平成 25 年度 筑波大学理工学群社会工学類 卒業研究論文 学生の携帯端末向けゲーム利用について 社会経済システム主専攻 学籍番号 201011328 角田 指導教員 明彦 石井 1 健一 目次 第1章 研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1-1 研究の背景 1-2 先行研究 1-3 研究の目的 1-4 仮説の設定 第2章 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2-1 質問紙の構成 2-2 調査の実施 2-3 アンケート調査結果の分析方法 第3章 結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3-1 結果の概要 3-2 仮説の検証 第4章 結論と今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 2 第 1 章 研究目的 1-1 研究の背景 日本国内で 1999 年 2 月にモバイルインターネットサービスが開始されて以来、携帯電話・スマートフォ ンが目覚しいほどの発展を遂げている。(深田, 2011) 携帯電話・スマートフォンの普及により、それら の携帯端末を媒介とする様々なメディアが登場した。 ゲームもその内の1つであり、家庭用ゲーム、PC ゲームとは異なった、携帯端末向けの新しいゲーム市 場を展開しているといえる。これらの携帯端末向けゲームは基本的に無料で遊べるものがほとんどであり、 一部サービスを有料とすることで、ゲームにはまったユーザーにそれらのサービスを購入させ、利益を得て いる(これらの有料コンテンツは課金とよばれている)。 その中でも、SNS 内で提供されている、ネット内での他者との交流が重要な位置づけになっているソー シャルゲームという新しいゲームの市場は一時急速に発展を遂げた。ソーシャルゲームは他人とのコミュニ ケーションの要素が普通のゲームよりも強い。それらの要素を深田(2011)はソーシャルアクションと呼び、 そのソーシャルアクションによってプレイヤーのモチベーションが保たれ、ゲームをやり続けたくなるのだ と述べている。 しかし、コンプリートガチャ(通称コンプガチャ)の違法性が指摘され、廃止されたことで、ソーシャルゲ ームの大きな収入源がなくなり、ソーシャルゲームを提供していた企業の株価は急落。以降ソーシャルゲー ムの発展には陰りが見えているのが現状である。 ソーシャルゲームの衰退ののち、スマートフォン向けのゲームで最も成功しているゲームがパズル&ドラ ゴンズ(通称パズドラ)である。日本経済新聞社によると 2013 年 5 月 13 日、パズドラを提供しているガン ホー・オンライン・エンターテイメントの株価の時価総額がゲーム業界首位の任天堂を一時追い抜くまでの 成長をみせた。成功の要因としては、以下の 3 点が主に挙げられる。1 つ目が、RPG 要素とパズル要素を 組み合わせた画期的なゲームシステムがユーザーに受け入れられたこと。2 つ目が、それまでの携帯端末向 けゲームは他者との協力・対戦などのコミュニケーション要素を重視したつくりであったのに対し、パズド ラは基本的に一人で遊ぶことを主にしたつくりになっていること。3 つ目が、課金をしなくても十分に遊べ るよう配慮されていることである。 1-2 先行研究 (1)プレイヤータイプの分類についての先行研究 ゲームをする人を分類するに当たって、リチャード・バートル(1996)が考案した分類法がある。表 1-2-1 に 示したように、バートルによるとゲームをする人は 4 つのタイプに分類される。 表 1-2-1 バートルによるプレイヤーの分類 1 アチーバー(Achiever) 2 エクスプローラー(Explorer) 3 ソーシャライザー(Socializer) 4 キラー(Killer) 1 つ目のアチーバーは、達成意欲の高いプレイヤーを指す。 3 2 つ目のエクスプローラーは、ゲームの世界観を楽しもうとする、好奇心の強いプレイヤーのことを指 す。 3 つ目のソーシャライザーは、ゲームそのものよりも、プレイヤー同士のコミュニケーションに重きを置 くプレイヤーを指す。 4 つ目のキラーは、他のプレイヤーに対し、自分が優越していることを示すことを好むプレイヤーを指 す。 この分類は、プレイヤーの性質を「何とどのように関わりたいか」によって分類したものである。プレイ ヤーが厳密にどのタイプに当てはまるのかを決めるものではなく、4 タイプの傾向をそれぞれどの程度有し ているかということで表現される。