強い競走馬作りのために、 世界の研究者やメーカーから 最先端情報公開! 2011年8月16日 Contents 1. バランサーペレットを使用して給餌プログラムに汎用性 ― p.2 バランサーペレット飼料は、有用であるがほとんど知られていない馬用の餌である。…. 2. 馬における栄養学的運動能力増強手段の使用は本当に有効なのか? ― p.8 英語で運動能力の増強を意味する形容詞「ergogenic」は、 ギリシア語の「ergon(仕事) 」と…. 3. 電解質は競走馬にとって必須の栄養素 ― p.12 電解質は、溶液中でイオンと呼ばれる帯電粒子に分離する物質である。馬の場合、…. 4. 競走馬の「コズミ」とは? ― p.14 コズミは、炭水化物代謝異常、グルコースの生理機能および貯蔵、激しく不規則な運動に…. ※ケンタッキー・エクワイン・リサーチ社から正式な許可を得て、彼らから配信される ニュースレターから抜粋したレポートを中心に編集しています。 2011年8月16日 バランサーペレットを使用して 給餌プログラムに汎用性〈1〉 (ケンタッキー・エクワイン・リサーチ社発行 Equinews Volume12 より) 最も正確に測定された量の燕麦からでさえ、高品質の飼い葉と組み合わせたとしても、特定の馬に対し て最適に成長し能力を発揮するために十分な栄養素は得られない。燕麦などの添加物のない餌を唯一の濃 縮物として使用するときは、バランサーペレットを添加して、確実にすべての必須栄養素を供給すべきで ある バ ランサーペレット飼料は、有用であるがほとん ど知られていない馬用の餌である。ペレットの 見た目はその他のペレット化された餌と区別がつかな いかもしれないが、給餌プログラムにダイナミックな 添加物であり、多くの給餌に関する問題に対する確実 な解決手段である。 バランサーペレット飼料とは何か? 濃縮物(スイートフィードまたはテクスチャード加 工フィード)は、飼い葉から得られるものには足りな タンパク質とビタミン/ミネラル材料を組み合わせて い栄養素を供給するために調合されている。飼い葉が ペレットにする。これは強化ペレットと呼ばれること 十分なエネルギーを供給すれば、馬の体重は変わらな もある。ペレットにされた後、エネルギー供給源に混 いか、増加するので、その他の栄養必要量のすべてが 合される。 適合しているように思われるかもしれない。残念なが ら、今日の飼い葉では、この仮定は間違っていると思 最新の馬の餌は馬の一生の多くの段階すなわち成 われる。競走、成長、生殖に関わらず馬に要求される 長、発達、競走、生殖、晩年のそれぞれの期間の馬の 作業に必要なタンパク質、ビタミン類、ミネラルは飼 栄養のニーズに適合するように特別に調合され、エネ い葉に含まれているがその量は十分ではない。 ルギー供給源と強化ペレットの割合は、給餌対象の馬 市販の餌の配合の主な目的は、3 つの一般的な栄養 のタイプによって異なる。例えば、若い成長中の馬は、 素を供給することにある。すなわち、エネルギー(カ タンパク質、ビタミン、ミネラルの必要量が多いので、 ロリー) 、タンパク質(必須アミノ酸) 、ビタミン/ミ その餌には強化ペレットを多く含ませる一方、それら ネラルを強化するのが目的である。 の栄養必要量がもっと少ない管理馬用に設計された餌 よりも粒が小さい。 エネルギーを供給する材料は、一般に穀物(燕麦、 2 トウモロコシ、大麦)や、付加的な脂肪供給源(植物 このため、飼料製造業者は同じ強化ペレットを生産 油)または繊維供給源(ビートパルプ)である。タン ラインのすべての餌に使用することが多いが、どのタ パク質は、大豆粕、蒸留粕、またはビール粕、綿実粕 イプの馬に餌を与えるかによって使用量が異なる。こ から一般得られる。 典型的なテクスチャー加工餌では、 の強化ペレットは、一般に「バランサーペレット」と か「 レ ー シ ョ ン ペ レ ッ ト 」 と 呼 ば れ る。 大 部 分 の バランサーペレットの別の特徴は、濃縮ミネラルと KER チームメンバーの飼料製造業者は、この強化ペ 濃縮ビタミンである。別の例を紹介すると、典型的な レットを販売している。チームメンバーは独立した製 餌には、40mg/kg の銅が含まれているが、バランサー 造業者であるので、こうしたバランサーペレット製品 ペレットにはその 4 倍の 160mg/kg の銅を含む。 には異なる名前が付けられている。 バランサーペレットの明確な栄養的特徴は、そのタ 同じことがすべてのミネラルとビタミンについて言 ンパク質含有量であり、一般には 25 ~ 35%が含まれ える。バランサーペレットに含まれるカルシウムとリ る。 バランサーペレットのタンパク質レベルは高いが、 ンの濃度は、テクスチャード加工された餌またはペ その理由は給餌率が低いためである。高タンパク質と レット加工された餌に標準的に見られる濃度の 2 倍で いうことで、潜在的な使用者が敬遠することが多い。 ある。 その理由は、使用者は、タンパク質の割合が高くても、 実際に供給される量は非常に少ないために、過剰な量 バランサーペレットに含まれている栄養素が濃密な には達しないということを理解しないからである。た ため、推奨給餌率は低く、一般には 500g ~ 1kg(1 とえば、 こんな例がある。 25%のタンパク質バランサー ~ 2.2 ポンド)である。ただし、馬格と種類によって ペレットを 1kg 供給する場合、250g(0.5 ポンド)の 異なる。大部分の典型的な餌の推奨給餌率は、2 ~ タンパク質を提供することになる。 