日本語読解学習支援サイト tutor.bunko における web教材開発の試み 発表者:森川結花(甲南大学) 共同研究者:永須実香(上智大学) 北村達也(甲南大学) 1.はじめまして tutor.bunko • 2009年9月24日より公開 • URL:http://basil.is.konan-u.ac.jp/tutor/bunko/ • email :[email protected] 日本語教育+情報工学の コラボ 「しきい」の低い 読解練習サイト 「読む」のが怖い?? • 「読解試験」は一番、本当の実力を反映する • 「優等生(がんばりやさん)」の 本当の実力(プロフィシエンシー)がばれる • この正反対 ・・・・ (究極の例:ごんちゃん) ストラテジー・・・と言われても・・・ • 個々人に存在する個性&「読みくせ」 • 個々人の読書経験(読みの訓練量)の違い • 文化による思考パターン/「読みくせ」の違い そう一筋縄でいくものではないから • 読み方そのものは学習者(読者)にまかせる • 「読む」ことを困難にしているものを取り除い て ← 情報工学の支援 • 安心して読んでいける仕掛けをしたhtmlファ イルの形で提供する tutor.bunkoの基本コンセプト • まずは「読む」ことに対する抵抗感をなくし、 • 読むことになじむ 挿絵 見る 写真 読む 朗読 聞く ツール 知る チップ 基本コンセプト 楽しむ 読む 味わう 喜ぶ 基本コンセプト プロセス全体を通して学ぶ 読む 考える output interaction 内容中心の語学教育 Content-Based Instruction tutor.bunko 教材の構成 上級編 : 内容中心の語学教育 N3~~~ (文学作品、新聞記事) 中級編 : 長文を「読む」ための土台 N4~N3 (漢字、構文ナビゲーション、平易で親近感の持てる 文章を読む) 2.コンテンツの紹介 各種 取りそろえて ございます 上級編1) 日本文学 珠玉の小品集 • 文学作品をテキストにした読解教材 なぜ文学なのか? 1.質の高い日本語の文章を提示 2.時空を越えた文化的な価値 3.映像作品、翻訳などの補助教材 4.日本人と話題が共有できる 作品たち • • • • • • ごん狐(新美南吉) セロ弾きのゴーシュ(宮沢賢治) 一房の葡萄(有島武郎) 南京の基督(芥川龍之介) 桜桃(太宰治) 夏目漱石先生の追憶(寺田寅彦) 作品たち • • • • • • 蜘蛛の糸(芥川龍之介) 雪女(小泉八雲) おばすて山(楠山正雄) 姨捨(堀辰雄) 桜の樹の下には 耳なし芳一 読解アシスタント (MIT)とコラボ 学習者への支援 • 対象N3以上(ちょっと背伸びをしたい学習者にも) • そのための支援 e-chuta & 読解アシスタント(MIT) 文番号、語注・話し手のツールチップ表示 • 選ぶ問題(文脈理解の確認) • 考える問題 →たった一つだけの正解はない 内容中心の語学教育 • 挿絵 • 朗読 理解の促進・楽しみ・芸術性 構文ナビ 上級編2) 新聞記事読解演習コーナー・NPクラブ http://blog.goo.ne.jp/np-club/ • 対象N1以上 • プログラム修了生へのアフターケア (就活に向けての対策、日本語能力の維持) • 確認問題 (読解の正確さを確かめる) • 考察問題 (論述+コメントのやりとり) 中級編1) 漢字の部屋 http://bunko-kanji.blogspot.com/ • “Gateway to the Japanese Written World unit one&two”, Niimi/Yamaura, Sophia University, Tokyo,1995(邦題「書き言葉 の世界へ」) • 1945文字(かつての上智では2年間で) • 面白くて練習にも知識にもなる例文 中級編2) 友達ブログ(仮) • リアルな日本語世界へのこぎ出しを支援 • 読んで楽しむ(学習者にとって身近で等身大 の話題&ことばを通して) • 自発的に書く (コメント→自分のブログ開設) • ことばのやりとり 中級から上級へ • 構文ナビゲーション • 「ごん狐」「一房の葡萄」 昔は、 • 私たちの村の近くの中山というところに 小さなお城が あって、 • 中山様というお殿様が おられたそうです。 