乳酸菌発酵酒粕を用いた生菌含有アルコール飲料 誌名 日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan ISSN 09147314 著者 中川, 良二 濱岡, 直裕 巻/号 107巻8号 掲載ページ p. 605-610 発行年月 2012年6月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所 Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat J .B r e w .S o c .J a p a n .Vo1 .1 0 7 , N o .8 , p .6 0 5- 6 1 0( 2 0 1 2 ) 研究報文 乳酸菌発酵酒粕を用いた生菌含有アルコール飲料 中J I I良二*演関車裕 (地方独立行政法人北海道立総合研究機構食品加工研究センタ 平成 2 3年 1 1月 1 4臼受理 P r o b i o t i ca l c o h o l i cb e v e r a g emadefromf e r m e n t e ds a k ec a k ew i t hl a c t i ca c i db a c t e r i a R y o j iNAKAGAWAandN a o h i r oHAMAOKA ( H o k k a i d oR e s e a r c hO r g a n i z a t i o n ,FoodP r o c e s s i n gR e s e a r c hC e n t e ,r 5 8 9 4BunkyodaiMidoriMachi,Ebetsu,Hokkaido “ 0 6 9 0 8 3 6 ) I nt h i ss t u d y,wea t t e m p t e dt op r o d u c eap r o b i o t i ca l c o h o l i cb e v e r a g efromf e r m e n t e ds a k ec a k ew i t h 0 f o l dd i l u t e加 a t s t e r i l i z e ds a k ec a k ewasf e r m e n t e du s i n gLactobacillus l a c t i ca c i db a c t e r i a Whena1 ρlantarumHOKKAIDOa t30tf o ro n eday ,l a c t i ca c i db a c t e r i a lnumberandpHwere1 .8x1 08CFU/ml andpH3 . 2,r e s p e c t i v e l y .Th 巴f e r m e n t e dp r o d u c ta l s oc o n t a i n e d0 . 21mg/mlg l u c o s eand7 . 0 3m g / m l l a c t i c ot h ε r e s u l t i n gp r o d u c twass l i g h t l ys w e e tw i t has t r o n ga c i dt a s t e .Moreover,w巴 f o u n dt h a tt h e a c i d,s 註u r i n eandc i t r u l l i n e,whicha r eknowna s f e r m e n t e dp r o d u c tc o n t a i n e dh i g h e ro r n i t h i n eanda c q u i r e dt f u n c t i o n a lf o o dm a t e r i a l s .I nalowt e m p e r a t u r es t o r a g et e s to ft h ef 巴 ,r mentedp r o d u c tw i t ha l c o h o lf o r3 5 twaso b s e r v e dt h a tHOKKAIDOs