乳酸菌発酵酒粕を用いた生菌含有アルコール飲料

乳酸菌発酵酒粕を用いた生菌含有アルコール飲料
誌名
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan
ISSN
09147314
著者
中川, 良二
濱岡, 直裕
巻/号
107巻8号
掲載ページ
p. 605-610
発行年月
2012年6月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat
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研究報文
乳酸菌発酵酒粕を用いた生菌含有アルコール飲料
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I
I良二*演関車裕
(地方独立行政法人北海道立総合研究機構食品加工研究センタ
平成 2
3年 1
1月 1
4臼受理
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07 CFU/mlu
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目
腎
司
Keywords:酒粕,乳酸菌,発欝,アルコール飲料,フ。ロバイオティック
緒嘗
清酒の製造数量は 1
9
7
3年の 1
,
42
1千 k
lをピークに
大につながるものと期待されている。井上らは酒粕と
焼酎粕の混合物 (
S
SL)を乳酸菌で再発酵させた素材
(
L
F
S
S
L
) で,本態性高血圧自然発症ラット (SHR)
0
0
9年には 4
6
9千 k
lとなり,ピーク時の約
減少し 2
の血肢に及ぼす影響を調べ, LFSSL摂取群が対照群
33%まで縮小している。このような清 j
誌を中心とした
である SSLに比べて SHRの血庄を有意に降下させた
酒類離れが続く市場にあって,最近の消費者志向は健
)。大浦らはマウスを用いた実験により,
ことを示した 5
康的で飲みやすい低アルコール化に向いている。
乳酸留で発酵させた酒粕に肥満,健志疲,脱毛の抑制
夜の穣造副産物である酒粕は栄養価の高い
清i
など健康に関係する機能のあることを示した 6)。また,
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J
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笥,粕汁,漬物などに利用されてき
入江らは溜粕を乳酸菌発酵させてつくった食品の摂取
た。また,近年は生活習'憤病に関わる様々な生運活性
により,悪酔いの原因物質となるアセトアルデヒドの
が報告され,その機能性が注目されているトn。さら
血中濃度を低減できることを見出した 7)。
食素材であり,
に乳酸菌で発醇した酒粕は機能性をより高めた新た
我々は漬物から新たな L
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s属乳酸菌を分
な高付加価値食素材として,酒粕の利用および用途拡
高佐し , L
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sρ
lantarumHOKKAIDO (
HOK-
本論文については*印あて連絡ください。
第 1
0
7巻 第 8 考
6
0
5
中川.i
資問・乳酸菌発酵j
酉粕を用いた生菌含有アルコール飲料
KAIDO株)と名付けた針。当該乳酸頭株は消化液耐
45μm.Mil上清をシリンジフィルター(ポアサイズ 0.
性を有し,生きて腸まで到達することや免疫機能活性
l
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) で液過後. HPLCに 供 し た 。 移 動 相 に は 5
などが示されている 9,
1
0
)。また,植物原料を良く発酵
mmol/lp
-トルエンスルホン酸水溶液を用い,検出試
し,豆乳を用いた場合には HOKKAIDO株の単一磁
薬 は 5mmo
l
/
lp
-ト ル エ ン ス ル ホ ン 酸 お よ び 1
0
0
株で晴好'性に優れたヨーグルト様の発酵豆乳ができ,
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/
lEDTAを含む 2
0mmo
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lB
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s水溶液とし,
μmo
この食品がシンパイオティクスとして機能することが
電気伝導度により検出した。注入景:1
0
μ1.流迷.
示 唆 さ れ て い る 9,11)。そこで,本研究では酒粕を
0
.
8mll分,カラム混度
HOKKAIDO株で発酵させ生きた乳酸菌を含む低ア
機酸濃度は,標準品(和光純薬)のどーク商穣と比較
ルコール飲料を試作した。
して算出した。
40tの条件で行った。各有
6
. 糖鷲分析
実験方法
発酵酒粕の糖質分析は. CARBOSepCOREGEL-
1.供試乳霊童醤および、培養条件
.
8m m
.
ID. Transgenomic社 ) を
87N (
3
0
0mmlx 7
供試乳酸菌 HOKKAIDO株は MRS液体培地 (
L
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-
装備した HPLC (鳥津製作所)を用いて実施した。各
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) を用い. 30t. 2
4時間培
サンプルは遠心分離 (
8
.
0
0
0rpm. 5分間)により固
養した。培養液は遠心分離 (
8
.
