日中経済討論会 2003 日中ビジネスラウンドテーブル

日中経済討論会 2003
日中ビジネスラウンドテーブル
④日中連携によるITビジネスの可能性
日本側スピーカー
大橋
純(株式会社NTTデータ三洋システム
代表取締役社長)
石黒
和義(日本ビジネスコンピュータ株式会社
代表取締役社長)
吉永
中国側スピーカー
モデレーター
良(株式会社コンテック
豊田
崇克(ネクストウェア株式会社
楼
培徳(雲南金時空移動通信技術有限公司
聶
能
一木
計男(関西IT推進本部
大橋
楼
(司会)
取締役社長)
氏
氏
代表取締役社長)
会長兼社長)
(重慶郵電学院 院長)
石黒
聶
氏
氏
事務局長)
吉永
氏
一木
氏
豊田
氏
ただいまより、日中経済討論会 2003「日中連携によるITビジネスの可能性」
についてのラウンドテーブルを開会させていただきます。
それでは、本日のモデレーターの一木様、どうぞよろしくお願いいたします。
(一木)
こんにちは。関西IT推進本部事務局の一木と申します。本日のモデレーター
を務めさせていただきます。簡単に、私どもの組織を紹介します。関西の経済6団体の協
賛事業で、関西におけるITの利活用を推進していく組織の事務局を担当しております。
1
時間になりましたので、開会させていただきたいと思います。
簡単に背景をご紹介します。ご存じのように携帯電話、あるいはパソコンといった分野
を見ましても、今中国は、世界で最大のITビジネスの拠点であると思います。日本側の
企業にとって、製造・販売等において中国でのITビジネスにどのように戦略的に取り組
んでいくかは非常に大きな課題ではないかと思っています。中国では、すでに韓国、欧米
企業の進出が非常に盛んで、多くの中国企業とのさまざまな形の連携が行われていること
は、すでにご存じのとおりです。
しかし、私は昨年も今回の討論会と同じようにモデレーターを担当させていただきまし
たが、中国側から参加されていたかたからご意見が表明されていたように、日本企業の技
術、製品開発能力への期待といったものをベースにしたビジネス提携への期待には、非常
に高いものがあると感じています。昨年は、世界の標準作りで、日中の連携を深めてはど
うかという意見も出されています。そういったことを受け、本日は昨今いわれているよう
に、
「どこでも、いつでも」を代表するユビキタス社会が到来する中で、今後、ITビジネ
スにはどのような可能性があるか。IT分野における日中双方の強みを生かした新たな産
業や市場の創出、研究技術開発、また新たなスタンダードで、場合によってはそれはオー
プン・スタンダードであるかもしれませんが、そういったものについて討議を進めたいと
思っています。
本日の進め方について、簡単にご説明します。前半は、前にお座りいただいている日中
双方のITビジネス分野でご活躍の皆様から、代表してスピーチをお願いしております。
後半に入りまして、いったんコーヒーブレイクを取りまして、代表スピーチを受けて、会
場の皆様とともにご参加いただきまして、フリーディスカッションを進めたいと考えてい
ます。
それでは、順番に早速、代表スピーチということで進めてまいりたいと思います。お一
人、10~15 分を目安にご発言をお願いしたいと思います。
最初に、株式会社NTTデータ三洋システムの大橋社長にお願いしたいと思います。日
中ITビジネスの現状を踏まえ、今後のITビジネスの可能性についてお話しいただきま
す。NTTデータ三洋システムの概要を簡単にご紹介しますと、SI事業、ネットワーク
システム、データセンター等のサービスを、製造業の分野を中心に提供されています。後
ほどご紹介があるかもしれませんが、事業としてはウェブ3D、あるいはISP事業とい
2
ったものを展開されていると伺っています。それでは大橋様、よろしくお願いします。
(大橋)
ただいまご紹介いただきました、NTTデータ三洋システムの大橋でございま
す。トップバッターで、簡単にプレゼンテーションをさせていただきます。
NTTデータ三洋システムとしての中国ビジネスへの取り組みに関しては、まだまだ端
緒についたばかりというところで、他のパネラーのかたがたのような深い経験に基づいた
話ができるかどうか心配ですが、全般的な中国のITビジネスの状況、あるいは私自身、
NTTデータでずっと仕事をしてきた関係もありまして、そのときのいろいろな経験等も
踏まえ、お話を進めさせていただきたいと思っています。当社の紹介、それから中国のI
T産業の状況、特徴、弊社の取り組みという順番で、お話を進めさせていただきたいと思
います。
(以下スライド併用)
○初めに、簡単に当社の説明をさせていただきます。NTTデータ三洋システムというこ
とで、名前のとおりNTTデータと三洋電機が両・親会社として 50%ずつの出資で、この
1月に発足した会社です。前身としては、三洋電機ソフトウエアということで、三洋電機
の社内情報システム子会社として十数年のキャリアを積んできている会社です。売上高に
して約 200 億円、従業員の数が 400 人弱で、三洋電機グループ向けの売り上げが過半を占
めているところですが、今後は、それ以外の外部への仕事を順次増やしてまいりたい。そ
の中には、海外での仕事も当然含まれています。
事業の概要は、大きく三つに分けております。ビジネス・ソリューション、ネットワー
ク・システム・ソリューション、エンジニアリング・システム・ソリューションです。一
般の大企業のビジネス系の会計、あるいは人事や営業といったシステムを三洋電機向けの
仕事としてやっています。それから、三洋電機は製造会社なので、エンジニアリング系の
システムの仕事をやっています。最近では、デジタル家電等における組み込み型ソフトの
仕事が増えてきている状況です。
ネットワークについては、三洋電機のグローバルなネットワークの建設維持と、私ども
はインターネットのサービス・プロバイダーもやっており、サンネットという名前ですが、
ISPサービスもやっております。
日本のマーケットにおける最大のシステム・インテグレータであるNTTデータと、先
3
進的なグローバルなエレクトロニクス企業としての三洋電機の両方のバックを得た企業で
あるとご理解いただければよろしいと思います。
○次に、中国におけるIT産業について、簡単に触れてみたいと思います。
○これは、中国の経済状況です。左側が実質のGDPの成長率の推移です。ごらんのよう
に、中国は 10%に近い高い成長率をキープして成長を続けています。右側は、中国への直
接投資の変遷です。この棒グラフの中のいちばん上の部分のパートが、日本からの投資で
す。一時、バブルの崩壊により日本からの投資も減っておりますが、中国全般への全体の
投資が増えている中で、日本の中国への投資も着実に増えている状況がごらんいただける
と思います。
○さて、その中で中国のITサービスの市場の規模がこの図です。これは、CCIDとい
う中国統計局から出ているデータです。この場合のITサービス市場の定義の中には、ソ
フトウエアプロダクトを作る部分は入っておりません。いわゆるSI(システム。インテ
グレーション)やアウトソーシングのサービスの数字です。
ここにあるように、2002 年の中国のITサービス市場規模は約 430 億元で、日本円にす
ると約 6000 億円ですが、大変伸び率が高く、4割ぐらいの増で年々増加しています。先ほ
どのソフトウエアを合わせて、ITサービスということでは、約 1100 億元が 2002 年度の
規模になっており、日本円にすると、約 1 兆 6000 億円です。
○これが諸外国、
日本とアメリカのITサービス市場で、
ソフトウエアも含んでいますが、
その市場規模です。
現時点では、
約 1 兆 6500 億円のマーケットで、日本が 13 兆 7000 億円、
アメリカが 32 兆 5000 億円といったマーケット数字になっています。ただ、大変伸びが高
いということで、右側のグラフにありますように、中国において 2005 年には3兆 7000 億
円ぐらいの規模に達すると見られています。
○最近の私どもの業界のである、日本の情報サービス業の売上高の推移をここに記してい
ます。ご承知のように、毎月、特定サービス産業動態統計が発表されていますが、情報サ
ービス業の売上高の前年との比較として出ています。日本全体の景気まだ停滞している中
4
であっても、昨年の秋までは情報サービス業は増加の傾向にありましたが、昨年の暮れか
ら、前年実績を割るようなマーケットの状況になっていることは、皆様もご承知のことと
思います。この中で、私どもが類推するに、景気が回復してきた中で、マーケットが少し
縮小していることについては、もちろんソフト発注のデフレ化傾向が大きな原因であると
思いますが、そこには中国へのソフト開発が増えてきている状況が、影響しているのでは
ないかと見受けているところです。
○中国のIT産業の特徴を三つ挙げています。一つはご承知のように、優秀な人材と低コ
ストということで、学校の数はまだまだ増えているように聞いていますが、コンピュータ
ーあるいはソフトウエア専攻の卒業生が、毎年6万人以上も供給され、すでに 50 万人近い
人材が、IT産業に従事しているということです。そして、中国におけるIT産業の位置
が高いことで、優秀な人材が集まってくるということです。一方、コストについてはイン
ド人技師に比べ、まだまだ 15%近くも安いという利点もあります。また、IT産業に対す
る政府の方針としても、この産業を中国の重要な産業に育てることが明白に出ています。
ここにも書いてありますように、電子政府化を強力に進めるとか、あるいはソフトウエア・
パークをあちこちに作っていくとか、あるいは税制、個人の所得の面に関しても、優遇な
制度を設けることで、この産業へのバックアップを進めているということです。
○ただ、優秀な技術者がたくさん輩出されてはいますが、経済全体の発展とともに、この
IT産業も発展するのであり、業務に対する習熟、あるいはシステムを構築するシステム・
マネジメント、プロジェクト・マネジメントの面では、まだまだ課題が残っているところ
が見受けられます。しかしながら、そういった面についても、近年、急速に開発力をつけ
てきていることが、実感として感じられるところです。
こういったITサービスの産業の中での今までの売り上げの中では、ハードウエアが非
常に大きかったのですが、ソフトウエアについても、独立した価値を生むことで、この1
~2年前まではソフトウエア関係の売り上げが 30%でしたが、2005 年にはこれが 60%に
増えることを目指していると聞き及んでいます。
○これも皆様がたもご承知の点が多いと思いますが、例えば中国企業にオフショア開発と
いうことで委託する。あるいは、現地で中国人を雇用するときの心構えの幾つかです。当
5
然のことながら、安価であることよりも、むしろ優秀な技術者、特に先進の技術について
の優秀な技術者を確保できる視点で取り組むことが大事であると思います。それから、中
国人かたぎ等の理解を深め、相互でのパートナーやプロジェクトメンバーとしての関係を
構築していくことです。雇用する側の会社としては、中国人技術者が非常に大事であると
思っているキャリアの対象としてふさわしいような、魅力ある会社となるように、自らの
会社を練り上げていくことが大事であると思います。
それから、上昇志向が大変強いので、キャリアパスを明確にし、技術者の実力を認め、
それに見合った仕事、ポジションを与えることが大事であると思っています。そしてリー
ダーを経由し、プロジェクトメンバーの技術者に指示を出す。これについては、リーダー
のプライドを高め、周りの人間に、明らかにリーダーであることを認識させることです。
プロジェクト運営の中では、こういったことも大事であると認識しています。
