竹中 レポート2010 竹中工務店 環境社会報告書 会社概要 社 創 名 立 事業内容 株式会社竹中工務店 1.建築工事及び土木工事に関する請負、 設計及び監理 1899年 (明治32年) 2.建設工事、地域開発、都市開発、海洋 資 本 金 500億円 (2010年3月現在) 環境整備等のプロジェクトに関する調 売 上 高 11,759億円 (2009年度連結) 査、研究、測量、企画、評価、診断等の 従業員数 7,829人 (2010年4月現在) 事 業 所 本社 大阪市中央区本町4-1-13 15,000 開発、宇宙開発、エネルギー供給及び 10,000 エンジニアリング及びマネジメント 12,978 11,759 10,525 9,839 2007 2008 (年) 2009 経常利益 4.不動産の売買、 賃貸、 仲介、 斡旋、 保守、 (億円) 管理及び鑑定並びに不動産投資に関 200 機材センター 100 (%) 単体 連結 単体 連結 275 2.1 167 255 2.0 152 2.5 184 2.0 157 1.6 1.6 経常利益率 300 経常利益 するマネジメント 他 技術研究所 1.5 1.4 2007 2008 2009 (年) 組 織 図 (2010年4月現在) 株主総会 監査役会 取締役会 本社 支店及び事業本部 監理室 コンプライアンス部 業務監査部 社 長 副社長 品質監査部 社長室 営業各部 プロジェクト開発推進本部 医療福祉本部 企画室 広報部 エンジニアリング本部 TQM 推進室 環境・エネルギー本部 土壌環境本部 製造・物流施設本部 原子力火力本部 先進構造エンジニアリング本部 地球環境室 インフォメーションマネジメントセンター <総務・人事機能> 総務室 営業所 東京本店 横浜支店 東関東支店 本店内標準組織図 北関東支店 総務部 名古屋支店 経理部 人事部 大阪本店 営業部 京都支店 <設計機能> 作業所 地区 FMセンター 東北支店 営業本部 <企画機能> (支店) 北海道支店 <営業機能> 設計部 見積部 法務室 設計本部 神戸支店 人事室 ワークプレイスプロデュース本部 四国支店 工務部 広島支店 設備部 <財務機能> <生産機能> 生産本部 財務室 関連会社管理部 技術企画本部 技術研究所 調達部 技術部 FM 部 九州支店 調達本部 <技術開発機能> 安全環境本部 国際支店 FM 本部 開発事業本部 大阪駅北地区開発推進室 安全環境部 品質管理部 集合住宅センター 機材センター 本社 横浜支店 大阪本店 大阪市中央区本町 4 - 1- 13 横浜市西区花咲町 6 - 145 大阪市中央区本町 4 - 1- 13 広島市中区橋本町 10 -10 〒 541 - 0053 06 - 6252 - 1201 〒 220 - 0022 045 - 321 - 1261 〒 541 - 0053 06 - 6252 - 1201 〒 730 - 0015 082 - 212 - 0111 北海道支店 東関東支店 京都支店 九州支店 札幌市中央区大通西 4 -1 千葉市中央区中央港 1 - 16 -1 京都市中京区壬生賀陽御所町 3 -1 福岡市中央区天神 4 - 2 - 20 〒 060 - 0042 011 - 261 - 2261 〒 260 - 0024 043 - 242 - 0525 〒 604 - 8811 075 - 801 - 2131 〒 810 - 0001 092 - 711 - 1211 東北支店 北関東支店 神戸支店 仙台市青葉区国分町 株主総会 3 - 4 - 33 〒 980 - 0803 022 - 262 - 1711 さいたま市大宮区仲町 2 - 25 取締役会 東京本店 東京都江東区新砂 1- 1- 1 〒 136 - 0075 03 - 6810 - 5000 広島支店 神戸市中央区磯上通 7 - 1- 8 〒 330 - 0845 048 - 647 - 4471 監査役会 本社 〒 651 - 0086 078 - 265 - 3300 支店及び事業本部 名古屋支店 四国支店 名古屋市中区錦 1 - 18 - 22 監理室 〒 460 - 8633 052 - 211 - 2111 高松市西内町 12 -11 千葉県印西市大塚 1- 5 -1 〒 760 - 0022 087 - 851 - 1175 〒 270 - 1395 0476 - 47 - 1700 コンプライアンス部 竹中技術研究所 業務監査部 1 社長 副社長 TAKENAKA es report 2010 品質監査部 社長室 <企画機能> 企画室 広報部 <営業機能> 営業本部 営業各部 プロジェクト開発推進本部 医療福祉本部 (億円 13,085 10,394 5,000 3.土地の造成並びに住宅の建設 営業所 52カ所 単体 連結 売上高 取締役社長 竹中 統一 売上高 代 表 者 国内本支店 13カ所 売 売上高 (億円) 北海道支店 東北支店 東京本店 横浜支店 (支店) 作業所 地区 FMセンター 営業所 経常 (億円 目次 01 02 03 05 07 09 •この報告書は「持続可能な社会への貢献」に向けた当社の 取り組みをステークホルダーの皆様にわかりやすく報告 するために発行しています。 13 17 18 編集方針 トップメッセージ 特集 特集 自社オフィスにおける省エネへの取り組み 地域の人々とともに 「建築」 を愉しむ 竹中のビジョン 美しい地球を未来の子供たちに遺す 地球温暖化防止への取り組み 資源循環の推進 生物多様性の保全 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 11 編集方針 会社概要 •報告書名はenvironmental (環境の) 、social (社会の) の頭 た。 •全 体構成は「4つの想い」に沿い「12の取り組み」の順に 報告しています。 •環境関連データの一部はwebサイトに掲載しています。 •わかりやすさを重視し、 専門用語には注釈を添えました。 •経済性報告は有価証券報告書をご覧ください。 19 20 23 24 地域社会の持続的発展に寄与する 歴史と文化の継承と発信 次世代を担う人材育成の支援 地域への貢献 地域社会の 持続的発展に寄与する 文字から 『esレポート』 としています。 • 「特集」を組み、社会的関心の高い事項として記載しまし http://www.takenaka.co.jp/corp/bspl.html 竹中工務店の「変わらない想い」を紙飛 行機に託し、皆様にお届けします。そして 一人の青年の生涯を通して、成長してい く自然、街並み、人々の暮らしをシリーズ で表現していきます。 25 26 27 29 お客様の信頼を得つづける 安全・安心・豊かさの追求 お客様の信頼を 得つづける 表紙への想い 最良の品質をお届けするために 新しい建築を目指した技術開発 イラスト:上村奈央 2009年1月〜2009年12月 当該年以外の活動も一部掲載しています。 31 私たち自身が成長しつづける 明日を担う人材の育成 32 33 35 いきいき働ける職場づくり 環境省の「環境報告ガイドライン2007年版」を参考にしま 37 グループ会社とともに ■発行 2010年6月 (次回発行予定:2011年6月) 39 40 41 43 44 ■対象範囲 竹中工務店の活動を中心に、一部グループ会社の活動を含 んだ内容としています。 私たち自身が 成長しつづける ■対象期間 安全衛生を確保するために ■参考ガイドライン した。 なお、より多くの皆様にお読みいただけるよう、webサイト においても公開しています。 ▶竹中工務店コーポレートサイト 環境・社会貢献活動ページ www.takenaka.co.jp/enviro お問合せ先 地球環境室 03-6810-5180 www.takenaka.co.jp 45 47 49 50 コーポレートガバナンス リスクマネジメント コンプライアンス ステークホルダー・ダイアログ マネジメントレビュー 2009 年実施事項と今後の主な活動 環境活動データ 外部表彰 活動年表 TAKENAKA es report 2010 2 トップメッセージ サステナブル社会の構築に向けて 当社の責務 当社は 「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」 と経営 れ、地域の方々にも親しまれるようになること、同時に 「も 理念に掲げ、創立以来品質重視の姿勢を貫き、時代や社 のづくり」の過程において様々なステークホルダーの方々と 会が要請する建築を提供してきました。私たちの想う品質 協働し、ともに成長していくことで、サステナブル社会に とは建物の品質だけを指すのではなく、 「企業活動全体の 一歩ずつ近づいていくこと、それが私たちの切なる願いで 質」 を指すものであり、その改善とたゆまぬ追求によってこ あり目標です。 そ、価値ある建物を社会に提供できると考えます。そして、 この一連の活動を 「品質経営」 と称して経営の根幹に据え てきました。また社是の冒頭に 「正道を履み、信義を重んじ 堅実なるべし」 と述べ、役員をはじめ従業員の一人ひとりが 地球環境の保全 温室効果ガスの削減は、世界的な課題となっています。昨 社会のルールに基づき行動することを求めており、これが 年末に行われた締約国会議では、各国の将来の削減目標 当社のガバナンスとコンプライアンスの原点となっています。 についての方向性が議論されましたが、こうした潮流は今 人と自然をつなぐ 3 感性や創造性を高める建築へと発展させていく必要があ ると感じています。そしてそれらの「作品」がお客様に喜ば 後ますます強くなり、建築や都市のあり方にも大きな転換 がもたらされることと思われます。私たちはこうした社会か らの要請に応えるために、ゼロカーボンからカーボンニュー 当社は建築の全工程で「ものづくり」にこだわり、当社が携 トラルへ、すなわち温室効果ガスの排出をゼロに近づける わった建物を 「作品」 と呼んでいます。社会が変化する中 だけではなく、自らがエネルギーを生み出し、街に供給す で、今後、私たちに求められる 「作品」 とは、人と自然が る、そのような建物・都市づくりを目指しています。そのため、 調和する建物ではないかと考えています。従来のエネル 環境をテーマにした社内デザインコンペティションをはじめ、 ギーを多用して室内をコントロールする建築から、光や水、 様々な取り組みを加速させています。また、本年10月には 風といった自然の力を活かし、人と自然をつなぎ、人々の 生物多様性に関しての締約国会議が名古屋で開催されま TAKENAKA es report 2010 す。地球上のあらゆる生物を守り、共存していく取り組み 動の時代においても、建築を通して社会に貢献することを も資源循環に加え今後一層強化していく必要があると感じ 示した経営理念は、 決して変わることなく私たちの心に脈々 ています。 と受け継がれています。 「竹中esレポート2010」では、こ 社会とともに 建築専業の企業として事業を継続していく中で、当社らし の経営理念に基づいた「サステナブル社会を目指す当社の 想いと取り組み」を紹介しています。より多くの皆様にご理 解いただくとともに、心の通ったコミュニケーションを交わ す機会が得られますよう祈念します。 く社会に貢献できる活動を行っています。その一つに 「ギャ ラリー A4」があります。当ギャラリーは、 「建築・愉しむ」 をコンセプトとして2005 年に東京本店社屋内に開設いた しました。最新のテクノロジーから、アート・写真・映像 などを用いて、建築を中心とした歴史や文化にかかわる企 画や講演会などを開催しています。この活動から 「ものづく りの愉しさ」や「建築の持つ芸術性や文化」にひとりでも多 くの方々が興味や関心を持たれ、またそれが次の世代に 伝わっていくことで、建築文化の発展につながることを願っ ています。 今、社会そして世界経済は大きな転換点を迎えています。 多くの国々や企業が変革によりこの状況に対応しようとし ており、当社においてもこの難局に立ち向かうために様々 な構造改革を推進しています。しかし一方で、そうした激 2010 年 6 月 取締役社長 TAKENAKA es report 2010 4 特 集 自社オフィスにおける 省エネへの取り組み 竹中工務店東京本店 所 在 地:東京都江東区 新砂 1―1―1 建 築 面 積:5900m2 階 数:7 階 容積対象床面積:29,750m2 基 準 階 床 面 積:4,150m2 基準階専有部床面積:3,540m2 従 業 員 数:約 2,100 人 執 務 開 始:2004 年 10月末 温室効果ガス排出の面で、オフィスや家庭でのエネルギー使用量の増加が大きな問題に なっています。竹中は省エネ性能の高い建物を提供していますが、エネルギー使用量は 同じ建物でも使い方によって大きな差があることが珍しくありません。当社は自社オフィ スで建設業らしい使い方を実践したいと考え、様々な取り組みを行っています。2004 年に新社屋を稼動させた東京本店での活動を紹介します。 PLAN 省エネに向けた体制作り 東京本店社屋は、高効率設備機器や自然換気などを組み た活動を開始しました(図 2)。社内の建築技術者自身が建 込んだ当時の先端省エネ建物です(図 1)。しかし、本来の 物の運用・チューニングに参加しているところが一般企業 機能を発揮するためには、運用段階での継続的な調整が と違っています。また、BEMS ①を新社屋に装備し、竣工 必要です。当社は入居当初より建物運用の最適化を推進 と同時に稼動させ、活用してきました。 する 「ビル運用ワーキンググループ(以下 WG) 」はじめ支援 ① BEMS:Building and Energy Management Systemの略。建物の使用エネ WGを設置し、エネルギー使用量の継続的な削減を目指し 図1:東京本店社屋基準階パース ルギーや室内環境を把握し、省エネルギー化に役立てていくシステム。 図2:ビル運用体制図 低温水大温度差搬送 ビル運用WG 高機能外壁 自然風利用ハイブリッド空調機 光庭 オフィス 従業員 事務局:総務部 計画立案・承認、 改善依頼 他 ビル メンテナンス 会社 ペリメータ高温暖房 光庭 基準階 10ゾーンの設備モジュール 新天井システム ダンボールダクト DO 5 TAKENAKA es report 2010 省エネWG 事務局:設計部 チューニング計画、 改善提案 他 データ分析・検討WG 事務局:FM部 チューニング実施、 データ収集 他 DO 従業員の心がけと施設面の工夫 ─ 両面からのアプローチ 従業員の心がけと協力 照明リモートスイッチの設置 環境月間における胸章の着用、環 境貢献賞における 「オフィス・家庭 部門賞」の創設など、従業員の啓 発活動を実施。パソコンモニター の離席時電源オフや、 クールビズ・ ウォームビズでの着衣による調整 環境月間に配付した 従業員啓発用胸章 を推進しました。冬季の暖房運転 時間の短縮や昼休み・夜間の一斉消灯などのルールを設け従業 員の協力を得ました。 2006 年の調査で、一次 エネルギー消費の40% 以上が時間外勤務と土 日休日勤務であることが 判明しました。時間外勤 務の削減と同時に、照明 は使用者の身近に置い 照明リモートスイッチ たリモートスイッチでも操作できるようにし、必要部分だ けの点灯をしやすくしました。 ハイブリッド空調制御の継続的改善 照度設定の見直しとタスクライトの設置 自然通風を併用したハイブリッ 自然 空調冷風 ド空調の運転制御方式を継続 自然 給気 排気 送風運転(小風量) 的に改善するとともに、その効 冷水 果を温熱環境の測定データだ 自然通風 + 空調併用モード けでなく、快・不快感や着衣量 アンケートを用いて確認してきました。クールビズ・ウォームビズ のねらいを、快適性を確保しつつ実現しています。 CHECK 当初の天 井の全 体 照 明 大梁 750lxを650lxに抑えまし た。不便さを感じる可能性 タスクライト のある部分の机については タスクライトを設置すること で、照明エネルギーを抑え 大梁下のタスクライト つつ使い勝手を確保しました。 年間エネルギー使用量を旧社屋から47%削減 2009 年のエネルギー使用量を稼動初年度 2005 年の使 社屋と比較すると、2005 年にはすでに34%の削減を実 現していたため、合計すると47%の大幅な削減となりま す(図 3)。省エネ設計、高効率の設備などハード面の活 1次エネルギー使用量 用実績に比べ20%(9,893GJ /年)削減できました。旧 図3:年間エネルギー使用量の推移 (GJ/年) 用とともに、運用によるソフト面でのきめ細かい取り組み が 、 省エネルギーの推進に有効なことが実証されました。 ACTION 70000 34%削減 77,340 47%削減 (20%削減) 50000 50,735 48,236 47,896 45,850 2006 2007 2008 30000 40,842 10000 旧社屋 2005 2009 (年) 「竹中esレポート2008」7 ページ図 2のグラフに一部誤りがありましたことをお詫びします。 さらなる省エネと今後の展開 さらなる省エネを目指し現在進めているのが、タスク・アン 膜吹き出し ビエント照明です。照度を抑えた蛍光灯と個別の照度調節 パーソナル吹き出し 可能なLED 照明の組み合わせで、使用電力を削減します。 また、パーソナル吹き出し空調も試験的に採用し、光環境 満足度や省エネ効果を調査しています。さらに、人が本来 持っている生体リズムに適った照明手法を研究開発(29 LED 照明 (白色、電球色) LED 膜照明 (白色、電球色) ページ参照) しています。建物ごとに方法は異なりますが、 使い手としての省エネ活動を全社に展開していきます。 様々なLED 照明と空調の採用例 (MJ) 1次エネルギー消費量[MJ PLAN 2000 1,705 1500 1000 1,622 1,610 1,541 TAKENAKA es report 2010 6 特 集 地域の人々とともに 「建築」 を愉しむ ▲ 4 GALLERY A(ギャラリー エー クワッド) http://www.a-quad.jp 4 GALLERYA(ギャラリーエークワッド) は、6 年前に本社を東陽町に移転するのを機 に開設されました。街並みの乱れや環境課題が日々深刻さを増す中で、 それと深く関わっ ている「建築」に対する人々の関心はさほど深くはありません。私たちは、人々に建築へ の眼差しをより深めてもらい、その結果としてそれらの諸問題解決へ貢献していくことが できればと考えています。 4 つの 「A」 GALLERY A4 では、4つのキーワードを基に企画・運営し 建築そのものを取り上げるというよりは、その周辺の事象を ています。 取り上げ、より近づきやすい身近な話題の中から 「建築」を A1(ART) :アートから建築に近づく 考えるという手法を採っています。