0
0
0rpm. 1
5分間)後,
液分離し上清をシリンジフィルター(ポアサイズ
菌体をリン酸緩衝生理食塩水に懸濁し,同溶液で 3度
慮、過後. HPLCに供した。移
0.20μm. M
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) でj
遠心洗浄後,以下の実験に供した。
動棺には水を用い,注入量
.
6mll分
,
1
0
μ 1.流速:0
2
. HOKKAIDO株のアルコール存在下での増殖
. 検出:RIの条件にて行った。各
カラム温度:8
5t
アルコール (
5
.1
0
. 15%) を含む MRS液体培地に
糖費濃度は,標準品(和光線薬)のピーク面積と比較
4
CFU/ml)を添
HOKKAIDO株(最終濃度:1
.8x 1
0
して算出した。
加し 3
0tで 7日間の培養を行い. pHおよび生菌数
7
. タウリンとオルニチンおよびシトルリンの分析
の経待変化を調べた。 pHは pHメーター (HORI-
サンプル溶液を凍結乾燥機 (
L
L
6
. LABCONCO)
BA) を用いて測定した。生菌数は MRS寒天培地を
にて乾燥した後. 8
0%エタノールを加え,室温に 3
用いて培養し出現コロニー数から算出した。
時間霞いた。遠心分離 (
3
.
0
0
0rpm. 1
0分間)後の上
3
. 酒粕の発酵試験
清を減産乾回し. 0
.
0
2N塩酸で適宜希釈し. 0.20μm
原料の酒粕は,田中酒造(株)から提供された板粕
のフィルターでろ過後,自動アミノ酸分析計し8
9
0
0
(原料米品種:琴星)を使用した。この溜粕に 9
(日立製作所)を用いて測定した。
の水を入れ, ミキサーで粉砕した。オートクレーブで
結果および考察
殺菌 (
1
0
5t. 5分)した後. HOKKAIDO株(最終
濃度・ 2.
1X 1
07CFU/m!) を添加し,一定時間. 3
0
1
. HOKKAIDO株のアルコール存在下での増磁
℃で発酵した(以下,これを発酵酒粕と略す)。発酵
MRS培地を用いて HOKKAIDO株の 5
.1
0
.1
5
.
l日毎に pHおよび生菌数を調べた。
2
0%アルコール存在下での増殖を調べた。 Fig
.1に示
4
. アルコールを添加した発酵酒粕の保存試験
すように. 5%アルコール添加霞では発酵 l臼後に最
1日発酵したもの)にアルコールを添加
発酵酒粕 (
09CFU/m!) となり,無添加区 (
4.
1
大生直数(1.8X 1
(
5
.1
0
.1
5%)した。これを 6tの冷蔵庫で 3
5日間
保存し生蔚数の経時変化を調べた。
5
. 有機酸分析
発 酵 酒 粕 の 有 機 酸 分 析 は . ShimpackSCR102H
(
3
0
0mmlx 8m m
.
ID. 島津製作所)を 2本TI1i:列接続
X
9
1
0
CFU/m!) と同様に 1ml当たり 1
09以上まで増
殖した。その後,生菌数は徐々に減少し発欝 7日後
には 1
.3X 1
07CFU/mlとなった。 1
0%および 1
5%ア
ルコール添加医では発酵 2日後に最大生菌数となったが,
それぞれ 8
.
5x 1
05CFU/mlお よ び 4
.
8x 1
05CFU/ml
した HPLC有機酸分析システム(島津製作所)を用
にとどまった。 2
0%アルコール添加底では発酵 1日
いて実施した。各サンプルは水で 1
0倍希釈した後,
後に検出限界以下となり,増殖が確認できなかった。
遠心分離 (
8
.
0
0
0rpm. 5分潤)により国液分離し,
発酵 7日後の pHを測定すると,無添加芭および 5 %
6
0
6
醸 協 (
2
0
1
2
)
中}
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笠間:乳酸菌発酵j
訓告を用いた主主萄含有アルコール飲料
1
0
エン酸 (
8
3mg/
j
), リンゴ酸 (
8
4mglI),コハク酸
記
ε
(
、
E
、
コ 8
(
1
1
1mg/
j
),乳酸 (
4
1mg/
j
),酢酸 (
17mg/
j
) が検
, クエン盟主およびリンゴ酸が検
出された。発酵 1B後
d
出
~ 6
出浪界以下となったが,コハク酸は発酵 4日後までほ
7
0倍
ぼ一定であった。一方,乳酸は発酵 l日後に約 1
‘ 4
.
