「新電力ネットワークシステム研究会」報告書

IAE-C0239
「新電力ネットワークシステム研究会」報告書
平成 15 年 6 月
財団法人 エネルギー総合工学研究所
はじめに
電気事業を取り巻く環境は、地球環境問題への対応、電力自由化・規制緩和の進展等大きく変
化しつつある。このような中、新しい電力供給システム技術分野について、経済産業省資源エネ
ルギー庁の委託により平成 13 年度に「新電力供給システム技術検討会」を実施し、その成果とし
て「系統電力と分散型電力の調和」のとれた 21 世紀にふさわしい新しい電力ネットワークシステ
ムの将来像を提言するとともに、これを実現するための技術開発課題を整理したところである。
「新電力供給システム技術検討会」報告書で整理された将来像は、分散型電源の系統連系を容
易にし、分散型電源や制御技術等を活用した新しい電力ネットワークシステムによって、電力の
安定性、ニーズに応じた供給電力品質の選択、需要家の利便性の向上、環境性能の向上を実現す
ることを目的に、現時点で近い将来に実現可能と考えられるシステム像として整理されたもので
ある。
電力ネットワークシステムの将来像は、今後の分散型電源やIT技術の普及状況など不確定要
因もあるため、現時点で実現可能と考えられるシステム像として整理したものであるが、具体的
な技術開発にあたっては、想定した「電力ネットワークシステムの将来像」を基に、いくつかの
不確定要素を考慮しつつ、今後求められる具体的なシステムの方向性をシミュレーション等によ
りその効果を検証し、社会情勢の変化に対応するシステムの実現に向け個別の技術開発を実施し
ていくことが重要であるとの方向性が示されている。
本報告書は、経済産業省資源エネルギー庁の委託により、「電力ネットワークシステム」の将来
像としてまとめられたシステムの内、需要家の電力品質ニーズに応じた電力供給を行なう「品質
別電力供給システム」、分散型電源を多数台統合して制御を行なうことにより電力供給・系統運用
への貢献を可能とする「分散型電源の統合制御システム」、多くの分散型電源が電力系統に柔軟に
連系できるよう、現在の系統設備をベースに制御を行なう「電力系統制御システム」を対象に、
これらを実現するための技術課題を中心に整理を行なったものである。
なお、個々のシステム検討にあたっては、システム概要設計やシミュレーション等による効果
の把握など技術的な検討に加え、システムの経済性についても検討を行なったものであり、今回
の検討結果が、今後の技術開発に適切に反映されることを希望するものである。
最後に、本報告書の取りまとめに当たり、本研究会の委員長をお願いした正田英介東京理科大
学教授をはじめ、精力的に検討を重ねて下さった委員各位に心より謝意を表す次第である。
平成 15 年 6 月
財団法人
エネルギー総合工学研究所
[目
次]
はじめに
Ⅰ.概要
1.研究会の目的と検討の進め方
…………………………………………………………………
1
2.新システムの技術検討と評価
…………………………………………………………………
1
3.新システムの市場性及び経済性
………………………………………………………………
4.新システムに資する基盤技術と技術課題
5. 今後の新システムの方向性
8
……………………………………………………
10
……………………………………………………………………
12
Ⅱ.本編
第1章
研究会の目的と検討の進め方
……………………………………………………………
1.1「新電力ネットワークシステム研究会」の設置目的
………………………………………・
15
……………………………………………………………………………
15
………………………………………………………………………………
16
1.2 新システムについて
1.3 本研究会の進め方
第2章
15
新システム技術の検討と評価
……………………………………………………………
17
………………………………………………………………………
17
…………………………………………………………………………
17
2.1 品質別電力供給システム
(1) システム検討の進め方
(2) システム要件検討のための実態調査
…………………………………………………………
18
(3) システムの考え方
………………………………………………………………………………
20
(4) システム基本設計
………………………………………………………………………………
22
(5) 品質別電力供給システムの評価
………………………………………………………………
31
2.2 分散型電源の統合制御システム
………………………………………………………………
33
…………………………………………………………………………
33
(1) システム検討の進め方
(2) システム要件検討のための実態調査
33
………………………………………………………………………………
35
(3) システムの考え方
…………………………………………………………
(4) システムの技術要件
……………………………………………………………………………
(5) 系統効果シミュレーション
……………………………………………………………………
(6) 分散型電源の統合制御システムの評価
37
43
………………………………………………………
48
2.3 電力系統制御システム
…………………………………………………………………………
54
(1) システム検討の進め方
…………………………………………………………………………
54
(2) システム技術要件検討のための実態調査
54
………………………………………………………………………………
56
(3) システムの考え方
……………………………………………………
(4) 分散型電源の導入に伴う系統影響シミュレーション
(5) システムの技術要件
………………………………………
57
……………………………………………………………………………
66
(6) システムの系統への導入効果シミュレーション
(7) 電力系統制御システムの評価
……………………………………………
68
…………………………………………………………………
74
第3章
新システムの市場性及び経済性
…………………………………………………………
81
3.1 新システムに関する市場規模と市場性 ………………………………………………………
81
(1) 市場規模の調査結果
81
……………………………………………………………………………
(2) ヒアリング等調査結果
…………………………………………………………………………
(3) ヒアリング調査結果に基づく市場性
…………………………………………………………
88
………………………………………………………………
89
3.2 新システムによる効果と経済性
(1) 各システムの経済性評価の考え方
……………………………………………………………
(2) 新システムによる効果と経済性の評価
第4章
86
………………………………………………………
89
90
新システムに資する基盤技術と技術課題
……………………………………………… 103
4.1 新システム実現のための基盤技術の動向整理
……………………………………………… 103
(1) 基盤技術として整理した技術項目
(2) 基盤技術の整理結果
…………………………………………………………… 103
…………………………………………………………………………… 103
4.2 新システム技術検討による技術課題
(1) 品質別電力供給システム
………………………………………………………… 108
……………………………………………………………………… 108
(2) 分散型電源の統合制御システム
(3) 電力系統制御システム
……………………………………………………………… 108
………………………………………………………………………… 109
4.3 新システムの技術課題と解決の方向性 ……………………………………………………… 109
(1) 品質別電力供給システム
……………………………………………………………………… 109
(2) 分散型電源の統合制御システム
(3) 電力系統制御システム
第5章
………………………………………………………………………… 115
今後の新システムの方向性
5.1 品質別電力供給システム
……………………………………………………………… 119
……………………………………………………………………… 119
5.2 分散型電源の統合制御システム
5.3 電力系統制御システム
……………………………………………………………… 113
……………………………………………………………… 119
………………………………………………………………………… 120
おわりに
「新電力ネットワークシステム研究会」委員名簿
「新システム技術評価分科会」委員名簿
「新システム社会・経済性分科会」委員名簿
「新システム基盤技術分科会」委員名簿
「品質別電力供給WG」委員名簿
「分散型電源の統合制御WG」委員名簿
「電力系統制御WG」委員名簿
Ⅰ
概
1
要
1. 研究会の目的と検討の進め方
近年、分散型電源の導入が進む中で、分散型電源の系統連系による系統電力の品質・供給信頼
度の確保の問題等が指摘されており、今後、需要家及び電力供給事業者の双方に便益をもたらす
新たな電力供給システムの構築が重要な課題となっている。このような状況を踏まえ、平成 13 年
度の「新電力供給システム技術検討会」において、「系統電力と分散型電力の調和」のとれた 21
世紀にふさわしい「電力ネットワークシステム」の構築に向け、効果的な技術開発の実施など技
術的課題を解決するための具体化方策が取りまとめられたところである。
本研究会では、新電力供給システム技術検討会報告書の「電力ネットワークシステムの将来像」
を基に、「品質別電力供給システム(需要家へ品質別の電力を供給するシステム)
」、「分散型電源
の統合制御システム(多くの分散型電源を統合して制御することにより系統に貢献する制御シス
テム)」
、「電力系統制御システム(分散型電源の電力系統への連系を柔軟にするシステム)」(以下、
これらの3システムを総称して「新システム」という。)に焦点をあて、具体的な新システムの構
築に向け系統シミュレーション等に基づく技術検討、評価を行うとともに技術課題を網羅的に整
理した。主な検討項目は次のとおり。
①
新システムの技術検討と評価
②
新システムの市場性及び経済性
③
新システムに資する基盤技術と技術課題
④
今後の新システムの方向性
2. 新システムの技術検討と評価
品質別電力供給システム、統合制御システム、電力系統制御システム毎に、システム基本設計、
各種シミュレーション、技術評価結果を以下のとおり整理した。
(1) 品質別電力供給システム
①
システム要件検討のための実態調査
再開発地域・工業団地の竣工状況等や、需要家における電力供給品質対策の実態等を調査
した結果、システムの導入対象として考えられる再開発地域・工業団地の近年の竣工実績は、
年 30~40 件であった。需要家における電力供給品質対策の実態については、オフィスビル、
銀行、電算機センター、官公庁、店舗、ホテルを対象にヒアリング調査を実施したが、すべ
ての業種ともに停電に関する対策を実施しており、特にオフィスビル、銀行、電算機センタ
ー、官公庁では、瞬時電圧低下を含めた電力供給品質対策を実施していた。
②
システムの考え方及び基本設計
1)
・
システムの基本的な考え方
本システムは、特定地域の需要家に対し需要家の電力供給品質ニーズに応じた品質別
の電力を現状の需要家の電力供給品質対策コストより安価に供給するシステムであり、
停電対策(特に長時間停電)の観点から分散型電源を保有するシステムである。
1
2)
電力供給品質要件
・
電力供給品質要件は、需要家サイドにおける電力供給品質対策(停電、電圧等)実態
調査結果から高品質 A、B、C、標準の 4 つの分類とした。また、負荷機器の瞬断時間耐
量データ等を基に 4 分類毎の瞬断時間の要件を整理し、あわせて、供給システムの基本
モデルの検討結果から、高品質 B の要件を細分化した。更に、4 分類毎の電圧変動、不
平衡、高調波等の要件を整理した。
表1
電力供給品質
分類
電力供給品質要件(簡略版)
高品質B
高品質A
B1
電力供給品質の特徴
高品質C(*6)
B2
標準品質
B3
瞬断時間が 15msec 以 停電時間が 1 分程
現状の
下に限定される品質 度に限定される
系統
(*1)
品質
の品質
主な用途
汎用コンピュータ、
小容量コンピュータ、
重要照明、
高品質電力
製造設備(*2)、通信設備、
製造設備(*2)、
換気・衛生ポンプ、
供給対象
医療機器
高圧放電ランプ
製造動力
以外
瞬低
○
〇
〇
〇
×
×
停電
○
〇
△(*3) ×
△(*4)
×
バックアップ時間
安全に設備をシャットダウンで 200msec 以上(*5)
停電時間が
×
きる時間以上
1分程度に制限
その他
直流給電が可能(*7)
直流給電が可能(*7)
-
-
本表は本編に記載されている電力品質要件(表 2.1.7)を簡略化したものである。
○:補償を行う △:制限付きの補償を行う(詳細は注釈参照) ×:補償の対象とはしない
(*1)用途負荷(小容量コンピュータ、製造設備など)の瞬低耐量、規格から瞬断耐量の最も厳しい数値を採用。
(*2)半導体製造装置、重要製造動力などでコスト、要求電力供給品質との兼ね合いで需要家が高品質 A 又は B を選択。
(*3)分散型電源が停止中は補償不可。(*4)停電時間が 1 分程度に制限される。
(*5)瞬低の 80%が瞬低時間 200msec 以下。
(瞬時電圧低下対策、電気協同研究、第 46 巻、第 3 号、平成 2 年)
(*6)非常用発電機の代替を想定すると、消防法の規制の改正が必要。
(*7)高品質A、Bを供給する装置の直流部から供給可能。
3)
無瞬断であり、電圧波形
レベルでの補償を行う品質
システム設計
・
基本システムとしては、①全ての電力品質を供給する装置をそれぞれ設置する機能分
散型と、②電力変換器、二次電池の共用化により全ての電力品質を供給する装置を 1 台
に統合した機能統合型をプラットフォームとして設計した。
上位系統
品質別電力供給センター
G
分散型電源
VCB1
高品質B3
電力供給
装置
VCB2
アクテイブ
フィルター
~/-
-/~
双方向
コンバータ
直列補償
インバータ
高品質A
電力供給
装置
負荷
平準化
装置
~/-
双方向
コンバータ
二次電池
高品質B2
電力供給
装置
高品質B1
電力供給
装置
VCB3
高速遮断器
~/-
~/-
~/-
順変換装置
双方向
コンバータ
-/~
~/-
インバータ
直列補償
インバータ
小容量直列補償
インバータ
(電圧変動
を補償)
標準品質
高品質B3
図1
高品質A
DC
給電
高品質B1
機能分散型システム構成(プラットフォーム)
2
高品質B2
高品質C
上位系統
品質別電力供給センター
分散型電源 G
VCB2
VCB1
機能統合型
高品質電力
供給装置
VCB3
高速遮断器
双方向 ~/-
コンバータ
小容量直列補償
インバータ1
(電圧変動
を補償)
-/~
~/-
直列補償インバータ3
二次
電池
-/~
-/~
直列補償
インバータ2
インバータ
標準品質
高品質B3
図2
③
DC
給電
高品質A
高品質B1
高品質B2
高品質C
機能統合型システム構成(プラットフォーム)
システムの技術的評価
システム基本設計の結果を踏まえて、機能統合型システムと機能分散型システムについて、
信頼性、機器増設等のシステムの拡張性、設置スペース面、技術の難易度の面から、技術評
価を行った。
その結果、信頼性では、大きな差異はなかったが、拡張性、技術の難易度では、機能分散
型が優位で、設置性では機能統合型が優位であった。
(2) 分散型電源の統合制御システム
①
システム要件検討のための実態調査
1)
・
需要家における契約電力低減としての利用
分散型電源の利用方法として、業務用需要家では契約電力の低減を目的とした導入が
見られる。
2)
・
需要家における停電対策としての利用
分散型電源の利用方法として、電力供給のみならず系統電源のバックアップ電源とし
ての利用も拡大しており、特に、常用内燃力発電システム 1,000kW 以上の大型機を導入
している需要家では、10%程度が「系統電源のバックアップ用としての信頼度向上対策」
としていた。
3)
・
分散型電源の利用の可能性
自家消費等への分散型電源利用における余力を活用する観点から、供給力としてでは
なく、系統(送電線、配電線)の過負荷や電圧低下対策での利用が考えられ、可能性に
ついて整理した。
3
②
システムの考え方及び基本設計
1)
システムの基本的な考え方
・
分散型電源の統合制御システムは、系統に連系された複数の分散型電源を統合して、
それぞれの分散型電源に対して何らかの情報を与えて運転制御することにより、配電線
適正電圧維持や配電線過負荷対策等の系統への効果が期待できるシステムとし、系統へ
の効果の検討としては、配電系統における適正電圧維持、配電線損失の低減とした。
2)
分散型電源の制御方式
・
分散型電源の制御方式は、統合制御方式と自律分散制御方式について検討したが、自
律分散制御方式は、まだ実用化のレベルではなく研究段階の方式であるため、統合制御
方式とした。
ⅰ
統合制御方式
・
系統情報(連系地点の情報や系統運用者からの情報等)を基に、個々の分散型電源
複数台に一括して制御指令を行うことにより、系統へ何らかの効果をもたらす制御方
式。
ⅱ 自律分散制御方式
・
系統情報(連系地点の情報や系統運用者からの情報等)を基に、分散型電源自身が
判断し自ら制御を行い、系統へ何らかの効果をもたらす制御方式。
③
系統運用者からの情報と制御方式及び系統への効果の範囲
・
統合制御方式には、制御概念の違いにより複数の制御方式があるが、ここでは系統運用
者からの情報と制御方式及び系統への効果の範囲を表 2 のとおり整理した。
表2
制御方式
系統運用者からの情報と制御方式及び系統への効果の範囲
制御概念
情報
系統への効果の範囲
1)
・系統運用者があらかじめ定 ・系統運用者で策定した力率調 ・配電線の適正電圧維持
パターン
めた力率調整パターンに基
整パターン
効果が期待できる
制御
づき、分散型電源設置者又
・分散型電源の力率等を提示
は分散型電源制御センター
(季節別、時間帯別にパタ
・パターン電圧維持が
が分散型電源を制御
ーン化)
主体
2)
・系統運用者があらかじめ定 ・系統運用者で策定した力率調 ・配電線の適正電圧維持
整パターン
効果が期待できる
随時制御
めた力率調整パターンに加
え、系統運用者の随時指令 ・配電系統の電圧、電流等の計
測値
・電圧変動の補償が主
に基づき、分散型電源設置
・配電用変電所における変圧
体となる
者又は分散型電源制御セン
器
2
次側の電圧及び配電線
ターが分散型電源を制御
流入電流の計測値から分散
型電源の連系点における維
持すべき電圧を計算し、調
整量を算出
④
系統効果シミュレーション結果
・
住宅地域系統及び商業地域系統のシステムを対象にした、系統に対する効果のシミュレ
4
ーション結果についてまとめた。
⑤
・
主に系統の電圧調整としての効果が期待できる。
・
系統の状態変化への対応等を考慮すると、パターン制御よりも随時制御の効果が大。
・
住宅地域は、配電線が長く、分散型電源による制御効果が大きい。
システムの技術的評価
実際の運用等を考慮すると、分散型電源制御センターを設置し随時制御を行うシステム構
成が、制御の確実性や系統条件変化への対応等の観点から有用であることが明らかとなった。
取り込む分散型電源の種類、分散型電源が連系される系統によりシステムの系統に対する
効果は異なった。電圧下げ効果では太陽光発電を住宅地域系統に適用したモデルが一番良い
結果が得られ、電圧上げ効果は回転機を商業地域系統、住宅地域系統(簡略模擬)に適用し
たモデルが良い結果となった。
システムの設備費については、住宅地域の太陽光発電を適用したシステムが商業地域に回
転機を適用した場合より高くなった。
(3) 電力系統制御システム
①
システム要件検討のための実態調査
1)
実態調査結果に基づく検討対象
・ 常用自家発(内燃力)、太陽光発電、風力発電は堅調に普及しており、大規模な風力発
電を除き配電線に連系される傾向にあることから、6kV 配電線を対象とした。
2) 実態調査結果に基づく検討項目
・ 定量的な検討がなされていない分散型電源の導入による「逆潮流による電圧問題」、「高
調波電圧ひずみの増大」
、「短絡容量の増大」を検討項目とした。
②
システムの考え方及び基本設計
1)
システムの基本的な考え方
・
系統電力、特に既存の配電系統と分散型電源の調和を図り、多くの分散型電源が電力
系統に柔軟に連系できるよう、主に現在の系統設備をベースに系統構成機器を制御する
システムとした。
2)
システムの要件
ⅰ
システム導入対象
・
近年、配電線への系統連系が多い太陽光発電装置、同期発電機を対象とし、設置場
所や配電線の条件による系統への影響をシミュレーションで確認することとした。
・ 配電線の負荷、こう長等により、分散型電源の導入による影響の有無も異なると考
えられることから、商業地域、住宅地域、郊外地域、工場地域のそれぞれにモデル配
電線を設定した。
ⅱ
システムの系統構成機器
・ システムに組み入れる系統構成機器は、現状で使用されている機器(新制御 SVR、
SC・SR 自動制御)と新しい機器(SVC、ループ連系装置(高速遮断器、ループコン
5
トローラ))とした。
SVR:Step Voltage Regulator、ステップ式自動電圧調整器
SC:Shunt Capacitor、並列コンデンサ
SR:Shunt Reactor、分路リアクトル
SVC:Static Var Compensator、静止型無効電力補償装置
ⅲ
配電線の形態
・
配電線の形態としては、既存の樹枝状系統とループ系統とした。
3) 分散型電源の連系条件
・
システム検討における分散型電源の連系条件は、以下のとおりとした。
表3
分散型電源の連系条件
対策内容
電力系統連系技術要件ガイドライン関連
(分散型電源の導入可能量に関連があるもの)注 2)
電圧変動
短絡容量
高調波抑制対策
ガイドライン関連注3)
高調波抑制
・逆潮流時の適正電圧逸脱など ・事故の除去に支障を来たす可 ・インバータから発生する
高調波により各種負荷
・住宅地域など配電線こう長が
能性がある
機器に障害を与える
長い場合に問題となり易い
・工業地域など配電線こう長が
短い場合に問題となり易い
分散型電源の
連系条件
○注 4)
◎
◎
注 1)○:ガイドライン一部遵守、◎:ガイドライン遵守
注 2)単独運転検出などの他プロジェクトで検討中のものは除く
注 3) 高調波抑制対策ガイドラインとは、「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガ
イドライン」及び「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」をさす。
注 4)有効電力に制限を加えないという観点から、進相無効電力制御機能は適用するが、出力制御機
能(有効電力の抑制機能)は適用せず。
③
系統影響シミュレーション結果
1)
逆潮流による電圧変動問題
・
住宅地域系統ならびに郊外地域系統で問題が大きく、分散型電源の導入可能量を支配
する要因となる。
2)
短絡容量の増大
・
工業地域系統で問題が大きいが、住宅地域系統、郊外地域系統での逆潮流による電圧
変動の制約より緩やかである。
3)
高調波ひずみの増大
・
インバータ機器である太陽光発電の導入が進む住宅地域系統で問題が大きいが、住宅
地域系統、郊外地域系統での逆潮流による電圧変動の制約より比較的緩やかである。
④
システムの技術要件
・
システムの技術要件の検討は、系統影響シミュレーション結果より、電圧変動の問題で
大きな影響が予想される住宅地域系統により検討を行った。
・
表 4 に示すとおり系統の構成、系統構成機器の制御方式、対象となる系統構成機器によ
り分類した検討モデルにより検討を行った。
6
表4
検討
モデル
1
2
3
4
5
6
7
電力系統制御システムの検討モデル
系統の構成
系統構成機器の制御方式
①樹枝状系統
ⅰ遠隔制御を実施しない制御
ⅱ遠隔制御を実施する制御
②ループ系統
ⅰ遠隔制御を実施しない制御
ⅱ遠隔制御を実施する制御
b
a
b
a
b
a
b
対象となる
系統構成機器
新規型
従来型(改良型含)
新規型
従来型(改良型含)
新規型
従来型(改良型含)
新規型
* 遠隔制御:系統状態(電圧、電流、力率、系統構成機器の制御状態等)の情報を通信
線を介しやりとりを行い、系統構成機器の制御を系統情報を基に中央コン
ピュータで一括処理し、遠隔制御する制御方式、遠隔制御せず各系統構成
機器が自律的に制御する方式に比べ、系統全体を把握した制御が可能とな
る。
* 新規型、従来型:従来型とは既に開発が完了し、実用化している機器(SVR、SC・SR な
ど)、新規型は現在、開発を実施中の機器(SVC やループコントロー
ラなど)。
⑤
システムの技術的評価検討
1)
制御性
・
電圧制御の仕上がり状況などの制御性については、SVC やループコントローラなどの
インバータ機器を適用し高速で連続的な制御が可能なシステムが良い。
2)
運用性、信頼性、システムの拡張性等
・
系統構成の変更などに対する運用性、システムの拡張性、協調制御の容易さなどにつ
いては、通信システムを活用して遠隔制御を実施する検討モデルが良い結果が得られる
可能性はあるが、複数の機器を最適に運用できる制御ロジックの構築が課題である。
3)
設置スペース等
・
設置スペース等実系統への設置性については、SVR、SC・SR 遠隔制御の検討モデルが
最も問題は小さい。
4)
配電線の電力損失
・
分散型電源(太陽光発電)均等導入の場合は、分散型電源導入量 30%程度までは、い
ずれも幹線こう長約 4kmのモデル配電線で損失量は 200kWh/日以下となり、分散型電源
導入なしのケース(=164kWh/日)をベースに考えると、損失面で著しく不利となるシス
テムはない。
5)
・
高調波電圧ひずみの増大
SVC やループコントローラなどのインバータ機器を適用する場合、高調波電圧ひずみ
の増大についても考慮が必要である。特に、SVC についてはサイリスタを利用してリア
クトル電流を制御する場合など注意を要する。
7
3. 新システムの市場性及び経済性
(1) 新システムに関する市場規模と市場性
新システムに関する対策装置の導入状況や分散型電源の普及状況等から市場規模を想定し、
あわせて、新システムに関する需要家や関係団体ヒアリング調査結果から、新システムの市場
性を分析した。
①
品質別電力供給システム
1)
市場規模
ⅰ
UPS、瞬時電圧低下保護装置(バックアップ時間が数秒以下の電源装置)の市場規模
・
国内の UPS は年間約 50 万 kVA 程度普及している。
・
瞬時電圧低下保護装置は年間約 3 万 kVA 程度普及している。
ⅱ
再開発地域
・ 再開発地域は年間平均 40 件程度竣工している。
2)
市場性
ⅰ
需要家における電力供給品質対策の問題点
・
UPS については、イニシャルコストの高さ、メンテナンスコストの高さ、大きな設
置スペースの必要性及びメンテナンスの煩雑さなどの問題がある。
ⅱ
システムの実現性
・
需要家側の電力供給品質対策費用の低減(イニシャル、メンテナンス)、スペース
の有効活用、煩雑なメンテナンスからの開放の観点から、特にオフィスビルに関して
品質別電力供給の実現の可能性はあると考えられる。
・ 料金としては現状の電力供給品質対策コスト程度以下であれば購入の可能性がある。
②
分散型電源の統合制御システム
1)
市場規模
ⅰ
太陽光発電
・ 太陽光発電は平成 13 年度末で約 45.2 万 kW(住宅用太陽光補助金による導入量は 30.3
万 kW)。導入量は年々増加傾向にある。
ⅱ
風力発電
・ 風力発電は、平成 13 年度末で約 29 万 kW に達しており、導入量は年々増加傾向にあ
る。
ⅲ
常用自家発(内燃力)
・ 常用自家発(内燃力)の出荷容量は 5 年間で約 330 万 kW(約 66 万 kW/年)で、年間
出荷容量は年々増加している。
・
設備別ではディーゼルの構成比が高く、5 年間の累積から台数で約 8 割、施設数で
約 7 割、容量では約 6 割を占める。
2)
・
市場性
分散型電源の設置場所として、需要家の敷地を利用する場合では、賃借代などの面か
8
ら難しい面もある。
・
多数の分散型電源を系統連系する場合においては、連系費用の低減が重要となる。
・
分散型電源を統合することにより、系統に対して何らかの効果を期待する場合、現行
では経済性は成り立たないことから、インセンティブとして経済的な補填対策等の検討
が必要と考えられる。
・
③
以上の条件が満足できる場合は実現の可能性はあると考えられる。
電力系統制御システム
1)
市場規模
・
2)
全国の配電線数(高圧)は、約 7 万回線程度と想定した。
市場性
・
システム実現化のためには信頼性、低コスト化などが課題と考えられる。
・
今後のシステムを検討していく上では、配電設備構成が電力会社毎、また都市部、郡
部によっても異なることから、これらの状況を踏まえたシステムの柔軟性が重要である。
(2) 新システムによる効果と経済性
①
品質別電力供給システム
1)
経済性評価方法
・
需要家ヒアリング結果から、本システムの導入対象としては再開発地域とし、同地域
を想定したシステムについて、システムコストを需要家側の電力供給品質対策コスト以
下の費用で回収する場合の回収年数を試算し、経済性を評価した。
2)電力供給品質メニュー
・
電力供給品質メニューは、ヒアリング結果により、需要家のニーズがある高品質 A、
B1、C(消防法の規制の改正が前提)とした。
3)
経済性
ⅰ
機能分散型システムにおける投資回収年
・
機能分散型において高品質 A、高品質 C の投資回収年は数年程度であるが、高品質
B1 の投資回収年は 50 年程度。
ⅱ
機能統合型システムにおける投資回収年
・
機能統合型では、電力変換器、二次電池の共用化による効果により高品質 A、B1 を
統合して供給した場合で投資回収年が 10 年以下。
・
負荷平準化システムがある場合には負荷平準化用の電力変換器、二次電池の活用に
より投資回収年は 4 年程度短くなった。
9
表5
品質別電力供給
システム構成
機能分散型の投資回収年
機能統合型の投資回収年
②
品質別電力供給システムの回収年試算結果
高品質 A(1,200kVA) 高品質 B1(1,200 kVA) 高品質 C(1,500 kVA)
・8 年程度
・50 年程度
・6 年(負荷平準化システムが既存)
~10 年(負荷平準化システムがない)
・4 年程度
・同
上
分散型電源の統合制御システム
1)
経済性評価方法
・
統合制御による効果(主に電圧調整効果)に対して、本システムの費用と系統側での
対策費用を比較し、経済性を評価した。
2)
経済性
・
電力系統制御システム WG における住宅地域での太陽光発電設備を系統容量の 30%導
入した場合の系統側の対策費用
ⅰ 系統側での対策費用(500~4,500 万円)
ⅱ
太陽光発電及び回転機を統合制御するシステムの対策費用(随時制御における対
策)
・ 太陽光の随時制御:2,500 万円程度(通信回線費を除く)
・
ⅲ
回転機の随時制御:1,500 万円程度(同
上)
経済性
・
統合制御システムによる系統電圧の調整は、力率による調整であることから、
SVC での対策と同等となる。
③
電力系統制御システム
1)
経済性評価方法
・
分散型電源の柔軟な連系を可能にする各対策の費用(分散型電源の導入量が配電線容
量に対し 30%、50%及び限界量(100%上限)の時の設備対策費)と分散型電源の導入
量の相関から経済性を評価した。
2)
経済性
・
分散型電源の導入に伴う系統側で設備費用を算出し、分散型電源の導入量の大小によ
り経済的に優位なシステムを評価したが、その結果、
・
分散型電源の導入量が小さい場合は、現行方式をベースにした対策技術が優位
・ 分散型電源の導入量が大きい場合は、ループ方式での対策が優位
となった。
4. 新システムに資する基盤技術と技術課題
新システム技術検討結果に基づく技術課題と新システムの基盤となる技術の動向を整理し、今
後の技術課題と解決の方向性を網羅的に整理した。
10
(1) 新システムの技術課題
①
品質別電力供給システム
品質別電力供給システムの技術課題を表 6 に示す。
表6
品質別電力供給システム技術課題の整理
機能統合型
機能分散型
〇機能統合型高品質電力供給装置の開発
-
〇過負荷による高品質電力供給装置停止防止方法の確立
高品質電力
供給装置部
〇パワーデバイスの損失の低減
〇電力変換器の損失の低減及び装置の小型化
〇直列補償インバータ制御の高度化
〇高品質電力供給装置二次系の電力供給品質維持方法の確立
〇需要家側事故の波及防止方法の開発
高品質電力供給装置
を含めたシステム部
〇高品質電力供給装置と分散型電源との連系制御方法の開発
〇高品質電力供給装置と回転機負荷との協調制御方法の確立
〇直流給電方法の検討
②
分散型電源の統合制御システム
分散型電源の統合制御システムの技術課題を表 7 に示す。
表7
分散型電源の統合制御システム技術課題の整理
項
ハード面
ソフト面
制御に関
する事項
運用に関
する事項
その他
③
目
○分散型電源通信インターフェ-スの開発
〇系統の情報を計測する計測センサの開発
〇制御による効果を把握するためのメータ等の開発
〇パターン制御における制御パターンの作成
○随時制御における制御手順の検討
