科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STS フォーラム) 第 13 回年次総

科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STS フォーラム)
第 13 回年次総会(2016 年 10 月 4 日、京都)
声明(仮訳)
1. STS フォーラム(特定非営利活動法人、本部:東京都千代田区、理事長:尾身幸次)は、2016
年 10 月 2 日から 4 日にかけて第 13 回年年次総会を開催した。約 100 カ国の国・地域・国際機
関から凡そ 1200 名の科学技術、政治、ビジネス、メディアの各界の世界的なリーダーが一堂に
参加した。
2. 2015 年は、三つの重要な国際的な合意がなされた:災害リスクの減少に関する仙台枠組み、一
人も残さずに調和のとれた成長を促進する持続的発展のための国連の目標(SDGs)及び温室効
果ガス排出抑制のためのパリ合意である。これに関連して、京都で開催された STS 年次総会及
びその他の地で開催されたイヴェントにおいてこれらの合意の目的が確実に実施されるよう努
力する。
エネルギー、環境及び資源
3.2015 年パリ合意によって定められた目標のために、エネルギー需要と環境への配慮を調和させ
つつ、持続可能な社会経済システムを創造する努力を全ての国が努力すべきである。また低炭素社
会の達成のために必要な科学的、技術的手段を探求することに努力すべきである。新エネルギー及
び再生エネルギーがこの解決のために重要な要素であるが、低酸素エネルギー源としての原子力
も、安全性、核セキュリティ及び核不拡散を条件とした上で重要な選択肢として行くべきである。
ライフサイエンス及び世界の健康
4.ライフサイエンスの急速な展開は、将来の治療に新しい希望の道を開いている。しかしこれらの
技術は、特に生殖細胞系への潜在的な影響や遺伝的な変化をもたらす倫理的な懸念を惹起してい
る。更に、安全性や倫理の問題に適切に配慮して個人に合わせた医学や予防的な医学の進歩を進め
ていくべきである。
5.新たに出現する感染症と戦う診断、ワクチン、治療の急速な発展は、科学上、製造上、そして規
制上の課題を提示している。従前致死であった疾病が再度蔓延することに繋がる抗生物質耐性の細
菌種の出現に対応するためには、新しい手法が必要であり、これは文字通り世界で何百万人もの人
を脅威に晒している。WHO による地域及び国際の協力を改善して行くため、新しい国際的なシステ
ムが必要である。
ICT 及びスマートシティ
6.世界が ICT により接続されていくにつれ、ICT は飛躍的に経済活動と日常生活を変貌させて行き
つつあり、またセキュリティ及びプライバシーを改善するための普遍的な ICT ルールについて世界
的な合意が必要となっている。個人用の手のひらサイズのデバイスができ、クラウドへのアクセス
が可能となるにつれ、途上国でのニーズに応え、特に女性のニーズにも応えていける革新的な新し
いサービスが可能となっている。インターネット・オブ・シングスやビッグデータの利用は、人工
知能やロボットの出現と相まって社会に新しいチャンスをもたらしているが、これらの機械がもた
らす社会的な便益と混乱について理解する上で課題となっている。ICT をより活発に都市設計や都
市管理に利用していくことは、新しいスマートシティにおける人間の生活空間をより生活しやす
く、人に優しく、災害にも強い、かつ、エネルギー効率の高いものにすることにつながる。
7.我々は、ICT に関する人とヴァーチャルな世界の関係について考察してく必要がある。ICT が、
社会的な連帯や人々の責任感にどうように影響を与えるかということを考えていく必要があり、そ
れは、包括的で、かつ、持続可能な社会、つまり、それは雇用と退職の将来、不公平と貧困、そし
て世代間の繋がりと公正について配慮した社会を作る上で重要な柱であると我々はとらえている。
人口と食糧
8.エネルギーのほかに、増大する世界の人口は、益々バランスの取れた食生活を必要とするように
なるが、増加する人口のためより多くの食糧を提供していかなければならない。変動する気候条件
の下で食糧を増産することは、利用可能な土地及び水を利用可能な方法で管理するための科学技術
を動員しなければならない。一方、GMO も含めて、より耐乾性、耐塩性の新植物種を開発し、成長
時間の短縮化を図る最高の科学を用意していくことする。
科学技術及び教育
9. 科学者は、一般の人々に対して、気候変動から GMO まであらゆる問題に関する正確な情報を提供
していくべきであり、人々は、そのことを通じて問題をより理解し、利益とリスクを比較でき、こ
れを通じて科学技術の革新的、かつ、潜在的に有益な利用を支持することができる。
10. STEM(科学、技術、工学、数学)教育が強調されるべきであり、高品質の科学プログラムによ
って、社会における科学技術の役割や持続可能性について、一般の人々の関心を高め、情報を提供
するために開発されるべきである。より若い世代の育成や社会全般における女性進出に力点を置く
ことは彼らの伸ばすことになり、ひいては持続可能な発展を促進することとなるであろう。
科学技術の協力
11. 科学技術、イノベーションを育てていくためには、基礎研究に投資し、企業が新しい製品、サ
ービス及びビジネスモデルを生み出すことになる規制の枠組みを提供するという政府の中心的役割
に加えて、学界と経済界との協力が必要である。
12. 多様な国々の科学界の間の国際協力の強化が重要である。オープンイノベーションを通じた協
力活動を継続していくべきであり、同時に知的財産権及び技術移転に関わる問題に取組むことにな
る。
13. 今年、STS フォーラムは、ブリュッセル、デリー、バンコク及びナイロビにおいてワークショ
ップを開催した。我々は、100 名以上の若手のリーダーが参加した STS フォーラムの若手リーダー
プログラムも実施した。我々は、ネットワークを築き、そしてそのネットワークを拡大し、人類が
直面する課題とチャンスに更に取り組んで行くこととする。
14. 我々は来年もここで再会することを望み、2017 年 10 月 1 日(日)から 10 月 3 日(火)まで京都に
おいて第 14 回の年次総会を開催することに合意した。