小次郎講師のトレーダーズバイブル第 56 回 第 10 部 投資の極意

最高レベルのトレード手法をどこよりもわかりやすく!
小次郎講師のトレーダーズバイブル第 56 回
第 10 部
投資の極意に関するコラムその 1
「行動ファイナンス」
皆さん、こんにちは、小次郎講師です。
助手のムサシです。よろしくお願いします。
本日はいよいよこの連載も第 10 部入り。
その最初は行動ファイナンス。
行動ファイナンス、難しそうですね。
まあ、出来るだけわかりやすく説明するので、入門編だと思って聞いて
ほしい。
【1、 行動ファイナンスとは?】
そもそも行動ファイナンスってなんですか?
行動ファイナンス」とか「行動経済学」とか言われるが、経済学と心理学
を一体化したもの。投資の世界ではトレーダーがどのような心理でトレ
ードし、どんなときにどんな心理になるか、それが市場にどんな影響を
及ぼすかなどを研究した学問だ。
やっぱり難しい。
しかし重要。買った後に株価が急落したら怖くなって、われ先にと売りを
出す。その投げ売りでさらに価格が下がる。みんなが投げたら、そこで
価格は底打ちして反転する。これなど行動ファイナンスの典型。恐怖心
により正しい判断が出来なくなるケース。
なるほど。
2002 年ダニエル・カーネマン博士が行動ファイナンス理論でノーベル経
済学賞を受賞した。『プロスペクト理論』と呼ぶ。聞いたことはないか
い?
残念ですが。
【2、プロスペクト理論とは?】
例を挙げてみよう。
A 社、毎月 20 万の給与
B 社、毎月 30 万の給与、但し半年に 1 回の割合で、給与が出ないことがある。
どちらの会社に入社したい。
決まっているじゃないですか。A 社ですよ。給料が出ないなんてあり得ない
です。
なるほどね。そういった正しくない選択をすることがプロスペクト理論で
実証されている。
正しくないんですか?
実際には B 社に勤める方が圧倒的に有利。A 社では年収 240 万円。B
社では平均 300 万円となる。
えっ、そんなに違うんですか?
A 社は 20 万×12 ヶ月=240 万。B 社は半年に 1 回ということは年に 2
回給料が出ないことがある。残りの 10 ヶ月で出る給与を計算すると、30
万×10 ヶ月=300 万
でも・・・安定していないですよね。やっぱり僕は A 社を選びます。
だね。その非合理さがまさにプロスペクト理論。
非合理だなんて。
非合理さ。正しく計算すれば B 社の方があきらかに有利なのだから。し
かし、人間には感情がある。その感情を加味すると、A 社の方が有利と
なる。ここにビジネスチャンスや投資のチャンスが生まれる。大事なの
はそこだ。
どういう意味でしょう?
ムサシ君、きみは安定した給与を選ぶわけだ。投資においてはリスク
の低いものを選ぶのと同じ。
まあ、そうですね。
ムサシ君、とりあえず B 社に入社したまえ。安心しなさい。給与は私が
毎月 21 万円を保証する。私が払う。毎月確実に 21 万だったら A 社より
いいだろう?
そりゃ、A 社は 20 万ですからね。
その代わり B 社からの給与は私が受け取る。ムサシ君には私から 21
万円が毎月もらえるんだから文句ないな。
ありません。
こういう契約をしただけで、私は年間 48 万円の利益となる。
げげ。
内訳は次のとおり
B 社からの入金
30 万×10 ヶ月=300 万円
私からムサシ君への給与
21 万円×12 ヶ月=252 万円
差引:300 万円-252 万円=48 万円
ほとんどノーリスクで 48 万円の利益が得られる。
マジックです。
通常の経済学では全ての参加者が合理的な判断をすると仮定する。
そして市場は効率的に動くと仮定している。
効率的とは?
合理的と言えばわかるかな?例えば価格が高くなれば売り注文が増え
ていく。価格が下がれば買い注文が増えていくというのは合理的だね。
ですね。買うのは安ければ安い方が有利ですし、売るのは高ければ高いほ
ど有利ですからね。
しかし、実際には価格がどんどん上昇している様子を見て、買いたくな
る投資家がいる。価格がどんどん下がっているのを知って、売り決済を
しなくてはと思う投資家がいる。
なるほど。
合理的ではないが、それが現実。それを見抜くのが行動ファイナンス。
【2、 行動ファイナンスを投資にどう生かすか?】
市場というのは実は合理的に出来ていない。その市場のゆがみこそ、
ビジネスチャンス。私はよくこういう話をする。「トレードをしていないとき
に東大生のように優秀な人間がトレードをした瞬間に高校生程度の判
断力になる」と。
欲や恐怖心から目がくらむんですね。
たとえば、A 社の株を買うと、A 社に対する愛着が生まれ、一時的に株
価が下がっても、いつか立ち直ってくれると期待をしてしまう。
あります、あります。
分析した結果、円安になると思ってドル円を買ったとする。その後、ニュ
ースを見ても新聞を見ても、円安になるという材料しか目に入らず、円
高になる材料は見過ごしてしまう。
あります、あります。円高になる材料は見ても頭に残らないんですね。
そして、価格が大きく思惑と外れてパニックになったら、その男は幼稚
園生程度の判断力となる。
東大生が幼稚園生の判断力に!?
パニック相場で正しい判断が出来る投資家はほとんどいない。後から
振り返って、なんであそこであんな馬鹿な投資行動をしたのかと思って
しまう。しかし、その場では恐怖心から正しい判断が出来ないのだよ。
あります、あります。
行動ファイナンスの中にこういう有名な内容がある。
投資家はパニックに陥ったときに正しい判断が出来ない。
そして同じ過ちを繰り返す。
繰り返すんですね。
個人個人で言えば、学習して改善していきそうなものだけど、投資家全
体としては同じ失敗を繰り返す。
なるほど。
ブラックマンデーの下げも、リーマンショックの下げも、その他の暴落相
場も実は分析すると似たような動きをしているのがわかる。
パニックに陥った投資家は同じ投資行動をするんですね。
それをプロは狙う。実は暴落相場こそがプロの投資家に取って一番取
りやすい相場なのだよ。
一般投資家は恐怖で正しい判断が出来ない。そしてそこで取る投資行動は
過去のパニック相場で投資家が取る投資行動とほとんど同じと。
とすると、一番読みやすいということがわかるかな?
確かに。
行動ファイナンスの勉強はこれからの投資家にとって非常に大事な物
となるだろう。本日はここまで。
ありがとうございました。