フルオブスターズ 【前夜】 筑波山。 頂上の駐車場。 夜の漆黒。 古い

フルオブスターズ
【前夜】
筑波山。
頂上の駐車場。
夜の漆黒。
古いシトロエンBX。
白髪の男。
長身、骨太にして痩身。
若草色のストライプのシャツ。
ジーパン。
薄茶のセーター。
見上げれば星空。
見入ることで陥れる静寂。
車が一台、麓から上がってくる。
Alpine A110。
BXの隣に停車。
町田「教授、どうぞ。」
いかにも真面目そうな男。
貴族的な顔。
駅前で買って来たカフェラテを差し出す。
受け取る。
手が温まる。
町田「いよいよですね。二人はホテルに付いたそうです。」
星々。
子供のころ。
光なんて、わずかな存在期間しか許されない、はかない現象だとばかり思っていた。
いや、いや。
光のほうこそヒトを・・。
その瞬きは脳の回線へ。
思いはめぐる。
種として歩き始めたヒト。
足りないものを求めつづけた。
足りないことを許さぬのか。
無を埋めた。
ご間化しでも、それを選んだ。
町田「教授?」
教授「数を数えていた。」
表情を読む。
町田「星の数ではありませんね?」
教授「ヒトが星を見て思い付いた間違いの数を数えていた。私の知るだけだがね。」
町田「我々の成すことは、所詮ご間化しでしょうか。」
すこし風、
温い。
【支流 その1】
疾風い!
レンズが照り返す日の光が稲妻を成す。
携帯電話のボディからにじみ登る煙。
空気との摩擦で表面一皮、焦げたか?
その少女。
名はハナ。
量の多い髪。
どこにでもいそうな顔立ち。
身長150cm。
一見、「その他大勢」の少女。
彼女は小動物を見ると、反射的に携帯を取りだし、写真を取ってしまうのだ。
0.25秒の早撃ち。
たんこ「な、なに?またレアなナントカ犬?」
身長172cm。
むっちりと立派な太股。
いかにもスポーツ得意そうな、芯のある立ち姿。
声も態度もデカイ。
休み無く騒がしい女。
携帯の画面を横から覗く。
写っていたものはロードレーサー(自転車)に乗った少・・どっち(性別)だ?
狭い肩幅。
細いウエスト。
美少女顔。
しかし雰囲気は少年。
脳内で男・女・男・女と仮説が交互に並ぶ。
男女男女男男女・・
たんこ「ちがうわああぁぁっっ!!」
ハナは黙々と携帯を操作。
たんこ「お?小動物じゃないけど保存するんだ。」
保存先のフォルダは”いぬ”。
ファイル名は”マメ柴、雄、仔犬(ちょーかわいい~).jpg”。
たんこ「本格的にちがうわああぁぁっっ!!」
ハナ「あたしの分類では柴犬なの。」
たんこっ「ぐぎゃーっ!!必殺!!卍地獄車ああっっ!!」
後ろから抱き抱え、ジャンプ。
きりもみ回転。
頭から落下。
たんこ「威力は40%に抑えたわ。」
ハナ「げヴふうっ!!」
ゆらりと立ちあがり、横たわり痙攣するハナを見る。
たんこ「これで説明の必要は無いわね。貴方がさっき写したのは人間よ。」
ハナ「あれわ・・柴いn」
たんこ「るがああっっ!!じゃ!あれわ豚で!あっちわ猿かぁあっ!世界はでっかい動物園ですか
っ!!」
指差したおばちゃんとおじさんに睨まれた。
マクドナルドに移動。
ハナの隣に座り、背を向けるたんこ。
説明(必殺技)の衝撃で、長髪をまとめている筒状の布がずり落ちている。
直して欲しいのだ。
その柄。
あいかわらず趣味悪いわね。
本人は手をゆらゆらと動かし、奇妙なポーズ。
必殺技を繰り出すとき役に立つらしい。
飽きたのか、ハナの携帯の画像を物色。
さっきの・・
あらためて見ると、微妙に見覚えがある。
たんこ「あれっ・・コイツ、瀬瀬?」
ハナ「し、しってるのっ?」
ほほう、後ろから身を乗りだしてね。
がっつり食い付きましたね。
たんこ「ふーん。教えて欲しい?」
いやらしいオヤジのごとき目。
ハナ「別に深い意味は・・」
目をそらす。
たんこ「げーしぇーしぇー!!ひっ、ひっ、ひっ。」
膝をたたいて笑う。
ハナ「髪止め、直ったわよ。」
対面の席へ戻る。
むすっとポテトをかじる。
たんこ「ウチのクラスだもん。へー、チャリンココゾーだったんだ。影薄いから思い出すのに時間
かかったわー。つか、薄過ぎて制服着てないと性別すら判らんなコイツわ。」
話しを聞くハナの目。
めちゃめちゃ食い付いてる。
たんこ「で、ど・う・し・て・ほ・し・い・の?ヒヒヒヒヒ!!」
ハナ「し、柴の仔犬は絶品なのよっ!尻尾振ってる姿だけで、ご飯3杯はイケるのよっ!」
変な迫力にのけぞる。
たんこ「よ、よく判らないけど。小動物にしか興味のないあんたがね。面白くてしにそうなんです
けど。」
カメラへ振り向く。
激しい集中線。
握り震える拳。
たんこ「このネタ!放すまじ!!」
【本流 その1】
工場。
地下。
高圧線、配管、ネットワークケーブルがひしめき合っている。
その更に下、かすかに差し込む日の光。
一人、積み上げたコンクリートブロックに座る男。
町田「教授。」
3人近付いてきた。
教授「やぁ、すんだのかい。」
非稼働日、ラインは停止している。
場内にいるのは警備員と・・
町田「はい、警備員は全員。」
左側の一人、手に握るナイフに赤黒くこびりつく血。
教授「じゃ、行こうか、」
今日、警備員の他にいるのは、あの研究室の研究員だけ。
白衣を着た仕事中毒の6人。
そこへ向かう教授ら4人。
ただ一箇所、灯りのともるプレハブ小屋。
大音量の音楽。
ラジオやMP3、3つほど同時に流れている。
缶ビール。
酔って、ノリノリで手を動かす。
ある者はカーボンクロスを積層しているう。
ある者はプログラムの修正。
5台のロボットが並ぶ。
全高3~4m。
それは玩具やイベントのマスコットではない。
世界をリードする技術。
共同開発の申し入れは多い。
脅迫まがいのものもあった。
プラチナ級の特許が詰めこまれたプレハブ小屋。
そのドアが爆破された。
ナイフを持った男が煙と共に進入。
あっと言う間に3人、切り裂いた。
他の3人は机の陰に隠れた。
そのうちの一人、楠木。
恩師の顔を確認。
楠木「教授!?」
ゆっくりと手を延ばす。
机の上からヘッドセットを取り、頭に被る。
コントローラーを握りしめる。
銀色に光るロボットが起動。
ジュラルミン製の分厚く硬いボディー、DURA-JACK。
ナイフ使いをねじ伏せた。
胴体を掴み、持ち上げる。
ナイフを突き立てるが、歯が立たない。
拳銃も無駄だ。
楠木「動くなよ。力加減が難しくってね、うっかりすると握り潰してしまうよ。」
それを見て呆れる教授。
教授「まだそのシステムを使っているのか。何をやっていたのだね。ビールに音楽か、”出来る人”
のマネだけは一人前だな。」
楠木「なぜです。なぜ、こんなことを。」
教授「なぜ?なぜ、判っていることを聞くのだね。」
ハッとする。
楠木「全員!ヘッドセットを!!ロボットを守れ!!」
白い小柄なロボットが起動。
マグネシウム製の超軽量ボディー、MAG-HF。
機敏で身軽な動き。
体操選手のような体さばき。
機材を乗り越え進む。
停止中のTITANIOとCARBON-LOGICを担ぎあげた。
そして、最後の1台。
最も人に近い形をした美しいロボットが起動。
スレンダーで強靭。
クロモリ製。
Cro-Mo COMP。
動きもしなやかで人に近い。
教授は逃げも抵抗もせず、捕まった。
無表情。
楠木「二人とも、もう、動けないぞ。」
教授「二人?全く、君は昔から事実の確認が甘い。」
教授に眼を奪われている3人の背後。
窓。
拳銃を構えた男。
気付くこともできずに、2人撃たれた。
楠木が狙われる。
DURA-JACKの手。
はじき返される銃弾。
楠木はロボットの後ろに隠れる。
ジュラルミンの拳でプレハブの壁を突き破り、拳銃の男を捕らえる。
絶命した研究員二人。
手から落ちるコントローラー。
裏返しに落ち、レバーが倒れっぱなしになる。
教授を掴んだまま横に進み続けるCro-Mo COMP。
そのままでは柱に激突する。
町田が駆け寄り、コントローラーを拾う。
慣れた手つきで操作し、教授を下ろした。
プレハブ内に散乱する破片。
MAG-HFのヘッドセットとコントローラー。
拾い上げる教授。
教授「もっと進んだシステムを開発していれば、こうはならなかったと思うよ。」
MAG-HFを停止させる。
てっきり、ロボットで反撃をしてくると思った。
楠木は内心ほっとした。
教授「DURA-JACKの手は、左右とも、ふさがっているようだね。他にロボットを動かせる
者もいなさそうだ。私と町田君は自由にさせてもらっていいのかな?」
楠木「いえ、いえ。教授。今、すぐ。」
二人を左腕で抱えようと持ち替えるとき、力加減を誤る。
2人共握りつぶしてしまった。
激しく血が噴出し、銀色のロボットを赤黒く染める。
動揺する楠木。
教授「多くの意味で、極めて不完全だね。」
楠木に歩み寄り、ヘッドセットを外す。
彼は人を殺したショックで動けない。
町田が歩み寄る。
銃口を額に置く。
目をそむける。
引金を引く。
町田「全員そろっていてよかったですね。旧式とはいえ、教授の基礎理論を理解するものは、”こ
ちら側”にはもう、いない。トレーラーにロボットを積みます。」
教授「TITANIOは置いていく。」
町田「理由を聞いてもよろしいですか?」
教授「あれは、動作を人が都度入力してやる必要がある。人の動きを超えられない。超人的な反射
神経のオペレーターが操作すれば別だが、それにしても、たかが知れている。(新しいシステム)
キシリウムには使えない。」
町田「予定には有りませんでした。」
教授「ああ。予定に入れず、そして今、このタイミングで言うつもりだった。」
町田「・・判りました。それでは、この部屋のコンピュータやデータと共に破壊します。もともと、
そちらの方が目的でしたし。ロボットは作れる。」
教授「破壊か、その言葉を待っていた。TITANIOは破壊せず残す。より良い結果、未来のた
めにね。」
町田「使えないロボットを、ですか?」
教授「キシリウムにはね。それと君は、おそらく勘違いをしている。今日は邪魔者を排除しに来た
のではないよ。」
町田「え?」