且
5c
ω
の7
,
0
3
0m
g
/
lまで増加し,発酵 4B後には約 240倍
開
~
国
o
,
9
8
0m
g
/
lに透した。雪下酸は発酵 1日後に約 6倍
の9
2
の1
0
9m
g
/
lになり,発酵 4日後には約 1
2倍の 2
0
6
m
g
/
lまで増加した。
位
+
四
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, 0:5% ,鷹.
10%,
口
・ 15%,
.
.
.
.
:20%.
アルコール添加区でそれぞれ pH3
.
9
8および pH4
.
0
5
酒粕に含まれる主な少糖類はグルコース,イソマル
トース,イソマ jレトトリオースである
5
)
Fig.2に示
すように,発酵前の滋粕溶液からはグルコース,イソ
6
0
マルトース,イソマルトトリオースがそれぞれ 5
mg/
.
l 180mg/
.
l 160mg/l検出された。発酵 1日後,
1
0m
g
/
l
グルコースおよびイソマルトースはそれぞれ 2
(当初量の1/2以下)および 5
0m
g
/
l(
当初最の1/4
以下)となり,発酵 2日後にはほぼ全長が分解された。
まで下がっていたのに対して, 1
0%以上のアルコー
ル添加区では pH5
.
5
5以上(発酵前:pH5
.
8
5
) であり,
十分に乳酸発酵したとはいえない値であった。
朱は 5 %アルコール
以上の結果から, HOKKAIDO*
存在下まで十分に増殖することが示され,アルコール
告を原料に乳酸発酵が可能であろうと考えら
含有の酒1
れた。しかし,日本食品標準成分表によると,溺粕に
程度含まれていると記されて
はアルコール分が約 8 %
いることから,原料によっては加熱処理等でアルコー
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g
!
l
ル濃度を下げるなどの対策が必要である。また,迅速
かっ効率的に乳酸菌を増やすには,加熱処環等でアル
6
0
0
コールを完全に除いた滋粕を用い,後からアルコール
を添加し調整する方が適当で、あろうと思われる。
5
0
0
5
コ
込4
0
0
2
. 酒粕の発酵試験
酒粕を原料に HOKKAIDO株が増殖し,十分な乳
0
酸発群が可能かを鳴らかにするため酉粕を水で 1
倍希釈後,加熱殺菌した酒粕溶液による発酵試験を行
2
0
0
い,生菌数, pH.有機酸および少糖類の経狩変化を
1
0
0
調べた。
7
.
1X 1
0CFU/ml,pH5
.
18であっ
発酵前は生菌数 2
08CFU/m
.
l pH
たが,発酵 1日後には生菌数1.8x 1
3.
19になった。その後,発酵経過と共に生菌数が緩や
.
3X 1
07CFU/m
.
l pH
か に 減 少 し 発 酵 4日後には 6
。
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2
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白
3
.
0
6になった。
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e1に示すように,発酵前の酒粕溶液からはク
第 1
0
7巻 第 8 号
6
0
7
仁
村1
1
.i
賓岡.乳覇支菌発酵j
罰粕を用いた生強含有ア jレコール飲料
一方,イソマルトトリオースは発酵 4日後まで一定で
あり,当初最を維持した。
以上の結果から,酒粕は HOKKAIDO株の増殖に
適した原料であった。また
乳酸菌種の中には乳酸の
他に幾種類かの有機酸を生成するヘテロ型乳酸菌が存
在するが,これらの菌種で発酵させたものは香りや味
が良くないなどの欠点が見られる。*モ型乳酸菌であ
.βlantarumに属する HOKKAIDO株は,発酵に
るL
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9.
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n:
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g
/
l
より主な少糖類であるグルコースとイソマルトースを
分解し,マイルドな酸味の乳酸を主として産生した。
成分の l日の薬理効果を期待した摂取 8安最は,既知
爵粕からは酸味をもった爽やかさ
このことから,発車事 j
文献の試験データや市販の健康飲食品の捻奨量から 3
成分ともに数百 mg程度と推定される。したがって,
のある酒類ができると考えられる。
F
i
g
.
1に示したように, MRS培地を用いた増殖試験
当該発酵溜粘のみの飲食で薬理効果を期待することは
では,生菌数が pH4以上で1.8X 1
09CFU/mlまで増
難しいが,他の飲食物と綴合せて有効レベルに到達す
加した。また,豆乳を原料に発酵を行った場合,発酵
るためのアイテムとしての活用が考えられる。
9
1日f
f
tには1.0X 1
0CFU/m
,l pH5
.