○まだ緒についたばかりと申し上げましたが、次は当社の取り組みについて簡単に触れさ
せていただきます。ご承知のように、三洋電機は大変早くから中国に進出しており、1979
年には北京で、日本企業として初の見本市を開催しています。また、1983 年には最初の
100%の独資企業を立ち上げており、現在では、中国の中に約 40 の現地企業を持っていま
す。
○これが中国拠点で、40 を超える三洋電機の製造・物流を含めた拠点ができています。
○こういった三洋電機の中国の生産拠点にソフトウエア、ネットワーク、そしてPHSの
基地局の保守事業として、三洋電機の中のテレコム会社を通じて、中国の通信会社に納め
ているPHSの基地局の装置の保守に当たる仕事、あるいは三洋電機の中国拠点に、主に
デジタル家電機器の組み込みソフトやSE派遣を行います。それから小規模ながら、いわ
ゆるオフショア開発も実施しております。
今後、中国に対するこういったビジネスの取り組みを我々としてはさらに深めてまいろ
うと思っています。基盤としては、中国に進出している三洋電機グループを中心にし、そ
こでの経験、あるいはいろいろな事業運営のノウハウ等を取り込み、その次には、また日
系企業を相手にしたビジネスを進めていこうと思っています。提供するサービスの概要と
しては、現在、取り組んでいる業務である通信ネットワーク、パッケージソフトの提供、
6
製品組み込みソフトウエアに関する技術者の提供、そしてオフショアのソフトウエア開発
を進めることを考えています。
従来は、日本からの出張、あるいは長期的な出張で、こういった仕事を進めてきました
が、需要の高まりとともに自前の拠点を持つということで、この6月から上海で拠点を作
っています。ただ、そういった意味で、まだまだ中国での仕事に十分なリソースがないの
で、NTTデータあるいは三洋電機のリソースの活用を図ってまいろうと思っています。
特にこういったITサービスの提供においては、NTTデータの中国におけるリソースの
活用を中心に考えており、マーケティング・セールスの関係ではNTTデータ中国、現地
オフショア開発では北京NTTデータ、NTTデータの香港支店等々のリソースの活用を
図っていきます。それから、親会社との間の役割分担により投資効率の最大化をしていき
たいと考えています。
今後、中国の現在の事務所を現地法人化すること、これから雇用の進む現地社員の管理、
あるいは現地でこれから仕事を進めてまいる現地市場の特性、地域性の理解については、
先達である三洋電機、あるいはNTTデータの経験・知識を十分に活用し、円滑な事業展
開を図るようにしたいと思います。特に、ここにグループ会社と書いてありますが、グル
ープ会社に限らず、我々としては中国現地のパートナー、そして日本でのパートナーとの
連携を重要視しており、そういったパートナー会社の商品の活用、パートナー会社のサー
ビスの活用、あるいは人員の活用を生かし、効率的に事業展開をしてまいりたいと思って
います。
以上、お話ししてまいりましたが、三洋電機グループにおいては、21 世紀の挑戦テーマ
として、アジア・スタンダードの構築を取り上げています。韓国のサムソン、中国のハイ
アールとの提携により、中国の強大な生産力、韓国の応用技術力、それに日本の先進技術
力を結合し、アジアのさらなる経済発展を目指すことが、三洋電機の 21 への大きな指針で
す。そういったものも受け止め、これから両・親会社を含めたパートナー企業との連携を
深め、私ども自身の中国現地でのビジネス、あるいは日本国内におけるビジネスをサポー
トするオフショア開発について、取り組んでまいりたいと思っています。
以上、簡単でございますが、私のプレゼンテーションです。
(一木)
大橋社長、ありがとうございました。
続いて中国側から、雲南金時空移動通信技術有限公司の楼董事長よりご発言いただきた
7
いと思います。主に、通信分野からの視点からのご発言と伺っています。私から、手元に
ございます雲南金時空移動通信技術有限公司の概要をご説明させていただきます。雲南省
にある通信分野のハイテクの企業です。主な業務としてCSM、CDMA携帯の研究開発
に、生産および販売、本年度の目標としては、GSM、GPRS、およびCDMA2000、
これは1Xと呼ばれている新しいシリーズの携帯を上半期に数多く販売すると。その中の
多くの製品が、世界的な先端レベルに達していると伺っています。それでは、楼董事長の
ご発言をお願いします。
(楼) 議長、ありがとうございます。日本のご来場の皆様、ご来賓の皆様、こんにちは。
私がお話しするテーマは、今日の午前中にやっと決めたもので、具体的な話はあまり細
かく入らず、アジア地域における独自のモバイルパーツが生まれるだろうかという話をし
ます。説明しますと、ご存じのように、ヨーロッパ地域においては、協同で大規模生産、
研究開発の成果を集積し、エアバスの生産に成功しています。しかし、先ほどNTTの大
橋社長がお話ししておりましたが、アジア地域においては中国、韓国、日本の間で、移動
体通信の領域においては、非常にいい可能性がある。しかし、共同で生産、開発、そして
大規模に応用するメカニック、あるいは枠組みを通して最終的な端末製品を作り出せない
だろうか。これは、私が新しく作った言葉で、モバイルバスとでもいいましょうか。これ
は、ヨーロッパのエアバスからヒントを得て、こういった発想を申し上げます。
二つめの話としては市場のニーズ、どのような研究開発、あるいは製品の製造でもいい
ですが、必ず市場のニーズがバックグラウンドにあることが前提になります。私自身の経
験から、この点を深く感じています。私は、中国から来ています。そして、多くの携帯を
持ってきています。というのは、私は専門的に携帯を生産するメーカーに勤めているから
で、私は現在、中国で現在使っているGPSあるいはGSMの携帯を持っています。中国
でCDMA1Xの端末を持ってきています。しかし残念なことに、日本に来ると、こうい
った端末は全部使えないことになります。これは機械の問題ではなく、システムの規格が
異なるのです。中国ではGSMと、中国で使えるCDMAの1Xと中国の1Xの周波数は、
全く違うものを採用しているために使えないのです。ですから、日中両国の道路の運転方
向が違うことと同じように、全く異なるためです。
もう一つの例を挙げると、私は一人の外国人として、本日ここは連絡を取るのが非常に
不便なので、町に出てボーダフォンの販売店で私が連絡に便利である端末を買おうと思い
8
ましたが失敗しました。お金はあっても、買えないという状況に出会いました。なぜなら
ば、ここでの携帯の販売の規定、あるいは政策が日本人にしか向けられていない。つまり
外国人に対しては、こういったサービスを提供する準備ができていないのです。つまり携
帯を買いたくても、パスポートを見せろとか、いろいろな制限があります。先ほど町に出
て、ぶらっとしてきて、携帯を買おうと思っても買えませんでした。結局、私は一台も携
帯を買うこともできず、また使うこともできない状況に陥っています。
こういったことを考えると、もう 21 世紀に入っており、2003 年にもなります。中国と
日本の間は、これだけ近いにもかかわらず、日中両国間は、飛行機では北京から2時間で
着きます。私が中国の最も南、あるいは最も西に行く距離は、日本に来るよりもはるかに
遠いのです。しかし、我々は経済の面において、お互いによりユーザーにフレンドリーに
あるという面に関して、より多くの解決すべき課題が残っていると感じています。
私のこれらの経験は、私個人だけではないと思います。これは、すべてのかたが感じて
いることではないでしょうか。そして、ここにいらっしゃる日本の友人の皆様も、中国へ
行って、例えば旅行、観光をする。あるいはビジネス商談、ビジネストリップをすると、
皆さんも同じ問題に出会うと思います。しかし、私が思うに、中国で同じように携帯を買
うには、非常に便利で簡単であると思います。外国人に対して、何の制限も設けておりま
せん。
もちろん、これは技術的な問題ではなく、主に管理的な問題です。これは多くのマネジ
メント、あるいは管理、行政のレベル間の交流、推進によって初めて解決できる問題です。
こういった小さい問題でも、我々は分かることですが、モバイルバスというコンセプトは
非常に時間がかかるものです。しかしこのモバイルバスは、皆様の交流、コミュニケーシ
ョンを促進し、日中両国間、さらにアジア地域の多くのユーザー、カスタマーの仕事に便
宜を提供し、価値を提供するという本来の意味から考えれば、非常にいいことであり、前
途があることで、皆様との共同の努力が必要なことであると思います。市場のニーズから
考えると、我々はこれが一つのニーズあると考えています。以上が、ニーズの話です。
次の話は、まず現状はどうであるか。中国と日本の双方の現状の技術的な発展速度、技
術的な能力、そして技術的な相互の互換のレベルの可能性が、こういった新しいコンセプ
トの構想をサポートできないか。ご存じのように、日本は工業が非常に発達した国です。
日本には多くの独自の通信規格、移動体通信において、ヨーロッパと欧米と違う、独自の
規格を作り出し、標準を作り出しています。PHS、NTTドコモ、あるいは第3世代の、
9
今後第4世代のこういった発展技術に対し、大きな日本独自のものを持っています。独創
性を発揮しています。しかし、国土面積あるいは人口の制限、有限性から、日本だけに提
供する、日本本土のみを目的とした、研究開発のシステムが国際化するときには、いろい
ろな問題に出会うことになった結果をもたらしています。これは、皆様も深刻に受け止め
ていると思います。
今度は中国に目を向けると、中国は現在、人口が最も多い国です。そして、世界中で最
も大きな発展途上国です。移動体通信の領域においてシステム、端末、規格、あらゆる領
域において、ここ5年内、非常に大きなよい成果を上げています。そして、非常に高い成
長率を実現しています。皆様もご存じのように、移動体通信はすでに第3世代に入りまし
た。しかし 2.5 世代が、今ちょうど黄金の時代を迎えています。第3世代は、やっと始ま
ったばかりです。中国の移動体通信の全体の領域の第1世代の発展の過程の中では、全面
的に、外国のものをそっくりまねする政策を取ってきています。つまり移動体通信システ
ム、あるいは端末設備は、すべてヨーロッパ、あるいはアメリカからの製品をそのまま購
入してきました。もちろん一部、日本のものもありましたが、すべてそのままそっくり購
入したものです。そして、第2世代移動体通信システムの競争の時代の中で、GSM、C
DMAの一部に我々は一部の合弁会社の製品を取り入れています。そして、一部は我々が
独自に開発したものを採用しています。
そして、中国国産の端末の生産能力から見ると、企業の成長率には非常に大きなものが
あります。そして5年内、1998 年の当時のシェア0から、今年の 2003 年のシェアはすで
に 50%を取るようになっています。もっと重要なことは、本日私の次に講演されるかたで、
重慶郵電学院の院長の聶能先生から、TD-SCDMAの端末製品の研究開発についてご
紹介があると思いますが、このTD-SCDMAは、業界のかたはご存じであると思いま
す。これは中国が初めて、そしてITUにおいて、最終的に採用された三つめの国際標準
になったことが、第3世代の通信システムと認められた標準です。
この意義は非常に大きいと思います。これは、日本が過去数年来、非常に成功で、独自
のシステムを打ち出し、系統を研究開発から、あるいは規格、標準化を打ち出したことに
ついては、日本は大きな貢献をなしています。これは、日本の工業化のレベルを表してい
ます。そして、中国も同様の努力を通して、独自の標準を打ち出すことができる。そして、