おまけ • 教室活動用に開発した教材など 文学作品 : デューク、ムーンライト・シャドウ 映像作品 : 電車男、花より男子、ガリレオφ デスノート、デューク 小ネタ : 関西弁講座 e-chuta 3.「読む」プロセスの中での 内容中心の語学教育 いいことあるの? 甲南大学での実践(08~09) • 非漢字圏学習者を対象とした中上級クラスで • 何を、どう教えるかの悩み・・・・ 膨大な漢字と語彙 教科書学習 の 行き詰まり 現実感の伴わない 学習内容 「読む」スキルの欠如 いいことも、悪いこともある • • • • 「認めてもらえる」経験 読む→聞く・話す・書く へ発展 本物素材を読了した「満足感」→自信 日本人コミュニティに歓迎される→交流 • CBIを受け付けないタイプの学習者がいる • CBIは教師も選ぶ 4.教材作成過程での発見 1.ウェブ教材の利点 ・ 紙ベースにはない仕掛け ・ 「出版」よりは早い 2.ブログサイトの利点 ・作ること、やり直すことが容易 ・ブラウザに依存しない ・コメント機能 3.友達ブログ ・学習者にとっての「リアルな日本語」の素材 ・「自分もやってみたい」という動機付けを促進 5.今後の課題は? • 学習者を獲得して実際に運用してみないと! (虚学の偏見を跳ね返す必要性) • システムの「ブラウザ依存性」 例)e-chuta → IE 読解アシスタント → Firefox,Safari • 教材の元となる物の「著作権」 それでも「夢」がある • 日本語学習者の先輩達への支援 • 「本物」であり、深みがあり、文化的な価値を 誇れる日本語教材の提供 • 日本語を日本語で読んでこその価値を伝え たい 6.参考文献 • ハドソン遠藤陸子(2008)「短編を通して「日本」を 教えるーー5技能融合・5C実践の短編購読講 座ーー」畑佐由紀子編『外国語としての日本語 教育 多角的視野に基づく試み』くろしお出版所 収 • 北村達也(2009)「リーディングチュウ太の最新情 報」甲南大学リーディングチュウ太シンポジウム 2009(口頭発表) • 甲田直美(2009)『文章を理解するとは 認知の 仕組みから読解教育への応用まで』スリーエー ネットワーク 参考文献 • 国際交流基金(2009)『JF日本語教育スタンダー ド試行版』国際交流基金 • 牧野成一(2008)「OPI,米国スタンダード、CEF Rとプロフィシエンシー」 • 牧野成一(2008)「日本語・日本文化教育とアニ メ――『千と千尋の神隠し』の場合――」畑佐由 紀子編『外国語としての日本語教育 多角的視 野に基づく試み』くろしお出版所収 • 文部科学省(2005)「読解力向上に関する指導資 料――PISA調査(読解力)の結果分析と改善の 方向――」 参考文献 • 森川結花(2009)「文学作品をテキストとした上 級学習者用読解教材の開発と実践」甲南大学 リーディング・チュウ太2009ワークショップ(口頭 発表) • 永須実香(2009)「日本語・欧米系初中級学習者 向け読解教材の方向性」リーディングチュウ太 2009シンポジウム(口頭発表) • 野口勝三(2009)「大学における日本語リテラシー 教育---対話関係を中核とした「考える」の実践--」『日本語学』Vol.28 No.2 参考文献 • 柴田智子(2008)「アニメを利用した日本語教 育ーー学生の評価とOral Summaryの分析を中 心としてーー」畑佐由紀子編『外国語としての日 本語教育 多角的視野に基づく試み』くろしお出 版所収 • 高橋和子(2009)「文学と言語教育---英語教育の 事例を中心に----」『シリーズ朝倉<言語の可能 性>10言語と文学』朝倉書店 • 舘岡洋子(2005)『ひとりで読むことからピア・リー ディングへ日本語学習者の読解過程と対話的協 働作業学習』東海大学出版
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