(バートル, 1996) 図 1-2-1 バートルによる分類の軸 (2)ゲームをする動機についての先行研究 井口(2013)は、大学生を対象としたゲーム利用と満足との関係について調べた研究で、ゲームをする動機 は、 「空想」 、 「承認」 、 「趣向」 、 「達成」 、 「友達」、「学習」、 「気晴らし」の7つに分類できると述べている。 また、この中で「気晴らし」を除いた 6 つの動機が高いほどゲームへの没入度が高くなるとも言っている。 (井口, 2013) 1-3 研究の目的 ソーシャルゲームの急成長と衰退、その後のパズドラの急成長など、携帯端末向けゲームの市場は、目ま ぐるしい変化に晒されている。その変化の影響か、私の周りでも多くの人が携帯端末でゲームをしているも のの、それぞれゲームへの取り組み方が大きく異なっているように感じられる。本研究では、現在携帯端末 でゲームをしている人達を分析し、どういった人がどのようにゲームと向き合っているのか、どういったタ イプのゲームを好むのかといったことを明らかにすることで、混迷している携帯端末向けゲーム市場の一助 となることを目的としている。 1-4 仮説の設定 仮説 1 「携帯端末向けゲームを盛んにしているプレイヤーは、あまり携帯電話・スマートフォン向けゲー ムをしないプレイヤーに比べて、達成意欲が高いプレイヤーや、好奇心の強いプレイヤーが多い」 4 携帯電話・スマートフォン向けゲームは暇つぶしとしてする人が多い中、盛んにしている人はゲーム内で 設定されている達成率やスコア,ゲームの世界観といった要素を重視していると思われる。そういった人は 達成意欲の強いアチーバーや、好奇心の強いエクスプローラーとしての傾向が顕著にあらわれるのではない かと考え、この仮説を設定した。 仮説 2 「携帯端末向けゲームをあまりしていないプレイヤーは、携帯端末向けゲームを盛んにしているプ レイヤーに比べて、 「時間つぶしになるから」といった動機でゲームをする傾向が強い」 携帯端末向けのゲームを盛んにしている人は、ゲームをする上でゲームの世界観や、ゲームの目的などゲ ーム内の要因によってモチベーションが高められ、たくさんゲームをしていると考えられるが、携帯端末向 けのゲームをしてはいるもののそれほどしていないプレイヤーは、時間つぶしのようなゲーム自体の内容と は関係のない、惰性に近い動機でゲームをしている人が多いと考え、この仮説を設定した。 第 2 章 研究方法 仮説を検証するため、アンケートによる量的調査をおこなった。アンケート調査の対象は、筑波大学学生 に限定した。 2-1 質問紙の構成 大きく分けて 3 部構成となっている。 1 部が、その人のゲームをする頻度や時間、ゲームをする理由といった基本的な情報を尋ねる質問(問 1~ 問 7)。 2 部が、その人のプレイヤータイプを分類するための質問(問 8)。その人がゲームをするときどのような ことで喜びを感じるかについて 5 点法で尋ねる質問で、全部で 12 個の項目から成る。3 項目ずつ、バート ルによる分類におけるアチーバー、エクスプローラー、ソーシャライザー、キラーがそれぞれ好む要素につ いて尋ねている。 3 部が、その人の好きなゲームの種類や、ゲームのどのような部分を重視するかを尋ねる質問(問 9~問 11)でそれぞれ構成されている。 調査に用いた質問紙は、付録に掲載した。 2-2 調査の実施 自分の所属しているサークルの筑波ジョギングクラブ、社会工学類端末室、第 3 学群書籍部前にてアンケ ート用紙を配布、その場で書いてもらった。男女比は男 53 人,女 9 人で、うち課金ユーザーは 6 人である。 アンケートの回収数や回収率、学群・学類などの内訳は、表 2-2-1、表 2-2-2 の通りである。 5 表2-2-1 アンケート回収概要 アンケート配布数 回収数 回収率 有効回答数 62 62 100% 62 表2-2-2 学群・学類ごとの回収数 人文・文化学群 社会国際学群 生命環境学群 理工学群 情報学群 人文 比較文化 社会 国際総合 1 1 6 1 地球 5 数学類 応用理工 工学システム 社会工学 情報科学 知識情報・図書館 情報メディア創成 芸術専門学群 計 1 11 1 23 1 1 2 7 62 2-3 アンケート調査の分析方法 まず携帯端末向けゲームをよくする人とあまりしない人の 2 組に分けた。 問 2 において、 「1)毎日」を 7、 「2)週に 4~6 日」を 5、 「3)週に 1~3 日」を 2、 「4)月に 1~3 回」を 0.5、 「5)ほぼ利用しない」を 0 とし、 問 3 において、 「1)10 分未満」を 5、 「2)10 分以上 30 分未満」を 20、 「3)30 分以上 1 時間未満」を 45、 「4)1 時間以上 3 時間未満」を 120、 「5)3 時間以上」を 180 とし、 問 2 の値と問 3 の値を掛け合わせた数値を「週間ゲーム時間」と定義し、 「週間ゲーム時間」が 100 以上 ならば「携帯端末向けゲームをよくする人」 、100 未満ならば「携帯端末向けゲームをあまりしない人」と 定義する。 