ツール・ド・北海道を楽しむために 自転車のロード・レースを楽しく見るためのヒント Q1:自転車ロード・レースの見所って何?観戦ポイントはどこ? 自転車のロード・レースは、平地でも平均時速40km以上の速さ。しかも集団で疾走 することが多いので、沿道ではほんの一瞬しか見ることができません。しかしその「ス ピード感」が大きな特徴であり、面白さの原点です。 ①沿道でロード・レースを見ると、スピード感を実感できます。 輝きながら近づいて来る銀輪。カラフルなウエアをまとった集団。その軽快感、選手 達とともに通りすぎる風を感じてください。(ノルディック・スキーの純ジャンプをシャンツ ェで見るのと同様に、その迫力やスピード感は、そこでしか味わえません。) ツール・ド・北海道の場合、残念ながらTV中継で競技を見ることはできませんが、 最終日のクリテリウム(市街地や公園内の周回コースで行われるロード・レース)では、 競技展開の解説を聞きながら、選手たちを何度も間近に見ることができます。臨場感 が高まり、理解度・楽しさも倍増します。 ②選手の位置取りに注目! 選手の走り方は、陸上のマラソンとは全く異なります。 自転車ロード・レースの場合には「高速」で走るので風圧を強く受けます。時速40k mで走るのは、毎秒11mの強い逆風の中を走ることと同じことです。その風圧にどう やって立ち向かうかが、ロード・レース競技の大きなポイントになります。 しかし、前を走る選手の車輪に接するように走れば、風圧の影響は大幅に(1/10 とも 半分とも言われるほど)減少します。そこで選手は、通常は集団の中で、一人で風を受 けることの無いように走ります。集団で走っている場合、先頭の選手が入れ替わるの は、風圧の負担を交互に受けるためです。これを先頭交代といいます。 しかし、それだけでは他の選手に差をつけることができません。このため逃げ切って タイム差をつけるため、あるいは、(全体のペースをあげるなど)作戦上、集団から先 行することがあります。これが、チーム間の駆け引きです。 1 集団から選手が先行した場合には、先行集団において、あるいは(その後方に位置 する)メイン集団においての、駆け引きとなります。 先行集団においては A 先行集団に、主要なチームの有力選手が全て含まれている場合や、有力選 手がいない場合には、先行集団内で交互に先頭交代。 B 先行集団に、特定のチームの有力選手のみが居る場合には、そのチーム以 外の選手は、先頭に立たないで、できるだけメイン集団が追いつくようにします。 メイン集団の中では Aの場合には、成り行きを見守ります。 Bの場合には、先行集団に有力選手を送りこんでいるチームの選手は先頭 に立たず、先行集団の逃げが成立するように走ります。 ③ロード・レースはチームプレー このため平地では、いかに集団の中で風圧を避けて体力を温存し、最後の瞬発力で 争うのか、あるいは一人で風を受けるリスクを負ってでも集団(他の有力選手)から先 行して差をつけるのかが、重要な選択となります。そうした選手の心理を推測するのも 興味深いところです。 チームのエースは、多くの場合、集団の中で自チームの選手に守られて走ります。そ の状況において先行する機を窺い、集団から先行して逃げることはあっても、決して集 団の先頭を走ることはありません。 こうした点が自転車のロード・レースと、マラソン等他の競技との決定的な違いです。 ④登り坂は有力な観戦ポイント 一方登り坂は、風圧の影響が相対的に小さくなることもあってタイム差がつきやすく、 そこをどう克服するかも大きな要素になります。 「クライマー」とも呼ばれる登りを得意とする選手が活発に動いて、集団から先行しよ うとします。それに他の選手がどう反応するか、注目したいところです。 2 ⑤下り坂はスリル! 一方、下り坂は時速60kmを超える速度も出て、スリルあふれる見所となり、スピー ド・マニアにはお勧めです。 ⑥エースとアシスト 一般のロード・レースの場合でもそうですが、特にステージ・レースでは、各チームは エースを勝たせるための作戦をもってレースに臨みます。競技の運営も、チーム・カー を配置するなどチーム全体としてのサポートを前提とした運営がなされます。チームの 中で、優勝を狙うエースと、それを色々な場面でサポートするアシスト(エース以外の 選手)に明確に役割分担がなされている訳です。 アシストは、ある時は風除けになり、また集団の中でのトラブルからエースを守り、 また他チームの選手が先行すれば、それを追走して集団から差がつかないよう、適宜 対応します。 またエースも、峠や終盤などでチャンスがあれば自ら先行して、他チームのエースと のタイム差をひろげます。 Q2:レースの観戦は、どうするの? 集団の形態や、チームの構成、有力選手の位置取りを見極めるのは大変ですが、カ ラフルなウエアを参考に判断するのも見所です。 リーダージャージーを着用する選手がどこにいるのか。その周辺にいる同じチーム の選手どういう動きをしているのかが、レースの焦点となります。 Q3:どうして成績(個人総合時間賞)の決め方がややこしいの? 一日で終わるロード・レースの場合には、最後のフィニッシュラインでの着順で成績 が決まります。しかし競技日数が二日以上に渡るステージ・レースでは、全行程を通し た成績で順位を決めるため、細かな規定があって難く見えます。 