6kg(4.4 ~ 13 ポンド)である。このため、バランサー ペレットは小さなパッケージの状態で格別の栄養価を これは軽作業をする 500kg(1100 ポンド)の馬に 提供することが容易にわかる。 対するタンパク質必要量の約 30%を供給するのに等 しい。馬に必要な残りのタンパク質は、食餌に含まれ る飼い葉から得られることになる。同じ馬が 2.5kg(5.5 ポンド)の推奨給餌率で 10%のタンパク質を含む餌 を与えられていたとする と、供給されるタンパク 質 の 量 は 250g で あ り、 バランサーペレット 1kg 分(2.2 ポンド)と同じ である。ただし、同じ量 のタンパク質は、実質的 に異なる 2 つの食餌量で 与えられる。すなわち、 1kg のバランサーペレッ トと、10%のタンパク質 を 含 む 餌 2.5kg で あ る。 バランサーペレットは、 付加的な餌に見られる余 分なカロリーを必要とし ないが、タンパク質は必 要とする馬にとって理想 的である。 3 バランサーペレット飼料をどう使 うか? い葉からすべての栄養ニーズを得られないこともあ バランサーペレットを使う本当の利益は、馬の飼育 ラルのすべてに対する馬のニーズを満たすが、余分な 者が馬の必要とするタンパク質、ビタミン類、ミネラ カロリーやデンプンを飼料に添加する必要はない。 る。濃縮された性質上、また、低い給餌率により、バ ランサーペレットは、タンパク質、ビタミン類、ミネ ルを満たし、馬が摂取しすぎないかどうかを心配する 必要なく馬に供給されるエネルギーの量を管理できる 飼い葉を保管し馬の条件を満たすために必要なバラ ことである。バランサーペレットは、以下の 3 つの方 ンサーペレットの量は、ビタミン類とミネラルを含む 法で使用することができる: (1)タンパク質、ビタミ 典型的な補給剤よりも多い(一般に、前者は 1kg(2.2 ン、ミネラル類の低カロリー供給源として単独で使用 ポンド)であり、後者は 100(0.2 ポンド)である) 。 する。 (2)糖蜜を含まない餌用に添加物のない餌と合 バランサーペレットは、ビタミンとミネラルを含む わせて使用する。 (3)推奨給餌率よりも低い率で供給 100g の補給剤には含まれていないタンパク質や十分 される濃縮物用の添加物として使用する。 な量のマクロミネラル(カルシウム、リン、マグネシ ウム)を補給する。バランサーペレットではない補給 低カロリー餌:いくつかの現代の馬の品種は、厳しい 剤は一般にマクロミネラルとビタミンを補給するが、 作業をするように求められた時でさえも、限定された タンパク質もマクロミネラルも補給しない。 カロリーで体重を維持するように発達してきた。 したがって、バランサーペレットが馬にとって完全 したがって、多くの馬は少食であり、大食の馬より な補給剤である。バランサーペレットの担体にわずか も少ないカロリーがあれば生存することができる。少 なカロリーがある場合があるが、高い給餌率で調合さ 食の遺伝子を持ち合わせていても代謝が困難な馬もい れて飼料にカロリーを追加するように設計された大部 る。このような馬にとっては、カロリーだけでなく、 分のその他の餌のように高カロリーではない。 エネルギー供給源に含まれるデンプンも、健康のため に有害である。特にメタボリック症候群やインスリン 耐性症候群の馬には不利益である。厄介なことに、飼 高品質の牧草地を利用できる 馬には、余分なカロリーの標準 濃縮物は必要ないと思われる。 特定の場合には、バランサーペ レットが最適の餌である。 その理由は必要なタンパク質、 ビタミン類、ミネラルを余分な カロリーなしに供給することが できるからである。 4 低糖蜜餌または自家製のスイート フィード 給餌率は、テクスチャード加工の餌かペレット化され 馬小屋にエネルギー条件の異なる馬が複数いるとき 場では、3kg 程度の少量を 1 日当たり与えるだけでも、 は、すべての馬に適切な 1 袋の餌を見つけることが困 馬によっては多すぎることもある。 た餌かを問わず、1 日あたり 3kg(6.6 ポンド)以上 である。十分な牧草または品質の良い干し草がある牧 難なことが多い。バランサーペレットを穀物と混ぜる ことで、各馬に個別に合った餌が得られる。 このため、もっと少なく与られることも多い。ここ で、推奨給餌率よりも給餌をしてどのように馬をごま あるいは、牧場で馬用の燕麦、トウモロコシ、また か す か の 例 を 紹 介 す る:2kg(4.4 ポ ン ド ) の 餌 で は大麦を育てているが、タンパク質、ビタミン類、ミ 2mg のセレンを供給することになる場合には、 0.5kg (1 ネラルを自家栽培の収穫物に添加する必要があるかも ポンド)の餌で 0.5mg のセレンを与えることになる。 しれない。ことによると、牧場は燕麦などの添加物の これは、馬のセレン必要量よりも十分に少ない。 ない餌だけを与えるのが好みかもしれない。どんな状 況でも、バランサーペレットは飼い葉では足りない部 バランサーペレットを添加物として使用するのは一 分を満たす必要がある栄養素を提供することができ 例 で あ る。 推 奨 自 給 率 未 満 の 条 件 で 1kg あ た り、 る。各馬には、体重と年齢にふさわしいバランサーペ 250g(0.5 ポンド)のバランサーペレットを追加する。 レットと、馬の理想的な体重を維持する量の穀物を与 例えば、1 日あたり餌の推奨自給率が 2kg(4.4 ポンド) えればよい。