0となった針。し
8
0
CFUI
か し 本 実 験 で は 発 酵 1臼後,生菌数1.8x1
L
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sおよび P
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c
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d
i
一方,水谷らは乳酸菌 (
l
a
c
t
i
c
i
) 発酵した芋焼樹粕から約 3
0
0mg/lのオルニ
ml,pH3.
19であり,前記試料での結果と比較して pH
チンが生成したことを報告した
が低いにもかかわらず,菌数が少なかった。この要悶
釈していない原料粕を使った結果であり,本実験では
として,本実験で、は初発菌数が多かったこと関粕が
酒粕を水で 1
0倍希釈したものを用いた億(約 3
0mgl
HOKKAIDO株の増殖に優れた培地であったことなど
J)であることから,乳酸菌株のオルニチン生成能は
が考えられるが,何れにせよ本実験における条件では
ほぼ問等ではないかと考えられる。また,タウリンお
。この値は水で希
1
7
)
2
4時間以内に生菌数が最大になった可能性があり,
よびシトルリンは発酵前の滋粕からは検出されず乳酸
lEしい最大生蘭数を求めるには,より短待問での変化
菌発酵により生成したが,斉藤らは乳酸菌発酵でつら
を調べる必繋があった。
れる乳製品のヨーグルトとチーズのタウリン最を分析
3
. 発酵酒粕のタウリンとオルニチンおよびシトル
.
5
1mg/100gおよび 0
.
12mg/100gであ
しそれぞれ 0
り,非常に微量であったことを報告した
リン量
1
8
)0
Matsudo
機能性成分として知られるタウリン,オルニチンお
らは発欝食品・飲料(醤油,ワイン,ビール,乳酸菌
よびシトルリン蚤の発酵過程における経持変化を調べ
飲料)中のシトルリン最を分析し醤泌から 6
4
.
9-
a
b
l
e2に示すように,タウリンおよびシトルリ
た
。 T
3
3
8ppm検出されたが,乳酸菌飲料などの食品から
ンは発酵前の酒粕からは検出されないが,発酵 1日後
は検出されなかったことを示した
。これらの報告
1
9
)
にはそれぞれ 4
.
0mg/lおよび 0
.
8mg/lとなり,その
以外に既知の発酵飲料や酒粕加工製品等に含まれるタ
後ほぼ一定量を維持した。オルニチンは発酵前には
ウリン,オルニチンおよびシトルリン最を示すデータ
1
4
.
3mg/l含まれていたが,発酵 l日後には 1
9.
1mg/l
は見つけられなかった。
に 増 加 し 発 酵 3日 後 に は 当 初 最 の 約 2倍の 2
7
.
3
以上の結果から,これら成分の当該発酵溺粕中の含
有量はそれ穏多くはないが,酒粕を乳酸菌発酵するこ
mg/lに透した。
タウリンは含硫アミノ酸様化合物で,コレステロー
ル低下作用や肝機能の改善作用が示唆されている 12,
1
3
)。
とで得られる新たな機能成分として,今後の研究進展
が期待される。
また,シトルリンおよびオルニチンはアミノ酸のー穏
4
. アルコールを添加した発酵滋粒の保存試験
で,シトルリンには血管内皮機能や疲労回復など14,15)
乳酸菌含有の製品を想定した場合,保存期間中の生
オルニチンには成長ホルモンの分泌、促進やアンモニア
菌数減少が問題となる O そこで,初発の生菌数を1.8
代謝の向上などの機能が示唆されている
6
0
8
。これら
1
6
)
8
x1
0
CFU/mlとした発酵酒粕にアルコールを添加
醸 協 (
2
0
1
2
)
中J
I
I.i
玄関'乳酸 j
!/!j発酵溜粕を用いた生援i
含有アルコール飲料
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n,. :0%,0:
5%,阻 10%,口:15%
(アルコールの最終濃度:5
,1
0, 1
5%)した後, 6t
要約
の冷蔵庫中で 3
5日間保存し,生菌数の変化を調べた o
本研究では i
酉粕を L
.ρlantarumHOKAKIDO
F
i
g
.
3に示すように,アルコール無添加誌では, 2
0E
I
8
7
後に1.2X 1
0
CFU/ml,3
5日 後 に 9
.
0X 1
0
CFU/ml
となった。 5 %アルコール i
呑力日誌では 2
0E
I:
f
灸でl.l x
1
08CF
U/m,
l 3
5臼後で 5
.
6X 1
07CFU/mlとなり,無
(HOKAKIDO株 ) で 発 酵 さ せ , 生 き た 乳 酸 菌 を 含 む
低アルコール飲料を試作した。
加熱殺菌後, 1
0倍希釈した溺粕 (
pH5
.