「携帯端末向けゲームをよくする人」は全体の約 48%の 30 人、 「携帯端末向けゲームをあまりし ない人」は約 52%の 32 人となった。 プレイヤータイプを分類するため、問 8 における全 12 の質問項目に対し SPSS による因子分析をおこな った。詳しくは第 3 章で説明する。 ゲームをする動機を分類するため、問 7 における全 20 の質問項目に対し SPSS による因子分析をおこな った。こちらも、詳しくは第 3 章で説明する。 表2-2-3 携帯ゲームをよくする人とあまりしない人の内訳 週間ゲーム時間(分) 人数(人) 1260 840 600 315 240 225 140 100 90 40 25 10 2.5 0 携帯端末向けゲームを よくする人(48.39%) 携帯端末向けゲームを あまりしない人 (51.61%) 6 1 6 1 9 1 5 2 5 5 7 1 4 1 14 62 割合(%) 1.61 9.68 1.61 14.52 1.61 8.06 3.23 8.06 8.06 11.29 1.61 6.45 1.61 22.58 100 第 3 章 結果と考察 3-1 結果の概要 図 3-1-1 は、携帯端末でゲームをする理由 20 項目に対する回答率をグラフで表記したものである。図 31-1 によると、携帯端末でゲームをする理由として、圧倒的に多いのが「時間つぶしになるから」であるこ とが分かる。回答者の 87%が「時間つぶしになるから」と回答していることから、携帯端末向けゲームが お手軽で敷居が低いものであると大体の人が認識していることが分かる。 他にやることがないから 時間つぶしになるから 勉強になるから 友人とゲームの話をするから 友人と一緒に遊ぶのが楽しいから 自分の腕の上達を実感するのが嬉し… 難しい場面をクリアするのが楽しい… ゲームの課題達成が楽しいから 音楽がいいから 絵や映像が綺麗だから 好きなキャラクターがでてくるから 好きなイラストレーター・声優が参… 話題になっているから 対戦ゲームで相手を負かすのが楽し… ゲームが上手いといわれたいから 他人の尊敬を集めたいから ストーリーが面白いから 世界観に惹かれるから キャラクターになりきれるから 現実とは違うことができるから 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図 3-1-1 携帯端末でゲームをする理由(複数回答可) 図 3-1-2 は、一番好きな携帯端末向けゲームのジャンルについての回答率をグラフで表記したものであ る。図 3-1-2 によると、一番好きな携帯端末向けゲームのジャンルとして最も支持を集めたのは、34%が回 答した「パズル」で、次点で 23%の「RPG」となった。パズルは 1 回にとられる時間が少なく、空き時間 などに楽しむのに適しており、携帯端末との相性が良いといえる。また、普段ゲームをしない人でもとっつ きやすいため、これだけ多くの人が選んだのではないか。 その他を回答した人は 3 人おり、全員が「音ゲー」とよばれるジャンルを回答していた。 7 RPG(ロールプレイングゲーム) アクション パズル 育成・シミュレーション カードゲーム・ボードゲーム アドベンチャー スポーツ・レース クイズ・学習 その他 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 図 3-1-2 一番好きな携帯端末向けゲームのジャンル 表 3-1-1 は、ここ 1 年間で面白かった携帯端末向けゲーム名を挙げさせた結果である。やはり、 「パズル &ドラゴンズ」を挙げる人が多かった。 「パズル&ドラゴンズ」は、ほとんど 1 人で遊ぶゲームだが、友達 がやっているからやっているという人も多く、この傾向は学生ならではといえる。また、LINE のゲームが 2 つ挙がっていることにも注目したい。LINE とは、通話やチャットなどがおこなえるアプリのことで、現 在世界で 3 億人を超えるユーザー数を誇っている。LINE の中でゲームアプリが提供されており、LINE と 機能連動して LINE の友達とハイスコアを競ったり、アイテムを交換したりプレゼントをしたりすること ができる。LINE のチャットで友達をゲームに誘うことを容易におこなえるため、友達に誘われたからやっ ているという理由の人も多いのではないか。ゲームが中心のアプリではないにも関わらず、携帯端末向けゲ ームで面白かったゲームを挙げさせた際に LINE のゲームを回答するユーザーが多いことからも、LINE の 人気の高さがうかがえる。 意外なのは、2 位の Cytus というゲームである。