通訳の仕事 職業分類と特徴 通訳を必要とする仕事の場 観光案内、随行、添乗(通訳ガイド) 企業(社内通訳者または一般社員) 警察、裁判所(司法通訳人) 政治、ビジネス、学術等国際会議(会議通訳者) テレビ局/二カ国語放送(放送通訳者) スポーツ大会、コンサート会場などイベント(ス ポーツ、芸能通訳者) 外国人住民への言語支援(ボランティア通訳者) 国際交流団体、政府機関、地方自治体 旅行、観光、随行の仕事 通訳案内業(通訳ガイド) 外国人に日本の文化を伝える 通訳案内業 職業資格認定制度がある唯一の通訳資格 国家の認定する唯一の語学関連資格試験 国土交通省認定通訳案内業試験 報酬を受けて外国人に付き添い、外国語を用い て旅行に関する案内をする 語学力が優秀であるだけでなく、日本の文化、歴 史、地理さらに産業、経済、政治といった分野に 至るまで、幅広い知識、教養をもって日本を紹介 する “民間外交官”ともいえる国際親善の一翼を担う 仕事 通訳案内業試験の概要 第1次試験:外国語の筆記試験 7月初め 英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語・ イタリア語・ポルトガル語・ロシア語・朝鮮語 (一度に2か国語以上の受験は不可) 第2次試験:口述試験 9月 第1次試験で選択した外国語(会話)・人物考査 第3次試験 10月末 日本地理/日本歴史/産業、経済、政治、文化 に関する一般常識 通訳案内業の合格率(2001年) 受験者(人) 合格者(人) 合格率(%) 英語 4,072 222 5.5 フランス語 175 9 5.1 スペイン語 170 11 6.5 ドイツ語 94 12 12.8 中国語 681 95 14 イタリア語 52 2 3.8 ポルトガル語 61 4 6.6 ロシア語 91 8 8.8 朝鮮語 304 34 11.2 計 5,700 397 7 通訳案内業に従事するには 資格試験合格後、免許取得 ガイド研修参加 派遣会社や旅行社に登録 スポットで受注 通訳案内業・仕事の性質と適性 通訳というよりも観光ガイドとして外国人旅行客 に日本の文化、歴史、観光地の説明を行う ツアーコンダクターとして旅行客の世話をし、旅 程を取り仕切る 日本への理解を促進し、好印象を持たせる → 調査能力(訪問先に関する事前調査) → 統率力(団体をまとめるリーダーの役割) → 問題処理能力(トラブルへの対処) → 演出力(人を楽しませる工夫) 通訳ガイドの収入 通訳案内業有資格者による観光案内、買い物な どの案内、空港の送迎、国際会議及びイベント のインフォメ−ション業務、見本市のブ−ス通訳 などの場合、およそ下記の料金が平均的 通訳ガイド標準料金 半日(4時間)¥15,000∼¥18,000 一日(8時間)¥22,000∼ ¥27,000 最近は無資格者(もぐりのガイド)による低価格 料金が問題化(一日¥10,000程度で受注) 企業内で外国語を生かす 社内通訳者、バイリンガルセクレタリー 企業の国際ビジネスをサポートする 社内通訳者 企業内で通訳業務を専門に行う者 社内通訳者( In House Interpreter)と呼ぶ 通訳専業で雇用される(あまり多くない) エージェント(派遣会社)からクライアント(顧客)企業 に派遣される 企業と直接契約を結ぶ場合もある 原則として通訳、翻訳以外の業務はおこなわない バイリンガル・セクレタリー(二カ国語秘書)としての採 用もあるが、社内通訳者とは別の役割 新卒採用はまれ(経験者優遇) バイリンガル・セクレタリー バイリンガル(二カ国語を使用) セクレタリー(秘書):要職にある人に直属し、そ の人の仕事を助ける バイリンガル・セクレタリー:外国人上司の秘書と してサポート業務をこなす スケジュール管理、資料作成、慶弔関係、挨拶 状や社内・社外文書の作成、名刺整理、出張手 配、来客応対などが主な業務 人材派遣会社からの派遣または正社員 社員として国際業務をおこなう 必要に応じて通訳もする一般社員 おそらく通訳者人口で最も大きな割合を占める 外国語学部卒業者は期待されている 海外事業部などへの配属 語学研修プログラムへの参加 将来の海外事務所駐在者候補として …… 海外との連絡業務(電話、メールなど) ビジネス文書の翻訳、商談、接待などの通訳 上司や顧客の海外出張随行 現場での技術研修通訳 など 警察、裁判所の通訳 司法通訳(警察通訳、法廷通訳) 公正な裁判を助け、 外国人の人権を守る 外国人による犯罪の件数 年 次 #殺人強 盗 #暴行 #傷害 #恐喝 #窃盗 #賭博 #覚せい剤 取締法 #外国人登 録法 1998年 325 251 776 214 5,263 223 1,005 181 1999年 458 220 715 205 5,504 141 1,006 143 2000年 389 320 1,045 252 5,760 141 887 73 一時滞在者(永住権のある者、米軍関係者を除く) 1998年 222 58 213 30 3,098 96 599 172 1999年 328 