t r a i ne x i s t e d>1x 1 07 CFU/mlu n t i lt h ep r 巴s e n c eo f10%a l c o d a y s,i . lTher e s u l t ss u g g e s tt h a tap r o b i o t i candanynewf u n c t i o n a ll o wa l c o h o l i cbev 巴r a g 巴c a nb emanufac h o t u r e dfromf e r m e n t e ds a k 巴c a k ew i t hl a c t i ca c i db a c t e r i a 目 腎 司 Keywords:酒粕,乳酸菌,発欝,アルコール飲料,フ。ロバイオティック 緒嘗 清酒の製造数量は 1 9 7 3年の 1 , 42 1千 k lをピークに 大につながるものと期待されている。井上らは酒粕と 焼酎粕の混合物 ( S SL)を乳酸菌で再発酵させた素材 ( L F S S L ) で,本態性高血圧自然発症ラット (SHR) 0 0 9年には 4 6 9千 k lとなり,ピーク時の約 減少し 2 の血肢に及ぼす影響を調べ, LFSSL摂取群が対照群 33%まで縮小している。このような清 j 誌を中心とした である SSLに比べて SHRの血庄を有意に降下させた 酒類離れが続く市場にあって,最近の消費者志向は健 )。大浦らはマウスを用いた実験により, ことを示した 5 康的で飲みやすい低アルコール化に向いている。 乳酸留で発酵させた酒粕に肥満,健志疲,脱毛の抑制 夜の穣造副産物である酒粕は栄養価の高い 清i など健康に関係する機能のあることを示した 6)。また, i J i 笥,粕汁,漬物などに利用されてき 入江らは溜粕を乳酸菌発酵させてつくった食品の摂取 た。また,近年は生活習'憤病に関わる様々な生運活性 により,悪酔いの原因物質となるアセトアルデヒドの が報告され,その機能性が注目されているトn。さら 血中濃度を低減できることを見出した 7)。 食素材であり, に乳酸菌で発醇した酒粕は機能性をより高めた新た 我々は漬物から新たな L a c t o b a c i l l u s属乳酸菌を分 な高付加価値食素材として,酒粕の利用および用途拡 高佐し , L a c t o b a c i l l u sρ lantarumHOKKAIDO ( HOK- 本論文については*印あて連絡ください。 第 1 0 7巻 第 8 考 6 0 5 中川.i 資問・乳酸菌発酵j 酉粕を用いた生菌含有アルコール飲料 KAIDO株)と名付けた針。当該乳酸頭株は消化液耐 45μm.Mil上清をシリンジフィルター(ポアサイズ 0. 性を有し,生きて腸まで到達することや免疫機能活性 l i p o r e ) で液過後. HPLCに 供 し た 。 移 動 相 に は 5 などが示されている 9, 1 0 )。また,植物原料を良く発酵 mmol/lp -トルエンスルホン酸水溶液を用い,検出試 し,豆乳を用いた場合には HOKKAIDO株の単一磁 薬 は 5mmo l / lp -ト ル エ ン ス ル ホ ン 酸 お よ び 1 0 0 株で晴好'性に優れたヨーグルト様の発酵豆乳ができ, l / lEDTAを含む 2 0mmo l / lB i s t r i s水溶液とし, μmo この食品がシンパイオティクスとして機能することが 電気伝導度により検出した。注入景:1 0 μ1.流迷. 示 唆 さ れ て い る 9,11)。そこで,本研究では酒粕を 0 . 8mll分,カラム混度 HOKKAIDO株で発酵させ生きた乳酸菌を含む低ア 機酸濃度は,標準品(和光純薬)のどーク商穣と比較 ルコール飲料を試作した。 して算出した。 40tの条件で行った。各有 6 . 糖鷲分析 実験方法 発酵酒粕の糖質分析は. CARBOSepCOREGEL- 1.供試乳霊童醤および、培養条件 . 8m m . ID. Transgenomic社 ) を 87N ( 3 0 0mmlx 7 供試乳酸菌 HOKKAIDO株は MRS液体培地 ( L a c - 装備した HPLC (鳥津製作所)を用いて実施した。