キーワードの類似性を配置結果に反映した 大量画像一覧可視化手法

キーワードの類似性を配置結果に反映した
大量画像一覧可視化手法
安田理紗
五味愛
伊藤貴之
お茶の水女子大学理学部情報科学科
risa @ itolab.is.ocha.ac.jp
アブストラクト
本研究では,キーワードの類似性を配置結果に反映した大量画像一覧可視化手法について提案する.本手法では
まず,大量画像の一覧可視化手法「CAT」と同様に,大量画像に対してキーワードに画素情報に基づく 2 段階の
クラスタリングを適用することで階層構造を構築するとともに,階層構造を構成する各クラスタから代表画像を
選出する.続いて,空間充填手法と力学モデル型配置手法の複合型可視化手法「FRUITS Net」のアルゴリズムを
用いて,各クラスタの画面配置を決定する.この配置結果を用いて,「CAT」と同様に大量画像を一覧可視化す
る.本手法では,従来の「CAT」の画像配置にキーワードの類似性を反映させることが可能となる.よって,画
像を局所表示する際に,離れた場所に配置された類似画像を見失う恐れがある,という問題の解消を期待できる.
1. はじめに
近年の画像検索エンジンの発達に伴い,一般のインターネッ
トユーザ(以下ユーザ)も,キーワードを指定するだけで,そ
2. 関連研究
2.1 「CAT」
のキーワードに関連した多くの画像を閲覧することが可能とな
「CAT (Clustered Album Thumbnails)」とは,大量画像のクラス
った.しかし,Webページ上での画像検索結果の表示方法は,1
タリング手法,およびその一覧表示と詳細度制御を持ち合わせ
ページにつき20枚程度のサムネイル表示になっているものがほ
た可視化手法である.
「CAT」では,キーワードおよび画素情報
とんどであり,ユーザはページごとに画像を閲覧する必要があ
に基づいて画像群に対して2段階のクラスタリングを適用する.
る.このとき,内容的に類似する画像が1ページにまとまってい
そして,各クラスタについて代表画像を選出する.以上の処理
れば便利であると考えられるが,現実の画像検索結果はそのよ
によって階層化された画像群を,階層型データ可視化手法「平
うには表示されないことが多い.それどころか,表示される画
安京ビュー」[2]のアルゴリズムを用いて画面配置する.さらに
像には多様な内容が含まれる場合がある.例えば「虎」という
「CAT」ではズーム率に合わせた詳細度制御を設けており,ズ
キーワードを指定すると,虎の写真,虎のイラスト,阪神タイ
ームアウト時は各クラスタの代表画像を表示し,ズームイン操
ガース関連の画像,店名に虎を含む飲食店の料理の画像等が混
作によって局所的に各々の画像を表示する.
在して表示される.これらがうまく分類表示されれば,画像検
索はさらに便利なものになるであろう.
その一つの段階として,
2.2 「FRUITS Net」
複数のキーワードがつけられている画像について,その多くを
「FRUITS Net (FRamework User Interface Tangled Segments
共有する画像群を単一のグループとして表示されるだけでも,
Network)」[3]は,空間充填手法[2]および力学モデル型配置手法
画像検索はより便利になる可能性があると考えられる.
[4]の複合型アイテム集合付きネットワーク可視化手法である.
本報告では,大量画像の一覧可視化と詳細度制御のための
アイテム毎に色分けされたアイコンとして各々のノードを表示
GUI「CAT」[1]を,画像検索結果の表示に適用することを考え
し,ノード間の連結をエッジで表示する.このとき,空間充填
る.
「CAT」を用いて,キーワードに基づいて画像群を分類し,
手法, および力学モデル型配置手法に基づいてノードの配置を
その結果を一覧可視化することで,キーワードに関連する画像
決定することで,複数のアイテム情報を有するネットワークの
の全貌を一目で見渡すことができると考えられる.このとき,
全体像を一画面上で表すことが可能となる.
同じ内容を有する画像が互いに近い位置に集中表示されると,
ユーザは見たいと思う画像群にズームアップすることで,短時
間で容易に見つけることができると考えられる.この観点から
本研究では,キーワードの類似性を画像の配置結果に反映した
大量画像の一覧可視化手法について提案する.
3. 提案内容
本研究では,
あらかじめ1個以上の単語が各々に与えられた画
像群を想定する.この大量画像に対して提案手法では,「CAT」
と同様にキーワードおよび画素情報に基づいて2 段階のクラス
タリングを適用する.そして,各クラスタから代表画像を選出
する.本報告では,キーワードによるクラスタリングによって
生じたクラスタを高階層クラスタ,画素情報によるクラスタリ
ングによって生じたクラスタを低階層クラスタと呼ぶ.
続いて,高階層クラスタの代表画像に対して,「FRUITS Net」
のアルゴリズムを適用して画面配置する.まず,同じキーワー
ドを持つ画像間に辺を生成し,
各辺に重み付けを行う.
そして,
辺の重みを基に力学型モデル配置・空間充填手法を用いてクラ
スタの配置を決定し,
可視化する.
図1は可視化イメージである.
図1. 可視化イメージ
4. まとめと今後の課題
本稿では,キーワードの類似性を配置結果に反映した大量画
像一覧可視化手法について提供した.今後は実装を進めるとと
もに,画像配置により効果的なアルゴリズムはないか検討した
い.そして,GUIとして機能の拡充をはかりたい.
参考文献
[1] 五味, 宮崎, 伊藤, Li, CAT : 大量画像の一覧可視化と詳細度
制御のためのGUI, 画像電子学会誌, Vol.38, No.4, pp.1108-1115,
2008.
[2] 伊藤, 山口, 小山田, 長方形の入れ子構造による階層型デー
タ可視化手法の計算時間および画面専有面積の改善, 可視化情
報学会論文集, Vol.26, No.6, pp.51-61, 2006.
[3] T. Itoh, C. Muelder, K-L. Ma, J. Sese, A Hybrid Space-Filling and
Force-Directed Layout Method for Visualizing Multiple-Category
Graphs, 2009 IEEE Pacific Visualization Symposium, pp.121-128,
2009.
[4] 土井, 伊藤, 力学モデルを用いた階層型グラフデータ画面
配置手法の改良手法とウェブサイト視覚化への応用, 芸術科学
会論文誌, Vol.3, No.4, pp.250-263, 2004.