教授「間違った答えを出す愚か者の口をふさぎ、ヒントを置きに来たのさ。」
DURA-JACKを操作し、ロボットをトレーラーへ。
DURA-JACKとMAG-HFの足をぽんぽんとたたく。
町田「お前達は外装をオリジナルに戻してやるぞ。」
走り去るトレーラー。
炎上するプレハブ小屋。
その前。
やや頼りないデザインのロボットがうつろに立つ。
【支流 その2】
翌日の1時限目終了後、早速ハナがたんこのクラスにやってきた。
目的は瀬瀬たろう。
ハナ「ああっ。いたっ。」
机にうずくまって寝ている。
超スピードで、写真を撮る。
たんこが腕を振りまわしてやって来る。
笑顔で顔を崩して迫り来る。
たんこ「ぎゃっはっはーっっ!!来たわねっ!!」
背中をバンバンと叩き、肩を抱く。
たんこ「じゃあ、早速行くわよ。」
ハナ「え?」
ぐるり回りこむカメラ。
ふり降ろされる腕。
指差す先はたろうさん。
たんこ「突撃よっ!!」
ハナ「えー(テンション低い)」
たんこ「あんたチワワ見たら、人の目気にせず抱きついて、背中といいお腹といいなでまくるでし
ょ。あのテンションを、今、見せなさい!!今!!」
ほほう、そうでしたか。
ハナ「え?いいの!?」
よだれ。
マズった。
たんこ「まって、ちょっぴり訂正するわ。私が言いたかったのはーっって、いねーし、どこいった?」
たろうさんのいる方に顔を向ける。
もう取り付いている。
速えーよ、瞬間移動かよ。
ハナ「きゃーっ!!もんげーきゃばぴーっっ!!」
背中から抱きついて、お腹なでている。
たんこ・たろさん「ぎゃーっ!!」
教室内騒然。
慌ててハナを引き剥がすたんこ。
とりあえずはがい締め。
たんこ「まて、ね、ちょっと、マテ。あのさ、色々すっ飛ばすのやめようよ。判ったから、な。」
目を丸くしてハナを凝視するたろうさん。
可愛い。
ハナは大興奮。
ハナ「よちよーち。おいで、おいでー。」
たんこ「ぎぎぎ、強よぉお・・パねぇし・・くっ。瀬瀬っっ!!とりあえず逃げれっ。んだっ!男
子トイレ辺りにとりあえずずズえ゛え゛え゛」
巨女たんこをちんちくりんのハナが引きずる。
たんこ「ぐわわっ!!ヨリ!ヨリぃー!そこのボケっとした薄いのを早くっ!!」
ヨリ「・・・・」
同じクラス。
頼れるほうの友達ヨリ。
身長156.2センチ。
たろさんの腕を(左手で)引っ張る。
右腕をぐるりと回す。
気付いたたんこ、大慌て。
たんこ「だああっ!!やめっ!!」
右袖から銃口が現れる。
煙幕弾。
教室内、大パニック。
目に染みるし。
たんこ「無駄に護身用品使う癖!ヤメろぉぉおおっ!!」
たろとヨリは廊下へ。
たろさんから漂ってくるエロイ匂い。
ヨリ「・・くっ・・・・」
たろ「?」
不覚にも真っ赤になってしまった。
たろ「何で睨むの?」
ヨリ「勘違いしないで欲しいからよ。」
男子便所の戸を開けようと思ったが、一応、花など恥らっている。
たろうがもたもたと戸を開ける。
トイレから男子生徒Aが出てきた。
はち合わさっているもよう。
出入り口はふさがれた。
たんこを引きずり迫り来るハナ。
ヨリ「預けたわ。」
たろうさんを押し込む。
抱きとめる男子生徒A。
匂いと抱き心地。
潜在意識の奥に眠っている、一生起きるべきではない自分が目覚める男子A。
たんこ「とどめは私の仕事よっ!!」
壁走りで突撃してくる。
シャコン。
ヨリの右袖から拳銃型のスタンガン。
引き金を引くとパチンコ玉大の電導ゴムが飛び出す仕掛。
ゴムは命中すると跳ねずに潰れて、電撃を与えるのに十分な時間を作る。
射程距離は3m、ワイヤーの長さだ。
立ち止まるハナ。
対峙。
たんこっ「必殺!!超電転脚!!」
目の錯覚か!!
稲妻をまとい、回転。
男子生徒Aとたろうちゃんを、トイレの中へ蹴り飛ばす。
男子生徒A・たろう「るぎゃあああっっ!!!!」
一方、ハナ vs ヨリ。
ってゆーか、車D△ロマン調なんですが、いかがされたのですか?
斜に構え目を伏せるヨリ。
ヨリ「フッ、やめておけ。命を無駄にするな。」
上履きを手に、意を決し疾るハナ。
ヨリ「バカが。では望み通り、死を与えてやろう。」
墨汁飛び散り系装飾噴出しで・・
”マンストッパー ハイアウトプット”(商品名兼技名)
イメージ的に書き込まれた背景。
神々しきイカヅチと聖剣の描写。
放たれる、低反発電導ゴム。
ひるみ、止まりかける足を気合で前に進めるハナ。
ハナ「うおおおっっ!!燃えろ!あたしの何かっ。」
バシュ。
ヨリ「な、なにぃっ。」
ハナ、空中の伝導ゴムを上履きで白刃取り。
ヨリ「ば、ばかな。ブロンズが、一瞬でもゴールドの位にまで”何か”を高めたというのか。」
ヨリの横を駆け抜けるハナ。
ハナ「わるいけど、あなたにかまっている暇は無いのっ!!」
その、すれ違いざま。
ヨリ「フッ、ペガ◆ス、忘れたのか。その先を貴様は通れん。」
男子便所。
流石に進入できない。
乙女だから。
中の男子と目が会い、照れて逃げる。
入れ替わりに、入口に仁王立ち、堂々と男のサンクチュアリを眺めまわす巨少女が一人。
たんこ「危なかったわ。もう、安全ね。」
トイレの中はわりと屍多数。
たんこの超電転脚で5~6人ふき飛んだから。
ヨリ「どういった物差しで計った”安全”?」
【本流 その2】
廊下を歩く二人。
教授「プレゼントとファイブゴールドの完成が遅れていたね。」
町田「プレゼントは成瀬君が、きっと間に合わせてくれます。」
教授「日本が資源輸出大国になる。これは世界に良い衝撃を与える。」
町田「はい。必ず実現させます。」
教授「第一章で問題が有ったなら、ファイブゴールドは早期に必要になるね。」
町田「対空時間が想定の60%しかないことが判りました。設計からやり直しです。」
教授「60%じゃだめかい?」
町田「作業が中断しないよう、長時間高空で待機可能と言う要求でした。」
教授「レコード(盗聴サーバー)と組み合わせてさ、攻撃の直前に打ち上げるフローも検討してよ。
矢部君とさ。」
町田「判りました。」
雑木林の奥、閉鎖した工場跡。
高所作業用のステージの上に教授は立っている。
隣に町田。
後ろに並ぶロボット、DURA-JACK、MAG-HF、Cro-Mo COMP 、CARBO
N-LOGIC。
前には量産された、99台のロボット。
19人の技術者。
日本人だけではない。
カメラ。
世界に散らばり作戦を実行する34人の技術者。
14人の賛同者。
各地の拠点で見ている。
量産ロボットのフレームは冷間鍛造アルミ製。
外装もアルミだが新しい技術で作られている。
主な材料はアルミ缶。
強度が必要な箇所は、金属バットや7000番系の自転車のフレーム等を使用。
フレーム、外装とも分厚く、かなりの量を必要とする。
アルミの多くは足がつかないよう、浮浪者から買い付けた。
特に応力のかかる個所はスチールを用いる。
制御部はノートPCの比較的高スペックなものを分解して詰め込んだ。
某高性能ゲーム機を使う案が有った。
インターフェイスの問題、調達から開発まで足がつきやすい問題が有り不採用になった。
パソコンは膨大な数流通している。
店頭での現金購入が、最も痕跡を残さない。
OSはBSD。
バッテリー、通信システムの資材の調達は困難だった。
永い準備期間があった。
メンバーの一人古淵が町田に手を振り合図をする。
肯く。
動作、仕草の一つ一つ。
凛としてサマになる。
古淵はそれが気に入らない。
無表情で列に戻る。
町田「教授、お願いします。」
一歩前に出る教授。
静まり返る。
彼は英語で話しはじめた。
※以下のぎこちない翻訳をあらかじめお詫びします。英語苦手です。
教授『私は無い言うべきことを持っています。私達は一つだ(解らない表現大部はしょりました)。
バランスシートがその一つだ。私は良くない一部のそれ、アイディアが無い、が、可能な限り良く
なることを望みます。貴方が誰より良く知っていることが私の言う何かです。しかし、その瞬間、
貴方が全世界の他の誰より良いと考える、貴方は貴方自信を失う。』
町田に耳うちする。
教授「な、もういいかな?」
話しは始まったばかりなのに、もう、面倒になったらしい。
必死に笑いをこらえる。
全てが天才的で、細かい説明を嫌う。
常に誰よりも正しい人。
多くの人に誤解されてきた人。
町田「そうですね。」
適当に話しをまとめてしまう教授。
グダグダの演説に皆は慣れていた。
彼の真意は理解している。
そんな彼を、皆、愛していた。
そして町田に向かい、少し頷いた。
町田はタブレットPCを手にしている。
画面には教授が写っている。
教授、19人の技術者、99台のロボット。
輪郭が赤い線でなぞられる。
画像認識システム。
教授「どうした?」
町田の手が震えている。
町田「今、予定以外の指示は有りませんか?」
教授「無いよ。」
彼は名も国籍も捨てた。
そして、
町田「今、より良い方法は、有りませんか。」
教授「無いよ。これでプロジェクトは有利に進む、解っているだろう。我々は世界に理屈を押し付
ける・・ま、それほど緊急と判断した結果だが。しかし、私は別だというのかね?」
町田「く・・」
にじむ涙をかみしめる。
教授「その感情を知って欲しかった。ああ、計画書には書いてないよ。今、言うつもりだったから
ね。」
その笑顔。
ひょうひょうとして、雲のよう。
捕らえどころが無く、知識は深く底が見えない。
教授「さぁ、」
町田「・・はい。」
町田は教授の画像をペンでタッチした。
空気を割る音。
教授の横、DURA-JACK。
いや、すでに教授の胸を貫いている。
町田「教授・・。」
あらかじめ入力しておいたスクリプトをペンで選択する。
ロボットが教授を棺桶に寝かせる。
彼の遺言で火葬後筑波山の頂上に撒かれる。
教授の姿が消えた瞬間、感じる恐怖。
目に見えない無数の脅威が舌舐めずりをして自分を狙っている。
町田の表情が、にわかに厳しくなる。
全身に漂う緊張感。
女性のメンバーが一人、そっと寄りそう。
成瀬「大丈夫。」
町田は小さくうなづき、思いをかみしめている。
自分をたしかめている?