制作に当たっては、社 A2(ARCHITECTURAL PHOTO) :写真から建築に入る 内における文化意識高揚や社内交流を目的に、企画から A3(ARCHITECTURE) :歴史から建築を考える ポスターデザインまで全て社員の手作りです。フィギュアや A4(ATMOSPHERE) :建築から社会を見つめなおす パネル制作には美術系学生にも参加していただいています。 毎年約 8つの企画展示を軸に、専門家をお招きしたシンポ 2009 年には、 「世界の建築スクール展」 「的川泰宣展」は ジウムや、子供たちも愉しめるワークショップを開催します。 じめ、8つの企画展示を軸に活動しました。 「世界の建築スクール 「世界の建築スクール展」会場風景 展」 ポスター 7 TAKENAKA es report 2010 竹中大工道具館「錺 (かざり) 展」 体験ワークショップ 「聴竹居」 と藤井厚二展 聴竹居見学会風景 「聴竹居」 と藤井厚二展 聴竹居内観 宇宙から地球環境を考える―的川泰宣展― この展覧会は、2009 年の初夏に行いました。日本の宇宙開発のリーダーとして活躍して こられた的川泰宣先生に登場していただき、宇宙の不思議や美しさを紹介。宇宙から地 球環境を考える機会を持ちました。 「月に住む家」 アイディアコンペの開催 ワークショップ 「皆既日食を愉しもう!」 の開催 ワークショップに参加してくれた子供たち 2009年は世界天文年、 国際宇宙ステーション (ISS) に若田 応募作品の選定風景 光一宇宙飛行士が日本人として初めて長期滞在しました。 もしも、あなたがそう遠くない未来に月で暮らすことになっ また、皆既日食が日本でも7月に見られるなど、宇宙への たら、どんな家に住みたいですか?という課題で皆さんの 関心が高まる年でした。GALLERY A4 では、子供たちと 自由な発想とアイディアを募集しました。応募者は一般部 一緒に、皆既日食が起こる理由や地球と太陽の距離・大 門138 名、子供部門101名でした。審査員には的川泰宣 きさの違いについて、模型やこもれび実験、日食メガネづ 先生をはじめ、漫画家の松本零士さん、美術評論家の酒 くりを通して学びました。 井忠康さん他にお願いし、実現の可能性が見える作品や、 子供らしい夢いっぱいの作品が選ばれました。 小さな月の模型を使った 皆既日食のしくみ体験 最優秀賞受賞作品 館長の想い 太陽を模した大型パネル 子供部門入選の一作品 これからも建築を愉しんでもらえるよう、挑戦していきます 「よりよい作品を社会に提供する」ことは、建築 まずは難しいことを考えずに、 「建築・愉しむ」 に携わる企業として当然の社会的使命といえま というコンセプトのもと、建築を取り巻く様々 やノウハウの蓄積もしてきました。一方で、建 き続き、よろしくご支援ください。 す。そのために日々研鑽を積み、新技術の開発 築文化の普及のためには、人々の建築への関心 な事柄に挑戦していきたいと考えています。引 を高めることも大切ではないかと考えています。 GALLERY A4 館長 川北 英さん TAKENAKA es report 2010 8 竹中のビジョン 「想いをかたちに」 する企業として サステナブル社会の構築に貢献します 竹中は創立以来、お客様の「想いをかたちに」することを通 - 企業理念 - して、「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」ことを使 命としてきました。そのために、社是を基本姿勢とし、手 経営理念 がける建築の一つひとつを「作品」と称して丹精を込めてつ 最良の作品を世に遺し、社会に貢献する くってきました。そして、お客様満足や社会の信用を得て 社是 企業の社会的価値を高める「品質経営」を継続してきました。 正道を履み、信義を重んじ堅実なるべし 時とともに社会環境は変化し、建築に求められる機能や価 勤勉業に従い職責を全うすべし 値も変化しています。しかし、建築・都市を次の世代の人々 研鑽進歩を計り斯道に貢献すべし も豊かに、安心して暮らせる場にしたいという私たちの想 上下和親し共存共栄を期すべし いは不変です。社会のサステナビリティ−(持続可能性) 、 企業の社会的責任が問われる今、改めて当社の原点である 「企業理念」を一人ひとりが胸に刻み、 「品質経営」を推進し - 品質経営基本方針- ていかなければならないと考えます。 品質重視の経営に徹し 新しい環境創造への挑戦により お客様満足と社会の信用を得る サステナブル社会の構築に向けた 4 つの想い 私たちはサステナブル(持続可能な)社会を構築するために4つの想いをかたちにします。 そしてこれらがバランスを保ち、相乗効果を与え合うよう努めていきます。 美しい地球を未来の 地域社会の 子供たちに遺す 持続的発展に寄与する 私たちは、人と自然にやさしい建物をやさしく 私たちは、地域社会と良好な関係を構築し、 つくり、やさしくつかいつづけることで、豊か 建築を通して社会貢献活動に努めます な自然を守り、次世代に引き継いでいきます サステナブル 社会 私たちは、社会人として義務と責任を果たし、 私たちは、建物のライフサイクルにおいてお客 建築のプロフェッショナルとして学び、次世代 様の満足を得るとともにお客様の信頼を得つ に技術を伝え、企業と社会を支えていきます づけることで企業としての持続的発展を目指し ます 私たち自身が 成長しつづける 9 TAKENAKA es report 2010 お客様の信頼を 得つづける 12 の取り組み 私たちは建設業として、そして企業市民として、これらの の取り組みを推進しています。その中にはすでに年月をか 取り組みを着実に実行していくことでサステナブル社会の けて進めてきた取り組みもありますが、改めて力を入れな 構築に貢献していきたいと思います。 ければならないものもあります。 地域社会の 持続的発展に寄与する 建物のライフサイクルで排出されるCO2 を削減する 自然との共生に 貢 献 する 新 技 術・手法の開発 と適用に取り組 む 地球温暖化防止 地域の人々や子供たちと のふれあいを通じて、次世 代を担う人材育成を支援 する 歴史と文化 資源循環 育成支援 生物多様性 地元の材やサー ビスを活用し、コ ミュニティの活 性化に寄与する 地域貢献 私たち自身が 成長しつづける サステナブル社会 人づくり 従業員の能力を 高め社会に貢献 できる人材を育 てる 従業員・作業員がやりが いを持つ環境を整え、自ら 成長する風土を醸成する 従業員・作業員が安全で快適に働ける 職場を実現する 私たち自身が 成長しつづける 豊かさの提供 やりがい 安全と健康 最良の品質 技術開発 お客様の信頼を 得つづける 枯渇が懸念される自然資 源の使用を再生可能な 資源またはリサイクル資 源に置き換える 建築を基点とした歴史と文化の保存・ 継承・創造に貢献する 地域社会の 持続的発展に寄与する 美しい地球を未来の 子供たちに遺す 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 4つの想いを具体的なかたちにしていくため、主として12 安全・安心で、豊 かな暮らしの場 を提供する 建物のライフサイクルに わたり最良の品質をつく り込み、お客様の満足を 得る 新技術・プロセスを開発・活用し、新し い建築を先導する お客様の信頼を 得つづける TAKENAKA es report 2010 10 美しい地球を未来の子供たちに遺す 竹中は人と自然にやさしい建物をやさしくつくり、やさしくつかいつ づけることで、豊かな自然を守り、次世代に引きついでいきたいと 考えます。そのため地球環境憲章の理念のもと、 サステナブル・ワー クスを実践しています。 現在、主に次の3つの取り組みを推進しています。 ▶ 地球温暖化防止への取り組み ▶ 資源循環の推進 ▶ 生物多様性の保全 サステナブル ・ワークス 地球を汚さない やさしく つかう 人にやさしい 居住環境をつくる ものを捨てずに 大切につかう 自然の やさしく つくる お客様と ともに 自然エネル 生 やさしく おもう エネルギーを 上手につかう 建物を永くつかう 豊かな景観をつくり まもり、育てる 再生 化石燃料 サステナブル・ワークスとは、3つの時間軸と6つの環境評価軸を併用して建築をプランニングするもので、 お客様とともに環境と調和する空間創造を目指した建築への取り組みです。 環境と調和する空間創造に努め 社会の持続的発展に貢献する - 活動指針 - 1. 環境創造・保全技術を開発し環境負荷の低減活動を積極的に推進する 2. 環境保全に関する法規、社内例規を遵守する 3. 品質保証体系に基づき確実な環境マネジメントを実施する 4. 教育の実施により環境に対する意識の向上を図る 5. きめ細かい環境コミュニケーションを実施する 6. 社会的な環境活動に積極的に参加する ビオトープでの 「エコスクール」 TAKENAKA es report 2010 エネ 究極の 環境イ 地球環境憲章 11 自然 2050 年に向けて メッセージ「人と自然をつなぐ」 長期目標の設定とその実現に向けて 私たちは、 「人の感性や創造性を高め、 自然を活かし、 ゼロカー 昨年と比較してさらに高い目標を設定しました。私たち ボン建築①からカーボンニュートラルな都市②への実現」を目 は、先進的な建物の運用段階におけるゼロカーボン建築 指します。自然環境や生態系保全に配慮し、人々の感性や を2030 年に、そしてカーボンマイナス建築 ③ を2050 年 に実現することを目指します。2009 年には、その実現に 向けた活動の一つとして、 「建築コンセプトモデル」のア なるような建築や都市、地域づくりをお客様とともに推進し イデアを求め、社内デザインコンペティションを実施しま ていきます。 した。 ① ゼロカーボン建築:建物自身でエネルギーをつくり、消費をまかなうことで排出CO2をゼロに近づける建築。 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 創造性が刺激されいきいきと活動できる空間を提供しつづけ るとともに、自然の潜在力を活かし、人と自然がより身近に ② カーボンニュートラルな都市:自然エネルギーや、エネルギーの建物間相互融通、カーボンクレジットなどによって、排出CO2を相殺してゼロに近づける都市。 竹中環境コンセプト2050デザインコンペティション http://www.takenaka.co.jp/backnumber/enviro_compe.html 「人と人、人と自然の良好な関係を考えた次世代の建築」をテーマに社内コンペ を実施し、設計や施工といった部門を超えて編成されたチームから、43 作品の 地域社会の 持続的発展に寄与する 物自身でエネルギーを自給し、余剰分を地域の他の建物に供給する建築 (ライフサイクルにおける総CO2排出量もマイナスになる) 。 ③ カーボンマイナス建築:建 応募がありました。社内一次選考を経て、社外からも学識経験者を審査員④と お客様の信頼を 得つづける して招き、2009 年 7 月2 日に公開二次審査を行いました。国内 7 本支店と海外 1拠点を TV 会議システムで結び、17 作品のプレゼンテーションがなされまし た。社外審査員の方々から「全体の質がとても高い」 「自然にはやさしさの反面、 怖さがある」 などの講評と、 「環境と建築」 に関する講演もいただきました。 川瀬貴晴 千葉大学教授、 三谷徹 千葉大学教授 ④審 査員:小玉祐一郎 神戸芸術工科大学教授、 (当社) 渡邊暉生 副社長、服部紀和 副社長 (当時) 私たち自身が 成長しつづける 最優秀賞 「Local Energy Station -30cm over the rice field-」 選ばれたのは「稲わら」に着目した東北支店の向井浩一さんをリーダーとする作 品。「もの・エネルギー・人」 の地産地消サイクルを通して、都市と田園が永続的 に共存する姿を提案しています。 食糧増産とバイオマスによる地域のエネルギー 自立の両立を目指したもので、 「環境制御や新エネルギー生成機構が構造体と 統合され、新しい建築誕生を予感させる」 と高く評価されました。 優秀賞ー 川瀬賞 同左 ー 小玉賞 同左ー 三谷賞 PENETRATION CUBE -自然の多様性を浸透させる知的創造オフィス建物の外皮からは、光や空気、雨、湿分などが浸透 し、人のワークやブレスト、知の編集などに刺激を 与えます (東京本店 宮下信顕さん他 11 名) WATER X 大阪御堂筋における、次世代ワークプレイスの提案 で、水の可能性を多角的に追求し、アイデアを新材 料の開発に統合しています(大阪本店 日野宏二さ ん他 25 名) 杜と人のスリムな建築 - 定禅寺通りをケーススタディーとしてビルから排出されるCO2 や水で光合成を行い、内 部にO2、ケヤキに糖を供給する生物外壁を提案し ています (東北支店 木下辰也さん他 6 名) TAKENAKA es report 2010 12 地球温暖化防止への取り組み 当社は建物をめぐるすべての段階で最良を目指した温暖化防止対策を実施してい ます。企画・設計段階では様々な環境配慮技術の提案やその設計への組み込み、 施工段階では極力 CO2 を出さない施工、建物の運用段階ではお客様の省エネル ギー支援や改修など多岐にわたっています。同時に、オフィスユーザーとしての省 エネ活動①を継続しています。 ① 5ページ参照。 企画 ・ 設計段階(やさしくおもう) 環境性能を兼ね備えた外装をデザインする −日産自動車 グローバル本社(神奈川)− 日産自動車が創業の地 ・ 横浜に本社機能を移転す 図1:外付け水平ルーバーと光 (夏季) るに際し、国際コンペが行われ、当社が設計を担 当しました②。世界で活躍する日本の自動車会社ら しさを「環境と機能美」で表現しました。外装を特 水平ルーバーで 反射光を導入 反射光 すだれ サンリフレクション 徴づけるルーバーは、日本建築における簾の見立 てであり、北側は周辺の高層ビルとの視線の交差 日産自動車 グローバル本社外観 「可能性という大海を突き進む帆船」 をイメージしています。 ② 設計監督:谷口吉生 ③ Low-ε複層ガラス 通常のフロートガラスに金属膜を コーティングし、高い可視光透過率 を調停します。南側は春から秋にかけての日射の直 拡散光 達を遮断し、サッシュのLow-ε複層ガラス③の採用 サンシェイド や外気の取り入れとあわせて空調エネルギーを削減 します。また、年間を通しては、太陽光を反射させ 外付け水平ルーバー て室内天井面に導き入れるライトシェルフとしても 機能します(図 1)。当社は、ガラスカーテンウォールなどの従来の外装に対し、このような 「 環境に適応する外装 」を追求するファサードエンジニアリングを推進していきます。 を持ちながら高性能な熱遮断性能 を有するガラス。 「自然のめぐみ」 を取り込む −高松大学 2 号館(香川)− 建学の精神に 「対話」を掲げる高松大学に、自然採 光と通風をもたらしつつ快適な対話の場となるテラ スを備えた新校舎が誕生しました。研究室の換気 窓から外気を取り入れ、明るい中廊下を経由し、階 段室型のウインドチムニーから煙突効果を利用して 自然換気を行います。チムニーは、讃岐平野の卓 越風を有効利用するように形状を工夫して誘引効果 ファサード中央の 「エコエモテラス」 エコエモとは、 エコロジーとエモーショ ンを合わせた言葉です。 を高めるとともに、その開閉操作を居住者の自発性 風の流れイメージ に委ねることで環境意識を育もうとしています。 建築は古来、光・熱・音・空気などの自然条件に合わせてつくられてきました。当社は、 エネルギーを消費して室内を制御するクローズドな建築から、空気が流れ、光が移ろい 屋外との繋がりが変化する、いわば「自然のめぐみ」を取り込む建築を目指しています。 13 TAKENAKA es report 2010 「エネルギーと快適性」 を追求する −日東工器新本社(東京)− 創立 50周年記念事業として計画された新本社プロジェクトで、コンセプトは「緑の中の本 社」 。CASBEE ④ Sランクを達成しました。当プロジェクトには、様々な環境配慮技術が 組み込まれていますが、その一つが天井放射冷暖房です。オフィスの天井面に等間隔で 適切な室内温熱環境を実現しています。オフィスでクールビズやウォームビズを運用した 時に、どの従業員からも近い距離にある天井からの熱放射は、空気の温度だけによらず 快適性をさらに高めることができます。 「気持ちのよい風や光を自然から最大限取り入れること」 「不足したエネルギーのみを 設備システムで補い、居住者が望んでいる快適な環境を実現すること」 、これが私た ちの考える「エネルギーと快適性 」です。そのためには基本となるパッシブデザイン⑤ System for Built Environment Efficiencyの略。 建築環境総合性能評価システム。 評価指標によるランキングでは、 「Sラ ンク (素晴らしい) 」 「Aランク (大変良 い) 」 「B+ランク (良い) 」 「B-ランク (や や劣る) 」 「Cランク (劣る) 」の5段階 の格付けが与えられます。 ⑤ パッシブデザイン 太陽の光や熱、雨、地中の熱、風など、 自然に存在するエネルギー (パッシブ 天井放射パネルの 表面温度 22℃ エネルギー)を最大限利用するため の建築デザイン。 外部ルーバー+ Low-ε複層ガラスの 表面温度 27℃ 外部ルーバー+放射空調のオフィス内表面温度 天井放射空調パネル ⑥ 設計:伊東・竹中・RLA 2009年高雄 世界運動会会場設計チーム 施工・幹事:互助營造 施工コンサルタント:竹中工務店 「創エネルギー」 を組み込む − 2009 高雄ワールドゲームズメインスタジアム (台湾・高雄市)− ⑦ 国際陸上競技連盟 (IAAF) class-1 ⑧ 台湾緑建築「黄金級」 、CASBEE試 算Sランク。 ラル形状のこの建物は、陸上競技場として国際水準 の機能⑦を備えるだけでなく、高い環境性能⑧も備え ⑨ ています。その代表例が世界最大級の太陽光発電 建築単体として、2009年竣工時点 です⑨。約 8,800 枚の太陽光発電パネルをスタジア の年間発電量1MWh。 屋根上太陽光発電パネル セルをはさみ、セルとセルの間から採光が可能となる 採光を確保しています。 (件) エネルギーを消費する建築からエネルギーをつくり 50 だす「創エネルギー」建築への転換。これはゼロカー ネルギー自給率の高い建築を追求しています(図 2)。 2 1 3 11 40 ボン建築(12ページ参照)を推進することになりま などの再生可能エネルギーを建築と一体化させてエ CO2削減効果約660t−CO2 /年。 図2:当 社設計プロジェクトに おける再生可能エネルギー 等導入件数の推移 「透光型」モジュールを採用し、屋根下部の適度な す。当社は、太陽光発電、風力発電、地中熱利用 私たち自身が 成長しつづける 2009 年 7月に高雄市で開催されたワールドゲーム ズのメインスタジアムです⑥。躍動的な3 次元スパイ ム屋根に装備しました。強化ガラスの間に太陽電池 お客様の信頼を 得つづける 人体の表面温度 30 〜 35℃ 地域社会の 持続的発展に寄与する と技術革新によるエネルギー利用技術が必須です。