LC Technical Note PDA検出器を用いた着色料の分析 2 GL Sciences Inc. 合成着色料は、天然着色料に比べて色持ちがよく、光や時間による変化が起こりにくいため、製品管理を行いやすいという 利点があります。また、コスト的にも安価であるため多用されています。しかしながら、化学的な合成によって作られているた め、含有量や複数色素の同時使用に関して、その安全性が懸念されています。今回のレポートでは、PDA(フォトダイオードア レイ)検出器を用いた合成着色料18成分の一斉分析について報告いたします。 合成着色料18成分の分析 Conditions ・Column ・Eluent :InertsilⓇ ODS-3 5μm 150 x 4.6 mm I.D. :A: CH3CN, B: 10 mM Na2HPO4 (pH 6.9) A/B = 10/90 – (50 min) - 35/65 :1.0 mL/min :40 ℃ :PDA :10μL 1 23 4 5 6 7 8 ・Flow rate ・Col. Temp. ・Detector ・Inj. Vol. GL-7400シリーズPDA検出器(GL-7452)は、カラム分離が困 難な多成分系の分析に最適です。分析目的成分相互または目 的成分と夾雑成分が重なって溶出していても、抽出波長を変更 することにより単一ピークとして表示できるため定量が可能とな ります。 例えば、下に示すクロマトグラムの270nmの波長において ピーク17と18は重なっていますが、470nmの波長でピーク17を、 580nmの波長でピーク18を、それぞれ単一ピークとして表示で きています。 11 13 9 10 12 14 15 16 1718 270nm 340nm 470nm 580nm 620nm 80 3 5 6 2 4 7 9 8 10 0 20 40 mAU 60 270nm 10 1 20 30 40 30 40 50 Time (min) 60 0 20 40 mAU 80 100 0 340nm 0 10 20 100 11 50 14 0 20 40 60 mAU 17 Time (min) 80 470nm 0 10 20 30 40 18 80 100 Time (min) 0 20 40 mAU 50 15 60 580nm 0 10 20 30 40 50 16 0 mAU 620nm 12 13 100 Time (min) 0 10 20 30 40 50 Time (min) 各試料名と試料濃度 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 食用黄色4号 食用赤色2号 食用青色2号 食用赤色102号 食用黄色5号 ナフトールエローS ウラニン 食用赤色40号 ポンソーR 赤色の番号:食品衛生法で許可されていない色素6種類 Tartrazine Amaranth Ingigocarmine New Coccine Sunset Yellow FCF Naphthol Yellow S Uranine Allura Red AC Ponceau R 7.6 mg/L 3.8 mg/L 7.6 mg/L 3.8 mg/L 5.3 mg/L 7.6 mg/L 3.8 mg/L 5.3 mg/L 7.6 mg/L 10. ポンソーSX 11. オレンジⅠ 12. 食用緑色3号 13. 食用青色1号 14. ポンソー3R 15. 食用赤色3号 16. アズールブルーVX 17. オレンジⅡ 18. 食用赤色106号 -1- Ponceau SX Orange Ⅰ Fast green FCF Brilliant Blue FCF Ponceau 3R Erythrosine Azure Blue VX Orange Ⅱ Acid Red 5.3 mg/L 5.3 mg/L 3.0 mg/L 3.0 mg/L 7.6 mg/L 5.3 mg/L 3.0 mg/L 7.6 mg/L 3.0 mg/L GL Sciences LC Technical Note 市販粉末飲料への応用 その1 市販粉末飲料、食品中の合成着色料の分析例を示します。PDA検出器で採取したデータを元に未確認化合物の吸収ス ペクトルライブラリ検索を行い、同定を行いました。これら類似度の高いピークについてクロマトグラムの抽出を行えば、定 量が可能となり各成分の含有量比もわかります。 市販粉末飲料 (コーラ粉末) の分析 1 3 4 5 15 前処理法 コーラ粉末 10g 300nm 溶解 424nm H2O 10mL 550nm ろ過 0.45μmフィルター HPLC 300nm 5 0 クロマトグラムの抽出 3 20 mAU 4 424nm 0 10 20 40 30 40 50 0 200 mAU 各合成着色料のピークが夾雑と重 ならない波長におけるクロマトグラ ムを抽出することで、市販飲料中の 合成着色料の定量が可能です。 400 600 800 30 Time (min) 1 550nm 0 10 20 50 Time (min) 40 0 20 mAU 60 15 0 10 20 30 40 Time (min) ピークの同定 ピーク 4 食用赤色102号 5つの未確認化合物 の吸収スペクトルを用いてライブラリ 検索を行い、類似度 0.8以上の値が得られました。 これらの結果より、粉末清涼飲料中には、5種類の合成着 色料が含まれていると判定できました。 