教養教育ニュース

教養教育ニュース
五福キャンパスの教職員向け広報紙、「教養教育ニュース」は、教養教育院が責任を負い、FD
専門委員会や実施専門委員会に諮りながら編集し、年に1~2回発行します。
No.18 —2015.12.22—
1.第 18 回富山大学五福キャンパス教養教育教員(FD)研修会について
佐伯
淳(五福キャンパス教養教育FD専門委員会委員長)
平成 27 年 10 月 28 日(水)13 時から、五福キャンパス共通教育棟B21 番教室において、
「共同
学習をどのように活用するか -英語の授業の場合-」としてテーマを掲げ、第 18 回富山大学五
福キャンパス教養教育教員(FD)研修会を開催しました。
本研修は、平成 26 年度に実施した学生による授業評価アンケート「英語」について、同アンケ
ートで高い評価を受け、外国語系第1部会から推薦いただいた山岸先生(共通教育センター准教
授)と岡崎先生(人間発達科学部教授)から、テーマに基づき授業デザインの実践としてグッド・
プラクティス事例報告を中心に実施しました。事例報告では、授業における共同学習の実施方法
やその活用等について述べられたほか、学生には毎回予修をさせ授業に意欲を持たせることや授
業の中で達成感を味わうことが大切であるなど、大変貴重なお話しをしていただきました。事例
報告の後には活発な意見交換(中には、子息の大学受験に際して、英語では毎日どれくらいの学
習時間が必要か?)もあり、盛況のうちに終了しました。本研修会に御協力いただいた関係教職
員の方々に御礼申し上げます。
当日は、40 名の教職員に御参加いただきましたが、一部の学部の編入学試験と日程が重なるな
ど、教職員の皆様に大変御迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
2.第 51 回 12 大学教養教育実施組織代表者会議の報告
木原 淳(共通教育センター教授)
平成 27 年5月 27 日から 28 日に、山形大学を当番大学として、12 大学教養教育実施組織代表
者会議・事務協議会が盛岡市で開催されました。この会議に続き、28 日午後から 29 日にかけて
国立大学教養教育実施組織会議が開催されましたが、筆者は前半の 12 大学会議の方だけに参加し、
以下の協議題が議論されました。
[代表者会議協議題]
1.理系学部に共通した初年次学生向け理系基礎教育の統一化について
2.クウォータ制等の柔軟な学期区分の導入について
3.SA(スチューデント・アシスタント)の活用状況について
4.教養教育と地域の連携・活性化について
五福、杉谷、高岡を包括した教養教育の一元化が議論されている現在、特に興味を惹いたのは、
「1.理系学部に共通した初年次学生向け理系基礎教育の統一化」でした。このテーマは理系基
礎科目のみならず、英語教育の共通化にも通じるものといえます。
各大学の報告を聞くと、論点としての共有はなされているものの、現状や今後の方向性は多様
であり、大きく分ければ、学部横断的に実施を試みる大学がある一方、学部ごとの教育課程の違
いや専門課程との連携という点で、否定的な大学もありました。また数学、物理、化学の基礎と
なる「共通科目領域」群を設け、各学部が状況に応じてそこから必修科目、推奨科目として設定
するという中間的な方法を採る大学も見られます。とはいえ、プレイスメントテストによる共通
化と習熟度別クラス分けを徹底しようとすれば、例えば特定学部の中で実施するなど、実施規模
はどうしても縮小する傾向にあります。大学規模の大きさから、カリキュラムの調整上、不可能
を明言する大学もありました。また物理のように実験を伴う科目の場合、全学生が同じ実験を行
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うことは断念し、学部学科ごとに柔軟な対応を取れるように変化していった場合もあることが報
告されました。
一口に理系基礎教育と言っても、数学、物理、化学、生物など、専門ごとに求められる「基礎」
の水準も異なること、実験を不可欠とする科目への設備的な対応など、科目の多様性は大きいも
のがあり、共通化といっても、学部学科限定、特定の科目限定など、何らかの限定を付して実施
しているという印象を受けました。
英語の場合、学部ごとに求められる内容に大差はない以上、共通化は比較的容易な部類に入り
そうですし、カリキュラム編成上の困難さを除けば(!)
、科目の性質上、習熟度別クラス編成も
困難ではなさそうに見えます。ただ、指摘されたように、単純な習熟度別クラスは、クラスの割
当によって個人の成績評価が大きく左右され、学生に不公平感を与える可能性もあります。この
問題回避のためには、教科書の共通化や統一テストの実施という方向が考えられますが、そうな
ると学生の実力や実態に応じたきめ細かな教育という視点が棚上げされることにもなりかねませ
ん。悩ましい問題であると感じました。
3.平成 27 年度(第 52 回)国立大学教養教育実施組織会議について
福田 翔(共通教育センター准教授)
第 52 回国立大学教養教育実施組織会議が、岩手県盛岡市にて、2015 年 5 月 28 日、29 日の 2
日間にわたり開催されました。この会議は 1 日目の「特別講演(1)」及び「分科会・事務協議会
(2)
」
、2日目の「全体会議(3)
」の3部から構成されています。
(1) 特別講演「国際通用性のある教育課程を考える:チューニング・プロジェクトの取り組み」
(2)分科会
・
「授業評価と教育改善」
(第一分科会)
・
「医学部国際認証に伴う教養教育の対応について」(第二分科会)
・
「教養教育における教育方法と学修効果の検証と質の保証について」(第三分科会)
・
「大学教育の国際化における第二外国語の役割」
(第四分科会)
事務協議会
・
「GPAの導入と活用方法について」
・
「学期(学事暦)の改革における課題について」
・
「臨時休校の取扱いについて」
(3)全体会議
「主体的な学びの確立と学士課程教育の質的転換」
(講演)
「教養教育におけるアクティブ・ラーニング」
(1)の特別講演では、大学教育の国際化の中で、教育の質の保証や大学間の交流促進のため
に、
「チューニング」という手続きを通して、大学教育の国際的互換性を高めようとする試みに
ついての発表がありました。チューニングによって生まれる効果と、教養教育への適用可能性
という点で、興味深く感じました。
(2)の分科会では、第四分科会に参加しました。山梨大学が提案校として、現在英語の必要
性が強調される中、
「英語以外の外国語の授業の役割とはなにか?」という点を中心に議論が行
われ、千葉大学、大阪大学、岩手大学から事例紹介がありました。その中で特に、第二外国語
の廃止や衰退という問題に対して、各大学が強い危機感を持っていることを感じました。しか
し現状を嘆くのではなく、第二外国語を学ぶ意義や必要性を示し、学生のやる気を引き出す工
夫など、建設的な提案や意見を聞くことができ、非常に有意義な会でした。
(3)の全体会議では、まず「大学を取り巻く諸情勢、大学教育の質的転換」などについての
講演があり、続いて「教養教育におけるアクティブ・ラーニング」について、静岡大学を提案
校として、山口大学、九州大学、岩手大学、東京大学から事例紹介がありました。様々な課題
などはあるものの、学生の能動的な取組みを引き出す様々な工夫が聞けて、非常に勉強になり
ました。
教養教育ニュース
No.18
2015 年 12 月 22 日発行
発行:五福キャンパス教養教育、編集:教養教育院(院長:神川康子)
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