このゲームは「音ゲー」とよばれるジャンルのゲーム で、画面の表示される丸いオブジェクトを音楽に合わせてタイミングよくタップし、高得点を狙うタイプの ゲームである。あまり一般には知られていないタイトルだが、5 人もの回答が得られた。このゲームを回答 した人は皆携帯端末以外のゲームもよくする人たちであったため、いわゆるコアゲーマー層の人気を獲得し ているタイトルだといえる。 表3-1-1 「面白かったゲーム名」回答結果(人 パズル&ドラゴンズ 7 1位 2位 Cytus 5 3位 LINE ポコパン 4 4位 LINE バブル 3 5位 チェインクロニクル 2 Clash of Clans N=43 アンケート回答者 62 人のうち、6 人のみが課金を利用したことがあると答えた。この結果から、学生で 課金を利用している者はごく少数といえる。うち課金額 1000 円未満が 1 人、1000 円以上 5000 円未満が 5 8 人と、10000 円以上の課金を利用したと答える学生は 1 人もいない結果となった。表 3-1-2 は、課金を利用 した理由について解答した人数を表記したものである。全 6 人の課金ユーザーの内、5 人が「課金するとや れることが増えるから」の理由を選択していることから、ゲームに熱中したユーザーにさらなるゲーム体験 を提供するための課金に手をだしてしまう学生が多いようだ。 表3-1-2 課金理由 課金理由 イベントをクリアしたいから 強くなりたいから レアなアイテムが欲しいから 課金しないとゲームが進まないから 課金するとやれることが増えるから 他のプレイヤーに頼られたいから 他のプレイヤーに負けたくないから 人数(人) 0 2 1 1 5 0 2 プレイヤータイプの分類 アンケートの問 8 の 12 項目に対し主成分分析をおこなった結果、表 3-1-1 のような 3 つの因子があらわ れた。(表 3-1-3 はバリマックス回転後の解) 第 1 因子は、「アイテム収集の喜びをどのくらい感じるか」や、 「攻略法発見の喜びをどのくらい感じる か」など、バートルによる分類におけるアチーバーとエクスプローラーが好む要素の負荷が強いため、「ア チーバー・エクスプローラー指向」と命名する。 第 2 因子は、「自分が強いと思う喜びをどのくらい感じるか」や、 「ランキング上位の喜びをどのくらい感 じるか」など、バートルによる分類におけるキラーが好む要素の負荷が強いため、「キラー指向」と命名す る。 第 3 因子は、「仲間が増える喜びをどのくらい感じるか」や、 「コミュニケーションの喜びをどのくらい感 じるか」など、バートルによる分類におけるソーシャライザーが好む要素の負荷が強いため、 「ソーシャラ イザー指向」と命名する。 表 3-1-3 ゲームに対する喜びについての主成分分析結果(因子負荷量) 因子 固有値 分散の説明率 アイテム収集の喜びをどのくらい感じるか 新しい敵やアイテムとの出会いの喜びをどのくらい感じるか 新しいミッション開拓の喜びをどのくらい感じるか 攻略法発見の喜びをどのくらい感じるか 難しいこと達成の喜びをどのくらい感じるか 新しいシステム出現の喜びをどのくらい感じるか 競争やバトルで勝つ喜びをどのくらい感じるか 自分が強いと思う喜びをどのくらい感じるか ランキング上位の喜びをどのくらい感じるか 協力の喜びをどのくらい感じるか 仲間が増える喜びをどのくらい感じるか コミュニケーションの喜びをどのくらい感じるか 9 1 3.359 28.0 0.878 0.642 0.683 0.808 0.586 0.704 0.218 0.119 0.173 0.318 0.126 0.085 2 2.927 24.4 0.100 -0.050 0.123 0.384 0.579 0.503 0.709 0.886 0.820 0.149 0.276 0.324 3 2.734 22.8 0.274 0.461 0.449 -0.015 0.154 -0.019 0.345 0.151 0.310 0.733 0.874 0.825 ゲームをする動機の分類 アンケートの問7の 20 項目に対し主成分分析を行い、解をバリマックス回転したところ、表 3-1-4 のよ うな 7 つの因子があらわれた。命名については、江口(2013)の研究を基にした。 第 1 因子は、 「キャラクターになりきれるから」や、 「世界観に惹かれるから」などと、 「ゲームが上手い といわれたいから」や、 「対戦ゲームで相手を負かすのが楽しいから」の動機の負荷が強いため、「空想・承 認」と命名する。 第 2 因子は、 「好きなキャラクターがでてくるから」 、「好きなイラストレーター・声優が参加しているか ら」などの動機の負荷が強いため、 「趣向」と命名する。 