特 別 企 画 タイ視察レポート ~ 進化を続ける「タイ」を訪問して ~ 平成 26 年 11 月 18 日(火)~21 日(金) 、しずおか信用金庫として初の海外視察を「タイ」で実 施いたしました。日本からの投資(進出)が旺盛であり、ASEAN 諸国の中心として進化を続ける国、 タイ。なぜ日本の企業がこの国を目指し、工場を構え、事業活動を行うのか。これを確かめるため、視 察先に選択いたしました。 今回、景況レポート特別企画として、タイ視察の内容等についてご紹介させていただきます。 1. 「タイ」の現状と今後 「タイ」という国家は、 「温暖な国」 、 「微笑みの国」 等様々な印象を持つと思われますが、実際「自動車・機 械関連製造業を中心に繁栄を続ける国」といった一面を 持っています。 <タイの主要情報> 国 名:タイ王国 国家元首:プミポン国王 人 口:6,709 万人*1 政 体:立憲君主制 首 都:バンコク 通 貨:バーツ 国土面積:51.4 万 km 2 (日本の約 1.4 倍) *1,*2:2012 年時点データ 1 人当たり GDP:5,390 ドル*2 (日本の 11.8%) バンコク市内中心部 高層ビルが立ち並ぶ (1)タイの政治情勢 タイには主な政党として、タクシン元首相の影響が強い「タイ貢献党」 (地方北部、低所得者支持) と「民主党」 (首都圏、中間層支持)が存在し、政権を争っています。2013 年当時政権を握ってい たタイ貢献党は、国外追放されているタクシン氏復権に繋がる恩赦法案の採択を推進し、それに対 抗する民主党による反政府デモが頻発。タイ国内が一時大混乱となりました。そこで、国軍と国家 警察の基、プラユット陸軍司令官が戒厳令の発令、及びクーデターの宣言を実施。報道規制や夜間 外出禁止令等により、次第に混乱が沈静化しました。更にプラユット陸軍司令官が首相に就任し、 新内閣が発足。現在のタイ国内は国軍の統治によって、平穏な日常生活が送られております。 (2)タイの経済情勢 タイの経済は、上記の通り自動車産業を中心に発展を遂げており、近年の GDP 成長率はリーマ ンショックや洪水時の影響を除き、毎年概ね 5%前後で推移しておりました。一方、2013 年は 2.9%と軟調。これは同年後半に、国民向けの自動車購入補助策が終了したことに加え、世界経済の 回復の遅れによる輸出の鈍化、国内の政情丌安等が要因と考えられます。2014 年は戒厳令の発令 やクーデター宣言による観光客の減少により、更に下振れする見通しです。一方、2015 年は国軍 による経済政策により、景気が復調すると見込まれております。 (3)タイの投資環境 タイへは、製造業を中心に日系企業が約 3,900 社(2014 年 2 月時点)進出しており、他国 と比べ日本が圧倒的なシェアを誇っております。これは、過去何年も続いてきた投資により産業が 集積し、サプライチェーンが充実していること、インフラが整っていること、外資優遇政策、親日 な国民性や良好な駐在員の住環境等様々な理由が考えられます。 今後は、ワーカーの賃金高騰やマネージャークラスの人材確保難、投資恩典制度の見直し等によ り、大手・中堅企業による投資は一段落すると予想されております。一方、これら大手・中堅企業 の事業を支える、独自の技術を持った中小・零細企業の進出需要は拡大すると見込まれます。また、 国民の所得増加や生活レベルの改善が進み、製造業以外の業種(小売業・サービス業等)による投 資が注目される見通しです。実際、日本食レストランや居酒屋がバンコク市内に軒を連ね、市民及 び現地在住の日本人から支持を得ております。 2. 日程および主な訪問地 <日程表> 1 日目 日本~タイへ移動 独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO) 2 日目 信金中央金庫バンコク駐在員事務所 浜松信用金庫バンコク駐在員事務所 METALEX(メタレックス) (金属・機械関連見本市) 3 日目 4 日目 ピントン工業団地、Miyatech (Thailand) Co,. Ltd. アマタナコーン工業団地、Siam Kito Co,. Ltd. タイ~日本へ移動 バンコク市内は激しい渋滞が続く (1)中小企業の海外業務支援機関を視察 ~信金中央金庫バンコク駐在員事務所~ 信用金庫の上部組織である「信金中央金庫」は、全国的に 広がる信用金庫取引先の海外業務支援ニーズを受け、2012 年にタイのバンコクに駐在員事務所を設置しました。今回の 視察で、そのバンコク駐在員事務所を訪問。タイの概況や経 済・政治動向、投資環境、及びバンコク事務所の役割につい て説明いただきました。 信金中央金庫バンコク駐在員事務所では、タイでのビジネ スを検討する、或いは実際にタイで事業に着手している信用 金庫のお取引先様に対し、 「海外現地調査支援」、「海外販路 開拓支援」 、 「取引先間の交流機会の提供」、 「現地の情報提供」 など手厚い支援を提供しており、現地における心強いサポー 信金中央金庫 バンコク駐在員事務所 ターとしての役割を果たしている様子を実感できました。 (2)大規模展示会視察 ~METALEX 2014~ 今年で 28 回目を迎える、ASEAN 最大の金属・機械関連見本市「METALEX 2014」を視察 しました。東京ドームを超える大きさの会場には、世界各国から約 2,500 社もの企業が出展。日本 と異なり、火器を使用した実演や大型機械を取り入れた展示が行われており、先進国のバイヤーを中 心に多くの来場者が活発に商談を進めている様子が窺えました。