ボルゲーゼ美術館展 - 京都国立近代美術館

2009 年 6 月 25 日
ボルゲーゼ美術館展
ラファエロ、ボッティチェッリ、カラヴァッジョ・・・華麗なる貴族のコレクションから厳選した名品を紹介!
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会期・会場 : 2009 年 10 月 31 日(土)~12 月 27 日(日)
2010 年 1 月 16 日(土)~4 月 4 日(日)
京都国立近代美術館
東京都美術館
ラファエロ・サンツィオ《一角獣を抱く貴婦人》1505/06 年
このたび、京都国立近代美術館と東京都美術館におきまして、「ボルゲーゼ美術館展」を開催いたします。
イタリア・ローマ市北東部の広大なボルゲーゼ公園に位置する同美術館は、名門貴族であったボルゲーゼ家歴代のコレクション
で知られており、世界に名だたるルネサンス・バロック美術の宝庫といわれています。
本展はその珠玉のコレクションから選ばれた、ラファエロやボッティチェッリといったルネサンスを代表する巨匠を始め、バロック絵画
の先駆けであり、「最初の近代画家」ともいわれるカラヴァッジョ、そしてジャン・ロレンツォ・ベルニーニなど、文字通りイタリア美術の
最盛期を概観できる内容となっています。
今回はボルゲーゼ美術館のコレクションを日本でまとめてご紹介する初めての試みであり、15世紀から17世紀まで、歴史の推
移に沿って作品を見ていただくことで、“輝ける時代”に展開した「表現の変遷」をわかりやすく理解できる構成を採る予定です。ま
たローマ教皇と枢機卿を輩出したボルゲーゼ家の歴史に加え、17世紀に建てられた「ヴィラ・ボルゲーゼ」を現在も展示室とする、
美術館の壮麗な建築もご紹介します。
カラヴァッジョやベルニーニのパトロンであった枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼ(1576-1633)と彼を起点に築き上げられていったボル
ゲーゼ・コレクション誕生の背景を知ることは、ルネサンスからバロックへと到る、歴史上まれに見る時代のうねりと、固有の文化の在
り方を日本の鑑賞者が理解していく、得難い機会になることでしょう。
およそ250年に渡るイタリア美術の流れを、約50点の名品の数々によってご覧いただく本展は、ラファエロの《一角獣を抱く貴婦
人》をハイライトに、カラヴァッジョという「異端者」とその追随者(カラヴァジェスキ)たちが登場する終盤に向けて、われわれに忘れが
たい印象を残すものになると確信しております。
【展覧会構成と主な作品】
■ 序 章 ボルゲーゼ・コレクションの誕生
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ [1598-1680]
《枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼの胸像》
1632 年頃 大理石 高さ 80.1 ㎝
教皇パウルス5世の甥であり、17 世紀のローマを代表するパトロンであった枢機卿
シピオーネ・ボルゲーゼ。気に入った美術品を得るためには、手段を選ばなかった
という枢機卿は、ベルニーニの後援者でもありました。ベルニーニは、彫刻家、画
家、建築家として、当時最も影響力を持っていた芸術家です。ローマ教皇庁の最
高顧問として権力を握り、情熱的な収集家であったシピオーネ。その相貌には、
自信に満ちた風格が感じられます。
■ 第1章 15世紀・ルネサンスの輝き
サンドロ・ボッティチェッリ [1445-1510]とその弟子たち
《聖母子、洗礼者ヨハネと天使》
1488-90 年 テンペラ、板 直径 170 ㎝
工房で弟子と共に制作された作品です。聖母マリアと幼子のキリスト
を中央に、跪く洗礼者ヨハネと6人の天使が複雑に配されています。
円形の絵画(トンド)は、ルネサンスの聖母子像によく見られるもの。
ボッティチェッリが活躍したフィレンツェで特に好まれました。聖母マリア
に抱かれたキリストは、右手で祝福のポーズを取り、左手にザクロを
持っています。数多くの実をつけるザクロは「豊穣多産」や「復活」の
象徴とされました。
ラファエロ・サンツィオ [1483-1520] 《一角獣を抱く貴婦人》
1505/06 年 油彩、板で裏打ちしたカンヴァス 67×56 ㎝
画家 20 代前半の作品です。安定した構図と精妙な描写からは、若き天才の驚
くべき手腕を認めることができるでしょう。「貞淑」の象徴である一角獣(ユニコー
ン)を抱く女性の姿には、ダ・ヴィンチの影響が見受けられます。かつては別人によ
り一角獣をぬりつぶされ、ある聖女像に描き変えられていましたが、20 世紀に行
われた修復の結果、本来の姿を取り戻しました。気品に満ちたモデルが誰だった
のかは、現在もわかっていません。
■第2章 16世紀・ルネサンスの実り ―百花繚乱の時代
パオロ・ヴェロネーゼ [1528-1588]
《パドヴァの聖アントニオの説教》
1580 年頃 油彩、カンヴァス 104×150 ㎝
アントニオは、ヴェネツィア西方の都市パドヴァで没した聖フラ
ンシスコ会の修道士です。彼にまつわる伝説は数多く、「魚へ
の説教」もその一つ。聖人の話を聞くために、魚たちが崖の下
へ集まって来ています。ヴェネツィア派を代表するヴェロネーゼ
は、豊麗な画風で知られますが、本作では空と海の奥行きを
強調する構図を採り、「奇跡の瞬間」を劇的に描き出してい
ます。アントニオが持つ白いユリは、彼の純潔さを象徴するも