ビートパルプ、植物油、米糠などのその でり、馬が 1 日あたり 1kg しか摂取しなくても体重 他のエネルギー供給源も自家製スイートフィードに混 を十分に維持している場合には、250g のバランサー 合してもよい。以下は、ステージが異なる 500kg の ペレットを飼料に添加すると、ビタミン、ミネラル、 馬に必要なバランサーペレットの給餌率に関する提案 タンパク質が強化されて、馬の条件に合う。推奨給餌 である。 率が体重の 0.5%である場合、500kg の馬に実際に与 える餌の量は、2.5kg となる。1.5kg の餌しか与えな 馬の種別 (成馬の体重は 500kg) 離乳直後の仔馬 バランサーペレットの量 い場合には、250g のバランサーペレットで栄養的な 不足を補完する。 0.7kg(1.5lb) 1 歳馬 1kg(2.2lb) 妊娠雌馬(妊娠後期) 1kg(2.2lb) バランサーペレットを使用するときの注意: バランサーペレットを給餌率がもっと高い他のペ 授乳中の馬 1.5kg(3.3lb) 調製中の馬 0.7kg(1.5lb) レットに混合しないように注意すること。バランサー 軽度の運動をした馬 0.7kg(1.5lb) ペレットを与えすぎると、余分な量の栄養を与えるこ 中程度の運動をした馬 1kg(2.2lb) とになる。このため、バランサーペレット製品が入っ 高齢馬 1kg(2.2lb) た餌袋または餌瓶を目立つようにする。特に、その他 のペレット化製品と同じ部屋に保管するときは、はっ 市販の馬餌への追加:市販の濃縮物は特定の給餌率で きりと印を付ける。 与えるように調合されている。しかし、多くの馬は、 推奨された給餌率で餌を与えられていない。その理由 バランサーペレットを使用する長所は、個々の馬に は、馬の代謝には多すぎるカロリーが与えられてしま 合わせて柔軟に栄養管理ができることである。バラン い、肥満になることも多いからである。推奨給餌率未 サーペレットを適切に与えれば、牧場のすべての馬に 満で給餌すると、馬は適切なレベルのタンパク質、ビ 成長、競走、または生殖に必要な栄養素を安心して摂 タミン類、ミネラルが得られない。大部分の濃縮物の 取させることができる。 5 馬における栄養学的運動能力 増強手段の使用は本当に有効なのか?〈2〉 (ケンタッキー大学の栄養学者、LAURIE M. LAWRENCE 博士の論文から) 運動能力増強剤とは何か? 英 語で運動能力の増強を意味する形容詞「ergo genic」は、 ギリシア語の「ergon(仕事) 」と「genic (生産する) 」に由来する。このため、運動能力増強手 段は、労働生産を高めるまたは改善することができる 要素を言う。労働成果の改善は、強さ、速度、持久力 の増加の結果して生じることもある。 運動選手の場合、 1)エネルギー生成の補助的燃料源として作用する ことができる。 2)エネルギーの経路を通過して燃料の流れに影響 を与えることができる。 3)熱または乳酸などの最終生成物蓄積の影響を遅 延または最小化することができる。 機器、薬剤、栄養補助剤、さらには催眠やイメージト 4)筋線維の協調または補充あるいは心理学的効果 レーニングなどの心理学的な補助手段も含めて多くの に影響を与えることによって神経系に影響を与 物事が、運動増強手段の範疇に入る。今回の検討の目 えることができる。 的は、馬の運動能力増強に効果があると言われている 複数の栄養補助剤の有益性を吟味することである。こ 表 1 に、運動選手と競走馬の運動能力増強手段とし の論文が対象とする範囲内で、栄養補助剤は経口投与 て使用される複数の化合物と、提案されている代謝的 可能であり栄養指向の機能を備えた化合物または要素 または生理学的役割の簡単な説明を示す。運動時の各 を含むことになる。 化合物の役割がわかっていない事例もある。 運動能力増強剤はどのように作用 するか? 特定物質の機能が分かると、運動機能増強剤として ある物が運動能力増強機能をもつためには、運動生 できるか否かを評価するためには、異なる運動を制限 理学のある面、好ましくは、問題の運動選手(競技馬) する代謝機序または生理学的機序を理解する必要があ に限定された運動生理学的側面に影響を与える必要が る。例えば、耐久騎乗競技馬の疲労の原因となる要因 ある。したがって、問題の補助手段の代謝機能または は、1 マイル半の距離を競馬した馬の疲労を起こす要 生理機能を知ることが重要である。多くの物質は、そ 因とは著しく異なる。したがって、競走馬に有効な物 の機能を明確にする実証的な証拠もないのに市場に出 質は、耐久騎乗馬にとって役に立たない場合がある (そ 回っていたり、その機能の説明が有益な情報を得るに の逆もあり得る)。各化合物の機能を理解し、各競技 は曖昧すぎていたりする。例えば、製品の代謝機能を 馬の代謝および生理学的機能を理解することも重要で 「酸素増強(oxygen building) 」と説明しても意味が ある。その理由は、ある種の競技馬に役立つと思われ ない。機能がわかっていない物質の長所は、ある種の る化合物が、実際にはその他の種の競技馬には有害な 疑念をもって検討すべきである。Coyle(1984)は、 ことがあるからである。 運動増強手段は以下の一般的方法で機能し得ることを 示唆した。 8 のその物質の有益性を評価することができる。特定物 資が特定の運動期間の限られた側面を低減することが 表 1.馬および人間の運動能力補助手段として使用される化合物の一部 化合物 代謝/生理学的機能 B12(シアノコバラミン) 以下の反応に関与するコエンザイム:5-メチルテトラヒドロ葉酸がメチルマロニ ル-CoA からスクシニル CoA に変換されて葉酸になる。 