○作業時及び事故時等の系統状態変化時の対応手順
○システム作業停止・ハード故障時のシステムのバックアップ対応
○最適制御のための要件検討と実証試験による検証
電力系統制御システム
電力系統制御システムの技術課題を表 8 に示す。
11
表8
電力系統制御システム技術課題の整理
ループ系統、樹枝状系統共通
ループ系統
〇系統の情報を計測する計測センサの 〇ループコントローラの開発
開発
ハード面
〇制御機器異常時のバックアップ装置
の開発
〇短絡容量、高調波増大に対する対策
制御に関 〇複数機器の協調制御
〇ループコントローラの制御方式
ソフ する事項
の確立
ト面 運用に関 〇現状の配電線運用との協調
〇ループ運用時の保護対策
する事項
その他
④
○最適制御のための要件検討と実証試験による検証
技術課題解決の方向性
新システムの実現に向けて、技術課題を網羅的に整理し、これらの課題を解決する方向性
について現状の技術動向を踏まえ整理したが、3 つのシステムに共通する課題としては、「制
御・通信技術」、「各種の計測・計量装置」、「電力変換装置」が重要な技術課題と考えられる。
今後、具体的な技術開発計画を策定することを念頭に置き、技術の重要性、技術的解決の
可能性、コスト的な実現性を踏まえた技術課題の優先順位付けを行うとともに技術課題の詳
細検討、設計等のハード面での検討や制御・運用ロジックなどソフト面での検討を行なうこ
とが必要であると考える。
5.今後の新システムの方向性
(1) 品質別電力供給システム
今回、機能分散型、機能統合型の 2 つのシステムについて検討を行ない、技術面、経済性から
比較評価を行った。その結果、技術面において、信頼性では、大きな差異はなかったが、拡張性、
技術の難易度では、機能分散型が優位で、設置性では機能統合型が優位であった。また、経済性
では、機能分散型は、高品質 A に供給を行なう場合に優位、機能統合型は、高品質 A、B1 ともに
供給を行う場合に優位、高品質 C の差異はないとの結果を得た。
これらのことから、技術面では両システムともそれぞれ特徴があり、導入対象地域の電力供給
品質メニューに対する需要によりシステムが選定されることや、コスト面でも実現の可能性があ
ることから、両システムの技術を確立しておく意義は十分にあるものと考えられる。
今回は分散型電源として回転機系を主に検討対象としたが更なる実現の可能性を検討するため
にも、燃料電池等をはじめとした分散型電源の活用や直流給電方式についても検討が必要である
と考える。
本システムの基本構成は、電力変換器、二次電池等を組み合せたシステムであり、これらの機
器単体は既存の機器を利用できるが(機能統合型では電力変換器、二次電池部を統合する装置開
発が必要である。)、これらを多数組み合せて信頼性の高いシステムを技術的に確立するとともに、
需要家の電力供給品質ニーズへの適合性や経済性といったサービス提供事業の成立性を検証する
12
ためには、今回検討したプラットフォームシステムの基本設計をベースとした実証試験による検
証が必要であると考える。
(2) 分散型電源の統合制御システム
制御方式としては、パターン制御と随時制御について、また、制御対象としては、太陽光発電、
回転機についてシステムの検討を行い、統合制御による系統電圧の調整幅の評価を行った。
まず、制御方式としては、分散型電源制御センターを設置し随時制御を行うシステムが有効で
あることが明らかとなった。太陽光発電、回転機での制御では、対象となる配電系統の線路条件
により効果が異なるが、ある程度の量を統合すれば系統電圧の調整に寄与できる可能性があると
の結果を得た。これらのことから、今後、制御ロジック、制御側の電圧調整要求に対するシステ
ムの対応性などの技術的な確立が必要であるが、経済的な観点からも系統の電圧調整対策として
の可能性はあると考えられる。
但し、住宅地域系統の低圧系統に連系される太陽光発電は、それ自身が系統連系により系統の
電圧上昇(特に低圧系統)につながる場合があり、制御では系統の電圧を下げる効果が主体であ
る。一方、高圧系統に連系される回転機は、自身の系統連系による電圧上昇は低圧換算値で太陽
光発電に比較して小さく、また、仮に影響が出ても回転機の有効電力出力等を調整できることか
ら、太陽光発電よりも系統への効果が高いものと考えられる。
なお、今回の検討は、典型的な住宅地域系統モデルと商業地域系統モデルを採用し、シミュレ
ーションによるシステムの系統への効果を傾向として得られたものであることに留意する必要が
ある。例えば、力率値の設定は分散型電源毎で同一の設定としたが、全体システムの最適化の観
点から連系されている場所により違った設定とすることや、制御対象として燃料電池をはじめと
した他の分散型電源の追加、需要家毎の負荷特性の設定などを加味した詳細シミュレーション評
価など、更なる実現の可能性を踏まえた検討が必要である。あわせて、今回は検討の対象外とし
た自律分散制御の可能性等についても検討が必要と考える。
統合制御によりある程度の効果が期待できるものと考えられるが、今回の結果や課題の検討を
整理し、実証試験による検証等により、制御効果の把握及び技術の確立を図ることが必要である。
(3) 電力系統制御システム
現行方式をベースにした対策技術及びループ方式を対象にシステムの検討を行ない、分散型電
源の導入に伴う系統側での設備費用と分散型電源の導入量の相関により対策設備費用と導入量に
関するシステムの優位性を評価した。その結果、分散型電源の導入量が小さい場合は、現行方式
をベースにした対策技術が優位、分散型電源の導入量が大きい場合は、ループ方式での対策が優
位であることがわかった。
しかしながら、分散型電源の導入がどのように進むかによりシステム選定が変わることも考え
られることや分散型電源の系統連系量が増えた場合には、電圧変動のほか短絡容量、高調波の増
大や単独運転防止などの課題があること、ループ方式では保護協調の課題があることから、これ
らについての対策を含めた検討が必要である。
今回の検討結果は、典型的な配電線モデル系統を対象にして得られたものであるため、今後、
更なる技術開発の方向性を検討する上でも対象とする分散型電源や系統モデルなどの条件を幅広
13
く設定した詳細なシミュレーションを行ない、より実態に近い系統での分析・検討が必要である。
また、今回のシミュレーションは静的シミュレーションであり、システムの実用化のためには、
系統状況急変時などのシステム応答、複数対策機器の協調制御、ループ系統の適用など動的シミ
ュレーションによる分析・評価も重要である。
これらの検討結果を踏まえ、電力系統制御システムとして適する対策技術を選定し、実証試験
による検証等により、制御効果の把握及び技術の確立を図ることが必要である。
14
Ⅱ
本
13
編
第1章
研究会の目的と検討の進め方
1.1「新電力ネットワークシステム研究会」の設置目的
(1)電力ネットワークシステム技術分野は、系統制御技術、電力貯蔵技術、分散型電源関係の
各種技術等、幅広い技術分野から構成されており、これらを支える要素技術も多種多様であ
る。近年、太陽光発電等の分散型電源の導入が進む中、分散型電源の系統連系による系統電
力の品質・供給信頼度の確保の問題等が指摘されており、需要家及び供給事業者の双方に便
益をもたらす新しい電力ネットワークシステムにおける技術戦略の構築が喫緊の課題となっ
ている。また、電力自由化の進展やエネルギー産業の構造変化、並びにネットワーク技術で
ある情報技術(IT)や分散型電源の普及など、電力技術を取り巻く環境は一層急速に変化
しつつある。
(2)このような状況の中、平成 13 年度には「新電力供給システム技術検討会」において、大規
模電源と分散型電源の協調を前提とした電力ネットワークシステムの将来像の提言(下記
「1.2 新システムについて」参照)と、その実現のための技術的課題を解決する具体化方策に
ついて検討を行った。
(3)本研究会は、上記「検討会」で提言された電力ネットワークシステムの将来像の実現に向
けての技術的検討を深めることを目的に設置され、具体的なシステムの構築に向けて、新シ
ステムの要件・基本設計、シミュレーションによる評価、市場等の調査及び今後の技術課題
の整理等を行うこととした。
1.2 新システムについて
平成 13 年度の「新電力供給システム技術検討会」報告書において、今後技術開発により実現
が可能と考えられる「系統電力と分散型電力の調和」のとれた 21 世紀にふさわしい「電力ネッ
トワークシステム」の将来像としてまとめられた以下のシステムを対象に検討を行なうこととし
た。
①
品質別の電力供給が可能なシステム(電力品質及び信頼度の向上)[品質別電力供給シス
テム]
②
多くの分散型電源を統合制御することにより、電力需要ピーク時における電力供給やアン
シラリーサービスの提供等、分散型電源を活用した電力供給・系統運用への貢献を可能とす
るシステム[分散型電源の統合制御システム]
③
多くの分散型電源が電力系統に柔軟に連系できるよう、現在の系統設備をベースに系統構
成機器のみを制御するシステム[電力系統制御システム]
15
1.3 本研究会の進め方
本研究会では、「電力ネットワークシステムの将来像」の実現に向けての技術検討、評価及び技
術課題の整理を実施することから、電力関係者、メーカー、需要家、学識経験者、電力自由化に
伴い新たに生まれた新規参入者等 24 名からなる構成で研究会を組織し、平成 14 年 7 月から平成
15 年 6 月にわたり合計 4 回の会合を開いて検討を実施した。
なお、本研究会においては、検討を効率よく実施するために、その傘下に 3 つの分科会と 3 つ
の WG を設置した。
具体的な、検討項目は以下のとおりである。
①
分散型電源の普及進展による電力ネットワークシステムへの効果、課題の整理
②
シミュレーションに基づく新システムの評価と技術開発の進め方整理
③
新システム実現のための課題の整理と解決の方向性の検討
④
時代に即した新システム実現のための基盤技術の動向分析と新システムへの反映
新電力ネットワークシステム研究会
新システム技術評価分科会
品質別電力供給システムWG
分散型電源の統合制御システムWG
電力系統制御システムWG
新システム社会・経済性分科会
新システム基盤技術分科会
図 1.3.1 新電力ネットワークシステム研究会の検討体制
16
第2章
新システム技術の検討と評価
本章では、
「品質別電力供給システム(需要家へ品質別の電力を供給するシステム)」、「統合制
御システム(多くの分散型電源を統合して制御することにより系統に貢献する制御システム)」、
「電力系統制御システム(分散型電源の電力系統への連系を柔軟にするシステム)
」毎に、システ
ム基本設計、各種シミュレーション、技術評価結果を整理した。
2.1
品質別電力供給システム
(1)システム検討の進め方
「新電力供給システム技術検討会」報告書において示された「品質別電力供給システム」につ
いて、システム基本設計等に基づく技術的な評価について検討した結果を整理した。
具体的な、検討の進め方は以下のとおりである。
①
需要家における電力供給品質対策等の実態調査
②
システムの要件整理
③
システム基本設計の実施
④
システム評価の実施
17
(2)システム要件検討のための実態調査
本システムは瞬低・停電を極力さけ、高品質の電力を必要とする業種(証券、銀行、半導体
製造業等)の需要家に電力を供給するシステムであることから、これらの業種が集中するよう
な特定地域(再開発地域、工業団地)に設置される可能性が大きい。従って、再開発地域・工
業団地の竣工状況等や需要家における電力供給品質対策の実態を整理し、併せて、需要家にお
ける電力供給品質のニーズ調査結果を以下のように整理した。
① 再開発地域、工業団地の実態調査
システムの導入対象を検討するにあたり必要となる再開発地域、工業団地の竣工状況、品
質別電力供給の可能性のある物件の割合を調査した結果を以下に示す。
1) 工業団地に関する実態調査
・ 年平均 30 件程度竣工しており最近は減少傾向である。入居率は 27%程度である。
・
品質別電力供給が成立する可能性がある工業団地(半導体製造業等の瞬時電圧低下防
止のニーズがある産業需要家が立地している工業団地)の割合は 14%程度である。
2) 再開発地域に関する実態調査
・ 年平均 40 件程度竣工しており、最近は微増傾向である。
・
品質別電力供給が成立する可能性がある再開発地域(数百 kVA 以上の高品質電力容量
が確保できる再開発の総延床面積として、10 万 m2 以上)の割合は 25%程度である。
表 2.1.1
工業団地と再開発地域の実態調査のまとめ
項目
工業団地
・平均 30 件/年
・最近 23 件/年
・減少傾向
入居率
27%
品質別電力供給の可能性の
14%
ある物件の割合
竣工状況
再開発地域
・36 件/年
・最近 38 件/年
・微増傾向
不明
25%
② 需要家における電力供給品質対策(停電、電圧等)の実態調査
システムの電力供給品質要件を検討するにあたり、必要となる UPS 等の電力供給品質補償
機器の普及状況・種類とその適用分野等に関し調査した結果を以下に示す。
1) UPS に関する実態調査
・ 年間約 50 万 kVA 程度導入されており、その半数は小型 UPS(10kVA 以下)の市場であ
る。
・ 無瞬断であり電圧波形レベルの補償を行う常時インバータ方式 UPS(10kVA 超)の主な
用途は汎用コンピュータ、製造設備(半導体製造装置、重要製造動力)、通信設備、医療
用である。
・ 瞬低・停電があったとしてもわずかな瞬断時間である並列補償方式(10kVA 超)の主な
用途は製造設備(半導体製造装置、重要製造動力)、小容量コンピュータ(サーバ)、高圧
放電ランプである。
2) 瞬時電圧低下保護装置(バックアップ時間が数秒以下の電源装置)に関する実態調査
18
・
年間約 3 万 kVA 程度導入されている。
・
主な用途は製造設備(半導体製造装置、重要製造動力)である。なお、主要なユーザー
は半導体工場が 78%、化学・非鉄・金属工場が 8%、その他 14%となっている。
3) 非常用発電機(非発)に関する実態調査
・ 停電時間が 1 分程度に制限される非常用電源設備(自家用発電設備)は 1978 年から 1
998 年に総容量 1,600 万 kVA 程度、台数にして 10 万台程度納入されている。
③ 需要家における電力供給品質のニーズ調査
より実態に即した電力供給品質メニュー及びシステム構成を検討するために、オフィスビ
ル、自治体、設計事務所、建設業等の関係団体等を対象にヒアリング調査した。業種毎に電
力供給品質のニーズ、購入希望価格を取りまとめた結果を以下に示す。(各品質の分類は表
2.1.7 参照)
・ 購入の可能性のある高品質電力は UPS の代替としては A 及び B1 であり、消防法の規制の
改正が必要であるが非発の代替としては高品質 C である。
・
購入希望価格としては現状の電力供給品質対策コスト程度以下であれば購入の可能性が
ある。
表 2.1.2
電力供給品質のニーズ調査の結果(事務所関係)
業種
事務所
一般オフィスビル
銀行
電算センター
官公庁
電 力 供 給 ・高品質 A(汎用コン [本店]
高品質 A
[中央官庁]
品質ニー
ピュータ、ビルディ ・高品質 A
(自前で対策) ・自前で対策
ズ
ングオートメーシ (自前で対策)
[地方自治体]
ョンなど)
[支店]
・高品質 A、C
・高品質 B1(サーバ) ・高品質 C
(自前で対策)
・高品質 C(非発代替) (支店機能維持)
[市役所]
・高品質 B1(サー
バ)
・高品質 C(非発代
替)
購 入 希 望 電力供給品質対策コ 同左(支店)
-
電 力 供給 品質 対 策
価格
スト程度以下
コスト程度以下(市
役所)
表 2.1.3
電力供給品質のニーズ調査の結果(店舗、ホテル)
業種
店舗
ホテル
電力供給 現状の品質で満足している。 「現状の品質で十分満足している」というのが大
品質ニー
半の意見であるが以下のような需要家も存在す
ズ
る。
・高品質 A(ホストコンピュータ、ビル管理設備)
・高品質 C(非発代替)
購入希望
・「現状の電力料金より安価であること。」という
価格
のが大半の意見であるが以下のような意見もあ
-
る。
・通常品質電力に加えて高品質電力、ガス、熱を
トータルで供給することが出来れば魅力的
19
(3)システムの考え方
システムの基本設計を検討する上で必要となるシステムの基本要件、電力供給品質要件等を
以下のとおり整理した。
① システムの基本要件
1)システムの基本的な考え方
特定地域の需要家へ品質別の電力を供給するシステムであり、停電対策(特に長時間停
電)の観点から分散型電源を保有するシステムであること。
2)システムのメリット
需要家の電力供給品質ニーズに応じた品質別の電力を現状の需要家の電力供給品質対策
コストより安価に供給することや、負荷平準化への寄与が可能であること。
3)システム導入対象
システムを導入する対象を特定地域での電力供給を念頭に入れ「再開発地域」又は「工業団
地」とした。
② システム技術要件
前述のシステム基本要件、需要家における電力供給品質対策の実態調査を基に、システム
の技術要件を以下のとおり整理した。
1)システム構成に関する技術要件
・
品質別の電力を供給するために、システムは分散型電源、電力変換器等で構成した。
なお、分散型電源は特定地域での電力供給の実績が多い回転機系の常用発電機を対象
とした。
・
負荷平準化のための装置を保有するものとした。
・
高調波電流の電力系統への流出を抑制するための装置を保有するものとした。
2)電力供給品質要件
電力供給品質要件について、下記の基本的な考え方に基づき検討した結果を以下に示す。
ⅰ 基本的な考え方
電力供給品質要件に関して以下のステップにて検討を行った。なお、c、d に関しては
システムが供給可能な電力供給品質の観点で策定された電力供給品質要件であることか
ら、「(4)システム基本設計」に記載する。
a
電力供給品質要件の 4 分類化(高品質 A、B、C、標準)
・
需要家サイドにおける電力供給品質対策(停電、電圧等)実態調査結果により、
需要家の電力供給品質要件を大きく 4 つの分類とした。
b 電力供給品質要件分類毎の瞬断時間要件の整理
・
現状における負荷機器の瞬断時間耐量データ等を基に要件を整理した。
c システム検討に基づく電力供給品質要件の整理
・ a,b,に基づく供給システムの基本モデルを検討し、更にシステムが供給可能な
電力供給品質要件を細分化した。(高品質 B の細分化)
20
d 品質別電力供給システムにおけるメニュー別の供給可能な電力供給品質要件の策定
・
システムに基づき、電圧変動、不平衡、高調波等の要件を整理した。
ⅱ 電力供給品質要件の検討結果
a 電力供給品質要件の 4 分類化(高品質 A、B、C、標準)
・ 需要家サイドにおける電力供給品質対策(停電、電圧等)実態調査結果(表 2.1.4)
により、用途毎の電力供給品質に対する必要性を整理し、本システムの電力供給品
質要件を 4 分類化した。
表 2.1.4
分類
電力供給品質要件の分類と要求される電力供給品質
要求される電力供給品質
高品質A
な
用
途
① 無瞬断であり、電圧波形レベルでの補償を ・ 汎用コンピュータ
行う品質(停電、瞬低を補償)
② バックアップ時間
①
・ 製造設備(*1)
・ 通信設備
・ 安全にシャットダウンできる時間以上
高品質B
主
・ 医療用機器
瞬低、停電時があったとしてもわずかな瞬 ・
小容量コンピュータ(サーバ)
断時間の品質(停電、瞬低を補償)
・
製造設備(*1)
バックアップ時間
・
高圧放電ランプ
① 瞬低、停電時があったとしてもわずかな瞬 ・
製造設備(*1)
②
同上
断時間の品質(瞬低のみ補償)
② バックアップ時間
・ 瞬低を補償する時間
高品質C
〇
停電時間が 1 分程度に制限される品質であ ・
り長時間停電がない
標
準
重要照明、換気・衛生ポンプ、
エレベータ、製造動力
―
―
(*1)半導体製造装置、重要製造動力などでコスト、要求電力供給品質との兼ね合いで需要家が
高品質 A 又は B を選択。
b 電力供給品質要件分類毎の瞬断時間要件の整理
需要家サイドにおける電力供給品質対策(停電、電圧等)実態調査結果から、瞬低
対策の必要性が高いことから、瞬断時間について要件を検討した。
〇高品質 A
・
無瞬断で、電圧波形レベルの補償を行う品質とした。
〇高品質 B
・
負荷機器の瞬断時間耐量データを基に、最も厳しい汎用インバータの瞬断時間
耐量の数値である 15msec 以下とした。
〇高品質 C
・
非常用発電機の起動時間と同等とし、停電時間は、1 分程度とした。
21
c 電力供給品質要件の整理
以上の検討結果を基に、需要家における電力供給品質対策(停電、電圧等)実態調
査結果による用途毎の必要とする電力供給品質、負荷機器の瞬断時間耐量を勘案し電
力供給品質要件を以下のように整理した。
表 2.1.5
電力供給品質要件
電力供給品質
高品質A
高品質B
高品質C(*5)
標準品質
無瞬断であり、電圧波形
瞬断時間が 15msec
停電時間が 1 分程
現状の
レベルでの補償を行う品質
以下に限定される
度に限定される
品質(*1)
品質
分類
電力供給品質の特徴
主な用途
系統
の品質
汎用コンピュータ、
小容量コンピュータ、
重要照明、
製造設備(*2)、通信設備、
製造設備(*2)、
換気・衛生ポンプ、
医療機器
高圧放電ランプ
製造動力
高品質電力
供給対象
以外
瞬低
○
〇
〇
×
×
停電
○
〇
×
△(*4)
×
バックアップ時間
安全に設備をシャットダウンで
200msec 以上(*3)
きる時間以上
○:補償を行う
停電時間が
×
1分程度に制限
△:制限付きの補償を行う(詳細は注釈参照)
×:補償の対象とはしない
(*1)用途負荷(小容量コンピュータ、製造設備など)の瞬断耐量、規格から最も厳しい数値を採用
(*2)半導体製造装置、重要製造動力などでコスト、要求電力供給品質との兼ね合いで需要家が高品質A又はBを選択
(*3)瞬低の 80%が瞬低時間 200msec 以下(瞬時電圧低下対策、電気協同研究、第 46 巻、第 3 号、平成 2 年)
(*4)停電時間が 1 分程度に制限される(*5)非常用発電機の代替を想定すると、消防法の規制の改正が必要
(4)システム基本設計
プラットフォームシステム(「工業団地」及び「再開発地域」の需要家が要求する品質を全て
提供可能なシステム)及び、再開発地域を想定したシステムに関して、システム構成及び供給
する電力供給品質要件等を整理した結果を以下に示す。
① プラットフォームシステム
システムの技術要件を踏まえて、システム構成を整理するとともに、システムが供給可能
な電力供給品質要件等を以下のように整理した。
1) システム構成と電力供給品質要件の再検討
ⅰ システムを構成する装置等
a 各品質の電力を供給する装置等
〇高品質 A
・
高品質 A(無瞬断で電圧波形レベルでの補償を行う品質)の装置は、常時イン
バータ方式を採用した。
22
〇高品質 B
・
高品質 B(瞬時電圧低下及び停電があったとしてもわずかな瞬断時間の品質)
においては、並列補償方式又は直列補償方式を採用した。
・
なお、並列補償方式においては停電バックアップ時の分散型電源による電圧変
動を補償するために、直列補償方式とのハイブリッド方式とした。
・
また、高品質 B を供給する方法として、高速遮断器により瞬低・停電発生時に
高速解列を行い分散型電源を自立運転とし負荷に電力供給をする方法も考えられ
るが、今回は分散型電源が常時運転状態とは限らないので検討対象から外した。
〇高品質 C
・ 高品質 C(停電時間が 1 分程度に制限される品質)は分散型電源から供給する
ものとした。
〇直流給電方法
・
高品質 A 又は B を供給する装置には二次電池があり、この直流部から直流を供
給することとした。
〇負荷平準化のための装置
・
負荷平準化のための装置は電力変換器、二次電池で構成するものとした。
〇高調波電流の電力系統への流出を抑制する装置
・
高調波電流の電力系統への流出を抑制する装置としてアクテイブフィルターを
採用した。高調波電流の補償のレベルは高調波抑制ガイドラインと同等とした。
ⅱ システム構成
・
システム構成は全ての電力品質を供給する装置をそれぞれ設置する機能分散型と、
電力変換器、二次電池の共用化により全ての電力品質を供給する装置を 1 台の装置に
統合した機能統合型があり、これらのシステム構成を以下に示す。なお、高品質 B は
3 つに細分化されているが、電力供給品質要件の詳細についてはⅲ参照。
a 機能分散型
プラットフォームシステムにおける機能分散型システムを以下に示す。
上位系統
品質別電力供給センター
G
分散型電源
VCB1
高品質B3
電力供給
装置
VCB2
~/-
-/~
双方向
コンバータ
直列補償
インバータ
高品質A
電力供給
装置
負荷
平準化
装置
アクテイブ
フィルター
VCB3
高速遮断器
~/-
~/-
双方向
コンバータ
-/~
二次電池
~/-
~/-
順変換装置
双方向
コンバータ
高品質B2
電力供給
装置
高品質B1
電力供給
装置
~/-
インバータ
直列補償
インバータ
小容量直列補償
インバータ
(電圧変動
を補償)
標準品質
高品質B3
図 2.1.1
高品質A
DC
給電
高品質B1
高品質B2
機能分散型システム構成(プラットフォーム)
23
高品質C
b 機能統合型
プラットフォームシステムにおける機能統合型システムを以下に示す。
上位系統
品質別電力供給センター
分散型電源 G
VCB2
VCB1
機能統合型
高品質電力
供給装置
VCB3
高速遮断器
双方向 ~/-
コンバータ
小容量直列補償
インバータ1
(電圧変動
を補償)
-/~
~/-
直列補償インバータ3
二次
電池
-/~
-/~
直列補償
インバータ2
インバータ
標準品質
高品質B3
図 2.1.2
DC
給電
高品質A
高品質B1
高品質B2
高品質C
機能統合型システム構成(プラットフォーム)
ⅲ 電力供給品質要件の再検討
前述の電力供給品質要件においては、需要家における電力供給品質対策(停電、電圧
等)実態調査による用途毎の必要とする電力供給品質の分類、負荷機器の瞬断時間耐量
を勘案した電力供給品質分類別の瞬断時間要件及び瞬低・停電の補償要件を整理したが、
更に追加してシステムが供給可能な電力供給品質要件を以下のとおり検討した。
a 電力供給品質分類の細分化(高品質 B)
システム構成から、高品質 B について、3 通りの瞬低と停電の補償の組み合せが考
えられることから、高品質 B の細分化を行なった。
〇高品質 B1:停電及び瞬低を補償
・
瞬低、停電時に高速遮断器を開放し双方向コンバータから電力供給が可能なこ
とから、瞬低、停電ともに補償可能なケース(前述の電力供給品質要件の高品質
B のうち、瞬低、停電ともに補償する電力供給品質に相当。
)
〇高品質 B2:瞬低は補償可能であるが、停電では制限付きの補償
・
直列補償方式の電力変換器を採用していることから分散型電源が運転中は瞬
低・停電ともに補償可能であるが、分散型電源が停止中には停電の補償ができな
いケース(システム構成から新たに定義された電力供給品質。)
24
〇高品質 B3:瞬低のみ補償
・
直列補償方式の電力変換器を使用しており、瞬低は補償できるが停電は補償で
きないケース(前述の電力供給品質要件の高品質 B のうち、瞬低のみ補償する電
力供給品質に相当。)
表 2.1.6
高品質 B1
高品質 B2
高品質 B3
高品質 B における瞬低と停電の補償
瞬 低
補償する
補償する
補償する
停 電
補償する
制限付きの補償
補償しない
b 電力供給品質分類毎の供給可能な電力供給品質要件の策定
システムに基づき、電力供給品質分類毎に瞬低、停電以外の電力供給品質要件につ
いて整理した。
〇高品質 A
・
本品質の電力を供給する装置は常時インバータタイプの電力変換方式を採用し
ていることから、電圧変動、不平衡、高調波、周波数ともに補償が可能とした。
〇高品質 B
・ 本品質の電力を供給する装置は直列補償方式の電力変換器により構成されてい
るので電圧変動、不平衡、高調波は技術的に補償可能であるが、電圧変動では、
補償にあたって直列補償方式の電力変換器の容量の増加等の増分費用がないと
考えられるために、標準補償とした。但し、補償を行なう場合に直列補償方式の
電力変換器の常時損失が発生することが想定されることから、常時損失を低減す
る観点から補償をしない場合も考えられる。
・ また、不平衡、高調波では、補償にあたって直列補償方式の電力変換器の容量
の増加等の増分費用が想定されるために、標準的には補償しないとした。(オプ
ション的な扱い)
・
周波数は、装置構成上、補償できないため補償できないとした。
〇高品質 C
・
電圧変動、不平衡、高調波、周波数ともに装置構成上、補償できないため補償
できないとした。
〇直流
・ 高品質 A、B を供給するシステムには二次電池があり、直流を供給することが可
能なために高品質 A、B に付随する電力供給品質とした。
c システムに基づく電力供給品質要件の整理
以上の検討を基に、システムが供給可能な電力供給品質等を勘案し以下のように整
理した。
25
表 2.1.7
電力供給品質分類
電力供給品質要件
高品質B
高品質A
B1
B2
高品質C(*8)
標準品質
1 分程度
-
D
D
B3
瞬断時間
無瞬断
電
電圧変動
A
A(*6)
力
電圧不平衡
A
C
C
C
D
D
供
電圧高調波
A
C
C
C
D
D
給
周波数
A
D
D
D
D
D
品
瞬
低
A
A
A
A
C(*5)
D
質
停
電
A
A
B(*3)
D
B(*4)
D
・停電時間が 1 分程度
-
要
バックアップ時間
15msec 以下(*1)
安全に設備をシャットダウン
件
A(*6) A(*6)
・200msec 以上(*2)
できる時間以上
その他
に制限
直流供給が可能(*7)
直流供給が可能(*7)
-
-
(注)A:補償を行う、B:制限付きの補償を行う(詳細は注釈参照)、C:補償の対象とはしない(技術的に補償可能)
D:補償の対象とはしない(技術的に補償困難)
(*1)
・用途負荷(小容量コンピュータ、製造設備など)の瞬断耐量、規格から最も厳しい数値を採用。
(*2)
・瞬時電圧低下の 80%が瞬低時間
(*3)
・分散型電源が停止中は補償不可。
(*4)
・停電時間が 1 分程度に制限される。
(*5)
・瞬低補償を行うには少なくとも高速遮断器が必要。
(*6)
・常時損失を低減する観点から補償しない場合がある。
(*7)
・高品質A、Bを供給する装置の直流部から供給可能。
(*8)
・非常用発電機の代替を想定すると、消防法の規制の改正が必要。
200msec 以下(瞬時電圧低下対策、電気協同研究、第 46 巻、第 3 号、平成 2 年)
2)システムの信頼度を維持するための対策
システムの信頼度を維持するための対策として下記内容について検討を実施した結果を
以下に示す。
① 高品質電力供給装置故障時・定期点検時の対応
② 配電線の信頼性対策
③ 需要家事故の波及防止システム
ⅰ 高品質電力供給装置故障時・定期点検時の対応
・
装置故障時、定期点検時の電力供給維持のために無瞬断バイパス回路を設置するこ
ととした。
ⅱ 品質別電力供給センターから需要家間の配電線の信頼性対策
・
品質別電力供給センターから需要家の重要負荷までの配電線は、従来の需要家が個
別に電力供給品質対策を行う場合に比べ長距離化することが想定され、配電線の事故
等により、従来と比べて信頼性が低下する可能性がある。この対策として配電線は地
中式とし、また、メンテナンス時の対応から 2 回線配電方式とした。
26
ⅲ 需要家側事故の波及防止システム
・
需要家側での事故に対し、他需要家に波及しないための対策検討が必要であり、需
要家側事故の波及防止方法に関して以下のように検討を行った。
a 前提条件
・
責任分界点は需要家側の受電遮断器の 1 次側とする。従って、需要家の保有する
重要負荷間の事故波及防止は考慮しないことを原則とする。
すなわち、事故点①で事故が発生したとして、その事故の重要負荷 1-B,1-C への
波及防止は考慮しない。
需要家1
MCCB2
重要負荷1-A
MCCB1
フィーダ1
重要負荷1-B
高速スイッチ
交流入力
高品質電力供給
装置
事故点①
責任分界点
フィーダ2
図 2.1.3
需要家2
責任分界点
27
重要負荷1-C
b 検討対象方式
検討対象方式としては現状の技術動向を勘案し対策として有効と思われる以下の 4
方式とした。
表 2.1.8
検討対象
検討対象システム
方式図
事故除去の方法
方式
①バイパス
需要家1
全フィーダを高速スイッ
MCCB2
重要負荷1-A
切換方式
MCCB1
高速スイッチ
事故点②
交流入力
重要負荷1-B
切り替えてバイパス回路
重要負荷1-C
から短絡電流を給電し、
高品質電力供給
装置
フィーダ2
チによりバイパス給電に
事故点①
フィーダ1
短絡回路に設置されてい
需要家2
る MCCB をトリップさせ事
故を除去する。
②個別フィ
ーダ切換
方式
事故需要家のフィーダの
需要家1
フィーダ切換盤
交流入力
重要負荷1-A
高速スイッチ
高品質電力供給
装置
MCCB2
フィーダ1
MCCB1
事故点①
重要負荷1-B
高速スイッチ
事故点②
重要負荷1-C
みを高速スイッチにより
バイパス給電に切り替え
てバイパス回路から短絡
フィーダ切換盤
電流を給電し、短絡回路
高速スイッチ
フィーダ2
高速スイッチ
需要家2
に設置されている MCCB を
トリップさせ事故を除去
する。
③フィーダ
事故需要家のフィーダを
需要家1
高速遮断
方式
MCCB2
高速スイッチ
重要負荷1-A
MCCB1
交流入力
高品質電力供給
装置
高速スイッチ
フィーダ1
