<博報堂消費トレンドレポート2005> ヒット商品に見る2005 年の消費

2005 年 12 月 2 日
<博報堂消費トレンドレポート2005>
ヒット商品に見る 2005 年の消費トレンドは
『マインド構造改革』消費
生活者の意識に起こった構造改革が、消費を変えつつある
博報堂研究開発局では、毎年、生活者の日々移り変わる消費現象のなかに秘められた特徴的なトレンド
について研究しております。本年も、今年の消費傾向を「
『マインド構造改革』消費」と名づけた「消費
トレンドレポート 2005」をまとめました。また、同時に生活者に聞いた「ヒット商品ランキング」も調
査いたしましたので、ご紹介申し上げます。
日本経済はようやく持続的な本格回復を果たし、個人消費市場でも多くのヒット商品が誕生しました。
これらのヒット商品の特徴を分析すると、景気回復とともに心の余裕を持ち直した生活者が、これまで
のしがらみから解放され、新たな価値観を形成しつつある姿が浮かび上がります。
博報堂では、こうした生活者の意識変化に伴う今年の消費傾向を『マインド構造改革』消費と名づけ
ました。
今年は、クールビズやブログ、
「電車男」など、これまでは実現が難しいと思われていたことや夢にも
思わなかった現象が、
いともあっさりと現実のものとなり生活者を驚かせました。研究開発局が行った「博
報堂 2005 年ヒット商品調査」でも、こうした現象がヒット商品の上位を占めていることがわかりまし
た。政治、企業の構造改革が進むと同時に、生活者においても意識上の構造改革が行われ、従来の常識か
ら新しい価値観への転換が進み、消費の面にもその影響が現われた一年だったと言えそうです。
本レポートでは、これをさらに6つの傾向に分類し、以下にご説明いたします。
<「マインド構造改革」消費の6つの傾向>
① つながりの構造改革…IT技術が人と人、人とお店などの関係性を変えた商品・サービス
:
「ブログ/ソーシャルネットワークサービス(SNS)」
「音楽配信サービス」
「電子マネー」
「エルダー向け通
話専用携帯電話」
・・・など
② 社会参画の構造改革…社会と個人の利害が一致することで生まれた社会参画型商品・現象
:
「クールビズ」
「リストバンド基金」
「愛・地球博」「ロハス」
・・・など
③ 男と女の構造改革…従来の男と女の概念を変えた商品・現象
:「ミドル向け男性誌」
「ごくせん」
「おかまキャラ」「乙女ロード」・・・など
④ 値ごろ感の構造改革…既存カテゴリーの枠を超えた価格設定の商品・サービス
:「100 円生鮮コンビニ」「大画面薄型テレビ」「第 3 のビール/プレミアムビール」「国産高級車ブラン
ド」・・・など
⑤ カラダの構造改革…体の内側から生まれ変わるというコンセプトの商品・サービス
:
「デトックス(解毒)」「寒天」「アンチエイジングサプリ」
「ピラティス/パワーヨガ」・・・など
⑥ エンタメの構造改革…意表をつく企画によって成熟した娯楽文化の既成概念を変えた商品・サービス
:
「電車男」「旭山動物園」
「秋葉原にオープンした新型店舗」「中部国際空港」
・・・など
詳細につきましては、次ページより<資料編>としてご紹介しております。
<資料編>-----------------------------------------------------------------------------------
Ⅰ.
生活者が感じた今年のヒット商品ランキング
一般生活者640名を対象に今年11月に実施した「博報堂 2005年ヒット商品調査」によると、今
年のヒット商品のランキングは以下のような結果になった。
生活者が「今年流行ったと思う」ヒット商品ランキング:ベスト10
順位
%
1 位 愛・地球博(愛知万博)
88.3
2 位 「電車男」
88.0
3 位 「ごくせん」
78.4
4 位 大画面薄型テレビ
78.0
5 位 クールビズ
77.7
6 位 携帯型デジタルオーディオプレーヤー
77.0
7 位 ブログ
74.8
8 位 「ハウルの動く城」
73.0
9 位 寒天
70.9
10 位 HDD/DVDレコーダー
70.3
<博報堂「2005 年ヒット商品調査」>
調査地域:首都圏、関西圏
調査対象:15−69 歳男女 合計 640 名
(男性 318 名、女性 322 名)
実施期間:2005.11.2−11.9
調査方法:博報堂Hi−panel 調査(インターネット調査)
※新聞・雑誌などの公開情報をベースにヒット商品の候補を選出。調査では、内容を説明する文章を添え
たヒット商品候補について、「今年流行ったと思う」
「今年流行ったとは思わない」
「名前を聞いたことが
ない」のどれかひとつを選んでもらった。
Ⅱ.
