商品開発・マーケティングセミナー (2 回シリーズ) 第 2 弾「新興市場での価値創造の新たなマーケティング ~資生堂の中国ビジネスとブランド価値創造~」 第1部 概要説明 講師 HHP 有限責任事業組合代表 中国・西安交通大学管理学院客員教授 同志社大学大学院ビジネス研究科アカデミック・アドバイザー 林 廣茂 氏 消費者は、「モノ」ではなく「コト」を買う 本日は、顧客価値創造をテーマとしたセミナーの第 2 回目になり ます。京都のみなさんは、ものづくりに慣れておられると思います が、お客さんは製品という「モノ」を買うのではなく、価値という 「コト」を買います。顧客価値創造とは、私たちマーケティングの立 場では、お客さんにとっての価値の創造。つまり、モノを媒介にし たコトの価値づくりということになります。この観点から、ビジネ スでの競争にどのように勝っていくのか。講師の方から、実践例を 中心としたお話を聞き、ディスカッションするということをセミナ ーの趣旨としています。 今回の講師は、資生堂の高森さんです。高森さんは、つい最近ま で国内事業における最高責任者であり、それ以前は 10 年ほど中国 事業の最高責任者を務めていました。おそらく、現在の資生堂で唯 一、中国と国内の市場の両方を熟知した方だと思います。 2013 年に国内事業と海外事業が逆転 資生堂は、多岐にわたる海外事業を展開して業績を伸ばしていま す。もちろん、その道のりは順風満帆ではなく、大変な努力によっ て海外での競争に打ち勝ってきたわけです。 資生堂の IR 情報によると、企業全体の売上がリーマンショック で 2009 年に落ちましたが、2009 年から再び上昇に転じました。 2014 年 3 月期には 7620 億円を記録し、営業利益も回復してきまし た。 中身を見ると、国内売上は、2008 年の 4280 億円から 2013 年に は 3770 億円へと縮小しています。一方で、海外事業は、同じく 2620 億円から 3850 億円へと 1200 億円ほど拡大しています。2013 年は海外が国内を逆転した年です。これは、かなりシンボリックな 出来事で、今後海外事業がどんどん拡大していくと思います。高森 さんは海外事業における中国での急成長の功労者であり、国内事業 のご苦労も経験されました。 現在、資生堂では、社長の魚谷雅彦さんのもと、国内売上の拡大 のための戦略に取り組んでいます。2014 年 12 月 18 日の日経新聞 の記事によると、2020 年までを目標に、集約したブランドの育成 と若者の顧客獲得という 2 つの柱で国内のテコ入れを行うという新 しい経営戦略を発表しています。 資生堂は、最近では、50 代、60 代の女性に強いメーカーで、20 代、30 代の資生堂離れが見られます。化粧品における消費者の購買 経路は、2003 年以降の 10 年で大きく様変わりしています。以前は、 百貨店や専門店が中心でしたが、今ではドラッグストアや量販店が 主流になってきました。ドラッグストアや量販店での資生堂のシェ アを上げることが鍵のようです。 海外市場での競争は、ますます激化する 2012 年に中国市場での資生堂は、特にスキンケアの分野で、 P&G を抜いてロレアルについでナンバー2 になりました。現在、資 生堂の全体売上のうち 10 数%が中国で、海外売上のなかで 30%近 くを占めています。その一方で、足元から韓国メーカーが急伸して いる状況です。 ユーロモニターのデータを見ますと、資生堂は巨大市場の中国で 躍進しながら、東南アジアやベトナムなどの新興国では LG などの 韓国勢に結構、悩まされているということがいえます。 このように、国内外での競争が激化するなかで、すでに中国市場 の規模は、日本と同等あるいは日本以上ですし、アジア全体の市場 規模はまもなく 10 兆円を超えるサイズに広がります。このアジア での成功は資生堂の世界戦略で不可欠です。また、グローバル市場 における資生堂の競争相手は、ロレアルやユニリーバなどの巨大企 業です。今後は、資生堂にとっても日本の各メーカーにとっても、 海外展開の市場で大変厳しい競争に打ち勝っていかなくてはならな いという状況です。 こうしたなか、本日の講師である高森さんは、国内と中国の責任 者であったことを、あらためて強調させていただきます。そういう 方から、資生堂の中国を中心とした海外事業、消費者の価値創造の 実態を伺いますので、大変楽しみです。
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