各 t o b a c i l l iMRSb r 叫 h .D i f c o ) を用い. 30t. 2 4時間培 サンプルは遠心分離 ( 8 . 0 0 0rpm. 5分間)により固 養した。培養液は遠心分離 ( 8 . 0 0 0rpm. 1 5分間)後, 液分離し上清をシリンジフィルター(ポアサイズ 菌体をリン酸緩衝生理食塩水に懸濁し,同溶液で 3度 慮、過後. HPLCに供した。移 0.20μm. M i l l i p o r e ) でj 遠心洗浄後,以下の実験に供した。 動棺には水を用い,注入量 . 6mll分 , 1 0 μ 1.流速:0 2 . HOKKAIDO株のアルコール存在下での増殖 . 検出:RIの条件にて行った。各 カラム温度:8 5t アルコール ( 5 .1 0 . 15%) を含む MRS液体培地に 糖費濃度は,標準品(和光線薬)のピーク面積と比較 4 CFU/ml)を添 HOKKAIDO株(最終濃度:1 .8x 1 0 して算出した。 加し 3 0tで 7日間の培養を行い. pHおよび生菌数 7 . タウリンとオルニチンおよびシトルリンの分析 の経待変化を調べた。 pHは pHメーター (HORI- サンプル溶液を凍結乾燥機 ( L L 6 . LABCONCO) BA) を用いて測定した。生菌数は MRS寒天培地を にて乾燥した後. 8 0%エタノールを加え,室温に 3 用いて培養し出現コロニー数から算出した。 時間霞いた。遠心分離 ( 3 . 0 0 0rpm. 1 0分間)後の上 3 . 酒粕の発酵試験 清を減産乾回し. 0 . 0 2N塩酸で適宜希釈し. 0.20μm 原料の酒粕は,田中酒造(株)から提供された板粕 のフィルターでろ過後,自動アミノ酸分析計し8 9 0 0 (原料米品種:琴星)を使用した。この溜粕に 9 (日立製作所)を用いて測定した。 の水を入れ, ミキサーで粉砕した。オートクレーブで 結果および考察 殺菌 ( 1 0 5t. 5分)した後. HOKKAIDO株(最終 濃度・ 2. 1X 1 07CFU/m!) を添加し,一定時間. 3 0 1 . HOKKAIDO株のアルコール存在下での増磁 ℃で発酵した(以下,これを発酵酒粕と略す)。発酵 MRS培地を用いて HOKKAIDO株の 5 .1 0 .1 5 . l日毎に pHおよび生菌数を調べた。 2 0%アルコール存在下での増殖を調べた。 Fig .1に示 4 . アルコールを添加した発酵酒粕の保存試験 すように. 5%アルコール添加霞では発酵 l臼後に最 1日発酵したもの)にアルコールを添加 発酵酒粕 ( 09CFU/m!) となり,無添加区 ( 4. 1 大生直数(1.8X 1 ( 5 .1 0 .1 5%)した。これを 6tの冷蔵庫で 3 5日間 保存し生蔚数の経時変化を調べた。 5 . 有機酸分析 発 酵 酒 粕 の 有 機 酸 分 析 は . ShimpackSCR102H ( 3 0 0mmlx 8m m . ID. 島津製作所)を 2本TI1i:列接続 X 9 1 0 CFU/m!) と同様に 1ml当たり 1 09以上まで増 殖した。その後,生菌数は徐々に減少し発欝 7日後 には 1 .3X 1 07CFU/mlとなった。 1 0%および 1 5%ア ルコール添加医では発酵 2日後に最大生菌数となったが, それぞれ 8 . 5x 1 05CFU/mlお よ び 4 . 8x 1 05CFU/ml した HPLC有機酸分析システム(島津製作所)を用 にとどまった。 2 0%アルコール添加底では発酵 1日 いて実施した。各サンプルは水で 1 0倍希釈した後, 後に検出限界以下となり,増殖が確認できなかった。 遠心分離 ( 8 . 0 0 0rpm. 5分潤)により国液分離し, 発酵 7日後の pHを測定すると,無添加芭および 5 % 6 0 6 醸 協 ( 2 0 1 2 ) 中} I I.i 笠間:乳酸菌発酵j 訓告を用いた主主萄含有アルコール飲料 1 0 エン酸 ( 8 3mg/ j ), リンゴ酸 ( 8 4mglI),コハク酸 記 ε ( 、 E 、 コ 8 ( 1 1 1mg/ j ),乳酸 ( 4 1mg/ j ),酢酸 ( 17mg/ j ) が検 , クエン盟主およびリンゴ酸が検 出された。