し事故を除去する。
事故点①
重要負荷1-B
事故点②
高速スイッチ
フィーダ2
重要負荷1-C
需要家2
④限流遮断
方式
高速スイッチにより遮断
短絡電流を限流しながら
需要家1
高速スイッチ
交流入力
高品質電力供給
装置
MCCB2
重要負荷1-A
MCCB1
高速スイッチ
フィーダ1
重要負荷1-B
事故点②
高速スイッチ
事故点①
フィーダ2
需要家2
28
重要負荷1-C
事故需要家のフィーダの
高速スイッチを遮断し事
故を除去する。
c 各方式の得失の整理
需要家側での波及事故防止対策は方式の違いにより供給信頼性、設計上の留意事項
等に違いが見られる。前述の 4 方式について主な得失を整理した。その結果を以下に
示す。
供給 他需要家への
信頼 事故波及度合
性
い(*1)
事故需要家へ
の復電時間
(*2)
設計 負荷機器の突
上の 入電流(*3)
留意
事項 その他
損失(*4)
コスト(*5)
備考(高品質電力へ
の適用の可能性)
表 2.1.9 需要家側事故波及防止システムの得失
バイパス切換方式
個別フィーダ
フィーダ高速遮断
限流遮断方式
切換方式
方式
〇
△~〇
△~〇
×~△
①電圧低下時間
①電圧低下時間 ①電圧低下時間
①電圧低下時間
数十μsec
数十μsec
数十μsec
10msec~4sec
②電圧低下度
②電圧低下度
②電圧低下度
②電圧低下度
限定的
同左
同左
回路のインピーダンス条件
により異なる
×
〇
〇
×
同左
短絡回路に接続されてい
同左
短絡回路に接続され
る MCCB トリップ後即復電
ている MCCB をマニュアル
で開放後復電
〇
〇
×
×
問題なし
問題なし
突入電流を見込む必
同左
要有り
-
-
-
限流装置(リアクタン
ス)による電圧変
動等に留意した
設計必要(*6)
〇
×
〇
×
〇
△
高品質A、Bとも適用可能
・高品質 A は不可
・高品質 B には 15msec
以下で遮断可能な
MCCB が必要
(*1)〇:他需要家への影響が無いと推定される。△:他需要家への影響がほとんど無い。×:他需要家への影響が発生する可能性がある。
(*2)〇:事故需要家の復電時間が短い。×:事故需要家の復電時間が長い。
(*3)〇:システム設計に負荷機器の突入電流を考慮する必要がない。×:負荷機器の突入電流を考慮したシステム設計が必要。
(*4)〇:損失がある。×:損失がない。
(*5)〇:コストが安価。△:コストが〇から×の間。×:コストが高価。
(*6)将来技術(超電導)の適用により本問題が解決される可能性がある。
3)直流給電方法
特定地域における直流給電方法に関して直流給電方式、電力変換回路方式等を検討した
結果を以下に示す。
・
特定地域での直流供給容量は数百 kW 程度、配線こう長も数百メートル程度と想定さ
れることから、数百 V 程度で直流供給する必要があり、需要家側で重要負荷の求める電
圧に変換するための電力変換器が必要である。
・ 電力変換方式として DC/DC コンバータ(非絶縁方式)と DC/DC コンバータ(絶縁方式)
を検討した結果、素子破損時の安全性の観点から DC/DC コンバータ(絶縁方式)の方が
優位性がある。
29
② 再開発地域を想定したシステム
再開発地域を想定した品質別電力供給システムについて、需要家におけるヒアリング結果
における電力供給品質のニーズを勘案して、システム構成等を検討した結果を以下に示す。
1)再開発地域を想定した理由
システムを導入する対象を特定地域について「再開発地域」、「工業団地」から検討した
結果、以下の点からシステム導入対象として、再開発地域を想定することとした。
・ 工業団地及び再開発地域の実態調査結果から、工業団地の竣工状況は年々減少傾向で
あり、また、品質別電力供給が成立する工業団地(半導体製造業等の瞬時電圧低下防止
のニーズがある産業需要家が立地している工業団地)の割合が少なく、また入居率も少
ない。
・ 一方、再開発地域の竣工状況は年間 40 件程度で微増傾向であり、品質別電力供給が
成立する再開発地域(数百 kVA 以上の高品質電力容量が確保できる再開発の総延床面積
として、10 万 m2 以上)も見られる。
2)システム構成
ⅰ 再開発地域を想定した電力供給品質メニュー
・ プラットフォームシステムとしては、高品質 A、B1、B2、B3、C、DC(直流)が技術
的に供給可能であるが、需要家における電力供給品質ニーズの調査結果から、実際に
需要家のニーズがある高品質 A、B1、C を対象とした。
ⅱ 再開発地域を想定したシステム構成
a 機能分散型
・ 再開発地域を想定し、高品質 A、B1、C を供給する装置をそれぞれ設置する機能分
散型システム構成を以下に示す。
上位系統
品質別電力供給センター
分散型電源 G
VCB2
VCB1
高品質B1
電力供給
装置
高品質A
電力供給
装置
負荷
平準化
装置
VCB3
~/-
~/- 順変換
高速遮断器
~/-
装置
双方向
コンバータ
双方向
コンバータ
-/~
二次
電池
~/-
インバータ
小容量直列補償
インバータ
(電圧変動を補償)
標準品質
高品質A
図 2.1.4
高品質B1
機能分散型システム構成(再開発地域を想定)
30
高品質C
b 機能統合型
・ 再開発地域を想定し、高品質 A、B1、C を供給する装置を 1 台の装置に統合した機
能統合型システム構成を以下に示す。
上位系統
品質別電力供給センター
分散型電源 G
VCB2
VCB1
VCB3
高速遮断器
双方向
コンバータ
機能統合型
高品質電力
供給装置
~/-
二次
電池
-/~
小容量直列補償
インバータ
(電圧変動を補償)
インバータ -/~
標準品質
図 2.1.5
高品質A
高品質B1
高品質C
機能統合型システム構成(再開発地域を想定)
(5)品質別電力供給システムの評価
システム基本設計の結果を踏まえて、機能統合型システムと機能分散型システムについて、
評価を行なった。
① 技術的な評価
今回、検討した機能分散型システムと機能統合型システムについて、システムの信頼性、
需要増時のシステムの拡張性、システムの設置スペース、技術の難易度から比較・評価した。
1) 信頼性
〇
本システムを構築する上では、信頼性の高い装置の開発が望まれるところであるが、
ここでの信頼性としては、システム故障の可能性及び故障が発生した場合の影響度合い
に着目し比較・評価した。
・
機能分散型システムでは、各品質を供給する装置が独立しているので、装置台数が
多く、故障の可能性は機能統合型に比べてやや高いと考えられるが、特定の装置が故
障しても他の品質を供給する装置への波及はない。
・
機能統合型システムでは、装置が統合されているので構成がシンプルになり、故障
の可能性は機能分散型に比べて低いと考えられるが、一旦故障が発生すると、全ての
品質へ影響を及ぼすことが考えられる。
・ 以上のことから、システム故障の可能性及び故障が発生した場合の影響度合いでは、
31
双方のシステムともに一長一短である。
2)拡張性
〇
ここでの拡張性では、需要家の需要増が発生した場合のシステム増設の容易性につい
て着目し比較・評価した。
・
機能分散型システムは、需要増に対して品質メニューに対応する装置を増設させる
こと又は容量を増加させることにより比較的容易に対応可能であると考えられる。
・
機能統合型システムは、需要増に対して、各品質を供給する装置が統合されている
ことから、各品質の供給電力容量の増加に対する柔軟性の面では、機能分散型システ
ムよりも劣ると考えられる。但し、各品質の電力を供給するために必要な電力変換器
のみの容量及び二次電池の容量を増加させることにより対応可能なことも考えられる
が、この場合、あらかじめ、装置を構成する一部の電力変換器等の容量の増加が可能
な装置設計を施す必要がある。
・ 以上のことから、拡張性面では、機能分散型システムのほうが優位と考えられるが、
一般的に設備建設時に将来容量を考えた設計が行なわれると考えられることから、実
際の対応は少ないものと考えられる。
3)設置性
〇
ここでの設置性では、システムの占有スペースに着目し比較・評価した。
・
機能分散型システムは各品質の電力を供給する装置を個別に設置するために、機能
統合型システムよりも広い設置スペースが必要であると考えられる。
・
機能統合型システムは各品質を供給する装置を 1 台に統合しているので機能分散型
システムよりも狭い設置スペースになると考えられる。
・
以上のことから、システムの占有スペースでは、機能統合型システムが優位である
と考えられる。
4)技術の難易度
〇
ここでの技術の難易度では、現状の技術をベースにしたシステム開発の難易度に着目
し比較・評価した。
・
機能分散型システムの各品質を供給するために必要な機器(電力変換器、二次電池
等)は、既存の機器を利用することが可能であるために比較的システム化は容易と考
えられる。
・
機能統合型システムは各品質を供給するために必要な機器(電力変換器、二次電池
等)を統合する新しい技術であり、機能分散型に比べ技術レベルが高いと考えられる。
・
以上のことから、技術の難易度の面では、機能分散型システムのほうが優位である
と考えられる。
32
2.2
分散型電源の統合制御システム
(1) システム検討の進め方
「新電力供給システム技術検討会」報告書において示された「分散型電源の統合制御システム」
について、系統シミュレーション等に基づく技術的な評価について検討した結果を整理した。
具体的な、検討の進め方は以下のとおりである。
①
システム要件検討のための実態調査
②
システムの考え方
③
システムの技術要件
④
系統効果シミュレーションの実施
⑤
システムの評価
(2) システム要件検討のための実態調査
分散型電源の利用実態及び分散型電源を利用した系統に何らかの効果を与える技術に関する国
内外の動向についての文献調査、ヒアリング調査結果を整理した。
① 国内における分散型電源の利用実態
1) 分散型電源の利用実態
i
需要家における停電対策としての利用
・
分散型電源の利用方法として、電力供給のみならず系統電源のバックアップ電源と
しての利用も拡大している。
ii 需要家における契約電力低減としての利用
・
業務用需要家においては、契約電力の低減を目的とした分散型電源の導入も見られ
る。(平成 13 年度アンケート調査結果)
2) 分散型電源の系統に対する利用技術
i
配電線の過負荷対策への利用概念
・
分散型電源を利用した配電線の過負荷対策として、以下の方法が考えられている。
・
全体的な需要の伸びが鈍化する中で、局所的に発生する需要増に合わせて、小容
量の分散型電源を設置し、過負荷対策を実施する。
33
・
需要増に伴う配電線末端の電圧低下対策等として、分散型電源の末端設置等によ
り既存の配電線電圧調整(変電所送り出し電圧調整、SVR、SC、柱上変圧器)と組み
合わせるなどして、配電線の電圧調整を実施する。
ii
系統事故時の補完電源としての利用方法
・
系統事故時の補完電源として、以下の利用も考えられている。
・
変電所事故時等における配電線融通(他の配電線からの電力供給)の支援
・
台風、地震時の送電線倒壊等の大規模非常災害時における電源確保(避難所等へ
の電力供給)
② 米国における分散型電源の利用実態
1) ニューヨーク州における Virtual Power Plant 実証試験
・ 2001 年からニューヨーク州ロングアイランドにおいて、夏季需給逼迫時のピークカッ
ト対策を目的とした実証プロジェクト(Virtual Power Plant)が行われている。
・
実証試験では、同州の電力需要マネジメントに関する EDRP プログラム(Emergency
Demand Response Program)を基に、複数の非常用電源に対して Web ベースの Signature
SystemTM という電力モニタリング・制御・ディスパッチシステムを使用し、電力需要・
供 給 に 関 す る リ ア ル タ イ ム デ ー タ を 収 集 す る と と も に 、 ISO(Independent System
Operator)との通信を含むコントロールセンターを構築する技術の開発実証を行ってい
る。
図 2.2.1
Virtual Power Plant 概念図
(出典:Electrotek Concepts 社ホームページ)
③ 分散型電源の利用の可能性
国内外の利用実態調査を踏まえ、分散型電源の連系による系統特性変化への対応等の系統
への利用方法としては、自家消費等への分散型電源利用における余力を活用する観点から供
34
給力としてではなく、系統(送電線、配電線)の過負荷や電圧低下対策での利用が考えられ、
可能性について以下のとおり整理した。
1) 系統(送電線、配電線)の過負荷や電圧低下対策等への利用
2) 系統電源の逼迫時における補完電力としての利用
(3) システムの考え方
(2)の実態調査結果を踏まえ、分散型電源の統合制御システムの考え方(基本要件)を整理し
た。
① システムの基本要件
1) システムの基本的な考え方
分散型電源の統合制御システムは、系統に連系された複数の分散型電源を統合して、そ
れぞれの分散型電源に対して何らかの情報を与えて運転制御することにより、配電線適正
電圧維持や配電線過負荷対策等の系統への効果が期待できるシステムと定義する。
2) システムのメリット
システムのメリットとして考えられるものは以下のとおりである。
・
配電系統における適正電圧維持
・
配電線損失(ロス)の低減
・
配電線、配電用変電所変圧器等の負荷増加に対応する供給力
② 分散型電源の制御方式
分散型電源の制御方式は、制御することにより系統へ何らかの効果をもたらすことを前提
に、次の 2 つの制御方式として大別される。
1) 統合制御方式
・
系統情報(連系地点の情報や系統運用者からの情報等)を基に、個々の分散型電源複
数台に一括して制御指令を行うことにより、系統へ何らかの効果をもたらす制御方式。
制御センター
変電所
分散型電源(制御可)
系統及び電源情報
制御指令
図 2.2.2 統合制御方式の概念図
2) 自律分散制御方式
・
系統情報(連系地点の情報や系統運用者からの情報等)を基に、分散型電源自身が判
断し自ら制御を行い、系統へ何らかの効果をもたらす制御方式。
35
分散型電源(制御実施)
変電所
図 2.2.3
自律分散制御方式の概念図
制御方式としては、分散型電源の自律分散制御方式についても考えられるが、自律分散制
御方式に関する研究状況等の調査結果から、現在はまだ実用化のレベルではなく研究段階の
方式であるため、今回の統合制御の制御方式としては、統合制御方式とした。
③ 分散型電源の統合範囲
分散型電源の統合範囲としては、配電線単位と配電用変電所単位が考えられる。
④ 制御における系統情報と系統に対する効果
系統情報量の差等により、統合制御方式をさらに細分化できることから、系統情報(現在
の系統から入手できる情報と新たに計測装置を用いて入手する情報)と制御方式を整理した。
1) 系統情報と制御方式
系統運用者と分散型電源設置需要家又は分散型電源制御センター間の伝送する情報の型
式、タイミング、情報量等の違いによる分散型電源の制御方式を表 2.2.1 のとおり整理した。
表 2.2.1
系統情報と制御方式
系統運用者から
情報の形式
の情報
系 統 運 用 者 側 で 調整量を示した調整パタ
分 散 型 電 源 の 連 ーン
系 点 に お け る 力 ・ 系統運用者が連系点の
率等の調整量を
調 整 量を 算出 し 、季 節
提示
別、時間帯別にパターン化
調整パターン+調整量
・ 系統運用者が連系点の
調 整 量を 算出 し 、季 節
別、時間帯別にパターン化
・ 系統運用者が配電用変
電 所 の変 圧器 の 送出 し
電 圧 や配 電線 の 電流 を
監視し、異常を認識した
場合において、連系点の
調整量を算出
調整量
・ 系統運用者がセンサー取
り付け点における電圧、
電流、力率を基に連系点
における調整量を算出
タイミング
(伝送間隔)
年数回程度
少
通信
方法
文書等
随時
(系統運用者
側が分散型電
源による系統
に対する効果
を必要とした
場合)
中
電話等
随時制御
常時(リアル
タイム)
多
データ
及び制
御通信
回線
リアルタ
イム制御
36
情報量
制御方式
パターン
制御
(4)
システムの技術要件
(3)のシステムの考え方に基づき、システムの技術要件を整理した。
① 検討対象範囲
統合制御システムは、系統運用者からの情報により、制御方式及び系統に対する効果が異
なるが、現状の系統システムでの実用化という観点を考慮し、パターン制御及び随時制御を検討
の対象とした。
表 2.2.2
検討対象範囲
制御方式
①パターン制御
系統運用
者が入手
する情報
及び手段
②随時制御
③リアルタイム制御
現状の系統
システム
過去の実績等
新しい装置
等の設置
―
―
配電用変電所及び系
統の地点情報等
大
大
小
検討の優先度
配 電 用 変 電 所 の 電 配電用変電所の電圧、
圧、電流等
電流等
□:検討を実施する
② 制御対象分散型電源及び導入対象系統
現状における分散型電源の普及状況を勘案し、システムにおける分散型電源及び導入対象
系統は表 2.2.3 を基本とした。なお、配電線の形態としては、既存の樹枝状系統とした。
表 2.2.3
制御対象分散型電源及び導入対象系統
導入量
統合する電源
出力
①
太陽光発電
(PV)
3kW
②
回転機
300kW
導入
箇所数
連系
箇所
導入対象
系統
台数
総容量
300 台
900kW 注 1)
300 軒
低圧線
住宅地域
6台
1,800kW 注 2)
3軒
高圧線
商業地域
注 1)電力系統制御 WG の検討結果より、電圧変動問題を考慮し、配電線容量(3,000kVA)の 30%程度
の導入と仮定。
注 2)電力系統制御 WG の検討結果より、電圧変動問題及び発電機の進相運転限界を考慮し、配電線
容量(4,000kVA)の 40%程度以上の導入と仮定。
③ 統合範囲
今回の統合制御システムにおける分散型電源の統合範囲は配電線単位とした。
37
④ 制御方式
1) 制御要請(指令)ルート
統合制御システムにおける制御要請(指令)のルートは次のとおり。
b
系統運用者
分散型電源制御センター
c
a
分散型電源設置需要家
図 2.2.4
制御要請(指令)ルート
2) 制御方式概要
制御方式別の概要を表 2.2.4 のとおり整理した。
表 2.2.4
制御方式
パターン制御
制御概念
制御ロジック
随時制御
制御概念
制御ロジック
統合制御方式別の概要
概 要
・ 系統運用者があらかじめ定めた力率調整パターンに基
づき、分散型電源設置需要家又は分散型電源制御センタ
ーが分散型電源を制御。
・ 系統運用者
・ 分散型電源の系統連系点の力率調整パターンを作成
し、分散型電源設置需要家又は分散型電源制御センタ
ーへ提示。
・ 力率調整パターンは、季節別、時間帯別のパター
ンが考えられるが、制御を容易に行うためには、パ
ターンの簡素化が必要。
・ 分散型電源設置需要家又は分散型電源制御センター
・ 力率調整パターンに合わせ、分散型電源を制御。
・ 系統運用者があらかじめ定めた力率調整パターンに加
え、系統運用者の随時指令に基づき、分散型電源設置需
要家又は分散型電源制御センターが分散型電源を制御。
・ 系統運用者
・ パターン制御の制御ロジックが基本。
・ 配電用変電所における変圧器 2 次側の電圧及び配電
線流入電流の計測値から配電線における対応の有無を
判断し、対応が必要となる場合に分散型電源設置需要
家又は分散型電源制御センターに制御を依頼。
・ 分散型電源の連系点における電圧や過負荷量を算出
し、調整量を提示。
・ 分散型電源設置需要家又は分散型電源制御センター
・ パターン制御の制御ロジックが基本。
・
各分散型電源の連系点における配電線情報(電流電
圧等)を計測したのち、制御を開始し、調整。
38
⑤ システム構成
1) システム構成ケース
システムの導入対象、分散型電源、制御方式、制御センターの有無により表 2.2.5 の
とおりに整理した。なお、PV を用いたケースについては、制御対象数が多いことから、
通信回線を用いて制御することを基本とした。
表 2.2.5
システム構成ケース
制御要請(指令)ルート注)1 及び通信手段(内容)注)2
分散型電源制御
分散型電源制御
センターなし
センターあり
分散型電源
及び
対象系統
制御方式
A
B
A
B
C
C
・太陽光発電
(PV)
・容量:3kW/台
・ 台 数 : 300 台
(300 軒)
パターン制御
・系統の過去の実
績等から年間力
率パターン等を設
定し制御要請
(A)
随時制御
・パターン運転に
加え、系統の地
点情報を基に修
正(センサ設置)
(B)
・住宅地域系統
の低圧配電線
パターン制御
に連系
(A)
随時制御
(B)
パターン制御
(A)
文書
(年間力率パターン等)
公衆回線又は専用
線
(年間力率パターン及び随
時のパターン変更)
1-1
-
-
1-2
公衆回線又は専用
線
1-3
文書(年間力率パターン)
及び
電話(随時のパターン変更)
文書又は電話
(年間力率パターン等)
C
-
(年間力率パターン等)
-
ケ
|
ス
-
文書又は電話
-
B
A
(年間力率パターン等)
公衆回線又は専用
線
(年間力率パターン及び随
時のパターン変更)
1-4
-
-
2-1
-
-
2-2
公衆回線又は専用
線
2-3
・回転機
・容量:300kW/
台
・台数:6 台
(3 軒)
随時制御
(B)
・ 商 業 地 域 系 統 パターン制御
(A)
の高圧配電線
に連系
随時制御
(B)
文書及び電話
(年間力率パターン及び随
時のパターン変更)
-
文書及び電話
(年間力率パターン等)
文書(年間力率パターン) 公衆回線又は専用線
及び
(年間力率パターン及び随 2-4
電話(随時のパターン変更)
時のパターン変更)
-
注)1
A:系統運用者、B:分散型電源制御センター、C:分散型電源設置需要家
注)2
公衆回線、専用線とも有線方式、無線方式がある。
39
2)
システム構成例
分散型電源制御センターにより随時制御を行う場合のシステムの構成例について以下
に整理した。住宅地域系統に適用するシステムの構成例を図 2.2.5、商業地域系統に適
用するシステムの構成例を図 2.2.6 に示す。
40
41
インターネットへ
インバータへ
PVPV
Ethernet
シリアル
USB 等 モデム
CPU
CPU
-/-
監視・制御 電圧
インタフェース 変換器
低圧系統
監視装置
電圧調整器
配電用変電所
負荷
図 2.2.5
PV 設置需要家
-/~
インバータ
PV
-/~
PV 設置需要家
-/-
監視・制御 電圧
インタフェース 変換器
負荷
インバータ
センサ
柱上変圧器
高圧系統
専用線
導入量報告:電話、ファックス、電子メール
随時制御要請:電話、ファックス、電子メール
パターン制御要請:文書
PV
センサ
-/~
負荷
インバータ
41
ファイア・
ウォール
(FW)
PV
-/~
PV 設置需要家
-/-
負荷
インバータ
低圧系統
DB サーバ WWW サーバ
監視・制御 電圧
インタフェース 変換器
ルータ
監視制御装置
柱上変圧器
運用者
PV 設置需要家
-/-
監視・制御 電圧
インタフェース 変換器
インターネット
分散型電源制御
センタ
統合制御システムのシステム構成例(住宅地域系統:制御センターあり、随時制御)
DB サーバ
運用者
系統運用者の制御センター
制御要請
報告
通信回線
監視装置
電圧調整器
配電用変電所
系統運用者の制御センター
制御要請
報告
通信回線
42
図 2.2.6
運用者
センサ
センサ
負荷
センサ
発電機設置需要家
発電機制御盤
G
センサ
センサ
電話、ファックス
又はインターネット
分散型電源
制御センタ
運用者
42
ルータ
監視制御装置
統合制御システムのシステム構成例(商業地域系統:制御センターあり、随時制御)
発電機設置需要家
発電機制御盤
G
高圧系統
専用線
導入量報告:電話、ファックス、電子メール
随時制御要請:電話、ファックス、電子メール
パターン制御要請:文書
負荷
ファイア・
ウォール
(FW)
DB サーバ WWW サーバ
(5)
系統効果シミュレーション
統合制御システムにおける分散型電源の系統に対する効果を定量的に評価するため、住宅地域
系統及び商業地域系統のシステムを対象にシミュレーションを実施した。今回、系統に対する効
果としては、配電系統における適正電圧維持及び配電線損失の低減とした。なお、系統効果シミ
ュレーションでは、分散型電源、導入対象系統、制御方式の違いによる系統に対する効果を定量
的に評価することを目的としており、他の項目に関する評価については定性的に次節で述べる。
①
シミュレーション条件
1) 制御対象分散型電源及び導入対象系統
制御対象分散型電源及び導入対象系統は表 2.2.6 のとおり。なお、配電線の形態として
は、既存の樹枝状系統とした。
表 2.2.6
制御対象分散型電源及び導入対象系統
導入量
統合する電源
出力
①
太陽光発電
3kW
②
回転機
300kW
導入
箇所数
連系
箇所
導入対象
系統
台数
総容量
300 台
900kW 注 1)
300 軒
低圧線
住宅地域
6台
1,800kW 注 2)
3軒
高圧線
商業地域
注 1)電力系統制御 WG の検討結果より、電圧変動問題を考慮し、配電線容量(3,000kVA)の 30%程度
の導入と仮定。
注 2)電力系統制御 WG の検討結果より、電圧変動問題及び発電機の進相運転限界を考慮し、配電
線容量(4,000kVA)の 40%程度以上の導入と仮定。
2) 住宅地域
i
モデル系統
シミュレーションに使用した住宅地域系統モデルの高圧系統の構成を図 2.2.7(a)、柱
上変圧器を含む低圧系統の構成を図 2.2.7(b)に示す。高圧系統の各ノードに図 2.2.7(b)
に示すような低圧系統がぶら下がるような形となる。
なお、高圧系統は電協研標準配電線標準モデル(電気協同研究第 37 巻第 3 号)をベ
ースに現状に即して修正しており、低圧系統は地方都市の住宅地を想定して模擬した。
シミュレーション条件は以下のとおりとなる。
・
配電線容量:3,000kVA(負荷及び分散型電源は均等分布)
・
シミュレーション範囲:フィーダ 6 本
・
柱上変圧器のタップ変更:あり
・
制御対象の分散型電源:太陽光発電(PV)
(始端、中間、末端の各グループ単位で制御対象を変更)
・
PV の台数は導入量 100%の場合で1フィーダ当り 1,000 台(配電線容量 3,000kVA÷
PV 容量 3kVA/台)で、これを高圧系統の各ノードに均等に振り分けて1ノード当り
25 台とした。
・
需要家 5 戸分を図 2.2.7(b)に示すように集約し、5 つの需要家群 A~E で模擬した。
43
・ 各需要家群の PV の発電量は(5 戸分の発電量×導入量)とし、負荷は 5 戸分の負荷
を設定した。
・ 高圧系統の始端、中間、末端各グループにおいてノード数が違うことから、負荷の
比率は 27.5 : 40.0 : 32.5 とした。
中間グループ
始端グループ
114
122
125
132
138
113
121
124
131
137
120
123
130
136
線路始端
115
112
配電用変電所
末端グループ
116
139 140
線路中間
101
103
102
104
109 110
107 108
106
105
111
線路末端
117
126
128
133
118
127
129
134
201
135
119
・
・
・
タップ変更点
(6750/105V→6600/105V)
(a) 高圧系統(電協研モデル、幹線こう長 4km)
連系点
柱上変圧器
(30kVA)
低圧線インピーダンス
1113
Z3
5
負
荷
需要家群 A
需要家群 B
PV
11110
負
荷
需要家群 D
Z3
……
需要家5
需要家2
(b)
Z3
需要家1
需要家 5 戸分を集約
負
荷
需要家群 C
Z3
Z3
5
1119
PV
低圧系統(地方都市の住宅地を想定)
図 2.2.7
住宅地域系統モデル
44
1115
Z2
Z3
5
1116
負
荷
PV
1114
Z2
Z3
5
1117
1118
PV
1111
Z2
Z3
5
引込線インピーダンス
Z1
1112
Z2
高圧系統
111
PV
負
荷
需要家群 E
ii 配電線の負荷パターン
負荷パターンは、電力系統制御システムシミュレーションで用いた住宅地域の中間
期(春秋期)の負荷パターンとした。本データを住宅地域モデル系統のフィーダ 6 本
の各ノードに均等に配分した。
有効電力[kW], 無効電力[kVar]
P[kW]
Q[kVar]
5663.917 1150.107
5197.723 1055.443
P
4340.956 881.4687
4169.602 846.6739
Q
4112.484 835.0756
9000
3655.542 742.2894
8000
4740.781 962.6566
7000
5860.647 1190.055
5839.09 1185.678
6000
5369.077 1090.238
5000
5424.922 1101.577
5251.786 1066.421
4000
5456.833 1108.057
3000
4626.545 939.46
5026.37 1020.648
2000
5483.313 1113.434
1000
5254.841 1067.041
5458.87 1108.471
0
7051.04 1431.775
1
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23
8195.094 1664.085
時刻[時]
8195.094 1664.085
7778.89図 2.2.8
1579.571住宅地域の負荷パターン(中間期(春秋期)、力率 0.98、6 フィーダの合計値)
7488.633 1520.632
6521.448 1324.237
iii PV の出力パターン
PV の出力パターンは、電力系統制御システムシミュレーションで用いた中間期
(春秋期)のパターンを使用した。本データを住宅地域モデル系統の配電線 1~6 の
各ノードに均等に配分した。なお、雲による出力変動及び設置箇所の違いによるば
らつきは考慮しないこととする。14 時の負荷断面では PV の導入量が約 35%の時に発
電量と負荷がほぼ同量となる。
時刻[時] PG[kW]
1
2
0
3
0
4
0
5
0
6
0
7
270
8
810
9
1470
10
2070
11
2310
12
2490
13
2400
14
2220
15
1800
16
1230
17
630
18
150
19
0
20
0
21
0
22
0
23
0
24
0
3000
3.0
2500
2.5
2000
2.0
2
出力[kW]
時刻[時]
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
1500
1.5
3
1000
3
1.0
500
0.5
3
3 00
1
図 2.2.9
3
5
7
9
11 13 15
時刻[時]
17
19
21
23
PV の出力パターン(中間期(春秋期)、1 台分)
45
3) 商業地域
i
モデル系統
図 2.2.10 にシミュレーションに使用した商業地域系統モデルの構成を示す。電協研
標準配電線標準モデル(電気協同研究第 37 巻第 3 号)をベースに現状に即して修正し
ている。シミュレーション条件は以下のとおりとなる。
・
配電線容量:4,000kVA(負荷及び分散型電源は均等分布)
・
シミュレーション範囲:フィーダ 6 本
・
柱上変圧器のタップ変更:なし
・
制御対象とする分散型電源:自家発(同期発電機)
(始端、中間、末端の各グループ単位で制御対象を変更)
中間グループ
発電機
106
発電機
末端グループ
配電用変電所
発電機
102
101
103
線路始端
線路中間
104
発電機
線路末端
・201
・
・
発電機
105
発電機
始端グループ
図 2.2.10 商業地域系統モデル(電協研モデル、幹線こう長 2km)
配電線の負荷パターン
負荷パターンは、電力系統制御システムシミュレーションで用いた商業地域の中間
期(春秋期)の負荷パターンとした。本データを商業地域モデル系統のフィーダ 6 本
の各ノードに均等に配分した。
中間期の負荷曲線
1
年間最大負荷に対する
ii
0.8
0.6
有効電力
0.4
0.2
0
-0.2
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
無効電力
-0.4
時刻(時)
図 2.2.11 商業地域の負荷データ(中間期(春秋期))
46
iii 回転機の出力パターン
制御対象である回転機の出力パターンは、一定ベース運転(24 時間定格出力運転)と
した。
②
シミュレーションによる検討項目
統合制御システムの系統に対する効果の検討項目は、以下のとおり。
・ 電圧調整量
・ 配電線損失
・ パターン制御と随時制御の制御効果
今回は、分散型電源の制御は力率制御を基本としており、その効果について検討を行った。
ここで PV の力率制御パターンのイメージを図 2.2.12 に示す。
進み力率
3
PV負荷、PV出力、逆潮分[kW]
出力(負荷、逆潮分)[kW]
PV出力
100%
B
力率
0.85~
1.0
2
1
A
0
0
0
2
4
6
8 10 12 14 16 18 20 22 24
時刻 [時]
100
分散型電源出力(%)
力率制御パターンの設定方法
・定数 A、B の設定による。
・配電線の運用状況を考慮し、時刻、曜
日、季節等毎で定数 A、B を変更するな
どの運用方法も考えられる。
図 2.2.12 力率制御パターンのイメージ(PV)