第 3 因子は、 「ゲームの課題達成が楽しいから」や、 「難しい場面をクリアするのが楽しいから」などの動 機の負荷が強いため、 「達成」と命名する。 第 4 因子は、 「友人と一緒に遊ぶのが楽しいから」や「友人とゲームの話をするから」などの動機の負荷 が強いため、 「友達」と命名する。 第 5 因子は、「音楽がいいから」 、 「自分の腕の上達を実感するのがたのしいから」の動機の負荷が強く、 「勉強になるから」の負荷もやや強いため、 「音楽・学習」と命名する。 第 6 因子は、 「勉強になるから」の負の負荷が強く、 「話題になっているから」や「ほかにやることがない から」の動機の負荷がやや強いため、 「反学習」と命名する。 第 7 因子は、 「時間つぶしになるから」の動機の負荷が強いため、 「気晴らし」と命名する。 表 3-1-4 ゲームをする動機についての主成分分析結果(因子負荷量) 因子 固有値 分散の説明率 現実とは違うことができるからゲームをする キャラクターになりきれるからゲームをする 世界観に惹かれるからゲームをする ストーリーが面白いからゲームをする 他人の尊敬を集めたいからゲームをする ゲームが上手いといわれたいからゲームをする 対戦ゲームで相手を負かすのが楽しいからゲームをする 話題になってるからゲームをする 好きなイラストレーター・声優が参加しているからゲームをする 好きなキャラクターがでてくるからゲームをする 絵や映像が綺麗だからゲームをする 音楽がいいからゲームをする ゲームの課題達成が楽しいからゲームをする 難しい場面をクリアするのが楽しいからゲームをする 自分の腕の上達を実感するのが嬉しいからゲームをする 友人と一緒に遊ぶのが楽しいからゲームをする 友人とゲームの話をするからゲームをする 勉強になるからゲームをする 時間つぶしになるからゲームをする ほかにやることがないからゲームをする 1 3.53 17.7 0.597 0.828 0.623 0.538 0.241 0.802 0.733 0.257 -0.027 -0.035 0.627 0.051 0.106 0.120 0.071 0.253 0.093 -0.026 -0.008 0.050 2 2.438 12.2 0.010 -0.033 0.298 0.606 -0.038 -0.069 -0.075 0.407 0.804 0.867 0.442 0.202 -0.035 0.075 -0.169 -0.050 -0.081 -0.109 0.027 -0.334 10 3 2.139 10.7 0.021 0.077 -0.073 0.139 0.539 0.100 0.195 -0.130 -0.087 0.033 0.222 0.020 0.853 0.839 0.414 -0.116 0.042 0.042 0.012 -0.274 4 2.041 10.2 0.345 0.426 0.046 0.044 0.513 0.096 0.093 0.197 -0.055 -0.106 -0.226 -0.055 -0.094 0.048 0.247 0.695 0.795 0.073 0.189 -0.346 5 1.719 8.6 0.203 -0.056 0.170 -0.114 0.059 0.243 -0.236 0.246 0.061 0.039 0.065 0.822 -0.007 0.199 0.729 0.132 -0.002 0.312 0.049 0.285 6 1.382 6.9 0.026 0.064 0.164 -0.011 0.359 0.171 -0.280 0.411 0.037 0.030 0.035 -0.178 -0.127 -0.037 0.027 -0.318 0.041 -0.749 -0.039 0.476 7 1.365 6.8 -0.378 -0.021 -0.443 -0.065 -0.003 0.100 0.160 0.281 -0.195 0.199 -0.012 0.043 0.050 -0.031 -0.057 0.106 0.122 0.157 0.836 0.267 3-2 仮説の検証 (1) 仮説 1 の検証 仮説 1 「携帯端末向けゲームをよくしている人は、あまり携帯電話・スマートフォン向けゲームをしない 人に比べて、達成意欲が高い人や、好奇心の強い人が多い」 携帯端末でゲームをよくするかしないかを独立変数として、携帯端末でゲームをする動機の「アチーバ ー・エクスプローラー指向」 、 「キラー指向」 、 「ソーシャライザー指向」の因子得点の平均値について t 検定 をおこなった。 