥試料を用い、エーテル抽出法により測定した。 保水力及び伸展率は加圧濾紙法により測定した。 当などを減圧乾燥機(SC-3000UM、エスイーバイオマス また、脂肪融点及び脂肪酸組成測定用の試料として、 テクノ株式会社製)により70℃6時間で乾燥後、圧搾機 第4∼5胸椎部の背脂肪内層を枝肉から採取して−20 により脱脂した飼料で、株式会社宇部衛生工業社(宇部 ℃で冷凍保存し、上昇融点法により脂肪融点 を、五訂 市)が「きららミール」として製造・販売しているものを 日本食品標準成分表分析マニュアル 3)及び市原ら4) の 用いた。 方法により脂肪酸の分析を行った。 表 1 給 与 飼 T D 1 0 - 1 0 % 料 の 区 N 区 分 3 0 - 1 0 % 区 前 期 7 9 . 9 8 1 . 9 7 9 . 0 7 9 . 0 後 期 7 8 . 1 7 8 . 1 7 7 . 0 7 7 . 0 - 35- 3 0 - 1 0 % 調 整 区 対 照 区 8 経済性 試験1では、肥育前期 のDGは、30-10%調整区 で 肥育前期及び肥育後期の市販配合飼料の単価を45円 いずれの区分と比べても有意に低くなった (P<0.05) /㎏、エコフィードの単価を30円/㎏と設定して各区 が、肥育後期では有意差はなく、全期間でも有意差は 分の飼料単価を算出し、試験期間中の飼料摂取量を乗 認められなかった。全期間の1日当たり飼料摂取量は、 じ、供試豚全頭の増体量で除して、増体1㎏に必要な 10-10%区で最も多く2.65kgであった。全期間の飼料要 飼料費を試算した。また、対照区 に対する各試験区 の 求率は、対照区に比べて30-10%区で低く、30-10%調 飼料費の低減率を求めた。 整区で高くなる傾向があった。 試験2では、肥育前期 のDGは、いずれの区分でも Ⅲ 1 結果及び考察 有意差はなかったが、肥育後期では30-10%区でいずれ の区分と比べても有意に高くなり(P<0.05)、全期間で 給与飼料 エコフィード及び市販配合飼料の一般成分と栄養価 も30-10%調整区及び対照区に比べて有意に高かった(P <0.05)。全期間の1日当たり飼料摂取量 は、30-10% を〔表2〕に示した。 試験1で使用したエコフィードは粗蛋白質含量19.2 %及び粗脂肪含量8.8%、試験2で使用したエコフィー 区で最も多く2.90kgであった 。全期間の飼料要求率は、 対照区に比べて30-10%区で低くなる傾向があった。 ドは粗蛋白質含量17.8%及び粗脂肪含量10.4%であっ 両試験において、30-10%区は対照区に比べて飼料 た。また、近赤外分析によるエコフィードのTDNは、 要求率が改善される傾向にあり、成績は最も良好であ 試験1で90.1%、試験2で93.2%と推定された。 った。30-10%調整区は、対照区と比べて全期間ではD よって、エコフィードは、市販配合飼料に比べて高 Gや飼料要求率 に有意差はなかったものの、肥育前期 蛋白質、高脂肪でTDNが高く、第1報 及び第2報 でDGが低く、飼料要求率が高くなる傾向があった。3 と同様の傾向であった 。しかし、粗蛋白質及び可溶無 0-10%調整区では、TDNを対照区と同等に調整して 窒素物の標準偏差は、第2報 の値に比べて小さくな おり、供試豚の飼料摂取量 も差がないにも関わらず、 っており、エコフィードの成分のばらつきは小さくな 同等の発育を示さなかったことについては、ビタミン り、安定してきたものと考えられた。 やミネラルなどの不足が要因として考えられた。 2) 2 1) 1) 発育成績 各試験の発育成績を〔表3〕及び〔表4〕に示した。 