町田「そうだな。」
古淵は呆れたような表情を、うっすらと浮かべた。
町田は意を決する。
彼は”出来る”と人が感じる雰囲気を持っている。
実際、高い能力を有する。
仕事の能力以外も、皆、彼を見て、良い方へ誤解してしまう。
町田『教授の死の意味は、皆、理解していると思う。私達は理論そのものであり、結果を導き出す
ためにある。4日後、各拠点にdFORCE7000キットを配送する。第一章が始まる。計画書
は7月10日にメールしたバージョンが最新だ。重要度C以下の課題が4件残っている。今日中に
調整する。』
※ここの翻訳、ちょっと、WEBの翻訳サービスの助けを借りました。
【支流 その3 加速するハナ】
下校、校門を出るたろうさん。
ふと、首輪が巻かれる。
たろ「なっ!!」
井和糠ハナ「よかったー、サイズぴったり。」
きらりと光るチタン製ネームプレート。
"IWANUKA TARO"と彫ってある。
早速!おめーのかよ!!
校門の横に止まっていたリムジン。
勢いよく吹き飛ぶボンネット。
たんこ「ハナぁああっっ!!あんたってコわあっっ!!」
たろ・ハナ「だにいぃっっ!!」
エンジンルームから飛び出してきたのはたんこ。
たんこっ「必殺!!」
ヨリ「落ち着きなさい。」
二つ折り型の携帯電話を取り出し、L字(ワンセグを見るときの形)にして投げる。
同時に右斜め前に進む。
ブーメランのように弧を描き飛ぶ携帯。
ハナに襲いかかるたんこ!
の、おでこにヒット。
たんこ「んだあぁっっ!!」
跳ねかえってくる携帯電話。
ヨリ「・・・」
上着のポケットをつまんで開く。
携帯電話がすっぽりと入る。
たんこ「ヨリッッ!!火傷ガマンして隠れていたのにっ!!エンジンって!熱いのよっ!!」
ヨリ「・・だまれ、」
ジャコン!
超小型ピストル型スタンガン”マンストッパー”。
右袖から飛び出しす。
たんこ「くっ!」
近付きすぎた。
2m弱。
ヨリは絶対外さない。
”頼れる方の親友”それは全身に護身用品(武装として)を隠した危険人物。
その間、ハナはたろうに抱きつき、やりたい放題。
ヨリ「ハナ、瀬瀬君の首輪を外して。」
ハナ「なんで?」
ヨリ「イケナイからよ。」
ハナ「え?あ、ああっ!!これって虐待よね。」
たんこ「判ってくれたのね。」
ハナ「仔犬に首輪なんて、ハーネス(胴輪)よね。」
たんこ「ハーネス??え?ええっ?胴体縛っ??なわで、せぜっち・・どうたい・・」
ヨリ「ふうっ・・」
脳内に生成された画像の衝撃。
甦るたろうちゃんの強烈エロ臭。
耐え切れず、ヨリは貧血的に倒れた。
今だ。
ハナは自分に背を向けている。
脱出を試みるたろうさん。
逃げながら首輪を外そうとするが焦って上手くいかない。
ぶきっちょで、二つ同時に出来ないっぽい。
とりあえず忍び足で・・。
ぴーん!
何時の間に、首輪にリード(紐)を・・。
背中側で気付かなかった。
グリップをぎゅっと握って放さないハナ。
なんか、単なるSM的風景ですね。
たんこ「こりゃあっっ!!」
ひわいな状況に照れながら怒るたんこww。
ハナ「えーっ。だって、放し飼いはいけないんだよ。」
ちげーよ、普通にR15超えなんだよ、天然腐乱娘がっ。
たんこ「やはり、説明(必殺技)が必要か。」
カバンからプリッツを取り出すハナ。
たろうちゃんの鼻先に一本。
ぽりぽりぽり。
たんこ「餌付けされとる。」
ドドドン!!ドドドドドドン!!
巨獣バイク トライアンフ ロケットⅢ(ボルトオンターボ)。
長身の女性。
ジーパン、SIDIの派手なブーツ。
巨乳にノーブラ&シャツ1枚。
ノーヘル、アイウェアわOaklyのSpeechless。
たんこよりさらに背が高い。
178cm。
目の前で止まった。
たんこは女をガン見。
ビュウ。
鋭い風になびく髪。
圧倒的な存在感。
超美人。
巨少女のほほが、ぽっと、そ・ま・る。
たんこ「おりりしぃ・・」
ヨリ・ハナ「は?」
いかぬ何かが始まる、二人は戦慄した。
パタパタ。
た、たんこさんがしきりに服を、髪を直している。
ヨリが恐る恐る顔を覗く。
有った。
乙女の瞳がそこに有った。
こ、こここ、恋するっ!!
ヨリ「げぇっ!!」
潤んだ瞳で上目遣い。
両手はどきどきで飛び出しそうな心臓を押えるように胸に。
うっすら桃色に染まる頬。
びみょうに開き、ちょっぴり震える、く・ち・び・るン・・。
でも、でもン。
勇気を奮い声をかけるのン。
たんこ「あの・・」
たろ「あ、かーちゃん。」
ハナ・たんこ「えええっ!!」
ヨリ「・・・・え!?」
たつみ(母)「何よ。」
ハナ「だって、たろうちゃんのお母さんって、もっと、ぽやぽやしてて、ちまっとかわいらしー感
じなのかと。あっ!」
無言でリードを奪い取るたつみ。
ロケットⅢの後ろにたろうを乗せる。
かわゆい我が息子、首輪付き。
一瞬、満足そうな表情。
それを見逃さないハナ。
走り出すロケットⅢ。
ハナ「ああっ、待って!待って!お母様!!」
”お母様”??
てめーわ意外に将来の夢を先行回収するタイプか。
ロケットⅢ急停止。
たつみの背中から立ち上る黒紫の炎。
たろ「ま、まずい。」
たつみ「あなたにお母様なんて呼ばれるスジアイわありませんッ!!」
ありませんっ!!
ありませんっ!!
ませんっ!!
んっ!!
・・
ドドドオオオオオオオォォォゴッゴオー・・・・・・ぅ。
バッファローのごとく地を揺らして去るロケットⅢ。
たつみの勇姿に全身痺れて立っておれず、くったりと膝をつくたんこ。
腰がガクガクして立てない。
自分の気持ちを悟る。
たんこ「あ、あのお方に、あたしの全てを捧GEEEEEE!!!!」
ヨリ「しまった。癇に障って思わず。」
右袖のスタンガンを撃ち込んでしまった。
台詞を最後まで聞くことに耐えられなかった。
しかし、電気ショックで体がしゃんとしたではないか。
たんこ「お、おおお、動く。ありがと。」
サムアップ。
バカわさておき、一方、ハナはバイクの後ろ姿を何時までも眺めていた。
ハナ「お母様、とても手ごわいわ。」
ちゅん、ちゅん、ちゅん。
目の前を雀が飛ぶ。
ヨリ「まぁ・・強そうよね。」
ハナ「違うの、そうゆーのじゃなくて、」
ヨリ「なに、・・?」
ハナ「あたしと、同じ匂いがす・・あっ!!」
電撃に倒れる。
思わず、左袖のスタンガンをハナに撃ち込んでしまった。
癇に障って、思わず。
台詞、最後まで聞きたくなくて・・。
こっちも!バカかよっ!!