類似度:0.9932 ピーク 1 食用黄色4号 ピーク 5 類似度:0.9994 ピーク 3 類似度:0.9991 食用青色2号 類似度:0.9943 食用黄色5号 ピーク 15 -2- 食用赤色3号 類似度:0.8298 50 GL Sciences LC Technical Note 市販食品への応用 その2 こんにゃくゼリー (生菓子) の分析 2 13 18 前処理法 210nm 10g こんにゃくゼリー 抽出 H2O 10mL 攪拌 565nm 630nm ろ過 0.45μmフィルター HPLC 2 mAU 0 2 4 6 8 210nm 0 10 20 30 40 Time (min) 6 0 2 4 mAU 8 10 565nm クロマトグラムの抽出 50 18 0 10 20 30 40 50 40 50 Time (min) 10 13 0 mAU 630nm 0 10 20 30 Time (min) ピークの同定 ピーク 13 ライブラリ検索によりピーク2は食用赤色2号と類似 度0.9499であると示されたため、食用赤色2号である と判定できました。 ピーク13、18 は、検出強度不足により標準サンプル と同様な吸収曲線が得られませんでした。 しかし、極大吸収波長と保持時間が合致している ため、これらは食用青色1号と食用赤色106号の可 能性が考えられます。 ピーク 2 食用青色1号 類似度:0.5879 食用赤色2号 ピーク 18 食用赤色106号 ピーク1 類似度:0.9499 類似度:0.5038 -3- GL Sciences LC Technical Note PDA検出器の利点 PDA検出器の使いやすさ PDA検出器では、①等高線表示画面のクロマトグラム表示線をクリック&ドラッグして縦にスライドさせると各波長に おけるクロマトグラムが②に表示されます。 また、①で吸収スペクトル表示線を横にスライドさせて各ピークに合わせると、そのピークの吸収スペクトルが③に表 示されます。 さらに④のように、保持時間、波長、吸光度を軸として保持時間と吸収スペクトルの関係を三次元表示できます。こ れはクリック&ドラッグして上下左右に回転させることもできます。 ① 等高線表示 ③ 吸収スペクトル クロマトグラム表示線 吸収スペクトル表示線 ② クロマトグラム ④ 三次元表示 PDA検出器の機能 1. マルチクロマトグラム機能 2. ライブラリ機能 PDA検出器では、指定した複数の波長のクロマトグラ ムを抽出できます。そのため「合成着色料18成分の分 析」のような多成分一斉分析においても、各成分毎に検 出・定量に最適な波長を指定して表示できます。 任意の吸収スペクトルを登録してスペクトルライブラリを 作成することができます。また、作成したライブラリの検 索により、未確認化合物の同定が行えます。 3. レシオプロット機能 例えばカラム分離が不十分なピーク同士や、夾雑物・ マトリックス効果による単一波長測定が難しい成分も、 吸収波長を変更することで、容易に単一ピークとして表 示できます。また、単一ピークが得られる波長で検量線 を作成することにより定量も可能です。 指定した2波長のレシオ(比)の表示機能が装備されて おり、波長の簡易純度検定が行えます。 この機能により、1本のピークが単一成分なのか、複数 の成分が重なっているのかを見分けることができます。 -4- GL Sciences LC Technical Note 1. マルチクロマトグラム機能 目的ピークの表示 波長 550 nm では、ピーク11と12、ピーク13と14はそれぞれ分離不十分です。しかし、470 nm、620 nm におけるクロマトグラ ムを抽出することにより、単一ピークとして表示できます。また、ピーク15と16のように、完全に重なっていても最適波長のクロ マトグラムを選択することにより、単一ピークを抽出することができます。これらのように抽出波長を変更することによりピークを 単一に表示できるため、再現性良好な分析結果を得ることが可能となります。(下表参照) 11 12 13 14 15 16 目的ピークの定量 PDAのデータを元に、定量用の波長を抽出し、 検量線を作成できます。 470nm 520nm 550nm 620nm 特徴 検量線だけではなく、検量線式や相関関数 620nm などの情報も得られます。 14 検量線例 520nm 15 200 60 470nm 0 0 20 mAU 100 mAU 40 11 33.0 42.0 34.0 35.0 36.0 Time (min) 620nm 14 検量線式 16 100 mAU 60 80 相関関数(直線性) ピーク11 (オレンジⅠ) の 波長470 nmにおける検量線 0 20 13 検量線 40 60 12 11 0 20 mAU 40 120 550nm 43.0 44.0 Time (min) 33.0 34.0 35.0 36.0 Time (min) 620nm 0 20 40 60 mAU 80 100 120 140 160 43.0 44.0 Time (min) 13 12 33.0 42.0 34.0 35.0 36.0 Time (min) 面積値・保持時間の再現性 分析回数 面積値 保持時間 面積値 保持時間 面積値 保持時間 面積値 保持時間 1 4681832 32.9 10992952 33.2 10303143 35.3 4443224 35.6 2 4612251 33.0 11020101 33.3 10604978 35.4 4438723 35.7 3 4577141 33.0 11037718 33.3 10588872 35.4 4514276 35.7 平均値 4623741.33 32.98 11016923.7 33.25 10498998 35.38 4465408 35.68 標準偏差 53282.94 0.04 22551.50 0.05 169806.18 0.05 42381.01 0.05 C.V値 1.152 0.130 0.205 0.163 1.617 0.141 0.949 0.131 