発酵 1B後 d 出 ~ 6 出浪界以下となったが,コハク酸は発酵 4日後までほ 7 0倍 ぼ一定であった。一方,乳酸は発酵 l日後に約 1 ‘ 4 . 且 5c ω の7 , 0 3 0m g / lまで増加し,発酵 4B後には約 240倍 開 ~ 国 o , 9 8 0m g / lに透した。雪下酸は発酵 1日後に約 6倍 の9 2 の1 0 9m g / lになり,発酵 4日後には約 1 2倍の 2 0 6 m g / lまで増加した。 位 + 四 O O 2 3 4 5 6 7 C u l t i v a t i o nt i m e( d a y s ) F i g . l E f f e c t so fethanol concentration on growtho ft h eHOKKAIDOs t r a i n . E t h a n o lc o n c e n t r a t i o n,.:0% , 0:5% ,鷹. 10%, 口 ・ 15%, . . . . :20%. アルコール添加区でそれぞれ pH3 . 9 8および pH4 . 0 5 酒粕に含まれる主な少糖類はグルコース,イソマル トース,イソマ jレトトリオースである 5 ) Fig.2に示 すように,発酵前の滋粕溶液からはグルコース,イソ 6 0 マルトース,イソマルトトリオースがそれぞれ 5 mg/ . l 180mg/ . l 160mg/l検出された。発酵 1日後, 1 0m g / l グルコースおよびイソマルトースはそれぞれ 2 (当初量の1/2以下)および 5 0m g / l( 当初最の1/4 以下)となり,発酵 2日後にはほぼ全長が分解された。 まで下がっていたのに対して, 1 0%以上のアルコー ル添加区では pH5 . 5 5以上(発酵前:pH5 . 8 5 ) であり, 十分に乳酸発酵したとはいえない値であった。 朱は 5 %アルコール 以上の結果から, HOKKAIDO* 存在下まで十分に増殖することが示され,アルコール 告を原料に乳酸発酵が可能であろうと考えら 含有の酒1 れた。しかし,日本食品標準成分表によると,溺粕に 程度含まれていると記されて はアルコール分が約 8 % いることから,原料によっては加熱処理等でアルコー T a b l e1 Changesi no r g a n i ca c i dc o m p o s i t i o nf o rf 巴 ,r m e n t a t e ds a k ec 紘巴 b yt h eHOKKAIDOs むa 立 句 F e r m e n t a t i o nt i m e Oday 1d a y 2d a y s 3d a y s 4d a y s C i t r i ca c i d 8 3 0 0 0 0 M a l i ca c i d 8 4 0 0 0 0 S u c c i n i ca c i d 1 1 1 1 2 4 1 0 7 1 2 5 1 2 7 , 0 3 0 8 , 4 5 9 9 , 8 6 2 9 , 9 8 0 L a c t i ca c i d 4 1 7 A c e t i ca c i d 1 7 1 0 9 1 4 8 1 8 6 2 0 6 C o n c e n t r a t i o n: m g ! l ル濃度を下げるなどの対策が必要である。また,迅速 かっ効率的に乳酸菌を増やすには,加熱処環等でアル 6 0 0 コールを完全に除いた滋粕を用い,後からアルコール を添加し調整する方が適当で、あろうと思われる。 5 0 0 5 コ 込4 0 0 2 . 酒粕の発酵試験 酒粕を原料に HOKKAIDO株が増殖し,十分な乳 0 酸発群が可能かを鳴らかにするため酉粕を水で 1 倍希釈後,加熱殺菌した酒粕溶液による発酵試験を行 2 0 0 い,生菌数, pH.有機酸および少糖類の経狩変化を 1 0 0 調べた。 7 . 1X 1 0CFU/ml,pH5 . 