当社はこの両輪を追及していきます。 ④ CASBEE Comprehensive Assessment 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 放射パネルを設置し、中温の冷温水を流すことによって金属パネルの表面温度を制御し、 日東工器新本社イメージ図 2009 高雄ワールドゲームズ メインスタジアム全景 30 20 40 40 41 2006 2007 2008 5 44 7 5 1 8 10 2009 (年) TAKENAKA es report 2010 14 自然に接し、自然と交わる研修センターが誕生しました −豊田自動織機グローバル研修センター(愛知)− 図1:光ダクト断面図 グローバル展開に対応するために計画された100 室程度の宿泊施設をもつ、免震構造の研修施設 です。愛知県三河湾に面した海を見渡せる緑豊 豊田自動織機 グローバル研修センター全景 かな丘陵地に完成しました。 風光明媚な立地を活かして三河湾への眺望を確 光ダクト 保した上で、既存緑地を最大限に保持し、敷地 形状に沿った断面構成とすることで、周囲に威圧 感を与えない建物になりました。お客様の環境へ の強い想いを反映し、環境性能の向上と環境負 荷低減のための要素を多数取り入れています。 特徴的なのは免震層のアースチューブ化とアン ダーフロアー空調、エコボイド・光ダクト(図 1)に よる風・自然光の導入、創エネルギーである太陽光発電、風力発電などです。また海へ の眺望を活かすため、ガラス面を大きく確保しつつ、外周バルコニー、ライトシェルフや高 遮熱断熱ガラスにより環境性能を向上させています。 これらの計画と技術の導入の結果、CASBEE ①でSランクを達成しました。建物運用時に ① CASBEE 14ページ参照。 おけるCO2 排出量は、これらの施策を施さなかった場合の建物に比べ36%の削減が見込 まれています。 高ランクの環境配慮建築をお客様とともに目指します 当社は、2004 年からCASBEE 簡易版に相当する社内開発ツールを活用し、環境配慮プ ロジェクト活動による高ランク建築の創出を追求してきました。以降、ツールをCASBEE 図2:環境配慮プロジェクト件数・ 割合の推移 (件) 60 40 20 41.6 45 26.1 76 49 60 30 67 49 2006 2007 2008 2009 15 15 S A (年) ジェクト」 と定義しています。2009年 は全体のプロジェクト数が少なくなっ たため、環境配慮プロジェクト数も少 なくなりましたが、割合(CASBEE評 9 図3:CASBEE評価分布データ 6 100 3 環境効率=3.0 S 良 環境効率=1.5 A 2003 2004 2005 50 環境効率=3.0 100 2006 B 環境効率=0.5 価S 、Aランク件数/ CASBEE評価 S 2007 (年) 良 環境効率=1.5 A 50 建築物の環境負荷 2004 年 100 環境効率=1.0 B+ B 50 環境効率=0.5 C 0 0 TAKENAKA es report 2010 環境効率=1.0 B+ 全件数) は増加しました。 15 11.5 10.0 建築物の環境品質・性能 成したプロジェクトを 「環境配慮プロ 12.6 12 11.3 を向上させたいと考えています。 建築物の環境品質・性能 CASBEE評 価でAランク以 上を達 もこの活動を継続・発展させ、お客様とともに、高ランクの環境配慮建築の件数・割合 排出量原単位 A 41.1 行、すなわち環境品質・性能が向上し環境負荷が低減したことがわかります(図 3)。今後 、 ランクの割合 、 ランクの件数 S 54.4 2004 年と2009 年のプロジェクト全体のデータを比較すると、明らかに分布が左上に移 (t-CO2/億円) (%) 80 そのものに切り替え、目標値を高ランク設計数・割合に設定して活動を続けています(図 2)。 C 0 0 50 建築物の環境負荷 2009 年 100 ② 省燃費運転講習会の開催 施工段階(やさしくつくる) 建設工事中に発生するCO2 を抑制 −日本企業投資千葉みなとビル作業所(千葉)− 当作業所では、仮設の事務所にソーラー 講習会風景 当社は、北海道支店をはじめ各店で に使用する電力量を削減するとともに、 「見 ダンプ・トラックを所有する協力業者 せる化」することで工事関係者の地球環境 を対象に、省燃費運転講習会を実施 への意識を高めています。また、省燃費 しました。 運転講習会の開催②、省燃費機種の導入 図4:当社作業所でのCO2排出量 原単位(完成工事高当り) の 推移 などを積極的に実施し、建設工事中に発 生するCO2の発生抑制に取り組んでいます。 千葉みなとビル作業所仮設事務所のソーラーパネル 体での目標値(2010 年度 13.9t-CO2 /億円) をすでにクリアしています(図 4)。 15 11.5 11.8 (年) 2006 2007 排出量原単位 量原単位は10.3t-CO2 /億円となり2008 年とほぼ同じでしたが、この数値は建設業全 (t-CO2/億円) 12 10.2 10.3 2008 2009 9 6 ECOFFICE(エコフィス)③ 3 ソーラーパネルをはじめ複層ガラスや高効率照明などの 所です。当社は、広く展開したいと考え、実測データを ③ ECOFFICE (エコフィス) 提供するなど、商品開発に協力しています。 資機材のレンタルリース会社の朝日 機材 (株) 及び三協フロンティア (株) 、 ネクストエナジー・アンド・リソース (株) エコフィス設置例(パンフレットより) お客様の信頼を 得つづける 環境配慮設備を作業所ごとに選択装備できる仮設事務 地域社会の 持続的発展に寄与する 当社作業所における2009 年のCO2 排出 美しい地球を 未来の子供たちに遺す パネルやLED 照明などを設置して工事中 が共同で開発した環境配慮型仮設 事務所。 私たち自身が 成長しつづける 運用段階(やさしくつかう) いまお使いの建物も省エネ化します −コクヨ 「エコライブオフィス品川」 (東京)− コクヨ 「エコライブオフィス品川」では、高 効率のLED 照明を人感センサーにより照 度制御し、空調もパーソナル吹き出しの風 量を同様に制御して設備の省 CO2 改修を 実施しました。自然採光、自然換気と組み 合わせ、従来のCO2 排出量の4 割以上の ガーデンオフィス 削減を実現しています。また屋外にはガー デンオフィスを設置し、自然を感じながら 働くことにより、創造的で生産性の高い仕 改修後の屋内オフィス 事の場を提供しています。 当社は、このようにお客様がすでにお使いになっている建物も、運営状況に合わせた省エ ネソリューションを提案しています。季節に応じた機器の運転時間の適正化から大規模な 改修時の省エネ技術の導入まで、お客様のニーズに応じたサポートを行っています。 TAKENAKA es report 2010 16 資源循環の推進 竹中は、建物の設計段階では再生可能な資源の積極的採用、既存建物の再生・ 有効活用、施工段階では副産物の減量化、リサイクルに努めています。同時に、自 社オフィスにおける省エネ ・ 省資源、古紙の分別回収にも力を入れています。 ① 魅力再生® 新築以外の市場において、建物に新 たな価値を付加することにより資産 既存建物の再生に取り組んでいます −ひばりが丘団地における「 魅力再生 ®」 ①モデル棟(東京)− 価値・事業性の向上といったお客様 のニーズに応えるソリューションの こと。 当社は、資源の有効活用という面から建物 をできるだけ長くつかっていただけるよう既 ② UR都市機構 存建物の改修技術の開発に力を注いでい URL:http://www.ur-net.go.jp ます。 当プロジェクトは、UR 都市機構 ②との共 同研究で、既存賃貸住宅ストックで数の多 い階段室型住棟のバリアフリー化や現代 の生活にふさわしい間取り・内装 ・ 設備へ の改修、景観にも配慮したファサードの形 ひばりが丘団地モデル棟メゾネット住宅 成など、従来のイメージを一新する多様な改修技術の実証試験です。改修時には様々な ひばりが丘団地モデル棟外観 工法の施工性や騒音、工程・工数などの調査、改修後には性能測定や来場者調査など を重点的に実施しました。 2009 年秋から2010 年春にかけ、上下階をつないだメゾネット住宅、水平の2 戸をつな 図1:当社作業所における 副産物発生総量と リサイクル率の推移 いだ拡がりのある住空間などの見学会と改修技術の紹介が行われました。 リサイクル量 最終処分量 リサイクル率 (千t) 1,000 80 600 60 400 200 928.3 848.0 630.2 764.4 77.2 85.2 68.8 45.1 2006 2007 2008 2009 40 リサイクル率④ 副産物発生総量③ 800 (重量%) 95.4 100 89.1 90.9 91.7 (97.6⑤) 20 (年) −岩手県立中部病院作業所(岩手)− 当作業所では、12 種類の分別品目それぞ れに、投入してよいものを細かく書いた表 ※解体・改修を含む全工事を対象 示を掲げて 「見てすぐ判断できる分別ヤー ③ 副産物発生総量 ド」を工事の早い段階から整備しました。 建設汚泥、特別管理産業廃棄物、建 また、職長会が講習会を実施した上で環 設発生土を除く。 ④ リサイクル率 リサイクル6品目 (コンクリート塊、ア スファルト・コンクリート塊、金属くず、 紙くず、木くず、再資源化品目)の分 境当番を指名し、細かな副産物まで実地 その結果、廃棄物ゼロを達成し、東北地 方整備局より、2009 年度リサイクル推進 奨励表彰を受賞しました。 しました。 当社は全ての作業所において、このような 中間処理場でのリサイクル率を含め ると2009年は97.6%になります。 TAKENAKA es report 2010 作業所に整備された分別ヤード 指導を行うなど、分別教育を徹底しました。 別排出量をリサイクル量として集計 ⑤ 17 作業所におけるリデュース・リユース・リサイクル活動を徹底しています リサイクル率の向上に加えて、建設副産 物の発生抑制に努めています(図 1)。 岩手県立中部病院 生物多様性の保全 生物と共生していくことが持続可能な社会 ・ 都市 ・ 地域づくりに不可欠です。当社 は生物多様性の保全につながる在来種の保護、ビオトープなどの研究開発と先進 事例の創出、それらのプロジェクトへの取り込みに力を注いでいます。今後、活動 成果の指標化の研究開発をさらに強化するとともに、足元を強化する啓発⑥ ・ 教育 に取り組んでいきます。 ⑥ 東陽町の自然調査風景 −名古屋 蝶の飛ぶまちプロジェクト (愛知)− 環境の豊かさの指標生物である蝶を対象として、 図2:試験ミニビオトープの設置場所イメージ 蝶の誘致に有効なミニビオトープとなる食草・食 を約 20 種類植え、そこに飛来する蝶の種類や個 社員の啓発活動として、環境月間に 屋駅 名古 2) 。本調査では、当市に飛来しうる蝶が好む植物 コア緑地 (名古屋城、名城公園) 体数と環境との関係を調べることで、どのような 環境を整えれば周辺の生態系拠点から蝶を呼び 実施。インストラクターとしてNPO 法人東京樹木医プロジェクト副理事 コア緑地 (白川公園) で生物の移動を可能にする都市生態系ネットワークづくりに役立て、人と自然が共生でき チャー及び樹木を中心とした自然調 査を2日に分けて実施しました。参加 者36名。 お客様の信頼を 得つづける 込むことが可能になるのかを調べます。調査結果は一般に公表し、都市の緑地をつない 長の美濃又哲男氏を招き、ミニレク 地域社会の 持続的発展に寄与する 樹・蜜源植物を植えたプランター⑦を名古屋市中 区の約10カ所に設置し、 調査を開始しています(図 設置 エリア 美しい地球を 未来の子供たちに遺す アゲハチョウなどを対象に生態調査をスタートしました ⑦ る都市環境づくりに活用していきます。⑧ 保全緑地を活かし街の潤いに −神宮前一丁目民活再生プロジェクト(原宿警察署 ・ パークコート神宮前 ・ 神宮前 M-SQUARE- 東京)− 「原宿警察署」の移転に伴う、緑豊かな都 有地を活用したPFI 事業 ⑨のプロジェクト ⑧ 本活動は生物多様性条約第10回締 が完成しました。環境配慮の一番のポイン 約国会議支援実行委員会に 「COP10 トは、敷地に広がる保全緑地をいかに活 パートナーシップ事業 (419号) 」 として かした計画とするかでした。生物多様性保 登録しています。 全の観点から既存樹林の植生や地形を残 ⑨ PFI事業 そうと様々な検討がなされ、樹木医による 診断に従い適切に対応するとともに、工事 私たち自身が 成長しつづける 協力企業に設置されたミニビオトープ (プランター) Private Finance Initiative事 業 の アプローチ周囲の保全緑地 略。公共施設などの建設、維持管理、 運営などを民間の資金、経営能力及 区域にかかる一部の樹木については移植 び技術能力を活用して行う事業のこ を行いました。居住者やオフィスワーカー と。 の皆様、そして一般の方々に開放される緑 地を再整備し、災害時には避難場所の役 割も果たすように計画されています。現在 もり すでに敷地の要所要所で豊かな「杜」の景 観を創り出しています。 住宅棟レストランから見た保全緑地 TAKENAKA es report 2010 18 地域社会の持続的発展に寄与する 竹中は創立以来、建築を社会的資産としてとらえ、価値ある建築 の創出を目指してきました。そして事業を進める中で、ものづくり の精神や文化、技術を学んできました。私たちは、そうした経験 を活かして、地域社会に貢献したいと考えます。さらに、建築は地 域の方々と密接に結びつき事業が進んでいきます。私たちは地域 社会と良好な関係を構築し、建築を通した社会貢献に努めます。 そのため現在、主に次の3つの取り組みを推進しています。 ▶ 歴史と文化の継承と発信 ▶ 次世代を担う人材育成の支援 ▶ 地域への貢献 地域社会の持続的発展に向けた取り組み 歴史と文化の継承と発信 TAKENAKA es report 2010 人材育成の支援 地域社会の持続的発展へ 4 GALLERY A「リ サ・ヴォート写真展」 19 次世代を担う 地域への貢献 歴史と文化の継承と発信 当社は伝統建築専門のグループを設け、伝統的な木構造技術や様式の研究・分 析、資料の収集・保存を行うとともに、日々進歩する現代構築技術との融合の可 能性を追求しています。2009 年も当グループの支援のもと、各地で歴史的建築 物の保存や再生のお手伝いができました。また「竹中大工道具館」や「GALLERY A4」①を通じて、建築文化の発信にも力を入れています。 −唐招提寺金堂(奈良)− ① 7ページ参照。 世界遺産に登録されている国宝唐招提寺 内倒れを防ぐ方杖 落慶法要が営まれました。今回の解体修 方杖をおさえるトラス 理において当社は、難題であった柱の内倒 天井面の トラス すいか れや軒先の垂 下などを解決するための構 造解析と対策の立案を担当しました。金堂 の屋根裏での調査から始まり、材料や構法 の再評価、組物の実寸大模型での載荷実 唐招提寺金堂落慶法要 な補強策を完成させました。唐招提寺 1250 年の歴史に、新たな頁として 「平成の構造技 構造補強策 柱の内倒れを防止するため屋根裏に 方杖を組み、庇天井面に水平トラス を組み込みました。 術」が加わりました。 お客様の信頼を 得つづける 験、様々な補強案の検討を重ね、効果的 内倒れをおこす 水平力 地域社会の 持続的発展に寄与する 金堂が、このたび平成の解体修理を終えて 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 現代の構造技術が平成大修理に貢献しました 免震レトロフィットが伝統木造建築を守り環境保全にもつながりました −祐天寺本堂・書院(東京)− ② 免震レトロフィット 1718 年に建立された貴重な文化遺産で 既存建物に免震層を組み込み、地震 力の伝達を低減させて建物の耐震 す。地震災害から守り、将来にわたって保 安全性を向上させる設計手法。建物 存するために、このたび免震レトロフィット② の外観を損ねることなく補強でき、家 による耐震改修工事を行いました③。免震 具や什器の安全性まで向上させるこ とができます。 装置を地下に設置することで、 建物の姿を 変えることなく耐震安全性を向上させてい ③ ます。また地下免震ピットの空間を有効活 設計監理のエースコーポレーション 用し、自然エネルギーである地中熱を利用 私たち自身が 成長しつづける 「目黒の念仏道場」 として知られる祐天寺は 祐天寺本堂免震パース した換気システムを設置④。通常のエアコン設備に比べCO2 排出量を20%以上削減しま した。 (株)との共同設計(構造) 、当社施 工。 ④ 日本には多くの伝統木造建築があり、その耐震安全性が課題となっています。免震レトロ フィットは耐震安全性の向上を図るための効果的な手法であり、地中熱利用も合わせ、そ の活用を積極的に推進していきます。 地下に設置された免震装置(直動転 がり支承) と地中熱利用換気設備 TAKENAKA es report 2010 20 伝統的技術を後世に橋渡し −特別史跡五稜郭跡内箱館奉行所庁舎(北海道)− 特別史跡五稜郭跡に、江戸末期から明治初 期に現存していた箱館奉行所を復元するもの 素屋根の下で進める 箱館奉行所庁舎建設工事の様子 で、函館市が進めている五稜郭の歴史的役割 を明確にする環境整備事業の一環として建設 が進んでいます。残されている遺構・絵図・ ① 設計・監理 (株) 文化財保存計画協会 古写真・文献などから作成された設計図①を 元に、可能な限り当時と同様の材料・工法を 用いて建設しています。外壁の漆喰塗り、木 部の柿渋塗り・渋墨塗り、屋根の越前瓦葺き・ 箱館奉行所庁舎外観パース こけら 柿葺きなど、多くの日本古来の技術が用いられている庁舎は、伝統的な技術を後世に受 け継いでいく橋渡しの役割も担っています。 伝統的景観に調和した現代建築が癒しの場を提供しています −清荒神清澄寺 史料館(兵庫)− 清荒神清澄寺は千百有余年の歴史のある名 刹で、 「火の神」 「かまどの神」 として親しまれて 深い軒下と前庭 います。史料館では、お寺の歴史や年中行事 が紹介されるとともに、所蔵品や美術作品の 企画展示が行われます。外観は本瓦葺きの屋 根が浮かび上がる形態とし、中央の展示室か ら大きくはね出した軒下には、庭園が見え隠 れする回廊を設けています。 「布教の場、参拝 者の癒しの場にしたい」 というお客様の想いを 清荒神清澄寺 史料館外観 具現化できました。 大工道具を通じて匠の技と心を未来につなぐ −竹中大工道具館(兵庫)− 大工道具や関連資料を収集・保存し、さらに 研究・展示を通じて後世に伝えることを目的に、 竹中大工道具館外観 1984 年に神戸市に開設しました。常設展示は 「伝える」 「造る」 「極める」 と、各階ごとにテー マを設け、パネルや映像も交えて解説していま す。