PV は図 2.2.12 のように日射とともに出力が変化するが、例えば PV 出力が一定値以上になっ
た場合、あらかじめ設定された力率で運転するように制御することにより、配電線の運用状況
を考慮した電圧の調整が可能となる。なお、PV 出力の他に負荷や PV の逆潮分のモニタリング
による制御方法も考えられる。
一方、回転機は制御指令により出力と力率を任意に制御可能。
③ シミュレーション結果
住宅地域系統及び商業地域系統のシステムを対象にした、系統に対する効果のシミュレー
ション結果についてまとめる。
・ 住宅地域及び商業地域における効果のシミュレーション結果のまとめは、表 2.2.7 のとお
り。
・
主に系統の電圧調整としての効果が期待できる。
・ 系統の状態変化への対応等を考慮すると、パターン制御よりも随時制御の効果が大きい。
47
・
住宅地域は、配電線が長く、分散型電源による制御効果が大きい。
表 2.2.7
系統効果シミュレーション結果まとめ
住宅地域(太陽光発電)
電 圧
調整量
〇
商業地域(回転機)
電圧下げ効果
〇
・ 低圧側で最大 5.0V 程度
電圧下げ効果
・ 低圧側で最大 0.5V 程度
(高圧換算で 300V 程度;SVR 2~3 タ
(高圧換算で 30V 程度)
ップ相当)
・
・
配電線
損 失
力率:進み 85%
・ 力率:進み 95%
電源の分布:末端集中導入
・ 電源の分布:末端集中導入
〇 PV 導入率 30%で PV がない場合の 30%程 〇 回転機導入率 30%で回転機がない場合の 75%程
度の損失低減が期待できる。
度の損失低減が期待できる。
〇
制御により損失が増加するが増加量は 〇 制御により損失が減少(配電系統の影響によ
小さい。
り減少)。
1)PV なし
710.7 [kWh]
1)回転機なし 192.0 [kWh]
2)制御なし
515.8 [kWh]
2)制御なし
47.8 [kWh]
3)制御による損失増分
3)制御による損失増分
ⅰ 一律制御 65.9 [kWh]
ⅰ 一律制御 - 9.2[kWh]
ⅱ 始端制御 14.4 [kWh]
ⅱ 始端制御 - 4.1[kWh]
ⅲ 中間制御 24.6 [kWh]
ⅲ 中間制御 - 6.8[kWh]
ⅳ 末端制御 11.3 [kWh]
ⅳ 末端制御 - 6.7[kWh]
パターン制 〇 配電線の諸条件を変更した検討を行っ 〇 同左
御と随時制
た結果、力率パターンのきめ細かい変更
御の得失
が可能な随時制御が優位であった。
(注)住宅地域:PV 導入率 30%、中間期(春秋期)、力率制御範囲 100~85%(進み)
商業地域:回転機導入率 30%、中間期(春秋期)、力率制御範囲 100~95%(進み)、100~80%
(遅れ)
(6) 分散型電源の統合制御システムの評価
① システム構成ケース別の評価
シミュレーション解析による系統に対する効果及び、信頼性、運用性、実現性、設備費
の面から評価を実施した。結果を以下にまとめる。
1) 系統に対する効果
i 電圧調整効果(電圧下げ効果、電圧上げ効果)
a 住宅地域系統(PV)
・
電圧下げ効果については、インバータの力率制御によりSVR 2~3タップ相当の電
圧調整が可能であり、対策としての活用が期待できる。(PV導入率30%、末端集中
導入の場合、力率進相85%:約5V(低圧換算))
・
電圧上げ効果については、現状の仕様によるインバータの力率調整幅や日射の変
化等を考慮すると期待できない。
・
電圧調整量については、ケース毎の違いはない。
48
b 商業地域系統(回転機)
・
電圧下げ効果については、電圧調整量が小さい。
(回転機導入率 30%、末端集中導入の場合、力率進相 95%:約 0.5V(低圧換算))
・ 電圧上げ効果については、電圧調整量が大きく、重負荷時の対策としての活用が
期待できる。
(回転機導入率60%、末端集中導入の場合、力率遅相80%:約4V(低圧換算))
・
電圧調整量については、ケース毎の違いはない。
c まとめ
・
電圧調整量(電圧下げ効果)については、分散型電源導入率 30%、末端集中導入
の場合、住宅地域系統が約 5V(低圧換算)、商業地域系統が約 0.5V(低圧換算)
となり、住宅地域系統が約 10 倍大きくなった。このことから、住宅地域系統の方
が分散型電源による電圧下げ効果が期待できる。
・
太陽光発電及び近年導入されている回転機型の発電機はディジタル型の電圧調整
システムとなっていることから、きめ細かな力率調整、電圧調整が可能である。
・
よって、統合制御システムによる系統電圧の調整は、きめ細かな電圧調整が可能
で、電力系統制御システムの SVC を用いた対策と同等となると考えられる。
ii 配電線損失
・ 分散型電源制御センターありで随時制御の場合は、配電線損失を最小とする制御を
行う等、きめの細かい制御による損失低減の可能性があるため有用である。
2) 信頼性
・
パターン制御は、制御がシンプルであるため動作の確実性の点で信頼性が高い。
・ 住宅地域系統(PV)のシステムは制御対象数が多く、単体の動作不良等による全体シ
ステムの効果への影響が小さいため、制御効果に対する信頼性は高い。
・ 一方、商業地域系統(回転機)のシステムは制御対象数が少なく、単体の動作不良等
による全体システムの効果への影響が大きいため、バックアップ方法等の確立が必要
と考えられる。
3) 運用性
・ シミュレーション結果より、系統状況が変化した場合にパターン制御では電圧を運用
範囲に維持できなかったが、随時制御では運用範囲に維持可能であった。以上のこと
より、随時制御は、センサ情報等により系統条件の変化に対するきめ細かで柔軟な対
応が可能であり、運用性が高いことが確認できた。
・ 分散型電源制御センターを設置することにより、一括監視・制御、制御変更要請伝達
の簡素化等、制御に伴う各種業務が効率化され運用性が高まる。
4) 実現性
・ 系統情報を利用した随時制御は、制御パターンの選択・変更が随時可能であるため、
多数のパターン作成が不要となり実現性が高い。
5) 設備費(目標価格)
・ 住宅地域系統において PV を適用し、分散型電源制御センターで随時制御を行うシス
テムとした場合、約 25 百万円(電力系統制御システムの SVC による対策の場合:約 30 百万
49
円(「第 4 回新システム技術評価分科会」より))、商業地域系統において回転機を適用
し、分散型電源制御センターで随時制御を行うシステムとした場合、約 15 百万円の設
備費が想定される。
但し、両システムとも通信回線費、人件費、保守費用等は含まれておらず、さらに
詳細検討が必要である。
6)
まとめ
・
検討の結果、実際の運用等を考慮するとシステム構成としては、分散型電源制御セ
ンターを設置し随時制御を行うシステムが有用であることが明らかとなった。
・
また、太陽光発電、回転機での制御では、対象となる配電系統の線路条件により効
果が異なるが、いずれの場合も電圧調整面での系統への効果が期待できる。
・
実運用に際しては、制御対象範囲、制御ロジック、制御側の電圧調整要求に対する
システムの対応性などの技術的な確立が必要であるが、これらを満足できれば SVC を
適用した電力系統制御システム並みの効果が期待でき、経済的な観点からも系統の電
圧調整対策としての可能性はあると考えられる。
・
本システムは、分散型電源の統合数が増加することにより、電圧調整量は増加し、
設備費は低下(分散型電源 1 台当たりの対策増分コスト)することから、統合する分
散型電源の量の確保が不可欠となる。
② 電圧調整に関する考察
1) 分散型電源の無効電力調整量
PV と回転機の無効電力調整量について、検討を行った。
i 力率調整幅
・PV の力率調整幅
進み:100~85%、遅れ:今回は未実施(現在のインバータの仕様では、遅れ力率の調
整は不可)
・回転機の力率調整幅
進み:100~95%、遅れ:100~80%
ii 無効電力調整量
・PV、回転機の無効電力調整量を表 2.2.8 及び表 2.2.9 に示す。
表 2.2.8
力率調整に対する有効電力 P 及び無効電力 Q の関係(PV)
力率(%)
進み(進相)
85
90
95
100
P(kW)
1.00
Q(kVar)
0.53 0.44 0.32 0.00
力率 95%時における Q との比率 1.7 1.4 1.0
-
注)有効電力を 1.00kW とした場合の力率と無効電力の関係を示す。
50
95
-
-
遅れ(遅相)
90 85 80
-
-
-
-
-
-
表 2.2.9
力率調整に対する有効電力 P 及び無効電力 Q の関係(回転機)
進み(進相)
85
90
95
力率(%)
P(kW)
Q(kVar)
力率 95%時における Q との比率
-
-
-
-
100
95
遅れ(遅相)
90
85
80
1.00
0.32 0.00 0.32 0.44 0.53 0.60
1.0
- 1.0 1.4 1.7 1.9
注)有効電力を 1.00kW とした場合の力率と無効電力の関係を示す。
・ PV の場合は電圧を下げる(進相運転)効果が期待できる。一方、回転機の場合には
電圧を下げる(進相運転)効果に加え、電圧を上げる(遅相運転)効果も期待できる。
・ また、例えば力率が進み 85%の場合には、進み 95%の場合の約 1.7 倍の無効電力を供
給できることが分かる。
2) 系統特性
i 住宅地域系統と商業地域系統の電圧特性(高圧系統)
住宅地域系統と商業地域系統の電圧変動特性について考察を行った。
a 検討モデル
検討モデルは、配電線の幹線のみを模擬した高圧系統簡易モデルとし、図 2.2.13
に示す。
4
101
102
103
104
105
106
107
108
109
110
111
(a)住宅地域系統(幹線のみ)
1
101
102
103
104
(b)商業地域系統(幹線のみ)
・商業地域:R=0.09031[pu]、X=0.11461[pu]
・住宅地域:R=0.31691[pu]、X=0.37603[pu]
(10MVA 基準)
(10MVA 基準)
図 2.2.13 高圧系統簡易モデル
b 算出結果
住宅地域系統と商業地域系統における配電線潮流変化と末端の電圧変動量の関係
を図 2.2.14、力率を変化させた場合の試算結果を表 2.2.10 に示す。なお、図 2.2.14
中の電圧変動量は、例えば 400kW(または 400kVar)潮流が変化した場合の値である。
分散型電源を末端に導入した場合の住宅地域系統の電圧変動量は商業地域の約 3 倍
となった。
51
電圧変動量ΔV (V)
住宅地域系統
Q
P
1.5V
1.2V
Q
商業地域系統
0.5V
P
0.4V
400
P(kW), Q(kVar)
注)ΔV=R・ΔP+X・ΔQ(R:配電線抵抗、X:配電線リアクタンス)
図 2.2.14 分散型電源の導入対象系統による有効電力制御と
無効電力制御に対する電圧変動量の関係(高圧系統)
表 2.2.10 住宅地域系統及び商業地域系統における回転機の電圧調整量
(高圧系統簡易系統モデルでの試算結果)
力率
導入対象系統
進み 95%
遅れ 80%
(電圧下げ効果) (電圧上げ効果)
住宅地域
1.5
2.8
商業地域
0.5
1.0
ii 高圧系統と低圧系統の電圧調整量
シミュレーション結果より、柱上変圧器の 2 次側(100V 系)の電圧調整量は、1 次側
(6.6kV 系)の約 2 倍となった。
3) 分散型電源を配電系統へ導入させた場合の電圧への影響
i PV を住宅地域(低圧系統)に導入した場合
・
導入による電圧上昇
約 8.0V
・
システム制御による電圧調整量(電圧下げ効果)
約 5.1V
PV の導入により電圧上昇面の問題が顕在化する。
ii 回転機を商業地域(高圧系統)、住宅地域(高圧系統)に導入した場合
a 商業地域(高圧系統)
・
導入による電圧上昇
約 1.1V
・
システム制御による電圧調整量(電圧下げ効果)
約 0.5V
b 住宅地域(高圧系統)
・
導入による電圧上昇
約 3.3V
・
システム制御による電圧調整量(電圧下げ効果)
約 1.5V
回転機の導入による電圧上昇面の問題は小さい。
52
4) まとめ
・
今回の電圧調整量(電圧下げ効果)についてのシミュレーションより、分散型電源導
入率 30%、末端集中導入の場合、住宅地域系統が約 5V(低圧換算)、商業地域系統が約
0.5V(低圧換算)となり、住宅地域系統(PV)が商業地域系統(回転機)に比べ約 10
倍大きくなるという結果となった。その要因は、分散型電源の力率調整幅の違い、住宅
地域系統・商業地域系統、高圧系統・低圧系統などの系統特性の違いによるものと考え
られる。分散型電源の統合制御により電圧調整を行う場合は、制御対象の分散型電源や
導入対象系統を十分考慮する必要がある。
・
また、分散型電源を配電系統へ導入させた場合の電圧への影響についての検討結果か
ら、住宅地域の低圧系統に連系される PV は、導入されること自体で電圧上昇を招いてい
るが、統合制御することにより電圧を下げる効果が期待できる。回転機の場合には、住
宅地域系統、商業地域系統とも電圧上昇は PV の場合よりも低く、住宅地域系統において
両者を比較すると PV の場合の 40%程度となった。
・
今回の検討では詳細なシミュレーションを実施していないが、回転機を住宅地域の高
圧系統に連系することにより、大きな系統電圧の上昇を招かず、ある程度の電圧下げ効
果及び電圧上げ効果が期待できることが明らかとなった。
③ まとめ
検討の結果、実際の運用等を考慮するとシステム構成としては、分散型電源制御センター
を設置し随時制御を行なうシステムが有用であることが明らかとなった。また、太陽光発電、
回転機での制御では、対象となる配電系統の線路条件により効果が異なるが、ある程度の量
を統合すれば系統電圧の調整に寄与できる可能性があるとの結果を得た。
今回の検討は、典型的な住宅地域系統モデルと商業地域系統モデルを採用し、シミュレー
ションによるシステムの系統への効果等を傾向として得られたものであることに留意する必
要がある。
例えば、今回の検討では力率値の設定は分散型電源毎で同一の設定としたが、全体システ
ムの最適化の観点から連系されている場所により違った設定とすることや制御対象として燃
料電池をはじめとした他の分散型電源でのシミュレーション評価、各需要家の負荷特性の設
定など、更なる実現の可能性を踏まえた検討が必要である。
53
2.3
電力系統制御システム
(1) システム検討の進め方
「新電力供給システム技術検討会」報告書において示された「電力系統制御システム」につい
て、系統シミュレーション等に基づく技術的な評価、及び具体的技術課題について検討した結果
を整理した。
具体的な、検討の進め方は以下のとおりである。
①
システム技術要件検討のための実態調査
②
システムの考え方
③
分散型電源の導入に伴う系統影響シミュレーション
④
システムの技術要件
⑤
システムの系統への導入効果シミュレーション
⑥
システムの評価
(2) システム技術要件検討のための実態調査
電力系統制御システムの技術要件を検討するため、分散型電源の普及実態及び電力系統におけ
る電圧管理の実態について調査した。
①
実態調査結果に基づく検討対象
・ 分散型電源の普及状況から、常用自家発(内燃力)、太陽光発電、風力発電は堅調に普及
しており、大規模な風力発電を除き配電線に連系される傾向にあることから、配電線を対
象とした技術検討が必要となる。但し、風力発電については、郊外地域などの限られた地
域での普及が予想されることから、本 WG では配電系統全域に普及が予想される常用自家発
(内燃力)、太陽光発電を対象とし、風力発電は検討の対象としないこととした。
②
実態調査結果に基づく検討項目
・
実態調査結果に基づき、分散型電源の導入による定量的な検討がなされていない以下の
項目を検討の対象とした。なお、太陽光発電をはじめとした分散型電源の系統連系に関す
54
る保護の問題については、関係機関で精力的に検討されていることから、対象外とした。
・
逆潮流による電圧問題
・
短絡容量の増大
・
高調波電圧ひずみの増大
(分散型電源の導入に伴い考えられる問題の例示)
○
逆潮流による電圧問題
送り出し電圧調整
配電線
配電線
低圧換算電圧[V]
変電所
柱上変圧器タップ
潮流
柱上変圧器の
タップ変更点
柱上変圧器タップ変更点
柱上変圧器タップ変更
110
108
106
104
102
100
98
96
94
92
90
↑
軽負荷期
(101±6)V
↓
重負荷期
変電所からの距離 →
図 2.3.1
配電線の電圧特性概念図(分散型電源導入前)
送り出し電圧調整
配電線
配電線
低圧換算電圧[V]
変電所
柱上変圧器タップ
逆潮流
逆潮流 G
分散型電源
柱上変圧器の
タップ変更点
図 2.3.2
110
108
106
104
102
100
98
96
94
92
90
電圧逸脱
分散型電源有りフィーダ
↑
(101±6)V
分散型電源無しフィーダ
↓
電圧逸脱
変電所からの距離 →
配電線の電圧特性概念図(分散型電源導入後)
○ 短絡容量の増大
変電所
G 分散型電源
配電線
③遮断器開放
→短絡電流遮断
②短絡電流
定格遮断容量
オーバー
①短絡事故発生
(需要家構内)
G 分散型電源
図 2.3.4 短絡事故発生時の電流の流れ(分散型電源導入後)
図2.3.3
短絡事故発生時の電流の流れ(分散型電源導入前)
図 2.3.3
短絡事故発生時の電流の流れ
図 2.3.4
(分散型電源導入前)
短絡事故発生時の電流の流れ
(分散型電源導入後)
55
(3) システムの考え方
(2)の実態調査結果を踏まえ、本章では、電力系統制御システムの基本的な考え方を整理した。
①
システムの基本要件
1) システムの基本的な考え方
〇
多くの分散型電源が電力系統に柔軟に連系できるよう、現在の系統設備をベースに系
統構成機器を制御するシステムとする。
2) システムのメリット
〇
系統電力、特に既存配電系統と分散型電源の調和
3) システムの要件
ⅰ
システム導入対象
・
分散型電源導入による影響の有無は、配電線の負荷、こう長等により異なってくる
と考えられることから、商業地域、住宅地域、郊外地域、工業地域の配電線を対象と
した。
・
近年、配電線への系統連系が多い太陽光発電、同期発電機を対象に、どのような配
電線条件で系統への影響が発生するのかを系統影響シミュレーションで確認すること
とした。
ⅱ
システムの系統構成機器
・
システムに組み入れる系統構成機器は、現状で使用されている機器と新しい機器と
して以下のとおり区分した。
a. 既存の系統構成機器:新制御 SVR(Step Voltage Regulator:ステップ式自動電
圧調整器)、SC(Shunt Capacitor:並列コンデンサ)・SR(Shunt Reactor:分路リア
クトル)(自動制御)
b. 新しい系統構成機器:SVC(Static Var Compensator:静止型無効電力補償装置)、
ループ連系装置(高速遮断器、ループコントローラ)
ⅲ
配電線の形態
・
配電線の形態としては、既存の樹枝状系統とループ系統(2 つの系統がループ状に
接続された系統)とした。
ⅳ
その他
・
系統電圧、電流、負荷、力率等の系統状態監視のための電圧・電流センサーや系統
構成機器の遠隔制御も検討の対象とした。
②
システム検討における分散型電源の連系条件
1) システム検討における分散型電源の連系条件の考え方
ⅰ 分散型電源側で個別に対策を実施するよりも、電力系統側でまとめて対策を実施する方
が有効的、効率的な場合には、電力系統側で対策を実施する。
ⅱ 電力系統側での対策が技術的に困難なものは、分散型電源側で対策を実施する。
2) 分散型電源の連系条件
〇
システム検討における分散型電源の連系条件は、検討項目毎に上記の考え方に基づき
56
表 2.3.1 及び以下のとおりとした。
ⅰ
逆潮流による電圧変動
・
有効電力に制限を加えないという観点から、電力系統連系技術要件ガイドラインを
一部遵守し、進相無効電力制御機能のみを適用し、出力制御機能(有効電力の抑制)
は適用しない。
ⅱ
高調波の電圧ひずみの増大
・
系統側で高調波抑制対策を実施する場合、電圧要素しか取り込めず効果が小さいこ
とから、電力系統連系技術要件ガイドラインを遵守し、分散型電源側で対策を実施す
ることとする。
ⅲ
短絡容量の増大
・
系統側で限流器などの短絡容量抑制対策を実施する場合、作業時の系統変更への対応、
大容量限流器の開発などの課題があるため、電力系統連系技術要件ガイドラインを遵
守し、分散型電源側で対策を実施することとする。
表 2.3.1
分散型電源の連系条件
対策内容
電力系統連系技術要件ガイドライン関連
(分散型電源の導入可能量に関連があるもの)注 2)
電圧変動
短絡容量
高調波抑制対策
ガイドライン関連注3)
高調波抑制
・逆潮流時の適正電圧逸脱など ・事故の除去に支障を来たす可 ・インバータから発生する
高調波により各種負荷
・住宅地域など配電線こう長が
能性がある
機器に障害を与える
長い場合に問題となり易い
・工業地域など配電線こう長が
短い場合に問題となり易い
分散型電源の
連系条件注1)
○注 4)
◎
◎
注 1)○:ガイドライン一部遵守、◎:ガイドライン遵守
注 2)単独運転検出などの他プロジェクトで検討中のものは除く。
注 3) 高調波抑制対策ガイドラインとは、「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガ
イドライン」及び「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」をさす。
注 4)有効電力に制限を加えないという観点から、進相無効電力制御機能は適用するが、出力制御機
能(有効電力の抑制機能)は適用せず。
(4) 分散型電源の導入に伴う系統影響シミュレーション
電力系統制御システムの基本構成、検討モデルの選定を行うため、典型的な配電系統に分散型
電源が導入された場合の系統影響を分析・評価する。
①
系統影響シミュレーション条件
1) シミュレーションの目的
・ 現状の電力系統で、電力系統制御システムの基本構成、検討モデルの選定を行うため、
実際の配電系統は幹線こう長や負荷構成などの形態が多種多様であるが、検討の1事例
として典型的な配電系統に分散型電源が導入された場合の系統影響を配電線容量に対す
る分散型電源の導入可能量で分析・評価する。
2) 系統影響に関する検討項目
分散型電源の導入に伴う系統影響の傾向を分析、評価するためのシミュレーションの検
57
討項目は、他のプロジェクトの検討内容を加味し、以下のとおりとした。
・
逆潮流による電圧問題(分散型電源の出力変動による系統電圧変動)
・
短絡容量の増大(回転機系の分散型電源による短絡容量の増大)
・
高調波電圧ひずみの増大(インバータ使用機器の分散型電源による高調波電圧ひず
みの増大)
3) シミュレーション条件
高圧(6kV)配電系統を対象とし、導入実態等に沿った条件を設定した。
ⅰ 対象系統
高圧(6kV)配電系統(商業地域、工業地域、住宅地域、郊外地域)
ⅱ シミュレーション時の負荷の状態
主に重負荷、軽負荷注 1
(注1) 逆潮流による電圧変動のシミュレーションでは、重負荷、軽負荷のほか中間負
荷でのシミュレーションも実施
ⅲ 負荷の分布
系統に均等分布
ⅳ 分散型電源の種類
同期発電機(自家発、廃棄物発電を想定)、インバータ型電源(家庭用太陽光発電を想
定)注 2
(注2) 対象系統の各地域(商業地域、工業地域、住宅地域、郊外地域)に導入した分
散型電源の種類は表 2.3.2 に示すとおり
ⅴ 分散型電源の分布:系統に均等分布、系統末端集中
表 2.3.2
など
対象系統の各地域に導入した分散型電源の種類
地
域
分散型電源
同期発電機
(自家発、廃棄物発電)
インバータ型電源
(家庭用太陽光発電)
商業地域
工業地域
住宅地域
郊外地域
○
○
○
○
―
―
○
○
4) シミュレーションモデル
〇
現在公開されているものや他の調査で活用されているモデルを適用した。
ⅰ
配電系統モデル
・ 電協研モデル配電線(電気協同研究第 37 巻第 3 号)をベースに現状に合ったものに
修正した。図 2.3.5(a)~(d)に各地域毎の配電系統モデル図を示す。
・
今回の検討は、システムの基本構成、検討モデルの選定を行うため、分散型電源が
導入された場合の系統影響の傾向を分析・評価することが目的である。従って、柱上
変圧器以下の低圧系統を含めた詳細なシミュレーションは実施せず、高圧系統のみで
実施した。
58
ⅱ
分散型電源モデル
・ 同期発電機(自家発、廃棄物発電)、インバータ型電源(家庭用太陽光発電)の双方
とも過去に NEDO 等で実施されている調査で使用された分散型電源のモデルを適用
した。
ⅲ 負荷モデル
・
・
NEDO 等で過去に実施されている調査で使用されたものを適用した。
力率改善用進相コンデンサ等も考慮した。
変電所バンク:
20MVA
幹線こう長:2.0km
フィーダ数;6
配電線容量;4,000kVA
柱上変圧器タップ変更;なし
図 2.3.5(a) 配電系統モデル図(商業地域系統)
変電所バンク:
20MVA
フィーダ数;6
配電線容量;3,000kVA
柱上変圧器タップ変更;なし
幹線こう長:2.9km
図 2.3.5(b) 配電系統モデル図(工業地域系統)
タップ
6750/105V
タップ
6600/105V
幹線こう長:4.0km
変電所バンク:
20MVA
フィーダ数;6
柱上変圧器タップ変更点
配電線容量;3,000kVA
柱上変圧器タップ変更;あり
(最大負荷時に高圧配電線の電圧降下が 150V となる地点でタップ変更)
図 2.3.5(c) 配電系統モデル図(住宅地域系統)
59
タップ
タップ
タップ
タップ
6600/105V 6450/105V 6600/105V 6450/105V
幹線こう長:21.0km
SVR
変電所バンク:
20MVA
フィーダ数;6
配電線容量;3,000kVA
柱上変圧器タップ変更;あり (最大負荷時に高圧配電線の電圧降下が 150V、
300V、450V となる地点でタップ変更)
SVR;あり (最大負荷時に高圧配電線の電圧低下が 600V となる地点に SVR 挿
入)
図 2.3.5(d) 配電系統モデル図(郊外地域系統)
5)
導入可能量の定義
検討項目毎の分散型電源導入可能量を評価する際の判定基準を以下に示す。
ⅰ
電圧変動における分散型電源導入可能量の定義
・ 「配電線各地点の電圧最大値が低圧換算値で 107.0V 以下(もしくは電圧最小値が低
圧換算値で 101.5V 注1以上)となる分散型電源の最大導入量(kW)の配電線容量(kVA)
に対する比率(%)」とする。
(注 1)高圧配電線の電圧下限値は、柱上変圧器、低圧配電線、引き込み線におけるト
ータルの電圧降下分を考慮して、低圧換算で 101.5V とした。
ⅱ
短絡容量の増大における分散型電源導入可能量の定義
・ 「短絡地点の事故電流が 12.5kA 注2を超えない範囲での分散型電源の最大導入量 (kW)
の配電線容量(kVA)に対する比率(%)」とする。
(注 2)遮断器の遮断容量による(需要家に設置された遮断器も含む)。
ⅲ
高調波ひずみの増大における分散型電源導入可能量の定義
・ 「配電線各地点の総合電圧ひずみ率(増分値)の最大値が 2%注 3 以下となる範囲での
分散型電源の最大導入量 (kW)の配電線容量(kVA)に対する比率(%)
」とする。
(注 3)現状の配電線での総合電圧ひずみ率が約 3%であることを考慮(「高圧又は特別高
圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」では総合電圧ひずみ率 5%
以下)。
②
系統影響シミュレーション結果
1) 逆潮流による電圧変動
ⅰ
〇
シミュレーション条件
変電所バンク送出し電圧調整;重負荷時に送出し電圧を高く、軽負荷時に送出し電圧
を低く調整し、配電系統各地点の重負荷時と軽負荷時の電圧変動幅を最小とするこ
と を 目 的 と し た プ ロ グ ラ ム コ ン ト ロ ー ル 制 御 注 1 及 び LDC(Line voltage Drop
60
Compensator: 線路電圧降下補償器)制御注 2 により制御を行うこととした。
(注 1)プログラムコントロール制御(電圧指定時間スケジュールによる制御)
:時
間によって決められた目標送出し電圧を事前に設定し、各時間毎にこの送
出し電圧目標値となるように電圧を調整する方式で、現在広く採用されて
いる方式。
(注 2) LDC 制御:目標とするバンク送出し電圧を変電所バンクの通過電流に応じ
て自動的に調整する方式。
〇 配電線の負荷パターン;商業地域~郊外地域の各地域の負荷パターンは NEDO で過去
に使用した負荷パターンを適用した。各地域の負荷の状態毎の負荷パターンを図
2.3.6~図 2.3.8 に示す。
夏期の負荷曲線
1
有効電力
0.8
年間最大負荷に対する比
年間最大負荷に対する比
0.8
有効電力
0.6
0.4
無効電力
0.2
0
-0.2
冬期の負荷曲線
1
0
2
4
6
8
10
12
14 16
18
20 22
24
0.6
0.4
無効電力
0.2
0
-0.2
0
2
4
6
8
図 2.3.6(1) 商業地域の夏期負荷パターン
年間最大負荷に対する比
0.8
0.6
0.4
無効電力
0.2
0
0
2
4
6
8
10 12
夏期の負荷曲線
1
有効電力
0.8
年間最大負荷に対する比
22 24
図 2.3.6(2) 商業地域の冬期負荷パターン
中間期の負荷曲線
1
14 16
18 20
22 24
有効電力
0.6
0.4
無効電力
0.2
0
-0.2
-0.4
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
-0.4
時刻(時)
時刻 (時)
図 2.3.6(3) 商業地域の中間期負荷パターン
図 2.3.7(1) 工業地域の夏期負荷パターン
冬期の負荷曲線
1
年間最大負荷に対する比
0.8
0.6
0.4
無効電力
0.2
0
0
2
4
6
8
10 12
14 16
中間期の負荷曲線
1
有効電力
0.8
年間最大負荷に対する比
18 20
時刻(時)
時刻 (時)
-0.2
14 16
-0.4
-0.4
-0.2
10 12
18 20
22 24
-0.4
有効電力
0.6
0.4
0.2
無効電力
0
-0.2
0
2
4
6
8
10 12
14 16
18 20
22 24
-0.4
時刻(時)
時刻(時)
図 2.3.7(2) 工業地域の冬期負荷パターン
図 2.3.7(3) 工業地域の中間期負荷パターン
61
冬期の負荷曲線
年間最大負荷に対する比
年間最大負荷に対する比
夏期の負荷曲線
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
有効電力
無効電力
0
2
4
6
8
10 12 14
時刻 (時)
16
18 20
22
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
24
有効電力
無効電力
0
2
4
6
8
10 12 14
時刻(時)
16
18 20
22
24
図 2.3.8(1) 住宅地域、郊外地域の夏期
図 2.3.8(2) 住宅地域、郊外地域の冬期
負荷パターン
負荷パターン
中間期の負荷曲線
年間最大負荷に対する比
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
有効電力
無効電力
0
2
4
6
8
10 12 14
時刻(時)
16
18 20
22
24
図 2.3.8(3) 住宅地域、郊外地域の中間期
負荷パターン
〇
分散型電源の出力パターン
a.低圧連系:インバータ型電源(太陽光発電システム)
・
太陽光発電システムの出力は夏期、冬期、中間期それぞれ図 2.3.9 のデータを
用いて日射強度に比例するものとする。なお、主として各時間の最大出力が問題
となるため、雲による出力変動及び設置箇所の違いによる出力のばらつきは考慮
しないこととする。
1
0.6
0.4
0.2
0
日射量比(太陽光発電出力比)
日射量比(太陽光発電出力比)
0.8
日射量比(太陽光発電最大出力比)
日射量比(太陽光発電最大出力比)
日射量比(太陽光発電最大出力比)
日射量比(太陽光発電出力比)
1
1
0.8
0.6
0.4
0.2
4
8
12
16
20
24
時刻(時)
夏期
図 2.3.9
0.6
0.4
0.2
0
0
0
0.8
0
4
8
12
16
20
24
0
4
8
12
時刻(時)
時刻(時)
冬期
中間期
各期の太陽光発電出力パターン
62
16
20
24
b.高圧連系:同期発電機(自家発、廃棄物発電)
・ 自家発、廃棄物発電は、出力調整が可能であり、一定ベース運転(24 時間定格
出力運転)と、深夜などの軽負荷時に停止させる軽負荷時停止運転の 2 種を設定
する。
ⅱ
シミュレーション結果
a.住宅地域
・ 電圧変動特性は、季節や導入形態により大きく異なるが、図 2.3.11 に示すとおり
力率値を低下させるに従い、電圧変動(上昇値)は小さくなり、導入可能量は増大
する。
・ 導入可能量としては、負荷の少ない中間期が最も小さく、力率調整しない場合は、
導入可能量は数%となる。
・ 太陽光発電の場合、均等導入で全体一律調整の場合ではプログラムコントロール
制御で力率 85%まで低下させると配電線容量相当の導入が可能となるが、それ以外
のケースは、
85%まで低下させても配電線容量の 10%程度で制限がかかる場合がある。
LDC 制御では、分散型電源の出力により変電所バンクの通過電流が少なくなり、送
出し電圧が調整されることからプログラムコントロール制御より導入量が拡大す
る傾向にある。
・ 同期発電機の場合、力率を 100%一定にし力率調整を行わなければ、導入可能量は