18であっ 発酵前は生菌数 2 08CFU/m . l pH たが,発酵 1日後には生菌数1.8x 1 3. 19になった。その後,発酵経過と共に生菌数が緩や . 3X 1 07CFU/m . l pH か に 減 少 し 発 酵 4日後には 6 。 O 2 3 4 C u l t i v a t i o nt i m e( d a y s ) F i g . 2 Changesi ns u g a rc o m p o s i t i o nf o rferm 巴n t eds a k ec a k ebyt h eHOKKAIDOs t r a i n . • :G l u c o s e,0: I s o m a l t o s e,属:I s o m a l t o t r i o s e 白 3 . 0 6になった。 T a b l e1に示すように,発酵前の酒粕溶液からはク 第 1 0 7巻 第 8 号 6 0 7 仁 村1 1 .i 賓岡.乳覇支菌発酵j 罰粕を用いた生強含有ア jレコール飲料 一方,イソマルトトリオースは発酵 4日後まで一定で あり,当初最を維持した。 以上の結果から,酒粕は HOKKAIDO株の増殖に 適した原料であった。また 乳酸菌種の中には乳酸の 他に幾種類かの有機酸を生成するヘテロ型乳酸菌が存 在するが,これらの菌種で発酵させたものは香りや味 が良くないなどの欠点が見られる。*モ型乳酸菌であ .βlantarumに属する HOKKAIDO株は,発酵に るL r n i t h i n 日 , a ndc i t r u l l i n e T a b l e2 Changesi nt a u r i n e,o c o n c e n t r a t i o nf o rf 巴 ,r menteds a k ec a k eby t h eHOKKAIDOs t r a i n . F臼r m e n t a t i o nt i m e oday 1d a y 2d a y s 3d a y s 4d a y s て r a u r i n e 0 4 . 0 3 . 8 5 . 0 4 . 3 C i t r u l l i n e 0 0 . 8 0 . 8 1 . 1 1 .0 巴 1 4 . 3 1 9. 1 2 0 . 3 2 7 . 3 2 2 . 5 O r n i t h i n C o n c e n t r a t i o n: m g / l より主な少糖類であるグルコースとイソマルトースを 分解し,マイルドな酸味の乳酸を主として産生した。 成分の l日の薬理効果を期待した摂取 8安最は,既知 爵粕からは酸味をもった爽やかさ このことから,発車事 j 文献の試験データや市販の健康飲食品の捻奨量から 3 成分ともに数百 mg程度と推定される。したがって, のある酒類ができると考えられる。 F i g . 1に示したように, MRS培地を用いた増殖試験 当該発酵溜粘のみの飲食で薬理効果を期待することは では,生菌数が pH4以上で1.8X 1 09CFU/mlまで増 難しいが,他の飲食物と綴合せて有効レベルに到達す 加した。また,豆乳を原料に発酵を行った場合,発酵 るためのアイテムとしての活用が考えられる。 9 1日f f tには1.0X 1 0CFU/m ,l pH5 . 0となった針。し 8 0 CFUI か し 本 実 験 で は 発 酵 1臼後,生菌数1.8x1 L .b r e v i sおよび P .a c i d i 一方,水谷らは乳酸菌 ( l a c t i c i ) 発酵した芋焼樹粕から約 3 0 0mg/lのオルニ ml,pH3. 19であり,前記試料での結果と比較して pH チンが生成したことを報告した が低いにもかかわらず,菌数が少なかった。この要悶 釈していない原料粕を使った結果であり,本実験では として,本実験で、は初発菌数が多かったこと関粕が 酒粕を水で 1 0倍希釈したものを用いた億(約 3 0mgl HOKKAIDO株の増殖に優れた培地であったことなど J)であることから,乳酸菌株のオルニチン生成能は が考えられるが,何れにせよ本実験における条件では ほぼ問等ではないかと考えられる。