葉酸 メチル基供与体、プリン合成時のコエンザイム。RBC 合成 ピリドキシン(B6) アミノ酸代謝時のコエンザイム。ヘム合成パントテン酸。コエンザイム A の成分。脂 肪および炭水化物の代謝に必須。 チアミン(B1) ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(ピルビン酸からアセチル CoA に) ビタミン E 抗酸化物質 コエンザイム Q10 抗酸化物質。電子伝達。 ビタミン C 抗酸化物質。コラーゲン合成。 鉄 ヘム合成(酸素運搬) リン ATP 合成。2,3-ジホスホグリセレート合成(ヘモグロビンからの酸素分離) ジメチルグリシン(DMG) メチル基供与体 カルニチン ミトコンドリアへの脂肪酸の運搬 蜂花粉 各種の栄養素の供給源。その他?? ジンセン(Gingsneg) ????? 重曹 アルカリ化剤。代謝性アシドーシスの遅延。 運動能力増強手段は作用するのか? 特定の治療効果に対する結論は、着実な統計的方法 その問いの答えは、 「たぶん…」 、 「時には…」であ に基づくべきである。ただし、多くの遂行状況では、 ろう。運動能力増強手段に関して不幸な真実は、たと そのような方法を実施するには問題がある。まず、 「性 え動物やヒトに関する研究をまとめて扱っているとし 能」を正確に測定することができることは必須である。 てさえも、研究機関が非常に小規模であることだ。実 第 2 に、統計的に有意であるとして見つかった違いも 施された研究の多くは、治療された個体と治療されて 生物学的に有意でありかつ、生物学的に有意な効果を いない個体を比較するための設計が不十分である。被 統計的に検出することができることが不可欠である。 験体が治療されていない(対照)条件で 1 週間試験さ レースタイムの 1 ~ 2 秒の変化は、多くの調教師によっ れて、さらに運動能力増強補給剤を投与されてから数 て生物学的に有意と見なされているだろうが、多くの 週間後に試験される。この種の設計では、成績の変化 動物を用いずにまたは何度も繰り返すこともなく統計 が補給剤の結果であったのか、補給期間中の訓練の進 的に有意なものとして確認することは困難かもしれな 捗結果であったのかを判定することはできない。この い。調査環境で試験するときには、ある種の運動量力 ため、試験のバランスを取るか、治療順序を無作為に 増強手段または実践方法は、ある被検体にプラスの効 し、さらに対照個体と治療個体を常に同じ条件下で試 果があるように思われるが、治療群と対照群の差が従 験する必要がある。加えて人間については、治療を意 来の 5%許容レベルでは統計的に有意ではない。この 識しないように「盲目的な」状況で試験する必要があ 状況は、性能の基準が個体差から生じる大きなばらつ る。そうでなければ、生理学的変化よりもむしろ心理 きに依存することが多い。資源が限られているため、 学的変化を測定することになる。動物については、あ 多くの試験は、そうした少数の被検体に制限されるた る種の補給剤からは精神的な鼓舞を受けないが、動物 め、5%有意水準で確認することができる性能差を見 試験についても担当者が治療に対して盲目的である状 つけることを期待することは非現実的であることが多 況で実施する必要がある。この要件は、 馬の試験では、 い。「0.05」の有意水準は、大部分の実験的研究にとっ 乗り手(騎手)が乗る馬の性能に非常に大きな影響を て都合の良い弁別子ではあるが、標本規模が小さい試 与えるために、特に重要である。 験では、仮説を検定するためには異なる有意水準を選 択するほうが役に立つと思われる。最低限でも、治療 9 ビタミン B 類 標準的な馬の食餌には、多くのビタミン B 類を含む。 ただし、消化管で合成および吸収可能なビタミン B12 は除く。大腸の微生物個体群も、チアミンを含むその 他のビタミン B 類を合成することができる。一般的 な食餌と微生物の合成によって得られるビタミン B 類の諸濃度は、馬にとって不十分ではない。ただし、 古典的なビタミン欠乏症の徴候がないことは、必ずし も最適なビタミン状態を示すとは限らない。ヒトに関 する試験では、不十分なビタミンの摂取(B1、B2、 B6、C の組合せ)は、全体的な健康には影響を与え なかったとしても、身体能力にマイナスの影響を与え たことが報告されている(van Dokkum et al., 1989; van der Beek et al., 1985)。 ピルビン酸からアセチル CoA への変換の役割があ るため、チアミンは運動能力増強手段として特に注目 されてきた。1989 年には NRC は、ラテン方格法で馬 に 3 レベルの飼料チアミン(2、4、28mg/kg)を摂 が 0.05<p<0.1 で異なる変化を生じるときには、追跡 取させた Topliff et al.(1981)の研究に基づいて、チ 調査は正当化される。これらのタイプの試験に関連す アミンの推奨量を 3mg/kg から 5mg/kg に増やした。 る別の問題は、適切な治療速度および適応期間を選択 運動 30 分後の血中乳酸濃度は、最も高いレベルのチ する際に困難を導く用量反応情報の欠如である。 アミンを摂取していた馬のほうが低かったが、乳酸レ 実施される試験の数が限られており、そうした試験 ベルはどの治療群についても比較的低かった(無酸素 を実施することに困難が伴うために、ほとんどの運動 性作業閾値未満)。