表2 エコフィード及び市販配合飼料の一般成分と栄養価 エコフィード 市販配合飼料 乾物中(%) 水分 (%) 粗蛋白質 粗脂肪 可溶無窒素物 粗繊維 粗灰分 TDN (%) 試験1 11.0±0.39 19.2±2.14 8.8±1.14 66.1±3.11 0.9±0.17 4.9±0.25 90.1±2.76 試験2 10.9±1.52 17.8±1.63 10.4±0.70 66.5±2.96 0.7±0.24 4.6±0.76 93.2±2.67 前期 − 16.0以上 3.0以上 67.0以上 6.0以下 8.0以下 79.0以上 後期 − 15.0以上 2.0以上 69.0以上 6.0以下 8.0以下 77.0以上 区分 注1)平均±標準偏差(試験1:n=5、試験2:n=4) 注2)TDNは、(社)日本科学飼料協会による推定値で、平成15年度リサイクル飼料調査事業において 作成した検量線を用い近赤外分析により行われた。 注3)市販配合飼料の値は、飼料表示票による。 - 36- 表 3 発 育 1 0 - 1 0 % 区 績 ( 区 分 開 始 時 日 体 重 ( k g ) 摂 取 D G 飼 料 3 0 - 1 0 % 区 成 験 1 ) 齢 ( 日 前 飼 料 要 求 率 始 時 日 齢 体 重 D G 飼 料 ( k g ) 摂 取 量 飼 料 要 求 率 開 始 時 日 齢 調 体 重 ( k g ) 整 区 D G 飼 料 対 照 区 取 量 飼 料 要 求 率 開 始 時 日 齢 体 重 ( k g ) D G 飼 料 摂 取 量 要 3 2 . 4 ± 4 . 3 1 7 3 . 1 ± 6 . 1 3 3 2 . 4 ± 4 . 3 1 時 7 3 . 1 ± 6 . 1 3 1 0 8 . 3 ± 1 . 6 6 1 0 8 . 3 ± 1 . 6 6 0 . 7 8 ± 0 . 0 8 0 . 8 1 ± 0 . 0 9 ( k g / 日 ( 日 ) ( 日 ) 6 . 5 3 1 . 7 5 1 0 9 . 6 ± 1 . 7 5 0 . 8 3 ± 0 . 0 9 0 . 7 1 ± 0 . 0 5 ( k g / 日 ( 日 ) 体 重 ( k g ) D G 飼 料 摂 取 量 飼 料 要 求 率 開 始 時 日 齢 体 重 ( k g ) 摂 取 量 飼 料 要 求 率 開 始 時 日 齢 体 重 ( k g ) D G 飼 料 摂 取 対 量 飼 料 要 求 率 開 始 時 日 齢 体 重 ( k g ) 照 区 注 注 ) ) 平 縦 均 列 D G 飼 料 摂 取 量 飼 料 要 求 率 ± 異 標 文 準 偏 差 字 間 に ( 有 b 1 . 9 9 3 . 1 3 3 . 2 ) 2 . 4 8 3 . 8 8 1 . 5 ± 5 . 2 0 1 3 0 . 5 ± 3 . 5 5 . 2 0 1 7 9 . 5 ± 4 . 2 0 開 始 時 3 3 . 3 ± 3 . 2 3 7 1 . 1 ± 5 . 6 9 3 3 . 3 ± 3 . 2 3 終 了 時 7 1 . 1 ± 5 . 6 9 1 0 8 . 0 ± 1 . 7 3 1 0 8 . 0 ± 1 . 7 3 0 . 7 5 ± 0 . 0 7 0 . 7 6 ± 0 . 0 4 ( k g / 日 ) ( a 2 . 0 0 2 . 7 9 2 . 3 9 2 . 6 3 . 7 3 . 1 0 . 0 5 ) ) 前 齢 1 0 . 5 0 1 0 9 . 6 ± 2 区 1 8 7 . 3 ± 7 0 . 6 ± 7 . 6 4 験 整 0 . 0 0 時 績 日 2 . 9 1 4 0 . 0 ± 了 成 調 3 . 2 7 7 . 0 ± 0 . 0 0 終 育 時 2 . 3 3 3 1 . 