「ツール・ド・北海道」を楽しく見るためのヒント ∼ステージ・レースをもっと楽しもう∼ Q −1 自転車のロード・レースってどんな競技なの? 日本ではこれまで余りなじみのない自転車のロード・レース。しかし、ヨーロッ パなどではサッカーにも肩を並べる人気スポーツです。最近、日本でもロード・レ ースへの関心が高まっています。 ① 自転車のロード・レースには、次のような競技があります。 ・ 個人タイム・トライアル 一人ずつ走ってタイムを競います。 ・ チームタイムトライアル チームごとに別々に走ってタイムで競います。 ・ ワンデイ・ロード・レース 集団スタートのレースです。最長距離 280km(男子エリート)、最大 200 人 で着順を競います。 ・クリテリウム 集団スタートのロード・レースの一形態として、クリテリウムがあります。 これは、一般交通を遮断したサーキットを周回する競技です。 (詳しくは、日本自転車競技連盟 http://www.jcf.or.jp/jp2/のHPをご覧下さい。 ) ② ロード・レースの華「ステージ・レース」 このようにロード・レースには、さまざまな形態の競技がありますが、これらの競 技を組み合わせ2日以上に渡ってレースを行い、個人総合時間順位を競うのが「ステ ージ・レース」です。競技はワンデイ・ステージとタイム・トライアル・ステージか ら構成されます。 日数は最低2日から最長22日。ステージの最長260km(男子エリート)。ステ ージ・レースの最高峰が、毎年ヨーロッパで開催される「ツール・ド・フランス」で す。 Q −2 自転車ロード・レースの見所は? 自転車のロード・レースは、平地では時速40km以上の速さ。しかも集団で疾 走するため、沿道観戦では選手は一瞬の間に走りすぎてしまいます。しかしそのス ピード感こそが自転車レースの特徴であり、面白さの原点です。 ① 沿道観戦で、自転車のスピードを実感してください 輝きながら近づいて来る銀輪、カラフルなウエアをまとった集団、その軽快感。 選手とともに吹き抜ける風を感じてください。スキージャンプをシャンツェで見る のと同様に、その迫力やスピード感は、そこでしか味わえません。 ② ロード・レースは風圧との戦い 自転車のスピードはとても速いため、風圧も強く受けます。たとえば時速40k mのスピードで走り続ければ、選手は毎秒11mの向かい風を受け続けることにな ります。このためその風圧にどう立ち向かうかが、自転車のロード・レースの大き なポイントになります。 しかし直前を走る自転車の車輪に接するように走れば、後を走る選手にかかる風 圧は大幅に減少します。(半分とも1/10とも言われています。)このためチーム は通常、風圧の負担をチームで分担するために、先頭の選手を入れ替えながら集団 で走ります。これを先頭交代と言います。 ③ エースとアシスト 自転車ロード・レースは、陸上競技のマラソンのような個人競技とは全く異なる競 技です。 自転車ロード・レースでは、チームはエースを勝たせるための作戦をもってレー スに臨みます。終盤のレース展開の中では、エースも機会を伺い集団から先行して 逃げることがありますが、通常は集団の中で自チームの選手に守られて走ります。 チームは、優勝を狙うエースとそれをサポートするアシストに明確に役割分担され ている訳です。 アシストの役割は、さまざまなトラブルからエースを守り、集団の中でエースの 体力を温存し、最終的にエースにゴールを勝ち取らせることです。 ④ ロード・レースは、チームとチームの駆け引きの競技です エースがゴールを勝ち取るためには、集団の中で体力を温存し、最後の瞬発力で 抜け出す作戦、あるいは一人で風を受けるリスクを背負いながら集団から先行して そのまま逃げ切る作戦などがあります。 しかし全てのチームが、自チームのエースを勝たせるためにレースに臨んでいる のですから、優勝を勝ち取るためには、自チームのエースをサポートすると同時に、 他チームの逃げ切りを阻止するさまざまな戦術が必要になります。これがチーム間 の駆け引きです。 チームや選手が相手チームに対してどんな駆け引きをしかけるのか。そうしたチ ームの戦術や選手心理を予測することも、ロード・レース観戦の醍醐味です。 代表的なアシストやフォーメーションを、末尾に添付していますので、参考にし てください。 Q −3 観戦方法を教えてください 「ツール・ド・北海道」のレースは、残念ながら生の TV 中継で見ることは出来 ません。