ポケットの中の GPS 技術 GPS とは? GPS は、全地球測位システムともいい、地球上での位置情報を調べるための人工衛星を用 いた測位システムのことです。元来は軍事用のシステムとして開発されましたが、今では民 間でも一部を使うことができ、測量やカーナビなどで利用されています。 GPS測位の原理 本格的なお話をすると、学部の卒業研究レベルに もなりうるため・・・、ここでは概略だけ説明しま す。地球の周りを24機のGPS衛星が周回してお り、日本の上空では平均して6機の衛星を常に見る ことができます。これらは互いに同期した高精度の 原子時計を登載しており、時々刻々、軌道上の自分 の位置を正確な時刻と共に発信しています。 GPS計測のイメージ この電波の発信時刻と観測者がそれを受信した時刻との差が、電波が衛星から観測者まで 到達するのにかかった時間で、正確に求めた電波の速さ(光速)を用いると、ここから衛星 までの距離から現在位置を求めることができます。 さて、観測者の位置情報(x、y、z)の 3 つの座標を求めるには最低3機の衛星電波を 受信すればよいのですが、観測者は正確な原子時計など常に持っていません。よって時計の 誤差として⊿Tを求める必要があるため、合計4機の衛星電波を同時に受信しなければなら ないということになります。しかし実際には誤差修正などを行っているため、もう少し多く の衛星の電波を受信しています。 他にも一般相対性理論に基づく重力補正、電離層の影響、地球大気による電波の遅延…な ど行いますが、これらの難しくややこしい計算は受信機に内蔵されたコンピュータが瞬時に やってくれるため、ユーザーはこれらを意識する必要なくGPSを使うことができます。 ケータイで GPS が使える? 最近カーナビ搭載車も増えてきましたが、実は 身近なケータイ電話でもGPSを使うことがで きます。2007 年 4 月以降に国内で販売された ケータイ電話には原則として GPS モジュールの 搭載が義務付けられました。この機能により、警 察・消防の操作室から位置情報を得ることができ るため、救災時など役に立ちます。 通報者の居場所を通知できる GPSを使ってみよう GPS 計測を行うためには GPS モジュールと駆動回路があれば行うことができます。また 地図データがあれば、カーナビのように自分の現在位置を地図上にプロットしたり、ナビゲ ーションすることも可能です。カーナビやパソコンに USB モジュールを搭載しても計測でき ますが、そのほかにも以下のような例があります。 PSP用レシーバと MAPLU ポータブルナビ ケータイ電話とEZナビウォーク 秋月電子販売の USB 式 GPS モジュール 予算があれば、専用観測機や PDA が便利 今回は安価で実用性の高い秋月電子の USB 式 GPS モジュールと、ケータイ電話の2種類 を用いて計測を行いました。どちらも計測後にデータをパソコンに取り込み Google Earth の地図上へ移動した軌跡を描画(トラッキング)しました。 秋月電子の USB 式 GPS モジュールはパソコンと接続し 測定間隔などを設定後は、USB からの電源供給があれば モジュール内部に自動でデータを保存することができる便利な製 品です。電源は 3.8V~8V と、比較的広い範囲で使用可能であることから単三乾電池 4 本を 直列にして使用しました。USB出力可能な電池ボックスも販売されており、これを用いる と大変安価にトラッキングを行うことができます。(http://akizukidenshi.com/) ケータイ電話での計測は EZ ナビウォークを用いると現場で位置情報を見ることができま す。しかしデータの保存は有料版を使う必要があり、かつ このソフト単体ではトラッキング するための連続したデータの保存は難しいことがわかりました。よって、サーバー上のプロ グラムにアクセスし、そこへ位置情報を一定間隔で送信することでトラックデータを保存で きるサービスを利用しました。(http://gps.sp21.jp/start/) 秋月電子の USB 式 GPS モジュールの検証 坂町-広島工業大学まで 車での移動中に トラッキングを行いました。今回はきめ細 かい線を描くために取得間隔を1秒ごとに 設定しています。 電波状況にもよりますが、右図のように、 大まかな経路を記録するには十分実用圏内 といえます。 バイパスの上を動いた跡を トンネル部分は電波が受信できない バイパス横では電波状況が悪いために 正確にとらえることができています。 ために直線で補間されています。 測定誤差が大きくなります。 ケータイ電話での計測との比較 JR の広島-新井口駅の間を乗車中にトラ ッキングを行いました。赤:USB、青:ケ ータイ電話 のデータとなります。今回ケー タイ電話での取得間隔は約10秒ごとにな ります。 列車が線路の上以外は走れないため、 新幹線など 列車速度に比べ取得間隔 条件が良ければ停車したホームを特定 少々荒いデータでも使用に耐えます。 があまりに長い場合は荒くなります。 できるレベルの測定が可能です。 電源管理の対策 GPS 技術がとても簡単に利用できるこの方法を用いて、旅へ出たときのトラッキングデー タを記録しました。このように 長時間の記録を行うためには電源の管理が重要となります。 秋月電子の USB 式 GPS モジュールの場合、表面にある LED の点滅で記録状態を確認する ことができます。 電池切れとなると測定ができなくなってしまいま す。よって電池交換の回数を減らすために、出来るだ け大容量のバッテリーを使用することで、安定した運 用ができます。 使用するバッテリーは充電式のリチウムイオンな どを用いると経済的ではありますが、現地調達が可能 となる単一乾電池を使用できるようにしました。もち 単一仕様 特製 USB 電源 ろん充電式のニッケル水素乾電池で置き換えること も可能です。 しかし困ったことに 電池切れになっても装置は何 も言ってくれません。そのため電池切れに気付かず、 何時間も記録が中断した状態が続いていることもあ りました。これを解決するために、USB 端子からの 電源供給を監視する機器を作成しました。設定の電圧 を下回ると、機器がアラート音を鳴らし警告します。 活用例(JR 山陽本線と呉線のトラッキング) USB 電源供給監視機
© Copyright 2024 Paperzz