それを産業化できる能力を持っていることを示している証です。ですから、ここで中国が
移動体通信の領域における技術の進歩は、非常に早いものであることがいえます。
10
中国、日本、そしてアジア地域のほかの国々が、もしもアジア地域の移動体通信産業に
何か貢献をしたいという企業あるいは国が共同で、アジア地域のモバイルバスを打ち出す
ことができれば、私が思うに、現在は基礎的な条件は非常にいいものがあります。しかし、
なぜ私がここでこういったことが重要であると申し上げるかというと、つまりもう第3世
代に入っているのですが、この第1、第2世代の通信が発展している過程の中では、消費
者に多くの残念なことをもたらした諸問題は、第3世代では解決できないと思っています。
そして第4世代でも、これらの問題を解決できる見通しは立っていません。
ですから、消費者は多くの端末が必要であるということで、その問題には変わりはあり
ません。これは、非常に残念なことであると思います。私は現在、多くの異なる携帯端末
を持っています。これは、非常に不便です。異なる国では、その国にあった端末を持たざ
るをえないのです。今日のように、グローバル化した時代に、こういったことは時代の発
展に遅れている一つの証であると思います。私は、第3世代は残念でなりません。そして
第4世代、あるいは未来の移動体通信の時代では、世界的に人々の交流、あるいは人々の
国の、
こういった問題を解決できる標準が必要であると思います。もちろんアジア地域が、
同じような一つの先頭的な模範を示せるかどうかが、このモバイルバスにかかっているの
ではないかと思います。
一つの展望を申し上げたいと思います。私は、ここでこのモバイルバスという構想、コ
ンセプトを実現するためには、アジア地域の各国、あるいは世界各地域の消費者にとって
も、非常に有益であることを申し上げたいと思います。我々中国、あるいは日本、韓国と
いったこの移動体通信領域は、それぞれ実力と実績を持っています。我々は、我々の模範
作業を示すべきであると思います。
非官僚、非政府間の機構を作るべきであると思います。
例えば、中国のような移動体通信連合推進業界を通せば、通信業界を代表して、こういっ
た仕事を推進できると思います。本日は、私どもの会長も来ております。
もう一つの面からいいますと、中国で移動体通信の携帯端末産業を発展させる過程の中
では、日本企業との協力は相当密接になっています。我々は、大量の重要な部品で、例え
ば電池、パワーIC、LCD、あるいは液晶のディスプレイといった面については、日本
は先進的で進んでいますので、中国の市場においては非常に大きな需要があります。しか
し今後、こういった統一した例えば購買や価格の調整をする機構が必要ではないかと思い
ます。こういったことは、日本の企業が中国の市場に侵入することでも非常にいいことで
はないかと思います。
11
もう一つ感じることは、全体モバイルバスのコンセプトを実現、推進するためには、今
後、国際間、特に日中両国間が、移動体通信の領域において、本当のそれぞれの実質的な
技術開発を行うべきであると思います。これは、つまり表面上の交流にとどまらない、実
質的な交流、あるいは開発が必要です。もちろん、政府間の仕事も必要であると思います。
しかし、民間の企業として、我々もなすべきことは多くあります。以上が私の話ですが、
ここまでにさせていただきます。
今日は、まずコンセプトを打ち出す一つの概念を皆様にお話しし、そして私は、5年な
いしは 10 年以内に、このコンセプトが実現されることを希望しております。ありがとうご
ざいました。
(一木)
楼董事長、ありがとうございました。
引き続き、日本側からコンテックの吉永社長よりご発言をお願いしたいと思います。コ
ンテック社の概要について、簡単に手元の資料でご紹介します。電子および情報技術をF
A、IT分野向けの製品サービス事業を行うメーカー型のグローバル企業です。拠点とし
ては、日本はもとより中国、北米、EU、韓国、台湾に自社の拠点をお持ちになっていま
す。製品事業としては、各種の組み込み型パソコンボードおよびシステム、各種のインタ
ーフェイスボード、無線LANといったものです。サービス事業に関しては、ウェブ型の
遠隔監視、
自動車生産関連ならびに顧客用の用途に合わせたパソコンといったシステムで、
広く顧客志向に基づく事業展開をされておられます。
それでは、コンテックの吉永社長よりご発言をお願いします。
(吉永)
ただいま、紹介にあずかりましたコンテックの吉永でございます。今日ご列席
の皆様は、中国から来られた先生がたがおられるとお聞きしています。私は、1980 年から
中国に関心を持ち、それ以降往来しています。今日のプレゼンは、まず簡単に、わが社の
事業はほとんど紹介してくれましたのでさらっと流しまして、あとは今後、中国との 21
世紀における共同事業、あるいは問題提起で、あくまでも私自身の企業の立場でのお話な
ので、必ずしも的を射ていないところがありましたら、ご勘弁願いたいと思っている次第
です。
(以下スライド併用)
12
○私どもコンテックは、1975 年に設立して 29 年めです。従業員は、日本のみで 300 名近
くで、日本円で 100 億の年商で、先ほどの事業内容の事業を行っています。海外にはUS
A、EUではオランダ、中国では現在、五つのほどの現地企業がございます。他に、韓国
のソウル、台湾は台北に出資会社があります。
○私どもの事業のベースになっているのは、ここに挙げてあるようにIT&ITです。前
者のITは、実はインダストリアル・テクノロジーで、特に工業用、産業用といった重い
ほうのITです。後者は、インフォメーション・テクノロジーです。これは、ワン・フェ
イス・トゥ・カスタマーという事業というか、企業の理念で、事業に取り組んでいます。
○コアビジネスの詳細は、私どもはデバイス・アンド・コンポーネント・ビジネスと、シ
ステム・アンド・ソリューション・ビジネスで、それ以外にODM、OEMビジネスを展
開しています。
ベースはオープンベースで、パーソナル・コンピューター・テクノロジーを究極に応用・
利用し、なおかつ一般パーソナル・コンピューターではなく、あるいは家庭用のパーソナ
ル・コンピューターでもなく、あくまでも工業用、あるいはeビジネス用の組型のパソコ
ンといえばパソコンで、表から見ればパソコンとは全く思えないようなハードウエア製品
です。もちろん現代は、ハードウエアのみではファンクションしませんので、必ずや基本
機能であるソフトが組み込まれている製品を、デバイス・アンド・コンポーネントで多種
多様に準備して、お客様が得られるようにしております。
システム・アンド・ソリューションにおいては、そういったものの応用利用をいかに展
開するかといったことで、私どもが規模は大きくしていませんが、あくまでもアンテナ・
ビジネスというか、実例・実用のお手伝いをするエンジニアリング、あるいはコンサルテ
ィングといった展開を事業として行っています。
○これは、製品群をビジュアルにごらんになっていただければけっこうです。一つずつの
説明はいたしません。
このファクトリー・アンドIT、eインフォメーション・テクノロジーといったことで、
あくまでもオープンで、あるいはLANやイーサネットなどネットで、ファクトリーであ
13
ろうと、一般でいうITであろうと、すべてこういったことで、21 世紀は進んでいくと。
私どもは無線LANで、その中でもアウトドア無線LANといったところで、ハードウエ
アおよびベーシックなソリューション、ソフト、コンテンツを提供していることを特に紹
介しておきたいと思います。
○こういった製品群です。
○なお、システム・アンド・ソリューションでインテグレーションのほうですが、私ども
は自動車の生産工場の生産ラインをはじめとして、エネルギー監視といった関連のシステ
ムインテグレーションを得意としております。
○こういった製品群です。
○基本的には、PCベースドのオールオートメーションの関連で、ハードウエアが7~8
割方で、ソフトウエアとコンテンツが2~3割方で事業展開しております。
実は、わが社はITの分野で事業を行っていますが、私自身は、ITは時代にふさわし
くないような符丁ではないかと考えております。農業社会時代の次に工業社会時代で、現
代はネットワーク社会時代で、IT、インフォメーション・テクノロジーという言葉のみ
では表現しきれない時代です。あるいは情報化や高度情報化とは、工業社会の時代におけ
る言葉ではないかと考えています。世の中は、まさしくネットワーク時代に入ってきまし
た。21 世紀は、ネットワーク時代であると考えています。
そうするとITというものは、私自身の分類として、例えばファクトリーIT、あるい
はディストリビューション、マテリアル・ハンドリング、物流IT、それに金融のIT、
商業IT、あるいは市民のIT、家庭のIT、その他のITがありますが、どの分野で得
意であるかが大事で、IT一般論ではありません。わが社の事業と製品については、もち
ろんすべてのITに共有、共通する部分も行っております。そういった中でも、わが社は
ファクトリーIT、あるいはディストリビューションIT、マテリアル・ハンドリングの
ITを含めまして、それ以外に、市民ITといった分野の三つで共有するプロダクト、あ
るいはコンテンツ、ソフトウエア、ならびにそれぞれのITに、やはり専用あるいはパー
センテージは少ないですが、そういったソフト、コンテンツ、あるいはハードウエアを段
14
取りしなければ、ジェネラルITのみで、ネットワーク社会が進化するとは思えないので
す。こういった分野を中心にして、力を入れてやってまいる所存でございます。
そういった意味で中国事業ですが、先ほど言いましたように、私どもは中国に五つほど
の現地企業があります。最も早いもので、15 年ぐらいの歴史がありますが、最も新しく設
立したものも6~7年です。当初は合弁でスタートし、すべてが国有企業をパートナーに
した合弁でした。基本的に、自分自身が中国の文化、歴史、習慣、あるいは行動様式を十
分に理解し勉強していないところで、この十何年は多大な月謝を払ってきたのです。改め
て、今私が説明したネットワーク社会時代において、私どもが進めている事業の新たなパ
ートナーを探して、共にやって生きたいと考えています。
その中で問題提起というか、中国は労働コストが安い。人口が多いので、他の東南アジ
アの今までの経緯と違い、現業者の労働コストはけっこう長く、これからも長期にわたっ
て、中国としての世界における有利といえば失礼ですが、これは発揮できるであろうと。
しかし、それはそれで当然活用すべきですが、このIT分野において、私自身は、日本本
部、中国本部という両本部を設立したい。そして、先ほどもお話がありましたように、中
国の優秀な人材とともにハードウエアの開発、ソフトウエアの開発、コンテンツの開発と
生産と、中国市場のみならず、世界市場に中国から販売していく理念、あるいはドリーム
を持ってやってもらいたいと考えているのです。
そういう意味では、中国は相当発展し、先ほど楼さんが話したとおり、独自で開発され
ている企業も出てきましたが、全般的にはやはり部品材料等を含めて現地企業、現地人が
開発を通して、自分の部品材料のものを生み出す企業というか、
取り組みは弱いというか、
少し疎かではないかと感じています。
他方で、決断力あるいは実行力が非常に早い。日本が、too little, too late, slow で、
しかし品質の面で丁寧であると。ですから、中国のスピードさ、優秀さと、日本のものづ
くりを中心とした丁寧さを融合させて、世界に十二分に勝てる製品を開発し、打って出た
いと考えている次第です。
ぜひとも、ご関心のある先生がおられれば教えてもいただきたいし、またコミュニケー