また,タウリンお 。この値は水で希 1 7 ) 2 4時間以内に生菌数が最大になった可能性があり, よびシトルリンは発酵前の滋粕からは検出されず乳酸 lEしい最大生蘭数を求めるには,より短待問での変化 菌発酵により生成したが,斉藤らは乳酸菌発酵でつら を調べる必繋があった。 れる乳製品のヨーグルトとチーズのタウリン最を分析 3 . 発酵酒粕のタウリンとオルニチンおよびシトル . 5 1mg/100gおよび 0 . 12mg/100gであ しそれぞれ 0 り,非常に微量であったことを報告した リン量 1 8 )0 Matsudo 機能性成分として知られるタウリン,オルニチンお らは発欝食品・飲料(醤油,ワイン,ビール,乳酸菌 よびシトルリン蚤の発酵過程における経持変化を調べ 飲料)中のシトルリン最を分析し醤泌から 6 4 . 9- a b l e2に示すように,タウリンおよびシトルリ た 。 T 3 3 8ppm検出されたが,乳酸菌飲料などの食品から ンは発酵前の酒粕からは検出されないが,発酵 1日後 は検出されなかったことを示した 。これらの報告 1 9 ) にはそれぞれ 4 . 0mg/lおよび 0 . 8mg/lとなり,その 以外に既知の発酵飲料や酒粕加工製品等に含まれるタ 後ほぼ一定量を維持した。オルニチンは発酵前には ウリン,オルニチンおよびシトルリン最を示すデータ 1 4 . 3mg/l含まれていたが,発酵 l日後には 1 9. 1mg/l は見つけられなかった。 に 増 加 し 発 酵 3日 後 に は 当 初 最 の 約 2倍の 2 7 . 3 以上の結果から,これら成分の当該発酵溺粕中の含 有量はそれ穏多くはないが,酒粕を乳酸菌発酵するこ mg/lに透した。 タウリンは含硫アミノ酸様化合物で,コレステロー ル低下作用や肝機能の改善作用が示唆されている 12, 1 3 )。 とで得られる新たな機能成分として,今後の研究進展 が期待される。 また,シトルリンおよびオルニチンはアミノ酸のー穏 4 . アルコールを添加した発酵滋粒の保存試験 で,シトルリンには血管内皮機能や疲労回復など14,15) 乳酸菌含有の製品を想定した場合,保存期間中の生 オルニチンには成長ホルモンの分泌、促進やアンモニア 菌数減少が問題となる O そこで,初発の生菌数を1.8 代謝の向上などの機能が示唆されている 6 0 8 。これら 1 6 ) 8 x1 0 CFU/mlとした発酵酒粕にアルコールを添加 醸 協 ( 2 0 1 2 ) 中J I I.i 玄関'乳酸 j !/!j発酵溜粕を用いた生援i 含有アルコール飲料 QunO (一 ε ¥ 比 コ I サ OMWOJ O ハ R.u ﹂a ω EコC 一時℃むけ甲山 M ∞ 伺 ヰ O 5 10 1 5 20 25 30 35 P r e s e r v a t i o ntime( d a y s ) 巴rd u r i n gp r e s e r v a t i o ni n F i g . 3 Changesi nb a c t e r i a lnumb a na l c o h o l i cb e v e r a g ep r e p a r e dfromf e r m e n t e ds a k e c a k ew i t ht h eHOKKAIDOs t r a i n . E t h a n o lc o n c e n t r a t i o n,. :0%,0: 5%,阻 10%,口:15% (アルコールの最終濃度:5 ,1 0, 1 5%)した後, 6t 要約 の冷蔵庫中で 3 5日間保存し,生菌数の変化を調べた o 本研究では i 酉粕を L .ρlantarumHOKAKIDO F i g . 3に示すように,アルコール無添加誌では, 2 0E I 8 7 後に1.2X 1 0 CFU/ml,3 5日 後 に 9 . 0X 1 0 CFU/ml となった。 5 %アルコール i 呑力日誌では 2 0E I: f 灸でl.l x 1 08CF U/m, l 3 5臼後で 5 . 