検診で偶然発見された 甲状腺癌の一症例

検診で偶然発見された
甲状腺癌の一症例
高山赤十字病院 放射線科
〇山下光弘・山口忠夫・田中知哲・川邊美穂
はじめに
• 甲状腺癌は濾胞上皮細胞由来の濾胞癌、乳頭癌、未分化
•
癌と傍濾胞細胞(C細胞)由来の髄様癌に分類される。今回
我々は、頸動脈検診の超音波検査の際、偶然に甲状腺髄
様癌を認めた症例を経験したのでここに若干の文献的考察
を加えて報告します。
甲状腺髄様癌は全甲状腺癌の1∼2%と頻度は少ないが、
他の分化癌より予後は悪く、家族内に発症する場合があり、
診断の進め方や治療方針については十分に検討する必要
があります。
症例
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症例:62歳、男性
主訴:なし。
既往歴:高血圧なし。その他特記すべきことなし。
家族歴:母 高血圧。甲状腺疾患なし。その他特記
すべきことなし。
現病歴:毎年検診を受けており、異常を指摘された
ことはない。平成16年12月の脳ドックの超音波検
査にて、右甲状腺腫瘍を指摘され、精査の為、当院
内科を受診。
入院時検査所見
T-BIL 1.1 TP 6.7 Alb 4.1 A/G比 1.6 ZTT 8 ALP 257 CHE 296 AST 20 ALT 20 LDH 149 r-GTP 16 CK 96 NA 142 K 4.1
Cl 104 Ca 9.1 IP 2.9 BUN 10.2 CRE 0.9 UA 5.7 T-CHO 162 TG 176 HDL-CHO 57 T/H比 2.8
S-AMY 98 CRP 0.1 血糖 92 CEA 60.5
Free-T3 2.87 Free-T4 1.03 TSH 3.03 LH 3.8
インスリン 5.6 FSH 18.4 プロラクチン 19.9 GH 0.07
ACTH 164 サイログロブリン 43 コルチゾール22.9 血中アルドステロン76 DHEA-S 871
副甲状腺PTHインタクト 27 カルシトニン 1600以上 超音波画像 腫大リンパ節の超音波画像
単純CT像
造影CT
心筋MIBIシンチ
副腎髄質シンチ
切除標本
病理組織像
腫瘍
転移腫瘍
考察
• CEA及びカルシトニンの上昇を認めた。
• 副腎、下垂体、副甲状腺などに腫瘍性変化を
認めなかった。
• 多発性内分泌腫瘍症2型の遺伝子(RET遺
伝子)解析では有意な所見は得られなかった。
• 家族歴も認められないことから、散発性甲状
腺髄様癌と診断された。
結語
• 甲状腺髄様癌の一例を経験した。
• 症例は甲状腺髄様癌と診断され甲状腺
全摘及び保存的頸部郭清が行われた。
• 無症状な甲状腺腫瘍であり超音波検査
が有用な症例であった。