ションを取り、共にネットワーク社会で、先ほどのようにいろいろなITがありますので、
そういったところで、特にビジネスをやってまいりたいと考えている次第です。
(一木)
コンテックの吉永社長、ありがとうございました。
15
引き続きまして、中国側から聶重慶郵電学院院長様からご発言を頂きたいと思います。
重慶郵電学院は、情報科学を特色とした大学で、電子通信と通信技術の高級な専門人材を
養成しておられます。同時に管理、法律、経済などの分野の人材も養成していると伺って
います。設立は 1950 年、五つの省部クラスの重点学科、四つの省部クラスの重点実験室、
修士号、ならびに 27 の専門科が設けられると伺っています。
それでは、聶院長よりご発言をお願いします。
(聶)
議長、ご来賓の皆様、こんにちは。
(以下スライド併用)
○IT産業界においては、中国の第3世代の移動通信、移動体の通信の発展状況に非常に
注目し、興味を持っていると思います。先ほど北京で開催された第3世代の国際フォーラ
ムにおいても、三つの第3世代の標準の中国における測定評価した結果を公表しました。
そして、このフォーラムにおいて、中国の情報産業部が来年、中国において、三つの第3
世代標準の商業テストネットワークを展開することを公表しています。そして場所は北京、
上海、広州の三つの大都市において、世界三つの標準の第3世代のWCDM、CDMA、
CDMA2000、そしてTD-SCDMAの三つの国際的な標準の実現テストネットワーク
の標準のテスト商用ネットを開設することを公表しています。
今年の8月にTD-SCDMAの国際トップ会議、サミットが北京で開催されて以来、
そして今回の第3世代の一連の会議の開催に至り、中国の政府の関連部門はすべて一致し
て、この中国における国際ITUに提出したTD-SCDMAの標準の発展状況の全面的
なサポートを表明しています。TD-SCDMAは、国際的に認知された三つの第3世代
の標準の一つとして、唯一、TD(タイム・ディビジョン)方式、つまり時分割以外の方
式は、全部TD-SCDMAという分割方式を取っています。
ご存じのように、インターネットの非常に発展した今日においては、TD-SCDMA
は非対称(アンシンクロナイズ)の移動体通信の次世代の移動体通信が、最優先して選択
する方式の一つであるべきと考えております。中国はTD-SCDMAの標準を正規提唱
し、あるいは提出した研究・開発した実感は、以前にすでに提唱されている二つの標準よ
りも、大体5年以上遅れていること、技術の成熟度から考えると、現在、他のWCDMお
よびCDMA2000 の二つの標準よりも遅れていると思います。
16
しかし、各関連方面の努力により、現在、TD-SCDMAとWCDMA、そしてCD
MA2000 の間の距離は、大きく縮まっております。これは、システムの研究開発において
も、すでに完全なシステム化がなされており、端末の研究開発面においても、非常に大き
な進歩を成し遂げています。そして、第3世代用網の実際の開通の遅れにより、少しの時
間とスペース、空間もTD-SCDMAの発展にとっては、非常にいい情勢をもたらして
います。
こういった状況の中で、WCDMAもやはり同時に、中国における特許、パテントライ
センス・フィーを大幅に削減、あるいはまけることを宣言しています。そして、ヨーロッ
パの大企業も、すでに中国に対し、TD-SCDMAはWCDMAの補完形式が可能であ
ると打ち出しています。この言い方は、一定の理屈であります。しかし、それは完全では
ないと思います。というのはTD-SCDMAは独立し単独で一つのネットを形成するこ
とができる国際的な標準であるからです。ヨーロッパ、世界、他の地域においても、TD
方式はすでに十分な周波数のスペースを空けてあります。そして、世界の第3世代の方式
は、TD-SCDMAも必ず市場があることが考えられます。そしてこの市場は、現在I
TUが承認した標準は、考えれば、TD-SCDMAしかないことが分かると思います。
次に、2日後に北京において、国際通信展示会、シーメンス、そして中国の大唐電信は、
同時に彼らのTD-SCDMA対応のシステムを展示する予定です。そして彼らに、この
システム化された一連の重慶の会社から提供された端末設備も展示される予定です。
○多くの皆様が我々の学院に対して、あまり理解がご存じないと思いますので、私は、ま
ずここで簡単に大学をご紹介させていただきたいと思います。同時に、我々がTD-SC
DMAの標準化、シミュレーションの業務において行ってきた仕事、そしてシステムのテ
スト、評価をご紹介します。最後に、我々が端末の産業化において、今まで重点的にして
きたことをご紹介したいと思います。
重慶郵電学院は、情報学科を一つの特徴とし、工学系関連を主とした文系、理系、経営、
管理、法務、医学などを含めた、多彩な人材を養成できる高等学校です。この学校は、以
前は中国の郵電省に直属する学校で、現在は重慶市に属しています。現在、在校生は1万
3000 人おります。そのうち、通信学生、あるいは夜間学生が 5000 人余りおります。そし
て、研究生が約 600 人、教職員が 1400 人おります。これは、重慶郵電学院の新しい校門と
学校の全景です。これは、中国郊外にある非常に美しい地域です。
17
わが校は、中国の情報産業省と重慶市の重点学科を持っています。例えば、通信システ
ム糸と通信の情報処理システムなどを含んでいます。そして情報産業省、重慶市の重点的
な試験室を持っています。例えば、移動体通信のテスト室、光ファイバーの技術通信室、
あるいはネットワーク、基礎技術研究室、郵政自動化の研究室、実験室などがあります。
そして、通信と情報に関連する 12 の修士課程を設けています。
重慶学院はTD-SCDMAを中心に、第3世代の産業化を推進するために、学校を主
体としてCYITを作っています。この会社は、校舎の中にあります。この研究棟の中に
あります。
○我々は、第3世代のコアネットワークのプロトコルにおいては、98 年6月からもと郵電
省が決めた、CDMAに基づいた第3世代移動体通信のコアネットワークのプロトコルお
よびキー技術研究という項目に着手しております。その後、ITUに対し、三つのプロト
コルの提案、あるいは報告書、VHEのコントロールの規定、標準化はITUに承認され
ています。この仕事の後、中国の郵電省、そして大唐電信の協力を得て、直接人を組織し
て、直接TD-SCDMAの標準化の設定の仕事に着手しています。
○我々は、TD-SCDMAのRTT標準、つまり空中の標準化の面におきましては、主
に第2レイヤー、第3レイヤー、そして物理レイヤーの中の標準の一部の仕事の設定、編
成を実施しております。特に、TD-SCDMAの第3世代移動体通信システムと、GS
Mシステムの標準互換性の過渡的な標準について、これは略称してTSM標準といってい
ますが、我々は、この仕事の標準に対するタスクフォースのリーダー的な企業に指定され
ています。そして、一連の標準化の仕事を行っています。
シミュレーション業務においては、
我々は主にハーネスという会社のシミュレーション、
およびEDAの設計ツールを使い、我々も同時にSPWのTD-SCDMAのシステムの
シミュレーションの各種のリンク、そして完成度を完成しております。そして、データの
モジュールのデータベースを完成しています。例えば、物理輸送のAIアンテナおよび高
速のダウンロード、あるいは端末のポジション・セッティング、TD-SCDMAシステ
ムをFTDシステムの間の第2層、第3層のプロトコルのリンクの部分の標準を決めてお
ります。
18
○TD-SCDMAの性能をテスト、確認するために、我々は重慶において、TD-SC
DMAの実験テストネットワークを構築しています。このネットワークは、2010 から 2025
メガヘルツの 15 メガヘルツのバンドワイドを持った周波数を使っており、
この周波数帯域
の中で、三つの各5メガヘルツの周波数帯域を持った、9チャンネルのシステムを構築し
ています。
○次に、デュアルモードの端末の産業化について、
我々が進めてきたことをご紹介します。
このデュアルモードの端末においては、1999 年から、大唐電信という会社と一緒に共同で
TD-SCDMAの端末のサンプル機の製作を始めています。そして 2001 年2月に、我々
は北京において、初めてサンプル機によるテスト接合確認、テストを行っており、共同の
ソフトにおける特許の自主的な財産権を持ったソフトを開発しています。2001 年7月には、
共同でTD-SCDMAのデュアル端末の開発を行っています。
そして 2001 年 12 月には、重慶におけるサンプル機には、TD-SCDMAの物理レイ
ヤーがかかわる 16 のチャンネルが、
MPEG4の実験の画像の転送のテストを行っていま
す。2002 年5月、サンプル機において、自制のアナログ機とのリンクを通して実験を行っ
ています。そして 2003 年1月には、独立した初めてのTD-SCDMAの端末を、重慶T
D-SCDMAの現場の実験通話を行っています。そして、今年6月には、独自に研究し
た第2バージョンのTD-SCDMAの小型の端末機が、重慶と北京で大唐とシーメンス
の基地局を通して通話を実現しています。
○これは、我々の第1バージョンの初めての第1フェイズに作った製品の中の全体のハー
ドの部品の構成図です。この中で、主にDSPを使っており、FPGAの機能を実現して
います。無線の部分については、TD-SCDMAは共有しております。これは、我々の
初めての製品で、第1バージョンです。フェイズ1の製品ですが、第2バージョンのもの
は、これに改良を行い、回路を大幅に集積して小型化しております。
○我々の第2世代の第2バージョンのテスト回路ボードは、つまり我々は市場でまだ産業
化、正式に製品化していないので、市場からケースを買ってきて、我々が自主開発した回
路のボードを中に詰め込んでテストを行って作ったものです。そして、テストサンプルの
第3バージョン、第3ラインにおいては、このDSPプラスARMで、つまりABBとD
19
BBの大部分の機能をこれに集積化して実現させています。そのほかに、マルチメディア
のプロセッサにより画像処理の部分の機能を実現しています。この部分については、我々
は現在まだ開発中です。
先ほども申し上げましたが、TD-SCDMAは中国が独自で提示したシーメンスが、
GMSを提出したときに大唐、そして中国と協力しながら打ち出したものです。TD-S
CDMAは、中国主体で提出したものでありますが、それは中国の標準だけではありませ
ん。これは、世界的な標準であることが重要です。これは、世界の第3世代通信の一つの
標準です。ですから、我々は中国がTD-SCDMAを発展し、事業を発展するうえでは、
我々としてもより広範囲な国際的な協力を求めていく予定です。
昨日、私は日本の一部の工業生産、あるいは研究開発の企業を見学させていただきまし
た。私としては、この方面、特に大規模生産の面においては、量産化において、日本は非
常に実力を持っています。そして、我々としても、このTD-SCDMAの発展の中にお
いて、日本との会社と協力をより発展できることを求めたいと思っています。先ほど楼先
生も言ったように、アジアのモバイルバス、つまり空中モバイルバス、エアバスです。私
が思うには、我々のTD-SCDMAは、すでに楼先生の構想に、一つの選択するチャン
ネルを提供したと思っています。
以上です。ありがとうございました。
(一木)
聶重慶郵電学院院長、ありがとうございました。
続きまして日本側ということで、ネクストウェアの豊田社長よりご発言をお願いしたい
と思います。ネクストウェア社は、私ども関西IT推進本部のナビゲーターとして、先端