しかしそれは、複数(ツール・ド・北海道の場合6日間)のレースを通じて真に実力の 3 ある選手を正しく評価するための規定であり、基本的に全区間を通じて最も速く走った 選手、即ち、各ステージの合計記録(個人の区間完走時間)に「ペナルティ・タイム」、 「ボーナス・タイム」をそれぞれ加減した「個人総合時間」が最も短い選手が優勝!とな ります。ステージ・レースにおける最大の栄誉は、個人総合区間賞の獲得です。 個人総合区間賞集計の具体的手法は、次のとおりです。 ①「個人区間完走時間」を全ステージ(プロローグも含めて)合計する。 ②各ステージのフィニッシュの着順上位3者に「ボーナス・タイム」を与える。 ③各ステージの途中に設けられた関門(「ホット・スポット=HS」)の上位3者に「ボーナ ス・タイム」を与える。 ④競技規則違反があると、ペナルティ・タイムを課する。 以上を合計した、 ⑤「個人総合時間」=① ― ② ― ③ + ④ の最短者が優勝者です。 *なお、全レースを「完走」しないと、個人総合時間順位は与えられません。 *レースを「完走」するには、レースの終了(先頭の競技者のフィニッシュ 後20分以内)までにフィニッシュしなければなりません。 更に細部を説明すると、次のようになります。 ① プロローグ(個人タイム・トライアルとして行われます)の個人区間完走時間は、 1/100秒まで計測し、秒未満切り捨てます。 ②集団スタートの個人区間完走時間は、秒単位で与えます。 ③ただし、集団でのゴールは同タイム(秒)とします。 ④写真判定により決定される着順上位者(1~3位)には、10秒、6秒、4秒のボーナ ス・タイムがそれぞれ与えられます。 ⑤HSでの上位者(1~3位)には、3秒、2秒、1秒のボーナス・タイムがそれぞれ与え られます。 これらの合計の個人総合時間順位が同等の場合、次の順に評価して順位を決定しま す。[UCI 規則 2.6.015] ①プロローグの1/100未満の部分を考慮。 ②各ステージで得られた個人区間順位の数の合計値の少ない順。 ③最終ステージでの区間順位。 4 Q4:集団でフィニッシュした場合、どうして同タイムを与えるの? ロード・レースのフィニッシュでは、写真判定により全ての着順が決められますが、 記録は秒単位で、集団(選手間が 12~15m離れると別集団扱い)は同タイムとして扱 います。 これは、 ・ステージ・レースでは、全コースを通算した成績での評価を行うこと。 ・自転車競技の特性から、集団フィニッシュの場合のタイム差は秒以下であり、逆に 集団が前後すれば「分」という大きな差になること。 などから、集団フィニッシュの場合には、同タイムを与えることとされています。このた め、危険な状況でのスプリントを敢えてする必要はないことになります。 このためスプリントに自信のある選手や、総合成績よりはスプリントの成績に狙いを 絞った(絞らざるを得ない)選手は、多少のリスクは覚悟して上位の着順をねらいます が、個人総合時間成績上位を狙う選手は、無理なゴールスプリントは避けることになり ます。 Q5:この他の成績はどうなっているの? 個人総合ポイント賞 各ステージのフィニッシュの着順上位者(15位まで。プロローグ は10位まで)とステージ途中のHSの上位通過者(3位まで)に与 えられるポイントの合計で争います。 個人総合山岳賞 ステージにおける峠などに設定された対象登坂地点(KOM)の 上位通過者に与えられるポイントの合計で争います。なお各対象 登坂地点(KOM)でポイントを与えられる上位通過者数は、KO Mの難易度により、1 位から4~7位までとされています。 団体総合時間順位 各ステージの各チーム上位3人の個人区間完走時間を合計した 団体総合時間で争います。この際チームに課せられたペナルテ ィ・タイムが加算されます。 若年競技者順位 23歳以下の日本人選手の中でもっとも個人総合時間順位の良 5 い選手を表彰します。 ◇ 参考;自転車競技の区分◇ ① 自転車のロード・レースには、次のような競技の形態があります。 ・個人タイム・トライアル(一人一人で走ってタイムを競います。) ・チームタイムトライアル(チームごとに別々に走ってタイムで競います。) ・集団スタートのレース(道路やサーキットをコースとし、着順を競います。) (規則上は、ワンデイ・ロード・レースと言います。) 最長280kmの距離、最大200人で着順を競います。 集団スタートのレースの一形態として、クリテリウムがあります。これは、一般交 通を遮断したサーキットを周回して着順を競います。 (詳しくは、日本自転車競技連盟http://www.jcf.or.jp/jp2/のHPをご覧下さい。) ② そして、これらの形態を組み合わせて2日以上に渡って行い、個人総合時間順位を 競うものが、ステージ・レースと言われるものです。 ・最低2日。最長22日。距離最長260km。複数のロード・レースとタイム・トライア ルから構成されます。 ・ツール・ド・北海道のレースの構成は次のようになっています◇ a 初日にプロローグ(個人タイム・トライアル)を行います。 b 2日目から4日間、ロード・レースを行います。 c 最終日に、一般交通を遮断した周回路で「クリテリウム」を行います。 6
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