6 ± 発 3 0 - 1 0 % 2 . 8 3 7 . 6 4 0 . 0 7 1 . 9 6 7 0 . 6 ± 4 区 2 . 9 6 0 . 8 0 ± 3 1 . 6 ± 6 . 5 3 表 G 1 0 9 . 9 ± 0 . 1 1 時 n = 4 ) 意 差 ( P < 料 2 . 9 6 0 . 8 9 ± 始 ( 有 D 1 0 9 . 9 ± a 開 率 飼 2 . 3 2 2 . 7 ) 求 3 1 . 8 ± 7 3 . 1 ± 2 . 2 6 準 偏 差 字 間 に 2 . 2 6 時 料 3 . 3 0 7 3 . 1 ± 了 標 文 3 0 - 1 0 % 1 7 7 . 3 ± 終 k g / 日 3 . 3 4 . 5 0 3 1 . 8 ± 2 . 3 2 飼 4 . 0 1 3 5 . 3 ± 時 ( 2 . 6 5 7 9 . 3 ± 4 . 5 0 始 ± 異 区 3 . 0 7 開 始 a 2 . 2 7 2 . 7 ) 均 列 開 間 1 0 . 4 2 時 平 縦 試 期 了 ) ) ( 全 1 7 6 . 0 ± 始 注 注 分 期 5 . 2 0 終 0 . 7 7 ± 0 . 0 5 区 後 1 3 0 . 5 ± 開 0 . 6 2 ± 0 . 0 5 摂 1 0 - 1 0 % 期 8 1 . 5 ± 5 . 2 0 0 . 7 4 ± 0 . 0 7 3 0 - 1 0 % ) 0 . 8 3 ± 0 . 1 0 量 開 試 日 ) 期 後 期 3 8 . 5 ± 6 . 0 8 時 3 8 . 5 ± 6 . 0 8 7 3 . 6 ± 6 . 9 1 終 了 時 7 3 . 6 ± 6 . 9 1 1 1 1 . 3 ± 1 . 2 8 0 . 8 4 ± 0 . 0 9 0 . 8 1 ± 0 . 0 5 2 . 3 6 3 . 1 4 ( 日 ) 2 . 8 ) 間 1 8 3 . 8 ± 8 . 3 5 始 k g / 日 期 1 3 7 . 4 ± 3 . 7 1 開 ( 全 9 5 . 4 ± 3 . 7 1 1 1 1 . 3 ± 1 . 2 8 b 3 . 4 1 3 7 . 4 ± 3 . 7 1 1 7 8 . 2 ± 1 3 . 3 9 開 始 時 3 8 . 7 ± 4 . 9 5 7 5 . 2 ± 9 . 8 0 3 8 . 7 ± 4 . 9 5 終 了 時 7 5 . 2 ± 9 . 8 0 1 1 4 . 7 ± 2 . 9 7 1 1 4 . 7 ± 2 . 9 7 0 . 8 7 ± 0 . 1 6 0 . 9 9 ± 0 . 1 5 2 . 4 7 3 . 3 5 ( k g / 日 ( 日 ) 2 . 9 ) 開 始 時 3 8 . 3 ± 6 . 0 4 終 了 時 7 7 . 6 ± 1 1 . 6 5 ( k g / 日 ( 日 ) 3 . 2 7 7 . 6 ± 1 1 . 6 5 0 . 8 0 ± 0 . 0 6 3 . 1 9 3 8 . 3 ± 6 . 0 4 1 1 0 . 7 ± 4 . 4 1 b 0 . 8 0 ± 0 . 0 7 3 . 4 1 3 7 . 4 ± 3 . 7 1 1 8 7 . 2 ± 1 3 . 2 2 開 始 時 3 8 . 3 ± 6 . 8 9 7 5 . 0 ± 7 . 5 8 3 8 . 3 ± 6 . 8 9 終 了 時 7 5 . 0 ± 7 . 5 8 1 1 2 . 0 ± 2 . 7 4 1 1 2 . 0 ± 2 . 7 4 0 . 8 7 ± 0 . 0 7 0 . 7 6 ± 0 . 0 8 2 . 4 6 2 . 8 8 2 . 6 9 2 . 8 3 . 9 3 . 