『ファミリー・カウンセリング 家族の危機を救う』

『ファミリー・カウンセリング
家族の危機を救う』
『ファミリー・カウンセリング 家族の危機を救う』では、まずファミリー・カウン
セリングの重要性をカウンセリングの歴史に沿って述べている。20世紀初期に、フロ
イトによって幼児期に受けた心の傷が青年期以後の神経症を作り出している事実を発
見した。しかし彼の精神分析療法や自己実現のカウンセリングは、個人中心の取り組み
であった為、クライアントの生活場面への援助までには届かなかった。その結果、施設
等などでカウンセリングを受け、その効果が見られたとしても、普段の生活場面に戻る
とカウンセリング前の状態に戻ってしまうと言う事実が、事例と共に記されている。そ
の場合、クライアント個人に問題があるように受け取られがちであるが、クライアント
の家族にも目を向け家族関係の調整を行っていく必要がある、と著者は述べている。
上記の考えを基礎に、6章に分けてファミリー・カウンセリングについて著者の考察
を述べている。
まず、1章では現代の家族が直面するさまざまな危機状態について、子ども、女性(妻、
母)、男性(夫、父)の順に考察している。2章では、ファミリー・カウンセリングや家
族療法を行う場合に、家族と言うものをどのように理解すべきか、について取り上げ、
さらに夫婦の精神病理の類型に触れた後で、健康的な夫婦の条件を示している。3章で
は、家族関係の発達について結婚から老年期までを6段階に分け、各段階の特徴を述べ
ると共に、回避しがたい危機について述べている。4章では、ファミリー・カウンセリ
ングの基礎となる、5つの主要理論について解説しており、ファミリー・カウンセリン
グの援助過程や、短期ファミリー・カウンセリングについて述べられている。5章では、
ファミリー・カウンセリングの領域で考案されたユニークな技法について述べている。
最後の6章では、ファミリー・カウンセリングの効果を事例に沿って解説されている。
全体的に難解な文章ではなく読みやすいが、1章で出てきた事例を6章で解決すると
言う形と各章の中で解決まで至っている事例とがあり、まとまりのないように感じられ
た。また、ファミリー・カウンセリングが有効的な場面を例として出しているのだが、
割と限られた(具体的過ぎる)状況・環境を例として出していたり、ファミリー・カウ
ンセリングや家族と言う定義においても、著者の考察や体験が色濃く反映されたものと
なっているので、実用書として読むよりも知識として読む本であると感じられる。
個人的感想としては、本書が発行されたのが1987年と言う年を考えると、ファミ
リー・カウンセリングの内容は現代の社会、家庭にも通じるものがかなりあるが、その
重要性が現代社会に広がっていないように感じられる事は、残念であると感じられる。
(塩澤)