的なご発言等を頂いております。企業としては、データベースに特化したネットワークシ
ステムの構築、運用、コンサルティングに至る一貫したサービスを提供され、メディカル
ウェア・コンサルティングの介護ビジネスといったビジネスにも注力されています。多業
種業種にわたる協力関係を保たれて、ビジネスを展開されております。それでは、ネクス
トウェアの豊田社長よりのご発言をお願いしたいと思います。
(豊田)
ただいま紹介にありましたように、ネクストウェアという会社は、主にソフト
ウエアの開発を中心とした、日本では大手企業のアウトソーシング、要するに、企業にお
20
けるITマネジメントを提供している会社です。最近では、その技術を生かしてメディカ
ルの分野、また流通の分野ではポスレジ、インターネットのレジスターなどを開発してい
るソート会社です。
今回は、
「今後の日中ビジネス提携への期待」というテーマで、こうして皆さんの前でお
話をする機会をいただきましたことを大変光栄に思います。また、こういうスライドを用
意してこなかったのですが、なかなかどのように話せばいいか分からないところもありま
したので、今日はこうして皆さんとお話しさせていただければと思いました。
私どもがやっている簡単な例を申し上げます。実は昨日東京で、中国のかたとビジネス
の商談をしてきました。彼はまだ 28 歳で、シリコンバレーに会社を作って、ウェブ関係の
ソート会社をやっておられるベンチャーのかたです。彼が作っているウェブシステムを
我々が国内で販売させていただくことになったのです。そういうことを考えますと、IT
とは何かということを昨日も彼と若干、
「実は、明日こういう席で、私がしゃべる機会があ
って、日中のビジネスの期待って何なんだろうね」と話しました。まだ彼も 28 歳で非常に
若く、私もまだ 40 歳になったばかりで若いのですが、要するに、「もうそろそろアメリカ
というフィルターは要らないのではないですか」ということが、今後のビジネスの一つの
期待ではないかと思います。
特に、ソフトウエアといいますのは人が作るものです。我々は、彼らの情報をシリコン
バレーというフィルターを通して技術を知ることができて、これはいいということを理解
して、
「この技術を日本で、どうぞネクストウェアに販売させてください」ということがで
きる。また、私どもはまだまだ中国企業のかたと、ビジネスとしては全然しゃべれていな
いところの反省も多くありますが、そろそろ技術的にも、ソフトウエアという目で見ると
差もなく、ウェブ・ソリューションという分野から、まさにマーケットの成長過程から見
ると、今我々は、きっとテーブルをつないでしゃべる段階にあるのではないかと思った次
第です。
そういうことで、特に我々はソフトウエアということで、このITというものを見ます
と、もともとソフトウエアにおける設備はいわば人間の英知しかないのです。ですから、
技術だけにとらわれずに、本来の人材交流といったものも大事ではないか。私どもも、ま
たアジアという目で見ますと、例えば昨年はベトナムのかたを会社に受け入れて、約1年
間、社内で一緒に働いて、ネクストウェア、弊社の技術を学んでいただきました。ただ、
うちの技術というよりも、例えば彼らが手にしたものは、きっと日本の商習慣や、日本に
21
おける医療分野であれば、医療の考え方をつかんでいただいたことが実は非常に大きな成
果ではなかったかと思っています。そういうビジネスの連携、またお互いが持っている技
術の大きなオープン性で、せめてうちがこういうことをしているという情報の開示も非常
に必要ではないかと思います。
この日本でビジネスをやっていくことは、海外から見ると非常に難しい。特に、言語の
問題があるかもしれませんし、社会的環境です。先ほど携帯電話が一つも買えなかったと
いうお話を聞いて、本当にそうだなと痛感して聞いていた次第です。そうした社会環境の
問題も含めて、もう一つ、まずお互いが情報を要求し合える間作りが大事ではないかと思
います。
例えば、この関西から見ると製造業、特に中小、中堅企業が非常にたくさんある地域に
なっています。この中には、携帯電話から見ると、非常に小さな会社ですが、例えばアン
テナの部分で8割ぐらいのシェアを持っている会社があったり、地図情報のソフトウエア
を、日本でも有名なところでやっている会社があったり、GPS、GISでは、ここがい
ちばんコンサルテーション能力を持っているといわれる会社が関西にあったりします。し
かし、海外から見ると、こういったものは理解できないことがたくさんあるのではないか
と思っています。
私は今回、初めて出させていただきましたが、皆さんもぜひ、ホームページを中国語で
書きましょうということもきっと大事でしょう。そういう要求を頂くとか。私は、ネクス
トウェアという会社をやっていますが、社団法人で日本パーソナルソフトウエア協会とい
う団体があります。これは、日本の独立系のパッケージなどを作っている会社が 400 社ほ
どが集まっている団体ですが、その中で、中国語で書いているホームページを持っている
会社は一握りにすぎない。ただ、中国には、何らかの形でビジネスをしている人が多い現
実があります。こういうところにも、ぜひ要求していくことが大事であるし、また、英語
だけでなく、日本語のホームページを作ってくださいという機会もいいかもしれません。
といいますのは、冒頭に言いましたように、そろそろ我々はアメリカというフィルター
なく、直接おつきあいができる環境になってくるべき間柄ではないかと思うからです。こ
のように思いましたのは、まさにソフトウエアというのは、要は、若い人材が、今までの
スキルを生かすこともありますが、夢を持ってソフトウエアを作り上げていく。ネットワ
ーク社会になると、ソフトウエアにかかわる影響、または恩恵が非常に大きくなってくる
と思っています。こうした技術の連携が、今後、例えば電子商取引という分野にも出てく
22
るでしょう。
来週大阪で、日中韓のオープンソース交流会があります。これは、OSやマイクロソフ
トを使わなくても日中韓ではいいのではないかと。例えば、リナックスという言語で、も
っと皆がお互いの環境の中で、使い切れるものができるのではないか。事実、こういった
ことが話し合われているのです。ですから、そうした環境にどんどんなってきているので
すから、こうした機会に、皆さんにぜひ胸を張って情報開示してくださいと。日本語のホ
ームページも、ぜひ中国の中で作っていただきたいと。また、私も会社に帰りまして、中
国語のホームページにならないかと社員に聞いてみます。今日ここには、こうして中国か
らたくさんの先生がたが来ていると聞いています。そうしたところから、将来のビジョン、
ビジネス提携に向けて、ぜひ皆様も、今回中国に帰られて、日本語でのホームページ作成
を検討いただきたい。我々も一度、そういうことを十分に検討していくことが大切ではな
いか。そして中長期に、我々人材が話し合える場を作っていくことが、今後の期待ではな
いかと思いました。
まだまだ若輩者ですが、最近、ソフトウエアにおける日中韓の交流を考えたときに、素
直にこういうことがあるのではないかということをお話しさせていただきました。
どうもありがとうございました。
(一木)
ネクストウェアの豊田社長、ありがとうございました。
最後に、日本側からということで、昨年の会議でもご発言いただきました、日本ビジネ
スコンピュータの石黒社長からご発言をお願いします。
(石黒)
皆様、こんにちは。ご紹介いただきました石黒でございます。昨年に引き続き
ということで、そろそろお互いにエールの交換はやめにしようかと、少し辛口の話もして
みたいと思って今日は参りました。そうは言いましても、何者であるかと。メンバーも代
わっているので、簡単に会社の紹介をさせていただきますと、JBCグループでIBMの
アジア地区ではナンバーワンのソリューションプロバイダーです。規模で 850 億円、ハー
ドウエアの売上比率は全体の 45%ぐらいです。コンサルティングから運用、開発まで行っ
ており、中国とのかかわり合いでは、私どもの会社は、一つはシステム開発の面では、大
連海事大学、日本でいう商船大学が作ったDMK(大連海輝科技)という会社で、この会
社は、CMMではレベル5まで取っています。大変急成長いたしておりまして、我々も資
23
本出資しておりますが、この会社との合弁会社を作りまして6年目になります。そして、
日本に会社を作り、大変発展しております。
もう一つは、シンセンにインパクトプリンターおよびPOSの開発を委託しており、そ
の商品を日本もしくは韓国に出しています。あるいは、増値税に合わせたようなプリンタ
ーを中国に販売するビジネスも行っている会社です。
申し上げたいことのまず一つは、東京でも大連や上海のつきあいなど、いろいろな会議
がありますが、我々同業者の社長といろいろな話をしていると、システム開発で中国と絡
んだビジネスで、ここ数年もうかった企業はほとんどないと。例えば、我々も先般、中間
決算を発表しましたが、ある大手でも中国とのシステム開発において、数十億の赤字を出
したのが実態です。ですから、ほとんどもうかっていない。この関係は長続きしないと思
います。日本は、中国のSEコストの安さの魅力に引かれていろいろな形でシフトしまし
た。しかし実態は、その開発はほとんどが苦労しています。確かに、PMの問題やクオリ
ティなどいろいろあります。しかし、中国は現実に、我々のパートナーもそうですが、C
MMもレベル5です。日本でレベル5を取っている会社はあまりありません。中国でもた
しか2~3社しかないと思いますが、非常に高いレベルなのです。それにもかかわらず、
お互いにクオリティで苦労し、なおかつもうかっていない。これでは長続きしないです。
これをひも解かなければ、今後の発展はそうはいかないでしょう。
我々は、実は中国とのおつきあいの中で、合弁会社が去年まで赤字でした。今年は必死
になり、リストラを行い、何とか初めて単年度に黒字にしました。いろいろな観点があり
ます。確かに、中国の経営者は、我々のつきあいの中においては、非常に若いです。アメ
リカとのつきあいの十数年の中で、
若い若いと思っていましたが、中国はもっと若いです。
なおかつやる気もある。しかも、長期的に物事を見ています。ところが、我々は実は米国
の影響もあるでしょうけれども、今は株式上場しているので、
四半期オペレーションです。
正直言って、目先の利益にかなり追われるのです。ですから、中国流の長期計画に基づい
た対応の中ではギャップが出てきます。
そのような問題がありますが、いずれにしてもシステム開発の面においては、お互いに
この分野で、もうかり、共生できる仕組みを作り上げていかなければ、ブームでシフトし
た会社はほとんど手を引くと思います。現に、日本のデノミ現象の中で、システム開発の
SEコストはかなり下がっています。地方に行くと、非常に安いコストで、SEが現実に
仕事をしていただける環境になりつつあります。中国のコストは、ブリッジSEを間には
24
挟んだ場合は、魅力を失いつつあります。したがって、より上流工程で生きる道を開いて
いかなければ、お互いにこの分野で仕事を伸ばすことは難しいと思っています。
二つめに申し上げたいことは、我々も製造して、小なりといえどもビジネスを展開して
います。確かにWTO加盟後、お互いの商慣習の違いはあれど、オープン性、仕事の進め
方については、以前に比べるとやりやすくなっていますが、まだまだ正直言って、いろい
ろな問題がたくさんあります。そういう意味では、実は私もこちらに参ります前に、製造
関係の者に「何か言いたいことはないのか」と、メモさせてきたのですが、ここでオープ
ンできるようなレベルの話ではなく、非常に低次元の話がお互いに多いのです。
正直言って、我々がいちばん悩んでいることは販売チャンネルです。中国におけるビジ
