胸(膜)腔 (正岡 昭、藤井義敬.呼吸器外科学.改訂 3 版.南山堂,東京 2003) 胸腔とは肺胸膜(臓側胸膜)と壁側胸膜に覆われた体内で唯一の陰圧の体腔である。 胸腔に空気が漏れ出せば気胸、水が貯まれば胸水(膿が貯まれば膿胸など)となり、 貯留物が多量となり、それらにより胸腔内圧が陽圧になれば? ↓ 肺の虚脱、縦隔の健状側への偏移、患側横隔膜の平低化、静脈還流の低下(静脈圧の上昇) ↓ 呼吸不全、低血圧 気胸の原因となる疾患 (1)特発性(自然)気胸 好発年齢は20歳代と60歳代の2相にみられ、男性、痩せ型の人が多い。 肺嚢胞(bulla、bleb)の破裂によって発生するもの。 胸腔鏡手術は良い適応となる。 嚢胞性肺疾患 1.ブラ(bulla)とブレブ(bleb) 嚢 胞 bulla と bleb: 肺 胞 壁 の 破 壊 を 伴 い 胸 膜 下 に 出 る も の が bulla 、 肺胞間隔壁の破壊によるものがblebである。 2.巨大嚢胞(Giant bulla) 巨大化したブラが片側胸腔の 1/3 を超えるようなもの。 特徴: 1. 進行性に肺実質を破壊する。 2. 気胸発生の頻度が少ない。 (23) - 1 - 3.過誤腫性肺脈管筋症(lymphangiomyomatosis: LAM) 生殖年齢の女性に発生し、気胸の多発と肺の嚢胞化の進行によって死亡する。 4.その他 (2)続発性気胸 結核、癌、肺膿瘍などの肺内病巣の穿孔によって発症するもの。 (3)月経随伴性気胸 子宮内膜の組織の一部が肺や横隔膜に迷入し、月経時にその部分が剥脱して 気胸を発症する。 (4)外傷性気胸 胸壁の穿通、肋骨骨折、肺、気管、気管支損傷など、血胸を伴うことが多い。 (5)医原性気胸 中心静脈栄養、胸水穿刺、人工呼吸などの陽圧換気により生じる。 治療 ①安静 ②胸腔ドレナージ ③胸膜癒着療法 ④手術 血胸 a.外傷に起因するもの b.明らかな原因なく、突然発症するもの 若年男性に好発する。胸膜の索状癒着の断裂により出血するもので通常、気胸と合併 c.その他 腫瘍の破裂や大動脈瘤からの出血など 治療 血胸であることが確認されればただちに胸腔ドレナージ(大量出血は手術) 乳糜胸 胸腔内に乳糜が貯留した病態 a. 外傷性 手術や外傷による胸管の損傷による b. 非外傷性 炎症、腫瘍、血栓などにより胸管の閉塞、狭窄による c. 突発性(先天性) 治療 ①胸腔ドレナージ ②脂肪制限 ③胸膜癒着療法 (23) - 2 - ④手術 胸水を来たす疾患 1.感染性胸水(結核、肺炎、肺化膿症など) 2.悪性疾患(癌性胸水) 3.心疾患(うっ血性心不全、心膜炎など) 4.低蛋白血症 5.その他 胸水検査 1.血清学的検査(LDH、グルコース、ヒアルロン酸、CEA など) 2.細菌学検査 3.細胞診 4.胸膜生検(針生検∼胸腔鏡下生検) 治療 原因疾患の治療が中心となるが、場合によっては胸腔ドレナージ、 膿胸 病態による分類 1. 急性膿胸と慢性膿胸 3 ヶ月以上の羅病期間を慢性 2. 有瘻性膿胸と無瘻性膿胸 気管支、肺との間に瘻孔を有する。 治療 ①胸腔ドレナージ ②抗生剤療法 ③外科手術 開窓術、大網充填術、肺剥皮術など (23) - 3 -
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