より多くの馬を用いてより厳しい 能力増強補助手段に対しても反対根拠が存在する。さ 運動試験を行った研究は行われていないが、Knippel らに、実際の遂行状況で十分な対照を使用して検定さ et al.(1986)がチアミン補給によってサイクリスト れた物質は非常に少ない。特に馬を使用する場合、ト の無酸素性作業閾値が上昇したことが報告されて以 レッドミル上で得られた実験室の結果を競馬場や実施 来、その理由となっている。Topliff et al. による研究 会場で得られると思われる効果に変換するは困難であ は、研究すべきチアミンのレベルの範囲に示している る。完全な世界では、各運動能力増強補助手段を実験 ため、有用である。最も投与量が高かった馬からは、 室の状況で検定し、代謝機能と生理学的機能、理想的 尿中にチアミンがより優位に排泄され、4mg/kg の投 な投与速度、 および適応期間を確認することになろう。 与速度と比較して正のチアミンバランスを示していた。 それから実際の性能効果を確認するために実地に試験 することにもなるだろう。この世は完全な世界ではな いので、運動能力増強手段の値の評価は、利用できる 抗酸化剤 情報と新しい情報に対して実施する必要がある。以下、 ビタミン E、ビタミン C、βカロチン、コエンザイ 馬にとって運動能力増強効果による利益があるという ム Q10 を含む抗酸化剤機能のある複数の化合物を競 評判のあるより一般的な補給剤のいくつかを簡単に説 技馬に補給させた。抗酸化剤は、細胞や組織が運動時 明したものである。 に生成される遊離基によって生じる酸化的損傷から保 10 護する。この分野のすぐれたレビューは、既に公表さ て欠かせない。ヒトの場合、15 ~ 16g/dL のヘモグロ れている(Witt et al., 1992) 。ビタミン E 欠乏症の動 ビン濃度が最適な能力のために望ましいレベルである 物は、特に耐久騎乗運動時の疲労時間に関して、身体 と見なされており、このレベルが低ければ最大酸素運 能力が低くなることがあった。ただし、ビタミン E 搬は少なくなる(Weaver and Rajaram, 1992) 。 「運 欠乏症は、馬に一般的に見られるとは思われない。実 動性貧血」すなわちヘモグロビンレベルが減少する症 際、Petersson et al.(1991)は、複数の馬にビタミン 状の発症が、競技選手に関して記載されている(Pate, E 含有量が低い食餌(<15ppm)を与えたが、ビタミ 1983)。ヒトの場合、この症状は訓練に反応した血漿 ン E 欠乏症の臨床的徴候は認められなかった。同研 量の増加、または、運動による鉄貯蔵の減少およびヘ 究では、馬は低ビタミン E 飼料供給の 4 か月後と高 モグロビン喪失レベルの増加から生じる場合がある 栄養飼料(ビタミン E を供給)供給の 1 か月後に実 (Weaver and Rajaram, 1992)。馬が訓練プログラム 施された運動試験に対して似たような反応を示した。 中に血液パラメータの低下を経験することはあり得る また、軽度の調教プログラムを実施した馬は、運動さ が、 こ の 低 下 の 根 拠 に つ い て は 定 義 さ れ て いない せていない馬と同様に、ビタミン E が少ない飼料と (Carlson, 1987)。競技選手、特に女性は、鉄分をわず 多い飼料とに同様に反応した。 かしか摂取しないことがあり、鉄分補給をすると利益 ビタミン E が十分であることは、最適な身体能力 があるように思われる(Lyle et al., 1991; Weinstein のために重要であることは疑いようがないが、推奨レ et al., 1989)。 Colgan et al(1992)は、耐久競技選手 ベルを超えてビタミン E や他の抗酸化剤をしても、一 も鉄に加えて亜鉛、葉酸、ピリドキシン、B12、アス 貫して能 力を改善することはなかった。Witt et al. コルビン酸を補給すると利益があることを示唆してい (1992)は、ビタミン E を補給しても、最大有酸素量 る。 も運動能力も改善することはないことを示唆した。 馬の鉄不足は、実践的な給餌条件ではめったに起こ Shelle et al.(1985)は、補助的ビタミン E を馬に与 ら な い と 考 え ら れ て い る(NRC, 1989)。Kirkham えたが、酸化的損傷/保護の標識であるグルタチオン (1971)は、各種の造血剤に対して馬の血液パラメー ペルオキシダーゼに対してまったく効果が認められな タ は ほ と ん ど 反 応 し な い こ と を 認 め た(1983) 。 かった。コエンザイム Q10 を補給しても、馬や健常 Roberts(1983)は、クイーンズランドで一般的な食 者の行動体力の測定値は改善しなかった(Rathgeber- 餌を与えられていた競走馬は恐らくは十分に B12 を Lawrence, et al., 1991; Braun et al., 1991) 。ヒトにビ 摂取していたと思われるが、その他に葉酸が必要であ タミン C を用いた研究では、矛盾する結果が得られ る可能性があることを報告した。 ており(Bucci, 1989) 、しかも、馬での適量を推定す 馬とヒトの血液パラメータと運動に対する反応を比 ることは、アスコルビン酸の代謝に差があるために困 較する際は、慎重さを要する。明白な違いが 2 つの種 難である。 の間には存在する。馬は脾臓に血液細胞の大部分を貯 蔵する。