腐ればっかり、腐ればっかり、腐ればっかり、腐ればっかり、
ヨリ「腐ればっかり、手に負えないわ。」
しかし、人類の黒き歴史は語っている。
類は友を呼ぶと。
彼女もまた・・。
それは後の話し。
巨獣バイクを駆るたつみは思い出していた。
たつみ「止まっていたリムジン。のっぽの方の娘・・似ている。ひょっとして。」
【本流 その3】
99台のロボットは配置先の国それぞれで製造するわけには行かなかった。
金型だ。
高価でいくつも発注できない。
量を作れば足がつく。
物作りは設計図どおりにはいかない。
試行錯誤を複数個所で反映するのは無駄だ。
条件の良い廃工場が日本で見つかり、製造は上手く行った。
出国のリスクが残った。
大きめのアルミピースはオイルなどで汚し、コンテナにアルミ屑と一緒に詰めた。
輸出する中古車・・乗用車、トラック、緊急車両。
そのガソリンタンク、スペアタイヤ、ユニックやクレーンのアーム内等にパーツを隠した。
そのうちの一台。
乗用車のシート内に隠してあった機材を発見されてしまった。
特殊な通信装置の主たる部品。
ロボットで最も重要な部品。
盗聴不可能な超遠距離通信を実現する。
極秘の技術。
まだ、何であるのか知られてはいない。
早急に回収しなければいけない。
町田「私が行く。」
それを止める女。
細い眼鏡。
知的な顔立ち。
つり目。
成瀬「あなたは、リーダーなのよ。」
町田「事実上、ロボットの初陣だ。それに今日は大罪の日。私はすでに・・」
白く細い指が男の唇に沿う。
成瀬「私も行くわ。」
その目、男への思い。
港、立入り禁止のテープ。
中古車から発見された正体不明の装置。
爆発物である危険も有る。
車から取り外すため、機動隊を待つ。
報道陣、やじうまが約30人。
警官が遠ざける。
警官「俺だってぞっとしないのに、なんで近付きたがるんだ?」
野次馬の一人が気付く。
近くを、何かが高速で移動している。
目で捕らえられないが。
居る。
空気を裂く音。
チラチラと、わずかに見える影。
アスファルトから伝わる振動。
多くの者が、”何か”の存在に気付く。
音は聞こえる。
気配はする。
しかし、目で捕らえることが出来ない。
現場から10km離れた海岸の駐車場。
トレーラー車内。
成瀬「難視運動。一応、効いているみたいね。」
町田「見慣れるまではな。そういう実験結果だ。」
成瀬「思ったより(人が)多いわね。車を抱えて難視運動は無理よ。」
町田「JACKで解体する。MAG-HFはガソリンタンクを運んでくれ。」
難視運動設定時、ロボットは1方向に極めて短い距離しか進まない。
ブラウン運動に似た動きをする。
地上、至近距離、肉眼では認識されづらい。
目的地点への移動時間は増えるが、元々十分に高速である。
現場は騒然。
車がひとりでにズタズタに裂けていく。
飛び散る破片は空中で跳ねかえり、地面に落ちる。
カメラは手元で砕け散った。
恐怖と好奇心。
危険を感じつつ、その場に留まる約30人。
報道のヘリコプターが近付いてくる。
成瀬「まずいわ、空から。」
町田「やむを得ないな。」
DURAーJACKが車のドアを2枚投げる。
1枚はパイロットを直撃。
もう1枚はカメラマン。
倉庫へ墜落。
そこに居た全ての者が命の危険を感じた。
警官が無線で報告。
皆、逃げる。
遅れて警官が誘導を始める。
だれかが叫ぶ。
「ロボットみたいなのが投げた!見えた!!」
MAG-HFのマイクが拾う。
成瀬「見られたわ。」
町田「だれか特定できるか?」
成瀬「無理よ。」
町田「では、全員だ。」
強烈にギラ付くDURA-JACKの銀色。
乾いた白いボディーのMAG-HF。
体高約4m。
合金の拳がヒトの頭を砕き、胸を貫く。
ほぼ全員を処理し終わったところ。
近付いてくるエンジン音。
レコード(盗聴サーバー)の情報を確認する成瀬。
成瀬「”あの”トラックは、2km近く離れているはずよ。」
町田「バイクか?」
BIMOTA TESI 3Dに乗る女。
蛹山「微妙に間に合わなかったぁ~。」
美人だが、美しいというよりは、エロいデザインの小柄な女。
上から確認する。
エロ天然パーマ。
エロたれ目。
エロとがり鼻。
エロ厚唇。(ぷるん)
エロいホクロ。
エロナローショルダー。
エロ熟乳。
そういった方向に鍛えあげられていそうな、余計な肉は無く、かつ張りの有るエロ腰&エロ尻。
肉厚の有るエロフトモモ。
きゅっと細いエロ足首。
エロ器用そうなエロ足先。
エロOL的スーツ姿。
エロはだけた胸元。
エロストッキング。
エロピンヒール。
目の前に並ぶ死体。
蛹山「日本の正しい風景じゃないわね。」
やってきたトラック。
現場を封鎖してきたため蛹山に遅れた。
二人の男が降りてくる。
その片方、いかにも存在が軽そうな男。
惨状を見渡す。
加藤「うわ、ひどいね。」
まわりの雰囲気に合わせて、形だけの言葉。
薄っぺらい人間。
もう一人、屈強な男。
コントローラーを握っている。
トラックの荷台からTITANIOが現れる。
教授が湖面に投じた石。
ギュィ、ヒュイイイイィィィ
イ゛イ゛イ゛イ゛ィヴヴ・ヴ・ヴ
時代がかったアクチェーターの動作音。
今、ファイティングポーズをとる。
JACKのカメラ。
トレーラー内のモニタ。
見る町田。
気持ちは複雑。
思い出す教授の言葉。
”破壊か、その言葉を待っていた。”
迷いながらコマンドを発行。
町田「教授が求めているのは”破壊”。」
TITANIOを殴り飛ばす。
オペレーターの胸を握りつぶす。
あっけない。
手応えの無さ。
何か劇的なことが起こると思っていた。
教授の言葉からそう思っていた。
それが起こらないということは、教授が・・
町田「ちがう・・教授、違う・・」
成瀬が気付く。
蛹山と加藤がいない。
トラックとバイクは残っている。
隠れているはず。
門型クレーンの影、車の中。
2台のロボットで探すが見つからない。
町田「戻ろう。人が来れば、また、殺さなければいけない。あの二人とは、近いうちにまた会う。
我々のことは極秘にしてくれるはずだ。当分はね。」
ロボットのパーツを回収。
あたり一面ガソリンをまき、火を放った。
教授の言葉がよみがえる。
教授「君は天才だ、私など足元にも及ばないね。全てはただ、そこにある。恐れてはいけない。君
のためには、私はいないほうがいいのかもしれない。」
今、教授はいない。
今、群れの先頭。
はじめて見える風景。
今。
町田「教授。私は、恐ろしい。」
焼け、散り踊る死体。
気分が悪くなる。
そして、オペレーターを失ったTITANIO。
モニタに映る姿を眺めるのみの町田。
成瀬「私がやるわ。」
コマンドを発行しようとする。
その細い手首を掴み、止める。
横たわり、沈黙するロボットに教授の姿が重なる。
撤退。
蛹山「行ったみたいね。」
加藤「そうですね。」
海に浮かぶ二人。
並ぶ死体の下に隠れていた。
火を放たれたとき、火と煙にまぎれて海に飛び込んだ。
血まみれ。
ガソリンまみれ。
火傷。
煙にせきこみ、臭いにむせる。
動きの見えないロボットへの恐怖。
【合流】
3日後。
特設の対策本部。
40人は入れそうな部屋。
いるのは二人。
蛹山の悪名は高く、人が集まらない。
彼女の要求しているメンバーのレベルも高いが。
加藤「課長。何もありませんでしたよ。」
蛹山「あ゛!?」
加藤「螺子一本までばらしました。秘密の機能どころか、メッセージもなければ爆弾もありません
でした。」
蛹山「あるわ。あのロボットには何か。絶対に。」
加藤「いったんTITANIOを破壊しようとして、しかし、何もせず去った。そんなに気になり
ますか?」
(うっかり間違って)ヒワイな形状に握られた拳でボディーに一撃。
加藤「うぐっ」
蛹山「すごーく」
腹に沿って拳を下げていく。
加藤「ちょっ、やめ・・」
ブツのすぐ上で停止。
蛹山「気になるわね。」
手の甲で股間をはたく。
加藤「ったぁっ。」
蛹山「ちょっと整理しましょう。」
加藤「はぁ?」
蛹山「日本オムニ社船橋工場が襲われたとき、4体のロボットが行方不明。技術者を含めロボット
に関する情報は焼き払われた。TITANIOだけが無傷で残された。」
加藤「4体のうち2体は3日前、港で発見。ただし、現在どこに居るのかは不明。技術情報は持ち
去った上で焼き払ったのですかね?」
蛹山「TITANIOは日本オムニ社より快く提供。」
加藤「あれ?課長が強引に買い取ったのですよね。」
ここで回想。
・・・・
4億円を詰めたトランクを担いで、日本オムニ社へ乗り込む蛹山。
アポ無し。
強引に本部長室へ。
取り囲まれる蛹山。
彼女の胸の谷間とフトモモに視線が集中。
女はトランクをドカンと開き、札束をわし掴み。
それで本部長の頬を右に左に叩きまくる。
叩く程に揺れる乳。
本部長はYES以外、言えなくなっていた。
ピンヒールで踏み付け、用件を切りだす蛹山。
彼女は安値でTITANIOを入手した。
・・・・
回想はここまで。
さて、現在。
蛹山「手がかりは全く無し。これだけの事やっていて、おかしいわよね?」
加藤「まるで、(捜査の)先まわりをされているみたいですよ。」
女の指が男の喉をいやらしく這いあがる。
加藤「ふはぁっ、な、何お、」
蛹山「いい事を言ったから、ご褒美よ。あの日(3日前の港)も、他に当てがないから取りあえず
行ってみたら大当たりだったって、それだけよね。」
加藤「それにしても速かったですね、敵のロボット。全く太刀打ちできなかった。オムニに問い合
わせたら、その様な能力は無いとか言ってましたけど。」
耳にエロ吐息。
加藤「んふっ!な、何お。」
蛹山「良い情報を仕入れていたから、ご褒美よ。それが本当なら犯人の技術力は日本オムニ社より
も高いってことよ。かなり的を絞れるわ。」
カメラ、背中側のアップ、絞り込まれたウエスト。
蛹山「SFで光学迷彩とか出てくるけど、実際には用を成さないよ。背景が1色で無いとして、迷
彩する物体の任意の一点に1つの光学的情報しか有し得ないなら、全ての異なる複数の視点に対応