表 3-2-1 ゲームをよくする人とあまりしない人のプレイヤータイプの平均値の差の検定結果 t値 平均値 ゲームをよくする ゲームをあまりしない 30 32 N アチーバー・ エクスプローラー指向 0.062 -0.066 0.497 キラー指向 0.123 -0.131 1.002 ソーシャライザー指向 0.113 -0.120 0.916 (自由度=60) 仮説 1 について、携帯端末でゲームをよくする人としない人とで「アチーバー・エクスプローラー指向」 の因子得点の平均値に差がでるかについて t 検定をおこなったところ、t(60)=0.497, p=.621>.05 とな り、携帯端末でゲームをよくする人としない人の「アチーバー・エクスプローラー指向」の因子得点の平均 値に差はでないという結果になった。これはつまり、仮説 1「携帯端末向けゲームを盛んにしている人は、 あまり携帯電話・スマートフォン向けゲームをしない人に比べて、達成意欲が高い人や、好奇心の強い人が 多い」は支持されないことを意味する。 「キラー指向」、「ソーシャライザー指向」に関しても、有意な結果 は得られなかった。 仮説 1 の検証の結果から考えられることは、ゲームをよくする人としない人でプレイヤータイプに差はみ られないということである。つまり、その人のゲームをする様子から、その人のゲームをする頻度は予測で きないということがいえる。 (2) 仮説 2 の検証 仮説 2 「携帯端末向けゲームをあまりしていない人は、携帯端末向けゲームをよくしている人に比べて、 「時間つぶしになるから」や、 「他にやることがないから」といった動機でゲームをする傾向が強い」 携帯端末でゲームをよくするかしないかを独立変数として、携帯端末でゲームをする人の動機である「空 想・承認」 、 「趣向」、 「達成」 、 「友達」 、 「音楽・学習」、「反学習」、 「気晴らし」の因子得点の平均値について t 検定をおこなった。 11 表 3-2-2 ゲームをよくする人とあまりしない人の動機の平均値の差の検定結果 平均値 ゲームをよくする ゲームをあまりしない t値 N 空想・承認 趣向 達成 友達 30 0.127 0.156 -0.097 0.150 32 -0.136 -0.167 0.103 -0.160 1.037 1.278 -0.786 1.221 学習 -0.244 0.260 -2.033(*) 反学習 0.072 -0.076 0.579 気晴らし -0.006 0.006 -0.045 (*)p <.05 (自由度=60) 仮説 2 について、携帯端末でゲームをよくする人としない人とで「気晴らし」の因子得点の平均値に差がで るかについて t 検定をおこなったところ、t(60)=0.579,p=.964>.05 となり、携帯端末でゲームをよくす る人としない人の「気晴らし」の因子得点の平均値に差はでないという結果になった。これはつまり、仮説 2「携帯端末向けゲームをあまりしていないプレイヤーは、携帯端末向けゲームを盛んにしているプレイヤ ーに比べて、 「時間つぶしになるから」といった動機でゲームをする傾向が強い」は支持されないことを意 味する。 しかし、 「音楽・学習」の動機について見ると、t(60)=-2.033,p=.047<.05 となり、携帯端末でゲーム をよくする人としない人の「音楽・学習」の因子得点の平均値に差がでることがわかった。ゲームをよくす る人の「音楽・学習」の因子得点の平均値が-0.244,ゲームをあまりしない人の「音楽・学習」の因子得点 の平均値が 0.260 であることから、あまりしない人のほうが「音楽・学習」の動機が強いということであ る。 仮説 2 の検証の結果から考えられることは、携帯端末向けゲームをする頻度と「気晴らし」という動機に は関係がないということと、携帯端末向けゲームをする頻度と「音楽・学習」という動機には関係があると いうことである。「気晴らし」を動機とする人がゲームをする頻度にかかわらず多い理由として考えられる ことは、やはり携帯端末向けゲームが家庭用ゲーム等と比較して圧倒的にプレイする敷居が低いことであろ う。ゲームをする頻度が少ないほうが「音楽・学習」の動機が大きいことは、音楽のよさやゲームの腕の上 達の実感のために携帯端末向けのゲームをする人はほとんどいないということである。 最後に、これらの動機の因子得点を独立変数、週間ゲーム時間を従属変数として重回帰分析におけるステ ップワイズ法をおこなった。 12 表 3-2-3 ゲームをする動機に関する変数による回帰分析(ステップワイズ法) 標準化偏回帰係数 β 0.437 0.266 0.240 友達 趣向 空想・承認 R2=.284 t値 4.028(**) 2.453(**) 2.212(**) (**)p <.01 ステップワイズ法によって R2 の F 検定の有意確率が 0.1%で独立変数の導入を打ち切ったところ、除去 されたのは「達成」 、 「音楽・学習」 、 「反学習」、「気晴らし」の 4 つの動機で、R2=.284 と、それほどあては まりはよくないが、 「友達」,「趣向」,「空想・承認」の 3 つの動機は予測に役立つことがわかった。