非常に小さなものとなる。力率調整する場合は、分散型電源を均等に導入したケー
スでは力率を一律に 85%まで低下させると配電線容量相当の導入が可能となる。ま
た、分散型電源を末端に集中導入したケースでも力率を一律 80%まで低下させると
配電線容量相当の導入が可能となる。
住宅電源全中間電圧高-分散電源0%
柱上変圧器タップ変更点
適正電圧上限
配電線電圧(低圧換算)(V
(
107.5
107
106.5
106
105.5
105
104.5
104
0
1
(変電所)
2
3
変電所からの距離
4
(系統末端)
変電所からの距離(km)
図 2.3.10 配電線の電圧プロファイル(その 1)
(住宅地域、分散型電源導入無しのケース)
63
5
住宅電源全中間電圧高-分散電源20%
柱上変圧器タップ変更点
配電線電圧(低圧換算)(V)
適正電圧上限
108
107.5
107
106.5
106
105.5
105
104.5
104
力率100%
力率95%
力率90%
力率85%
0
1
(変電所)
2
3
変電所からの距離
変電所からの距離(km)
4
5
(系統末端)
図 2.3.11 配電線の電圧プロファイル(その 2)
(住宅地域、分散型電源均等導入(導入量;20%)、系統全体の
分散型電源の力率を一律に調整したケース)
b.商業地域
・
住宅地域と同様に、電圧変動特性は、季節や導入形態により大きく異なる。
・
同期発電機を一定ベース運転にした場合、分散型電源均等導入時においては力率
を 85%程度まで、また条件的に厳しい分散型電源末端集中導入時では、力率を 80%ま
で低下させることにより、それぞれ配電線容量相当の導入が可能となる。
・
同期発電機を軽負荷時に停止させるケースでは、同じ力率条件下で更に導入可能
量が増加し、分散型電源末端集中導入時においても、力率を 85%程度とすることに
より、配電線容量相当の導入が可能となる。
c.工業地域
・ 住宅地域と同様に、電圧変動特性は、季節や導入形態により大きく異なる。また、
最大電圧の上昇、ならびに導入可能量の傾向については概ね商業地域と同様となっ
た。
・
同期発電機を一定ベース運転させたケースでは、分散型電源均等導入時において
は力率を 85%程度まで低下させること、また条件的に厳しい分散型電源末端集中導
入時では、力率 80%まで低下させることにより、それぞれ配電線容量相当の導入が
可能となる。
・
同期発電機を軽負荷時に停止させるケースでは、同じ力率条件下では更に導入可
能量が増加し、分散型電源末端集中導入時においても、力率を 85%程度とすること
により、配電線容量相当の導入が可能となる。
d.郊外地域
・
導入量と最大電圧の関係は、SVR のタップ動作の影響により、住宅地域のバンク
LDC 制御のケースと同様に必ずしも比例関係とはならず、導入量が大きくても最大
電圧が逆に低下するケースがあるなど複雑なものとなる。
64
・
郊外地域は配電線こう長が長いことから、分散型電源末端導入の場合でも配電線
電圧最大値は上限の 107V に近い値にあり、比較的小さな導入率で電圧上限を逸脱す
る傾向となる。分散型電源の力率制御を行わなければ、導入可能量は非常に僅かな
ものとなる。力率制御を行う場合では、季節により傾向が異なるものとなるが、系
統全体の分散型電源を一律に 85%まで低下させると、配電線容量比 10%程度までの導
入が可能となる。
ⅲ
まとめ
・
現状の電圧調整方式を用いた今回のシミュレーションでは、配電線こう長が比較的
長く線路途中から柱上変圧器タップ変更を行っている住宅地域、ならびに線路途中に
SVR を設置して電圧調整する郊外地域において、低圧連系の太陽光発電の導入可能量
が比較的少量に限定される場合があることが確認された。
・
住宅地域においてバンク LDC 制御を行うと、分散型電源の導入による配電線電圧の
上昇は抑制される傾向となるが、分散型電源が導入されていない配電線が存在すると、
逆に最小電圧の面で制約が生じる可能性のあることを確認した。
2)
短絡容量の増大
短絡容量増大面からの分散型電源の導入可能量を算定した。
ⅰ 同期発電機導入時
・
短絡事故時の同期発電機からの発生電流は、短絡地点や連系位置により異なるものと
なり、定格電流の 2 倍~6 倍となる。
・
事故電流値は変電所に近い始端事故の場合が最も大きく、事故回線の電流及び短絡地
点電流は、分散型電源の導入があると他回線からの回りこみも含めて 10kA 以上に達する。
また、これらの値は導入量にほぼ比例して比較的顕著に増加する。重負荷時と軽負荷時
を比較すると重負荷時の方が事故時の電流は大きくなるが、相対的にその差は僅かであ
る。
・
始端事故時における短絡地点電流の特性は、地域によらず概ね同様の傾向となり、工
業地域、住宅地域では導入量が 40%程度、商業地域では導入量が 60%程度、また郊外地域
では導入量が 50%程度で導入限界に達する可能性がある。
ⅱ インバータ型電源導入時
・
同期発電機導入時で問題となる始端事故においても、短絡地点電流、事故回線電流と
もに導入量の増大に伴う変化は殆どなく、短絡容量増大面での影響は無いものといえる。
3)
高調波電圧ひずみの増大
現状の配電系統をベースに、高調波電圧ひずみの目標値に対する導入可能量を分析した。
・
導入可能量の増加とともに電圧ひずみ率(最大値)はほぼ比例して増大する。また、バ
ンク変圧器のインピーダンスの影響により、導入される回線数の増加に比例して電圧ひず
み率は増大する。
・
最も条件の厳しくなる 6 フィーダに分散型電源が均等に導入された最小負荷時のケース
に着目すると、導入可能量は、1種類のインバータのみ導入されるケースではおよそ 25%
~35%、また、多種類のインバータが混在したケースでは 40%程度となった。混在したケー
スで導入可能量が増加する理由は、高調波電流の一部がベクトル的に打ち消し合い、絶対
65
値が減少することによる。
・
電圧ひずみ率は負荷量に大きく左右され、導入可能量を同じとした場合、最大負荷時で
は最小負荷時より 30%~40%程度低下する。
4)
系統影響シミュレーション結果のまとめ
系統影響シミュレーション結果より、住宅地域系統ならびに郊外地域系統での電圧変動問
題が分散型電源の導入可能量を支配する要因となることが明らかとなった。
ⅰ) 逆潮流による電圧変動問題
・
住宅地域系統ならびに郊外地域系統で問題が大きく、分散型電源の導入可能量を支配
する要因となる。
ⅱ) 短絡容量の増大
・
工業地域系統で問題が大きいが、住宅地域系統、郊外地域系統での逆潮流による電圧
変動の制約より導入可能量は多い。
ⅲ) 高調波電圧ひずみの増大
・
インバータ機器である太陽光発電の導入が進む住宅地域系統で問題が大きいが、住宅
地域系統、郊外地域系統での逆潮流による電圧変動の制約より導入可能量は多い。
(5) システムの技術要件
(3)、(4)の結果を踏まえ、電力系統制御システムとして考えられる対策システムを中心に検討
した。
①
検討モデルにおける対策方式
1) 基本的な考え方
〇
系統モデルとしては、系統影響シミュレーション結果等より、電圧変動の問題で大き
な影響が予想され、太陽光発電を主体とする分散型電源の導入が予想される住宅地域系
統とした。
〇
検討モデル毎に複数の対策機器が考えられ、また、その組合せも考えられるなど、検
討ケースが多数となることから、現状の技術開発動向、制御方法・手法実現の容易さ等
を勘案し、検討ケースの絞り込みを行なった。
2) 検討モデル
〇
検討モデルは、以下の項目により分類した。
ⅰ
系統の構成
a 樹枝状系統:現状の配電線の系統
b ループ系統:2 つの樹枝状系統の接続によるループ系統
ⅱ
系統構成機器の制御方式
a 遠隔制御を実施しない制御
b 遠隔制御を実施する制御
ⅲ
対象となる系統構成機器
a 現状の配電系統で用いられている系統構成機器(従来型[改良型含])
・
新制御 SVR、SC・SR(自動制御)
66
b 現状の配電系統では用いられていない新たな系統構成機器(新規型)
・
ⅳ
SVC、ループ連系装置(高速遮断器、ループコントローラ)
検討モデル
・
ⅰ~ⅲの項目により分類された検討モデルの概要を表 2.3.3 に示す。
表 2.3.3 電力系統制御システムの検討モデル
検討
系統の構成
モデル
1
①樹枝状系統
2
3
②ループ系統
4
5
6
7
②
系統構成機器の制御方式
ⅰ遠隔制御を実施しない制御
ⅱ遠隔制御を実施する制御
ⅰ遠隔制御を実施しない制御
ⅱ遠隔制御を実施する制御
対象となる
系統構成機器
a 新規型
a 従来型(改良型含)
b 新規型
a 従来型(改良型含)
b 新規型
a 従来型(改良型含)
b 新規型
配電線ループ運用における課題の検討
1) 配電線ループ運用の課題
・
配電線のループ運用について、実際に配電系統へ適用する場合の運用面、事故時の保
護、ループ開閉器の開発など様々な課題について表 2.3.4 に整理した。
表 2.3.4
項
配電線ループ運用の課題について
目
短絡電流の増大
事故時の信頼度
内
容
・ 既存配電機器(直列機器、機材)の耐短絡能力のチェックが必要で
ある。
・ 配電線上での事故波及範囲の拡大の可能性がある。
・ バンク間での配電線送出し電圧値が異なることから潮流分布が変化
し、配電線過負荷の発生等が懸念されるためバンク間での電圧調整
の協調をとる必要性が予想される。
運用面
・ SVR 通過潮流が逆方向となることや、両電源となることなどから、SVR
機能の大幅な見直しが必要である。
・ 容量が異なる配電系統をループ化した場合など、ループ横流による
配電線過負荷の発生が懸念される。
・ ループ点、ループ形態の決定、ループ運転開始の判定が課題である。
ループ運用時の保
護
ループ運用実施に
必要な機器の開発
・ OCR 感度低下、DGR 感度低下が懸念される。
・ 高低圧混触事故時の低圧電位上昇の顕在化が懸念される。
・ 高速遮断器、ループコントローラなど高性能ループ開閉器の開発が
必要である。
・ 事故点の判定及び伝送の高信頼度化と高速化が必要である。
2) 配電線ループ運用検討
〇
配電線ループ運用時の諸課題について、住宅地域のモデル系統の幹線末端をループ化
67
した場合を対象に、実際の保護装置の整定値を加味し、短絡事故の保護,系統構成機器・
需要家機器の耐短絡性能,ループ開閉器の開閉能力等について検討を行った結果,今回検
討した住宅地域のモデル系統では表 2.3.4 に示す各種課題に対して技術的に対処できる
可能性があることがわかった。
(6) システムの系統への導入効果シミュレーション
(5)で整理した各検討ケースについて、系統への導入効果をシミュレーション解析により検討し
た。
①
導入効果シミュレーション条件
1) 導入効果シミュレーションにおける検討モデルの考え方
・
「(4)分散型電源の導入に伴う系統影響シミュレーション」を実施した系統モデルを
ベースに検討を実施した。
2) 対策ケース
・
表 2.3.3 の電力系統制御システムの検討モデルを基に具体的な対策機器毎に対策ケー
スを検討した。検討結果を表 2.3.5 に示す。また代表的な対策ケースのシステム構成概
念図を図 2.3.12、図 2.3.13 に示す。
表 2.3.5
1
2
① 樹枝 状 ⅰ遠隔制御なし
系統
( 現 状 の 配 ⅱ遠隔制御あり
電 線 の 系
統)
3
4
② ルー プ ⅰ遠隔制御なし
系統
(樹枝状系
統のループ
5
化による系
統)
6
ⅱ遠隔制御あり
7
対策ケース
検討モデル
導入効果シミュレーション対策ケース
1-1
1-2
2-1
2-2
3-1
3-2
3-3
3-4
4-1
4-2
4-3
5-1
5-2
6-1
6-2
7-1
7-2
a従来型(改造型含)
現状の配電系統で用いら
れている系統構成機器
新制御
SVR
SC・SR
(自動制
御)
対策機器
b新規型
現状の配電系統では用いられていない
新たな系統構成機器
SVC
ループ連系装置
高速
ループ
遮断器
コントローラ
● (1 箇所設置)
● (2 箇所設置)
●
●
●
●
● (1 箇所設置)
● (2 箇所設置)
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
注)●:適用する対策機器
68
●
●
●
●
●
●
●
配電線(3000kVA)
Q
変電所
Q
SVC
G
G
SVC
図 2.3.12 ケース 1-1 のシステム構成概念図
(樹枝状系統に SVC を系統末端及び柱上 Tr タップ変
更点などに設置、SVC は遠隔制御を行わないケース)
タップ変更点と末端の電圧を加味しループコントローラを制御
センサ
(V)
制御センター
配電線 1(3,000kVA)
G
センサ
(V)
変電所
G
(注)中間同士を連系す
る場合もある。
配電線 2(3,000kVA)
ループコントローラ
配電線の末
端同士をルー
プコントローラで
連系
図 2.3.13 ケース 6-1 のシステム構成概念図
(ループ系統の連系箇所にループコントローラを設置し、制
御センターよりループコントローラを遠隔制御するケース)
3) 解析系統、データ等
・ 「(4)分散型電源導入に伴う系統影響シミュレーション」で採用した住宅地域系統とす
る。
・
負荷条件、分散型電源条件、変電所送出し電圧管理方法等についても系統影響シミュ
レーションに準ずる。
4) ループ系統形態;
・
住宅系統における隣接する 2 フィーダ(同一変電所バンク)を考え、各線路末端を高
速遮断器、ループコントローラを介して接続する。(図 2.3.14 参照)
・
ループ点における連系線路のインピーダンスは、至近端接続(X=0.0001Ω)と 1km 相当
(0.05487+j0.09389Ω)の 2 ケースを設定する。
69
・高速遮断器又は
ループコント
ローラを回線
の末端に接続
配電線 1(3,000kVA)
変電所
バンク
(20MVA)
配電線 2(3,000kVA)
図 2.3.14 設定したループ系統の構成概略図
②
導入効果シミュレーションの検討内容
1) 導入可能量に関する検討
・
対策機器の設置位置については、配電線末端もしくは柱上変圧器タップ変更点直前の
位置を基本とし、対策機器によっては分散設置を検討する。
・
今回のシミュレーションでは、対策ケース毎に比較・検討を実施するため、分散型電源
の導入可能量を 30%、50%に固定した場合の対策機器の容量を求めるものとしている
ため、機器の容量に制約は設けないものとする。
2) 配電線損失に関する検討
・
各ケースにおける 1 日あたりの線路損失(1 フィーダ分)を算定・比較した。
・
1 フィーダあたりの 1 日(=24 時間)の線路損失電力量を算定。SVC、ループコント
ローラ等の対策機器自体の電力損失量は考慮しない。
・
分散型電源の導入量は配電線容量の 0%から電圧変動面での導入限界値まで 10%刻みで
変化させた。
③
導入効果シミュレーション結果
1) 導入可能量のシミュレーション結果
○
樹枝状系統、遠隔制御なしの場合
・
ケース 1-1(SVC をタップ変更点又は末端に 1 箇所設置したケース)の場合
PV(PhotoVoltaic power generation equipment、太陽光発電装置)均等導入時は
SVC をタップ変更点に導入、PV 末端導入時は SVC を末端に導入すると効果が得られ、
PV 末端導入時の方が PV 均等導入時より対策機器の必要台数は多くなる。
・
ケース 1-2(SVC をタップ変更点と末端に 2 箇所設置したケース)の場合
2 箇所のうち 1 箇所の SVC が全く動作しないケースがある。また、系統末端に 1 箇
所設置するケースと比較して 2 箇所設置するケースは、合計必要台数が多くなる傾向
にある。従って、2 箇所設置の必要性はあまり大きくはないものと考えられる。
70
住 宅 - 電 源適正電圧上限
P V 均 等 - S V C タ ッ フ ゚点 (1 0柱上変圧器タップ変更点
6 .5 V )- p f1 0 0 - V 最 大 - 中 間 期
配電線電圧(低圧換算)(V)
1 0 7 .5
107
1 0 6 .5
106
導 入 量 0%
導 入 量 10%
導 入 量 20%
導 入 量 40%
導 入 量 60%
導 入 量 80%
導 入 量 100%
1 0 5 .5
105
1 0 4 .5
104
1 0 3 .5
0
(変電所)
1
2
3
変 電 所 か ら の 距 離 (k m )
4
(系統末端)
5
図 2.3.15 配電線の電圧プロファイル(ケース 1-1)
- PV;均等導入、SVC;タップ変更点設置、季節;中間期
- パラメータ;PV 導入率
住 宅 - 電 源 P V 均 等 - S V C 末 端 ( 1 0 6 .5 V ) - p f 1 0 0 - V 最 大 - 中 間 期
柱上変圧器タップ変更点
適正電圧上限
108
導
導
導
導
導
導
導
配電線電圧(低圧換算)(V)
1 0 7 .5
107
1 0 6 .5
106
入
入
入
入
入
入
入
量
量
量
量
量
量
量
0%
10%
20%
40%
60%
80%
100%
1 0 5 .5
105
1 0 4 .5
104
0
(変電所)
1
2
3
変 電 所 か ら の 距 離 (k m )
4
5
(系統末端)
図 2.3.16 配電線の電圧プロファイル(ケース 1-1)
- PV;均等導入、SVC;末端設置、季節;中間期
- パラメータ;PV 導入率
○
樹枝状系統、遠隔制御ありの場合
・ ケース 2-1(新制御 SVR を線路の中間に設置したケース)の場合
導入量の増加に従い、逆潮流の影響によって SVR のタップ変更が行われ、2 次電圧
(線路末端側)は低下する。これにより、SVR1 台で導入量 30%、50%いずれも達成可
能となる。
・ ケース 3-1(SVC をタップ変更点又は末端に 1 箇所設置したケース)の場合
ケース 1-1(SVC をタップ変更点又は末端に 1 箇所設置し、遠隔制御しないケース)
の場合と比較して、分散型電源の分布(PV 均等導入、PV 末端導入)に因らずいずれの
ケースも導入可能量は 100%に達した。特に PV 均等導入時において、SVC の設置場所
の制約に対する柔軟性が高まる。
71
・ ケース 3-2(SVC をタップ変更点と末端に 2 箇所設置したケース)の場合
ケース 1-2(SVC をタップ変更点と末端に 2 箇所設置し、遠隔制御しないケース)
の結果と比較して必要台数は合計で 1 台程度削減でき、有効な方式であることがわか
る。
・ ケース 3-3(SVC を末端に設置し、新制御 SVR を線路の中間に設置したケース)の場合
ケース 2-1(新制御 SVR を線路中間に設置したケース)と比較して、均等導入、末
端導入ともに、導入可能量は増大し、100%まで導入可能となった。
〇
ループ系統、遠隔制御なしの場合
・ ケース 4-1(高速遮断器を用いループ系統とし、ループ点における電圧、潮流制御を
行わないケース)の場合
対策なしの場合に比べて導入可能量は 1.5 倍~2 倍程度増加するが導入可能量とし
ては、大きな増加には至っていない。例えば中間期の結果で放射状系統と比較した場
合、導入可能量は、均等導入で 2%から 3%、末端導入で 1%から 3%の増加にとどまる。
・ ケース 4-2(ループコントローラを用いループ系統とし、ループ点において電圧、潮
流制御を行うケース)の場合
ループコントローラが自端電圧情報による制御であること、及び末端設置であるこ
とにより、タップ変更点の電圧が最大となる傾向にある PV 均等導入では、導入率 20%
程度を越えると限界となるが、PV 末端導入時では配電線容量に対し 100%までの導入
が可能となる。
PV 末端導入時でケース 1-1(SVC をタップ変更点又は末端に 1 箇所設置し、遠隔制
御しないケース)と比較すると、同じ導入率に対応する容量は、ループコントローラ
の方が SVC に比べ 10%~15%程度低くなる場合があった。
・ ケース 4-2-2(ループコントローラを用いループ系統とし、ループ点において電圧、
潮流制御を行うケース(PV がループ系統の 2 フィーダに導入された時))
ループコントローラが 1 台で両フィーダの電圧を独立に制御できる特徴をもつた
め、両フィーダとも PV が導入されている場合を想定し、ケース 4-2 をベースに、両
フィーダともに PV が導入(=末端導入)されているケースを設定・解析した。両フィー
ダの設定は表 2.3.6 のとおり。
表 2.3.6 2 フィーダともに PV が導入されている場合の各フィーダの PV 導入量設定内容
フィーダ 1 の
PV 導入量%
フィーダ 2 の
PV 導入量%
導入量平均%
30%-①
30%-②
50%-①
50%-②
50%-③
40
50
60
70
80
20
10
40
30
20
30
30
50
50
50
ループコントローラはケース 1-1(SVC をタップ変更点又は末端に 1 箇所設置し、
遠隔制御しない樹枝状系統のケース)と比較して、平均導入量 30%でループコントロ
ーラの容量が 30%~35%、
また平均導入量 50%でループコントローラの容量が 30%~40%
72
それぞれ低減される結果となった。
導入限界値は、PV 末端導入の場合は、基本的にケース 1-1 の SVC を末端に 1 箇所
設置したケースと同じとなり、100%までの導入に対応可能となる。両フィーダとも
PV100%導入時では、ループコントローラの必要容量はケース1の SVC 必要容量の半分
となる。
・ ケース 5-1(SVC をタップ変更点又は末端に設置し、高速遮断器を用いループ系統と
したケース)の場合
導入可能量、及び各導入量に対応するための SVC 必要容量は、いずれもケース 1-1
(SVC をタップ変更点又は末端に 1 箇所設置し、
遠隔制御しない樹枝状系統のケース)
と同様の傾向となり、単純ループ では SVC 設置のメリットは得られない。
・ ケース 5-2(SVC をタップ変更点に設置し、ループコントローラを用いループ系統と
したケース)の場合
ループコントローラと SVC の併用により、ケース 4-2(SVC を用いずループコント
ローラのみを使用したケース)と比較して、PV 均等導入時における導入可能量(上
限)は 20%から 55%に増大する。
PV 導入量 30%、50%に必要となるループコントローラの容量は、ケース 4-2(SVC を
用いずループコントローラのみを使用したケース)と比較して、PV 末端導入時で 15%
~20%程度削減される結果となった。
〇
ループ系統、遠隔制御ありの場合
・ ケース 6-1(ループコントローラを用いループ系統としたケース)の場合
PV 均等導入、末端導入ともに 100%までの導入が可能となった。
ケース 3-1(樹枝状系統に SVC を 1 箇所設置し遠隔制御したケース)との効果を比
較すると、同じ導入量に対応するための必要容量は、ケース 6-1 のループコントロー
ラの必要容量の方がケース 3-1 の SVC の必要容量より概略 15%~20%程度小さくなっ
た。
・ ケース 6-1-2(ループコントローラを用いループ系統としたケース(PV がループ系統
の 2 フィーダに導入された時))の場合
ケース 4-2-2(遠隔制御しないケース)と同様に両フィーダとも PV が導入されて
いる場合を想定し、ケース 6-1(PV がループ系統の 1 フィーダに導入されたケース)
をベースに設定・解析した。両フィーダの設定は、表 2.3.6 と同じ。
ケース 3-1(樹枝状系統に SVC を 1 箇所設置し、遠隔制御したケース)と比較して、
平均導入量が 30%でループコントローラの必要容量が 40%~50%(台数で 2~3 台程度)
、
また PV 平均導入量が 50%でループコントローラの必要容量が 35%~50%(台数で 2~3
台程度)それぞれ低減される結果となった。
導入限界値は、基本的にケース 3-1 と同じとなり、100%までの導入に対応可能とな
る。両フィーダともに 100%導入時では、ループコントローラの必要容量はケース 3-1
の SVC 必要容量の半分となる。
・ ケース 7-1(SVC をタップ変更点又は末端に設置し、高速遮断器を用いループ系統と
したケース)の場合
73
PV を末端導入し SVC をタップ変更点に設置した場合を除き、100%まで可能となる。
しかしながら、PV 導入率 30%、50%それぞれに対応するための SVC の必要容量、なら
びに必要台数は、ケース 3-1(樹枝状系統に SVC を 1 箇所設置し、遠隔制御したケー
ス)と比較して、大きくなる傾向となり、ループ系統のメリットは得られない。
・ ケース 7-2(SVC をタップ変更点に設置し、ループコントローラを用いループ系統と
したケース)の場合
PV 導入可能量は、ケース 6-1(ループコントローラのみを用いたケース)と同じく
100%まで対応できる。
ループコントローラの必要容量は、同じくケース 6-1 と比較して、特に PV 均等導
入時では削減された。
○
まとめ
・
分散型電源の導入量が増大するに従って、対策機器の容量が増加することから設備
費も増加する傾向にある。
・
分散型電源が均等分布の場合には対策機器はタップ変更点に設置した方が効果が大
きいなど、分散型電源の導入箇所と対策機器の設置位置とは密接な関係がある。
・
遠隔制御ありの場合の方が、遠隔制御なしの場合よりも効果が期待できる。
・ ループ系統で遠隔制御を実施しない場合、配電線容量の 30%の分散型電源が導入で
きないなど、高速遮断器を用い系統をループにするだけでは効果は期待できない。
・
ループ系統で分散型電源が 2 フィーダに導入された場合、2 フィーダ間に設置する
ループコントローラの必要容量が低減された。
2) 配電線損失のシミュレーション結果
・
各ケース(ケース 1-1~ケース 7-2)の配電線損失をシミュレーションした結果、SVR のみ
を設置したケース(ケース 2-1)が最も有利となる。但し、PV 均等導入の場合は、導入量 30%程
度までは、いずれも損失量は 200kWh/日以下(SVC は最適箇所に設置した場合)となり、PV 導
入なしのケース(=164kWh/日)をベースに考えると、損失面で著しく不利となる方式はない。
・ PV 末端導入の場合は、導入量 30%程度においては SVC、SVR 設置ケースで損失量が均等
導入時より 1.5 倍前後増加する一方、ループコントローラ設置ケースでは 1.2 倍以下に
留まり、増加率は小さい。特に導入量が 30%以上となると SVC 設置ケースでの損失量が
比較的顕著に増加し、他の方式と比較して不利となってくる。但し、この場合でもルー
プ系統にすると損失量はやや緩和される。PV 末端導入時におけるループコントローラ設
置ケースの損失量は、SVC 設置ケースと比較して小さく、導入量 50%以上での損失量は
SVC 設置ケースの約半分程度(SVR 設置ケースと同程度)となりメリットが生じてくる。
(7) 電力系統制御システムの評価
(6)のシミュレーション結果及び制御性、運用性等の面から、システムの評価を行なった。
①
対策ケースの評価項目
1) 系統に対しての効果
・
分散型電源の導入可能量で評価した。
74
2) 設備費
分散型電源の導入量 30*%、50*%及び限界導入量(100%上限)での対策機器容量を
・
算出した。
*:住宅地域系統モデルの配電線容量(3,000kVA)に対する分散型電源の導入割合
・
制御通信装置等も含め、システムの導入設備費を概算した。
3) 制御性
・
対策実施による電圧変動の仕上がり状況を評価した。
4) 運用性
・
系統構成変更、配電系統側の状況変化に対する運用性を評価した。
・
分散型電源の導入量変化等に対する運用性を評価した。
5) 信頼性
・
機器の開発状況等を考慮し、動作の確実性等ハード面の機器単独での信頼性を評価し
た。
・
複数の対策機器の適用及びその協調制御など、制御の容易さ、確実性等の面から、制
御方法、手法について評価した。
6) システムの拡張性
・ 分散型電源の導入量増大時など部分的にシステムを拡張する場合の拡張性を評価した。
7) 技術的側面等から見た機器の実現性
・
現在及び至近年の技術開発レベルを考慮し、対策機器の製作可能性を評価した。
8) 設置場所、スペース等実系統への設置性
・
対策機器の寸法、重量等を考慮し、実配電線に設置する場合を想定し評価した。
9) 配電線の電力損失
・
配電線での電力損失を算出し評価した。
10) 高調波電圧ひずみの増大
・
SVC などのインバータ機器が系統に導入された場合の高調波電圧ひずみの増大を
評価した。
11) 短絡容量の増大
・
②
配電線ループ運用時の短絡容量増大を評価した。
評価結果
1) 系統に対しての効果、設備費
・
システムの系統に対しての効果として分散型電源の導入量(30%、50%)毎に設備費
を概算した。代表的なケースの設備費を図 2.3.17、2.3.18 に示す。
ⅰ
分散型電源が均等分布の場合
・ 導入量 30%では、SVR を適用したケース 2-1 を除くと樹枝状系統で遠隔制御を実施し
ないケース 1-1(SVC を 1 箇所設置するケース)とループ系統で遠隔制御を実施するケ
ース 6-1-2(ループコントローラでループ系統にするケース(2 フィーダ導入時))が
最も設備費が少ない。次いで樹枝状系統で遠隔制御を実施するケース 3-1(SVC を 1 箇
所設置するケース)が設備費が少ないという結果が得られた。
75
・ 導入量 50%では、SVR を適用したケース 2-1 を除くとループ系統で遠隔制御を実施
しないケース 5-2(ループコントローラと SVC を併用したケース)が最も良く、次い
でループ系統で遠隔制御を実施するケース 6-1-2(ループコントローラでループ系統
にするケース(2 フィーダ導入時))が設備費が少ない。但し、ケース 5-2 の導入限界
量は 55%である。
・
SVR を適用したケース 2-1 は設備費的には非常に有効であるが、動作時にステップ
状の電圧変動を伴うことを考慮する必要がある。
・
なお、ループ系統で遠隔制御を実施しないケース 4-1(高速遮断器でループ系統に
するケース)
、ケース 4-2(ループコントローラでループ系統にするケース)では、分
散型電源を 30%導入することはできなかった。従って、単純にループ化するだけでは
導入量の増加は期待できない。
ⅱ
分散型電源が末端集中分布の場合
・
分散型電源が配電線の末端へ集中分布すると、配電線全体の無効電力のバランスが
悪くなることから、対策機器の必要容量が増加し設備費は全体的に高くなる傾向にあ
る。
・
今回検討したループ系統のループ点は配電線の末端であることから、ループコント
ローラの設置位置と分散型電源の分布とが一致する。これにより、ループコントロー
ラを適用するケースが、均等分布の場合と比較して、樹枝状系統より良い結果となり、
特にケース 4-2(ループコントローラでループ系統にするケース)と、6-1-2(ループコ
ントローラでループ系統にし、遠隔制御するケース)は、その傾向が顕著であった。
導入量 30%時の
設備費
80
導入量 50%時の
設備費
60
4-1,4-2:
導入量 30
%、50%時
導入不可
40
導入限界
※ LPC: ル ー プ
コントローラ
20
,
゚
フ
ー
ル
C
V
S
(
遠隔)
,
゚
フ
ー
ル
C
P
L
2
1
6
遠隔)
,
゚
フ
ー
ル
C
P
L
1
6
゚
フ
ー
ル
C
V
S
76
C
P
L
2
7
(
)
遠隔)
(
)
1
4
゚
フ
ー
ル
)
(
C
V
S
1
3
R
V
S
1
2
C
V
S
1
1
)
ケース
図 2.3.17 代表的なケースの設備費(均等分布)
+
(
+
(
高速遮(
樹枝、遠隔
(樹枝)
(樹枝)
゚
フ
ー
ル
C
P
L
2
4
0
C
P
L
2
5
設備費(百万円)・導入限界(%)
100
設備費(百万円)・導入限界(%)
100
4-1:
導入量
30%、50%
時
導入
不可
80
60
導入量 30%時の
設備費
導入量 50%時の
設備費
導入限界
40
20
0
C
P
L
2
7
,
゚
フ
ー
ル
C
V
S
遠隔)
遠隔)
(
,
゚
フ
ー
ル
C
P
L
2
1
6
(
,
゚
フ
ー
ル
C
P
L
1
6
C
P
L
2
5
゚
フ
ー
ル
C
V
S
)
遠隔)
(
゚
フ
ー
ル
C
P
L
2
4
1
4
゚
フ
ー
ル
)
)
+
(
+
(
高速遮(
(
C
V
S
1
3
樹枝、遠隔
R
V
S
1
2
(樹枝)
C
V
S
1
1
(樹枝)
ケース
)
図 2.3.18 代表的なケースの設備費(末端集中)
2) 制御性
・
SVC やループコントローラなどのインバータ機器を適用した高速で連続的な制御が可
能なケースにおいて、電圧制御の仕上がり状況が良い。
・ 上記制御を実施する際に分散型電源の導入量毎の所要無効電力を図 2.3.19 に示す。図
2.3.19 より、分散型電源導入量 10%時 350kvar、30%時 600kvar、50%時 800kvar、100%
時 1400kvar の無効電力が必要となり、その傾きは約 12kvar/%(所要無効電力÷分散型
電源の導入量)である。
・
太陽光発電は、日射の急変や保護装置の誤動作による一斉脱落などにより出力が急変す
る可能性がある。仮に、導入量(出力)が配電線容量に対し 30%、50%急変した場合、
早急に必要な無効電力はそれぞれ 360kvar、600kvar となり、SVR 等のステップ状で切替
時間に遅れがある制御機器での対応は非常に困難となると考えられる。
77
所要無効電力(
r
a
v
k
)
図 2.3.19 分散型電源導入量に対する所要無効電力(ケース 1-1
SVC を適用)