2009 年 3月には、リニューアルオープン。 かざり 錺 金物に関する企画展、計 8回のセミナーや 体験教室を開催し、7月には開館以来 20 万人 目の本館入館者を迎えることができました。当 竹中大工道具館 3 階展示室 「伝える」 社は、このような活動を通じて、匠の技と心を受け継ぎ、未来につないでいきます。 21 TAKENAKA es report 2010 近代日本の草創期のスピリットを発信 −三菱一号館(東京)− 東京・丸の内再構築の一環として計画された三菱一号館が当社の施工で完成しました②。 三菱一号館は、日本で最初の近代オフィスビルとして英国人建築家ジョサイア・コンドル ② 設計: (株) 三菱地所設計 によって設計され、1894 年(明治 27 年)に竣工した、英国ヴィクトリア時代の建築様式 ③ 美しい地球を 未来の子供たちに遺す の赤煉瓦建築でした。その後、これを起点に煉瓦造の建物が立ち並び「一丁倫敦③」 と称 され、丸の内ビジネス街に繋がっていきます。 1968 年(昭和 43 年)に解体されましたが、 「当時とできるだけ同じ材料・工法で可能な 限り忠実に復元したい」 とのお客様の強い想いを受け、まずは明治期の煉瓦組積技術と施 工精度把握のため、全国に現存する煉瓦造りの類似建物の調査が行われました。実際の 作業方法にまで踏み込んだ詳細な施工計画のために、モックアップ・試験施工を繰り返し 実施。また煉瓦一つひとつを図面に落とし込んでいく作業の結果、煉瓦施工図は数にして 「一丁倫敦」 と称された当時の様子 地域社会の 持続的発展に寄与する 174 枚に及びました。また230 万個の赤煉瓦は、当時のテクスチャーを再現するために、 当初材に極力近づけた製法にこだわり、製法の残る中国で焼成し、数少なくなった日本の 煉瓦職人の手で、一つひとつ正確に積み上げられました。 復元された三菱一号館は、職人たちの確かな目によって高い精度と仕上がりを保ち、コン ドルの指導のもと、弟子の日本人建築家と職人たちが西洋建築に挑戦した当時のスピリッ トを、独特の質感で伝えています。 お客様の信頼を 得つづける 私たち自身が 成長しつづける 三菱一号館外観 お客様の想い 煉瓦施工の様子 忠実な復元で都市の記憶が蘇りました 今回の復元は丸の内のアイデンティティを再確 の力を「結集する想い」へと繋がりました。その ない所まで忠実に復元する姿勢、広く有識者の うした努力があり、三菱一号館の復元は世の中 行することが求められたのです。忍耐強いチャ 点を再確認することができました。この成果は 認する重要な意味を持つ取り組みでした。見え 智慧を得ること、そして的確な技術と判断で実 レンジと「志」の共有があって実現できるもので した。それは設計、施工、そして職人さんたち 中核となった竹中工務店に感謝しています。こ で認知され、また当社グループ社員も会社の原 4 月の美術館オープンにとって、大きな力とな るものです。 恵良 三菱地所株式会社 街ブランド企画部長 (当時) 隆二様 TAKENAKA es report 2010 22 次世代を担う人材育成の支援 地域が持続的に発展していくには、その地域の若い人々の成長が礎になります。 私たちは、事業を通じて、また企業市民として未来を支える人材を育むことに貢 献していきたいと思っています。2009 年には、ものづくりの愉しさを地域の人々 に伝える活動や建築の仕事を知っていただく活動などを全国各地で行ないました。 2010 年も継続して、より多くの若い人々と触れ合う機会をつくっていきます。 ものづくりの愉しさを地域のこどもたちに伝えていきます 2009 年11月18日 「土木の日」 に印西市立 内野小学校 5 年生 65 名を招待し、竹中技 術研究所見学会を開催。身近なペットボト ルなどを使った液状化実験や石造アーチ橋 の制作を体験しました。また、江東区立南 砂小学校 6 年生を対象に開かれた社会人 による授業に、当社従業員が先生として参 加。建築の仕事について、工事や建物の 当社従業員による授業風景 ① インターンシップの受け入れ インターンシップの学生を名古屋、 広島の事業所、作業所で受け入れま した。名古屋の作業所では、施工管 理を実地研修し、職長さんとの打合 せや安全巡回に同行することで、も のづくりの難しさ、大変さとともに人 と人とのコミュニケーションの大切さ 写真を使って分かりやすく説明しました。 石造アーチ橋制作体験の様子 建築の仕事を伝えていきます 建設業をより理解してもらうため、学生を対象とした作業所見学会が各地で行われました (図 1) 。また、インターンシップの受け入れ①や、親子職場見学会②も行いました。 図1:主な作業所見学会の実施一覧 学校名 (人数) 見学場所 を学びました。 ② 親子職場見学会 林原岡山機能糖質工場作業所 岡山県立大学デザイン学部3年生 (10名) アイランドタワースカイクラブ 長崎大学工学部構造工学科 (45名) (仮) 印西市総合体育館作業所 作業所見学会 ヤマザキマザック葵ビル作業所 千葉県立東総工業高等学校建設科2年生 (40名) 名古屋市立工芸高等学校建築システム科3年生 (37名) 若草町再開発タワー住宅棟・テラス住宅棟・ホテル事務所棟 広島工業大学/広島女学院大学 (38名) (ACTIVE−INTER CITY HIROSHIMA) 作業所 オリックス西本町1丁目ビル作業所 日本企業投資千葉みなとビル作業 所にて夏休み期間に子供向けの職 場見学会を開催しました。工事現場 で実際に行われる作業などを体験。 壁塗りに挑戦する左官コーナーでは、 ドイツ・カールスルーエ工科大学KIT建設工学科 (20名) 学生の奨学支援及び建築研究助成をしています −竹中育英会− 時間ギリギリまで頑張る子供たちの 創立者竹中藤右衛門の 「何か社会のために 姿が見られました。 なることをしたい」 という想いから、1961 年に始まったのが竹中育英会です。これま ③ 2009年3月現在の奨学生累計: 3,181名 23 TAKENAKA es report 2010 で多くの奨学生③を送りだしており、また、 将来性のある若い建築系研究者に研究助 成も行っています。 奨学生の大学卒業歓送会 地域への貢献 建物を造るにはその地域の資材やサービスの調達が欠かせません。当社は地域の 一員として、地域の人々とのコミュニケーション④を大切にし、コミュニティの活性 化に貢献していきたいと考えます。また、建築の機能とデザインが許す限り、資材 は環境にやさしいものを、できる限り建築地に近いところから調達したいと考えて います。 ④ 各地の清掃活動に参加 −「水都大阪 2009」 に参画(大阪)− 水の都 ・ 大阪の復興を目指すイベント 「水都大 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 子供たちが橋の模型作りに挑戦しました 阪 2009」 が 2ヶ月にわたり開催されました。当 広島支店・米子営業所(2009年当 時)では、安全衛生協力会米子分 会の皆さんを合わせ総勢203名で つくろう」では、都市をよくするために橋や建物 かいけ 皆生海岸の一斉清掃を実施しました。 に目を向けてもらおうと、子供たちに自分で考 東北では 「定禅寺通りまち美化活動」 、 えた橋の模型をダンボールや色紙で作り、中 之島の立体地図にかざってもらいました。 広島では「インテス周辺清掃奉仕」 、 九州では「きれいな天神プロジェク 「大阪の橋をつくろう」 の様子 地域社会の 持続的発展に寄与する 社の「大阪を考える研究会」⑤から5つの市民 企画イベントに参加。プログラム「大阪の橋を ト」など各地で清掃活動に参加しま ⑤ 大阪を考える研究会 CO2 の固定と森林資源の活性化に貢献します 大阪本店の有志150名が研究テー −国産木材を用いた耐火集成材の開発− マ別に6つのグループに分かれ、大 お客様の信頼を 得つづける した。 阪の可能性について様々な観点から 木材は伝統的な建築材料ですが、燃える性質があ 図2: 「燃エンウッド」 の構成 るため用途が限定されています。当社は、火災に強 (図 2)の開発 ⑥を行っており、国土交通大 ウッド®」 臣認定(耐火1時間) を取得しました。木をたくさん つかうことはCO2 の固定を促し、森林の整備にもつ ながります。本技術は、豊富な国産木材の有効活 用策の一つとして期待されています。 荷重支持部 (スギ) 燃え止まり層 (モルタル) 燃え止まり層 (スギ) 燃えしろ層 (スギ) ⑥ ・開 発の一部は (独) 新エネルギー・産 業技術総合開発機構 (NEDO) の助 成事業により実施しました。 私たち自身が 成長しつづける い木造建築の実現を目指して耐火集成材「燃エン 調査や実践を進めている会です。 ・平 成21年度エンジニアリング奨励 特別賞受賞 (財)エンジニアリン グ振興協会主催 ・ (株) 大林組との共同開発 ショールームの大壁面に間伐材を使用しました −トヨタカローラ新大阪本社(大阪)− 大阪の大動脈・新御堂筋に面してカーディー ラーの新社屋が誕生しました。吹き抜けのある ショールームの大壁面に兵庫県産天然杉の間 伐材をルーバー状に取り付け、浮遊する木箱の ような温かみを与えています。現代建築に天然 木本来の持ち味を活かした間伐材を使用するこ とで里山の保全に寄与しています。 ショールームの間伐材による壁面仕上げ トヨタカローラ新大阪本社外観 TAKENAKA es report 2010 24 お客様の信頼を得つづける 「最良の作品」づくりの根底に流れているのは「棟梁精神」です。こ れは、創始者竹中藤兵衛正高が宮大工の棟梁だった1610 年の 創業当時より受け継がれてきた精神です。それは、 「お客様の想い を第一に考え、建築工程のすべてにおいて最良の品質をお届けす る」 、そして 「建築の専門家として常に高い技術力を保っていく」 と いう考え方です。私たちはこの考え方に基づき、品質方針を掲げ、 「作品」づくりに絶え間ない努力を続けていきます。 そのため現在、主に次の3つの取り組みを推進しています。 ▶ 安全 ・ 安心 ・ 豊かさの追求 ▶ 最良の品質をお届けするために ▶ 新しい建築を目指した技術開発 受け継がれる棟梁精神概念図 〈昔〉 作 意 トータルな 品質保証 高い技術力 ● 設計施工一貫方式 ● 専門工事会社との 協力体制 信用 竹中工務店 お客様 ● 普 請 修 理 〈今〉 企画・設計 施 工 アフターケア 品質方針 お客様の課題解決を図り 作品・サービスの質を向上させる - 活動指針 - 1. 企画からアフターケアまでのライフサイクルにわたり品質を確保する 2. 先駆的な技術の開発・改善により魅力品質を創造する 3. 品質保証体系に基づき確実なプロセス管理を実施する 4. 教育、訓練の継続により品質管理意識の向上を図る 竹中大工道具館「削る」-鉋の世界展- 25 TAKENAKA es report 2010 安全・安心・豊かさの追求 地震などの自然災害や火災などから生命 ・ 財産を保護することはもちろん、急 速に進む高齢化社会への対応、犯罪や事故の未然防止などに配慮した建物づ くりに取り組んでいます。特に地震に対する免震・制振技術の開発を促進しており、 これらの新技術を適用した建物が増えてきています。また既存の高層建物を安全 に解体する技術にも力を入れ、今後増加する需要に適用していきます。 −竹中技術研究所 新耐火実験棟(千葉)− 日本最大規模の耐火実験装置①を有する 「新耐火 ① 耐火実験装置 最大載荷能力30MN(メガニュート 実験棟」が完成しました。超高層建物に用いられ ② 高強度コンクリート や、耐火性能設計③の適用範囲を拡大させるた 1mm2当たり60N以上の圧縮力に耐 めの研究開発がスタートしています。また、当実 えられるコンクリート。当社の最大値 験棟には太陽光発電、風力発電、廃熱利用、壁 は200Nです。 面緑化、光触媒塗料などの環境技術を盛り込み、 ③ 耐火性能設計 新耐火実験棟外観 地域社会の 持続的発展に寄与する ン) 、8時間加熱が可能な装置。 る高強度コンクリート②開発に不可欠な耐火実験 見学者が環境共生を目で見て、体感できる工夫 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 火災に対する安全性を確認する実験棟が完成しました 実験などで建物の構造体に一定の 耐火性能があることを確認し、その 結果を基にプランニングする耐火設 計法。 高層建物を安全に、環境にやさしく解体しました −「竹中グリップダウンR 工法」大阪タワー解体(大阪)− お客様の信頼を 得つづける をしています。 朝日放送に隣接し、 電波塔として利用されていた高さ158mの「大阪タワー」 を 「竹中グリッ 私たち自身が 成長しつづける プダウン工法」により解体しました(図 1)。ジャッキダウンと部材解体を繰り返し、タワーを 下部から解体していく新工法です。この工法により、高所作業や解体材の落下・飛散リス クの低減、騒音の低減といった安全面・環境面の問題点が大きく改善されました。日本 の超高層ビルの中には解体時期が迫っているビルもあります。当社はこの工法の開発で得 た技術などを活用し、高層建物解体工法の開発をさらに進めていきます。 図1:竹中グリップダウン (TGD) 工法 解体前の大阪タワー アンテナ塔 450t クローラー クレーン 展望室 158m グリップダウン 範囲 (5m 14回) ガス切断 92m 解体作業 エリア ワイヤーソー 切断 20m グリップダウン解体(全14回)3カ月 ブロック解体 TAKENAKA es report 2010 26 最良の品質をお届けするために 建物は、お客様に長く、丁寧に使っていただくことで次第に町並みにとけ込み、地 域に愛され、社会的資産に変化していきます。そのため私たちは一つひとつの建物 に精魂を傾け、お客様に 「最良の品質」 を提供するとともに、建物のライフサイクル を通してサポートしていきます。2009 年には品質保証体系を見直し、プロセス管 理の徹底を中心に品質管理活動を推進しました。 ライフサイクルサポートがお客様に対する取り組みの基本です 私たちは建設にあたり、企画提案・設計・施工のすべての段階で「最良の品質」を提供す る努力を続けています。そして、建物をお届けした後も時代の変化に応じた建物用途の変 更や機能の向上・更新提案を行うなど、建物のライフサイクルにおいて、お客様の保有 資産価値向上を総合的にサポートしています。(図 1) 図1:ライフサイクルサポート概念図 竹中工務店によるサポート 竹中グループによるサポート 設計 施工 企画提案 事業計画 除却・建替・ 売却 施設計画 建設 ビル管理 お客様の建物のライフサイクル 施設運用 解体 施設運用 修繕・更新 リニューアル 建物診断 省エネ診断 施設評価 改修提案 改修 半世紀にわたるライフサイクルサポートが高く評価されました −武庫川女子大学附属中学校・高等学校 校舎棟(兵庫)− 西宮市にある武庫川学院は、全国有数の女子総合学 園として発展し、2009 年に創立 70周年を迎えました。 当社は約半世紀の間、作業事務所を常設しキャンパス 全体の維持保全を行ってきました。また、附属中学校・ 設計 高等学校も1963 年の建設以来、校舎棟の外装タイ 渡り廊下で結ばれた校舎と中庭 企画提案 ルや緑豊かなキャンパスの維持保全、特別教室の増改 築や情報化対応など、時代に相応しい教育環境への ① BELCA賞 49ページ参照。 施工 キャンパス全景 機能更新支援を行っています。このたびこのような、お客様と一体となったライフサイクル 施設計画 事業計画 建設 サポートが高く評価され、第19回BELCA 賞①ロングライフ部門を受賞しました。 お客様の建物のライフサイクル 27 TAKENAKA es report 2010 除却・建替・売却 施設運用 施設運用 リニューアル ビル管理 最良の作品をお届けするしくみを強化しました お客様の 「想い」 を確実に作品として 「かたち」 にするため 「品質保証体系」 を運用しており、 プロセス管理強化を目的に 「フェーズゲート」の設置などの改定を行いました(図 2)。また、 ISO 規格に対応するために運用してきた 「統合マネジメントシステム②」 を、品質保証体系に 一本化しました。 取得した品質マネジメントシステム 事業計画 施設計画 事業計画 1フェーズ 基本計画 確認申請 工事監理 事前検討準備 保全対応 製作・施工 自主検査 平成の大改修に参画し品質管理を徹底しました お客様 事業企画 立案 建設推進 −迎賓館本館改修(05)建築工事(東京)− 事業計画 設計発注 竣工後 点検 契約 お客様の信頼を 得つづける 専門工事会社 施工管理 品質管理 安全衛生管理 環境保全管理 フェーズ ゲート 地域社会の 持続的発展に寄与する 施工計画 品質計画 安全衛生計画 環境保全計画 アフターケア 竣工2年後の引継 施工 生産支援 引渡し検査 生産準備支援 的で有効な運営を推進しています。 6フェーズ アフターサービス プロジェクトの総括 技術 審査 5フェーズ 施工 査やマネジメントレビューなど、合理 施設運用 建物受領 4フェーズ 生産準備 着工準備の確認 施工計画 見積 調達計画 詳細 設計 生産準備開始 営業 活動 基本 設計 3フェーズ 詳細設計 受注 基本 計画 契約 2フェーズ 基本設計 本設計移行 受命 設計 監理 建設 設計発注 0フェーズ 受命活動 関連 部門 化したマネジメントシステム。内部監 美しい地球を 未来の子供たちに遺す と環境マネジメントシステムを一体 図2:設計施工品質保証体系図 お客様 ② 統合マネジメントシステム 1996年から1999年にかけて認証 施設運用 建物受領 このたびネオ・バロック様式として国内唯一の宮殿建築 社はメンバーとして参画し、当社の保有技術である 「耐 ③ 耐震デザインパネル 震デザインパネル③」の提案や徹底した品質管理により、 美観に配慮した耐震補強方法の1つ 意匠を極力保存するというお客様の要望に応えること ができました。その結果、国土交通省より永井信男 さんが「優良工事技術者表彰」の表彰状を授与されま で、鋼板耐震パネルに開口を設けた 有孔鋼板パネルを用いた補強法。本 迎賓館本館外観 件では、補強材の閉所隠蔽部への設 置として適用しました。 した。 私たちの想い 私たち自身が 成長しつづける である迎賓館本館が約40年ぶりに改修されました。当 品質確保の基本は、手順を踏んで確認することです お客様の要求品質を確保するには、何よりも施 の細筆による補修塗装には細心の注意を払いま 工の手順をきちんと踏むことが大切です。改修 した。お引渡しが完了した今、お客様をはじめ や材料の確認を、段階を踏んで徹底しなければ ましたのも 、国土交通省のご指導と、各専門工 工事では特に、試験施工による現物での納まり なりません。今回の改修では外部木製建具改修 での水密 ・ 気密性能の確保や、石膏装飾面 ・ 漆 喰仕上げ面における塗装色の再現、金箔装飾部 有識者の方々からも高い評価を得ることができ 事会社の協力の賜物と感謝しています。 