4 ( k g / 日 ) n = 5 ) 意 差 ( P < 0 . 0 5 ) - 37- b 2 . 6 9 3 . 9 9 5 . 4 ± 3 . 7 1 a 1 8 7 . 2 ± 1 0 . 8 9 1 1 0 . 7 ± 4 . 4 1 2 . 2 9 0 . 9 3 ± 0 . 1 3 2 . 9 0 1 4 6 . 4 ± 3 . 7 1 0 . 7 7 ± 0 . 1 4 3 . 0 ) a 3 . 5 9 5 . 4 ± 3 . 7 1 a b 2 . 7 7 3 . 9 9 5 . 4 ± 3 . 7 1 0 . 8 3 ± 0 . 0 5 b 0 . 8 1 ± 0 . 0 8 b 3 枝肉成績 試験2においても、枝肉歩留、と体長、と体幅、背 各試験の枝肉成績を〔表5〕及び〔表6〕に示した。 腰長Ⅰ、背腰長Ⅱ、肩脂肪厚、背脂肪厚及び腰脂肪厚 試験1では、枝肉歩留 、と体長 、と体幅、背腰長Ⅰ、 において 、各区間で有意差 は認められなかった。上物 背腰長Ⅱ、肩脂肪厚、背脂肪厚、腰脂肪厚及びロース 率は、10-10%区で80%、30-10%区で60%、30-10%調 断面積において、各区間で有意差は認められなかった。 整区で60%、対照区で80%となり、各区で背厚や被覆 10-10%区で背厚や被覆による格落が認められ、上物率 による格落があったが 、試験1と同様に軟脂による格 は50%と最も低くなった。対照区における背奇形によ 落は認められなかった。 る格落については、生体時の外貌に異常は認められな 以上のことから 、脂肪厚においては個体差が認めら かったが、先天的なものか乗駕により負傷したことな れたものの、軟脂による格落は認められず、枝肉成績 どが原因として 考えられた。また、軟脂による格落は に対するエコフィード給与の影響はなかったものと 考 いずれの区分でも認められなかった。 えられた。 表 5 枝 肉 成 績 (試 験 1 ) 区分 10-10% 区 30-10% 区 30-10% 調 整 区 対照区 出 荷 体 重 (kg) 108.3±1.66 109.9±2.96 109.6±1.75 108.0±1.73 枝 肉 重 量 (kg) 72.7±1.11 72.0±1.24 72.8±2.11 70.3±1.67 枝 肉 歩 留 (%) 67.1±1.65 65.6±1.07 66.4±1.27 65.1±0.52 と 体 長 (cm) 93.8±2.22 96.3±0.96 95.6±1.80 93.8±3.30 背 腰 長 Ⅰ (cm) 80.3±3.93 80.5±1.29 80.1±1.25 77.4±3.35 背 腰 長 Ⅱ (cm) 69.4±1.70 71.9±0.85 71.5±1.58 69.0±3.34 と 体 幅 (cm) 33.5±1.68 34.4±0.63 33.9±0.75 34.3±0.96 肩 脂 肪 厚 (cm) 3.7±0.48 3.4±0.34 3.5±0.25 3.5±0.29 背 脂 肪 厚 (cm) 2.0±0.50 1.7±0.29 1.5±0.31 1.4±0.46 3.0±0.18 2.6±0.08 2.7±0.25 2.7±0.36 23.3±0.78 22.5±7.14 21.7±1.41 19.9±3.46 腰 脂 肪 厚 (cm) 2 ロース断 面 積 (cm ) 上物率(%) 50 格落理由 100 背厚、被覆 75 75 均称 背奇形 注 ) 平 均 ± 標 準 偏 差 ( n=4) 、 ロ ー ス 断 面 積 は n=2 表 6 枝 肉 成 績 (試 験 2 ) 区 分 10-10% 区 30-10% 区 30-10% 調 整 区 対照区 出 荷 体 重 (kg) 111.3±1.28 