- PV;均等導入、SVC;タップ変更点設置、季節;中間期
3) 運用性、信頼性、システムの拡張性等
・
系統構成の変更などに対する運用性、システムの拡張性、協調制御の容易さなどにつ
いては、通信システムを活用して遠隔制御を実施するモデルが良い結果が得られる可能
性はあるが、複数の機器を最適に運用できる制御ロジックの構築が課題である。
4) 設置スペース等
・
設置スペース等実系統への設置性については、SVR、SC・SR 遠隔制御の場合が最も問
題は小さい。SVC 等は容量次第では問題となる可能性がある。
5) 配電線の電力損失
・
分散型電源(太陽光発電)均等導入の場合は、分散型電源導入量 30%程度までは、い
ずれも幹線こう長が約 4km のモデル配電線で損失量は 200kWh/日以下となり、分散型電
源導入なしのケース(=164kWh/日)をベースに考えると、損失面で著しく不利となる方
式はない。
6) 高調波電圧ひずみの増大
・
SVC やループコントローラなどのインバータ機器を適用する場合、高調波電圧ひずみ
の増大についても考慮が必要である。特に、SVC についてはサイリスタを利用してリア
クトル電流を制御する場合など注意を要する。
③
まとめ
1)
分散型電源導入量と設備費の関係
・ SVC、ループコントローラなどインバータ機器を適用したケースでは設備費は多くなる
傾向にある。一方、SVR、SC・SR など従来機器を適用したケースでは設備費は少なくな
る傾向にある。
・
分散型電源の導入量が増大するに従って、対策機器の容量が増加することから設備費
も増加する傾向にある。
78
2)
・
電圧制御の仕上がり状況などの制御性
SVC やループコントローラなどのインバータ機器を適用し高速で連続的な制御が可能
なケースが仕上がり状況は良い。
・ SVR 等を適用した場合、ステップ状の電圧制御結果となり仕上がり状況は悪い。また、
分散型電源が多量に導入された状況で保護装置の誤動作による一斉脱落などで分散型電
源の導入量が急変した時に、SVR 等のステップ状で時間遅れがある電圧制御装置での対
応は非常に困難となると考えられる。
3)
設置スペース等
・ 設置性については、SVR、SC・SR 自動制御などが最も良いが、SVC 等は容量次第では問
題となる可能性がある。
4)
・
配電線の電力損失
分散型電源の導入量が 30%程度までは、分散型電源導入なしのケースに比べ著しく不
利となるものはない。
5)
・
高調波電圧ひずみの増大
SVC やループコントローラなどのインバータ機器を適用する場合、考慮する必要があ
る。
6)
留意事項
・
今回の検討結果は、典型的な配電線モデル系統を対象にして得られたものであり、ま
た、電圧変動、短絡容量の増大、及び高調波の増大といった現象は系統の局所的なもの
であることに留意する必要がある。今後、更なる技術開発の方向性を検討する上でも対
象とする分散型電源や系統モデルなどの条件を広げ幅広くシミュレーションを行ない、
より実態に近い系統での分析・検討が必要である。
・
最後に、今回のシミュレーションは静的シミュレーションであり、システムの実用化
のためには、系統状況急変時などのシステム応答、複数対策機器の協調制御、ループ系
統の適用など動的シミュレーションによる分析・評価も重要である。
79
第3章
新システムの市場性及び経済性
第 2 章の新システムの技術検討結果に基づき、本章では、新システムの市場規模の想定及び新
システムの導入効果と経済性を評価した。
3.1 新システムに関する市場規模と市場性
新システムに係る対策装置の導入状況、分散型電源の普及状況等から市場規模を想定し、あわ
せて、新システムに関する需要家や関係団体ヒアリング調査結果から、新システムの市場性を分
析した。
(1) 市場規模の調査結果
①
品質別電力供給システム関連
品質別電力供給システムについては、需要家サイドにおける停電・電圧低下対策状況、停
電・電圧対策装置の普及実態、システム導入の可能性箇所から市場性を調査した。
1) 需要家サイドにおける停電・電圧低下対策の実態
表 3.1.1
業
種
公共事業
通
放
金
信
送
融
病
院
工
場
官公庁
スーパー・百貨店
事務所
大学/学校
需要家サイドにおける停電・電圧低下対策の背景
停電、電圧低下が及ぼす影響
① 上下水道
・ 停電時に送水ポンプの停止が発生し、再起動に 10~30 分程度の時間を
要することから、濁水・減水・放流の水質の悪化をまねく。
② 交通関係
・ 電圧低下等により高速道路の料金所の業務渋滞を生じる。
③ 鉄 道
・ 停電、電圧低下では信号、遮断機に影響がありダイヤの乱れに通じる。
・ 停電時に通信装置が停止し通信業務に支障が生じる。
・ 通信装置が停止し放送中断につながる場合がある。
・ 金融システムのコンピュータが停止しオンライン業務が停止する。
・ 各種検査装置・分析装置が影響を受け再検査が必要となる。
・ 手術室、ICUの停電による医療活動へ影響する。
・ 瞬低が発生するとFAシステムの停止により、生産設備の停止、製品不
良・品質劣化が生じる。
・ コンピュータの停止によりデータの消失、プログラムの誤動作が発生し
業務が停止する。
・ POSシステムが停止し、商品管理データ等が消失する。
・ コンピュータの停止によりデータの消失、プログラムの誤動作が発生し
業務が停止する。
・ コンピュータの停止によりデータの消失、プログラムの誤動作が発生し
業務・研究活動が停止する。
資料:瞬時電圧低下対策、電気協同研究
第 46 巻
80
第 3 号、平成 2 年から IAE 作成
2) 停電・電圧対策システムの普及実態
a UPS
・ 国内の UPS は年間約 50 万 kVA 程度導入されており、その半数は小型 UPS(10kVA 以
下)である。
70
金額
60
[億円]
容量
[万 KVA]
50
40
52%
48%
30
20
10k VA以下
10KVA以下
10kVA超
10KVA超
10
0
1996年
1997年
1998年
1999年
2000年
図 3.1.2 UPS 容量別構成比
図 3.1.1 UPS の市場動向
(資料:情報化社会に安心を与
(資料:電気日日新聞から IAE 作成)
える UPS、JEMA、2002 年)
b 瞬時電圧低下保護装置(バックアップ時間が数秒以下の電源装置)
・
瞬時電圧低下保護装置は年間約 3 万 kVA 程度導入されている。
容量
4
[万 KVA]
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
1999年
図 3.1.3
2000年
瞬時電圧低下保護装置の市場動向
(資料:2002 電力・エネルギーシステム新市場、富士経済から IAE 作成)
3) 再開発地域の実態
・ 再開発地域は年間平均 40 件程度竣工しており、最近は微増傾向である。
81
件 数
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
1 9 9 71 年
1 9 9 28 年
図 3.1.4
1 9 93 9 年
2 0 04 0 年
2 0 05 1 年
再開発地域の竣工状況
(資料:市街地再開発 2002 年 6 月、全国市街地再開発協会)
4) 品質別電力供給の可能性がある再開発地域の想定
・
品質別電力供給が成立する条件としては、
高品質電力供給量がある程度以上となること
25%
から、数百 kVA 以上の高品質電力容量が確保できる
再開発物件の延べ床面積として、10 万 m2 以上
(ビルの使用電力を数十 W/m2、数%を高品質
75%
電力とした。
)とした場合、全体の 25%程度
再開発タイプA
再開発タイプB
が品質別電力供給の可能性があると考えられる。
・ 延べ床面積 10 万 m2 以上:タイプ A
図 3.1.5
・ 延べ床面積 10 万 m2 未満:タイプ B
再開発地域のタイプ別想定
(資料:市街地再開発 2002 年 6 月、
全国市街地再開発協会)
務所
事 務 事所
10%
6%
店舗
店舗
病院
病院
6%
店 舗宅
・住 宅
店 舗 ・住
店 舗 ・ホ テ ル
店 舗 ・ホ テ ル
事 務 所 ・事店
務 所舗
・店 舗
23%
16%
事 務 所 ・店 舗 ・住 宅
事 務 所 ・店 舗 ・住 宅
19%
舗 ・ル
ホテル
事 務 所 ・ 店 舗事 務・所ホ・ 店テ
6%
事 務 所 ・店 舗 ・ホ テ ル ・住 宅
事 務 所 ・店 舗 ・ホ テ ル ・住 宅
務 所院
・店・
舗住
・ 病 院宅
・住 宅
事 務 所 ・ 店 舗 ・事病
務 所・
・ ホ住
テ ル宅
・住 宅
事 務 所 ・ ホ テ事 ル
0%
図 3.1.6
5%
10%
15%
20%
25%
再開発地域のタイプ A における建物用途別構成比
(資料:市街地再開発 2002 年 6 月、全国市街地再開発協会)
・
また、再開発地域タイプ A の建物用途の構成では、事務所・店舗、事務所・店舗・ホ
82
テル、事務所・店舗・住宅の組み合せタイプが多く、平均の延べ床面積は 30 万 m2 程度。
②
分散型電源の統合制御システム関連
統合制御システムについては、システムで利用する分散型電源の普及状況を調査した。
1) 太陽光発電の普及状況
・ 太陽光発電の普及状況は平成 13 年度末で約 45.2 万 kW(住宅用太陽光補助金による導
入量は 30.3 万 kW)であり、年度導入量は年々増加傾向にある。
・
太陽光発電の価格は、平成 13 年度末で 1kW 当たり 77 万円となっており、発電単価も
1kW 当たり 34 円まで低下している。
2) 風力発電
・ 風力発電の普及状況は、平成 13 年度末で約 29 万 kW に達しており、年度導入量は年々
増加傾向にある。
・
出力 2,000kW 以上の大型風力発電所容量比率が急速に増加している。
・
特に、大型ウィンドファームの形態での導入が急速に進んでいる。
3) 常用自家発(内燃力)
・
常用自家発(内燃力)の国内における出荷容量は 5 年間で約 330 万 kW(約 66 万 kW/
年)で、年間出荷容量は年々増加している。
・ 設備別ではディーゼルの構成比が高く、5 年間の累積から台数で約 8 割、施設数で約 7
割、容量では約 6 割を占める。
2500
2500
ディーゼル
施設数(箇所)
2000
ガスタービン
2000
ガスエンジン
容量(MW)
合計
1500
台数(台)
台数(台),施設数(箇所),容量(MW)
台数(台)
1000
500
1500
1000
500
0
0
9
10
11
年度
12
13
9
11
12
13
年度
出典:(社)日本内燃力発電設備協会データ
出典:(社)日本内燃力発電設備協会データ
図 3.1.7
10
図 3.1.8
常用自家発の年度別導入状況
常用自家発年度別設置状況(台数)
4) 非常用自家発(内燃力)
・ 昭和 53 年~平成 13 年の設置数は約 12.8 万件で自家用電気工作物(73 万件)の 17.5%
に設置されている。なお、至近年では年間約 6,000 箇所設置されている。
・
昭和 53 年~平成 13 年の総容量は約 1,900 万 kVA に達している。なお、至近年では年
間 100 万 kVA の設置に達している。
・
設置場所では、一般事務所に台数比で約 40%に設置されている。
83
・
機種別では、ディーゼル発電機の台数が多い。(台数比で約 90%、容量比で約 70%)
台数(台)
年度別設置状況(台数)
130000
125000
120000
115000
110000
105000
100000
95000
10
11
12
13
年度
設置台数
出典:(社)日本内燃力発電設備協会データ
項
図 3.1.9
非常用発電機設置状況
表 3.1.2
非常用発電機の設置状況
目
ディーゼル
台数(台)
容量(kW)
ガスタービン 台数(台)
ガスエンジン 容量(kW)
合
計
台数(台)
容量(kW)
H10
H11
H12
5,812
642,707
411
334,412
H10~H12
の増加数
17,368
1,806,713
1,168
887,268
構成比
(%)
93.7
67.1
6.3
32.9
5,877
612,812
409
294,777
5,679
551,194
348
258,079
6,286
907,589
6,027
809,273
6,223
977,119
18,536
2,693,981
100
100
出典:(社)日本内燃力発電設備協会データ
③
電力系統制御システム関連
電力系統制御システムについては、本システムの導入対象となる全国の配電線数について、
配電線こう長等から全配電線数を 7 万回線と想定した。
1) 全国の配電線数(高圧)
・
全電力会社の高圧配電線こう長:約 70 万 km(H13 年電気事業便覧を参考とした。)
・
1 回線当たりの配電線こう長:10km
・
全配電線数:約 7 万回線
2) 全配電線の変圧器容量
・
274 百万 kVA
84
(2) ヒアリング等調査結果
新システムに関するニーズの整理のために、システム別にヒアリング調査や文献調査を実施
した。
①
品質別電力供給システム
品質別電力供給システムの供給可能な電力供給品質メニューやシステムの特徴を基に、オ
フィスビル、自治体、設計事務所、建設業等の関係団体等を対象にヒアリングを実施した。
1)電力供給品質維持対策の実態について
〇
オフィスビルにおいては汎用コンピュータ、防災センター、ビルオートメーションシ
ステムには大型の UPS により、サーバ関係には小容量 UPS で対策がなされている。
また、
防災負荷、保安負荷は非常用発電機により対策がなされている。
〇
銀行の本店では機能維持の観点からほとんどの設備に非常用発電機で対策がなされ
ている。最重要設備(ディーリングルーム、日銀や海外との取引システム)は大容量 UPS
で対策されている。支店でも機能維持の観点からほとんどの設備を非常用発電機で対策
している。但し、UPS を設置する場合は少ない。
〇
電算センターにおいては機能の維持のために施設の全ての設備に非常用発電機で対
策がなされている。最重要設備(コンピュータ)は大型の UPS で対策している。
〇
中央官庁においては、非常時対応の機能維持や防災拠点の観点から本省や総合庁舎の
ほとんどの設備に非常用発電機による対策がなされている。地方自治体、市役所におい
ては汎用コンピュータ、中央監視コンピュータは大型の UPS で対策されている。各課で
保有するサーバ関係には小容量 UPS で対策されている。また、防災負荷、保安負荷は非
常用発電機で対策されている。
〇
全国展開している店舗は、ホストコンピュータ等の基幹システムを切離し、子会社で
運営するケースがある。一方、独立系の店舗は基幹システムを店舗内に保有し UPS によ
り対策している。
〇
ホテルにおいてはホストコンピュータ、ビル管理機器等は UPS で対策している。防災
負荷、保安負荷には非常用発電機で対策している。
2)電力供給品質対策における問題点
〇
UPS については以下のような問題点がある。
・
イニシャルコスト、メンテナンスコストが高価
・
大きな設置スペースが必要
・
バッテリー・部品交換等のメンテナンスが煩雑
〇
非常用発電機については以下のような問題がある。
・
メンテナンスコストが高価
・
大きな設置スペースが必要
3)電力供給品質に関するニーズと購入希望価格
電力供給品質に関して高品質 A、高品質 B1、高品質 B2、高品質 B3、高品質 C、DC(直流)
(各電力供給品質要件に関しては表 2.1.7 参照)に関するニーズをヒアリング調査した結
85
果を以下に示す。
〇
オフィスビルに関しては汎用コンピュータ、防災センター、ビルティングオートメー
ションシステムの用途に高品質 A、サーバの用途に高品質 B1、非発代替のための高品質
C のニーズがある。購入希望価格は現状の電力供給品質対策コスト程度以下である。
〇
銀行の本店に関しては、他者への電力供給の信頼性を依存できないとの考えから自前
で対策を実施する必要があるが、支店に関しては機能維持の観点から高品質 C のニーズ
がある。購入希望価格は現状の電力供給品質対策コスト程度以下である。
〇
官公庁(中央官庁、地方自治体)に関しては、非常時対応の機能維持や防災拠点の観
点から自前で対策を実施する必要があるが、官公庁(市役所)ではサーバの用途に高品
質B1、非発代替のための高品質 C のニーズがある。購入希望価格は現状の需要家の電力
供給品質対策コスト程度以下である。
〇
店舗、ホテルに関しては現状の電力供給品質で十分満足しており、高品質電力のコス
トが現状の料金以下で供給されることを望んでいる。
以上のヒアリング結果から本章の以下の検討においては、電力供給品質を高品質 A、高品
質 B1、高品質 C に絞って検討を実施した。
4)品質別電力供給のメリット
〇
UPS の設置が不要になればイニシャルコストの低減、メンテナンスコストの低減、ス
ペースの有効活用でのメリットがある。
〇
非常用発電機を導入する必要が無くなれば、スペースの有効活用、メンテナンスコス
トの低減でのメリットがある。
②
分散型電源の統合制御システム
今後、導入が考えられる分散型電源の利用方法やシステム導入の可能性等について、オン
サイト事業者、関係団体を対象にヒアリングを実施した。
1) 分散型電源(内燃力)の普及促進への取組み状況
〇
店舗分野は当面まだまだ伸びる余地があると考えているが、出店スピードよりも自家
発導入のスピードが早いことや、近年導入がシフトしてきている小規模店はスペース上
の制約があるため、近い将来ではないにせよいずれは頭打ちの時期がくると考えている。
〇
その対処策として、改正電気事業法による規制緩和を受け、さらなる事業拡大を図る
ための計画を策定している。
〇
電力の小売自由化の拡大に伴い、電力会社の系統を使った託送方式で電気を供給する
事業を計画しているところもある。
〇
一部の事業者では、数千 kW から 170kW のディーゼル発電機複数台を並列にし、数万
kW の発電所を建設しているところもある。
〇 今後は、従来の数百 kW クラスから数千 kW に大型化していくことも考えられる。
2) 分散型電源の遠隔監視、制御等の実態及び課題、問題点
〇
オンサイト事業者及びコージェネ事業者では、遠隔監視を実施している事業者もある。
(運転状況や機器の監視など)
86
〇
今後、遠隔地からの監視・制御を行うには、システム、通信ラインの信頼性確保やシ
ステム全体の低コスト化が課題となっている。
〇
特に、分散型電源の遠隔監視、制御のハード面、ソフト面の標準化は低コスト化の観
点から重要項目となると考えられる。
〇
統合制御を実際に行う場合には、技術確立のほかに、分散型電源を設置している需要
家との調整、連系費用、インセンティブ等が重要となる。
③
電力系統制御システム
電力会社における設備対策の実態、研究状況及び新システムの導入の可能性等についてヒ
アリング、文献調査を実施した。
1) 分散型電源導入による電圧管理等の系統影響の問題
〇
現状では「電力系統連系技術要件ガイドライン」に基づき実施しており、特に電圧管
理等での問題は発生していない。
〇
近年、太陽光発電等では、大規模団地等での集中導入が見られるが、柱上変圧器のタ
ップ調整等により個別対策で対応しており、電圧管理問題は発生していない。
〇
今後、更なる分散型電源の導入が進む場合は、導入量や導入場所、配電線状況等によ
り電圧上昇を引き起こすことも考えられ、電圧管理面に影響を及ぼすことが懸念される。
〇
これらのことから、円滑に分散型電源の系統連系を検討するための支援ソフトの開発
や適正電圧を維持するためのハード対策を独自に実施しているところもある。
2) 電圧管理をはじめとした系統に関する技術開発の動向(独自の取組み状況)
〇
分散型電源の普及による電圧上昇問題等の対策として、従来の電圧調整機器の改造や
新たな機器開発が盛んに行われている。
〇
対策の考え方は、変電所単位、変電所バンク単位、配電線単位での対策ではなく、配
電線において、分散型電源の連系により影響が生じた場合にその影響範囲の電圧を調整
するものが多い。
3) 今後の対策の考え方、方向性
〇
当面は、信頼性の面などから使用実績があり技術ノウハウが蓄積された機器を使用し
た対策の検討が中心となるものと考えられる。
〇
新たにパワエレ機器等を利用するには、対策システムの低コスト化、信頼性の確保、
低ロス化等が重要となる。
(3) ヒアリング調査結果に基づく市場性
①
品質別電力供給システム
需要家における電力供給品質対策の問題点としては、
〇
UPS については、イニシャルコストの高さ、メンテナンスコストの高さ、大きな設置ス
ペースの必要性及びメンテナンスの煩雑さなどの問題がある。
〇
非常用発電機については、大きな設置スペースの必要性、メンテナンスコストの高さなど
87
の問題がある。
システムの実現性としては、
〇
需要家側の電力供給品質対策費用の低減(イニシャル、メンテナンス)、スペースの有
効活用、煩雑なメンテナンスからの開放の観点から、特にオフィスビルに関して品質別電
力供給の実現の可能性はあると考えられる。
〇
購入の可能性のある電力供給品質は UPS の代替としては A 及び B1 であり、非発の代替
(消防法の規制の改正が必要)であれば C も考えられる。
〇
②
料金としては、現状の電力供給品質対策コスト程度以下であれば購入の可能性がある。
分散型電源の統合制御システム
〇
分散型電源の設置場所として、需要家の敷地を利用する場合では、賃借代などの面から
難しい面もある。
〇
多数の分散型電源を系統連系する場合においては、連系費用の低減が重要となる。
〇
分散型電源を統合することにより、系統に対して何らかの効果を期待する場合、現行で
は経済性は成り立たないことから、インセンティブとして経済的な補填対策等の検討が必
要と考えられる。
〇
③
以上の条件が満足できる場合は、実現の可能性はあると考えられる。
電力系統制御システム
〇
電力会社においては、分散型電源の連系増大を考慮した技術検討が始まっており、シス
テム実現化のためには信頼性、低コスト化などが課題と考えられる。
〇
今後のシステムを検討していく上では、配電設備構成が電力会社毎に、また、都市部、
郡部によっても異なることから、これらの状況を踏まえたシステムの柔軟性が重要である。
3.2 新システムによる効果と経済性
3.1 の市場性の検討結果に基づき、本項では、新システムによる効果と経済性について評価を
行った。
(1) 各システムの経済性評価の考え方
①
品質別電力供給システム
〇
ヒアリング結果から、本システムの導入対象としては再開発地域が有力であることから、
再開発地域を想定したシステムについて、システムコストを需要家側の電力供給品質対策
コスト以下の費用で回収する場合の回収年数を試算し、経済性を評価した。
②
分散型電源の統合制御システム
〇
技術検討を行ったシステムについて、統合制御による効果(主に電圧調整効果)に対し
88
て、本システムの費用と系統側での対策費用を比較し、経済性を評価した。
③
電力系統制御システム
〇
技術検討を行ったシステムについて、分散型電源の柔軟な連系を可能にする各対策の費
用(分散型電源導入量について 30%、50%及び限界導入量(100%上限)での設備費を算出)
と分散型電源の導入量の相関から経済性を評価した。
(2) 新システムによる効果と経済性の評価
①
品質別電力供給システム
1) 回収年数試算の考え方
・
本システムで高品質電力供給を実施する場合を想定し、高品質電力に限定したコスト
評価を前提に、増分経費に対しての回収年数を試算し評価した。
回収年数=
①品質別電力供給システムの増分コスト(高品質電力供給のための増分費用)
(②需要家から回収する費用―③品質別電力供給システムの経費)
ⅰ
品質別電力供給システムの増分コスト(高品質電力供給のための増分費用)
・
ⅱ
高品質 A、B1、C を供給するための関連設備費用
需要家から回収する費用
・
回収する費用は、需要家が従来から保有している電力供給品質向上機器の回避可能
コストの 90%とする。(需要家に対して 10%メリットが生じるものとした)
ⅲ
品質別電力供給システムの経費
・
高品質電力供給のために必要なメンテナンス費用及び設備設置の賃借費
2) 前提条件
〇
品質別電力供給システムとして、2 つのシステム(機能分散型、機能統合型)を対象
とした。
〇
なお、機能統合型については、負荷平準化用の電力変換器、二次電池の活用が図れる
ことも考えられることから、①負荷平準化システムがある場合
②負荷平準化システム
がない場合に分け算定した。
3)試算モデル
a 対象モデル
・
建物用途別構成は、再開発地域における代表的な事務所・店舗の構成とした。
・
各物件の延床面積は事務所・店舗で構成される再開発地域の数件の平均値とした。
89
表 3.2.1
システム導入対象モデルの建物用途別延床構成等
総延床面積[万 m2]
27
3
30
建物用途
事務所ビル
店舗
合計
建物数[棟]
4 (事務所1~4)
1
5
b 高品質電力容量
〇電力供給品質メニュー
・
電力供給品質メニューは、ヒアリング結果により、需要家のニーズがある高品質
A、B1、C(消防法の規制の改正が前提)とした。
〇高品質 A 及び B1 の容量
・
容量は、日本ビルエネルギー総合管理協会の延床面積と UPS の導入台数・容量相
関から算定した。
・
高品質 A は、汎用コンピュータ、ビルディングオートメーション等にニーズがあ
ることから数十 kVA の UPS を代替するのに必要な容量とした。また、高品質 B1 は、
小容量コンピュータ(サーバ)にニーズがあることから数 kVA の UPS を代替するの
に必要な容量とした。
なお、瞬低のみ補償する品質はニーズがないことから瞬時電圧低下保護装置の代
替は検討の対象外とした。
・
店舗はヒアリング結果により、現状の品質で十分満足していることから、高品質
電力の供給を行わないこととした。
表 3.2.2 高品質 A、B1 の電力容量
延べ床面積
高品質 A 容量
高品質 B 容量
1200kVA ( 50kVA UPS 1,200kVA(2kVA UPS
270,000m2
×24 台)
(@67,500m2)
×600 台)
(@300kVA(50kVA UPS (@300kVA(2kVA UPS
×6 台)
)
×150 台))
30,000m2
なし
なし
・1,200kVA
・1,200kVA
2
300,000m
(50kVA UPS×24 台) (2kVA UPS×600 台)
物件
事務所 1~4
店
合
舗
計
〇高品質 C の容量
・
高品質 C を供給する場合、非常用発電機の代替を考慮すると消防法の規制の改正
が必要となるが、規制が改正され高品質 C の供給が可能であるという前提とした。
・
容量は、非常用発電機の導入量相当とし、建築設備技術社協会のデータベースか
ら算定した。
表 3.2.3
高品質 C の電力容量
物件
延べ床面積
事務所 2
67,500m2
高品質 C 容量
・ 1,500kVA
(1,500kVA 非発×1 台)
90
4) 試算結果
a 機能分散型システムにおける投資回収年
・
機能分散型において高品質 A、高品質 C の投資回収年は数年程度であるが、高品質
B1 の投資回収年は 50 年程度と長くなった。
・ B1 の投資回収年が長い理由としては、小容量 UPS は汎用品でコストが安価なこと及
び設置スペースが小さいことから需要家から回収する費用が少ないことに起因してい
る。
b 機能統合型システムにおける投資回収年
・
機能統合型では、電力変換器、二次電池の共用化により高品質 A、B1 を統合して供
給した場合で投資回収年が 10 年以下となった。
・
負荷平準化システムがある場合には負荷平準化用の電力変換器、二次電池の活用に
より投資回収年は 4 年程度短くなった。
表 3.2.4
品質別電力供給
システム構成
品質別電力供給システムの回収年試算結果
高品質 A(1,200kVA) 高品質 B1(1,200 kVA) 高品質 C(1,500 kVA)
機能分散型の投資回収年
・8 年程度
・50 年程度
機能統合型の投資回収年
・6 年(負荷平準化システムが既存)
~10 年(負荷平準化システムがない)
・4 年程度
・同
上
注 1:本試算に関しては高品質電力供給装置の開発費用による装置価格の上昇分、需要家サイ
ドにおける高品質電力を受電・配電する設備のコストは含まれていない。従ってこれら
のコストを含めて評価した場合、回収年数は長くなるものと考えられる。
注 2:本試算に関しては、ならし効果による高品質電力供給装置の容量低減による装置価格の
減少分は含まれていない。従ってこれらのコストを含めて評価した場合、回収年数は短
くなるものと考えられる。
5) 経済性評価結果
今回の投資回収年の試算では、再開発地域を想定したシステムについて、システムコス
トを需要家側の電力供給品質対策コスト以下の費用(今回は需要家側に 10%のメリットが
生じるものとした)で回収する場合の投資回収年数から経済性を評価したが、投資回収年
数が 10 年以下となるケースもあり、実現の可能性はあるものと考えられる。
また、機能分散型システムと機能統合型システムを経済性の面から比較した場合、以下
のことが分かった。
〇
機能分散型は、高品質 A の供給を行う場合に優位である。
〇 機能統合型は、高品質 A、B1 ともに供給を行う場合に優位である。
〇
高品質 C の差異はない。
なお、品質別電力供給システムが導入される場合、需要家の品質別の需要構成により導
91
入するシステム(機能分散型、機能統合型)が選定されることが推定されることから、両
システムの技術確立は重要であると考えられる。また、投資回収年から見ると実用化のた
めには更なるコスト低減が重要である。
②
分散型電源の統合制御システム
1) シミュレーションの考え方
・
分散型電源の統合制御により、系統に対してどれだけの電圧調整が可能かをシミュレ
ーションにより把握した。
・
なお、電圧調整量は、分散型電源の力率制御を行わない場合の電圧が最大となる点の
値とした。
力率
配電線電圧
力率 100%時 Va
力率下限時 Vb
100%
B
電圧調整量[V]=Va-Vb
A
0
変電所からの距離
100
分散型電源出力(%)
図 3.2.1 電圧調整量のイメージ(高圧系統)
(変圧器のタップ変更点が電圧変動最大
の場合)
図 3.2.2
力率パターンのイメージ
2) シミュレーションの条件
・
制御対象となる分散型電源及び導入対象系統は以下のとおりとした。
・
系統モデル、負荷条件等の詳細は第 2 章 2.2 におけるシミュレーションモデル条件と
同じ。
表 3.2.5
制御対象分散型電源及び導入対象系統
導入量
統合する電源
出力
①
太陽光発電
3kW
②
回転機
300kW
導入
箇所数
連系
箇所
導入対象
系統
台数
総容量
300 台
900kW 注 1) 300 軒
低圧線
住宅地域
3軒
高圧線
商業地域
6台
1,800kW 注 2)
注 1)電力系統制御 WG の検討結果より、電圧変動問題を考慮し、配電線容量(3,000kVA)の
30%程度の導入と仮定。
注 2)電力系統制御 WG の検討結果より、電圧変動問題及び発電機の進相運転限界を考慮し、
配電線容量(4,000kVA)の 40%程度以上の導入と仮定。
92
3)シミュレーション結果
・
住宅地域及び商業地域における電圧調整効果は表 3.2.6 のとおりである。
・
主に系統の電圧調整としての効果が期待できる。
・
住宅地域は、配電線が長く、低圧系統に連系されているため制御効果が大きい。
表 3.2.6
制御による系統への効果
住宅地域(太陽光発電)
電圧調整効果
〇
商業地域(回転機)
電圧下げ効果
〇
・ 低圧側で最大 5.0V 程度
電圧下げ効果
・ 低圧側で最大 0.5V 程度
(高圧換算で 300V 程度;SVR 2
(高圧換算で 30V 程度)
~3 タップ相当)
・
力率:進み 85%
・
力率:進み 95%
・ 電源の分布:末端集中導入
・ 電源の分布:末端集中導入
(注)住宅地域:PV 導入率 30%、中間期、力率制御範囲 100~85%(進み)
商業地域:回転機導入率 30%、中間期、力率制御範囲 100~80%(遅れ)、
100~95%(進み)
4) 電圧調整に関する考察
ⅰ 分散型電源の無効電力調整量
・ PV、回転機の無効電力調整量を表 3.2.7 及び表 3.2.8 に示す。
表 3.2.7
力率調整に対する有効電力 P 及び無効電力 Q の関係(PV)
力率(%)
進み(進相)
85
90
95
100
P(kW)
1.00
Q(kVar)
0.53 0.44 0.32 0.00
力率 95%時における Q との比率 1.7 1.4 1.0
-
遅れ(遅相)
95
90 85 80
-
-
-
-
-
-
-
-
注 1)有効電力を 1.00kW とした場合の力率と無効電力の関係を示す。
注 2)力率の調整範囲は、標準的な太陽光発電の仕様、受電点の力率等から設定。
表 3.2.8
力率調整に対する有効電力 P 及び無効電力 Q の関係(回転機)
力率(%)
P(kW)
Q(kVar)
力率 95%時における Q との比率
進み(進相)
85
90
95
-
-
-
-
100
遅れ(遅相)
95
90
85
80
1.00
0.32 0.00 0.32 0.44 0.53 0.60
1.0
- 1.0 1.4 1.7 1.9
注 1)有効電力を 1.00kW とした場合の力率と無効電力の関係を示す。
注 2)力率の調整範囲は、標準的な回転機の仕様、受電点の力率等から設定。
・ PV の場合は電圧を下げる(進相運転)効果が期待できる。一方、回転機の場合には
電圧を下げる(進相運転)効果に加え、電圧を上げる(遅相運転)効果も期待できる。