できない。そう言った技術を使うにしても、高速で移動するしかないのよ。御間化しのためにね。」
少々荒が有っても、動かしちゃえば目立たない。
AMIGA動画の基本精神を思い出す。
加藤「犯人はさらにロボットを用いたテロを行う可能性が有る。」
蛹山「阻止するためには・・情報、専門家、捜査員、予算、そして何よりも速さが足りない。」
1週間後
加藤「とりあえず、14カ国から476人の情報です。」
メールでURLを渡される。
ドメインを見てげんなり。
蛹山「このURLめんどくさくてキライ。zip(ファイル)で頂戴。」
加藤「それが出来ないシステムだって、知ってますよね。」
しつこすぎるセキュリティー。
やたらと多い段取りをへて、やっとデータにたどり付く。
猛スピードでスクロールする文字を読む蛹山。
加藤「課長からも、ちゃんとお礼言っといてくださいね。情報集めてくれたトコ、みんな首かしげ
てましたよ。何のためかって。」
画面のスクロールが止まる。
蛹山「決定。」
加藤「へぇ、誰を選んだんですか・・ちょ、冗談は課長の存在未満にして下さい。」
画面に映るハナの顔写真。
指差し確認。
加藤「これ、女子高生ですよ?理解できてます?」
蛹山「0.25秒、友達が彼女をビデオ撮りして、コマ送りで時間を計ったそうよ。信頼できるわ。
そんな時間でポケットから携帯電話を取り出し、被写体にあわせ、シャッターを切る。こんなこと
ができる人間いないわ。」
その翌日。
職員室に呼び出されるハナ。
応接間に待つのは蛹山と加藤。
人払い。
蛹山の雰囲気の
蛹山「早速だけどあなた、世界平和のために無償で貢k・・」
ハナ「しません!!」
”無償で”にて決定、即答。
蛹山「世界平和n」
ハナ「よくわかりません。」
蛹山「早速d」
ハナ「お引取り下さい。」
加藤「おおぅ!!課長が圧されている。」
蛹山「思ったより歯ごたえの有る、ちびちゃんねっ。」
つか、”うーん”とかさ、ちっとは悩めよ。
ちっ、仕方が無い。
ガキが、扶養家族のくせに。
蛹山「解ったわ、取引しましょう。何か欲しいものはない?」
ハナ「?」
蛹山「"国"が補償します。私のお願いを聞いてくれたら、報酬はあなたの望みどおりです。と、言
ってンのよ。」
ハナ「なんでもいいの?」
蛹山「くどいわね。早く言いなさいよ。」
そそっと蛹山の隣に移動。
スチャっと携帯を取り出す。
画像を選択。
ハナ「あの・・これを・・」
ぐいいぃぃっと蛹山の顔に画面を近付ける。
余計に見難いのだが。
蛹山「こ、これわ。」
加藤「課長、帰りましょう。人選ミスです。主に内面的な問題を感じます。」
蛹山「くっ、くっ、くっ、」
ハナ「えへへへへ」
蛹山・ハナ「はーっはっはっはっ!!」
ピタリ。
蛹山、年に一度、有るか無いかのマジ顔でサムアップ。
蛹山「おぬしも、”悪”よのう。」
ハナ「お代官様程ではございません。」
蛹山「うい奴、うい奴じゃ。」
蛹山・ハナ「あーっ!はっ!はっ!はっ!」
蛹山の携帯電話、メール着信音。
が、何故か胸部中央から聞こえる。
『あか、あお、きいど。きでい。原稿、真っ白。きでい。・・白いワニがっ!白いワニがっ!』
バイブONなので、乳がぶるぶる震える。
胸の谷間から携帯を取り出す。
蛹山「っと、迎えが来たようね。」
轟音と共に校庭に下りてくるF-35Bライトニング。
ハナを乗せる加藤。
蛹山はパイロットに指示を出している。
浮き上がるF-35B。
見送る蛹山と加藤。
加藤「あの、なんでわが国にタクシー代わりにつかえるライトニングがあるの?」
下校時間。校門を出てくるたろうさん。
立ちはだかるケバ女課長。
蛹山「瀬瀬たろう君ね。」
ちびっこにはキツすぎるフェロモン。
後ずさりしながらうなづく。
どん。
人に当たってしまった。
たろ「あ、すいませ・・ぬあっ!!」
加藤であった。
羽交い絞めにされる。
たろ「えっ!!な、なにっ!!」
加藤「僕だって、こんなことはしたくないんだ。」
蛹山「あなたは今から国の所有物です。とある作戦の報酬になりました。傷物になってはこまるの
で・・ま、早い話がラチよ。」
たろ「国ぃぃ??」
困った眉毛で上目遣いにうったえる表情。
蛹山「うーん、」
加藤「課長、なに、悩んでるんですか。」
鼻と鼻がくっつきそうな距離でじっと見る。
蛹山「オトコノコだから(ぽっ)、ちょっと味見しても傷物にはならないわよね。」
フェロモン全開。
たろ「わつ!!わあああっっ!!」
加藤「課長、存在がネタすぎです。まじでカンベンしてください。」
そこに出迎えのロケットⅢ登場。
たつみ「そこまでよ。」
蛹山は瀬瀬たろうの母、たつみを知っている。
蛹山「アタシとしたことが"瀬瀬"を忘れるなんてね。ふーんじゃあ、この子が・・面白くなってき
たわね。加藤、放して”さしあげなさい”。」
たろうさんの顔が曇る。
このふしだらな女、自分の秘密を知っている。
ボクの秘密を・・。
加藤「良く解らないけど、ほっとはしたな。」
たろうさんを放した後、悪かったなと平手を立てるジェスチャー。
蛹山「じゃあね、可愛いぼーや。近いウチに頂きに来るわ(複数の意味でねっ)。」
たろうの背筋に悪寒。
VWゴルフラリーで去る2人。
加藤「課長、瀬瀬ってなんです?」
運転は加藤。
何気にシフトワークがプロい。
蛹山「何時か話す・・・・・・・・・・・・・」
加藤「何、考えているんですか?」
蛹山「たろ君を確保して・・1回・・(妄想中)・・3回味見してから引き渡すには・・どうした
らいいかを、少々。」
加藤「高校生やったら犯罪ですよ。解っていますね?」
蛹山「じゃあ、材料の受けいれ検査(逆開通式的に)と製造(スキルアップ)と出荷前検査(特訓
の成果を見・せ・て)。業務って事で。受け取った瞬間から色々楽しめるたろうちゃんでハナちゃ
んも大喜び。」
加藤「バカでしょう、アナタ。」
【破壊しなかった理由】
大型バス。
改造されており、床下にロボットを積む。
町田、成瀬の他に一人、合計三名が乗っている。
町田にコーヒーを差し出す成瀬。
成瀬「砂糖とミルクは入っていないわよ。」
言葉と共にまとわりつく視線。
町田「言いたいことが有りそうだな。」
成瀬「なぜ、TITANIOを破壊しなかったのですか。」
いやな質問だな。
自分にも決めてとなる理由は解らないよ。
自分の気持ちの弱さを、強く感じたのは、確か。
町田「(TITANIOには)教授が期待する役割が有る。」
ウソ。
しかし、それ以上は問わなかった。
成瀬「dFORCE7000(ロボット)が9台、いまだ出国できていません。」
町田「それは当分の間、保留だ。」
成瀬「では、全体を延期しますか。」
町田「いや、スケジュール通りで進めてくれ。リソースは再配置する。」
成瀬「判りました。」
景色を眺め、コーヒーをすする。
なぜ、TITANIOを破壊しなかったのか。
町田「教授。教授。」
思い出に逃げる。
その日。
そのとき、
教授は砂糖をコーヒーに一つ入れた。
教授「砂糖が溶ける現象も、実は条件付でしか説明できない。なぜ?は永遠に続く。しかし、科学
者の中途半端な説明にほとんどの人が納得してしまう。科学者など、世界で最も権威のあるペテン
師さ。」
町田「厳しいですね。でも、1mm単位で計ることができれば十分なら、定規でよい。ノギスやマ
イクロゲージはいらない。科学も必要十分なだけ説明できていればよい。」
そうだねと、うなずいたが、少しがっかりしているように見えた。
町田「教授は、明らかにあのとき、"私にはまだ理解できない"と判断して、話をやめた。私は、何
かを聞けなかった。教授。なぜ、教えて頂くべき事を多く残して、私の前からいなくなられたので
すか。TITANIOは何かを知っているのですか。」
TITANIOは教授の影。
心ならずもテロリストの長となった彼の心の支え。
【ハナの秘密】
自衛隊の演習場。
蛹山を出迎えた男、加藤にそっくりだが全くの別人である。
漆条「室長、お待ちしていました。」
蛹山は室長に昇進していた。
しかし、仕事内容は同じである。
事件が大規模になり、相応の役職が必要になった。
上はまだ、”才能豊かな汚れキャラ”蛹山に担当させたかった。
加藤は自ら希望して、移動。
蛹山のいろいろと超越した考え方に付いて行けなかった。
蛹山「ハナちゃんは?」
漆条「一応、TITANIOのコントローラーは握ってますよ。」
乾ききったしゃべり方も加藤そっくり。
だが別人である。
世界には同じ顔の人間が3人いるとかいうあれか。
蛹山「(TITANIOの動きが)遅いのね。」
漆条「ええ。」
生年月日、血液型も同じ。
愛車も同じゴルフラリー。
あと、出身地も同じ青森県にしてしまえ。
あと、あと、あれか、兄弟構成とかも。
犬占いが同じになりますしね。
話しを戻そう。
蛹山「まぁ、予想通りかな。」
トヨタメガクルーザーに乗る。
演習 れる現象もその類ね。彼女の能力は、そのさらに上よ。」
漆条「はぁ。」
蛹山「ペットの犬や猫が具合の悪い人や死期の近い人に寄り添うって話しは聞いたことあるでし
ょ。」
漆条「ええ、嗅覚とかが人間よりけた違いに優れているからですよね?たぶん。」
蛹山「本当にそれだけであんた納得できるの?じゃあ、犬並みの嗅覚があって、死期が迫ったこと
が匂いで判断できるとしてさ、あんた、どの匂いがそうか、かぎ分けられるの?」
漆条「さぁ、」
蛹山「その知識は後天的に学習したのかもしれない。ひょっとしたら、人の嗅覚でも嗅ぎわけるこ
とができるのに、匂いの知識がないばっかりに気が付けないのかもしれない。」
漆条「話は判りますが、関係あるんですか?」
蛹山「アタシんとこ来るコわオバカばっかりね。そういったナレッジベース的なものを鍛え上げれ
ば、相手が動く少し前に、何をしてくるのか、気付くことができるのよ。それの対抗策は、反復訓
練で身体に覚えこませておくの。実践では、ほぼ、反射神経で操作できるわ。」
漆条「相手はロボットですよ、」
蛹山「決め手になる情報なら音だって、臭いだっていいのよ。今は、ハナちゃんにTITANIO
の動作の、一連の型を覚えてもらっているってワケ。遅くてもいいの、今はね。」