114.7±2.97 110.7±4.41 112.0±2.74 枝 肉 重 量 (kg) 75.8±1.36 77.2±2.04 74.7±2.04 76.6±2.64 枝 肉 歩 留 (%) 68.1±0.59 67.3±0.84 67.5±0.91 68.3±1.24 と 体 長 (cm) 93.4±0.89 94.9±2.61 93.0±1.87 93.0±0.71 背 腰 長 Ⅰ (cm) 78.0±1.06 79.5±2.09 77.4±1.52 77.5±1.00 背 腰 長 Ⅱ (cm) 70.6±1.14 71.6±1.39 69.2±1.60 69.4±1.47 と 体 幅 (cm) 35.1±0.74 34.8±0.27 34.3±0.84 35.1±1.02 肩 脂 肪 厚 (cm) 3.7±0.62 4.0±0.47 3.8±0.43 3.7±0.47 背 脂 肪 厚 (cm) 2.1±0.47 2.1±0.42 1.9±0.35 2.1±0.53 3.1±0.56 3.0±0.40 3.0±0.63 3.0±0.46 22.7±2.12 23.4±0.14 22.3±4.03 26.8±3.54 腰 脂 肪 厚 (cm) 2 ロース断 面 積 (cm ) 上 物 率 ( % ) 格 落 理 由 80 60 60 80 背 厚 背 厚 背 厚 、 被 覆 被 覆 注 ) 平 均 ± 標 準 偏 差 ( n=5) 、 ロ ー ス 断 面 積 は n=2 - 38- 4 肉質成績 %調整区で対照区に比べて有意に高かった(P<0.05)。 各試験の肉質成績を〔表7〕及び〔表8〕に示した。 また、α−リノレン酸の比率は、対照区に比べていず 試験1及び試験2において、水分、IMF、肉色、 れの試験区でも有意に高かった(P<0.05)。 保水力及び伸展率に、各区間で有意差は認められなか 両試験において、リノール酸やα−リノレン酸の比 った。 率が対照区に比べて高くなる区分が認められたが、脂 背脂肪内層の脂肪融点及び脂肪酸組成を〔表9〕及 肪融点に差はなかった 。第2報1 )では、エコフィード び〔表10〕に示した。 の代替率 が30%を超えると、不飽和脂肪酸の比率が高 脂肪融点は、試験1で10-10%区32.2℃、30-10%区 くなり脂肪融点 が低下したが、肥育前期 で代替率を30 31.4℃、30-10%調整区31.2℃及び対照区32.6℃となり、 %としても、肥育後期 で10%と低くすることで、脂肪 各区間で有意差は認められなかった。 融点の低下を抑えることができた 。軟脂の発生しやす 脂肪酸組成のうち飽和脂肪酸については、各試験区 い粗脂肪含量の高い飼料を給与する場合、飼料の影響 と対照区との間に有意差は認められなかった。一方、 を回避するには 最低でも1か月、普通2か月程度見 て 不飽和脂肪酸については、α−リノレン酸の比率が、3 おいた方が良いと報告 5)されており、肥育後期約50日 0-10%区及び30-10%調整区で対照区に比べて有意に高 間の代替率を低くすることで、粗脂肪含量の高いエコ かった(P<0.05)。 フィード を給与した際の豚肉の脂肪酸組成への影響を 試験2では、脂肪融点は10-10%区32.0℃、30-10% 回避できたものと考えられた。 区31.6℃、30-10調整%区31.4℃及び対照区31.6℃とな り、各区間で有意差は認められなかった。 なお、第1報2) や第2報1)と比べて、対照区の脂肪 融点が低下していることについては、各報告 と本研究 脂肪酸組成のうち飽和脂肪酸については、各試験区 と対照区との間に有意差は認められなかった。一方、 とで給与する市販配合飼料 の銘柄を変更したことが 原 因であると推察された。 