・ また、例えば力率が進み 85%の場合には、進み 95%の場合の約 1.7 倍の無効電力を供
93
給できることが分かる。
ⅱ 住宅地域系統と商業地域系統の電圧特性(高圧系統)
配電線の幹線のみを模擬した高圧系統簡易モデルで住宅地域系統と商業地域系統の
電圧変動特性について検討を行った結果、電源を末端に導入した場合の住宅地域系統
の電圧変動量は商業地域系統の約 3 倍となった。
5) 経済性評価結果
ⅰ
第 2 章の技術的な評価から、制御方式としては分散型電源制御センターを設置し随時
制御を行なうシステムが有用であることが明らかとなった。
ⅱ
また、太陽光発電、回転機での制御では、対象となる配電系統の線路条件により効果
が異なるが、ある程度の量を統合すれば系統電圧の調整に寄与できる可能性があるとの
結果を得た。
ⅲ
上記及び 3)、4)の検討結果より電圧調整効果と設備費を算定し、表 3.2.9 に示す。
表 3.2.9
システムの電圧調整効果と設備費
太陽光発電システム
住宅地域系統
(低圧系統)
電圧上げ効果
(低圧換算値)
電圧下げ効果
(低圧換算値)
設備費
回転機システム
住宅地域系統
(高圧系統)
商業地域系統
(高圧系統)
2.9V 程度
(遅れ 0.8)
1.0V 程度
(遅れ 0.8)
5.1V 程度
(進み 0.85)
1.5V 程度
(進み 0.95)
0.5V 程度
(進み 0.95)
2,500 万円
1,500 万円
1,500 万円
――
注2
注 1:システムの制御方式は分散型電源センターありの随時制御
注 2:運転状態が日射によるため期待できない
注 3:分散型電源は末端集中導入
注 4:( )内は力率値
注 5:分散型電源の導入量は配電線容量(3,000kVA)の 30%とした
注 6:設備費には通信回線費を含まず
ⅳ
ここで、系統側で対策を実施する電力系統制御システムの検討結果との比較を行うた
めに、同システムの電圧調整効果と設備費を算定した。
○
電力系統システム WG における住宅地域での太陽光発電設備を系統容量の 30%導入
した場合の系統側の対策費用
・ 系統側での対策費用(500~4,500 万円)
・
SVR の電圧調整幅は 300V(低圧換算約 4.7V)
94
表 3.2.10
システムの電圧調整効果と設備費(住宅地域系統、太陽光発電導入)
SVR
SVC
均
等
導
入
電圧調整効果
[上げ、下げ効果]
(低圧換算値)
約 4.7V
約 1.7V
(約 600kVA)
設備費
約 500 万円
約 3,000 万円
末
端
導
入
電圧調整効果
[上げ、下げ効果]
(低圧換算値)
約 4.7V
約 2.5V
(約 900kVA)
設備費
約 500 万円
約 4,500 万円
注 1:SVC は高速、連続的な制御が可能、容量:300kVA
注 2:SVR はステップ状の制御(100~150V 単位)が可能、有効電圧調整幅:約 300V(低圧換算値で
約 4.7V)、容量は 3,000kVA
注 3:
( )は SVC の必要容量
ⅴ
両システムの経済性の比較
統合制御システムと電力系統制御システムの電圧調整効果について、以下のとおり
比較した。
比較するにあたっては、分散型電源は末端集中導入、電圧調整効果は 1V(低圧換算)
とした。但し、太陽光発電の場合は電圧下げ効果のみを考慮した。
表 3.2.11 両システムの経済性比較
統合制御システム注2
電力系統制御システム
太陽光発電注3
回転機
回転機
SVR 注4
SVC
(住宅地域) (住宅地域) (商業地域) (住宅地域) (住宅地域)
設備費注1
(万円)
約 500
約 500
約 1,500
約 110
約 1,800
注 1:電圧調整効果1V(低圧換算)当たりの設備費。
注 2:統合制御システムの設備費には通信回線費は含まず。
注 3:住宅地域系統の低圧系統に連系される太陽光発電は、それ自身が系統連系により系統の電圧上
昇につながる場合があるが、高圧系統に連系される回転機は、自身の系統連系による電圧上
昇は小さいことに留意する必要がある。
注 4:ステップ状の電圧制御を行う機器。
ⅵ 経済性評価結果
〇
太陽光発電及び近年導入されている回転機型の発電機はディジタル型の電圧調整シ
ステムとなっていることから、きめ細かな力率調整、電圧調整が可能である。
以上を考慮すると、統合制御システムによる系統電圧の調整は、きめ細かな電圧調
整が可能で、電力系統制御システムの SVC での対策と同等となると考えられる。
〇
なお、実運用での評価には、制御対象範囲、制御ロジック、制御側の電圧調整要求
に対するシステムの対応性などの技術的な確立が必要であるが、これらを満足できれ
ば SVC を適用した電力系統制御システム並みの効果が期待でき、経済的な観点からも
系統の電圧調整対策としての可能性はあると考えられる。
95
〇
本システムは、分散型電源の統合数が増加することにより、電圧調整量は増加し、
設備費は低下(分散型電源 1 台当たりの対策増分コスト)することから、統合する分
散型電源の量の確保が不可欠となる。
③
電力系統制御システム
1) シミュレーションの考え方
・ 「2.3(4)分散型電源導入に伴う系統影響シミュレーション」で採用したデータを基に、
分散型電源の導入可能量と設備コスト(設備費)の相関からシステムの経済性評価を実
施した。
ⅰ
システムによる分散型電源の導入可能量
・
対策ケース毎のコスト(電圧対策設備費)を算出するための、分散型電源の導入可
能量を 30%、50%及び上限値の場合とした。
・
この導入可能量 30%、50%及び導入限界量(100%上限)での対策機器容量をシミュレー
ションにより算出した。
ⅱ
C
設備コスト
ⅰより求めた対策機器容量と
対策機器の容量当りの設備コスト
からシステムコストを算定した。
(例:SVC の容量が 1,000kVA 必要な
場合は、a 万円/kVA×1,000kVA で算定)
電圧対策設備費(対策機器の容量)
・
対策ケース 1
対策ケース 2
B
A
対策ケース 3
上限値
30
50
系統への効果(導入可能量)
図 3.2.3
検討モデル毎の分散型電源の導入可能量と
設備コストの相関評価のイメージ図
2) シミュレーションの条件
・
システム検討ケースは表 3.2.15 に示すとおり、「2.3(6)システムの系統への導入効果
シミュレーション」で検討した対策ケースとした。
・
また、各検討ケースを系統の構成、系統構成機器の制御方法により大きく 4 つのグル
ープ(グループ A~グループ D)に分け,グループ間の検討を容易なものとした。
・系統モデル、負荷条件等の詳細は第 2 章 2.3 におけるシミュレーションモデル条件と同
一条件とした。
96
100
表 3.2.12 検討ケース(グループ化)
① 樹枝 状 ⅰ遠隔制御
なし
系統
( 現 状 の 配 ⅱ遠隔制御
2 電線の系
あり
1
統)
3
4
② ルー プ ⅰ遠隔制御
なし
系統
(樹枝状系
統のループ
5
化による系
統)
ⅱ遠隔制御
あり
6
7
1-1
1-2
2-1
2-2
3-1
3-2
3-3
3-4
4-1
4-2
4-3
5-1
5-2
6-1
6-2
7-1
7-2
対策機器
b新規型
現状の配電系統で用いら
れている系統構成機器
新制御
SVR
SC・SR
自動制御
現状の配電系統では用いられていない新
たな系統構成機器
SVC
ループ連系装置
高速
ループ
遮断器
コントローラ
● (1 箇所設置)
● (2 箇所設置)
グループ
対策ケース
検討モデル
a従来型(改造型含)
A
●
●
●
●
● (1 箇所設置)
● (2 箇所設置)
●
●
●
B
●
●
●
●
●
●
●
C
●
●
●
●
●
●
D
●
注)●:適用する対策機器
3) シミュレーション結果
ⅰ
各グループの分散型電源導入量と設備費の傾向
・
各グループの分散型電源導入量と電圧対策設備費の関係を図 3.2.4~3.2.7 に示す。
・
各グループの中に性能が異なる種々の対策機器があるため、設備費のばらつきが大
きくなっているが、全体的な傾向としては、どのグループも分散型電源の導入量の増
加にあわせ設備費が増加する傾向にある。
97
100
100
電
圧
対
策
設
備
費
80
1-1
1-2
1-2
60
3-1
3-2
80
60
(
(
1-2
百
万
円
電
圧
対
策
設
備
費
1-1
百
万
円
40
40
3-1
3-2
)
)
1-1
20
3-3
3-4
20
2-2
2-1
0
3-3
3-1
3-2
3-4
3-4
3-3
2-2
2-2
2-1
2-1
0
0
20
40
60
80
100
0
20
分散型電源の導入量(%)
40
60
80
100
分散型電源の導入量(%)
図 3-2-4
図3-2-4分散型電源の導入量と設備費
分散型電源の導入量と設備費
(グループA(樹枝状系統、遠隔制御なし)
(グループA(樹枝状系統、遠隔制御なし)、均等分布)、
均等分布)
図 3-2-5
分散型電源の導入量と設備費
図11-2 分散型電源の導入量と設備費
図 3-2-5
(グループB(樹枝状系統、遠隔制御あり)
、
(グループB(樹枝状系統、遠隔制御あり)、均等分布 )
均等分布)
7-1
100
100
6-1
電
圧
対
策
設
備
費
5-1
80
5-1
60
5-1
7-2
80
7-1
60
7-1
(
(
40
5-2
4-3
20
4-1
4-3
5-2
5-2
4-3
百
万
円
6-1
7-2
6-1-2
6-1
40
7-2
6-1-2
6-2
)
5-2
)
百
万
円
電
圧
対
策
設
備
費
6-1-2
6-2
6-2
20
4-2
0
0
0
20
40
60
80
100
分散型電源の導入量(%)
0
20
40
60
80
図 3-2-6
分散型電源の導入量と設備費
図11-3 分散型電源の導入量と設備費
図 3-2-6
(グループC(ループ系統、遠隔制御なし)
、
(グループC(ループ系統、遠隔制御なし)、均等分布 )
均等分布)
図図
3-2-7
図11-4 分散型電源の導入量と設備費
3-2-7 分散型電源の導入量と設備費
(グループD(ループ系統、遠隔制御あり)、均等分布)
(グループD(ループ系統、遠隔制御あり)
、
均等分布)
4) 経済性評価結果
ⅰ
グループ毎の相関関係把握のための条件
・
図 3.2.4~図 3.2.7 では、幅広く分布しているため、以下の条件を付加して、ケー
ス毎の相関を把握した。
①
100
分散型電源の導入量(%)
SVR、SC・SR の対策は、現在の系統でも一部適用されているが、SVR、SC・SR 自動
98
制御はステップ状の電圧制御となる(調整電圧がある程度固定されている)ため、
この 2 つの対策ケースについては評価の対象から除いた。
②
遠隔制御を実施するグループ B、D の通信システム費の通信回線費等を考慮した。
③
傾向把握のため、各グループで設備費が最低のケースを選定した。
④
太陽光では、発電出力が日射等の自然条件に大きく依存し急激な出力変動が予想
され、保護装置の誤動作により一斉脱落の可能性もあることから、太陽光が多量
に導入された状況下では、SVR 等によるステップ状で時間遅れがある電圧制御で
は対処が非常に困難であると予想されるため、連続で高速な電圧制御が可能な
SVC とループコントローラを用いたケースに限定した。
ⅱ
各グループの傾向
・
ⅰの条件を付加し図 3.2.4~図 3.2.7 をグループ毎に整理した結果を図 3.2.8 に示
す。分散型電源の導入量が小さい場合(導入量 30%程度の場合)においては、グルー
プ A(樹枝状系統で遠隔制御を行わない対策ケース)が優位であると考えられる。但
し、システムの実現化にあたっては、機器容量増に伴うスペース等の確保が必要とな
る。
・
分散型電源の導入量が増加する場合(導入量 50%~100%の場合)においては、連
続・高速な電圧制御が可能なループ系統であるグループ C(ループ系統で遠隔制御を
行わない対策ケース)、又はグループ D(ループ系統で遠隔制御を行う対策ケース)が
優位であると考えられる。但し、遠隔制御を行わないグループ C は分散型電源の導入
量 55%において限界となる。
100
100
グループA
SVC
60
グループB
80
グループA
LPC
百
万
円
40
SVC
SVC
60
(
グループD
グループD
LPC
40
)
グループB
SVC+SC・SR
)
百
万
円
電
圧
対
策
設
備
費
80
(
電
圧
対
策
設
備
費
20
20
グループC
グループC
LPC+SVC
LPC+SVC
0
0
0
20
40
60
80
100
0
20
40
60
80
100
分散型電源の導入量(%)
分散型電源の導入量(%)
分散型電源の導入量(%)
分散型電源の導入量(%)
図12-1 分散型電源の導入量と設備費
図 3.2.9 分散型電源の導入量と設備費
分散型電源の導入量と設備費
図 (グループごとの最小設備費、均等分布)
3-2-8
(グループ毎の最小設備費、均等分布)
(グループ毎の最小設備費、均等分布)
99
図12-2 分散型電源の導入量と設備費
図 3.2.10分散型電源の導入量と設備費
分散型電源の導入量と設備費
図 (連続・高速な電圧制御が可能なケース、均等分布)
3-2-9
(連続・高速な電圧制御が可能なケース費、均等分布)
(連続・高速な電圧制御が可能なケース、
均等分布)
ⅲ
まとめ
・
今回、分散型電源の導入量と系統側での対策費用から経済性を評価し、分散型電源
の導入量の大小により経済的に優位なシステムを評価した。
・ 分散型電源の導入量が小さい場合:グループ A(樹枝状系統で遠隔制御を行わない
対策ケース)が優位
・ 分散型電源の導入量が大きい場合:グループ C(ループ系統で遠隔制御を行わない
対策ケース)
、D(ループ系統で遠隔制御を行う対策ケース)が優位
・
しかしながら、分散型電源の導入がどのように進むかによりシステム選定が変わる
ことも考えられる。従って、システム導入にあたっては、以下の点も考慮する必要が
ある。
①
分散型電源が普及していく系統の特徴によりシステム選定がなされる場合
・
分散型電源が特定の配電用変電所単位、特定配電線単位に普及する場合、配電
線の始端集中、中間集中、末端集中、均等に普及する場合などで対策方法が変わ
ることも考えられる。
・
特に、特定の配電線に分散型電源の普及が進んだ場合、隣接回線の普及状況次
第では必ずしもグループ D(ループ系統で遠隔制御を行う対策ケース)の対策が
優位とはならない場合がある。(ループ方式は、隣接回線を含めた普及増でのメリ
ットが大きいため)
②
分散型電源の普及のスピードによりシステム選定がなされる場合
・
システム導入方法としては、普及状況に応じて徐々に対策機器を増やす方法と
全体的なシステム導入が考えられるが、導入進展のスピードによっては、必ずし
も上記の優位性にとらわれないシステム導入が考えられる。
・
最後に、今回の検討は電圧変動に対する検討結果であり、分散型電源の系統連系量
が増えた場合には、電圧変動のほか短絡容量、高調波の増大や単独運転防止などの課
題も考えられることから、これらについての対策を含めた検討が必要である。
100
第4章
新システムに資する基盤技術と技術課題
第 2 章の新システム技術検討結果に基づく技術開発課題と新システムの基盤となる技術の動向
を整理し、今後の技術開発課題の検討の方向性を網羅的に整理した。
4.1 新システム実現のための基盤技術の動向整理
平成 13 年度「新電力供給システム技術検討会」報告書における技術課題を基に、新システムの
基盤となる技術を整理した。なお、基盤技術の詳細については、本報告書の「資料編」に整理さ
れている。
(1) 基盤技術として整理した技術項目
基盤技術項目としては、「新システムを構成する基盤技術」、「分散型電源の性能向上に関す
る技術」に大別し、以下の内容について「技術動向」、「技術課題」について整理した。
表 4.1.1
大項目
分
技術動向整理項目及び分担
類
内
①制御・通信技術の動向
新システムを
構成する基盤
技術
容
1)電力系統の制御・通信の技術動向
②電圧、電流等の計測及びメ
1)計測及びメータリング技術の動向
ータリング技術の動向
1)電力変換装置の技術動向(SiC 素子、変換器)
③電力系統構成機器に関す
2)電力貯蔵装置(二次電池)の技術動向
る技術の動向
3)超電導応用に関する技術動向
1)太陽光発電の技術動向
分 散 型 電 源 の ④分散型電源の開発動向
2)コージェネレーションの技術動向
性能向上に関
する技術
⑤分散型電源の系統連系に
1)系統連系に関する技術動向
関する技術動向
(2) 基盤技術の整理結果
①
制御・通信の技術動向
<技術動向>
〇
情報伝送技術では、インターネット・イントラネットの利用、伝送技術の高機能、高品
質化、高速化、高信頼性化に主眼を置いた技術開発が進展している。
・
インターネットプロトコル(IP)技術を基本に低コスト化が進展
・ 広域イーサネット、次世代 IP、音声 IP 伝送、トラヒック制御技術などが進展
・
ギガビットイーサネット、高速パケットスイッチ、光スイッチなどを中心に高速化が
101
進展
・ アクセス通信網:xDSL、無線 LAN、FTTH などが実用化
〇
ソフトウェア技術では、オブジェクト指向技術、分散オブジェクト及びエージェント技
術、Web 技術が進展しており、特に、米国等では、分散型電源の制御を始めとした各種の
ソフトが実用化されている。
・
機器などの属性や振る舞いを計算機が扱いやすいように統一的に記述化
・
オブジェクト(機器、応用プログラム)の分散配置技術とオブジェクト間通信、移動
オブジェクト(エージェント)による自律分散処理が進展
<技術課題>
〇
分散型電源の制御を始めとした技術への応用では、種々の通信方式が考えられることか
ら、これらの協調を図るための対策として、通信プロコトル等の標準化などの課題がある。
特に、米国では、これらを始めとした標準化の検討が始まりつつある。
新しい系統運用形態への対応
・
インテリジェントなデジタル制御機器やセンサ等への対応
・
分散処理・制御機構の組み込み
・
システム間(給電システム、設備管理システムなど)や会社間の情報連携
・
通信ネットワークの高度化(イントラネット、インターネット)への対応
②
・
電圧、電流等の計測及びメータリング技術の動向
<技術動向>
〇
需要家サービスの向上を目的に、アナログ計測方式からデジタル計測方式への移行が進
展している。
・
デジタル計測では、高精度、高信頼、高集積化による小型化、多機能化が可能
・
マルチメディアネットワークによる通信インフラの急速な浸透と通信メディアの多種
多様化
<技術課題>
〇
複数のメディアアクセス網に対応可能な装置の開発が重要であり、特に以下の項目が課
題となっている。
・
エリアに応じた最適なアクセス方式(FTTH、PLC、PHS、無線 LAN)の選定
・
導入コストの低減、システムの早期展開を可能とするアクセス方式の選定
・
メディアの特性に応じた収集方式や各方式対応の収集方式を実現するための中継サー
バ配置などの検討
(E cc= 3 0 0 V , I o = 2 0 A , fc= 2 0 k H z )
③
電力系統構成機器に関する技術の動向
140
1) 電力変換装置(SiC 素子)の技術動向
〇
低損失、高速動作に優れる
損 失(W )
<技術動向>
120
54
80
60
8 1 .5 6
40
SiC(シリコンカーバイト)を
スイッチング損 失
100
導 通
損 失
9
4 4 .3 5
20
0
S i -I G B T ( 6 0 0 V , 2 0 A )
素材とするパワー半導体素子の
102
S i C -M O S F E T ( 6 0 0 V , 2 0 A )
応用などの研究がなされている。
<技術課題>
〇
パワー半導体素子の応用分野の拡大が期待されているが、特に、以下の項目が課題と
なっている。
・
高品質大口径 SiC(シリコンカーバイト)基板の製造
・
素子の低損失化及び高耐圧・大容量化
・
素子の低コスト化及び高信頼度化
・
素子の特性を最大限に生かす高密度変換器回路技術
耐高温・高密度実装回路技術、高周波スイッチング回路技術、など
2) 電力変換装置
<技術動向>
〇
電力変換方式として、トランスレス電力変換方式やマトリックスコンバータ及びソフ
トスイッチング化が期待されており、電力機器への応用拡大が検討されている。特に、
太陽光発電や小型の UPS では、高効率化や装置の小型化を背景に、トランスレス電力変
換方式の採用がなされてきている。
<技術課題>
〇
電力変換装置の開発における課題としては以下のとおり。
・
電力変換器全般:過負荷時の運転継続性の向上
・
トランスレス電力変換方式:交流系統への零相電流の流出防止及び地絡時の保護方
式
・
マトリクスコンバータ:マトリクスコンバータ用の素子・主回路方式・制御方式の
検討
・
ソフトスイッチング
・
回路の共振動作に伴って増加するスイッチング素子の電圧・電流への対応
・
PWM 制御の適用方法
・
半導体素子、LC 素子の増加による主回路等の複雑化への対応
・
電圧・電流センサと精密なタイミングの制御の検討
3) 電力貯蔵装置(二次電池)の技術動向
<技術動向>
ⅰ
NAS 電池
〇
実証試験段階から実用化段階に入り、平成 13 年時点で累計 2 万 kW 設置
・
平成 10 年に消防法の規制が緩和され、設置上の制約がほとんどなくなり、UPS
機能や瞬低補償などの付加機能を内蔵したシステムへの応用も始まった
ⅱ
レドックスフロー電池
〇 実証試験段階から実用化段階に入り、平成 13 年時点で累計 3 千 kW 弱設置
・
ⅲ
風力発電の出力平滑化や瞬停補償などの付加機能を内蔵したシステムも商品化
リチウムイオン電池
〇
電力貯蔵用としては実証試験レベルであり、大容量化に向けての研究開発が進め
られている
103
ⅳ
電力貯蔵用鉛電池
〇
電力貯蔵装置(二次電池)の中では、最も実用化が進んでいるが、従来の鉛電池
を電力貯蔵用として長寿命化する技術開発等が進められている
・
極板処方の改善による腐食やサルフェーションの防止
<技術課題>
ⅰ
NAS 電池:コスト低減が課題
ⅱ
レドックスフロー電池:タンクの設置場所及びエネルギー密度が低いことが課題
ⅲ
リチウムイオン電池:コスト低減、大容量化、サイクル寿命向上が課題
ⅳ
電力貯蔵用鉛電池:サイクル寿命向上が課題
4) 超電導応用に関する技術動向
<技術動向>
ⅰ
SMES
〇
ⅱ
系統制御技術として、SMES コイルを中心としたコスト低減要素技術を開発中
超電導限流器
〇
大面積超電導膜の作成:大面積膜製作、高電流密度化
〇
限流素子の作成:大電流・高電圧素子の作成(並列・電流分布均一化、直列・電
圧分布均一化)
ⅲ
超電導ケーブル(交流)
〇
大容量長尺化導体構成技術の開発
〇
低交流損失への線材構造・導体構成技術の開発
〇
500m 級ケーブル長尺冷却技術の開発
<技術課題>
ⅰ
系統制御用 SMES
〇
実用化へ向けた、大容量コイル・冷却システムや、大容量変換技術を含むシステ
ム要素技術の開発及びシステム化とトータルシステム技術の実系統連系検証
ⅱ
超電導限流器
〇
ⅲ
高電圧化、大容量化、既設保護システムとの協調
超電導ケーブル(交流)
〇
④
交流通電時の損失を低減化、大容量長尺化、長尺冷却技術の実現化
分散型電源の開発動向(高度化、制御技術)
1) 太陽光発電の技術動向
<技術動向>
〇
高周波トランスの採用
・
〇
トランス部品の小型、軽量化及び商用系統と太陽電池を絶縁して安全性を確保
最大電力点追従制御
・
最大の電力が取り出せるようにパワーコンディショナの入力(動作点)を制御
<技術課題>
〇
発電システムの低コスト化
104
・
太陽電池の変換効率の向上
・
パワーコンディショナ変換効率の向上
・
信頼性向上、長寿命化
2) コージェネレーションの技術動向
<技術動向>
〇
品質別電力供給に関する技術
・
停電時における分散型電源の継続運転のための技術として、高速停電検出、高速遮
断器、ガスタービン軸トルク解析などの研究・開発が行われている
〇
分散型電源統合制御に関する技術
・
〇
遠隔監視システム、遠隔メンテナンスシステムの導入
電力制御(柔軟連系)に関する技術
・
単独運転検出機能の開発
・
短絡容量増大に対する対策
・
ウルトラップヒューズの開発
(ウルトラップヒューズとは、分散型電源の系統連系による短絡容量の増加を、
実質的に起こさないようにするため、短絡電流を高速で検出・遮断する装置。
短絡事故を電流の変化率により検出することにより高速に検出が可能なセン
サーと火薬を用いて高速遮断するヒューズから構成されており、短絡電流が
最大値に達する前に高速遮断することが可能である。)
・
⑤
1/4 サイクル遮断器の開発
分散型電源の系統連系に関する技術動向
<技術動向>
ⅰ
配電系統技術
〇
自動電圧調整装置(SVR)の高性能化
〇
双方向 SVR 制御
〇
多機能変圧器
〇
SVC(無効電力補償装置)と SVR の協調制御
〇
キャパシタ内蔵型電力品質補償
〇
小規模系統制御用 SMES
ⅱ
分散型電源連系技術
〇
風力発電の調査研究(運転特性、出力特性など)
〇
ウィンドパーク等における風力発電の挙動解析
〇
太陽光発電の影響調査研究(運転特性、出力特性など)
〇
太陽光発電多数台連系の影響調査
〇
自然エネルギー等の供給能力の評価
〇
MGT 等の調査研究(起動停止性能、高調波など)
〇
解析ツール、系統モデルの整備(高圧、低圧)
105
4.2 新システム技術検討による技術課題
本項では、第 2 章の新システムの技術検討結果に基づく技術課題を網羅的に整理した。
(1) 品質別電力供給システム
品質別電力供給システムの技術課題について、高品質電力供給装置部、高品質電力供給装置を
含めたシステム部に分けて整理した結果を表 4.2.1 に示す。
表 4.2.1
品質別電力供給システム技術課題の整理
機能統合型
機能分散型
〇機能統合型高品質電力供給装置の開発
-
〇過負荷による高品質電力供給装置停止防止方法の確立
高品質電力
供給装置部
〇パワーデバイスの損失の低減
〇電力変換器の損失の低減及び装置の小型化
〇直列補償インバータ制御の高度化
〇高品質電力供給装置二次系の電力供給品質維持方法の確立
〇需要家側事故の波及防止方法の開発
高品質電力供給装置
を含めたシステム部
〇高品質電力供給装置と分散型電源との連系制御方法の開発
〇高品質電力供給装置と回転機負荷との協調制御方法の確立
〇直流給電方法の検討
(2) 分散型電源の統合制御システム
分散型電源の統合制御システムの技術課題について、ハード面、ソフト面に分けて整理した結
果を表 4.2.2 に示す。
表 4.2.2
分散型電源の統合制御システム技術課題の整理
項
ハード面
ソフト面
システム
制御に関
する事項
システム
運用に関
する事項
その他
目
○分散型電源通信インターフェ-スの開発
〇系統の情報を計測する計測センサの開発
〇制御による効果を把握するためのメータ等の開発
〇パターン制御における制御パターンの作成
○随時制御における制御手順の検討
○作業時及び事故時等の系統状態変化時の対応手順
○システム作業停止・ハード故障時のシステムのバックアップ対応
○最適制御のための要件検討と実証試験による検証
106
(3) 電力系統制御システム
電力系統制御システムの技術課題について、ハード面、ソフト面に分けて整理した結果を表
4.2.3 に示す。
表 4.2.3
電力系統制御システム技術課題の整理
ループ系統、樹枝状系統共通
ハード面
〇系統の情報を計測する計測センサの
開発
〇制御機器異常時のバックアップ装置 〇ループコントローラの開発
の開発
〇短絡容量、高調波増大に対する対策
制御に関
〇複数機器の協調制御
する事項
運用に関
〇現状の配電線運用との協調
する事項
ソフ
ト面
その他
ループ系統
〇ループコントローラの制御方式
の確立
〇ループ運用時の保護対策
○最適制御のための要件検討と実証試験による検証
4.3 新システムの技術課題と解決の方向性
本項では、4.2 の技術課題に対して 4.1 の基盤技術状況を踏まえた解決の方向性を整理した。
(1) 品質別電力供給システム
①
高品質電力供給装置部に関する技術課題
1) 機能統合型
ⅰ
機能統合型高品質電力供給装置の開発
<課題>
〇
需要家へ各種の品質の電力を供給する場合、各種の品質の電力を供給する装置を個別に
設置する方式はコスト、スペースの面で不利である。電力変換器等の共用化等によりコス
トダウン、省スペース化が期待できる機能統合型高品質電力供給装置の開発が必要となる。
<解決の方向性>
〇
電力変換器等の共用化において双方向コンバータは、各品質の電力を供給するための
制御、直列補償インバータの入力電圧補償に伴う電力の授受の入力側への回生制御、負
荷平準化制御及びアクティブフィルタ制御を同時に行う必要があり、これらの制御を同
時、協調的に制御する方法の検討に加えて、実際に適用するためには試作等による評価
の実施も考えられる。
2) 機能統合型、機能分散型に共通
ⅰ
過負荷による高品質電力供給装置停止防止方法の確立
<課題>
〇
半導体電力変換装置は過負荷に対して耐量が少なく停止する。通常時には過負荷が発
107
生すると、無瞬断バイパス回路が作動し上位系統から過負荷電流が供給され高品質電力
供給装置の停止には至らない。停電中に高品質電力供給装置によりバックアップしてい
る時に過負荷が発生すると、高品質電力供給装置が過負荷停止する問題があり、過負荷
停止を防止する方法の確立が必要となる。
<解決の方向性>
〇
本課題を解決するには過負荷耐量がある素子の開発、過負荷に強い電力変換方式の検
討、過負荷が発生した時に高速に過負荷電流を限流し装置停止に至らない制御方法の検
討などが考えられる。
ⅱ
パワーデバイスのオン損失、スイッチング損失の低減
<課題>
〇
パワーデバイスの運転損失の原因となるオン損失、スイッチング損失の低減を図り、
装置の効率の向上を図る必要がある。
<解決の方向性>
〇
パワーデバイスとして SiC が期待されており、本パワーデバイスは従来の
MOSFET、
IGBT と比較して運転損失の原因になるオン損失、スイチング損失が低減可能なために装
置効率の向上も期待できる。損失低減による冷却システムの小型簡素化、扱える電流密
度が高いことに加えて動作上限温度も高いので高密度実装が可能、さらにスイッチング
周波数を上げられるのでコンデンサやリアクトルなどの小型化も可能、などによりコン
パクト化も期待できる。従って、このような効率向上、スペースメリットが期待できる
素子の適用の可能性を検討することが考えられる。
ⅲ
電力変換器の損失低減及び装置の小型化
<課題>
〇
電力変換器の損失の低減を図り、装置の効率の向上を図ることや装置の小型化により
導入しやすいものとする必要がある。
<解決の方向性>
〇
電力変換方式としてトランスレス電力変換方式、マトリクスコンバータが期待されて
いる。
〇
トランスレス電力変換方式は太陽光発電や小型の UPS で用いられている電力変換方式
であり、高効率で装置の小型化が可能な特徴を有している。
〇
マトリクスコンバータは交流を直接交流へ変換する方式で可変速モータドライブで適
用されつつある電力変換方式であり、以下のような特徴を有している。
・
直接電力を変換するため、高効率である。
・
直流中間回路である電解コンデンサが必要ないので装置の小型化、高信頼性、長寿
命化が可能である。
〇
このような効率向上、スペースメリットが期待できる電力変換方式の適用の可能性を
検討することが考えられる。
〇
トランスレス電力変換装置を高品質電力供給装置に適用する場合の留意点としては、
以下のことが考えられる。
・
6.6kV 入力となることが想定されるので、スイッチング素子の直列接続が必要とな
108
ることや、高調波低減のためにもマルチレベル変換器方式の適用などが考えられる。
・
直流電圧が高くなる場合での二次電池等と電力変換器のインターフェイスとして
DC/DC コンバータの設置が考えられる。
・ 交流系統への直流電流、零相電流の流出防止及び地絡時の保護方式に配慮した検討
が考えられる。
〇
マトリクスコンバータを高品質電力変換装置へ適用する場合には、高周波変圧器によ
る絶縁方式を用いる場合の高周波から商用周波数に変換する変換器や、高品質 B1 を供給
する場合の常時電圧変動を補償するための小容量直列補償インバータへの適用が考えら
れる。
ⅳ
直列補償インバータ制御方法の高度化
<課題>
〇
高品質 B1、B2、B3 を供給する電力変換器には直列補償方式が採用されているが、従来
の技術では直列補償インバータは入力電圧に同期した電圧を入力電圧と平行のベクトル
で重畳させて入力電圧を補償している。この補償動作に伴い有効電力の授受が発生する
が、双方向コンバータはこの電力を入力側に回生させる制御も同時に行う必要があり、
双方向コンバータは回生電力分の容量が増大することが考えられ、双方向コンバータの
容量を増加させない制御方法の確立が必要となる。
<解決の方向性>
〇
直列補償インバータの電圧補償方式では、負荷電流に直交させて電圧を補償すること
も可能であり、この場合には、有効電力の授受は発生せず、回生電力が生じないのでそ
の分双方向コンバータの容量が減少する。このような制御方法の検討に加えて、実運用
を図るためには試作評価の実施も考えられる。
表 4.2.4 直列補償インバータの制御方法の高度化
従来方式
高度化方式
電圧変動補償
入力電圧と平行に補償電圧を重 負荷電流に直交させて補償
方式
畳
電圧を重畳
電圧変動補償に
電圧変動補償に伴うパワーフロー
入力
負荷
伴うパワーフロー
無し
で表示
~/-
-/~
双方向
コンバータ
直列補償
インバータ
双方向コンバー パワーフローを入力側に回生
タの動作
双方向コンバー 回生電力分増大
タの容量
②
パワーフローの回生不必要
増大なし
