搾乳中の酪農家の手 搾乳中の酪農家の手

乳房炎
2015年6月3日作成
搾乳中の酪農家の手
搾乳中の酪農家の手は、食品を扱うに足る位綺麗だろうか?汚れた搾乳中の手は、もし
かすると伝染性乳房炎の原因菌を、次々と牛たちに広げているかも知れない。搾乳中には
手袋を着用するようにと推奨されているが、手袋をはめたその手は本当に綺麗であろう
か?前搾りなどで汚れた手で、乳頭を綺麗にすることができるのか?手が汚れた場合に酪
農家はどのようにして手を綺麗にしているのか、簡単ながら検証してみた。
つなぎ牛舎では、以下のようにして手を洗うことが多い。
◆ 消毒液の入ったバケツで手を洗うことが多い。
乳頭清拭用のタオルで手を拭く場合
手の汚れは気にしない。
パーラー舎では、以下のようにして手を洗うことが多い。
消毒液の入ったバケツで手を洗うことが多い。
ホースからの水で手を洗い流す。
搾乳中の手が実際に綺麗であるかを検証するために、搾乳中
の手のひらで、洗浄前後にATP迅速検査を行ってみた。
手のATP迅速検査値の比較
手袋をした手のひらを5本の指に沿って拭き取りした場合
測定器具:キッコーマン社 ルミテスターPD20にて測定 単位:RLU
酪農家名
1
2
3
4
A
6866
2181
B
8393
C
10628
1158
3035
D
3770
24283
9318
E
14715
560
F
1010
7578
41209
G
12907
3335
1458
5800
調理者の手は1000RLU以下が基準
検査により得られた数値は、食品衛生上の視点から考えると、とんでもなく汚い手であ
る。つまり搾乳中の酪農家の手は、手袋をしていてもかなり汚れている。汚いのが通常の
搾乳作業における手の状態であると理解できる。従って乳頭を清拭する前には、この汚れ
た手を綺麗にしてから、乳頭の清拭作業やミルカーの装着作業を行わねばいけない。まし
てや、乳頭清拭後にこの汚れた手で前搾りをすれば、乳頭は細菌汚染されて乳房炎のリス
クが高まると考えられる。
手洗いの水
実際の搾乳現場で利用されている手洗い用の水を写真撮影してみた。搾乳開始当初は手
洗い用の水は綺麗かも知れないが、一度汚れた手を洗った水は、手の汚れで汚染されてい
ると考えねばいけない。写真の様な水で手を洗っても、綺麗になるとは思えない。手袋は
手から汚れを落とし易くする道具であり、決して手を綺麗にする道具ではない。
手洗い条件の比較
それではどのように洗えばよいのかを比較してみた。写真のような水(消毒薬入り)で洗
っても、手は綺麗にならない。バケツに入った水はすぐに汚染され、再び手を汚す元にな
る。ホースの水で洗い流すこと、乳頭清拭用タオルで手を拭くことが一番綺麗になるよう
である。
手洗いの条件
消毒薬にて手洗い後
新しい水にて手洗い
タオルで手を清拭後
タオル清拭後アルコール消毒
バケツ水で洗浄後の手
1
3936
368
119
5672
23004
2
7958
588
412
3074
推奨案
手が糞でかなり汚染された場合、ホース水またはバケツの水で手を洗い、再度乳頭清拭
用タオルで綺麗に拭き取ることが望まれる。消毒液を過度に信頼するより、物理的に汚れ
を取り去ることが重要である。これは乳頭清拭も同様である。