ネスのポテンシャルが大きいことは分かっています。中国の中で販売しようとした場合の
商慣習の違いは、いかんともしがたい大きな問題があります。ですから考え方は、やはり
中国とのビジネスにおいては、中国のかたがたに販売をお願いする仕組みを作っていかな
ければ難しいというのが、私の正直な実感です。
日本におけるビジネスでは、例えば先ほど申し上げたDMKという会社は、立ち上げは
私たちのビジネスが、その会社の8割以上を占め、中国ビジネスが2割でした。今日現在、
500 名近いシステム開発の集団になっておりまして、非常に高いレベルで、我々のビジネ
スは全体の3分の1で、あとはGEの仕事を請けており、日本のビジネスが3分の1と、
健全に成長しているのです。そしてついに、DMKジャパンという日本の会社を作りまし
た。やはり魅力があるのでしょう。私どもの社員が数名、引き抜かれたのか、私に愛想を
尽かしたのか、その会社に移りました。非常にいいビジネスをしています。そういう意味
では、一つの発展形態として、日本におけるビジネスということでは、合弁会社を作り、
自らこちらに進出してくることでは、そういうケースもありうると思っていますが、次は
我々自身が中国に出る番であると思っており、そのあたりを模索しているところです。機
会がありましたら、ぜひお声をかけていただきたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
(一木)
ありがとうございました。
当初は 15 時と考えていましたが、現在、15 時 22 分です。15 分間のブレイクを取りたい
と思います。スタートは3時 40 にしたいと思います。よろしくお願いします。それでは、
これにて前半を終了したいと思います。
25
***休憩***
(一木)
それでは、ラウンドテーブルを再開したいと思います。
後半は質疑で、こちらからご発言をお願いしましたが、ご発言に対する質疑も含めて、
自由にディスカッションを進めてまいりたいと思います。私は、昨年もモデレーターをさ
せていただきましたが、
二つのグループに分かれて、もう少し小ぶりな部屋でやりました。
ラウンドテーブルであるならば、ラウンドにならなければいけないのですが、非常に多く
のかたにご参加いただいたので、本来は円形のテーブルについていただくところでござい
ますが、会場のスペース等の関係もあり、こういう形になったことについて、代表してお
わび申し上げたいと思います。
本来、全参加型のセッションですので、後半はフロアの皆様から積極的なご発言をお願
いしたいと思います。時間は、予定どおり 16 時 30 分となっておりますので、最後に 10
分ほど、当ラウンドテーブルのまとめの時間をちょうだいして、それまで自由な発言をお
願いしたいと思います。
質問、ご発言のかたは挙手をお願いしたいと思います。
(肖
文) 三洋電機の肖
文と申します。
雲南金時空の楼総裁にご質問したいのですが、
先ほどご提案がありましたように、一つのコンセプトを提出したと思います。
つまりモバイルバスというコンセプトを提起されていますが、これを実現するために異
なる通信標準、規格の問題が、消費者にとって不便であると。私の考えでは、各国がそれ
ぞれ異なった通信標準を持っている理由の一つは、技術的な異なり、違いがある。もう一
つは、各企業とも独自の競争力を強めるために、わざと他社と違う標準を設けて、他者と
の優位性を強調するために生じているのではないかと思います。しかし、統一した標準を
設けてしまうと、
企業間の利害の衝突をどのように解決すべきであるか。この点について、
お考えをお聞きしたいと思います。
(楼)
この問題は、非常に大きいと思います。一つの技術のスタンダードの背景には、
たくさんの利益の分配の問題があります。このスタンダードの制定から、実際の実施に至
るまで、要するに産業界、消費者を含めて、成功したケースもたくさんあると思います。
26
もちろん失敗した例もあると思います。ですから、成功例から調整の例を学んでいかなけ
ればいけないと思います。しかしながら、具体的には非常に難しいと思います。
(一木)
引き続きまして、ご質問はございませんでしょうか。あるいは、ぜひご発言さ
れたいというかたでもけっこうです。
(
)
先ほど楼先生は、非常に原則的な答えしか言っていません。この問題は、標準
化設定の過程の中で、グローバルに統一した移動通信の全体の標準図、あるいはそれを描
き出すことを十分に言っていると思います。しかしこのことは、人類が自然科学、科学技
術の発展の過程の中で、ずっと探求してきた問題でもあります。つまりITUは、第3世
代の通信の本来の定義、つまりIMT2000 を定義したとき、標準化を提出したときのもと
もとの構想自体の意味は、今まで統一していなかったばらばらの標準を第3世代において
統一することが本来の発想でした。しかし、やはりこれが実現しなかったのが現実です。
ですから、やはり各利益集団の間のITの面においても、結局は折衷案を取らざるをえな
い。つまり三つの標準を取ってしまったと。しかし、この三つの標準の間でも、何とか発
展する過程の中で、いろいろなマルチ方式を取るとか、何とか共同で使えるような方式、
方法を探求することができます。しかし、どうしても標準が一つではないことは事実です。
ですから楼先生の話は、第3世代の問題も、すでに一つの標準になれないということで
す、しかし、我々は共同に努力し、その次のポスト第3世代として、この考えを再度、人
類として新しい標準化を設定することに対する挑戦ではないでしょうか。
我々が、第3世代に一部仕事をなすことはたくさんあると思います。例えば、現在三つ
ある標準の中において、私は先ほどお話の中でも申し上げておりますが、TD-SCDM
Aの方式は後発した標準です。しかし現在、逆に技術的な先行性から、後から提出したに
もかかわらず、三つめの標準として認可されたのです、ですから、WCDMAとCDMA
2000 は、それぞれFDTの、つまりバンド分割方式というシステムに基づいて提出された
標準であり、主に音声通話、音声業務に基づいて設定されたものです。今後の全体的な移
動体通信は、マルチデータ、マルチメディアの通信で、例えば画像などを含めて、大容量
のデータ通信を対象としたものに適した標準に発展すべきです。ですから、TD-SCD
MAがそれに適した面を備えているので、
三つめの標準として認可された経緯があります。
同時に、人々はすでに予言しています。今度の第4世代の移動体通信は、必ずFDTの
27
方式でないことを予言しています。皆さんが、言っております。ですから、こういったチ
ャンスがあるのでTDD、TD-SCDMAが現在まで発展してきた機会として、特にア
ジア地域において、何とか協力できるのではないか。ここにおいて、皆さんで協議できる。
何とか手を携えて、日本の成熟したエンジニアリング技術を用いて、我々がTD-SCD
MAの標準と技術において、得ている成果に基づいて協力していけば、TD-SCDMA
の発展は、先ほど楼先生がおっしゃったような次世代の、今後の統一した標準を人々に享
受させることができる一つの国際ローミングができることを、実現できることをもたらす
のではないかと思っています。
ありがとうございます。
(松下)
松下電器の松下です。今話題になっている標準化の問題は、非常に重要な問題
ですが、非常に難しい問題であると思います。我々の家電などの方式では市場の支持をよ
り多く得たところがディファクト・スタンダードの形で、結果的に標準方式になる図式が
ありうるのですが、通信の世界では、それぞれの国の認可も伴います。国が、それをどう
しても自分の国に優位なものを認めることで標準化が難しい。
先ほどお話にあったように、
企業どうしの競争以外に、国どうしの競争もあるので、難しいことがいえると思います。
今、お話にあったTD-SCDMAは、後から出てきたけれども、技術水準が高いので、
三つの中の一つになったというお話ですが、技術進歩が非常に激しいので、後から出てき
た方式のほうが技術的に優れているのは当然の話になります。それよりさらに後から出て
きたものは、またそれよりもさらに優れたものになることが当然になります。したがって、
一つの方式に標準に統一することは、ある意味では技術の進歩を妨げる要素もはらんでい
るだけにまた難しい要素の一つになっているのです。
私は、現実的にはそういうことからいうと、全世界を一つの方式で統一することは、非
常に難しいと思います。ただ、携帯電話については、技術進歩が非常に激しく、なおかつ
小型化していかれる方向なので、一つの携帯電話の中に、複数の方式を盛ることにより、
使っている側からとれば、あたかも一つの方式で全世界と通話ができる。あるいは、情報
のやり取りができる形は、現実的なのではないかと思っています。
以上です。
28
(一木)
ありがとうございます。
(
私は、松下先生のご意見に非常に同感です。そして、私も先ほどお話、紹介で
)
も申し上げましたが、この発展過程の中で、何とかしてユーザーの要望を満たす。つまり
多種の標準の中で、過渡的な標準化として、第3世代にSR標準がありますが、これはも
ちろん違いはあります。もちろん他の問題もあります。例えば、GSMからTD-SCD
MAになっていくのはやはりサインがあります。ですから、我々が今取っている方式は、
ネットワーク間の無線の方式を取って、我々が進めている、一つの半導体のブランドの考
えは、このバンド幅の中で、ソフトによって、あるいは何か異なったソフトを付け加える
ことによって、異なった標準化の中で、通信ができる方式を探索しています。
(
)
補足したいと思います。松下さんがおっしゃったこの家電と通信の標準の制定
ですが、その過程はやはり違うと思います。家電は、やはり市場によって決められる部分
があると思います。通信の標準は政府機関の関与、または各地域間の利益に絡んでくると
思います。また、電気通信会社に対する政策も重要であると思います。どの標準を取るか
にかかわってくると思います。ですから、私が思うに、ヨーロッパにおけるGSMの基準
の生成の過程を参考にするべきではないかと思います。
(
)
はっきり申し上げないのですが、我々もTD-SCDMAの標準化の設定過程
の中において、先ほど私が申し上げました第3世代の標準の過程では、ITUにずいぶん
力を注ぎ、精力を使っています。これは、ITUが統一した組織を作って進めています。
もちろんGSMの成功は実質上、国際電気通信連合の、
つまりヨーロッパのこれらの国が、
この中で多くの機能を発揮しております。しかし、GSMの成功の一つの要素としては、
中国が 90 年代、大々的に移動体通信を発展する時期においてどの方式を取るか。GSMな
のか、TD-SCDMA方式であるか、つまり中国がGSM方式を採用することにより、
GSMは成功したといえます。ですから、これも本来、現在、GSMはヨーロッパ側も認
めなければいけない事実であると思います。ですからヨーロッパ、アメリカを含めて、す
べて中国の市場を見定めて、ねらいをつけて、中国の市場が最終的にどの標準を採用する
かによって、国際的な標準が決まるのではないかと思います。ですから、これが現実であ
ると思います。
29
(
)
他の質問について討論するのであれば、このことは申し上げませんが、このG
SMがどうして成功したかについて補足したいと思います。
ヨーロッパの移動通信は、まず第1世代がアナログ方式で、それには四つの基準があり
ました。イギリスなどなど、いろいろな基準がありました。この基準がアジアの国、世界
の各国とは違っておりました。ヨーロッパの人々は、非常に交流が盛んであったというこ
とです。ですから、こちらに住んでいるけれど、隣の国に行って仕事をしたり、学校へ行