18
) に HOK
司
7
添加区より幾分少ない生磁数で推移した。 1
0%アル
KAIDO株を 2
.
1X 1
0CF
U/
ml添 加 し 3
0tで発酵さ
コール添加庄では, 2
0日後および 3
5日後にそれぞれ
8
.2,乳酸頭数1.
8x 1
0
CFUI
せると, 1日後には pH3
3
.
3X 1
07CFU/mlお よ び 2
.
5X 1
07CFU/mlとなり,
mlになった。また,主たる少糖類であるグルコースと
ある程度の生菌数を維持した。一方, 1
5%アルコー
/
2以下 (
0.
21mg/m
l
)お
イソマルトースが当初最の 1
ル添加区では, 2
0日 後 お よ び 3
5日 後 に そ れ ぞ れ 2
.
5
1
4以 下 (
0
.
0
5mg/ml
) に減少し乳酸が約 1
7
0
よび 1
X
5
1
0 CFU/mlお よ び 9
.
6X l
O
'
lC
FU/mlとなり,生
7
0 個 Iml以
乳等省令に定義される乳酸菌飲料には 1
5日
上の生菌含有が義務づけられている。本実験の 3
間低温保存試験において
倍 (
7
.
0
3mg/ml
) に増加した。このことから,発酵
後の滋粕からは酸味をもった爽やかさのある酒類がで
菌数の著しい減少がみられた。
1
0% ア ル コ ー ル 含 有 の 発
きると考えられた。さらに
ルリンの産生が認められた。
7
酵酒粕が 1
0
偶 Iml以上の主主菌数を含んで、いたことか
ら,乳酸磁飲料に毘敵する主主菌含有の低アルコール飲
発苦手により機能性成分と
して知られるオルニチンの増加,タウリンおよびシト
当 該 発 酵 酒 粕 ( 初 発 の HOKKAIDO株 生 頭 数 1 .8
X
1
08CFU/ml)にアルコールを 5- 15%i~力日し, 3
5
料をつくることが可能であろうと t
霊祭される。したが
日間の低温保存試験を行った。その結果, 1
0%アル
って,今後,当該発酵溺粕を主原料に砕今の消費者志
07CFU/ml以上の生菌数を維持した。
コール添加区で 1
向に合った健康的で飲みやすい低アルコール飲料の製
この菌数は乳酸菌飲料に匹敵するので当該発酵酒粕を
品化が期待される。
原料に昨今の消費者志向に合った健康機能性を想定し
た低アルコール欽料の製品化が期待された。
第 1
0
7巻 第 8 号
6
0
9
中)
1
1・j
察関:乳酸菌発欝 j
霞粕を用いた主主菌含有アルコール欽料
1
0
) 中)
1
1良二,能登裕子,八十川大輔,長島浩二,
謝辞
藤井暢弘:平成 1
7年度日本農芸化学会大会要
本実験を遂行するにあたり酉粕の提供等のご協力
を頂きました国中酒造株式会社の田中…良社長,寺尾
光司氏をはじめ皆様に感謝いたします。
参考文献
1
) 持田和美,栗林喬,斉藤憲司,菅原正義:日本
7
.7
8
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即
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) 井上美保,石原伸治,渡辺敏郎,永井史郊,辻
啓介:醸協. 1
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) 大浦新,鈴木佐知子,入江元子,秦洋二,安部
康久
0
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8(
2
0
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)
自妥協. 1
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) 入江元子,松村憲吾,鈴木佐知子,金森洋治,
秦洋二.目妥協. 1
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) 中川良二,八十川大輔,長島浩二:特許第
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旨集. P.
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品加工研究センター研究報告. 8
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atsuyama.T
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.
3
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0
2(
2
0
0
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)
1
4
) 森底堅彦,落合将之,ー森下幸治,林主主志雄:日本
薬理学雑誌 1
3
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.
1
8
5(
2
0
1
0
)
1
5
) K
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4
6
2
5
0(
2
0
1
1
)
1
6
) 小 松 美 穂 食 品 と 開 発 .4
0
.6
2
6
4(
2
0
0
5
)
1
7
) 水谷政美,山本英樹,越智洋,高山清子,工藤
哲三:宮崎県工業技術センター・宮崎県食品開
発センター研究報告. 5
2
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5
1
0
1(
2
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1
8
) 斉藤貴一,堀江正一,徳丸雅一・食品衛生学雑
E
五3
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0
4
0
5(
1
9
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)
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1
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)
B
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司
B本食品科学工学会誌. 5
2
.1
4
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