運動時の貯蔵された細胞の脾臓からの放出で、 造血剤 血中血球細胞とヘモグロビン値が 50%以上増加する 造血剤(blood builder/hematinics)は、馬産業界 その結果、安静時に得られるヘモグロビンの測定値は、 で広範に使用されている。ただし、この実践のための 馬ではなく、ヒトの運動時に得られるヘモグロビンの 研究支援は非常に限られている。 この範疇の化合物(単 相対的な代表値である。馬の場合には、造血剤で安静 独または組み合わせて使用)には、鉄、銅、亜鉛、ピ 時のヘモグロビンがわずかに増加しても赤血球細胞の リドキシン、B12、葉酸を含む。これらの栄養素は、 脾臓からの放出で生じる増加によって、運動中は目立 ヘモグロビン合成と赤血球生成に関係する。十分な量 たなくなると思われる。 ことがある。馬の脾臓はヒトと同様には機能しない。 のヘモグロビンを利用できることは、酸素運搬にとっ 11 電解質は競走馬にとって 必須の栄養素〈3〉 (ケンタッキー・エクワイン・リサーチ社、JOE D. PAGAN 博士の論文から) 電 解質は、溶液中でイオンと呼ばれる帯電粒子に ませる前に測定するべきである。フロリダ州での競走 分離する物質である。馬の場合、電解質は浸透 馬の訓練は、イングランドで行われる訓練よりも明ら 圧、体液平衡、神経活動、筋活動の維持に重要な役割 かに汗の喪失量が多いと思われる。ただし、比較のた 、カリウム を果たす。運動時に、ナトリウム(Na+ ) めに、定期的な運動時の競走馬の汗喪失量については、 + - 2+ 、塩素(Cl ) 、マグネシウム(Mg )は汗や尿 (K ) 5L ~ 10L になると見なすことになる。標準的な耐久 として失われる。これらの電解質の喪失は、疲労や筋 騎乗競技時には、25L の汗が喪失することもあろう。 力低下の原因となり、脱水症に対する渇き反応を減少 一方で、40L の体液の喪失は、疲労して脱水症状の耐 させる。 久騎乗競技馬に死の危険が迫る深刻なときにしか見ら 運動時の馬の電解質喪失量にある程度あたりをつけ れないであろう。 てから、それらの物質を補充するための給餌プログラ ムを開発することは重要である。馬の電解質喪失の大 所有する馬の 1 日あたりの汗喪失がどの程度あれば 半は発汗を通じて起こるので、電解質必要量をさまざ よいかがわからなかったり、所有馬の運動前後の体重 まな汗の喪失量に基づいて計算することができる。運 を計測するための基準を利用できなかったりする人は 動時の体重喪失は、 体液喪失量を概算するのに役立つ。 多い。したがって、運動の強度に基づく、より一般的 この時、体重 1kg(2.2 ポンド)の喪失は、体液 1 リッ な一連の推奨事項を使用することができる。 トルの喪失に等しい。 表 2 に、調整中、軽度/中程度/重度の運動時の 表 1 に安静時と 5L、10L、25L、または 40L の汗を 500kg の馬の 1 日当たりの電解質必要量を示す。表中 喪失する程度に運動した後の馬に必要な 1 日あたりの の値は、Helmet Meyer 博士が算出した。同博士は、 + - + 2+ Na 、Cl 、K 、Mg のレベルを示す。 ドイツの研究者であり、馬の電解質必要量を広範囲に 研究している(Meyer, 1987)。 体液喪失量は、期間、運動の激しさ、温度、湿度な どの複数の要因に依存する。したがって、この喪失を 求める最良の方法は、運動前後の馬体重を測定するこ とである。この時、運動後の馬体重は、馬に何かを飲 表 1.汗喪失の関数としての 1 日あたりの電解質必要量(g/ 日) 電解質 12 汗喪失(L/ 日) 安静時 5L 喪失 10L 喪失 25L 喪失 40L 喪失 ナトリウム(Na+) 10 27 43 93 142 塩素(Cl-) 10 41 71 163 254 カリウム(K+) 25 34 43 70 97 マグネシウム(Mg2+) 10 12 13 19 24 表 2.異なる強度で運動する馬に対するナトリウム、カリウム、塩素、マグネシウムの 1 日あた りの必要量(g/日) 電解質 運動強度 安静 軽度 中程度 重度 10 20 50 125 10 25 70 175 カリウム(K ) 25 30 44 75 マグネシウム(Mg2+) 10 11 14 15 ~ 19 ナトリウム(Na+) - 塩素(Cl ) + 電解質と横紋筋融解症 することきができる。米国のコーネルでの調査からは、 馬の横紋筋融解症すなわちこずみは、競走馬に共通 的に摂取することがわかった(Schryver et al, 1987) 。 安静時の馬が塩ブロックから 1 日あたり約 50g を自主 する問題である。こずみの原因として考えられるもの は複数あるが、イングランドから得られた最近の研究 からは、こずみの症例の多くが電解質不均衡に関連す 電解質の補給 ることが示唆される。ニューマーケット(英国)の 運動中の馬の電解質のニーズを多量の良質の飼い葉 Animal Health Trust の研究者らは、尿中電解質分画 と自由選択で摂取させる岩塩とで満たすことは不可能 排泄試験を行って、こずみの反復的発作を経験してき である。馬医者の多くは、最高の性能を発揮するため た 144 頭 の 馬 に お け る 電 解 質 の 状 態 を 評 価 し た に補充電解質は重要であり有益であると報告してい (Harris and Snow, 1992) 。これらの馬のうち、100 頭 る。電解質はこずみを予防する他に、激しい運動から の電解質平衡が異常値を示していた。