ったりということが、ヨーロッパでは頻繁にあったことも関係があると思います。ですか
ら、もしたくさんの方式が存在すると、実際の勉強や仕事にも障害が出るという意味もあ
ったと思います。
第2世代の基準は、ヨーロッパで通用する汎用の基準の考えでした。それはデジタルの
基準ですが、実際にヨーロッパにおいて、統一された基準が必要であると考えられたから
です。そして、GSMの開発グループによってそれが開発されたのです。それから、たく
さんの企業もかかわり合って、基準が作られてきました。第2世代のときに、全世界的に
各世界のローミングを考えると、その各国間の交流がヨーロッパほどは盛んでなかったこ
とがあります。中国も、比較的閉鎖的な国でした。しかし、今は中国も開放的になり、ま
たWTOにも加盟し、交流の範囲が広がっています。それから、ビジネスを行ったりして、
相互の交流が盛んになっています。他の国、例えば日本、アメリカにも、その必要性があ
ると思います。言葉の問題でも、国連で英語がよく使われております。この通信でも、例
えば楼さんがおっしゃっていたように、日本に来て携帯が使えない問題がありました。こ
れは、方式が違うということがあります。しかし、方式は同じです。楼さんが持っている
CDMAは一つの基準ではありますが、使っている周波数や帯域が違うという問題がある
と思います。
しかし、もっとたくさん問題があると思います。一つめは、標準の統一は技術的には可
能です。これは、実際的には問題ありません。二つめは、実際にニーズがあることです。
全世界的なビジネスや学習の需要がすでにあるということです。国際的な世界間出張が、
まるで国内出張のように頻繁になってきています。三つめは、
特にアジアで優先的に移動、
モバイルバスといったものを実現させるべきであると思います。
この移動通信のニーズは中国、日本を含めアジアにおける携帯電話の更新は、ヨーロッ
パよりも非常に早いです。ヨーロッパでは、3年ぐらいに1回取り替えます。しかし、日
30
本ではもっと早いです。このような友好的な交流のある国々の間で、こういったことを考
えることは大事であると思います。ですから、これを実現するには、まだまだ時間がかか
ると思います。しかし、中国の人口は、世界の3分の1を占めるまでに至っておりますか
ら、こちらが何か方式を取れば、それを他の国もまねていくと思います。しかし、この問
題は、ここで討論すべき問題ではないと思いますが、
以上が私の観点です。ありがとうございました。
(デイ)
この問題につきまして、少し補足させていただきたいと思います。私は、中国
移動体通信連合会のデイと申します。私は、先月北京で日・中移動体通信技術フォーラム
を行い、日本側は総務省のかたがたが出席しております。日本の大企業のかたを連れて、
中国においでくださいました。中国側も、中国の普天の総裁、中国工程院の院長がこのフ
ォーラムに出席しています。この会議では、第3世代における協力に基づいて、第4世代
で何とか協力していくことに共通認識を得ています。
先ほど楼先生が提出したモバイルバスという概念は、構想をより具現化したものではな
いかと考えています。この構想は実現できると思います。
実現するためには、まず移動体通信が東南アジアにおいて、西洋人と東洋人の移動体通
信に対する理解が異なっていることがあります。中国人と日本人は、移動体モバイル機器
を非常に溺愛しています。我々のこのニーズは、ヨーロッパ人以上に強いものがあります。
東アジアの市場において、それに協力する市場が、世界的に大きな影響を及ぼす可能性を
持っていると思います。ですから、日中両国は、視点をより長い目で着眼し、協力してい
くことは、世界に対する影響が大きいと思います。
我々は共通の文化圏を持っているので、
共通の文化圏、経済圏に及ぼす影響は大きいと思います。
以上が、私の補足でした。ありがとうございました。
(一木)
どなたか、ご発言はございませんでしょうか。
前半で、携帯のモバイルバスのご提案が楼様よりありました。もう一つの視点として、
手段としてのソリューションとしてITをとらえたときに、非常に可能性を秘めてはいる
が、さまざまな阻害用件もあるし、解決されなければならない問題もあると。その中で人
材、知識といった分野の交流も、重要ではないかというご発言もあったと思います。
携帯分野の議論は、非常に重要であると思います。同時に、これを使ったソリューショ
31
ンも併せて考えていく必要があると思います。モデレーターが発言するのはいかがかと思
いますが、そちらに関するご発言がもしございましたら、挙手をよろしくお願い申し上げ
ます。
(白土)
アジアロジスティクス研究所の白土と申します。
先ほど石黒様は、非常に重要なポイントをお話しされたと思います。なかなか利益を上
げている企業がない。私も、中国の関係のビジネスを 88 年からずっとそれ一色でやってき
ています。IT分野だけでなく、非常に広範な産業分野で、その話をずっと聞き続けてき
ました。特に、石黒さんがかかわっていらっしゃるところで、利益を上げられない共通の
原因でお気づきのところがあればお話しいただければ。
これがまた、もう一つ、制度的なことを背景としているものもあるかもしれません。例
えば、
ソフトの現物出資に対する対価について、制度的な制約があるという話も聞きます。
そのようなことについて説明いただければありがたいです。
(石黒)
ご質問の件ですが、当然プロジェクトがうまく進まない理由は、受け手側と発
注者側両方の責任があると思います。受け手側は、例えば私たちが仕事を中国にお願いし
た場合、先ほど大橋さんからもご指摘がありましたように、最大の問題はPMのスキルで
す。プログラム開発のスキルは非常に高いです。恐らく日本と変わらないか、場合によっ
ては凌駕するような面もあると思います。結局は、全体を取りまとめる力のところが、正
直言ってまだまだこれからというところがあります。
ところが、PMの世界ではPMPという世界的なレベルでの資格の制度があります。中
国人のかたたちは、これをたくさん取っておられます。日本人は意外と取っていない。と
いうことは、日本の発注者側の責任もあると思っているのです。国際的なレベルでのライ
センスのPMのスキルは中国は高いと思います。日本の仕事はどちらかというと、かなり
仕様が変わったり、場合によってはサービスイン後、速やかにまたカバーして物事に変え
るような、けっこうややこしい要望があることは事実です。そういう仕事をお願いした場
合は大体トラブっています。ですから、お願いする場合の切り出し方のしかたに工夫が必
要なことが、私たちの数年の学習です。
そうはいっても上流工程の中で、もっと一緒に協議したい。そこをひも解かなければ、
32
お互いに、この分野で成果を上げにくいところがありますから、お互いに上流に取り組ん
でいかなければ、単にプログラム開発だけでは、もっと安いいろいろな手段がある。生産
性を上げるというような、いろいろな取り組みもありますから、単にコストが安いだけで
は難しいと思っています。
仕事の出し方の問題、それに対して最後まで、お客様レベルまで責任を持っていただけ
るマインドが大きな理由ではないかと思っております。少し事を期待しすぎて、各社とも
急ぎすぎたのではないか。IT業界は、どちらかというと中国とのつきあいがまだまだう
ぶなほうですから。他の業種は、大変なご経験もお持ちになって、いろいろなことを経験
されていると思います。IT業界は比較的新しい中で、事を急ぎすぎたのではないか。特
に、ITの中でも情報については、今第2フェイズを迎えつつあるのではないかというの
が正直なところです。
(
)
少し関連についてお話しさせていただきます。私の経験から申しましても、や
はりソリューションは文化とのつながりが大変強いといいますか、根底にはその国の文化
があると思います。ですから逆に、これまで私どもも、ソリューションということで何十
年もやってきていますが、日本のソリューション業界は、日本固有の文化という壁で、あ
る意味では守られている面もありました。
私はそのときに、これから見たときに、今の石黒さんの話ともつながると思いますが、
こういったソフトウエア業界の仕事の評価は、だれが何か月かかわったか、人間がどれだ
けの時間をかけたかによって価値が評価されていることが、こういう問題の根底であると
思います。やったソフトウエア開発の仕事の価値がグローバルな尺度で評価されるように
なり、その対価に対して払う時代が来れば、単に生産性が安いから、こちらに仕事が流れ
るといったことから離れて、本当に価値を生む仕事に対して、仕事が向いていくと思いま
す。ですから、これは従来からいわれて久しい問題でもありますが、ソフト業界自身の評
価のあり方が、そういう中で仕事をしている者としては、中身で評価してほしいというこ
とを訴えていきたいと思っています。
(石黒)
少し抽象的に申し上げたので、分かりにくいかもしれません。もう少し具体的に
申し上げますと、中国のSEのかたが一人 15 万円とします。今、多分日本では、地域に行
くと 40 万円ぐらいで仕事ができるのです。
中国に上流工程を含めて仕事をお願いしようと
33
して、ブリッジSEという中間のSEを間に入れると、全体の比率があまり差がないとこ
ろまでいってしまうのです。なおかつ地域の差と、コミュニケーションを考えると、そう
いう面でのお願いのしかたは、逆にいまや魅力を失いつつあることがいえると思います。
(一木)
会場から、ご発言はございませんでしょうか。挙手をお願いします。
(
もう1点、日本に来た感想を申し上げたいと思います。
)
私はこの日中経済討議会は三回めです。今までの話題はすべて移動体通信で、モバイル
通信業界の話でした。日本の松下、三洋電機、三菱などの大企業は、すでに端末製品が中
国市場に入っております。そして、こういった世界レベルの世界的な企業が、すでに中国
市場において、欧米の企業と競争を行っております。しかし、現在の状況から見ると、そ
の効果、成果はさほどいいとはいえないと思います。逆に、中国のこういったモバイル端
末企業は、非常に短い3~4年の時間内で、中国市場の約 50%のシェアを取っている事実
もあります。
この事実から、私は一つ考えさせられております。私は分析を行いました。日本のこれ
らの大企業が中国に行って、多くのパートナーを探しています。これは、すべて中国の大
型の国営企業がパートナーとなっています。私の感じとしては、日本の企業が中国に参入
するとき、中国でパートナーを探すときは、最大のパートナーを探すという考えを持って
いるのではないか。生命力、活力があるかどうかについてはあまり考えていない。つまり
大きければいいという考えで入ってきている節があります。ですから、日本のモバイル企
業が中国に入って、非常に困った状況に陥っているのではないかと思います。経済的な収
益、利益を上げる面でも、大きな制約を受けていることが事実としてあります。
逆に考えてみると、中国で成功している中小企業、ベンチャー企業が作り出した端末製
品は一度に十万台、百万台というものを作り出すことができるようになっています。これ
らの端末製品の生産は、もちろん国が許可を出しています。あるいは、現在中国では、二
十数社の国の認可証を持った企業があります。それ以外に、二十何社もあることを知って
います。認可証を得ている企業は、現在、中国の経済市場の発展を促しているものの多く
は、水面下の隠れた小さなねずみのような中小企業が、実際の推進力になっていると思い
ます。彼らはどうして生き残っているのかが、非常にキーの問題になっています。
私は、日本の企業を象に例えました。つまり彼らの実力から見ると、彼らは象であると。
34
これは、非常に立派なものです。しかし、この象が中国の環境に行くと、生存能力である