のです。
■ 第3章 17世紀・新たな表現に向けて ―カラヴァッジョの時代
カラヴァッジョ [1571-1610] 《洗礼者ヨハネ》
1610 年頃 油彩、カンヴァス 152×125 ㎝
38 歳で亡くなったカラヴァッジョ最晩年の一点です。口論の末に殺人を犯
し、逃避行のなかで描かれた本作は、恩赦のとりなしを期待して、パトロン
であった枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼへ贈られる予定であったといいます。
しかし枢機卿が絵を手にしたのは、画家が短くも波乱に富んだ生涯を閉じ
た後のことでした。ドラマチックな光によって暗闇から浮かび上がるヨハネは、
けだるそうな雰囲気を漂わせ、妖しい魅力をたたえています。
【開催概要】
会
場
会
期
開館時間
休館日
主
催
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京都国立近代美術館
2009 年 10 月 31 日(土)~12 月 27 日(日)(52 日間)
午前 9 時 30 分~午後 5 時 (入館は閉館の 30 分前まで)
月曜日 ※ただし、月曜が祝日の場合は開館、翌日休館。11 月 2 日(月)ならびに 11 月 23 日(月)は開館
京都国立近代美術館、NHK京都放送局、NHKプラネット近畿
会
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開館時間
休館日
主
催
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東京都美術館
2010 年 1 月 16 日(土)~4 月 4 日(日)(68 日間)
午前 9 時~午後 5 時 (入館は閉館の 30 分前まで)
月曜日 ※ただし月曜が祝日の場合は開館、翌日休館
東京都美術館、NHK、NHKプロモーション
【ボルゲーゼ美術館】
ボルゲーゼ美術館(Galleria Borghese)は、ローマ市北東部、ピンチアーナ門の北側に拡がる広大なボルゲーゼ公園(Villa
Borghese、約 5 平方キロメートル)の中に建っています。ローマの名門貴族ボルゲーゼ家のシピオーネ・カッファレッリ=ボルゲーゼ
(Scipione Caffarelli-Borghese, 1576-1633)枢機卿によって、1605 年に購入されたこの敷地には、もともと葡萄園や菜園、そして
厩舎や倉庫、ならびに珍しい動植物を集めた動植物園や鳥舎や噴水があり、さらに 17 世紀にはすでに、古代彫刻の名品がある
ことで知られていました。彼は広大なこの庭を整備するとともに、古代ローマの荘館に着想を得て、お抱え建築家ヨハン・ファン・サン
テン(伊名:ジョヴァンニ・ヴァサンツィオ)とフラミニオ・ポンツィオに依頼し、1612 年から 1615 年にかけて、ここに夏の離宮であり彼の
芸術コレクションを収め展示するためにこの館を建てさせました。シピオーネ枢機卿が当時の教皇パウルス 5 世の甥であったことから、
大理石で飾られたこの白亜の館は、教皇庁の迎賓館としても使われ、完成直後の1615年には日本の支倉常長率いる慶長遣欧
使節団がここを訪れて歓待されています。美術館のコレクションの基礎になっているのは、シピオーネ枢機卿が収集した素晴らしい
古代彫刻の数々とルネサンスから彼の生きた時代、つまりバロックにかけての彫刻・絵画です。中でも枢機卿が好んだ彫刻家ジャ
ン・ロレンツォ・ベルニーニと画家カラヴァッジョの作品は点数も多く、この美術館のコレクションの核をなしています。ただ、この館にもと
もと展示されていたのは、古代芸術と彫刻のコレクションとわずかな絵画作品だけであり、ローマ市内中心部にあるボルゲーゼ宮に
収められていた絵画コレクションの大半が、ここに展示されるようになったのは 1891 年のことでした。19 世紀になるまでコレクション全
体は、貴重な追加購入などがあった以外、散逸することなく奇跡的にほぼ完全な形で保たれていました。しかし、1807 年にカミッ
ロ・ボルゲーゼとナポレオンの妹であるパオリーナ・ボナパルトが結婚することで、ナポレオンの圧力により、ボルゲーゼ家はコレクション
から古代彫刻やレリーフを中心に約400 点もの作品を売却し、それらは現在ルーヴル美術館のボルゲーゼ・コレクションとなっていま
す。その他、17 世紀絵画の多くが散逸したと伝えられていますが、現在でもボルゲーゼ美術館には、ベルニーニやカラヴァッジョの諸
作品をはじめとして、ラファエロの《一角獣を抱く貴婦人》(1505/06 年)や《キリストの埋葬》(1507 年)、コレッジョの《ダナエ》
(1530/31 年)やティツィアーノの《聖愛と俗愛》(1514 年)などの名作が収められており、世界で最も著名かつ重要な個人コレクショ
ンとしてその名を馳せています。これらボルゲーゼ家のコレクションは、1902 年にイタリア国家の管轄下となり、館は美術館として一
般に公開されるようになりました。そして 1997 年には、竣工当時の記録などを元にして進められた建物の修復工事が完成し、白
大理石による往年の輝きが蘇って現在に至っています。
【本展に関するお問合せ先】
「ボルゲーゼ美術館展」広報事務局 (株式会社株式会社 スプレ・エイディー内)
TEL:03-3560-8223
FAX:03-3560-0855
〒106-0041 東京都港区麻布台 2-3-22
担当/浅井、相原、増川、高橋