高品質電力供給装置を含めたシステム部に関する技術課題
1) 機能統合型、機能分散型に共通
ⅰ
高品質電力供給装置 2 次系の電力供給品質維持方法の確立
<課題>
〇
重要負荷は一般的に半導体機器であることから、高品質電力供給装置から重要負荷間
109
の配電線の長距離化により、半導体機器から高調波電流が発生し、配電線のインピーダ
ンスにより電圧が歪み、重要負荷の運転に支障をきたす問題が想定される。高品質電力
供給装置 2 次系の電力供給品質維持方法の確立が必要となる。
<解決の方向性>
〇
配電線の長距離化による電力供給品質への影響度を定量的に検証することが考えら
れる。また、電力供給品質への影響が著しい場合には、配電線に高調波フィルターの設
置が必要となる場合も考えられるが、電力供給品質への影響度合いの制約の中で、最も
効果が期待できるフィルター設置場所の選定及びフィルターの容量を最小化する最適
設計技術の検討も考えられる。以上のような取り組みに加えて、実際に適用する場合に
は、高品質電力供給装置及び 2 次系を含めたトータルな検討に加えて試作評価の実施も
考えられる。
ⅱ
需要家側事故の波及防止方法の開発
<課題>
〇
一部の需要家で事故が発生した場合においても他の需要家に対して連続かつ、安定し
た電力を供給するための技術開発が必要である。
<解決の方向性>
〇
需要家側事故の波及防止方法にはバイパス切換方式、個別フィーダ切換方式、フィー
ダ高速遮断方式、限流遮断方式の各種の方式が考えられ、需要家側事故の波及防止に適
した方式については詳細な比較検討(供給信頼性、損失、コストなど)及び設計に加え、
実際に適用する場合には高品質電力供給装置を含めたトータルな試作評価が必要であ
る。なお、限流遮断方式としては、超電導限流器の適用なども考えられる。
ⅲ
高品質電力供給装置と分散型電源との連系制御方法の開発
<課題>
〇
電力系統が停電時において分散型電源と連系して各種の品質の電力を供給するモー
ドが発生するが、分散型電源の負荷変動により電圧変動、周波数変動、位相ジャンプが
発生すると、双方向コンバータ(高品質 B1 電力供給装置、機能統合型高品質電力供給
装置)が過電流停止する問題が想定され、双方向コンバータの停止を防止する制御方法
の開発が必要である。
<解決の方向性>
〇 この防止対策としては、分散型電源と双方向コンバータ(高品質 B1 電力供給装置、
機能統合型高品質電力供給装置)の干渉を極力排除する制御方法の検討に加えて、実際
に適用する場合には分散型電源を含めたトータルな制御方法の開発、試作評価の実施も
考えられる。
ⅳ
高品質電力供給装置と回転機負荷との協調制御方法の確立
<課題>
〇
電力系統が瞬低又は停電時において、高品質電力供給装置の双方向コンバータは高速
遮断器を解放し、双方向コンバータをインバータモードに切替え自立運転に移行するが、
重要負荷に回転機負荷があった場合には回転機負荷の残留電圧の振幅、位相角が変動し
ていることが想定される。従って、双方向コンバータの自立運転移行時に過電流が流れ
110
自立運転に移行できないことが想定され、双方向コンバータの自立運転を可能とする制
御方法の確立が必要となる。
<解決の方向性>
〇
回転機の残留電圧の振幅、位相角の変動量を極力少なくするために、双方向コンバー
タの自立運転移行を高速にする制御方法の確立が考えられる。また、実際に適用するた
めには回転機負荷の特性を含めたトータルな制御方法の検討に加え、試作評価の実施も
考えられる。
ⅴ
直流給電方法の検討
<課題>
〇
直流給電は、一ビル内の電力供給として高信頼性を要求する通信用設備への給電方式、
及び、直流入力仕様小容量コンピュータ(サーバ)において適用されている。今後、こ
れらの直流入力仕様の機器への電力供給、太陽光発電や燃料電池発電の様な直流発電に
よる分散型電源の適用も考えられることから、特定地域での電力供給を念頭に置き直流
給電方法の検討が必要である。
<解決の方向性>
〇
特定地域での電力供給に即したシステム構成、電力変換器、配電方式(遮断方式を含
む)、直流給電などの検討が必要である。なお、システム構成の検討においては超電導
利用も考えられる。
(2) 分散型電源の統合制御システム
①
ハード面
1) 分散型電源通信インターフェ-スの開発
<技術課題>
〇
制御センターから各分散型電源間には、制御パターンや力率情報など制御に必要な情報
のやり取りを行う必要があることから、分散型電源における情報の送受信を担う分散型電
源通信インターフェ-スの開発が必要である。
<解決の方向性>
〇
安価なシステム構築のためには、分散型電源に設置する通信インターフェ-スの低コス
ト化は重要な課題である。例えば、現状の制御部の改良を始め、量産化等が期待できるな
らば、インターフェースとインバータを一体化した装置なども考えられる。また、インタ
ーフェ-スについては、標準化・共有化についても検討する必要がある。
2) 系統の情報を計測する計測センサの開発
<技術課題>
〇
随時制御において、系統の負荷、電圧等の状態変化や事故時、系統の切替による状態変
化を把握するための計測センサの開発が必要である。
<解決の方向性>
〇
配電線は環境条件が厳しいことから、耐候性に優れた装置が求められること、また、十
分な制御効果を得るためには、センサの計測精度が重要となる。センサとしては、光セン
111
サをはじめ各種のセンサがあり、使用条件やセンサの性能を検討した上での制御に適する
センサの選定・開発が考えられる。
3) 制御による効果を把握するためのメータ等の開発
<技術課題>
〇
現在の電力会社と分散型電源間の取引には、太陽光発電システムでは有効のみの電力量
計が、一方、回転機では、有効、無効電力量計が設置されている。今回の制御において、
制御効果に対する需要家への対価補償が考えられ、これらの取引を行うための多機能なメ
ータ類の開発が必要となる。
<解決の方向性>
〇
これらのメータは需要家が設置すると考えられるが、需要家サイドの負担低減のために
も安価なメータの開発が重要となる。また、電力量のみならず需要家へ計測情報を提供で
きるなど付加価値を付けたメータの開発(計測ソフト開発を含む)も考えられる。
②
ソフト面
1) システム制御に関する事項
ⅰ
パターン制御における制御パターン等の作成
<技術課題>
〇
パターン制御では、系統の実態に応じた制御パターンが重要となる。1 年を通じて制
御を満足するパターンの作成が必要である。
<解決の方向性>
〇
系統のロードカーブの実態に基づくパターンの作成が考えられるが、パターンの数や
季節変化等のパターン変更のタイミングなどシミュレーション等により作成していくこ
とが考えられる。
ⅱ
随時制御における制御手順の検討
<技術課題>
〇
随時制御は系統の状態変化に際して、分散型電源の力率を変えるものであるが、状態
変化量と分散型電源の力率調整量を計算するソフトが必要である。
<解決の方向性>
〇
系統諸元を把握したシミュレーションなどにより計算システムを確立していくことが
考えられる。
2) システム運用に関する事項
ⅰ
作業時及び事故時等の系統状態変化時の対応手順
<技術課題>
〇
系統の状態変化時における分散型電源の統合制御停止のロジック(ルール)を検討す
る必要がある。
<解決の方向性>
〇
現状における運用状況の調査を行ない系統異常時の運用方法、分散型電源の停止ルー
ル、単独運転防止などの検討を行なうことが考えられる。
112
ⅱ
システム停止・ハード故障時のシステムのバックアップ対応
<技術課題>
〇
システム停止・ハード故障時の状態変化時におけるシステムバックアップのための対
策検討が必要である。
<解決の方向性>
〇
上記の対策としては、分散型電源の統合制御から個別制御(通常モード)への切替や
分散型電源制御センター制御装置の 2 重化等が考えられる。また、分散型電源側での緊
急停止方式についても現状設備の対策状況を踏まえた検討が考えられる。
3) その他
ⅰ
最適制御のための要件検討と実証試験による検証
<技術課題>
〇
今回検討したシステムは、シミュレーションに基づいて制御効果の可能性を評価した
ものであることから、実際にはシミュレーションの結果が確実に得られるかなど実際の
システムを構築しての実証評価が必要である。
<解決の方向性>
〇
実証試験では、特に、系統側の要請に基づきどれだけの効果が得られるかなどの検証
が必要である。現在、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)において「新エネ
ルギー等地域集中実証研究」が進められているが、この実証試験により、系統側で必要
とする調整量に対する制御方法や調整量に合わせた分散型電源の制御(力率制御、制御
対象の数、容量、分散型電源のモデリング)、分散型電源の実状(種類、容量、導入形態
等)に即した制御対象、制御方法の実証試験などを行っていくことを期待する。
(3) 電力系統制御システム
①
樹枝状系統、ループ系統共通
1) ハード面
ⅰ
系統の情報を計測する計測センサの開発
<技術課題>
〇
電圧制御を行う上で、系統の負荷、電圧、電流、力率等の状態変化や事故時、系統の
切替による状態変化を把握するための計測センサの開発が必要である。
<解決の方向性>
〇
配電線は環境条件が厳しいことから、耐候性に優れた装置が求められること、また、
十分な制御効果を得るためには、センサの計測精度が重要となる。センサとしては、光
センサをはじめ各種のセンサがあり、使用条件やセンサの性能を検討した上で制御に適
したセンサの選定・開発が必要となる。
ⅱ
制御機器異常時等のバックアップ装置の開発
<技術課題>
〇
制御機器を用いた配電線の電圧調整時において、制御機器単体の不良や通信線の異常
により、制御機器の制御不能な場合においては、制御を中断し、適切な電圧を維持する
113
ためのバックアップ装置が必要となる。
<解決の方向性>
〇
バックアップ対策としては、常時通信システムにより応答している場合(遠隔制御あ
り)と自律的に動作(遠隔制御なし)する機器とでは、対策が異なると考えられる。通
信システムを介する場合は、通信異常など通信状態変化を認識した場合に制御機器その
ものを停止するロジックが考えられる。一方、自律的に稼動する機器は、自己の異常を
検出する方法、緊急停止機能の判定ロジック、及び当該機器以外の対策機器での対応方
法などの検討が考えられる。
ⅲ
短絡容量、高調波の増大に対する対策
<技術課題>
〇
分散型電源の系統連系の増大による短絡容量、高調波の増大により、遮断器等が遮断
不能となる場合や高調波電圧ひずみ等の発生が予想されることから、短絡容量、高調波
の増大に対する対策の検討が必要である。
<解決の方向性>
〇
短絡容量、高調波の増大に対する対策としては、系統側での対策や個々の分散型電源
での対策が考えられる。短絡容量対策としては超電導限流器、高調波対策としてはアク
ティブフィルター機能付インバータなどの適用も考えられる。
2) ソフト面
ⅰ
システム制御に関する事項
a 複数機器の協調制御
<技術課題>
〇 SVC の複数台の適用、SVC と SVR の併用など異なる機器を組合せる方法などを適用
する場合、制御分担、ハンティング防止、機器間の時間協調など協調制御方法の確立
が必要である。
<解決の方向性>
〇
複数台の機器を組合せる場合は、同一機種の場合と異種の場合があり、特に異種の
組み合せにおいては、起動のタイミングなど機器の応答特性と制御の分担が重要であ
る。また、通信システムを活用する場合は、その応答も加味する必要がある。以上の
点を踏まえ、今後、総合的に検討を進めることが重要である。
ⅱ
システム運用に関する事項
a 現状の配電線運用との協調
<技術課題>
〇
本システムは現状の配電系統に適用されることから、保護装置の運用、配電自動化
システムとの協調、事故時の復旧処理など現状の配電系統運用との協調を検討する必
要がある。
<解決の方向性>
〇
特に、太陽光発電の日射急変による出力変動及び保護装置の誤動作による一斉脱落
などの系統状況急変時には、電圧の適正な制御の観点から高速で連続的な無効電力の
制御が必要となることが予想される。
114
3) その他
ⅰ
最適制御のための要件検討と実証試験による検証
<技術課題>
〇
系統の電圧調整については、あらかじめ定められた電圧(基準電圧)に対して機器を
稼動させる必要があり、機器の調整能力と系統側が必要とする調整量(系統調整量)か
らどの機器をどれだけ稼動させるかなどのロジックの検討が必要である。
<解決の方向性>
〇
電圧制御量にあわせて機器を稼動させる場合では、機器の調整能力と系統調整量から
どの機器をどれだけ分担させるかを判断する基礎的なデータの蓄積と判定ロジックの開
発が必要となる。これらは、系統の状態変化を踏まえたシミュレーション等により検討
し、更に機器の性能を踏まえた実証試験により検証することが考えられる。
②
ループ系統
1) ハード面
ⅰ
ループ用開閉器、ループコントローラの開発
<技術課題>
〇
配電系統をループ運用するには、連系点に適用する高速遮断器やループコントローラ
の開発が必要である。
<解決の方向性>
〇
ループ用開閉器は変電所や需要家に設置された開閉器と協調の取れた性能を必要とす
る。一方、ループコントローラは、配電線に対して直列に接続される機器であり、信頼
性、スイッチングロス低減など機器性能を向上させるためにも電力変換装置の技術動向
を踏まえた検討が重要である。また、両装置は、高速化、小型軽量化、高信頼度化、低
コスト化などが重要な課題となる。これらの課題の解決には、試作機等を製作し実証す
ることも考えられる。
2) ソフト面
ⅰ
システム制御に関する事項
a. ループコントローラの制御方式の確立
<技術課題>
〇
電力系統制御システムにループ系統を採用する場合、ループ系統の運用実績がこれ
までにないことから、構成そのものが主要な課題となる。具体的には、短絡容量増大
の抑制対策、最適ループ点・形態の検討、事故時の保護装置の動作・信頼度の問題な
どの諸課題がある。これらを踏まえたループコントローラの制御方式の検討が必要で
ある。
<解決の方向性>
〇
ループ系統の運用を検討するにあたっては、実際の配電系統の構成、運用方法も考
慮しつつ、小規模モデルから検討を進めることが考えられる。
115
ⅱ
システム運用に関する事項
a. ループ運用時の保護対策
<技術課題>
〇
ループ系統における保護対策面では、事故の波及や過電流継電器や地絡方向継電器
などの継電器の感度低下を招くことが考えられることから、これらの対策面について
も検討が必要である。
<解決の方向性>
〇
これらの検討にあたっては、系統を模擬したシミュレーションや実証試験などによ
り保護対策を検討していくことも考えられる。
(4) まとめ
新システムの実現に向けて、技術課題を網羅的に整理し、これらの課題を解決する方向性につ
いて現状の技術動向を踏まえ整理したが、3 つのシステムに共通する課題としては、「制御・通信
技術」、「各種の計測・計量装置」、
「電力変換装置」が重要な技術課題と考えられる。
今後、具体的な技術開発計画を策定することを念頭に置き、技術の重要性、技術的解決の可能
性、コスト的な実現性を踏まえた技術課題の優先順位付けを行うとともに技術課題の詳細検討、
設計等のハード面での検討や制御・運用ロジックなどソフト面での検討を行なうことが必要であ
ると考える。
116
第5章
今後の新システムの方向性
第 2 から第 4 章までの検討結果に基づき、「品質別電力供給システム」
、「分散型電源の統合制御
システム」、
「電力系統制御システム」の今後の方向性について整理した。
5.1 品質別電力供給システム
今回、機能分散型、機能統合型の 2 つのシステムについて検討を行ない、技術面、経済性から
比較評価を行った。その結果、技術面において、信頼性では、大きな差異はなかったが、拡張性、
技術の難易度では、機能分散型が優位で、設置性では機能統合型が優位であった。また、経済性
では、機能分散型は、高品質 A に供給を行なう場合に優位、機能統合型は、高品質 A、B1 ともに
供給を行う場合に優位、高品質 C の差異はないとの結果を得た。
これらのことから、技術面では両システムともそれぞれ特徴があり、導入対象地域の電力供給
品質メニューに対する需要によりシステムが選定されることや、コスト面でも実現の可能性があ
ることから、両システムの技術を確立しておく意義は十分にあるものと考えられる。
今回は分散型電源として回転機系を主に検討対象としたが更なる実現の可能性を検討するため
にも、燃料電池等をはじめとした分散型電源の活用や直流給電方式についても検討が必要である
と考える。
本システムの基本構成は、電力変換器、二次電池等を組み合せたシステムであり、これらの機
器単体は既存の機器を利用できるが(機能統合型では電力変換器、二次電池部を統合する装置開
発が必要である。)、これらを多数組み合せて信頼性の高いシステムを技術的に確立するとともに、
需要家の電力供給品質ニーズへの適合性や経済性といったサービス提供事業の成立性を検証する
ためには、今回検討したプラットフォームシステムの基本設計をベースとした実証試験による検
証が必要であると考える。
5.2 分散型電源の統合制御システム
分散型電源の統合制御システムの制御方式としては、パターン制御と随時制御について、制御
対象としては、太陽光発電、回転機についてシステムの検討を行い、統合制御による系統電圧の
調整幅の評価を行った。
まず、制御方式としては、分散型電源制御センターを設置し随時制御を行うシステムが有効で
あることが明らかとなった。太陽光発電、回転機での制御では、対象となる配電系統の線路条件
により効果が異なるが、ある程度の量を統合すれば系統電圧の調整に寄与できる可能性があると
の結果を得た。これらのことから、今後、制御ロジック、制御側の電圧調整要求に対するシステ
ムの対応性などの技術的な確立が必要であるが、経済的な観点からも系統の電圧調整対策として
の可能性はあると考えられる。
但し、住宅地域系統の低圧系統に連系される太陽光発電は、それ自身が系統連系により系統の
電圧上昇(特に低圧系統)につながる場合があり、制御では系統の電圧を下げる効果が主体であ
117
る。一方、高圧系統に連系される回転機は、自身の系統連系による電圧上昇は低圧換算値で太陽
光発電に比較して小さく、また、仮に影響が出ても回転機の有効電力出力等を調整できることか
ら、太陽光発電よりも系統への効果が高いものと考えられる。
なお、今回の検討は、典型的な住宅地域系統モデルと商業地域系統モデルを採用し、シミュレ
ーションによるシステムの系統への効果を傾向として得られたものであることに留意する必要が
ある。例えば、力率値の設定は分散型電源毎で同一の設定としたが、全体システムの最適化の観
点から連系されている場所により違った設定とすることや、制御対象として燃料電池をはじめと
した他の分散型電源の追加、需要家毎の負荷特性の設定などを加味した詳細シミュレーション評
価など、更なる実現の可能性を踏まえた検討が必要である。あわせて、今回は検討の対象外とし
た自律分散制御の可能性等についても検討が必要と考える。
統合制御によりある程度の効果が期待できるものと考えられるが、今回の結果や課題の検討を
整理し、実証試験による検証等により、制御効果の把握及び技術の確立を図ることが必要である。
5.3 電力系統制御システム
電力系統制御システムは、現行方式をベースにした対策技術及びループ方式を対象にシステム
の検討を行ない、分散型電源の導入に伴う系統側での設備費用と分散型電源の導入量の相関によ
り対策設備費用と導入量に関するシステムの優位性を評価した。その結果、分散型電源の導入量
が小さい場合は、現行方式をベースにした対策技術が優位、分散型電源の導入量が大きい場合は、
ループ方式での対策が優位であることがわかった。
しかしながら、分散型電源の導入がどのように進むかによりシステム選定が変わることも考え
られることや分散型電源の系統連系量が増えた場合には、電圧変動のほか短絡容量、高調波の増
大や単独運転防止などの課題があること、ループ方式では保護協調の課題があることから、これ
らについての対策を含めた検討が必要である。
今回の検討結果は、典型的な配電線モデル系統を対象にして得られたものであるため、今後、
更なる技術開発の方向性を検討する上でも対象とする分散型電源や系統モデルなどの条件を幅広
く設定した詳細なシミュレーションを行ない、より実態に近い系統での分析・検討が必要である。
また、今回のシミュレーションは静的シミュレーションであり、システムの実用化のためには、
系統状況急変時などのシステム応答、複数対策機器の協調制御、ループ系統の適用など動的シミ
ュレーションによる分析・評価も重要である。
これらの検討結果を踏まえ、電力系統制御システムとして適する対策技術を選定し、実証試験
による検証等により、制御効果の把握及び技術の確立を図ることが必要である。
118
おわりに
-新システムの実現に向けて-
新電力供給システム技術分野は、系統制御技術、電力貯蔵技術、分散型電源関係の各種技術等、
幅広い技術分野から構成されており、これらを支える要素技術も多種多様である。特に、近年、
分散型電源の導入が進む中、分散型電源の系統連系による系統電力の品質・供給信頼度の確保の
問題等が指摘されており、需要家及び供給事業者の双方に便益をもたらす電力供給システム技術
戦略の構築が喫緊の課題となっている。また、電力自由化の進展やエネルギー産業の構造変化、
情報技術の急速な進展や分散型電源の普及への対応など、電力技術を取り巻く環境は一層急速に
変化しつつある。
これまでの検討や電力産業を取り巻く環境が急速に変化しつつある状況を踏まえ、「電力ネッ
トワークシステムの将来像」としてまとめられた「品質別電力供給システム」、「分散型電源の統
合制御システム」、「電力系統制御システム」を対象に効果的な技術開発の実施など技術的課題を
解決するための具体化方策について、電力技術に係る有識者の方々に御参集いただき、様々な視
点からの議論を展開していただいた。
本報告書は、これらのシステムを実現していくため、シミュレーション等による技術的な検討、
システムの市場性・経済性の評価を行うとともに、技術課題と解決の方向性を網羅的に整理した
ものである。
しかしながら、ここで実施したシミュレーションは、可能な限りシミュレーション条件を整理
して分析を行なったものであるが、実用システムを目指すためには、より実態に近い配電線モデ
ルや今回実施しなかった燃料電池をはじめとした分散型電源等を考慮した詳細シミュレーション
等での分析・検討を行なう必要がある。更に、これらの検討結果を踏まえ、実証試験等による技
術評価が重要である。
最後に、本研究会の趣旨である「新電力ネットワークシステムの将来像」実現化のためには、
産学官連携の下、多種多様な企業が参加・協力して、情報交換、共同研究、新ビジネスモデルの
創出等を促していくことが重要である。今後、このような取り組みを進めていく際、本研究会で
の様々な意見、提案等を十分に考慮し、適切に反映することが望まれる。
「新電力ネットワークシステム研究会」委員名簿
委 員 長:正田 英介
東京理科大学 理工学部 電気工学科 教授
委
関西電力(株) 支配人 研究開発室長
員:阿部
健
岩井 博行
大阪ガス(株) 本社支配人 理事
大橋 孝之
日本電池(株) 太陽光発電推進センター 主査
大和田野 芳郎
独立行政法人 産業技術総合研究所 電力エネルギー 研究部門長
岡本 洋三
東京ガス(株) 役員待遇・エグゼクティブ・スペシャリスト エネルギー営業本部 技術統括
小田 誠司
(財)電気安全環境研究所 連系評価グループマネージャー
川原 裕之
(株)エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ パワーソリューション事業推進本部 副本部長
河村 篤男
横浜国立大学大学院 工学研究院 教授
熊谷
電気事業連合会 技術開発部長
鋭
佐々木 三郎
(財)電力中央研究所 狛江研究所 参事 副所長
下村 哲朗
三菱電機(株) 社会eソリューション事業所
相馬
勲
公営電気事業経営者会議 専務理事
武田
勉
(株)エネット 取締役 営業本部長
システムインテグレーション部
電力技術担当部長
玉本 雅子
(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 副会長
中村 成人
(株)ユーラスエナジージャパン 代表取締役 社長
名取 一雄
新エネルギー・産業技術総合開発機構 新電力技術開発室長
長谷川 淳
北海道大学 大学院 工学研究科 システム情報工学専攻 教授
原
東京電力(株) 技術開発本部 開発計画部 部長代理
築志
松井 賢一
龍谷大学 国際文化学部 国際文化学科 教授
宮坂 忠寿
電源開発(株) 審議役
諸住
(株)三菱総合研究所 エネルギー政策研究部 研究部長
哲
横山 明彦
東京大学 大学院
工学系研究科
電気工学専攻
教授
渡辺 健一郎
大成建設(株)エンジニアリング本部 計画グループ チーフエンジニア
(敬称略
事 務 局:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課技術室
経済産業省原子力安全・保安院電力安全課
財団法人エネルギー総合工学研究所
50 音順)
「新システム技術評価分科会」委員名簿
主
査:横山 明彦
東京大学 大学院 工学系研究科 電気工学専攻 教授
委
員:石井
格
産業技術総合研究所 電力エネルギー部門 総括研究員
大山
力
横浜国立大学大学院 工学研究院 教授
加藤 高行
新エネルギー・産業技術総合開発機構 新電力技術開発室 主任研究員
河野 良之
三菱電機(株) 社会eソリューション事業所
(途中退任:
変電計画課
小玉 博一
伊庭
健二
三菱電機(株)
システムインテグレーション部 系統解析技術課
電力システムエンジニアリングセンター
課長
系統変電技術部
課長)
シャープ(株) ソーラーシステム事業本部 ソーラーシステム事業部 インバータ開発
プロジェクトチーム 係長
斎藤 浩海
東北大学 大学院 工学研究科
進士 誉夫
東京ガス(株) エネルギー企画部 エネルギー計画グループ 課長
関田 昌弘
電源開発(株)
高須 伸夫
東京電力(株) 技術開発本部 開発計画部 研究企画グループ マネージャー
田中 和幸
(財)電力中央研究所 狛江研究所 需要家システム部長
仁井 真介
富士電機(株) エネルギーソリューション事業部 電力ソリューション第二部
福田 秀樹
関西電力(株) 研究開発室 技術調査グループ チーフマネジャー
望月
電気事業連合会 技術開発部 副部長
東
山岸 正幸
経営企画部
技術社会システム専攻 教授
課長
担当課長
(株)エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ IT&インテグレーション事業
推進本部 ITソリューション部長
山口
誠
大阪ガス(株) エンジニアリング部 電力ソリューションチーム マネジャー
山下 暢彦
(株)エネット 営業本部 副部長
吉田 光信
公営電気事業経営者会議 主幹
(途中退任: 原戸 博幸
若尾 真治
公営電気事業経営者会議 主幹)
早稲田大学 理工学部 電気・情報生命工学科 助教授
(敬称略
事 務 局:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課技術室
経済産業省原子力安全・保安院電力安全課
財団法人エネルギー総合工学研究所
50 音順)
系統
「新システム社会・経済性分科会」委員名簿
主
査:長谷川 淳
委
員:浅野 浩志
小田 誠司
北海道大学 大学院 工学研究科 システム情報工学専攻 教授
(財)電力中央研究所 経済研究所 上席研究員
(財)電気安全環境研究所 連系評価グループマネージャー
進士 誉夫
東京ガス(株) エネルギー企画部 エネルギー計画グループ 課長
高須 伸夫
東京電力(株)技術開発本部 開発計画部 研究企画グループマネージャー
中西 要祐
富士電機(株) 事業開発室 ITソリューション部 担当部長
難波 伸次
公営電気事業経営者会議 主幹
松川
勇
武蔵大学
望月
東
電気事業連合会 技術開発部 副部長
経済学部
教授
矢野 信彦
(株)エネット
山口
大阪ガス(株) エンジニアリング部 電力ソリューションチーム マネジャー
誠
技術本部
部長
(敬称略 50 音順)
事 務 局:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課技術室
経済産業省原子力安全・保安院電力安全課
財団法人エネルギー総合工学研究所
「新システム基盤技術分科会」委員名簿
主
査:佐々木 三郎 (財)電力中央研究所 狛江研究所 参事 副所長
委
員:石井
格
独立行政法人 産業技術総合研究所 電力エネルギー研究部門 総括研究員
伊瀬 敏史
大阪大学大学院 工学研究科 電気工学専攻 教授
加藤 高行
新エネルギー・産業技術総合開発機構 新電力技術開発室 主任研究員
小玉 博一
シャープ(株) ソーラーシステム事業本部 ソーラーシステム事業部 インバータ開発
プロジェクトチーム 係長
進士 誉夫
東京ガス(株) エネルギー企画部 エネルギー計画グループ 課長
芹澤 善積
(財)電力中央研究所 情報研究所 通信ネットワーク 上席研究員
田淵
(株)エネット
昇
技術本部
部長
中村 知治
(株)日立製作所 電機システム事業部 電機ソリューション本部 電源システム部 配電担当部長
藤井 達雄
三菱電機(株)計測制御製造部 技術第一グループ 電力量計担当課長
山口 浩史
電気事業連合会 技術開発部 副部長
山口 雅英
日本電池(株)電源装置生産カンパニー 技術部 研究開発グループ マネージャー
(敬称略 50 音順)
事 務 局:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課技術室
経済産業省原子力安全・保安院電力安全課
財団法人エネルギー総合工学研究所
「品質別電力供給WG」委員名簿
主
査:大山
力
委
員:伊瀬 敏史
市川 元政
横浜国立大学大学院 工学研究院 教授
大阪大学大学院 工学研究科 電気工学専攻 教授
公営電気事業経営者会議
(群馬県 企業局 事業部 発電課 企画調査室 企画調査グループ 副主幹)
今吉 寛之
三菱電機(株) 受配電システム事業所 受配電システム部 東部受配電システム計画課 専任
小林 広武
電力中央研究所 狛江研究所 需要家システム部 上席研究員
瀬良田 卓嗣
(株)エヌ・ティ・ティ ファシリティーズ パワーソリューション事業
推進本部 エンジニアリング部 技術開発室長
塚田 龍也
東京ガス(株) R&D企画部
仁井 真介
富士電機(株) 電力システム事業部 電力ソリューション第二部 担当課長
二見 基生
(株)日立製作所 日立研究所 情報制御第5研究部 主任研究員
望月
電気事業連合会 技術開発部 副部長
東
フロンティア研究所 主幹研究員
(敬称略 50 音順)
事 務 局:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課技術室
財団法人エネルギー総合工学研究所
「分散型電源の統合制御WG」委員名簿
主
査:若尾 真治
早稲田大学 理工学部 電気・情報生命工学科 助教授
委
員:石川 忠夫
電力中央研究所 狛江研究所 需要家システム部 上席研究員
井上 文隆
公営電気事業経営者会議(神奈川県企業庁 利水局 発電課 課長代理)
大野 康則
(株)日立製作所 電力・電機開発研究所 第1部 主任研究員
小島
富士電機(株) 事業開発室 ITソリューション部 主任
浩
田所 通博
三菱電機(株)
中井 裕二
大阪ガス(株) エンジニアリング部 電力ソリューションチーム 係長
堀尾 素博
(株)エネット 技術本部 課長
山口 浩史
電気事業連合会 技術開発部 副部長
社会eソリューション事業所 システムインテグレーション部 社会SI第一課 課長
(敬称略
事 務 局:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課技術室
財団法人エネルギー総合工学研究所
50 音順)
「電力系統制御WG」委員名簿
主
査:斎藤 浩海
東北大学 大学院 工学研究科 技術社会システム専攻 教授
委
員:伊藤 俊之
東京ガス(株) エネルギーソリューション事業部 課長
胡内 勝彦
関西電力(株) 研究開発室
(途中退任:
加藤
小林 広武
電力中央研究所 狛江研究所 需要家システム部 上席研究員
小山 大樹
大阪ガス(株) エンジニアリング部 電力ソリューションチーム
中西 要祐
富士電機(株) 事業開発室 ITソリューション部 担当部長
中村 知治
(株)日立製作所 電機システム事業部 電機ソリューション本部 電源システム部 配電担当部長
馬場 旬平
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 助手
藤原 修平
三菱電機(株) 社会eソリューション事業所 システムインテグレーション部 社会SI第一課 主事
(途中退任:
伊庭
変電計画課
本橋
準
正直
健二
技術調査グループ マネジャー
関西電力(株) 研究開発室
三菱電機(株)
技術調査グループ マネジャー)
電力システムエンジニアリングセンター
系統変電技術部
課長)
東京電力(株) 配電部 配電企画グループ 副長
矢野 信彦
(株)エネット 技術本部 部長
山口 浩史
電気事業連合会 技術開発部 副部長
(敬称略 50 音順)
事 務 局:経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課
経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課技術室
財団法人エネルギー総合工学研究所
系統