当科における脳脊髄液の検査について 脳脊髄液とは 脳と脊髄を取り囲む無色透明な液体です。150ml程 度存在し、日々500ml(1時間あたり約20ml)が新た に作られています。 脳脊髄液は後述する腰椎穿刺により採取します。 脳脊髄液検査(腰椎穿刺)の目的 抑うつや幻覚・妄想といった精神症状は、認知症や脳炎など精神疾患以外の病気に よっても生じることがあるため、これらの鑑別が重要です。また、特に高齢者ではうつ 病と認知症が合併することも少なくありません。 脳脊髄液を腰椎穿刺によって採取、調べることで、アルツハイマー型認知症や脳炎な どの(補助)診断を健康保険で行うことができます。 腰椎穿刺の手順 診察後、図のようにベッドに横たわって検査をします。背 中をよく調べたあと、消毒をします。次に局所麻酔をしま す。痛みを感じなくなったら、腰骨(腰椎)と腰骨の間に針 を刺して10ml程度の脳脊髄液を集めます。集まったら消 毒をして終了です。ここまでで30分くらいです。検査後は 2時間程度安静にしていただく必要があります。 腰椎穿刺の有害事象 基本的には安全な検査ですが、5-20%程度の割合で頭痛(腰椎穿刺後頭痛)が起きる ことがあります。大抵は軽く、少し横になっていると治まりますので、特別な処置はいた しません。 また、針を刺した部位の痛みが数日続くこともありますが、数日以内に自然に治まりま す。 これ以外にはきわめてまれに、血腫による神経圧迫、神経根の傷害による下肢筋の 麻痺や穿刺部位からの感染による髄膜炎、脳ヘルニアなどが生じることがあります。 もちろんこのようなことが起こらないように、安全に十分に配慮して検査します。 当科における工夫 特殊な針(non-cutting針)を使用することで、腰椎穿刺後頭痛を起こしにくくしています。 また、局所麻酔を行う際に極めて細い針(28G)を使用することで、痛みをできる限り小 さくするようにしています。 Non-cutting 針 痛みについては個人差はありますが、採血の痛みと同程度です。 研究利用について (JAMA 2012) 脳脊髄液は末梢血液に比べ脳の変化をより直接的に反映している可能性があり、近 年精神・神経疾患の解明のため脳脊髄液が注目され始めています。 当科では、国立精神・神経医療研究センターと共同で脳脊髄液の収集・研究を行って おり、同意が得られた方は脳脊髄液を保存、研究利用させていただいております。取 り扱いについては厳重に管理を行い、個人名が同定できないように匿名化を行うこと により個人情報の秘密は十分に保持されます。
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