迎賓館本館改修 (05) 永井 建築工事 作業所長 (当時) 信男さん TAKENAKA es report 2010 28 新しい建築を目指した技術開発 多様化 ・ 高度化するお客様のニーズに応えて「 最良の作品」 を実現するため、竹中は 設計 ・ 生産技術、環境技術、市場対応技術等の開発や先端研究に取り組んでいま す。 2009 年は新しい価値を持つ建築空間の提供を目指し「人にやさしい空間」の 研究成果が展開段階に入りました。2010 年は省エネルギー・新エネルギーの活用 及び生物多様性などに対応する技術開発・研究に重点的に取り組んでいきます①。 「人にやさしい空間」 の研究を進めています ① 技術開発分野の内訳 6 14 企業の経営基盤の一つである 「人材」の重要性が再認識される中、知的生産性・創造性・ 45 17 精神的健康への関心が高まっています。一方、これまでの建築では、均質で変化がなく、 大多数の人が「不快でない」ニュートラルな空間が提供されてきました。そこで当社は以下 18 の点に着目し、 「人にやさしい空間」について研究を進めています。 ● 設計・生産技術 ………………… 45% ● 環境技術 ……………………… 18% ● 先端研究 ……………………… 17% 00 ● 市場対応技術 ………………… 14% 00 ● その他 ……………………………6% 00 技術開発に関する各数値(2009年) 00 特許出願件数 …………………… 228件 論文発表件数 …………………… 243件 技術開発関連表彰 ……………………………………… 22件 社外受託業務件数 *1 ……………………………………… 49件 *1 解析・試験・技術コンサルなどの 受託業務 (1)人は多様な行動をとる。人が建築空間などから受ける刺激も多様で変化する。 (2)刺激に対する人の反応は個人差を含めて多種多様である。 00 具体的には以下の課題について医学、 脳科学、 その他の専門家と共同で研究を進めています。 [1] 環境要素 (光・温熱・空気・音) が、睡眠や生体リズム調節に与える影響 [2] 環境要素が心理・生理に与える影響 [3] 環境要素が知的生産性・創造性に与える影響 [4] センサで計測された情報による人の行動推定 例えば[1] の中の 「光環境が睡眠に与える影響」 では、昼間の覚醒、夜間の快適な睡眠、 (図1) 快適な目覚めという好循環を起こすために必要とされる光環境について研究しています 。 実験では、通常のオフィス照明で作業をしたケースⅠと任意に明るさを調節できる照明で 作業をしたケースⅡに分け、その影響を睡眠時の心電図で計測しました。心電図データか ② HF値 心電図データから得られる副交感神 経の活性状態の指標で、 リラックス 時に高値を示すとされる。 図2:光環境が睡眠に与える影響 (睡眠時の心電図データ) (HF値) 500 407 400 300 (図 2) ら得られたHF 値②はケースⅡで高く 、リラックスした快適な睡眠が得られていると思 われます。つまり自分で明るさを調節でき ることが生体リズムの好循環に効果的であ ることがわかりました。 [2]の「環境要素が心理・生理に与える影 響」に関しても同様の実験を行っています (図 3) 。研究成果については実際の建物で 試行開始しています。今後さらに研究を進 め、このような「人にやさしい空間」の提供 270 に役立たせたいと考えます。 200 図1:生体リズムに働きかける光環境の提供 熟睡 リズムに合った 覚醒 鎮静 メラトニン 増加 良い 目覚め 生体リズムに合った光環境の提供 適度な 疲労 メラトニン減少 充分な 覚醒 好 循 環 100 ケースⅠ ケースⅡ 図3: 「環境要素が心理・生理に与える影響」 の実験イメージ 被験者が様々な風景を見たときの脳の 反応場所を可視化することで、風景が心 理・生理に与える影響を調べます。脳の 3D 画像の赤い部分は、脳の活動が活発 であることを表し、後頭部(図の左側)に ある視覚に関する部分はどちらの図も赤 く、脳の活動が活発であることがわかりま す。風景を見た時 (上段の図) は、 円で囲っ た感情に関する脳の部分も活性化してお り、視覚刺激の影響の違いがわかります。 29 TAKENAKA es report 2010 環境関連技術の開発に積極的に取り組んでいます 快適性と省エネのニーズを両立する「放射空調&パーソナル気流」の実用化 放射空調は、冷却した天井パネルと人体との温度 図4:空調システム概念図 差で熱を取り除くもので、快適性が高く、空調温度 を高めに設定しても快適性が損なわれにくい方式で 放射を活用 美しい地球を 未来の子供たちに遺す す。一方、パーソナル気流ユニットは、利用者が好 みに応じて風向と風量を調整することで個人差の大 きい要求を満たすユニットです。 パーソナル気流 実用化した「放射空調&パーソナル気流」は、個人 のデスク位置などに合わせてこの2つの方式をバラ ンスよく配置することで、快適性を確保するとともに、 標準的な空調システムと比較して消費エネルギー及 します。(図 4) エネルギー・CO 2 ミニマム(ECM)セメントの研究 通常のセメントは製造時に石灰石などの原 料を高温で焼成するため、大量の化石燃 図5:CO2排出量の違い (イメージ) 従来のセメント CO2 を占めるCO2 を排出しています。ECMセ 石灰石など メント③は、産業副産物である高炉スラグ セメント ③ ECMセメント (独) 新エネルギー・産業技術総合開 ECMセメント 激材により活性化させる化学反応を利用し 発機構 (NEDO) の委託事業です。 CO2 高炉スラグ た焼成不要な新しいセメントで、原理的に CO2 排出の大幅低減が可能です(図 5)。現 焼成 お客様の信頼を 得つづける 料を消費し、我が国の総排出量の約 4% などの反応主材を再生微粉などの反応刺 地域社会の 持続的発展に寄与する 放射空調&パーソナル気流を適用し たオフィス(上)とサーモカメラによる 映像(下) 。天井が青く温度の低いこ とが確認できます。 びCO2 排出量を約30%削減できる空調空間を提供 再生微粉 その他 化学反応 セメント 私たち自身が 成長しつづける 在は先導的研究の段階ですが、カーボン ニュートラルな基礎及び躯体構造の構築や解体コンクリートの完全リサイクルなどが最終 ターゲットです。 市場対応技術の開発に取り組んでいます −無耐火被覆 TSC 梁の適用で広い床面積を確保しました− 「無耐火被覆 TSC 梁 ④ 」 (特許出願中)を 図6:通常の鉄骨梁との比較 開発し、鉄骨造オフィスビルに適用しまし クリートを充てんし、耐火被覆なしで耐火 性能を高めたものです。加えて、梁の天端 を床スラブの下端から上端に移動すること で、各フロアの梁せいを195mm 小さくで 梁 せい た。これは梁の側面に熱容量の大きなコン ④ TSC梁 Takenaka Steel Concrete 梁の略。 ▼床 スラブ厚分 150mm コンクリート 充填 鉄骨梁 耐火被覆 耐火被覆分 45mm 通常の鉄骨梁 195mm低減 TSC梁 きました(図 6)。これにより適用建物では、高さ制限内で、基準階の天井高 3mを保ちつつ、 通常の建物より1階分多く床面積をとることができました。 TAKENAKA es report 2010 30 私たち自身が成長しつづける 「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を経営理念に掲げる私たちは、 自らを磨き、建築のプロフェッショナルとして、その誇りを持ち、その責 任を全うしたいと思います。また、経営理念を実現するためのパートナー である協力会社に関しても、ともに成長しつづけるための活動を行なっ ています。中でも安全衛生に関しては全店方針のもと、安全で快適な職 場の実現に努力しています。 そのため現在、主に次の3つの取り組みを推進しています。 ▶ 明日を担う人材の育成 ▶ いきいき働ける職場づくり ▶ 安全衛生を確保するために 人材育成の考え方 経営理念 「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」 文化、社会、歴史への貢献 作品の創出を通じての自己実現 >txt31 経営理念 「最良の 文化、社 作品の創 作品主義 経営マインド教育、 経営管理教育 人間性の陶冶 作品主義 人間性の 組織経営 専門技術 伝統的技 役職者教育、 テーマ別教育、TQM 教育 組織経営、課題解決、管理技術の習得 職能別専門教育、 TQM 教育 専門技術の深耕と伝承 新入社員基礎教育、 TQM 教育 伝統的技術と精神の研鑽 棟梁精神 棟梁精神 安全衛生方針 災害、事故の撲滅を図り 安全で快適な職場を実現する - 活動指針 - 1. 従業員、協力会社一丸となった安全衛生管理活動に徹する 2. 労働安全衛生に関する法規、社内例規を遵守する 3. 品質保証体系に基づき確実な安全衛生管理を実施する 4. 教育の実施により従業員、協力会社の安全衛生意識の向上を図る お客様 施工状況確認の様子 設計発注 0フェーズ 受命活動 関連 部門 営業 活動 基本 計画 2フェーズ 基本設計 基本 設計 施工計画 見積 調達計画 3フェーズ 詳細設計 4フェー 生産準 詳細 設計 技術 審査 確認申 生産準備 企画 提案 1フェーズ 基本計画 受注 設計 監理 立案 本設計移行 TAKENAKA es report 2010 事業計画 受命 31 事業企画 生産準 明日を担う人材の育成 創業より受け継がれてきた棟梁精神を、従業員一人ひとりがよく理解し、身に付け、 そして自らの知恵を付加して時代に適合した新たな価値を生み出していくという考 えのもと、仕事を通じた人材育成を重視しています。匠の技術を確実に次世代に 伝えるため、現在、当社の技術者と協力会社の職長を対象とした体験型の技術実 務研修施設の開設準備を進めています。 ① OJT On-the-Job Trainingの略。職場内 個人別教育。 竹中は入社後 1年間を新社員(新入社員の社 内呼称)の教育期間と位置付け、幅広い知識 ② 各研修の概要と受講者数 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 新入社員は入社後 1 年かけて研修します ❶ 総括作業所長やベテラン所長の とものの考え方を身に付けることをねらいとし て様々な研修を実施しています。教育期間中 するマネジメントカ強化 (222名) は、当社創立の地である神戸市の教育寮に入 ❷ コンプライアンス・建築士法・品質 寮します。教育寮では月に一度、経営層との 問題に対する設計部門グループリー 懇談会が開かれます。新社員は実体験に基づ 先輩社員からのレクチャーの様子 くアドバイスに触れ、経営理念と社是をはじめ とする歴代経営者の精神や「ものづくり」へのこだわりを大切にする当社の考え方を学びま するとともに建築生産のしくみとプロセスを経験します。教育期間を通して同期生の間に 強い連帯感が生まれ、各人が配属された部門との間にもネットワークが形成されます。こ れらは社内コミュニケーションの強化の面でも重要な役割を果たしています。 ❸ 作業所長として必要な役割と責任 を認識し、 行動計画を立案 (347名) ❹ 事例の検証・討議を通じてベテ ラン層の品質知識をレベルアップ (590名) お客様の信頼を 得つづける す。業務においては複数の部門に配属され、実務を通じた研修により幅広い知識を習得 ダーの認識強化 (146名) 地域社会の 持続的発展に寄与する 品質問題・コンプライアンスなどに対 ❺ 重大な品質問題撲滅への意識と 感性を養い、対策の立案・実施能力 OJT に加え職能に応じた集合研修で人材を育成します するとともに、様々な集合教育を実施しています。中でも技術系従業員には、 新社員から 役付職にいたるまで職能に応じた集合研修を用意し、成長をつづけるきっかけを与えてい ます(図 1)。また昨年は、創立 110周年記念事業の一環としてリニューアルされた「竹中研 修所・匠(たくみ) 」がオープンし、全国から集まる受講者たちの技量・見識を深める場と して活用されています。 新社員 (872名) (98名) ❷ コンプライアンス・品質研修 ❾ 施工図作成の知識とCADによる 複合図作成方法の習得 (134名) ❸ 新任作業所長研修 ❹ エキスパート品質研修 若手層 ❼ 品 質 確 保のための知 識・技 術 の習得と工事計画力のレベルアップ ❽ 品質にかかわる重要事項の認識 ❶ 新・マネジメント研修 中堅層 (237名) と品質リスクへの感度のレベルアップ 図1:技術系従業員人材育成 (品質) 体系概念図② 役付層 ❻ 建築製品の製造工程の視察に より、材料の性格や製造知識を習得 私たち自身が 成長しつづける 棟梁精神を深耕 、進化させるという考えのもと、当社は、各事業所におけるOJT ①を展開 を育成 (626名) ❻ ものづくり研究会 ❺ 重要品質研修 ❼ 生産系社員技術研修 ❽ 品質問題研修 基礎品質研修 設計 ❾ プロダクト設計研修 新社員研修 ❿ 失敗の原因を探ることにより、設 計に取り組む姿勢を習得 (125名) 技師長・若手社員懇談会 施工 作業所巡回を通じて、技師長の 持つ 「暗黙知」 を伝承 (289名) 配属に際し、竹中の品質確保へ の取り組み方・姿勢を習得 (196名) TAKENAKA es report 2010 32 いきいき働ける職場づくり 竹中が事業を通じて社会に貢献していくためには、会社を支える従業員がいきいき と輝き、活力に満ちていなければなりません。従業員が能力を活かし、やりがいを 持って働くことのできる職場づくりに力を入れています。この数年は特に中堅層の 品質管理能力開発、女性のマネジメント能力開発に力を入れています。 一人ひとりの適性を伸ばし活かすことを心がけています 主体的にキャリア形成を図る機会として、公募による研修生制度に力を入れています。こ れは若手から中堅層の従業員が自らの希望により技術開発や国際ビジネスの分野で高度 な専門教育を受ける制度で、各専門分野を担当する部門に研修生として1〜 2 年間配属 ① 2009年3月までの研修生総数 技術研究所研修生:531名 国際ビジネス研修生:205名 ② 人材情報WEBシステム するものです①。 また、2007 年より人材情報 WEBシステム②「竹中e-キャリア」 を導入し、 従業員が保有する様々なスキルに関する情報の「見える化」を図りました。情報共有を通 じて個人のキャリア形成に関する本人と上長によるコミュニケーションの充実を図り、適性 を生かした人材配置の実現を目指しています。 社内イントラネットを利用した人材 情報システム。 各種支援制度の充実を図っています 従業員が安心とゆとりを持って 図1:各種支援制度 業務に打ち込めるよう、長期療 制度 内容 養や介護に対する特別休暇制 長期の病気及び 介護の特別休暇制度 取得できなかった有給休暇を、業務外の傷病及 び家族の介護のため、最大30日まで積立可能 度など、各種支援制度の充実を 病気 災害 図っています(図 1)。2008 年度 からは、 「育児のための短時間 ③「育児のための短時間勤務制度」 の活用者数 (2009年) 女性:17名 勤務制度」③を導入するとともに、 「時間外勤務の制限」など関連 ④ 育児休業取得者数 (2009年) 校就学まで延長しました。 女性:34名 男性:0名 育児支援制度 介護 介護のための休職制度 フレックス勤務制度 制度の適用期間を子供の中学 男性:1名 私たちの想い 育児 被災時の 見舞金制度 ・休職④……… 原則、子が1歳6カ月に達するまで の間取得可能 ・短時間勤務…子が小学3年生以下の場合、一定 の範囲で勤務時間の短縮が可能 家族1人につき通算93日まで取得可能 配転休暇制度 作業所に勤務する従業員に対して、工事終了後 他の作業所などへ異動する場合、または業務の 節目に年間3日の有給休暇を付与 特別休暇制度 勤続10年、20年、30年に達した場合に それぞれ7日、14日、14日の特別休暇を付与 休暇 家族の絆も深まりました ― 育児のための短時間勤務を取得して― 第二子の出産が長女の幼稚園入園と重なったこ とと、妻が出産前後に入退院を繰り返していた 事だと痛感しました。ただ、大変なことばかり ではなく、出産で慌ただしかったところに少し ため、職場の皆さんのご理解もあり、育児のた ゆとりが生まれ、自然と家族間の会話や笑顔が 昼過ぎに帰宅して育児 ・ 家事を手伝うと、考え 多くの方が育児支援制度を活用されること、ま めの短時間勤務を 2ヶ月間取得しました。 ていた以上に重労働であり、妻だけに任せるの ではなく家族が積極的に参加していくことが大 増え、絆も深まったのではと思います。もっと た活用できる職場環境がもっと整備されるとい いと思います。 営業本部 管理部 中出 33 自然災害などに被災した場合に見舞金を支給 TAKENAKA es report 2010 哲夫さん 人材活用に取り組んでいます 多様な価値観に応えられる建築を生み出すためには、幅広 図 2:男女別就労状況 (2009年) い人材を備えていなければなりません。当社は、女性や高 人数 平均年齢 勤続年数 図3:定年退職者の新規再雇用者数 及び再雇用率の推移 齢者、障害のある方など誰もが働きやすい職場環境の実現 男性 6,981人 45.4歳 21.4年 (人) を目指しています。 女性 1,052人 43.3歳 19.7年 300 計 8,033人 45.1歳 21.2年 さらに女性の人材確保に力を入れるとともに、能力開発の 100 90 77 76 250 78 75 美しい地球を 未来の子供たちに遺す 現在当社の男女別の従業員構成は図 2の通りです。今後 新規再雇用者数 (%) 再雇用率 80 70 ための研修や育児との両立支援に取り組んでいきます。高齢者については、高度な知識・ ノウハウをもつ経験豊かな従業員が定年後も活躍できる場を確保するため、2004 年より 再雇用制度を導入しています。2010 年度の新規再雇用者数は295 名となり定年退職者 200 295 283 60 50 281 150 40 220 30 100 20 全体に占める再雇用率は78%に達する見込みです(図 3)。 50 10 障害者の雇用率は2009 年末現在 1.84%と法定雇用率(1.8%)に達しており、引き続き 地域社会の 持続的発展に寄与する 2007 2008 2009 2010[見込] (年) その維持に努めていきます。 女性がより活躍できる職場づくりを目指しています 当社は2009 年に15 名の女性総合職を お客様の信頼を 得つづける 採用しており、その活躍の場は設計、施 工管理、研究開発そして営業と幅広い分 野に拡がっています。当社の特色の1つ である1年間の新社員研修期間中は、男 性社員と同様に研修寮で寮生活を送りま す。育成目的のジョブローテーションにつ いても、作業所における施工管理や設計 (%) 100 300 90 た、女性がより活躍できる職場づくりを目指すポジティブアクションへの取り組みの一環と 200 77 76 70 61 296 の育成やタイムマネジメントなどについて学びます。