キャンプの友達には嫌われちゃってもいい!

キャンプの友達には嫌われちゃってもいい!
タイトルにした言葉は、インタビューで聞いた中高生の言葉で
たように年下の子の面倒を見たり、自分が小さい時の姿に気付く
す。
「学校の友達との違いは?」という質問に対し、こんな言葉が
こともあったり、異年齢だから出来る体験もあったようでした。
返ってきました。
自分を受け入れてくれた体験が次も受け入れてくれると思えるの
今回の特集である「子どものこころ」は当事者に聞いてみない
ではないでしょうか。
とわからない!ということで、中高生にインタビューをしました。
協力してくれたのは、中学2年生から高校3年生の男子1名、女子
自分でいられる場所
6名の計7名です。子どもたちは、小学校時代は3泊のキャンプ
「みんなにとってキャンプは何?」と尋ねた時に返ってきた言
に、中学校時代は1週間のキャンプに参加していました。継続的に
葉です。その理由としては、
「自分のことを大切にしてくれるから」
キャンプに参加してきた子どもたちが、キャンプでどんなことを
「自分の素のままで行動出来るから」などが挙げられました。
感じ、キャンプをどんな存在と考えているのか、子どもたちの本音
を報告します。
自分でいられるには、緊張ではなくリラックスしている状態に
身を置くことが必要です。自然に囲まれた生活では、自然の美し
さや迫力を体全体で感じ取ることが多くあります。普段見られ
ない景色に感動し、心が揺り動かされることも少なくありません。
五感を刺激する自然は心を開放させ、しだいに心をリラックスさ
せてくれます。
また、現代の子どもたちにとってLINE(ライン)や Twitter
(ツイッター)など、間接的なコミュニケーション方法は日常化し
ています。いつでもどこでも誰とでもつながれる便利さ、気軽さ
ゆえに直接的な方法に加え、間接的な方法を取ることも増えて
きています。顔が見えない、声が聞けない状態でのコミュニケー
ションは本当の自分を出さずに取り繕うことも可能なため、本心を
見抜くことが難しくなっています。文字のみのコミュニケーションは
時に誤解や行き違いを生じることもあり、知らず知らずのうちに
人を傷つける場合もあります。キャンプでは顔と顔を付き合わせた
直接的なコミュニケーションしかありませんが、自然を感じるよ
うに体全体で人を感じ取ることが出来ます。ゆっくりと流れる時間
だって受け入れてくれそうだから
嫌われてもいい理由を聞いたところ、そう返ってきました。その
の中で、じっくりと人間関係を育む環境が今の子どもたちには
必要だと考えられます。
他にも「何かを言っても許してくれるだろうと思います」
「自分が
思っていることを素直に言っても全然大丈夫です」
「限界まで
1時間ほどのインタビューで子どもたちは自由に、また熱くキャ
素を出しても嫌われないんじゃないかと思います」などがありま
ンプのことを語ってくれました。キャンプで何が変わり、成長す
した。
るのかを生の声から感じることが出来ました。子どもたちの言葉
学校とキャンプの違いを考えてみると、毎日顔を会わせる学校
で、
「1回目の参加でキャンプの様子や出来ることを知り、2回目
とは違って、キャンプは1年に一度、または数回会う程度です。一
からキャンプを楽しむことが出来るんだ」とあります。前ページ
緒にいる時間はとても短いですが、キャンプには生活を共にする
(6ページ)の保護者からの声にも共通することが書かれてい
時間があります。同じ釜の飯を食べて、寝泊まりするなどの共同
て、キャンプへの継続的な参加に大きな意味があることを感じま
生活を通して、お互いのことを理解し、認め合うことが出来るよ
した。
「継続は力なり」ということを子どもたちから改めて教え
うになります。相手に対して思いやりの心が芽生え、自分の発言
られ、指導者は子どもたちにとってまた行きたいと思えるような
や行動をどう受け止められるか試行錯誤していきます。日を追う
キャンプを運営することが必要であると強く感じました。
ごとに、笑ったり喜んだり、泣いたり怒ったりとさまざまな感情を
一緒に味わう機会が増えていき、仲間意識も高まり、心許せる
仲間に安心感を覚えるのだと思います。
また、自分よりも年上の人が優しくしてくれたことや、自由に好
きなようにさせてくれたことが、子どもたちにははっきりと記憶に
残っているようでした。中学生になってからは、自分がしてもらえ
翠尾 由美
SUIO Yumi
麻布子ども中高生プラザ
大学時代に東京にある国立総合児童センターこどもの城でボラン
ティアを始め、キャンプにも携わる。子どもの活動に魅せられ 卒業
後こどもの城で 23 年勤務。こどもの城の閉館
(2015 年 3月)
に伴い、
昨年 9 月より現職。地域児童館での運営にただいま奮闘中。
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