69 224 40 3,404 84 504 139 2000年 290 112 393 52 3,803 56 467 73 資料 警察庁刑事局刑事企画課「犯罪統計書」 国別検挙人数(2002年1∼8月) 重要犯罪・重要窃盗犯のみの統計 (資料:警視庁刑事局刑事企画課) 全体:505件 アジア 365件 南北アメリカ 167件 中国297、韓国23、ベトナム10、フィリピン8など ブラジル102、その他63 など ヨーロッパ 13件 ロシア10、その他2、イギリス1 警察通訳の仕事 雇用形態 正式に雇用された警察職員「通訳吏員」 県警に登録したフリーの通訳者「民間通訳人」 仕事の内容 捜査現場に同行しての通訳 取り調べの通訳 弁護士の通訳 応募資格 正式職員と民間通訳人で条件が異なる 県警通訳職員募集の例 神奈川県警 神奈川県警察に勤務し、通訳、翻訳等に従事す る職員(事務吏員) 通訳職(韓国語)1名 応募締め切り 平成14年11月1日 (卒業見込みの人は、平成15年4月1日) 昭和47年4月2日から昭和56年4月1日までに生 まれた人 ・ 昭和56年4月2日以降に生まれた人 で、 学校教育法による大学(短期大学を除く。) を 卒業又は平成15年3月までに卒業見込みの人 県警通訳吏員選考方法 以下は神奈川県警の応募要項による 教養考査:公務員として必要な一般的知識及び知能につ いての筆記考査 (大学卒業程度、択一式、50問、2時間) 専門考査:通訳に必要な専門的知識についての筆記考査 (1時間30分) 実技考査:通訳に必要な語学力についての実技考査 人物考査 人柄、性向等についての個別面接考査 身体検査主として胸部疾患、性病等の伝染性疾患、聴力 等についての医師による検査 県警民間通訳人募集の例 長野県警察では、日本語に堪能でない外国人の方に関 わる事件・事故の捜査のため、通訳をしていただける方 を募集しています。 募集言語○ポルトガル語(ブラジル) ○韓国語○中国語 (北京語、広東語、福建語) ○タイ語○タガログ語(フィリ ピン) ○中近東の言語(アラビア語、ペルシャ語、ウル ドゥー語等) ○上記以外のアジア各国の言語 応募資格等●国籍は問いません●長野県内に居住され ているか、長野県に出張可能な方●日本語及び通訳可 能言語の読み書きができる方 法廷通訳人 court interpreter 日本は急速に国際化したので、外国語、特にアジア系の 少数言語の通訳者が足りない。そのために、外国人住民 が日常的に困っているだけでなく、交通事故や救急医療 などの現場での混乱、市役所や学校などでのディスコ ミュニケーションもめだってきた。さらに問題なのは外国 人が犯罪に関係した場合である。被害者、証人、被疑者、 被告人のおのおのについて正確な通訳を確保するのは 困難である。また、弁護人との通信も不十分になる。最 高裁判所、法務省、警察庁、弁護士会もおのおのの立場 で対応策を講じている。同時通訳も始まった。だが、抜本 的な解決にはアメリカの「法廷通訳法」のような対策が必 要であろう。 (『現代用語の基礎知識』より引用) ◆ 法廷通訳 資格試験はない 検察庁、裁判所、弁護士会が言語別に通訳者名 簿を作成し、必要に応じて依頼 仕事の内容 検察での取り調べの通訳 弁護人との接見に同行して通訳 起訴状、冒頭陳述書の翻訳 裁判の通訳 報酬は一時間あたり6,000∼8,000円程度 司法通訳の仕事の特徴 英語以外、とくにアジア言語の需要が大きい 他の分野の通訳とは全く需要が異なる 被疑者、被告の言ったことは全て訳す 要約したり言い方を変えたりしてはならない 警察通訳の場合、いつ事件が起こるか(いつ依頼 が来るか)全く見当がつかない 法廷通訳では軽い事件なら1回の裁判で判決が 出ることもあるが、重大な事件なら長期にわたる 。 長期の場合は、1、2カ月先の裁判のスケジュー ルがわかる 司法通訳人に求められる適性 日本の司法制度や法律について熟知していること 各地方裁判所で開かれる「法廷通訳セミナー」にも積極的に 参加 各国語版の『法廷ハンドブック』で勉強 正確に、一語一句漏らさず、言ったとおりに訳す 中立的な立場に立ち、私情を交えない 捜査官、検察官、被疑者 、裁判官、検察官、弁護人、被告人、 証人の全ての人の通訳をする 守秘義務を守る 仕事上で知り得た事柄を口外しないのは当然の職業倫理 被疑者、被告の人権を熟知し、尊重すること 司法通訳人になるには 司法通訳一本で生活を維持することは困難 別の仕事もしながら、スケジュールがあえば依頼を受け るのが一般的 検察、弁護士会、地方裁判所に民間通訳人として登録し、 仕事の依頼を待つ。 自分の住所がある県の地方裁判所に連絡して履歴書な どを提出し、面接を受けて「通訳人リスト」に乗せてもらう 英語、中国語、スペイン語の通訳人は足りているらしい 将来的には資格認定制度ができる予定。そうすれば質 の低い通訳者が淘汰され、実力者にチャンスが回ってく る可能性がある
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