また、他業種で働く女性管理職との交 150 流を通じて様々な刺激を受けることで更なるレベルアップを図る絶好の機会となっています。 100 281 220 60 50 40 30 120 50 80 再雇用率︵%︶ 産業、他業種の女性管理職とともに学ぶこの研修では、管理職として必要不可欠な部下 再雇用者数 して、2007 年より女性管理職向けの社外能力開発研修に受講者を派遣しています。他 76 250 私たち自身が 成長しつづける など男性社員と同様に実施しています。ま (人) 作業所における施工管理の様子 20 10 2006 2007 2008 2009[見込] (年) 私たちの想い 部下や相手を大切に想うこと ― 社外能力開発研修に参加して― 今回、女性の管理職を対象とした研修に参加し 女性の違いはなく、常に部下や相手を大切に想 て、様々な業種・立場の方々と、普段業務で感 い冷静な判断を採ることであることを学びまし ことは大変有意義でした。研修を通じ、業種を く、当たり前に存在しているような職場環境が それは周囲の行動・態度から自分自身が感じる は増えていくと思います。 じている悩みや想いについて意見交換できた 問わず女性という立場ゆえの苦労もありますが、 ことであり、管理職として取るべき行動に男性・ た。今後、女性の管理職が特別視されることな 整えられれば、これまで以上に女性の活躍の場 大阪本店 設計部 プロダクト設計グループ 河原林 淳子さん TAKENAKA es report 2010 34 安全衛生を確保するために 従業員・協力会社の作業員が安全で快適に働ける環境を確保するために、労働安 全衛生法の遵守を基本に、徹底した安全衛生活動に取り組んでいます。労働安全 衛生マネジメントシステムの運用をベースに、安全衛生計画の策定・実行、実施 状況の確認・評価、改善を図っています。2009 年は、新たな活動として安全重点 工事と重点職種の設定による災害防止活動の強化を実施しました。 ①労 働安全衛生 マネジメントシステム 事業場における安全衛生水準の向 安全衛生水準の向上に努めています 上を図ることを目的として事業者が 労働災害の潜在的危険性の低減と安全衛生水準の向上を図るため、2000 年より全国 7 一連の過程(プロセス) を定めて以下 本支店ごとに 「労働安全衛生マネジメントシステム①(以下 OHSMS ②) 」を導入し、運用し の活動を自主的に行うものです。 ています。OHSMSの中核であるリスクアセスメント (危険性または有害性などの調査及 (1) 安全衛生に関する方針の表明 び必要な措置)については、安全情報シ (2) 危 険性または有害性などの調査 ステム③に蓄積された労働災害事例をも 及びその結果に基づき講じる措置 (3) 安全衛生に関する目標の設定 (4) 安 全衛生に関する計画の作成、 実施、評価及び改善 ② OHSMS Occupational Health & Safety Management Systemの略。 ③ 安全情報システム 1983年から現在までに当社で発生 階で取り組んでいます。2009 年からは 2.0 各本支店ごとの安全衛生計画の重点方 1.6 構成される災害防止と健康管理の 推進を図るための組織のこと。 ⑤ 度数率・強度率 当社の労働災害度数率・強度率は、 建設業(総合工事業)平均と比べて 高い水準を維持しています。 度数率:1 00万延べ労働時間あたり の死傷災害件数 強度率:1 ,000延べ労働時間あたり の労働損失日数 1.89 1.55 1.2 1.0 0.8 災害発生の多い職種を重点職種に設定 0.6 し、安全衛生協力会④と一丸となった災 0.97 0.2 1.05 1.11 0.89 0.87 0.57 0.86 0.37 0.4 害防止活動の強化を図っています(図 1)。 た改善活動を展開します。 1.95 1.77 1.4 クの高いプロジェクトを安全重点工事に、 ラネットに掲載し、従業員がいつでも ④ 安全衛生協力会 1.8 策に加え、全店共通活動として災害リス 2010年も引き続きPDCAサイクルに沿っ 当社とともに施工を行う協力会社で 度数率 (総合工事業) 強度率 (総合工事業) 度数率 (当社) 強度率 (当社) とに、本社・各本支店・作業所の各段 した労働災害に関する情報をイント 検索・閲覧できるシステム。 図1:度数率・強度率⑤の推移 0.03 2004 0.14 0.33 0.1 0.1 0.18 2005 2006 2007 0.96 0.41 0.17 2008 0.20 2009 (年) ※総合工事業のデータは5月末に公開予定 (出典) 労働災害動向調査報告 従業員と協力会社に対して安全衛生教育を行っています 作業所の労働環境が多様化・複雑化する 中、安全衛生管理水準の維持・向上を図 るため、行政動向や安全衛生管理の最新 情報を中心に、従業員や協力会社の責任 者に対する安全衛生教育を実施していま す。従業員に対しては、階層別・職能別に、 安全衛生に関する関係法令・社内諸規定 などの基本研修や統括安全衛生責任者の 職務、計画届作成、工事用機械電気の専 門知識など、作業所の実務に合った研修 災害再発防止研修風景 により、安全衛生管理に必要な知識・ノウハウを修得させます。また、協力会社に対しては、 安全衛生協力会と連携して、新規取引会社研修、職長・安全衛生責任者教育、各種作 業に関する特別教育・技能講習、災害再発防止研修などを実施し、協力会社作業員一 人ひとりにいたるまでの安全意識向上を図っています。 35 TAKENAKA es report 2010 有害物質への対応を着実に進めています アスベストへの取り扱いやVOC 対策など、有害物質・化学物質への対応については新築や 増改築 、解体工事を行う際 、適宜必要な措置をとっています。同時に、工事を行う作業員 の安全確保にも力を入れています。例えばアスベストの撤去・適正処理については、手作 業に比べてより安全で効率よくアスベストの除去作業を行う 「無人アスベスト処理ロボットシ 無人アスベスト処理ロボットシステム (独)新エネルギー・産業技術総合開 発機構 (NEDO) の委託事業です。 健全な心身を保つため各種健康診断、ケアを行っています の定期健康診断に加え、人間ドック受診支 制度 内容 人間ドック 受診支援 (共済会) 40歳以上の本人及び配偶者が 受診したときに、補助金として1 回当たり5,000円を支給 カウンセリング 東京、大阪の専門カウンセラー が「こころの悩み」にカウンセリ ング対応 健康電話相談 システム 社外専門スタッフによる健康電 話相談 (従業員、家族、OBが対象) 援、電話による健康相談、遠隔地勤務者に 対する看護師・保健師の巡回相談を実施し ています。メンタルヘルスに関しても、専門 医・カウンセラーによるカウンセリングをはじ め、セルフケアのための研修、管理者への 研修などを実施するとともに、 社外専門スタッ フによる電話相談や保険組合とタイアップし お客様の信頼を 得つづける 図2:健康ケア制度 地域社会の 持続的発展に寄与する 従業員の健康を守っていくために、年 2回 美しい地球を 未来の子供たちに遺す ステム」 を開発・適用しています。 た相談システムを導入し早期発見、適切な ケアに努めています。(図 2) 作文集 「 お父さんがんばって!」 を発行しています 私たち自身が 成長しつづける 東京本店では、作業員の安全意識の向上を目的に、毎年 6月に安全衛生協力会と共催す る 「安全衛生大会」に合わせ、作業所で働くお父さんへの家族の思いを募集して 「作文集」 を作成・配付しています。2009 年はお子さんからの作文とし、お父さんの安全や健康の ことなどをテーマに96の作品が届きました。いずれも愛情の深さが伝わる力作ばかりで、 「パパけがをしないでね!」 「私の自慢のお父さん」 「皆さんお父さんをよろしく」など、お父さ んの仕事での安全を祈り、毎日元気に帰ってくることを願った作品となっています。 2009 年の作文集 (16 号) 表紙 私たちの想い 仕事での安全をみんなが願っています この作文集は、北関東支店エリア内の企画とし て1994 年に始まりました。次第に口コミで評 判を呼び、2002 年の 9 号からは東京本店全体 に活動を広げ、これまで 16 号、1,213 作品を 「お父さん」に届けています。応募対象は号ごと にお子さんと奥さまから交互に、また 3 回は作 業員本人からも募集しました。奥さまからは 「我 が家の大黒柱」 「ご苦労様です」など、頼もしい お父さんへの感謝の言葉に溢れています。 当初は応募いただくことすら大変でしたが、最 近では公募時期になると「今年はどっち?」と声 が掛かるまでになりました。かつて登場された チビっ子たちも、今では「立派なお父さん(お母 さん) 」 かもしれませんね。 冨永 東京本店 安全環境部 (当時) 健一朗さん TAKENAKA es report 2010 36 グループ会社とともに 竹中のグループ会社①は、各社が保有する環境技術や環境関連サービスを通じた 環境への取り組みに積極的に取り組んでいます。また、海外の現地法人において も国内の環境技術や経験を活かした活動を推進しています。当社はグループ会社 の取り組みに対し、技術 、 情報 、また人材育成を通じて支援していきます。 竹中土木、 アサヒファシリティズはそれぞれ環境報告書、CSRレポートを公開しています。ぜひご覧ください。 ▼竹中土木 http://www.takenaka-doboku.co.jp/environment/index.html ▼アサヒファシリティズ http://asahifm.com/company/csr/index.html ① 竹中のグループ会社 (2010年1月現在、当社、海外を 含めて42社) 主なグループ会社 (海外事業を除く) 建設事業 (株) 竹中土木 竹中グループのオフィス環境活動の輪が拡がりました 当社は、主なグループ会社を対象に竹中グループ環境活動連絡会を開催し、情報の共有 と啓発活動を推進しています。2009 年には、オフィスでの省エネルギーや産業廃棄物削 減などの環境活動に取り組む会社が 3 社から13 社に拡大しました。2009 年におけるオ (株) 竹中道路 2 フィスでのエネルギー使用量は、2.3GJ / m(延床面積当り) となりました。これからも継 (株) 朝日ビルド 続して計測管理し、 省エネ化に向けた努力を続けていきます。 (株) 東京朝日ビルド (株) TAKイーヴァック (株) TAKリビング (株) 朝日興産 風力発電タワーの建設に貢献しています 【竹中土木】 しいしば マネジメント・ エンジニアリング事業 (株) アサヒファシリティズ (株) TAKシステムズ (株) TAKエンジニアリング −全国初となる性能評価 ・ 大臣認定を取得 椎柴風力発電所(千葉)− 風力発電は再生可能エネルギーの中でも発電効率が高く、近年は風 車直径が 80m、風車中心軸の高さが 70mを超えるような大型機の (株) TAKキャピタルサービス 需要が高まっています。竹中土木は当社との協働で、大型風車発電 (株) TAK-QS タワーの全国初となる性能評価 ・ 大臣認定を取得し、設計手法を確 (株) クリエイト・ライフ 主な海外拠点 (海外事業) 立しました。そのノウハウを元に、現在では設計からサイト造成・基 礎工事までを一貫して行い、風力発電タワーの建設に貢献しています。 シカゴ、インディアナポリス、ニュー ヨーク、サンフランシスコ、ホノルル、 椎柴風力発電タワー デュッセルドルフ、バレンシェンヌ、 ミ ラノ、バルセロナ、ロンドン、プラハ、 ヴロツワフ、ブダペスト、ジリナ、ブカ レスト、 ブリュッセル、 アムステルダム、 ドバイ、バンコク、ジャカルタ、クアラ ルンプール、シンガポール、北京、上 海、天津、青島、広州 重金属汚染土壌をオンサイトで浄化しました 【竹中土木】 竹中土木は当社と連携し、様々な汚染土壌の 浄化工事を行っています。このたび、鉛の含 有量基準を超過した土壌を洗浄し、土粒子 の細粒分を分離回収することで土壌を健全に 蘇らせる 「洗浄・分級工法」を大規模工事に 適用しました。2010 年 4月に施行された改 ② オンサイト浄化 汚濁負荷を敷地内で浄化すること。 掘削除去に比べ土壌の運搬が少な く、環境にやさしい低コストな方法で す。 37 TAKENAKA es report 2010 正土壌汚染対策法により 「オンサイト浄化②」 が強く求められており、今後、本技術の適用 拡大が期待されます。 洗浄・分級による土壌浄化工事の全景 ヨーロッパにおいても環境と調和する空間創りに挑戦しています 【ヨーロッパ竹中】 −アマダ・ソリューションセンター(ドイツHaan)− 金属加工機械の総合メーカーとして世界的に 図1:地中熱利用ヒートポンプシステムの模式図 知られるアマダ社の世界 3 番目となる大規模 水 なソリューションセンターが、ヨーロッパ竹中 不凍液 圧縮 膨張 の手でドイツのハーンに完成しました。1階の ショールームには最先端のマシンなど、主力 冷媒ガス ヒートポンプ 製品が展示されています。 当センターでは、広い敷地を利用し、地中熱 利用ヒートポンプシステム③(図 1)を空調熱源 の主役として採用しました。地中エネルギーを 二次側 システム 熱交換器 地中熱交換器 採取する地中熱交換器は総延長で6,760m を通して変化が少なく、夏の冷房で は外気より低い温度の地中に熱を放 カバーします。その結果、従来のチラー/ 出し、冬はその逆に地中から熱エネ ボイラー方式による熱源システムと比較する ルギーを取り出します。 と、年間のCO2 排出量は約 40%削減が可能 人と自然に応答する建築 となりました。 「人と地球環境を大切にする」 いてもお手伝いできたと自負しています。 地中や地下水等を熱源とした熱エネ ルギー交換装置。地中温度は年間 にも及び、年間の冷暖房負荷の約 80%を お客様の経営理念の実現に、ヨーロッパにお ③ 地中熱利用ヒートポンプ システム アマダ・ソリューションセンター (ドイツHaan) 全景 自然 自然 再生 人や自然に近づく 新しい建築環境 人のシステム グループ会社・協力会社における人材育成活動の活性化に 取り組んでいます 人 文化 社会資産 経済 建築・都市 年 1回、当社従業員に加えグループ会社従業員・協力会社の職員も対象に、人材の活性化、 開発改善技術の普及・展開を目的として 「全竹中開発改善大会」 を行っています。 2009 年は3日間にわたり、東京本店で開催しました。 「QCサークル活動事例の部」では、 ゼロ・エネルギー LCカーボン・マイナス 協力会社、グループ会社、海外現地法人、当社サークルの順に、全国・海外から選抜さ ゼロ・カーボン ストック社会 れた18 件の活動事例発表を行いました。海外の現地法人からも2007 年から継続して発 表があるとともに、環境関連の活動もいっそう活発になってきました。著しい成果をあげ ゼロ・カーボンからカーボン・マイナスへ ④ コージェネレーションシステム たQCサークルメンバーを表彰することで、竹中グループにおける人材育成活動のさらな る活性化を目指しています。 私たちの想い 発電と同時にその排熱を利用する、 電力と熱の供給システム。 QCサークル 「スペースメンテナンスHanasaki」 で金賞を受賞しました 「スペースメンテナンス Hanasaki」は、建物使 底的な検証、マニュアル整備など、建物オーナー 用エネルギーの効率化を目指して七人の若侍で と一体となり有効な対策を積み重ねることで、 は、コージェネレーションシステム④の稼働と にあたり、日常活動を PDCA サイクルに則って 削減」に挑戦するものでした。試行錯誤を繰り 題に対し QC 手法を用いて解決していきたいと スタートした QC サークルです。今回のテーマ 運用に着目し、 「エネルギーコストの年間 6% 返しながらも、排熱の有効活用や運転計画の徹 所期目標を達成できました。今後も業務を行う スパイラルアップするとともに、いろいろな課 思います。 株式会社アサヒファシリティズ 横浜支店 横浜花咲ビル事務所 藤井 好輝さん(受賞者他6名) TAKENAKA es report 2010 38 コーポレートガバナンス 建築事業を通して社会から信頼・評価される企業でありつづけるためにコーポレート ガバナンスの体制を構築し、その適正な運営に取り組んでいます。 迅速で的確な意思決定を行うため、 コーポレートガバナンスの充実を図っています 経営に関する意思決定及び業務執行の監督機関として、取締役会を毎月1回、その他必 要に応じて開催し、経営の基本方針、法令及び定款に定める事項、経営にかかる重要な事 項などの討議・決定・報告を行っています。また、経営に関する機能分担を明確にして、意 思決定と業務執行の迅速化を図るとともに監督機能を強化するため、2010 年 3月26日か ら執行役員制度を導入しています。執行役員は、取締役会が決定した経営方針に基づく業 務執行権限を委譲され、取締役の監督のもとで経営方針に従い、業務執行に当たっています。 監査体制としては、監査役会は監査役 4 名(うち社外監査役 2 名) で組織され、取締役の 業務執行を監査しています。これに加え、会計監査人からは、独立監査人としての公正・ 不偏的立場から監査を受けています。また、内部監査組織として、監理室を設置し、会 社の業務、会計並びに財産の実態について、正確性、妥当性の確認を行うとともに、コ ンプライアンスにかかわる指導、教育を行っています。 さらには複数の法律事務所と顧問契約を締結し、顧問弁護士から必要に応じて指導・助 言を受けています。(図 1) 図1:コーポレートガバナンス体制図 株主総会 選任 会計監査人 選任 [監査役会] 監査役 報告 社外監査役 選任 監査 [取締役会] 取締役 報告 選任 代表取締役 経営審議会 企業倫理委員会 執行役員会 危機管理委員会 執行役員 監理室 指導 指導 顧問弁護士 会計 監査 選任 本社・支店 事業本部 業務監査 コンプライアンス指導 内部統制基本方針のもと、しくみの整備と管理に取り組んでいます 内部統制の整備については、会社法に基づく内部統制基本方針を2006 年 5月の取締役 会で決議し、制定しています。この基本方針の下、コンプライアンスや情報管理、リスク 管理などの体制の構築としくみの整備を行うとともに、全従業員に周知徹底を図り、適正 な企業活動を推進しています。 39 TAKENAKA es report 2010 リスクマネジメント 社会に与える影響が重大なリスクに対して、全社対応体制を策定し、迅速、的確かつ 誠実な対応を推進し、発生した事象に対しダメージを最小限に抑えなければなりませ ん。また、リスクの発生を未然に防ぐ、リスクの再発を防ぐことが重要であり、これらを 実行するために、リスク事象の分析、体制の整備、教育・啓発・訓練の実施を進めてい ます。 BCP を策定し、想定される被害の最小化に取り組んでいます 新型インフルエンザ対策を迅速に行いました 当社は2008 年より、国内外の新型インフルエンザの感染拡大に対し、全従業員の安全 確保を第一とした上で、想定される被害を最小化するためのBCP ①に取り組んできました。 