漆条「なるほど。で、"ナレッジベース的なもの"は、どうやって覚えさせるんです?」
蛹山「良い質問ね。アタシもそれで悩んでいたのよ。でも、たろうくんが解決してくれるはずよ。」
漆条「あの、女の子みたいな高校生ですか?」
蛹山「そうよ(時計を見る)、ちょっと本部に戻って来るわ。ハナちゃんの訓練をよろしく。あと、
コントローラーを改造しておいて。仕様は来るとき、メールで送っといたわ。」
本部。
怒りの蛹山。
蛹山「ハァ!!??」
本部長「しょうがないだろう。」
蛹山「ハナちゃんへの報酬の獲得、TITANIOの高速化に必要なナレッジベースの実現。一石
二鳥でしょう。」
本部長「君の不埒な欲求も満足出来て一石三鳥か?」
ぎくうっ。
蛹山「ぬ、ぬうっ。」
本部長「瀬瀬プロジェクトには手を出すな。」
蛹山「・・・へぇ、」
本部長「な、なんだ」
蛹山「いえ、いえ・・ハイ、判りました。・・・・ハァー、あんたら、いい商売よね。上の言葉下に
垂れ流して、無理ばかり言ってさ。で、何かあれば、責任は・・"下"!!!!」
本部長「なんとでも言え。だめなものはダメだ。」
蛹山「ハイ、YES、了解、ラジャ、御意。じゃ、さよなら。」
これ以上ない、腹黒い表情。
本部長「おい、待て!ホント、無茶はするな!お前はじきに部長だ。将来は少なくとも本部長にな
ってもらわないと困るんだ。お前のためを思って言っているんだぞ!!悪いようにはせん。」
蛹山「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ。ケケケケケケケケ。」
どす黒いオーラを残して去ってゆく蛹山。
本部長のため息。
本部長「ああぁ・・いつっ!イタタタタタ。」
机の引き出しから胃薬を出し、涙目でゴクリ。
【第0章】
バランスシートの解釈、すべきこと、全てが決まったあの日。
町田「罪深い計画です。正直、実行すべきか迷っています。」
教授「人が、何か決断をするとき、案外多くの要素を複合的に判断している。私はこの計画に小さ
な目標をいくつも潜ませている。バランスシートの大目標とは別にね。そして、やると決めた。」
町田「人類の・・」
教授は唇の前に人差し指を立て、言葉を止めた。
教授「地球に住む生き物が人間だけになったとして、我々は不自由をするかな。最善を尽くした結
果、人が絶滅したとして、それは生き物の精神に外れているかな。」
そして、今。
町田が全世界のメンバーに号令する。
町田「5日後、第一章が始まる。今日は皆、辛い日になる。だが、こう思って欲しい。”相手は死
ぬのも仕事のうちだ。”緊張していると思う。恐ろしいと思う。だがね、幸いなことに私達の脳は、
常に客観的でパーフェクトが好きだ。いかなる場合でもプロジェクトの秘密は守ること。手段を問
わず、秘密は守ること。」
各国の軍事基地、駐屯地。
そのテロの情報は有る程度得ていた。
世界中の軍事施設が同時に攻撃を受けるかもしれない。
始めは誰も信じなかった。
調査を試みるが、詳細を知ることはかなわなかった。
まるで調査の先回りをされているように、情報は消えていった。
それが逆に不信感を煽り、各国は軍事施設の警戒を強めた。
検問も増えた。
日本でも。
成瀬「また、検問。」
手を握る町田。
町田「落ち付いて。」
成瀬「もっと、離れた場所からロボットを放てば。」
町田「万が一のときはメンバー各自が責任を持って秘密を守る。命と引き換えてもね。そのために
この距離なのだ。」
警官がやってくる。
大型バスは左の車線に誘導された。
すでに乗用車が数台止まっている。
尋問を受けているようだ。
巡査長「お引き止めしてすいません。」
町田「・・急いでいるんですがね。」
巡査長「申し訳有りません、ご協力お願いします。どちらへ行かれます?」
町田「・・当面の目的地は川越ですよ。」
巡査長「当面、ですか。で、目的は?」
町田「エキストラの送迎です。」
巡査長「映画の撮影か何かですか?」
町田「全く、この道を選んで失敗だったな。」
会話の一部始終はバス内のマイクからレコード(盗聴サーバー)に送られる。
12インチグリーンモニタをスクロールしていく80桁のキャラクタを眺めていた矢部。
青白い肌。
痩せた体。
張りの無い声。
ボサボサの髪。
命の薄そうな青年。
警察のDBを書きかえる。
巡査長は町田の免許証を受け取り、照会する。
3年程前に六本木で原動機付自転車と接触事故。
車の登録はたしかに映画製作会社のような名前だ。
引きとめる理由は無くなった。
巡査長「お引き止めして、すいませんでした。」
そんな仕事の男(町田)には見えないのだが。
免許証を返す。
巡査長「お気をつけて。」
不満気に免許証をひったくり、バスを出した。
少し走ると工場が並んでいる。
雑木林でバスを止める。
バスの床下が開く。
一瞬ロボットが見えたと思ったが、消えた。
どの国でも同じだが、
ロボットは、軍事基地に正面から楽々と進入できた。
レーダーでとらえても、目視で確認できない。
何か、チラチラと・・高速で動く何かがいる気がする。
人にはそれ以上、判らない。
追尾式ミサイルはよけられ、叩き落される。
ヤマ勘の機銃掃射はかすりもしない。
右往左往する戦車。
殺した兵士から奪った対戦車ロケットを打ち込まれ、大破。
トリガーを引くための爪が、人差し指についている。
航空機、ヘリコプターは優先的に破壊された。
かろうじて飛び立てたヘリコプターも真っ先に打ち落とされた。
たった、一台のロボット。
基地は全滅。
ジェット燃料、軽油をまかれ、炎上した。
撤退するロボット。
空母から飛んできた応援が、むなしく旋回する。
ハナがいる演習場。
ここにも来た。
たった一台のロボット。
悲鳴と怒声。
だれもどうにもできない。
漆条はハナを担ぎ走る。
ゴルフラリーに乗せ、火の海を走る。
が、まもなく停止。
アクセルを踏むが、タイヤが空転して進まない。
dFORCE7000がリヤバンパーのあたりを鷲掴みにしている。
ぞっとする。
そのメインカメラにハナが写っている。
【蛹山VSたつみ】
瀬瀬宅。
たつみ「だめよ。あんたの上司に聞かなかったの。」
蛹山「”だめ”って聞いたから、直接来たんじゃない。」
1階リビングの窓が割れている。
蛹山「いろいろ考えたけれど、」
103型プラズマTVにBIMOTA TESI 3Dが刺さっている。
蛹山「アタシらしいって、」
玄関から入れてもらえなかったので、オートバイでダイブしたのだ。
蛹山「こーゆーことかなって。」
やおら立ち上がるたつみ。
蛹山、ファイティングポーズ。
しかし、相手は全く構えない。
右ハイキック。
左腕で受けながら、右の正拳突き。
が、力任せに蹴り飛ばされる。
ソファーに足元をすくわれ横転。
蛹山「・・・」
立ち上がり、フットワークで間合いを取る。
左拳をいくつか打ち込む。
相変わらず構えないたつみ。
イイカゲンによける、当たっているのだが、気にしていない。
あせる蛹山。
たつみ「あきた、」
たつみの右ミドルキック。
腹を打ち抜かれる蛹山。
よろけながら数歩後ずさりし、倒れる。
腹を抱えてのた打ち回る。
とても立ち上がれない。
たつみ「ウチに手を出すなんて、バカね。即、島流しよ、アンタ。」
たつみも殴られて唇を少し切っている。
その血をぺろりとなめた。
蛹山を放り出すため、足首を掴み引きずる。
蛹山「まって、ちょっと、まって!聞いて!」
無言で引きずり続けるたつみ。
蛹山「こ、これを見て!!」
自らブラウスのボタンをぶちぶちとむしりとる。
なにを見せるつもりなのか。
蛹山が胸の谷間から取り出し見せたイラスト。
たつみの瞳孔が開ききるっ。
たつみ「こ、これわ・・」
蛹山「可愛ゆいたろちゃんに着てもらう、戦闘服よ。」
たろうちゃん用戦闘服のイラストを3回折り、ジーパンのお尻のポケットに入れるたつみ。
たつみ「アンタって人間が、どれだけ腐っているか、よく判ったわ。」
蛹山「あら、女の腐れ具合であなたにご指摘頂戴できるなんて、思ってもみませんでしたわ。とこ
ろで、そのイラスト返してよ。」
母親無言。
返す気は無い。
突如2階に走り出す蛹山。
コーヒーをすすって見送るたつみ。
2階で悲鳴。
ドタバタと床が鳴る。
窓が勢い良く開く音。
瓦ががしゃがしゃと鳴る。
声が聞こえる。
たろう「ぎゃーっ!くんなーっ!」
蛹山「怖がらなくていーから!!」
蛇のごとく舌なめずり。
たろう「むりじゃあっ!!こわすぎるわ、えろばばぁっ!!」
蛹山「え?えろ・・ば、ばば・・!!??」
全開。
悪性エロオーラ全開。
時空が歪むほど全開。
たろうちゃんは天然ラヴラヴ小動物オーラでガード。
たろ「うおおぉぉっっ!!」
やや、圧し返し始める小動物オーラ。
蛹山「笑止。」
400%オーバードライヴ。
悪性エロオーラ、オーバードライヴ。
時空を飲み込むほどオーバードライヴ。
たろ「ぐあああっ、」
悪性エロオーラに飲み込まれそうになる。
屋根を這い逃げる。
蛹山「ククク、良いわぁ、燃えるじゃない。」
一階わと言うと・・
電話で家の修理を依頼するたつみ。
樋にぶら下がって、庭に降りてくるたろうさん。
口にSIDI GENIUS-5(ロード用シューズ)をくわえている。
屋根から一気に飛び降りてくる蛹山。
ブーツのヒールが折れてこけた。
たつみ「元気ねぇ。」
たろさんはMERLIN WORKS CR(自転車)を担いで外へ。
片足でペダルをこぎながら、器用にシューズを履く。
蛹山「ぬう。」
リビングに戻ってくる。
床に転がるTESI 3Dを起こす。
オイルがもれている。
エンジンはかかった。
蛹山「おし!」
走り出す。
蛹山「ぬおっ!わおおっ!!」
まっすぐ進まない。
タイヤはパンク。
ホイールは欠けている。
スイングアームは軽く曲がっている。
たつみ「あたりまえね。」
電信柱にあたりそうになる。
急ブレーキ。
前につんのめる。
止まる寸前でこけた。
蛹山「いたた、」
リスタート。
まっすぐ進まない。
たろうさんとの差が開く。
蛹山がブチ切れる。
ア!ア!アアア!アングリィィィィ!!!!