結果 より、従属変数「週間ゲーム時間」は、 「週間ゲーム時間」= 204.476 + 124.165*「友達」 + 75.618*「趣向」 + 68.194*「空想・承認」 と表される。どの変数も VIF<5 のため、多重共線性も起きていないといえる。 図 3-2-1 友達の因子得点と週間ゲーム時間の関係 図 3-2-2 趣向の因子得点と週間ゲーム時間の関係 13 図 3-2-3 空想・承認の因子得点と週間ゲーム時間の関係 第 4 章 結論と今後の課題 本研究では、携帯端末向けのゲームをしている筑波大学生がゲームをするときの傾向や、ゲームをする動 機等からのゲームをする時間への影響を明らかにした。結論としては、ゲームに音楽のよさや自分の腕の上 達を求めて携帯端末向けのゲームを長時間している人はほとんどいないということがわかった。携帯端末向 けのゲームはグラフィックや映像を売りにしているものはしばしば見られるが、楽曲のよさを売りにしてい るものはほとんどみられない。また、携帯端末の制約上、基本的に簡単操作でできる必要があるため、腕の 上達を感じるようなゲームはあまりないといえる。そのため、これらの動機のために携帯端末向けのゲーム をする人は少ない。また、ゲームをする時間は、友達づきあいのためにゲームをしている人や、ゲームの世 界観や映像などが自分に合っている人が長い傾向にあることがわかった。よって、筑波大学の学生には、友 達と協力したりする要素があり、魅力的な世界観やビジュアルをもった携帯端末向けゲームが好まれると思 われる。 今回の研究における反省点としては、3 点挙げられる。1 点目は、アンケートが筑波大学の学生限定であ ることと、その回収数の少なさである。携帯端末向けのゲームはどこでもできるため、筑波大学と全大学と では異なった結果がでる可能性もある。2 点目は、アンケートの回収数の少なさに伴う、男女比率の偏りと 課金ユーザー数の少なさである。それにより、男女による結果の違いや課金ユーザーと無課金ユーザーとの 比較が出来なかった。3 点目は、仮説を設定する際に事前調査等をおこなわずに自分の考えのみで設定した ことである。結果としても仮説はほとんど有意でなかったため、仮説を設定する際はもっと慎重におこなわ なければいけないことを思い知らされた。 今後の課題としては、反省点でも述べたように、全大学向けの調査,男女による結果の違い,課金ユーザー と無課金ユーザーの比較などをおこなう必要がある。また、家庭用ゲーム機を盛んにするプレイヤーやオン ラインゲームを盛んにするプレイヤーと携帯端末向けゲームを盛んにするプレイヤーの比較をおこなうと面 白いのではないか。 14 参考文献 深田浩嗣(2011) 『ソーシャルゲームはなぜハマるのか』ソフトバンククリエイティブ株式会社 井口貴紀(2013) 『現代日本の大学生におけるゲームの利用と満足―ゲームユーザー研究の構築に向けて ―』情報通信学会誌 vol.31 No.2 (67-76) Richard Bartle (1996) 『HEARTS, CLUBS, DIAMONDS, SPADES: PLAYERS WHO SUIT MUDS』 〈http://www.mud.co.uk/richard/hcds.htm〉 日本経済新聞 〈http://www.nikkei.com/〉 小木曽道夫(2006) 『SPSS によるやさしいアンケート分析』 オーム社 15 謝辞 卒業論文を執筆するにあたり、様々なアドバイスを下さった石井先生に深く御礼申し上げます。途中たく さん支えてくれた同研究室のメンバーにも深く感謝いたします。また、アンケートに答えてくれた皆様に も、この場を借りて御礼申し上げます。 16 付録 質問紙 携帯電話・スマートフォンでのゲーム利用に関するアンケート調査 理工学群社会工学類 4 年 201011328 角田明彦 〈[email protected]〉 ・大学の卒業論文のために携帯電話・スマートフォン用のゲームに関するアンケートを実施しています。回 答は任意ですが、ご協力してもらえると大変ありがたいです。 ・回答は、あてはまる番号に○をつけてください。 F1 あなたの性別 1.男性 2.女性 F2 あなたの学群・学類 学類: 学群: F3 携帯電話・スマートフォンでゲームをしたことがありますか。 1.はい 2.いいえ 以降の質問は、F3 で 1.はい と答えた方への質問です。 問 1 1 年以内に、携帯電話・スマートフォンでゲームをしましたか。 1.はい 2.いいえ 問 2 どのくらいの頻度で、携帯電話・スマートフォンでゲームをしますか。 