2009 年は弱毒性の新型インフルエンザが世界的な大流行となりましたが、本社対策本 部を中心に各本支店対策本部と連携した対応を迅速に行うことができました。この経験を ① BCP Business Continuity Plan (事業継 続計画) の略。 もとに新型インフルエンザ対応マニュアルを各本支店に整備し、再流行時にも重要な業務 機能を継続させ、お客様対応をスムーズに行うことができるように備えています。 大規模地震発生時の合同震災訓練を実施していきます 当社は首都圏直下型地震、東海地震及び東南 図2:想定被災域と対策本部 海・南海地震を想定したBCPを策定しました。そ の内容は、各本支店に設置する対策本部を中心と して、従業員・家族の安否確認、作業所・自社 名古屋支店 施設に加え当社施工建物の被災状況確認及び復 旧対応などを全社的に行うものです。また、これら のBCPに基づき、グループ会社、協力会社と連 携した全社合同震災訓練を定期的に実施していき ます。(図 2) 東京本店 首都直下型 地震被災域 大阪本店 東海地震被災域 東南海・南海地震被災域 情報セキュリティ対策を全社で推進しました 業務効率の向上、情報共有・活用のためにIT 依存度が 高まる中、当社は、お客様の情報をはじめとした情報資 産を守るために、情報セキュリティ対策を継続的に実施し ています。(図 3) 図3:情報セキュリティ対策の3本柱 就業者 一人ひとりの 意識と行動 2009 年には、技術的な安全措置として、社内の情報を 社外に流出させないために、パソコンの暗号化ソフトの導 入を全社で推進しました。また、当社内のみならず、協力 会社をはじめとした取引会社も一体となって情報セキュリ 技術的な 安全措置 ルール整備 教育・啓発 活動 ティ意識を向上させるため、ガイドブックの配付と周知徹 底を図りました。2010 年は、2009 年の実施事項を継続 して行うとともに、情報セキュリティ規程の見直し、就業 者への教育・啓発と自主監査の強化を進めていきます。 TAKENAKA es report 2010 40 コンプライアンス 当社は、2008 年 4 月より、コンプライアンスの徹底・強化を図るため、コンプライアン ス統括副社長の任命や専任部門の新設を行い、当社のコンプライアンスを合理的に保 証するためのしくみをPDCA サイクルに則って再構築しました。 体制の整備…Plan 2008 年に、 「公益通報者保護法」に則った、当社内の相談・通報システム「コンプライア ① コンプライアンス・ネット 従業員、パート・アルバイト、派遣労 働者を対象とした、 コンプライアンス に関する“相談窓口”。当社グループ ンス・ネット①」を新設し、コンプライアンスに関する予防機能及び対応機能の強化を図り ました。2009 年 6月には、これを国内のグループ会社全体に拡大しました。 また同月、協力会社、作業所などにおける作業員・個人事業者からの、 「公益通報者保 全体で115名によって構成されてい 護法」に則った相談・通報を受け付けるシステムを、 「パートナーズ・ネット」 として再整備・ ます。社外の弁護士に直接通報が 拡大しました(図 1)。新システムにおいては、相談・通報の受け付けを本社(監理室)にお 可能な「企業倫理ヘルプライン」 と合 わせて、当社内の相談・通報機能の 強化・充実を図りました。 いて、 「ホームページの専用窓口」 「専用電話」 「郵便」により一括して行うこととし、相談・ 通報機能の信頼性、実効性、利便性の向上を図りました。さらに、当社で発生した事案、 注意すべき事象をわかりやすく解説し、従業員、パート・アルバイト、派遣労働者全員に ② コンプライアンス・ニュース 原則毎月配布している 「コンプライアンス・ニュース②」の特集で取り上げ、他にもPRポス ターの作成及び掲示、作業所安全衛生協議会での確認作業など 「パートナーズ・ネット」 のPRに努めました。 図1:パートナーズ・ネット概念図 「 (例規・通牒・事務連絡の) 指示・命 令」などの内容を補完し、社内外の コンプライアンス問題の事例を毎 回特集として取り上げたリーフレッ ト。2009年に取り上げた特集は、 「コ ンプライアンス・ネット」 「情報セキュ リティ」 「建設業法」 「パートナーズ・ ネット他」 「選挙における禁止事項」 「飲酒運転」 「元請下請関係」 「時 間外労働」 「コンプライアンス月間」 「2009年の日本のコンプライアンス 事情」 。 啓発・教育…Do 2008 年に開始した 「階層別意識研修」 を継続し、 2009 年末現在、 通算約 90 回、 約 3,200 名の従業員に研修を行いました。2009 年は、従業員各職能に必要な関係法令などに関 41 TAKENAKA es report 2010 ③ 職能別知識研修 する 「職能別知識研修③」を開始しました。2010 年内には、 2009年は「建設業法」 (約800名) グループ会社、協力会社に対する研修を開始する予定です。 「建築士法」 (約150名) 「技術開発 また、2009 年より、毎年 11月を 「コンプライアンス月間」 関連諸法」 (約190名) について実施。 と定め、活動を開始しました。 「役員を対象としたセミナー 2010年は「独占禁止法」を中心に実 施する予定。 の開催」 「全店統一ポスターの掲示」 「作業所などにおける パートナーズ・ネットの周知」 「オリジナル映像教材『ミニド ④ ミニドラマで学ぶ 「建設業法」 ラマで学ぶ「建設業法」④』の全従業員による視聴」 「全従 「建設業法」の中で特に作業所に関 係の深い条項を約3分×17本のミニ 業員参加の職場ごとの『コンプライアンス・ミーティング』 ドラマによる 「タブー集」 として映像 の開催」 といったプログラムを実施しました。 教材にまとめたもの。 また、啓発・教育のためのその他の各種ツール⑤について も、順次全従業員に配付し、コンプライアンス意識の定着 全店統一ポスター を図ります。 ⑤ 各種ツール 『コンプライアンス・マニュアル』 企業に必要とされる 「企業行動規範」 に当たるもの。 『コンプライアンス・ハンドブック』 モニタリング(点検・評価)…Check 「階層別意識研修」 のプログラムを文 書化したもの。全従業員に配付予定。 個人による自己点検・評価を目的とした「e −クイズ」を、全従業員を対象に実施しました。 また、組織、事業所におけるコンプライアンス推進の状況は、監理室が行う業務監査に おいて点検・評価しています。2009 年は、特に長時間労働、偽装請負の他、元請下請 関係の健全化、施工体制台帳の整備、監理技術者の設置等に関する建設業法の諸項目 の遵守状況を中心に監査しました。 改善・報告・情報発信…Action 2009 年に国土交通省から4 件の行政指導を受けました。これに対し、 「施工体制台帳の 未整備 (広島県) 」 ならびに 「無許可下請負事業者との契約の不備 (大阪府) 」 については、 「オ リジナル映像教材の全従業員による視聴」及び「コンプライアンス・ミーティング」 、ならび に 「建設業法研修」において、再発防止のための具体的な教育を行いました。また、 「下 請負事業者における労災隠しに対する対応不備(東京都) 」 、 ならびに 「河川の水質汚濁(兵 庫県) 」については、それぞれ「コンプライアンス・ニュース」を通じて、再発防止のための 教育を行いました。 また、課題と対応状況については、経営トップならびにコンプライアンス統括副社長を委 員長とする 「企業倫理委員会」 (年 2 回)に報告しました。 社内外への情報発信についても、当報告書による報告の他、新聞・雑誌・ウェブニュー スなどのメディアを通じて情報発信を行いました。 今後とも、継続してPDCAサイクルを概ね1年周期で回すことで、コンプライアンスの永 続的な維持 ・向上を図っていきます。 TAKENAKA es report 2010 42 ステークホルダー・ダイアログ 2009 年 10 月2日に第 6 回ステークホルダー・ダイアログをNGOジャパン・フォー・ サステナビリティの運営のもと開催しました。専門家の方々から、持続可能な社会に向 けた多面的なご意見をいただき、議論しました。 ▲ 詳細はホームページをご覧ください。 http://www.takenaka.co.jp/enviro/images/2009shd.pdf ダイアログ風景 堀越 哲美 様 池田 正昭 様 中島 恵理 様 篠 健司 様 名古屋工業大学大学院 工学研究科 産業戦略工学専攻教授・ 都市環境デザイナー 毎日アースデイ株式会社 代表取締役社長 環境省職員 総合環境政策局 環境教育推進室・ 民間活動支援室所属 パタゴニア日本支社 環境担当 テーマ1 みを行われると新しい視点の発見や協働 伝統に加えて 「風光緑水土」のキーワード が重要。自然を取り入れた建築、街づく の可能性が見えるのではないか。 (中島) ④次世代への働きかけ りの方針が必要である。 (堀越) ② 2050 年に向けた社内の人材育成 村上 正 (企画室) 佐々木 良和 (地球環境室) 髙井 啓明 (設計本部) 中出 昇 (広報部) ジャパン・フォー・ サステナビリティ 共同代表 2050 年に向けた環境への取り組みと社会への働きかけ ① 2050 年ビジョンについて 当社からの出席者 最上 公彦 (常務取締役) 多田 博之 様 (ファシリテーター) 環境コンペは子供向け教材にもなる。生 物多様性や「自然とデザイン」といった 将来像に現実感があるのはすでに110 年 テーマで伝えていけたらよいと思う。 (池 の歴史があり、その先の40 年はすぐ明日 田) だと考えられるからではないか。 (池田) 竹中さんの作品は、 「経年優化」 である。 ③パートナーシップと生物多様性 年を経るごとに良い状態になっていく。未 企業とNPOでディスカッションする取り組 来への贈り物になり得るのではないか。 (篠) 渡辺 博司 (生産本部) 鈴木 頼多 (企画室) 笠井 香澄 (東京本店設計部) 上原 茂男 (TQM推進室) 山田 隆雄 (国際支店管理部) テーマ2 竹中に求められる社会的責任とは ? ①倫理的な調達への取り組み スモデルを考えていく必要があるのでは 製品がお客様に届けられる過程で児童労 ないか。 (中島) 古宇田 尚子 (営業本部) 働が行なわれていないかなどの管理が必 誰もが参加でき、建築自身が語りかける 遠山 幸太郎 (技術企画本部) 要。 (篠) という地域の拠点、地域の縁側になるよ ※本文中は敬称を省略しました。 ② 2050 年に向けた新しいビジネスモデル うな建築を目指して欲しい。 (堀越) 地域の自然資源を管理する新しいビジネ 第6回ステークホルダー・ダイアログを開催して 皆様のお話の中に、 「2050 年の具体的な絵は に対し、当社単独で立ち向かうだけでなく、地域 いるか」などいくつかドキッとする言葉がありま 解決していくことも大切だと考えます。 あるか」や「環境設計への新しい傾向をつかんで した。常に社会の動きを把握しながら将来をイ メージし、新しい傾向を積極的に先取りする姿 勢がより必要だと思いました。また、様々な課題 43 TAKENAKA es report 2010 の方々やNPOなどとパートナーシップを組んで 最上 当社 常務取締役 (当時) 公彦 マネジメントレビュー 実 施 日:2010 年 3 月 16 日 場 所:竹中工務店大阪本社・東京本社 出 席 者:取締役副社長 常務取締役 渡邊暉生 山下順弘 服部紀和 富田順治 岡田正德 企画室長 村上正 TQM 推進室長 上原茂男 地球環境室長 一つひとつの建築活動において、法令や基 準、社会規範に則り、 「品質」 「安全」 「環 境」 というものづくりの基本要素で優れたパ 川原田稔 2009 年度の活動について 環境活動を総括すると、一部の指標は経 フォーマンスを発揮していかねばなりません。 済環境の激変の影響を受けましたが、環 そして企業市民活動を含めてより多くの皆 マネジメントレビュー風景 境配慮プロジェクトの割合は目標を上回り、 様にご理解を頂き、社会と一体となってサ 施工におけるリサイクル率も着実に向上し ステナブル (持続可能な)社会に一歩ずつ ました。こうした活動を定常化することに加 近づいていきたいと存じます。 え、中長期目標を設定しての活動を積極化 私は、2010 年 3月16日にマネジメントレ いくことができると考えます。一方、建設工 ビューを実施し、担当者から本環境社会報 事における法令違反がありました。これをく 告書の原案及び2009 年における環境活 り返さないために、パートナーズネットの再 することにより、環境負荷低減に貢献して 動と社会性活動の実績、事例について説 整備やコンプライアンス月間など改めてしく 明を受け、詳細な質疑を通してその内容を みと活動を強化しました。 確認しました。その妥当性及び的確性につ いて以下のように評価し、改善に取り組む よう指示しました。 今後の施策について CO2 排出量を地球レベルで抑制する低炭 環境社会報告書 「竹中 esレポート2010」 について サステナブル社会の構築に貢献するための 素型社会への移行が必要です。私たちは CO2 排出ゼロの建築の実現を目指して具体 的活動を展開していきます。これに生物多 様性の保全及び資源循環型社会への転換 4つの想いと12の取り組みをご紹介しました。 を考慮し、さらに、私たちのつくる建築を快 当社の幅広い活動の中から特に社会的関 適に長くつかっていただく工夫を加えて、総 心の高い、建物の運用段階での省エネ活 合的な環境貢献を目指します。同時に、地 動事例と地域貢献・建築文化分野で継続 域への貢献活動、従業員の教育・啓発活 している活動については 「特集」 を組んでい 動などの社会性への取り組みやグループ会 ます。温暖化防止活動については、企画・ 社との協働をさらに充実していきたいと考え 設計段階での活動に関する記述を充実し ます。 ました。また、報告書としてのわかりやすさ、 読みやすさを維持しながらもできるだけ多く の情報を提供するよう努力しています。 2 0 10 年 3月17日 取締役副社長 TAKENAKA es report 2010 44 2009年実施事項と今後の主な活動 2009 年の主な実施事項と今後の主な活動についてご報告します。 活動の詳細については関連ページをご参照ください。 サステナブル社会への 4つの想い 美しい地球を 未来の子供たちに遺す (地球環境) 地域社会の 持続的発展に寄与する 12 の取り組み 地球温暖化防止 建物のライフサイクルで排出されるCO2 を削減する 資源循環 枯渇が懸念される自然資源の使用を再生可能な資源またはリサイクル資源に置き換える 生物多様性 自然との共生に貢献する新技術・手法の開発と適用に取り組む 歴史と文化 建築を基点とした歴史と文化の保存・継承・創造に貢献する 育成支援 地域の人々や子供たちとのふれあいを通じて、次世代を担う人材育成を支援する 地域貢献 地元の材やサービスを活用し、コミュニティの活性化に寄与する 豊かさの提供 安全・安心で、豊かな暮らしの場を提供する 最良の品質 建物のライフサイクルにわたり最良の品質をつくり込み、お客様の満足を得る 技術開発 新技術・プロセスを開発・活用し、新しい建築を先導する 人づくり 従業員の能力を高め社会に貢献できる人材を育てる やりがい 従業員・作業員がやりがいを持つ環境を整え、自ら成長する風土を醸成する 安全と健康 従業員・作業員が安全で快適に働ける職場を実現する コーポレートガバナンス 社会から信頼、評価される企業でありつづけるための適切な企業運営に取り組む リスクマネジメント 経営に影響を与える可能性が大きいリスクについて、損害の拡大を防止し、 最小限に止めるべく対応する コンプライアンス 経営理念・社是を原点とし、法令はもとより企業倫理・社会規範の遵守を実践する ステークホルダー・ダイアログ 成長しつづける企業を目指し、ステークホルダーの声を企業活動にフィードバックする (地域社会) お客様の信頼を 得つづける (お客様) 私たち自身が 成長しつづける (従業員・協力会社) しくみの 継続的改善 (マネジメント) 45 TAKENAKA es report 2010 2009 年の主な実施事項 関連 ページ 今後の主な活動 ・環境コンセプト2050デザインコンペティションの実施 ・環境配慮プロジェクト (CASBEE 評価でAランク以上) の創出 ・施工時 CO2 排出量、オフィスにおけるエネルギー使用量の削減 P.11 P.13 P.15 ・環境先進プロジェクトの創出 ・環境配慮プロジェクト (CASBEE 評価でAランク以上) の創出 ・施工時 CO2 排出量、オフィスにおけるエネルギー使用量の削減 ・作業所におけるリデュース・リユース・リサイクル推進 ・グリーン調達の推進 P.17 ・作業所におけるリデュース・リユース・リサイクル推進 ・グリーン調達及びオフィスにおける紙購入量の削減 ・アゲハチョウなどを対象にした生態調査開始 ・保全緑地の活用 P.18 ・建設プロジェクトにおける生物多様性保全度評価手法の研究 ・生物多様性に配慮した緑化の手引きの作成 ・現代技術を活用した伝統木造建築の保存と再生 ・企業市民活動による建築文化の保存・継承・発信 P.20 ・現代技術を活用した伝統木造建築の保存と再生 ・企業市民活動による建築文化の保存・継承・発信 ・作業所見学会を通じた地域との交流 ・インターン生の受け入れ ・竹中育英会による学生奨学・研究支援 P.23 ・作業所見学会を通じた地域との交流 ・地域を支える次世代育成支援 ・竹中育英会による学生奨学・研究支援 ・街、都市活性化のための支援活動 ・国産木材を用いた耐火集成材の開発 P.24 ・街、都市活性化のための支援活動 ・地元の材やサービスの積極的活用 ・新耐火実験棟の建設 ・高層建物の安全で環境に配慮した解体工法の開発と適用 P.26 ・安全・安心で豊かな建物の創出 ・高齢化社会に対応した人にやさしい建物の創出 ・ 「フェーズゲート」 を盛り込んだ 「品質保証体系」 の改訂 ・ 「統合マネジメントシステム」 を 「品質保証体系」 に一本化 P.27 ・ 「品質保証体系(改訂)」 に基づいた業務の執行と 必要な事項に対する改善 ・ 「人にやさしい空間」 の研究と展開 ・環境関連・市場対応技術の開発と適用 P.29 ・環境及び安全・安心に貢献する技術の高度化と適用 ・施工品質管理の高度化や生産の高効率化のための技術開発と適用 ・品質関連集合研修の充実 ・若手ジョブローテーションの拡充 ・人材情報システムの再構築による人材情報の共有促進 P.32 ・技術者の体験的研修を目的とする 「技術・実務研修センター」 の建設 ・階層別・職能別教育の拡充 ・女性役付職を対象とした能力開発研修の実施 ・資格取得支援研修の実施 ・ゆとり確保のための休日・深夜事業所一斉閉所の実施 P.33 ・多様な人材の活躍の場を広げる従業員体系の再編 ・各種支援制度の周知・普及 ・労働安全衛生マネジメントシステム、リスクアセスメントの着実な実施 ・安全重点工事と重点職種に対する災害防止活動の強化 P.35 ・リスクアセスメントの徹底 ・安全重点工事・重点職種に対する災害防止強化活動の継続 ・内部統制の強化、経営の効率性、健全性の更なる向上に向けた検討の実施 P.39 ・内部統制の強化 ・経営機能強化のための執行役員制度の導入 ・新型インフルエンザ発生時の対応体制の構築 ・社内外における情報セキュリティ対策の推進 P.40 ・策定したBCPに基づく震災訓練の実施 ・新型インフルエンザ対応マニュアルの改訂 ・情報セキュリティの啓発・教育及び自主監査の強化 ・相談・通報機能のグループ会社・協力会社への拡大と整備 ・ 「階層別意識研修」 、 「職能別知識研修」 などの啓発・教育の実施 ・キャンペーン月間 ( 「コンプライアンス月間」) の設定(毎年 11月) P.41 ・啓発・教育の継続的な実施 ・グループ会社、協力会社に対する研修の開始 ・企業に必要とされるコンプライアンス・ツールの整備 ・ステークホルダー・ダイアログ 2009の開催と公開 P.43 ・ステークホルダー・ダイアログ 2010の開催と公開 ▲ 地球環境関連の詳細は当社ホームページをご覧ください。 