問題の 100 頭の 回復し、馬に再び食を進みやすくさせ、運動後に生じ うち 72 頭には、適切な電解質を補充した後、こずみ る必要な回復段階を開始しやすくする。 の症状が見られなくなった。 電解質は競走馬にとって必須であるが、電解質調剤 は馬のニーズに適合するように適切に調合する必要が 著者の印象では、こずみの多くの症例の原因は、飼 ある。人間用の調剤とは異なり、馬の電解質補充剤は、 い葉の不十分な摂取から生じる電解質不足である。馬 糖類に頼るべきではない(ある種の糖類で胃腸管から にとってカリウムの主な供給源は、飼い葉である。一 の吸収が急速にはなるが…)。電解質は、運動時の馬 般に、 干し草は 1kg あたり 10 ~ 20g のカリウムを含む。 から喪失する量だけ補充すべきである。 十分な量の干し草を供給することで、競走馬のカリウ 要するに、電解質は競走馬にとって必須の栄養素で ム必要量のうちかなり多くの量が得られる。 ある。馬は大量の電解質を汗として喪失するのだ、そ 大量のカリウムを供給する以外にも、飼い葉は運動 の必要量は運動の激しさと汗の量に伴って増加する。 をさせた馬の水分のバランスを維持するのに役立つ。 良質の飼い葉を十分に取り、自由に岩塩を摂取させる ドイツの研究からは、 十分な飼い葉を供給された馬は、 ことは、競走馬の電解質必要量の多くを満たすのに役 高濃度の食事を供給された馬よりも運動時の水分とカ 立つ。さらに、市販の電解質補給剤は、電解質の減少 リウムを良好に維持した(Meyer et al, 1987)。残念 を予防するのに役立つが、有益な量の決定的な電解質 ながら、飼い葉に含まれるナトリウム量は非常に少な を与えられているかを決定するために評価すべきであ く、塩素量はわずかである。したがって、ナトリウム る。 と塩素を競走馬に補充する必要がある。競走馬に必要 なナトリウムおよび塩素の一部は、岩塩によって供給 13 競走馬の「コズミ」とは?〈4〉 (英国の栄養学者、Dr. Tom Shurlock 博士の論文から) コ ズミは、炭水化物代謝異常、グルコースの生理 要とし、グルコース代謝によって得られる主要エネル 機能および貯蔵、激しく不規則な運動に特に関 ギーを放出するメカニズムである。収縮時に、ATP 連する症状であり、この症状に最も罹り易いのが競走 は ADP に還元される。この ADP は、クレアチンキナー 馬である。 ゼの作用によって ATP に再リン酸化される場合があ 筋肉の運動に関連する痛みは、3 つの異なるタイプ る。 に区別できる。すなわち、 (1)運動中または運動直後 また、別の重要な酵素も筋活動時のエネルギー伝達 の痛み、 (2)1 ~ 2 日の遅い痛み、 (3)痙攣である。 に関係する。それが乳酸脱水酵素(LDH)である。 この 3 つの痛みの中で、恐らくは遅い痛みが冒頭のコ 激しく運動をした馬は、筋肉に酸素が十分に届かない ズミの症状で最も多く、重大な筋損傷を伴うために最 段階に達する。グルコース分解は、解糖とクレブス回 も厄介であると思われる。 路を経る現象であり、完全な代謝に至るには酸素が必 これには共通の要因がある。それが、筋肉の活動と 要である。酸素が少ないと、クレブス回路に至るまで 回復に関わる生化学機能である。 に分解は停止し、グルコース代謝産物であるピルビン 要するに、筋線維は 2 種類のペプチドから成る。す 酸が乳酸に変換される。乳酸は肝臓で除去されてピル なわち、アクチンとミオシンである。この 2 つが結合 ビン酸に再変換されるが、この回復には時間がかかる。 し、アクチノミオシンというカルシウムによって仲介 筋肉のピルビン酸塩から乳酸塩への変換と肝臓でのそ される反応物を形成する。 の逆への変換の仲介役が、LDH である。 このメカニズムは、ATP の形態のエネルギーを必 コズミに関係する筋線維は、速筋線維だと思われる。 14 この理由は、短時間の急激な収縮に特に適応するから ル補酵素 A に変換される。この化学物質もクレブス である。この筋線維は、血管からは十分に補給を受け 回路に進入することができる。残念なことに、このメ ず(酸素供給量が少ない) 、ミトコンドリアをほとん カニズムは、遅筋線維にしか効果的に作用しないと思 ど含まず(ATP 産生レベルが低い) 、 全力疾走とかギャ われるし(遅筋線維は、耐久騎乗競技で典型的に生じ ロップという言葉で一番良く表現される素早く力強い るより緩慢で持続的な収縮に対応する繊維である) 、 短期間の運動用のものである。 速筋線維への一定のグルコース供給も必要である。コ サラブレッド種やアラブ種を基本とする典型的な競 ズミは、さまざまな程度ですべての種類の筋肉に共通 走馬の速筋線維の割合は、 その他の品種に比べて高い。 して起こり得るものであり、競走馬について言えば、 速筋線維は、競走馬にパワーとスピードを与えるが、 必ずしも PSSM に依存しているとは限らない(3 つの コズミの可能性も高くする。 活動段階がある)。というのは、コズミがあるかどう では、なぜそうなるのか? 筋肉が収縮すると乳酸 かは、速筋線維の使用に依存しており、一定のグルコー が形成されるという基本的な生化学的作用は、すべて ス供給が不可欠だからである。 の動物種に共通する運動に関わる事実であり、時間と 幸いにも、グルコースを産生することができるメカ 共に乳酸が低下し筋肉が回復する。 ニズムや、一定のグルコースを供給することができる 別の要因もある。それは多糖類貯蔵筋症(PSSM) 機序、グリコーゲンへの変換に依存するインスリンを と呼ばれる症状である。