①
「マインド構造改革」消費の6つの傾向
つながりの構造改革…IT技術が人と人、人とお店などの関係性を変えた商品・サービス
2005 年は、IT 技術の進展が日常生活を一変させつつあることを実感する年だった。
「ブログ」や「ソ
ーシャルネットワークサービス(SNS)
」は、すべての生活者が発信者になりうる仕組みによって従来
のメディアやコミュニティの概念を変え、
「音楽配信サービス」や「電子マネー」は、購入や決裁の
新しい手段が、お店での購買という概念を一変させた。また「エルダー向け通話専用携帯電話」は、
高齢者に家族との新しいつながりをもたらすことに成功した。いずれも、人とモノ・コトとのつなが
り方が IT 技術によって様変わりしてしまうという、IT 時代を象徴するヒット商品となった。
②
社会参画の構造改革…社会と個人の利害が一致することで生まれた社会参画型商品・現象
2005 年は、環境問題をはじめとする社会的テーマをもった商品やイベントが、多くの人々の関心を
集めた。
「クールビズ」や「リストバンド基金」
「ロハス」などは、これまで必ずしも大衆的盛り上が
りに成功してこなかった環境や貧困などの社会的テーマに対して、ファッション性や「おしゃれな自
分らしさ」という要素を加えることで大成功を見た。
「愛・地球博」は、自然の叡智という難しいテ
ーマを具体的でわかりやすい形のエンタテインメントで提示することで、
予想を上回る話題と入場者
を獲得した。いずれも、生活者メリットのツボをうまく捉えることで大きなうねりを呼び、社会参画
の新しい形を提示することに成功した。
③
男と女の構造改革…従来の男と女の概念を変えた商品・現象
2005 年は、男らしさや女らしさという既成概念を見直さざるを得ない現象が目立つ年だった。
「ミド
ル向け男性誌」は、「オジサンだって中身より外見」というマーケティングの空白地帯を突くコンセ
プトでヒットし、「ごくせん」は、男性主役が多い青春ドラマの中にあって、極道育ちの女性教師と
いう異色のキャラクター設定でヒットした。「おかまキャラ」は、エンタテインメントの世界に「中
性」タレントというジャンルを作り、池袋「乙女ロード」は、男性の独占領域だった「おたく」の概
念を超えて「おたく女性」のメッカになった。男と女の垣根をはずしたところにヒットが生まれ、新
しい市場が垣間見えた一年だった。
④
値ごろ感の構造改革…既存カテゴリーの枠を超えた価格設定の商品・サービス
2005年は、デフレ終息を予感させる経済環境のなかで、高価格・低価格を問わず、斬新な価格設定の
商品が多く誕生した。コンビニでは、
「100円生鮮コンビニ」やペットボトル飲料の値下げなど、新し
い価格戦略のコンビニが登場して話題になった。「大画面薄型テレビ」は、1インチ1万円の常識を破
る勢いの価格低下で好調な売れ行きを示した。発泡酒に次ぐ「第3のビール」が市場を作った一方、
「プレミアムビール」も活況を見せるなど、ビールに対する価格帯意識も拡がった。新たに誕生した
「国産高級車ブランド」は、高級輸入車に対抗する価格設定で参入し注目された。今年は、生活者の
価格意識や値ごろ感が再構築されていく大きな過渡期にあったようだ。
⑤
カラダの構造改革…体の内側から生まれ変わるというコンセプトの商品・サービス
2005 年は、健康関連分野でも、従来とは発想の異なった商品が多く発売された。体の有害物質を排出
するというコンセプトの「デトックス(解毒)」商品は、ダイエット志向にも合致して「寒天」と並ぶ
今年のヒット商品になった。コエンザイム Q10 に代表される「アンチエイジングサプリ」は、「若返
り」という永遠の願望を叶える効果が受けて、多くの関連商品がヒットした。
「ピラティス/パワーヨ
ガ」などは、体の外側からは見えないインナーマッスルを鍛える効果が、体型改善願望と合致して話
題になった。体を作り変えるためには不要なものを排除し足りないものは補強する、という構造改革
的コンセプトの商品が、この分野でもヒットした一年だった。
⑥
エンタメの構造改革…意表をつく企画によって成熟した娯楽文化の既成概念を変えた商品・施設
2005年は、コンテンツや施設においても新しい動きが見られた。インターネット掲示板から生まれた
「電車男」は、書籍から始まり映画、TV、漫画、舞台へと展開する大ヒットになり、ネット発の商
品化の先がけとなった。
「旭山動物園」は、ありのままの動物の動きが見られる動物園、というコン
セプトが受けて人気となった。つくばエクスプレス開業で活気づく「秋葉原にオープンした新型店舗」
は、本屋や飲食店などを備えた従来にない電気店として、「中部国際空港」は、展望風呂などを備え
た観光スポットとして、それぞれ話題になった。いずれも、内容としての斬新さだけでなく、既成概
念を打ち破る集客の仕組みや展開など、画期的な企画性がヒットの要因だった。
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