不飽和脂肪酸については、リノール酸の比率が、30-10 表 7 肉 質 成 績 (試 験 1 ) 区分 水分(%) IMF(%) 1 0- 10 % 区 3 0- 10 % 区 3 0- 10 % 調 整 区 対照区 74.4±0.09 74.1±0.55 74.3±0.29 74.8±0.07 0.86±0.36 2.19±0.91 1.43±0.39 0.47±0.10 L *値 52.08±0.88 54.61±3.03 54.56±6.02 52.44±0.71 a *値 8.85±1.41 9.00±0.71 11.06±1.05 8.96±0.21 b *値 8.17±0.19 8.52±2.02 9.26±2.97 7.35±0.21 保水力 79.4±7.58 76.6±5.16 79.4±1.25 88.8±0.82 伸展率(%) 36.2±5.62 37.6±1.25 38.5±8.77 45.5±1.68 1 0- 10 % 区 3 0- 10 % 区 3 0- 10 % 調 整 区 対照区 74.1±0.78 74.7±0.00 75.0±0.99 74.7±0.07 2.19±0.09 1.36±0.11 1.75±1.13 1.05±0.93 L 値 54.27±0.38 55.61±1.52 55.07±1.38 55.08±0.48 a *値 8.17±0.10 10.08±1.63 9.66±0.35 9.98±1.41 b *値 9.09±0.37 10.44±0.84 10.10±0.25 10.51±1.34 保水力 81.1±1.98 77.9±0.07 80.8±3.32 74.0±3.04 伸展率(%) 36.4±1.77 43.5±3.75 46.6±4.88 37.4±10.39 肉色 注 ) 平 均 ± 標 準 偏 差 ( n= 2) 表 8 肉 質 成 績 (試 験 2 ) 区分 水分(%) IMF(%) * 肉色 注 ) 平 均 ± 標 準 偏 差 ( n= 2) - 39- 表9 背脂肪内層の脂肪融点及び脂肪酸組成(試験1) 区 分 脂 肪 融 点 (℃) 脂 肪 酸 組 成 飽 和 30-10%区 32.2±0.71 31.4±0.81 30-10%調整区 31.2±0.63 対照区 32.6±1.77 ミリスチン 酸 C14:0 1.56 1.42 1.53 パルミチン 酸 C16:0 25.95 a 24.55 b 24.71 b 25.39 ab ステアリン 酸 C18:0 15.45 14.61 14.40 15.06 計 ︵ 1.40 42.96 40.58 40.64 41.85 パルミトレイン酸 C16:1 2.14 2.02 2.05 2.11 不 オレイン酸 C18:1 44.23 44.91 44.46 44.22 飽 リノール酸 C18:2 10.09 b 11.74 a 12.10 a 11.21 ab 和 α−リノレン酸 C18:3 0.59 b 0.75 a 0.75 a 0.61 b ︶ % 10-10%区 計 注)平均±標準偏差(n=4) 注)横列異文字間に有意差(P<0.05) 57.05 59.42 59.36 10-10%区 30-10%区 30-10%調整区 32.0±2.16 31.6±0.95 58.15 表10 背脂肪内層の脂肪融点及び脂肪酸組成(試験2) 区 分 脂 肪 融 点 (℃) 脂 肪 酸 組 成 飽 和 C14:0 1.46 1.50 1.40 1.46 パルミチン 酸 C16:0 25.37 25.74 24.75 25.12 ステアリン 酸 C18:0 14.29 14.19 14.04 14.63 41.43 40.19 41.21 C16:1 