市場に対する感度、あるいは反応スピードは、どじょうやねずみに比べてはるかに劣るこ
とが事実ではないかと思います。ですから、私は一つの命題が言えるのではないかと思い
ます。日本の象は、中国において、だれと、つまり中国の大企業の象と協力していくのか、
ねずみやどじょうの企業と協力していくのか。
私は三洋電機を見学させていただいたときにも、この問題を提起していただいています。
私の経験からいうと、私が使っているものは三洋が出したもので、三洋が出している製品
でした。これは初めてのカラー製品で、中国の市場では非常に興奮して、
「よくぞこういっ
たいい商品を中国の市場に持ってきた」と感激したものでした。しかし、間もなく私も携
帯を換えてしまいました。私は現在、雲南金時空が作った製品を使っています。もっと小
さくて、よりカラフルで、価格がより安い。
中国のこういった小さなねずみ企業の市場能力には、もちろん問題があります。中国の
小さい企業は、自分でブランドを出せないので、ハイアールのようなブランドを使ってい
ます。彼らは、ハイアールのブランドを使って、自分たちの製品を市場に押し出していま
す。逆に、ハイアールと協力できるのであれば、中国にいる日本の三洋、松下と協力でき
るのではないか。つまり日本の端末携帯は単一性があります。つまり販売方針もあるので
はないかと思います。日本の市場は、完全請負制と一括生産で、完全に売り切り制を取っ
ているのではないか、そして、こういった方針に問題があるのではないかと思います。
日本の企業は松下、三洋にしろ、中国市場に入ったところ、つまり必ず中国市場に対し、
独立的に中国の市場を研究する体制を設けるべきであると思います。このことを成し遂げ
れば、中国市場で成功できると思います。そして、中国における投資が回収できない状況
を打開できると思います。つまりどのようなパートナーを探すかです。
もう一つ重要なことは、多角化な協力関係を構築することであると思います。日本は、
強力な研究開発を持っています。資金もあります。しかし、中国の研究開発能力、あるい
は市場開発能力のある、こういったねずみ企業をいかに探すかにより、松下、三洋のブラ
ンドを中国の市場において広めるかも重要であると思います。
同時に、中国の企業のこういったブランドは、日本企業のブランドの市場での売価が異
なる点に問題があります。金時空という雲南の、あるいはシャングリラの製品に松下、あ
るいは三洋のブランドをつけた場合、価格を 1000 円上げることができます。この 1000 円
は三洋、あるいは松下にとっては、非常に利益をもたらすと思います。ですから具体的な
35
考え、アイデアがあると思います。
先ほど我々は、空中のエアバスという概念を提起しておりますが、具体的な小さな点か
ら手をつけて、こういったプロジェクトから協力していけば、まだまだやることはたくさ
んあると思います。そして、日本企業も現在のように、このような企業に、こんなに疲れ
た思いをしなくても思います。ですから象は、ねずみのネットワークの中で、市場でより
多くのものを探せると思います。ありがとうございました。
(
)
今のご指摘は非常に重要な問題であり、また確かに的確なご指摘であると思い
ます。ただ、我々日本企業の立場からいうと、今と違い、我々が投資をし、合弁事業を始
めたころの状況で申しますと、象の企業は、ある程度内容も分かっておりましたが、ねず
み企業は、非常に勢いのいいところであっても、その内容がよく分からない。いわゆるト
ランスペアレンシーの不足により、合弁事業を営むのに、怖くてしかたがないという状況
があったことも事実です。したがって、今から合弁を考える場合に、ねずみ企業でいいと
ころがあればやりたい気持ちはありますが、今でもなおかつ、欧米や日本の企業の透明性
と比べるとまだ足りない。このあたりは、ぜひご努力を頂きたいと思います。
先ほどの携帯電話のことについて、もう一言申し添えたいと思います。確かに中国の携
帯市場の大きさは、世界中のどこの企業も無視できない。市場として、非常に大きいもの
があります。したがって、中国が自分の規格を取ってくれるのであればというか、中国に
規格を採用してもらいたいという努力は非常にすると思います。しかし、市場が大きいか
らといって、中国の企業が作り出した新しい方式が、世界を制覇することはまず無理であ
ると思います。先ほど申し上げたように政治的な要因で、ヨーロッパはヨーロッパの企業
の作った方式しか採用しないと思います。アメリカも同じことです。ただ、先ほどおっし
ゃっていたように、アジアが一つになり、アジアのスタンダードを作っていくことには私
は大賛成です。しかし、それが世界を制覇すると夢見るのは、非常に非現実的であると思
います。
以上です。
(
)
松下さんは、先ほども交流したことがあります。そして、松下さんはずっとT
D-SCDMAについてのフォローの研究しており、
いろいろな仕事をなさっております。
ですから、私の考えでは、我々のTD-SCDMAのアジアでの市場を小さく見るべきで
36
はないと思います。というのは、私は非常に自信を持っております。TD-SCDMAは、
必ず世界標準になることを信じております。しかし、どれぐらいのシェアを取れるかにつ
いては、我々の努力にかかっていると思います。私の希望としては、松下さんのような大
企業が、より早く決断してくださることを希望します。ありがとうございます。
(
)
皆様のお話を聞いておりまして、私自身も中国の経験からいって、先ほどソフ
トウエアで、ソリューションあるいはコンテンツベースで、日中間の今後のビジネスの発
展性は、私はないという見方です。特に日本との関係ではない。ましてや日本バージョン
で、日本市場向けは、いろいろな意味合いからいって、今後、日本も努力しなければいけ
ないのですが、多くの高級人材も、あまり日本には相対的には関心がないです。もう一つ
は先ほど大橋社長の文化やソリューションなどで、皆様が中国進出している日系企業を相
手にするのであれば別ですが、その逆もしかりではないか。
逆に、今の携帯電話もそうですが、中国が近々に世界スタンダードを発信していくこと
も、松下先生がおっしゃったように考えにくい。私自身はハードウエアをやっているので
はありませんが、別な意味で、素材ではなく、応用商品の中のハードウエアにおける共同
開発、あるいはベーシックなところのソフトウエアです。コンテンツやソリューション志
向のソフトではなく。今は、ソフトウエアなしには、ハードウエアはファンクションしな
いのです。そういったところで、案外皆さんはソフト、ソフトとか、ソフトに寄りよりす
ぎているのではないか。中国側にもそれはあるし、もう少しハードウエアにチャンスを見
出し、あるいはお互いに考えて、そこにまた別な意味でのチャンスがあるのではないかと
いう見方をしています。ソフトウエアは大事ですが、偏重しすぎると、ましてやソリュー
ション・ベース、あるいはカルチャー・ベースになると、日本と中国の間には、私は大し
た期待はできないという考え方をしておりますが、またご意見を頂ければけっこうかと思
います。
(白土)
ソリューションやソフトで、文化を非常に色濃く反映するものと、極めて実務
的というかデジタルな世界があります。私は貿易や物流をやっていますが、これは必ず国
境を越えたものが必要になると思います。
松下さんがお出でですが、
多国籍企業になれば、
当然情報を一元管理していきたいということになってきますし、その情報が貿易管理、あ
るいは通関に、中国も日本もそれぞれで進んでいる。これをいちいち情報の入れ直しをや
37
っているのですが、近い将来は輸出国あるいは輸入国で、一度入れればそれが全部使える
という構築をこれからどんどん進めていかなければいけないと思います。
ただ、ここにおいて問題は、そういう取り組みをしようとするときに、まだまだいろい
ろな障害があります。一つは、制度的な障害です。もう一つは、開発費用が正当に評価さ
れるであろうか。先ほど石黒さんにご質問した意図の中の一つに、日本の高コストの開発
費用を中国ビジネスで投資、あるいは売買をやったときに、まず一つは、なかなか正当に
評価してもらえない。これは、民間ベースで合意になっても、外貨送金において、為替管
理国が口出しをしてくる。あるいは、お役所が口出しをしてくる。それだけ当事者でもな
く、必要な知識もあるとは思えないところが、法的な権限を持って横やりを入れてくる。
これが、一つビジネスを連携するうえでの障害になっているのではないかと感じたのです。
くどい話になりますが、ソフトの面でも連携の必要性は非常に高いと思います。ただ、
そこにおいて、制度的な制約が強いのではないか。これは、民間の日中が協力して、改善
努力をしなければいけないのではないかということで、質問であるような、意見であるよ
うなことを申し上げた次第です。
(
)
制度的な問題は、中国は日本にだけ特別にうんぬんではないと思います。基本
的に、欧米企業に対してもです。しかし、私の知る限りでは、欧米企業のほうが日本より
ももうかっているところが多い。なぜか。なぜそうなのか。いろいろな意味で、民間だけ
の問題ではありません。政治がだめだからということも、私は非常に大きな問題であると
思っています。
もう一つは、やはり仕事ベースでいって、私自身のプライベート・カンパニーからする
と、発注能力の問題です。発注能力が非常にウィークであることも大きな問題として提起
したいと思います。
(一木)
ありがとうございます。4時半の予定が、少し食い込んでいます。ラウンドテ
ーブル後半のご発言は、これでいったん終わらせていただければと思います。
最後のまとめですが、大きく分けて携帯と携帯を中心としたインフラと、ソフトウエア
について、いろいろと議論があったと思います。発注者側の責任も双方あり、制度上の制
約もあると思います。大きくは、楼雲南金時空移動通信技術有限公司董事長のご提言にあ
ったように、モバイルバスのようなアジアン・スタンダードについては、皆様も大体大き
38
く合意いただいているのではないか。それをどう実現するかについては、いろいろとご意
見がございましたが、基本は民間を主体に、ニーズをもとに議論を進めていくことがいち
ばん大切なことではないかということが、方向感としてはあるのではないかと思います。
大変長い時間をかけていろいろとご議論を頂きました。大変実りある議論ができたと思
います。豊田社長からご発言いただきました、リナックス系のオープンソースは、私も非
常に大きなニーズが実はあるのではないかと思います。ただ、それは普通のソリューショ
ンというより、むしろ双方の強みを生かす意味では、組み込み型のところには仕様の切り
出しも含めて、非常に分かりやすく、かっちりした仕様の切り出しができる分野でもある
ので、個人的な意見でモデレーターが発言すべきではないかもしれませんが、ハードとソ
フトの中間領域は、可能性があるのではないかとも感じております。
非常にバラエティなご発言がございましたけれど、今後も日中間の発展に向け、本日の
議論が皆様の活動、あるいはビジネスに向けて、お役に立てればということを祈念してお
ります。皆様のご参加に対して、心より御礼申し上げます。ありがとうございました(拍
手)
。
(司会)
どうもありがとうございました。それでは、これでラウンドテーブルを終了さ
せていただきます。
なお 18 時から隣のリーガロイヤルホテル2階の山楽の間におきまして交流会を開催さ
せていただきますので、ぜひご参加いただきますよう、どうぞよろしくお願いします。レ
シーバーにつきましては机の上に置いていただいてお帰りいただきますよう、よろしくお
願いします。これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
39