「膨張する中国を取り巻く諸問題」講義概要 第1回(平成 28 年 9 月 5 日)南シナ海問題の本質を探る 共同通信客員論説委員 岡田 充 南シナ海をめぐる米中対立を「一触即発」とするセンセーショナルな報道が目立つ。 南沙問題の歴史的淵源を振り返るとともに、米国の対応の変遷と中国の主張を整理しな がら本質に探りたい。東アジア安保を支えてきた米一極支配の動揺と中国の台頭による パワーバランスの変化が背景だが、安倍政権の介入が問題を複雑化させている。米中と も衝突は望んでおらず、互いの出方を探り合う「出来レース」の面が強い。 第2回(平成 28 年 9 月 12 日) 計画生育政策の大転換―一人っ子政策の功罪をどう評価するかー 同志社大学大学院教授 厳 善平 昨年末、中国は 1979 年以来の 1 人っ子政策を廃止した。背景に、人手不足で経済成 長の下振れ圧力が強まり、急速な高齢化で年金財政が圧迫されている現状がある。この 間の中国で、人口爆発を人為的に抑制することで高度成長が達成された一方で、歪な男 女比、無戸籍の闇子、 「失独家庭」といった 1 人っ子政策由来の社会問題も深刻さを増し ている。本講座では、1 人っ子政策の推移、効果および問題について解説する。 第3回(平成 28 月 9 日 26 日)中国の発展に華僑が果たしている役割 関西日中関係学会会長 青木 俊一郎 ロシアの社会主義計画経済連邦体制が4半世紀しか続かず、中国の改革開放政策後の 社会主義市場経済が高度経済成長をもたらしたのはロシアには存在しない、華僑という 世界的経済ネットワークが急激な対中投資と外国技術の導入、輸出入貿易の拡充、内需 拡大による国民の生活文化の向上に貢献しているためである。 この華僑ネットワークの形成過程や地政学的に進出している地域での互助的な発展過 程及び進出先社会との共存関係を自らの体験を踏まえ分析する。 第4回(平成 28 年 10 月 3 日)報道統制下の中国メディアの実態 フリージャーナリスト 元産経新聞記者 福島 香織 中国のメディア統制の現状、中国の記者活動の実態、記者たちの苦悩と挑戦について 概説する。とくに、習近平政権下でおきた喫緊のメディア事件を取り上げながら、メデ ィアと権力の相関について紹介。日本のメディアの在り方と比較しつつ、メディアの使 命、役割について考える。参考図書は『中国のマスゴミ‐ジャーナリズムの挫折と目覚 め‐』『権力闘争がわかれば中国がわかる』。 第5回(平成 28 年 10 月 17 日)孫文生誕150周年-近現代史上の節目を問い直す- 孫文記念館主任研究員 蒋 海波 2015 年 11 月 7 日、中国の国家主席習近平氏と台湾の総統馬英九氏がシンガポールで 会見した。1949 年の中台分断後、初めてのことである。両者はそれぞれ中国共産党と中 国国民党のトップリーダーでもある。この両党はかつてすさまじい戦を繰り広げてきた 相手でもあった。66 年後のいま、どのような力によってこの両者を握手をさせたのか。 その背後に孫文という巨大な存在を見逃してはいけない。今年(2016)は孫文生誕 150 周年である。この講義はこの両党の孫文を記念する歴史を振り返って、今後の中台関係、 中国のゆくえを展望していきたい。 第6回(平成 28 年 10 月 24 日)中国のアフリカ政策-その仕組みと功罪- 大阪商業大学総合経営学部教授 国際ビジネス研究学会会長 安室 憲一 中国がアフリカ、とくにサハラ砂漠以南の発展途上国に積極的に進出しています。中 国は欧米日の先進国ルールとは異なる「ひも付き」融資・援助により、中国の機材と人 員を使いインフラ等の建設を行い、原油や鉱物資源で返済を求めます。インフラ建設で は現地人を使わず、中国から技術者や労働者を連れていきます。建設が終わっても中国 人が現地にとどまり、あるいは商人や農民が移民してきて、その数はすでに 100 万人を 優に超えていると言われています。これは、中国の資源外交の一端を示すものですが、 新植民地主義として非難される一面でもあります。この講義では、中国の対アフリカ政 策の現状を分析し、その仕組みと問題点について論じたいと思います。同時に、成長す るアフリカに対して日本はどのように接していったらよいかを考えてみたいと思いま す。 第7回(平成 28 年 10 月 31 日) 中国経済の課題と可能性-世界経済の中で中国のプレゼンスは高まるのか- 国際貿易投資研究所研究主幹・元上海万博日本館館長 江原 規由 今や、世界経済が中国経済から大きな影響を受けるようになっている。そうした世界 経済における中国の今後のプレゼンスの向上を見る視点として、一帯一路(新シルクロ ード)構想の展開と中国産業(企業)の対外進出の行方が注目される。一方、中国経済 にも成長率の減速化などの課題が少なくない。中国経済は、こうした対外発展と対内調 整をどうバランスさせようとしているのかを考察する。 第8回(平成 28 年 11 月 7 日)戦後経済を牽引した日中韓主要企業の相関関係 桜美林大学北東アジア総合研究所 所長川西 重忠 1980年よりの中国の改革開放政策に応じて、日本と世界の資本と技術は一斉に中 国市場に参入した。途中1989年の天安門事件や幾多の困難を経験しながらも中国経 済は日本アジアのみならずグローバルの規模で拡大発展を続けてきた。 今回は、その中で民間企業で顕著な役割を果たした日本、中国、韓国の企業と企業経 営者たちの中国とアジアを巡る様々な思いと経営戦略にフォーカスを当てて報告を試み たい。取り上げる企業と経営者は、松下電器、三洋電機、ハイアール、クラレ、サント リー、ポスコ、宝鋼製鉄、三星、などを予定している。 第9回(平成 28 年 11 月 14 日)米台中関係と日本①-台湾新政権と中国の葛藤- 帝塚山大学名誉教授 伊原 吉之助 台灣に初の女性大統領蔡英文を頂く新政權(民主進歩黨政權)が登場しました。前政 權、中國國民黨の馬英九政權は「中國に頼つて經濟を良くする」策をとり、經濟成長率 6%・失業率3%以下・一人當り國民所得3萬ドルの「633」公約を掲げて壓勝しま したが、現在經濟成長率は1%以下、失業率は今年4月で3.86%、昨年の國民所得 は一人當り2萬2000ドル。蔡英文新總統への期待は、内政=經濟再建、外交=中國 からの自立です。 第 10 回(平成 28 年 11 月 21 日)米台中関係と日本②-習体制は党大会を乗り切れるか- 帝塚山大学名誉教授 伊原 吉之助 台灣問題は、第二次大戰の後始末がついてゐない重大問題です。その安定には、米日 中の三國が密接に関はつてゐます。台灣を併呑したい中國と、現状を維持したい米日台 三國とでは思惑が異ります。そして、米日台の足並みが揃つてゐる譯ではない。台灣は 國際社會で繼子扱ひなのですが、東アジアだけでなく、世界の安定に關はる大事な國で す。中國習近平政權の動向を見守りながら、台灣の將來を考へます。
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