1) 毎日 2) 週に 4~ 3) 週に 1~ 6日 4) 月に 1~ 3日 5) ほぼ利用 3回 しない 問 3 1 日あたりにどのくらい携帯電話・スマートフォンでゲームをしますか。 1) 10 分未満 2) 10 分以上 30 分未満 3) 30 分以上 1 時 間未満 問 4 過去 1 年以内に、課金を利用したことがありますか。 17 4) 1 時間以上 3 時 間未満 5) 3 時間以上 1.はい 2.いいえ 問7へ 問 5 過去 1 年以内での総使用額はどのくらいですか。 1) 1000 円未満 2) 1000 円以上 3) 5000 円以上 1 4) 1 万円以上 3 5000 円未満 万円未満 万円未満 5) 3 万円以上 問 6 課金した理由はなんですか。あてはまるもの全てに○をつけてください。 1. イベントをク 2. リアしたいから ら 5. 6. 課金するとや れることが増える 強くなりたいか 他のプレイヤー に頼られたいから 3. レアなアイテム 4. 課金しないとゲ が欲しいから ームが進まないから 7. 8. 他のプレイヤー に負けたくないから そ の ( 他 ) から 問 7 携帯電話・スマートフォンでゲームをする理由はなんですか。あてはまるもの全てに○をつけてくだ さい。 1. 2. キャラクターに 3. ことができるから なりきれるから から 白いから 5. 6. ゲームが上手い 7. 8. といわれたいから を負かすのが楽しい 現実とは違う 他人の尊敬を 集めたいから 世界観に惹かれる 対戦ゲームで相手 4. ストーリーが面 話題になってい るから から 9. 好きなイラス 10. 好きなキャラ トレーター・声優 クターがでてくる が参加しているか から 11. 絵や映像が綺麗 12. だから ら 15. 16. 音楽 がいい か ら 13. ゲームの課題 14. 達成が楽しいから クリアするのが楽 を実感するのが嬉し しいから いから 17. 友人とゲーム 18. 19. の話をするから ら 難しい場面を 勉強になるか 自分の腕の上達 時間つぶしにな るから 友人 と一緒 に 遊ぶのが楽しいから 20. 他に やるこ と がないから 問 8 あなたは携帯電話・スマートフォンでゲームをしているときに、以下の喜びをどのくらい感じますか。 ほとんど 感じない 18 あまり感 どちらで やや感じ 非常に感 じない もない る じる アイテム収集・コンプリートによる喜び 1 2 3 4 5 難しいことを成し遂げる喜び 1 2 3 4 5 効率の良い攻略法をみつける喜び 1 2 3 4 5 新しい敵・アイテムとの出会いによる喜び 1 2 3 4 5 新しいシステム・機能の出現による喜び 1 2 3 4 5 新しいミッション開拓の喜び 1 2 3 4 5 他のプレイヤーとのコミュニケーション 1 2 3 4 5 仲間との協力・チームへの参加による喜び 1 2 3 4 5 仲間の数が増える喜び 1 2 3 4 5 ランキングで上位になる喜び 1 2 3 4 5 競争・バトルで勝つ喜び 1 2 3 4 5 自分が強いと感じる喜び 1 2 3 4 5 による喜び 問 9 携帯電話・スマートフォンのゲームで、最も面白いと感じたゲームのジャンルはなんですか。1つだ けに○をつけてください。 1. RPG(ロールプレイン 2. アクション 3. パズル 5. カードゲーム・ボードゲ 6. アドベンチャー グゲーム) 4. 育成・シミュレーショ ン 7. スポーツ・レース ーム 8. クイズ・学習 9. その他( ) 問 10 あなたは、携帯電話・スマートフォンのゲームをするとき、以下の項目をどれくらい重視しますか。 ほとんど あまり どちら 重視 重視 と も い 重視 重視 しない しない えない する する やや 非常に アイテムの豊富さ 1 2 3 4 5 ステージの豊富さ 1 2 3 4 5 適度な難易度設定 1 2 3 4 5 ストーリー性の高さ 1 2 3 4 5 他のプレイヤーとの協力要素の豊富 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 さ 他のプレイヤーとの対戦・競争要素 の豊富さ 19 グラフィックの質の高さ 1 2 3 4 5 キャラクターの見た目のよさ 1 2 3 4 5 運用側のサービスのよさ 1 2 3 4 5 問 11 ここ 1 年間の携帯電話・スマートフォンのゲームで、最も面白いと思うゲームは何ですか。ゲーム名 を書いてください。 以上でアンケートは終了です。 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 20
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