http://www.takenaka.co.jp/enviro/es_report/index.html TAKENAKA es report 2010 46 環境活動データ マテリアルフロー 事業活動に由来する資源消費 量や環 境負荷の現 状を可 能 な限り定量的に把握しました。 (図 1) 図1:2009年の投入、排出、再生量 投 入 解 体 建設活動 ① 建設副産物 再 生 コンクリート ・・・・・・・・・・・・・・ 3,165 千 t 建設副産物 ① ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 976 千 t コンクリート ・・・・・・・・・・・・・・・786 千 t 建設汚泥・・・・・ 171 千 t アス・コン ・・・・ 41 千 t 鋼材、鉄筋・・・ 480千 t CO2 ・・・・・・94 千t-CO2 木くず・・・・・・・・・15 千 t 建 設 電力 ・・・・ 45 百万kWh 作業所から排出される建設副産物量の内、 排 出 軽油 ・・・・・・・・・29,174kl NOx ・・・・・・・ 534t-NOx SOx ・・・・・・・・・・・・3t-SOx 給水 ・・・・・・・・・・502 千㎥ 建設汚泥、建設発生土を除いた量です。 延べ床面積 4,044 千㎡ (2008 年)6,307 千㎡ オフィス活動 用紙 ・・・・・・・・・80 百万円 文房具・・・・・・56 百万円 紙くず・・・・・・・・・・・・・ 580t 古紙 ・・・・・・・・・・・・・495t 182t 一般再生物・・・・・・ 59t 一般廃棄物 ・・・・・ 排水 ・・・・・・・・・・123 千㎥ 給水 ・・・・・・・・・・123 千㎥ 2009 年環境会計 事業活動に伴う環境負荷削減 のための費用とその効果を把握 するために1999 年より環境会 図2:環境保全コスト 環境保全コスト項目 ※カッコ内は2008年の数値 コスト項目の内訳 費用(億円) 107.3 (98.9) 事業エリア内コスト 地域公害防止 水質汚濁・騒音・振動など、主に作業所での公害防止対策コスト 32.2 (36.1) 地球環境保全 温暖化防止、生態系保全など地球環境保全のためのコスト 33.1 (19.6) 資源循環 廃棄物の削減、適正処理など資源循環を推進するためのコスト 41.9 (43.0) 管理活動コスト 環境マネジメントシステムの整備・運用、従業員の教育などのコスト 10.6 (11.6) 研究開発コスト 環境保全、環境浄化、環境監視測定に関する技術開発のコスト 20.4 (19.3) b. 対象期間 社会活動コスト 社会的な環境改善活動、関連団体への寄付、協賛金などのコスト 0.1 (0.1) 2009年1月1日〜12月31日 環境損傷コスト 土壌汚染、 自然破壊などの修復、環境関連の和解、補償などのコスト 5.6 (0.5) (図 2,3) 計を集計しています②。 ② 2009年度環境会計集計の 基本事項 a. 集計範囲 株式会社竹中工務店単体 c.期間帰属 設計人件費も含めて工事完成基準に従っ ています。 d. 金額の単位 億円 (小数第2位以下を切り捨て) e.集計方法 環境保全コスト合計 144.0 (130.5) 図3:環境保全対策に伴う経済効果 環境経済効果項目 経済効果項目の内訳 事業エリア内コスト 計ガイドライン」 (建設業3団体)を参考に 地球環境保全 型枠の仕様変更などの工法改善による費用節減 資源循環 副産物リサイクル活動による費用節減、副産物処理量削減による処分費節減、 有価物売却益など 事会社でないJV (共同企業体) 工事分を含 めて算出しています。 TAKENAKA es report 2010 環境経済効果合計 効果(億円) 15.6 (25.7) 算 定に当たっては「建設業における環境会 し、2009年は前年に引き続き、当社が幹 47 企業活動に伴う環境負荷削減のためのコストと経済効果 0 (0) 15.6 (25.7) 15.6 (25.7) グリーン調達を着実に行っています 2009 年の選定品目を74とし、グリーンプロジェクト件数比率③の目標値を設計段 階で85%、施工段階で90%と設定し活動しました。実績は96.9%、95.7%と、 いずれも目標値を上回ることができました。主要資材のグリーン調達は、金額総計 でみると2009 年は前年を下回りました(図 4)。選定品目別では資源循環に有効な再 1,000 800 65 400 グリーンプロジェクト件数比率= (グリーンプロジェクト件数/対象プロジェクト件数) ×100 74 74 72 64 375 338 304 324 40 268 20 2005 2006 2007 2008 2009 工事区分 選定品目 (例) 単位 仮設 再生砕石 千t 高炉セメント 千t 電炉鋼材 千t デッキプレート PCa部材 水系塗料 t 岩綿吸音板 千㎡ パーティクルボード t 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 291.3 319.9 313.6 340.6 294.3 15.0 137.3 96.1 157.9 94.5 431.4 445.7 377.4 379.7 291.1 千㎡ 1,160.9 1,190.3 1,336.0 873.5 996.1 千㎡ 181.8 324.0 260.3 277.5 427.4 3,325.4 4,516.2 4,543.9 3,249.8 2,255.8 330.5 523.3 415.9 189.5 225.7 1,651.9 875.0 3,739.0 1,822.1 3,252.7 (億円) 情の数は53 件と、前年の52 件から増加しました(図 6)。主な項目は「飛散・埃」で、 強風、突風など気象変化への対応が不十分であることが主な原因でした。今後、タ イムリーに気象情報を入手するしくみの導入などを推進します。 800 74 72 80 選定品目数 苦情などの情報収集を実施しています。2009 年に寄せられた周辺環境に関する苦 100 調達主要資材金額総計 当社は、環境マネジメントシステムの一環として環境に関するお問い合わせ、要望、 (年) (品目数) 1,000 作業所周辺環境にも細心の注意を払っていきます 80 60 200 図5:グリーン調達 (主要) 実績 仕上 100 600 ③ グリーンプロジェクト件数比率 躯体 (品目数) 選定品目数 が定着してきています(図 5)。 (億円) 調達主要資材金額総計 生砕石、南洋材型枠の削減に有効なデッキプレートやPCa 部材などの品目の採用 図4:グ リーン調達主要資材金額総計と 選定品目数の推移 65 64 図6:寄せられた苦情件数の推移 60 600 (件) 60 400 50 338 375 200 40 49 304 324 40 53 52 20 36 30 20 20 20052006200720082009(年) 10 2005 2006 2007 2008 2009 (年) オフィスでの省エネ ・ 省資源に取り組んでいます 2009 年には、省エネ法改正の施行を前にして、冷暖房の設定温度や、照明の点灯 時間帯など、事業所のエネルギーに関する管理項目を細かく定め、全事業所に周知 するとともに、全社統一のチェックシートを使って運用状況を確認しました。調査対 的点検などを実施しました。その結果古紙発生総量は減少、古紙リサイクル率は上 昇しました(図 7)。 (%) 700 613 600 500 400 503 85 652 580 544 88 85 84 100 85 300 50 200 古紙リサイクル率 て算出しました④。また、古紙については、分別ルールの確認、分別ボックスの定期 (t) 古紙発生総量 象も全事業所に拡大し、不明であったテナントでの空調エネルギー使用量も推計に 図7:古紙発生総量と古紙リサイクル率 の推移 100 ④ 当社全事業所のエネルギー使用量についてはホームページをご覧ください。 2005 2006 2007 2008 2009 (年) TAKENAKA es report 2010 48 700 600 500 外部表彰 2009年に外部表彰を受賞した建物の代表的な例 aストロングビルディング[大阪] b東京理科大学長万部キャンパス女子寮 c 東京ドームシティ MEETS PORT[東京] dアステラス製薬つくば研究センター [北海道] (御幸が丘)/居室・厚生棟屋 [東京] 2009年の主な外部表彰一覧 名称/受賞名 受賞対象 本支店 第19回BELCA賞①/ロングライフ部門 武庫川女子大学附属中学校・高等学校 校舎棟 大阪 当社 リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰②/国土交通大臣賞 丸の内パークビルディング 東京 他社 土佐堀ダイビル新築工事 大阪 他社 リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰/推進協議会会長賞 (仮称) 三洋大日集合住宅新築工事 ストロングビルディングa 第50回BCS(建築業協会)賞③/ BCS賞 大阪 当社 大阪 当社 佐川美術館 樂吉左衞門館 大阪 共同 新丸の内ビルディング 東京 他社 日本中央競馬会 東京競馬場 フジビュースタンド 東京 他社 武庫川女子大学建築学科・大学院建築学専攻 建築スタジオ 大阪 他社 第8回芦原義信賞④/奨励賞 東京理科大学長万部キャンパス女子寮b 北海道 当社 第7回環境・設備デザイン賞⑤/建築・設備統合デザイン部門 最優秀賞 MOAアートホール北海道 断熱障子 北海道 当社 第7回環境・設備デザイン賞/建築・設備統合デザイン部門 入賞 太陽の郷リハビリテーション研究室 東京 当社 第7回環境・設備デザイン賞/環境デザイン部門 入賞 プール学院中学校・高等学校 大阪 当社 第7回環境・設備デザイン賞/設備器具・システムデザイン部門 入賞 国際メディアセンターの環境負荷低減システム 北海道 他社 第8回屋上・壁面・特殊緑化コンクール⑥/屋上緑化部門 日本経済新聞社賞 東京ドームシティ MEETS PORT c 東京 当社 横浜ベイクォーター 東京 共同 第3回サステナブル建築賞⑦/国土交通大臣賞 新丸の内ビルディング 東京 他社 第3回サステナブル建築賞/ IBEC理事長賞 東京ミッドタウン 東京 他社 第3回サステナブル建築賞/審査委員会奨励賞 イオンモール草津 大阪 当社 平成21年度日事連建築賞⑧/一般建築部門 優秀賞 佐川美術館 樂吉左衞門館 大阪 共同 東京理科大学長万部キャンパス女子寮 北海道 当社 AGCモノづくり研修センター 東京 当社 第22回日経ニューオフィス賞⑨/経済産業大臣賞 アステラス製薬つくば研究センター (御幸が丘) /居室・厚生棟屋 d 東京 当社 第10回JSSI賞⑩/作品賞 シスメックステクノパークR&Dセンター 大阪 当社 日本コンクリート工学協会賞⑪/作品賞 アイランドタワースカイクラブ 九州 当社 第8回屋上・壁面・特殊緑化コンクール/壁面・特殊緑化部門 都市緑化技術開発機構理事長賞 平成21年度日事連建築賞/一般建築部門 奨励賞 ①B ELCA 賞 の進展と地球環境の保全を目的に、 適切な維持保全、優れた改修を実施 優秀な建築物の建築主、設計者、施 した既存の建築物のうち、特に優秀 工者を表彰。 なものの関係者を表彰。 ②リデュース・リユース・リサイクル 推進功労者等表彰 リデュース・リユース・リサイクルに 率先して継続的に取り組み、顕著な ている民間企業などを表彰。 ⑦サステナブル建築賞 ⑨日経ニューオフィス賞 「ニューオフィス」づくりの普及・促 ④芦原義信賞 建築物として優れた作品であるとと 進を目的に、創意と工夫を凝らしたオ もに、建築主、設計者及び施工者の フィスを表彰。 優れた創造的環境形成に寄与した未 三者の協力により、環境負荷低減、 来ある新人を選び表彰。 省エネルギーに顕著な成果を上げ、 ⑤環境・設備デザイン賞 「環境共生」への積極的な取り組みを ⑩ JSSI 賞 免震構造の技術の進歩及び適正な普 その普及効果が期待される建築物に 及発展に貢献した者ならびに建築者に 与えられる賞。 与えられる賞。 ⑧日事連建築賞 ⑪日本コンクリート工学協会賞 実績をあげている個人・グループ及び 示しているデザインを対象に優秀な 特に貢献の認められる事業所などを ものを表彰。 意匠・構造・機能上優れており、防 コンクリートで構成されている造形物 災・維持管理・UD・景観・まちづく で、その美的価値、独創性あるいは環 屋上等特殊空間の緑化について、積 り・地球環境への配慮がなされている 境との調和等において、技術面も含め 極的に取り組み、優れた成果をあげ 建築物へ与えられる賞。 て優れていると認められるもの。 表彰。 ③B CS (建築業協会) 賞 日本の良好な建築資産の創出、文化 49 設計区分 TAKENAKA es report 2010 ⑥屋上・壁面・特殊緑化コンクール 活動年表 年 社会の動向 当社の取り組み ● 環境省「生物多様性民間参画ガイドライン」公表 「パートナーズネット」 の整備 ● 気候変動枠組条約コペンハーゲン会議(COP15) 「コンプライアンス月間キャンペーン」 実施 ● 民主党を中心とした政権の発足 『凸と凹と〜竹中工務店設計部のなかみ〜』 発行① ● アメリカ合衆国オバマ政権の発足 2009 ● ● ● 創立110周年記念総会開催 ● ISOシステムの全店共通化 ①『 凸と凹と〜竹中工務店設計部のなかみ〜』 「生物多様性基本法」公布 ● 2008 「省エネ法」改正 ● ● リーマンショック ● G8北海道洞爺湖サミットの開催 ● 建設3団体「環境保全自主行動計画」第4版発行(2007) 「建築基準法」改正(2007) ● 「フロン回収・破壊法」改正(2007) ● ● ● 平成20年度地球温暖化防止環境大臣表彰を受賞 「コンプライアンス部門」 「コンプライアンスネット」 の設置 ● 『竹中esレポート2007』 発行 (2007) ● 「環境月間キャンペーン」 実施、 「環境貢献賞」 表彰 (2006) ● ● 企業倫理ヘルプラインの拡大 (2006) 「アスベスト新法」施行(2006) 「内部統制基本方針」 の制定 (2006) 「高年齢者雇用安定法」改正(2006) 「安全環境本部」 の設置 (2006) ● ● 「公益通報者保護法」施行(2006) ● 2007-2003 「竹中大工道具館」 が 「メセナアワード2008」 を受賞 ● 石綿障害予防規則施行(2005) ● 京都議定書が発効(2005) ● ● ● BCM (Business Continuity Management) ビジネス開始 (2005) 「個人情報保護方針」 の制定 (2005) ● ● サステナブル・ワークスコンセプトの策定 (2004) 「個人情報保護法」施行(2005) ● 環境配慮設計評価シートの活用開始 (2004) 「育児・介護休業法」改正(2005) ● 第1回 「ステークホルダー・ダイアログ」 実施 (2004〜) ● ● 「景観緑三法」施行(2004) 「再雇用制度」 導入 (2004) 「労働安全衛生法施行令」改正(2004) 「企業倫理綱領」 の制定 (2004) ● ● ● ● 「健康増進法」施行(2003) ● 「環境教育推進法」施行(2003) ● 「土壌汚染対策法」制定(2002) ● 「PCB廃棄物特別措置法」制定(2001) ● 「廃棄物処理法」改正(2000) ● ● ● グリーン調達システム構築 (2001) 「労働安全衛生マネジメントシステム」 導入 (2000) ● 「建設リサイクル法」制定(2000) ● 本支店に 「安全環境部」 設置 (1999) 「グリーン購入法」制定(2000) ● 環境会計の導入 (1999) ● ● 2002-1998 『環境負荷ゼロ建築を目指して』 (大成出版社) 発行 (2002) ② 「PRTR法」制定(1999) 「地球環境室」 名称変更 (1999) 「ダイオキシン対策法」制定(1999) 「環境・エネルギー本部」 設置 (1999) ● ● 「地球温暖化対策推進法」制定(1998) ● ● ● ● 7本支店 ISO14001認証取得(1998〜1999) ● 7本支店 ISO9001認証取得(1996〜1998) ②『環境負荷ゼロ建築を目指して』 ● 気候変動枠組条約京都会議(COP3) (1997) 「ISO14000S」発行(1996) ● ● ● TQCをTQMに改称 (1996) ● 建設3団体 「環境保全自主行動計画」 策定 (1996) 「リサイクル推進強化月間キャンペーン」 実施 (1993) ● 阪神淡路大震災(1995) 「地球環境整備推進中央委員会」 設置 (1992) 「環境基本法」公布(1993) ● 1997-1971 『竹中eレポート’96』 発行 (1997) ● ● 「竹中工務店地球環境憲章」 制定 (1992) ● ● 地球サミット(リオデジャネイロ) (1992) 「日本品質管理賞」 受賞 (1992) ● 経団連「地球環境憲章」発表(1991) 「地球環境整備推進室」 設置 (1991) 「ISO9000S」発行(1987) ● ● ● 「竹中大工道具館」 開設 (1984) ● ● オイルショック(1973) 「デミング賞」受賞 (1979) ● 「国連人間環境会議」開催(1972) 「省エネルギー本部」 設置 (1977) 「成長の限界」ローマクラブ発表(1972) ● ● ● 「設計に緑を」 がスローガンとなる (1971) ● TAKENAKA es report 2010 50 FSC認証紙と大豆油インキ(Non-VOC)を使用し、環境にやさしい「水なし印刷」を採用しました。 Cat. No.060611 1801006 GH Printed in Japan
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