蛹山「くそだらぁ!!てめぇ!522 万 9000 円のゴミか!!」
アクセルを開ける。
ひどい振動。
暴れる車体。
蛹山「あだだだだだだ!!!!」
商店街をスラローム。
あちこち引っ掛けて壊しつつ、たろうさんとの差を縮める。
蛹山「ぐふふふふ。食ってやるぅー。」
たろう「サメじゃー!!」
エンジンの調子が悪い。
オイルが無くなりかけているようだ。
蛹山「自転車に負けるたら・・ジャぁンクにしてあげるぅ・・」
燃料タンクを怪しく撫でる。
突如加速するTESI 3D。
河川敷のサイクリングロードに逃げるたろう。
蛹山は土手を強引に駆け上り、車止めをかわして追う。
並行する車道を、パトカーが追ってくる。
商店街のだれかが、通報してくれたらしい。
警官「そこのオートバイ止まりなさい。」
たろう「たすかった。」
蛹山が胸の谷間から携帯電話を取り出し、どこかに電話をする。
※ここで、先にブラウスのボタンをちぎっており、携帯を取り出す勢い、そしてバイクの振動、様々
な要素が複合的に作用し、B地区がブラの地平線から十五夜のお月様であった的な描写を特にここ
に記述しておく。
20秒後。
警官「そこの自転車止まりなさい。」
たろう「なんでぇー!!」
気が付けばはさみ撃ち。
自転車を止める。
土手を下るしかないか。
ドドドドドドドドド!!
聞き覚えのある重低音。
土手を上がってくる巨大単車ロケットⅢ。
TESI 3Dを木っ端の様にはじき飛ばす。
パトカーに体当たり。
ヒィィィィィ!!!!!!
全開でうなるタービン。
ゴリゴリと4輪に押し勝つモンスター2輪。
ついに土手から落とす。
2回転半して、裏返しで止まるパトカー。
たろうさんの前で止まるロケットⅢ。
ズタズタのジーパン。
太股に擦り傷。
パトカーと競りあったときのもの。
たろう「母さん、足・・」
たつみ「大丈夫よ。」
わが子を抱き寄せる。
子も緊張から開放され、強く抱き返す。
母は腐れ的に満足した表情で、“恐怖が頂点に達するのを待ってから、助けたかいがあったわ”と、
思っていた。
ぼろぼろになって、土手を這いあがってきた蛹山。
胸の谷間から、拳銃を取り出す。
B地区が露出しかけたが、ずたぼろの服が最後のド根性を見せた。
貧血がひどく、意識が朦朧としている。
狙いが定まらない。
ようやく一発撃つが、土手下に転がるパトカーの燃料タンクを打ち抜いただけだった。
にわかに炎上するパトカー。
たろう「あ、お巡りさんが。」
拳銃を蹴り飛ばすたつみ。
なにもできない蛹山。
たつみ「あなたの計画に参加するわ。ライターはロケットⅢに積んであるわ。水槽はあるんでしょ。」
ヘリを手配し、自らの血の海に倒れる蛹山。
同時に力尽きる、ぼろぼろのブラウス。
倒れた衝撃で、霧散。
が、
倒れるときに、偶然蹴り飛ばした花二輪。
散る布切れと入れ替わりに、
吸い付くように、
ポサッ・・・・
B地区に覆い被さった。
セ、セーフ。
たろう「母さん、また、ライター使うの?」
たつみ「そうよ。」
【二人消える】
dFORCE7000のカメラに映るのはハナ。
その映像は町田のノートPCへ。
ロボットを操作している科学者の震えた声が届く。
科学者A「この、子供も殺すのでしょうか。」
町田「無論だ。」
科学者A「・・・判りました。」
科学者AがタブレットPCに映るハナの画像をペンでタッチしようとした、その瞬間。
町田「待て!」
ハナが持っているもの、TITANIOのコントローラー。
ゴルフラリーの運転席に座る男、港で蛹山と一緒にいた男(と瓜二つの他人だが)。
それに気づいた。
町田「7000のカメラを360度まわせ。」
ロボットの頭部がぐるりと回る。
町田「ストップ!!」
炎のカーテンの向こうに立つ姿。
町田「5倍にズーム。」
TITANIO。
停止する思考。
一瞬の隙。
ドオオオッッ!!突然の爆発音。
窓から手を出し、漆条が投げた手榴弾。
dFORCE7000の右腕が吹っ飛ぶ。
ゴルフラリーの後ろ半分もボロボロ。
漆条「使い方が漫画で読んだのと同じで助かった。」
助手席のハナに被さり、爆風からかばう。
アクセルペダルを踏みつぶす。
科学者A「どうしますか。」
町田「・・」
走り去る半壊のゴルフラリー。
とりあえず、証拠を消すため腕の破片を火災の中心に投げ込むロボット。
アルミがどろどろに熔けていく。
町田「2人を捕らえろ。」
オイルでタイヤを滑らせ、戦車の残骸にヒットし、ゴルフラリーは必死に逃げる。
正門が見えた。
しかし炎が立ち塞がる。
ロボットが迫る、背後の恐怖。
ただ、前進。
炎をくぐりぬけ、演習場の正門に向かってくるゴルフラリー。
黒焦げ。
しかし、
漆条もハナも乗っていない。
歩くようなスピードでゲートに当たり。
そして、止まった。
焼け崩れるゴルフラリー。
【瀬瀬システム】
研究所。
たつみ「安静にしていなくて、いいの?」
包帯とガーゼで、だれだか判り難い蛹山。
蛹山「かすり傷よ。データの登録は進んでる?」
たつみ「ええ、順調よ。」
蛹山「そっ、」
ヒワイな笑顔。
たつみ「もらったデータに”TAROちゃん調教プログラム”ってのがあったから、削除しておい
たわよ。」
蛹山「ええっ!!な、なん、、てことをーぅ。(棒読)」
わざとらしいっつーの。
最後まで聞かず、立ち去るたつみ。
蛹山「ふふふ、デコイにまーんまと、引っかかってくれたわ。本隊はもっと、判りにくーいところ
にあんのよ。」
エロ黒い笑顔。
実験室に入るたつみ。
水槽に浮かぶたろう。
特殊な水で、水中で呼吸ができる。
また、電気を通さない。
体中にケーブルが貼り付けられている。
ヘッドマウントディスプレイ。
密閉型インナーイヤーヘッドホン。
鼻に管。
口に管。
ひどい。
データをチェックするたつみ。
たつみ「腐れ女のすることなんて、全部お見通しよ。何、この”ご奉仕メニュー“って。ずいぶん
と特殊なコマンド入力で起動するようだけど、これで隠したつもりなんて。」
削除してから書きこみ開始。
たろうさんの右人差し指がかすかに、動いた。
苦痛。
赤ん坊のころから幾度も味わってきた苦痛。
いやだが、いつからか。
その苦痛を受けることが家にいる理由。
そう、思うようになった。
【檻の中】
マンションの一室。
広いリビングに檻が組んである。
中に漆条。
漆条「動きは把握していたつもりだったのに、やられたよ。」
椅子を引きずってくる町田。
背もたれを漆条側に向ける。
背もたれの上に腕組みをし、顎を乗せる。
右手に拳銃。
町田「急ごしらえの檻で悪いね。」
なぜか、檻の扉に1セント硬貨が溶接されている。
こ、これわ、セントバr・・・
町田「本題に入る前に、そうだな、こんな質問はどうだろう。(事象)AとBは同時に起こりえな
いとする。しかし、全能である神は、A、B を同時に起こせなければいけない。理由はどんな条件下
でも、神は、全ての人が幸福になる奇跡を起こせなければいけないからだ。」
漆条「なぞなぞ遊びか?」
自分を観察する、冷めた町田の目が不気味。
町田「矛盾を解決する答えはこうだ。神は可能性として、あらゆる結果(事象)を同時に用意して
いる。結果は選択され、唯一に決まる。」
漆条「神は全ての可能性を用意している。良くも悪くも、この世がこうなっちまっているのは、(人
が)そう選んできた結果だと言いたいのか。」
町田「判らない。」
漆条「そう言っているようにしか、聞こえにけどね。」
町田「もし、私がいった通りなら、一つの事象でしかない我々にとって、神は、全能という名の何
も出来ない存在なのだ。」
漆条「・・・」
町田「本題に戻ろう。ところで、君は女の子を一人、連れていたはずだが。」
漆条「そうだったかな、」
とぼけるが、グサリと睨まれる。
漆条「あ、ああ、それがどうかしたかい?」
町田「私の質問は二つ。一つは彼女は何者か。もう一つは、彼女は今、何処にいるかだ。」
漆条はどうすれば良いのか判らない。
ニヤリと余裕があるふりをしたら良いのか。
ふてぶてしく、無表情でおし黙るべきか。
こういった訓練は受けていない。
そして、町田の質問から、自分や蛹山の携帯が盗聴されていなかったことを知る。
ハナちゃんの名前すら知らないのか?