2.04 2.16 1.96 1.92 不 オレイン酸 C18:1 46.29 45.97 46.10 46.81 飽 リノール酸 C18:2 10.00 ab 和 α−リノレン酸 C18:3 ︶ 41.12 パルミトレイン酸 計 注)平均±標準偏差(n=5) 注)横列異文字間に有意差(P<0.05) 5 対照区 31.6±0.84 ミリスチン 酸 計 ︵ % 31.4±1.83 9.83 b 0.55 b 0.61 b 58.88 58.57 経済性 11.06 a 0.69 a 59.81 9.59 b 0.47 c 58.79 両試験で異なる結果となり 、必ずしも飼料費 の低減に 各試験の飼料費の試算を〔表11〕及び〔表12〕に示 した。 効果があるとは言えなかった。30-10%調整区は、飼料 費の低減を意図してふすまを混合したものであるが 、 試験1では、増体1㎏に必要な飼料費は、対照区に 供試豚の発育が遅く、飼料要求率 が高くなったため 、 比べて30-10%区で少なくなり、飼料費の低減率は13.0 期待したほど飼料費の低減にはならず、30-10%区に及 %であった 。10-10%区及び30-10%調整区では、増体 ばなかった。 1㎏に必要な飼料費は、対照区に比べて多くなり、飼 料費は低減できなかった。 以上のことから、エコフィード を肥育豚に給与する 試験2では、増体1㎏に必要な飼料費は、対照区に 場合、代替率を肥育前期で30%、肥育後期で10%とす 比べていずれの 試験区でも少なくなり、飼料費の低減 ることにより、豚肉の脂肪融点は低下せず、第2報1 ) 率は30-10%区で最も高く11.2%、30-10%調整区で7.7 と同様に、飼料要求率 は改善し、上物率も市販配合飼 %、10-10%区で2.8%であった。 料を給与する場合と遜色なく、肥育に掛かる飼料費を 30-10%区では、両試験の結果ともに飼料費 の低減 低減することができる。 に有効であったが、10-10%区及び30-10%調整区では、 - 40- 表 11 飼 料 費 の 試 算 (試 験 1 ) 区 分 10 - 1 0 % 区 飼 料 費 (円 / ㎏ ) 低 減 率 (% ) 3 0 - 10 % 区 3 0 - 1 0% 調 整 区 144 123 143 -1.6 13.0 -1.3 対 照 区 141 − 注 ) 低 減 率 は 対 照 区 に 対 す る 値 。 表 12 飼 料 費 の 試 算 (試 験 2 ) 区 分 10 - 1 0 % 区 3 0 - 10 % 区 3 0 - 1 0% 調 整 区 飼 料 費 (円 / ㎏ ) 146 134 139 低 減 率 (% ) 2.8 11.2 7.7 注 ) 低 減 率 は 対 照 区 に 対 す る 値 。 参考文献 1)大賀友英・太田壮洋・秋友一郎・菅原健介 :エコ フィードの肉豚給与に関する研究(第2報)、山口県 畜産試験場研究報告第23号、51-58(2008) 2)大賀友英・太田壮洋・元永利正・菅原健介 :リサ イクル飼料の肉豚給与に関する研究(第1報)、山口 県畜産試験場研究報告第21号、89-96(2007) 3)科学技術庁資源調査会食品成分部会 :五訂日本食 品標準成分表分析マニュアル(1996) 4)市原謙一・芝原章:食肉の油脂含量 と脂肪酸組成 の迅速分析法の開発、食肉に関する助成研究調査成 績報告書、263-266(1991) 5)入江正和:食品廃棄物の飼料利用−その2.乾燥 飼料の調整と給与および肉質−、畜産の研究第58巻 第2号、238-244(2004) - 41- 対 照 区 151 −
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