日本の中小企業も多数ブースを構え、 タイを中心とした ASEAN 諸国の市場を取り込もうと積極的に製品アピールを行っておりました。 海外、特に ASEAN 地域において、日本の中小企業の高い技術は大変評価されております。今後、 販路開拓を目的とした海外展示会出展の動きはますます盛んになり、来年以降 METALEX への出展 を検討する中小企業は増加すると予想されます。 METALEX 会場 大型ホール合計 8 会場で開催 日本の中小企業も多く出展 積極的に自社製品をアピール (3)現地進出企業視察 ~Miyatech (Thailand) Co.,Ltd.~ 工場視察先として、本景況レポート<No.3〉「お取 引先様のご紹介」で紹介いたしました、宮川工業株式 会社様(本社:藤枝市岡部町)のタイ現地法人である 「Miyatech(Thailand)Co.,Ltd.」 (ミヤテック)様の 工場を訪問、内部を見学させていただきました。 ミヤテック様は、バンコク中心部より車で 2 時間 程度、タイ南東部チョンブリ県ピントン工業団地第 3 区画に工場を建設、2013 年に本格稼働を果たしま した。主に、日本国内の主要取引先のタイ関連会社向 けにエアコン室外機用部品を供給しています。現在、 日本人スタッフ 2 名を含めた 22 名体制で操業。転 職が頻繁に行われるタイで人材の定着を図るべく、福 海外の生産拠点である Miyatech (Thailand) 利厚生の充実(交通費や食事の支給等)を実践してお ります。また、進出以降、為替相場が円安に進んでいることから、為替変動リスクを回避すべく現地 での資金の調達や運用を試みております。更に、増産、既に取扱う製品以外の新規製品の生産も視野 に入れており、工場スペースの拡充を計画しているということです。 異国の地タイで工場を稼働させるという試練を乗り越え、新たなビジョンを持って前向きに事業を 進めているミヤテック様の姿は、我々視察団にとって大きな刺激となりました。 工場内部は整理整頓が行き届いている 正門前での記念写真 気温 30℃前後、日差しが眩しい 3. 視察にご参加いただいた、お取引先様のご感想 今回の視察には、合計 14 名のお取引先様にご参加いただきました。そして、そのお取引先様から、 次のような大変にありがたいお言葉を頂戴いたしました。 「本当に貴重な体験をすることができ、今後海外展開を検討する上でとても参考になった。 」 「日本では収集できない、タイ現地の貴重な情報を入手でき、勉強になった。 」 「日本の中小企業が大型の展示会場で積極的に商談を進めており、非常に刺激を受けた。 」 「通常コネクションがなければ入ることができないタイ現地の工場内部を見学し、設立の経緯から稼働 に至るまでの体験談や苦労を教えていただくことができた。 」 「この視察を経て、しずおか信用金庫の取引先の方々と知り合うことができた。 」 など 4. 視察を終えて タイではここ数年、 「大洪水」 、「反政府デモ」、「クーデター」等、災害や事件が続いております。し かし、これらを経ても、日系企業の大半はタイで事業を継続し、撤退するといった大きな動きは見当た りません。今回タイを訪問し、その理由の一端を理解できました。 (1)優れたインフラ環境 高架鉄道である BTS や地下鉄等の鉄道インフラは勿論、 道路インフラが他の ASEAN 諸国と比べて整備されていま す。今回、車で 2 時間強かかる工業団地を訪問しましたが、 概ねアスファルト舗装が行き届いておりました。このように 整備された道路がタイ全土に張り巡らされていることが、バ ンコク市街からある程度離れた工業団地でも、多くの外資企 業が進出している要因の一つになっていると認識しました。 (2)現地の生活環境 確かに発展目覚ましいタイですが、街中の生活環境は他の ASEAN 諸国と比べ大きく変わらないと考えておりました。 空港とバンコク市内を結ぶ高速道路 日本車が多い しかし、街中は日本食レストランや日本食の販売店で溢れ、日本語のフリーペーパーが発行されてお ります。医療の発展が目覚ましく、日本語を話す医者から受診することができます。また、年間を通 して温暖な気候であり、総じて日本人駐在員にとって生活しやすい環境であることが、タイでビジネ スが根付いている要因の 1 つであると感じました。 (3)タイ人の国民性 タイ人は、明るく前向きな性格の人が多いと思われます。宿泊施設やレストランの従業員は笑顔で 接客を行います。目上や年上の人を敬う礼儀正しい文化が根付いており、相手に敬意を示すために合 掌してお辞儀をする「ワイ」という伝統的な挨拶にも表れております。 実際、工場見学でミヤテック様を訪問した際にも、現場のワーカーは作業に集中していたものの、 マネージャークラスの事務員はみな笑顔でお辞儀をしてくれました。こういった明るさや礼儀正しさ は、現地進出企業にとって従業員とのコミュニケーションづくりに寄不していると推測されます。 以上、タイを訪問し目で見て肌で感じることで、日本では収集できない貴重な情報を得ることができ ました。大手・中堅企業によるタイ進出は、確かに一巡したかもしれません。しかし、これら大手・中 堅企業を支える中小企業、日本の高品質な商品やサービスを提供する中小企業にとって、多くのビジネ スチャンスがまだまだ潜在しているものと推測されます。 しずおか信用金庫は、外部専門機関とのネットワークを整備し、有益な情報提供など海外ビジネスに 前向きに取組む中小企業を支援させていただいております。是非お気軽にご相談ください。
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