動物の体内でのグルコースの 目立たなくすることができるメカニズムがある。 貯蔵形態であるグリコーゲンは、 基本的には、 グルコー プロピオン酸塩は、後腸内発酵で生産させる VFA スに戻すことはできない。 の 1 つであり、体内でグルコースに変換することでき 正常な状態下では、血流に入る高デンプン飼料から る。繊維供給源の中には、他の供給源よりも高い割合 得られたものとして吸収されたグルコースは、運動時 でプロピオン酸が得られるものもあれば、他の供給源 に血液レベルが低下すると、グリコーゲンに変換ある よりも短い期間にかつ効果的に発酵するものもある。 いは再変換される。しかし、PSSM に罹患していると Speedi-Beet(表 4 広告商品)の実質消化率は、ほ この変換が起こらず、速筋線維への ATP の供給は枯 ぼ 100%であり(草では 50%程度)、その発酵経過で 渇してしまう。LDH のレベルが高いと、クレアチン 20%のプロピオン酸塩が生成される(大豆繊維では キナーゼの活性も高まるため、筋収縮に必要な ATP 10%)。このため Speedi-Beet は、クレブス回路にとっ のクレアチンリン酸への依存性は高くなる。つまり、 て最高の VFA 供給源であるだけではなく、競走馬の ATP と ADP の正常な交換は損なわれ、筋線維が動 速筋線維にとっては直接的なグルコース供給源であ かなくなる。PSSM に罹患していなければ、一定のグ る。さらに、Speedi-Beet は、本物の前生物的物質で ルコースが供給され、ATP と酵素妨害は抑制され、 ある。その繊維組成は、恐らくはヘミセルロースの発 運動後の回復中に正常に戻る。PSSM に罹患している 酵を改善することで飼料全体のエネルギーを高めるこ と、グルコースの供給は中断され、馬を数時間歩かせ とによって、食餌中のすべての繊維の実質消化率を改 ないと、 筋肉が固定して受動状態に戻れなくなるため、 善することがわかっている。 筋線維が機械的に損傷する場合がある。 Speedi-Beet は、本物のスーパー線維であり、デン では、これをどのように回避すればよいか? 独自 プン質の飼料の代わりを果たすことができるため、そ 調査から、デンプンを繊維と脂肪に置き換えることで うした飼料に関連する問題の改善に役立てることがで コズミの発生率が低くなることがわかっている。繊維 きる。 発酵の最終生成物(揮発性脂肪酸:VFA)はクレブ ス回路に進入して、乳酸産生を回避し、グルコース由 来の ATP を約 75%生成することができる。長鎖脂肪 酸は、酸化されるときに炭素原子対を放出し、アセチ 15 カルビタ MBP 広告についてのお詫び この度、本誌(エクワインヘルスケアニュース 2011 年 5 月 1 日弊社発行)第 4 号の裏表紙全 面広告におきまして、他社の登録商標を不適切に使用した事実が判明いたしました。また、同誌 とともに皆様にご送付致しました「カルビタ MBP」のパンフレットにおきましても、同様に不 適切な登録商標使用がありました。 関係者各位の皆様に多大のご迷惑をお掛けいたしましたこと心よりお詫び申し上げます。 弊社といたしましては、 今後このような事態が起こらないよう万全の注意を払ってまいる所存です。 平成 23 年 8 月 株式会社レックス [広告商品] EquiShure(エクイシュアー) ― 表 2 野生 Wild ― 6 HEMABUILD(ヘマビルド) ― 7 REGAIN(リゲイン) ― 表 3 Speedi-Beet(スピーディービート) ― 表 4 広告商品のお問合せは 都府県のお問合せ先 JRA ファシリティーズ㈱ 美浦事業所 TEL 029-885-2161 栗東事業所 TEL 077-558-0319 北海飼料販売㈱ TEL 077-558-2468 ㈱渡辺商店 TEL 029-885-1270 ㈲アスコットコーポレーション TEL 029-885-8199 北海道のお問合せ先 ㈱レックス TEL 0146-42-3600 発行・編集:株式会社レックス 〒 056︲0001 北海道日高郡新ひだか町静内目名 491︲2 TEL 0146︲42︲3600 Fax 0146︲43︲3502 HP:http://www.lex-inc.com 16 リゲイ ン エレクトロライトサプリメント 水分吸収と疲労回復を助ける リゲインの特長 □ □ □ □ 期待される効果 発汗で失った水分補給をサポートします。 発汗で失った電解質を速やかに補給します。 アルカリ剤不使用。競馬施行規則に違反しません。 水分と電解質の不足からくるトラブルを改善します。 ・脱水症状やアルカローシスの予防・改善します。 ・運動能力の低下を防ぎます。 ・熱中症・無汗症・スクミなどを予防・改善します。 疲労回復 発汗時の栄養補給 サプリメント成分 (1kg 中 ) 配合成分比率 発汗後の水分補給では、汗で失う電解質(ナトリウム・マグネシウム・ カリウムなど)を一緒に摂取する必要があります。リゲインは馬の 汗とほぼ同じ比率で電解質を含んでいて、発汗で失った成分を速や かに補給できます。 リゲイン活性成分 馬の汗の成分 53% 2% カリウム 54% 25% 2% ナトリウム マグネシウム カルシウム 塩化物 468.5g マグネシウム 17.25g カリウム 152g カルシウム 6g ブドウ糖、フレーバー 29% 1% 21.5g その他に含まれる成分: 15% 18% ナトリウム 1% 塩化物
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