6X 1 07CFU/mlとなり,無 (HOKAKIDO株 ) で 発 酵 さ せ , 生 き た 乳 酸 菌 を 含 む 低アルコール飲料を試作した。 加熱殺菌後, 1 0倍希釈した溺粕 ( pH5 . 18 ) に HOK 司 7 添加区より幾分少ない生磁数で推移した。 1 0%アル KAIDO株を 2 . 1X 1 0CF U/ ml添 加 し 3 0tで発酵さ コール添加庄では, 2 0日後および 3 5日後にそれぞれ 8 .2,乳酸頭数1. 8x 1 0 CFUI せると, 1日後には pH3 3 . 3X 1 07CFU/mlお よ び 2 . 5X 1 07CFU/mlとなり, mlになった。また,主たる少糖類であるグルコースと ある程度の生菌数を維持した。一方, 1 5%アルコー / 2以下 ( 0. 21mg/m l )お イソマルトースが当初最の 1 ル添加区では, 2 0日 後 お よ び 3 5日 後 に そ れ ぞ れ 2 . 5 1 4以 下 ( 0 . 0 5mg/ml ) に減少し乳酸が約 1 7 0 よび 1 X 5 1 0 CFU/mlお よ び 9 . 6X l O ' lC FU/mlとなり,生 7 0 個 Iml以 乳等省令に定義される乳酸菌飲料には 1 5日 上の生菌含有が義務づけられている。本実験の 3 間低温保存試験において 倍 ( 7 . 0 3mg/ml ) に増加した。このことから,発酵 後の滋粕からは酸味をもった爽やかさのある酒類がで 菌数の著しい減少がみられた。 1 0% ア ル コ ー ル 含 有 の 発 きると考えられた。さらに ルリンの産生が認められた。 7 酵酒粕が 1 0 偶 Iml以上の主主菌数を含んで、いたことか ら,乳酸磁飲料に毘敵する主主菌含有の低アルコール飲 発苦手により機能性成分と して知られるオルニチンの増加,タウリンおよびシト 当 該 発 酵 酒 粕 ( 初 発 の HOKKAIDO株 生 頭 数 1 .8 X 1 08CFU/ml)にアルコールを 5- 15%i~力日し, 3 5 料をつくることが可能であろうと t 霊祭される。したが 日間の低温保存試験を行った。その結果, 1 0%アル って,今後,当該発酵溺粕を主原料に砕今の消費者志 07CFU/ml以上の生菌数を維持した。 コール添加区で 1 向に合った健康的で飲みやすい低アルコール飲料の製 この菌数は乳酸菌飲料に匹敵するので当該発酵酒粕を 品化が期待される。 原料に昨今の消費者志向に合った健康機能性を想定し た低アルコール欽料の製品化が期待された。 第 1 0 7巻 第 8 号 6 0 9 中) 1 1・j 察関:乳酸菌発欝 j 霞粕を用いた主主菌含有アルコール欽料 1 0 ) 中) 1 1良二,能登裕子,八十川大輔,長島浩二, 謝辞 藤井暢弘:平成 1 7年度日本農芸化学会大会要 本実験を遂行するにあたり酉粕の提供等のご協力 を頂きました国中酒造株式会社の田中…良社長,寺尾 光司氏をはじめ皆様に感謝いたします。 参考文献 1 ) 持田和美,栗林喬,斉藤憲司,菅原正義:日本 7 .7 8 8 4( 2 0 0 0 ) 食品科学工学会誌. 4 2 ) 奥田拓道:匡妥協. 9 8 .7 5 0 7 5 5( 2 0 0 3 ) 3 ) 伊豆英恵,後藤邦康,家藤治幸:醸協. 1 0 1 . 8 9 3 8 9 9( 2 0 0 6 ) 4 ) 湯川雅之,伊藤大輔,峰時俊資,渡辺敏郎,広 常正人:穣協. 1 0 4 .9 6 39 6 8( 2 0 0 9 ) 即 5 ) 井上美保,石原伸治,渡辺敏郎,永井史郊,辻 啓介:醸協. 1 0 0 .5 8 1 5 8 7( 2 0 0 5 ) 6 ) 大浦新,鈴木佐知子,入江元子,秦洋二,安部 康久 0 2 .7 0 8( 2 0 0 7 ) 自妥協. 1 7 ) 入江元子,松村憲吾,鈴木佐知子,金森洋治, 秦洋二.目妥協. 1 0 4 .8 2 0( 2 0 0 9 ) 8 ) 中川良二,八十川大輔,長島浩二:特許第 3 9 2 5 5 0 2号 9 ) 中) 1 1良二,能登絡子,八十川大輔, 旨集. 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