しかし最終日のクリテリウムでは、競技展開の解説を聞きながら、何度も 選手たちを間近に見ることが出来ます。臨場感が高まり、理解や楽しさも倍増しま す。 ① リーダージャージやチームウエアに注目 沿道観戦で、集団の形態やチームの構成、有力選手の位置取りを見極めるのは大 変ですが、リーダージャージ(*1)を着用した選手がどこにいるのか、同じチー ムの選手がどんな動きをしているのかが、レース観戦のポイントになります。 カラフルなウエアを参考に、チーム間の駆け引きを推察するのも観戦の楽しみで す。 *1 毎日のレースで、前ステージでの順位 1 位の選手が着用するジャージ。ツール・ド・北 海道では、 「個人総合時間順位」 (グリーン) ・「個人総合ポイント順位」(ブルー) ・「個人総 合山岳賞」 (レッド)の3つのリーダージャージが準備されています。 ② 登り坂は人気の観戦ポイント 登り坂は風圧の影響が相対的に小さくなるため、タイム差がつきやすく、そこを どう克服するかもレースの大きな要素になります。 クライマーと呼ばれる登りを得意とする選手が活発に動いて、集団から先行しよ うとします。それに対し、他の選手がどのように反応するか注目したいところです。 ③ 下り坂はスリル満点 一方下り坂では時速60kmを超えるような高速シーンが展開され、スリルあふ れる見所となります。スピードマニアにはお勧めです。 Q−4 自転車ロード・レースの成績(個人総合時間賞)の決め方は? 一日で終わるロード・レースの場合、成績はフィニッシュラインでの着順で決まり ますが、競技日数が二日以上に渡るステージ・レースでは、全行程を通した成績で 順位を決めるため、細かな規定があり難く見えます。 しかしそれは、複数ステージを通じて真に実力のある選手を正しく評価するため の規定なのです。 ステージ・レースにおける最大の栄誉は、個人総合区間賞の獲得です。 ① 個人総合区間賞の集計方法 以下の4つの時間を集計した時間(a−b−c+d)の最短者が優勝者となります。 a 選手の「区間完走時間」を全ステージ(プロローグがある場合はそれも併せて) 合計します。 b 各ステージの着順上位 3 人に「ボーナス・タイム」が与えられます。 c 各ステージの途中に設けられた関門(ホット・スポット=HS)の着順上位3人 にも「ボーナス・タイム」が与えられます。 d レース規則に違反があれば、ペナルティが課せられます。 ② 集団でフィニッシュした場合は同タイム ロード・レースのフィニッシュでは、写真判定により全ての着順が決められます が、記録は秒単位で、集団は同タイムとして扱います(選手間が 1 秒離れると別集 団扱い)。 これは、 ・ステージ・レースでは、全コースを通算した成績での評価を行うこと。 ・自転車競技の特性から、集団フィニッシュの場合のタイム差は秒以下であり、 逆に集団が前後すれば「分」という大きな差になること。 などから、集団フィニッシュの場合には、同タイムを与えることとされています。 このためスプリントに自信のある選手や、総合成績よりはスプリントの成績に狙 いを絞った(絞らざるを得ない)選手は、多少のリスクは覚悟して上位の着順をね らいますが、個人総合時間成績上位を狙う選手は、無理なゴールスプリントは避け ることになります。 Q−5 この他の賞 「ツール・ド・北海道」では、 「個人総合時間賞」の他に、以下の各賞を設けていま す。 個人総合ポイント賞 各ステージのフィニッシュの着順上位者(15位まで。プ ロローグは10位まで)とステージ途中のHSの上位通過 者(3位まで)に与えられるポイントの合計で争います。 個人総合山岳賞 ステージにおける峠などに設定された登坂地点(KOM) の上位通過者に与えられるポイントの合計で争います。な お各対象登坂地点(KOM)でポイントを与えられる上位 通過者数は、KOMの難易度により、1 位から4∼7位ま でとされています。 団体総合時間順位 各ステージの各チーム上位3人の個人区間完走時間を合 計した団体総合時間で争います。この際チームに課せられ たペナルティ・タイムが加算されます。 佐 藤 杯 (若年競技者順位) 23歳以下の日本人選手の中でもっとも個人総合時間順 位の良い選手を表彰します。 *フォーメーションの模式図を次ページに掲載しています。 フォーメーション模式図
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