分析回数 ピーク15 波長580nm 面積値 5.3mg/L 保持時間 ピーク16 波長620nm 面積値 3.0mg/L 保持時間 1 4383460 43.1 10420667 43.1 2 4466263 43.1 10024622 43.1 3 4357086 43.2 10226433 43.2 平均値 4402269.67 43.15 10223907.3 43.15 標準偏差 56967.16 0.05 198034.58 0.05 C.V値 1.294 0.108 1.937 0.108 ピーク11 波長470nm 5.3mg/L ピーク12 波長620nm 3.0mg/L ピーク13 波長620nm 3.0mg/L ピーク14 波長470nm 7.6mg/L -5- GL Sciences LC Technical Note 2. ライブラリ機能 ライブラリ作成例 極大吸収波長 保持時間 スペクトルライブラリの作成 任意の吸収スペクトルを登録してスペクトル ライブラリを作成することができます。 開いているデータの選択したスペクトル を直接ライブラリに登録する方法と、保存 されたスペクトルファイルから登録する方法 の両機能が搭載されています。 特徴 吸収スペクトル 画像スペクトルを表示、保存したり、画 像スペクトルをスペクトル・ライブラリに格 納できます。 各波長の極大吸収波長や保持時間、 吸収スペクトルがひと目で分かります。 検索結果例 ライブラリ検索 未確認化合物の同定を行う際、最も効率的な 手法としてライブラリ検索があります。あらかじ め測定し、ライブラリー化した各種スペクトルと 未確認化合物の吸収スペクトルを照合す ることにより同定が行えます。 類似度 特徴 1. 未知試料と既知試料の吸収スペクトルの 重なり具合がひと目で分かります。 2. 類似度が数値として表示されます。 3.作成したライブラリから、類似度が高い順 に検索結果が表示されます。 -6- GL Sciences LC Technical Note 3. レシオプロット機能 レシオプロット設定例 9 10 1112 レシオプロットの設定 13 14 純度を確認したい化合物や、夾雑成分が 含まれていると考えられる保持時間を設定 します。指定した2波長のレシオ(比)を用い て判定するため、夾雑成分が含まれている と考えられる吸収波長を設定します。 レシオプロット表示例 レシオプロット表示 9 10 11 12 13 14 検出されたピークに不純物が含まれていな ければ、200 nm と 580 nm におけるクロマトグ ラム上のピーク強度の比は変化しないため、 レシオプロットにおけるピークは矩形になりま す。 一方、不純物のピークが重なっている場合 は矩形の形が崩れます。 特徴 レシオプロット使用により簡単な純度チェック を行うことができます。 不純物なし -7- 不純物あり GL Sciences LC Technical Note 使用装置類の紹介 フィルター GLクロマトディスク 使用系 水系 型式 25A 直径(mm) 25 孔径(μm) Cat.No. 0.45 5040-28512 化学結合基 分析カラム Inertsil ODS-3 母体 粒子径 表面積 純度 細孔径 細孔容積 化学結合基 エンドキャップ処理 炭素量 : : : : : : : : : 高純度球状シリカゲル 5μm 450m2/g 99.999% 100 Å 1.05mL/g オクタデシル基 あり 15% -(CH2)17CH3 内径(mm) 長さ(mm) Cat.No. 4.6 150 5020-01731 1 分析装置:GL-7400 シリーズ 2 食品添加物(色素)分析システム 番号 ① ② ③ ④ ⑤ 品名 キャリアリザーバー PDA検出器 カラムオーブン オートサンプラー ポンプ 3 型番 GL-7480 GL-7452 GL-7430 GL-7420 GL-7410 4 ※詳しくは単品カタログもしくは装置カタログを参照してください 5 ジーエルサイエンスでは、分析ノウハウときめこまやかなフォローもお付けしたシステム提案を行っております。 お近くの営業所や カスタマーサポートセンター までお気軽にお問い合わせください。 ホームページはこちらから・・・ http://www.gls.co.jp/hplc.html 〒163-1130 東京都新宿区西新宿6丁目22番1号 新宿スクエアタワー30F TEL.03(5323)6611 FAX.03(5323)6622 TEL.03(5323)6611 TEL.06(6357)5060 TEL.024(533)2244 TEL.029(858)3700 TEL.043(248)2441 TEL.048(667)1611 TEL.045(475)1144 TEL.052(931)1761 TEL.082(233)1101 TEL.092(291)5200 FAX.03(5323)6622 FAX.06(6357)4580 FAX.024(536)1518 FAX.029(858)3780 FAX.043(248)2485 FAX.048(667)1656 FAX.045(475)1145 FAX.052(931)1814 FAX.082(233)1110 FAX.092(291)2552 カスタマーサポートセンター T E L . 0 4 ( 2 9 3 4 ) 1 1 0 0 FAX.04(2934)3361 東 大 東 筑 千 北 横 名 広 九 京 営 業 阪 支 北 営 業 波 営 業 葉 営 業 関 東 営 業 浜 営 業 古 屋 営 業 島 営 業 州 営 業 部 店 所 所 所 所 所 所 所 所 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