助かるチャンスは有った。
それを逃した事実がさらに気持ちを追い詰める。
気分が悪くなる。
吐きそうだ。
観察する町田。
彼も尋問など、始めて。
勝手が解らない。
しかも、駆け引きはしない性格。
必要な質問を、ただ、言う。
町田「質問を一つ増やそう。漆条君、きみは取引の道具たりえるかい?」
一言に死が見えた。
蒼白。
【たんこ&ヨリ、到着】
ゴルフラリーで、焼け野原を逃げていたとき。
漆条は戦闘・・おそらく爆発でえぐれた地面と、仮設資材を見つけた。
とっさに、地面のくぼみにハナを寝かせ、ワイヤモッコと足場板で蓋をした。
土手に手榴弾を投げこみ、足場板の上に土をかぶせる。
まだ足場板の半分近くが露出していが、それでよい。
足場板の隙間からハナの顔を確認しつつ、携帯電話をかける。
漆条「電話には出ないでね。」
ポメラニアンの甘えたなきごえ、ハナの携帯の呼出音。
すぐに呼び出しを中断。
漆条「よかった、携帯が通じる。鉄板で塞いだから心配したよ。次の問題は”どこへ電話するか”
だな。」
ハナ「あの(恥的な)おばさんは、助けに来てくれないの。」
漆条「ウチの通信は盗聴されている可能性が高い。これだけ見事に裏をかかれたんだ。警察もだめ
だな。」
ハナ「盗聴・・敵に聞こえなければ良いの?」
漆条「え?」
ハナ「あたし、30kHz以上で話せるの。」
可聴領域が30kHzの子供はいる。
しかし超音波で”発声”できる人間などいるのか?
いや。
いや、彼女なら。
彼女はきっと、このテロリストを対決するために神が配置した人を超えた何か。
どんな天才も想定不可能な存在。
敵はきっとさまざまなフィルターで人の会話だけを採取している。
超音波の会話なら、ハイパスフィルターで切り捨てられる。
漆条「30kHzの声を聞いてくれる人はいるんだね。」
ハナ「ヨリちゃんが。あの、携帯に・・」
漆条「判った。誰を犠牲にしても良い、君は死ぬな。」
ロボットの移動音が近付いてくる。
走り出す、漆条。
しかし、間もなく、ロボットに捕らえられた。
漆条の悲鳴。
震える指でボタンを押し、ヨリに電話をする。
ハナ「あれを起動して。」
ヨリのノキア端末。
父親の部下が作ったソフトを起動。
受信した音声の周波数を2分の1にして聞き、話す音声の周波数を倍にして送信できる。
ハナの特殊能力を面白がってあっという間に作ってくれた。
ヨリ「ハナ、聞こえる。」
30kHzの会話。
2時間後。
一面焼け野原となった演習場。
取り巻くヤジウマ。
ロールスロイス改造リムジン。
たんこ「わ、すっごい。」
ヨリ「ちょっ!何事なの。」
降りてきたのはこの二人。
爆発音、火災、群がる人ゴミに驚く。
世芭「私が代わりに行きます。ハナさんは良く存じ上げておりますから。」
運転席から降りてきた執事。
若い、二十歳くらいか?
ブルース・リーの様な体。
筋肉すら”余分なもの”を身に付けることを拒む。
ストイック。
修行僧の様。
世芭「お嬢様を危険な目にあわせるわけにはゆきませんので。」
たんこ「セバスチャン。わたしわ糸錐家の女よ。」
世芭「糸錐は、お嬢様一人しか残っていない分家です。お母様が、本家でお待ちです。」
たんこ「卒業して働けるようになったら、吉備(本家)の世話にはならないわ。」
一人で生きていくなんて、それは強がり。
世芭の目を真直ぐ見れない。
世芭「ひとつ、教えていただけますか?」
たんこ「なによ。」
世芭「何故、私をセバスチャンと呼ぶのですか?」
たんこ「何故って、執事は全員セバスチャンってゆーのよ。」
世芭「そうですか、光栄です。お嬢様の執事と、認めてくださいましたね。」
言葉と笑顔に思いを忍ばせる。
たんこ「ふ、ふんだ。兎に角、ついてきちゃダメよ。」
世芭「判りました。」
見送る背中がいとおしい。
世芭「お嬢様。」
たんこ「あによ!」
一瞬、白にピンクの縁取りのホットパンツ、丈の短いジャケット、ウルフヘア・・あ!すいません、
目の錯覚でした。
世芭「お気を付けて。」
この言葉を聞くと安心する。
たんこ「この間は、車のボンネット吹き飛ばしちゃって、ゴメン。」
世芭「中空構造ながら100kgに及ぶ防弾装甲。あのボンネットが舞い上がるのを、始めてみま
した。」
サイレンの音がいくつも近づいてくる。
たんこ「警察や消防署はイヤってハナが言っていたわよね。」
ヨリ「どっちも、ごっそりくるわよ。」
ごっそり・・く・・る・・??
いざとなったら!!その”ごっそり”ってやつ全部叩き潰してやらぁああっっ!!
むしろっ!!”いざってとき”希望っっ!!!!
巨少女の魂が熱く煮えたぎるっ。
たんこ「急がないと。」
ヨリ「やっぱり行くの?」
たんこ「天然系突撃型腐乱少女・・親友の魂を救うまで、死なせてたまるものですか。」
表情を覗く。
嬉々とした、絵に書いたような。
ヨリ「ぶっちゃけ、こーゆーのが好き。と。」
【うつろ】
檻の中、やつれた漆条。
全て、話してしまった。
聞き出した内容をノートにまとめている、成瀬。
独り言が聞こえる。
町田「教授ですら思いもよらない、すばらしいこと。」
成瀬「まだ、こだわっているの?」
まるで、とりつかれている様だ。
成瀬「井和糠ハナという女の子、どうするの?」
TITANIOのために必要な少女。
彼女が教授の思いを実現する存在なのか?
いや、ロボットを制御するキシリウムシステムは、人の応答速度以上に設計されている。
何も出来ない。
高速で動くロボットの認知すら難しいはず。
しかし、気になる。
・・確かめてみたい。
町田「拉致しよう。」
レジナルドから、パターンデータ共有作業が終了したという知らせ。
軍事施設を襲撃したとき、あらゆる情報・・ログを書き出していた。
それらを集計し、dFORCE7000の自立行動データをリビルドしている。
より最適化されたパターンデータが、全てのロボットに配信される。
全てのロボットが一斉に強くなる。
町田「丁度良いね。新しいパターンのテストが出来る。その女の子は私がつれてこよう。」
漆条に向かい、引き金を引く町田。
トン、床に頭がぶつかる音。
成瀬は死体から目を背けようとする自分を律する。
テロリストになってしまった。
それが現実。
成瀬「私も行きます。」
彼を一人にさせたくない。
町田「いや、計画の第一章が始まる。君には皆のサポートを頼みたい。」
彼の言い方、理性的ではないと思う。
本来なら、彼が皆のサポート、自分が少女の誘拐。
でも、逆らえない。
そんな話しかた。
成瀬「・・判りました。」
部屋を出て行く町田の後姿。
背中が薄くぼやけている。
心配する女。
【腐少女デビュー戦】
ハナが取り残されている演習場。
入り口は封鎖されている。
ゲートに並ぶパトカーと、TITANIOを回収に来た10tユニック(クレーンがついたトラッ
クだよ)。
ユニックの荷台、ブルーシートに隠れて、二人。
ヨリ「なぜ、こんなことに。」
たんこ「くっ、くっ、くっ」
ヨリ「楽しそうにしちゃイヤッ。」
走り去るユニック。
木の影に二人。
飛び降りたようだ。
肘や膝をすりむいたヨリ。
ヨリ「いたた・・たんこ、ゴメン。」
たんこの左肩は腫れ上がり、肘から下は血まみれ。
落下時、ヨリをかばった。
たんこ「フフン、面白くなってきたわ。」
傷口をハンカチで縛る。
片方の端を口でくわえている。
縛りきった瞬間、虚空に向かって眼光キラリ。
明らかなカメラ目線。
明らかな決めポーズ。
ヨリ「あたしが縛ればよかったのでわ?」
チャキ、携帯電話を極めてスマートに取り出し、ハナを呼び出す。
ちなみに携帯はヨリのノキア。
たんこ「もしもし・・ハナ!?」
無駄に鋭い視線。
たんこ「ハナ、着信音量を最大にして。着信音を頼りに探すから、電話には出ないで。」
ハナ「分かったわ。じゃあ、着信音も、声の細いポメじゃ無く、大型犬ローデシアン・リッジバッ
クの吠え声にしておくわ。日本では珍しい犬種だから、他の犬が近くで吠えていても、聞き間違え
もないと思うわ。いい?ローデシアン・リッジバックの吠え声よ。」
たんこ「ロー・・デシリット・・い・・"犬"の吠え声でいいのね。なんかでっかいヤツなのねっ。
ところで、目印とか、ある?どんなところにいるの?」
ハナ「あの、細長い鉄の板3枚で蓋してあって、半分くらい土で埋まってるのね。」
たんこ「え?穴の中に隠れてるの?」
ハナ「うん、」
たんこ「すげー”それ(映画やTVドラマ)”っぺーーっっ!!俄然!!燃えてまいりましたっ!!
宴わたけなわ!!」
腕を回しながらえびぞりするヨリ。
たんこ「あれわ!!袖の護身用具を換装しているっ!!」
不思議と、分身しているように見える。
(ホントは武器の換装で回すの首なのだが・・あっちはスーパーロボット、ヨリは人間、再現性が・・
軽く無念です。魔法の袖口というとコン×ト△ーVとかも。)
ジャキン!!
袖から飛び出したフラッシュライト。
ヨリ「ウルトラホワイト 規制解除!!目を閉じないと、一生目が見えなくなるわよっ!!」
閃光。
たんこ「うぎゃああっっ!!」
目は閉じた。
なんか、まぶたの血管が鮮明に見えた。
そして、全てがただ、真っ白に見えた。
ヨリ「まったく・・大声出して、見つかったらどうするの。」
たんこ「目が!目が!猛烈に痛い!!」
10分後。
残骸に隠れながら進む二人。
たんこが先行し、周囲をチェック。
素早く、確実に。
そして、ヨリに向かって指笛。
ヨリ「なんかもー、漫画の読みすぎじゃねーの。」
20m先に地面に横たわる鉄板3枚発見。
チャキ、極めてスマートに携帯を取り出し、ハナに電話をかけるたんこ。
ローデシなんとかの吠え声は聞こえてこない。
ここではないもよう。
ヨリ「ひょっとして、警察の人にもばれない?着信音量、最大でしょ?」
固まるたんこ。
たんこ「だめじゃわああああっ!!」
呼出キャンセル。
直後、たんこの携帯が鳴る。
ハナからだ。
ハナ「お巡りさんに見つかっちゃった。」
ヨリ「やっぱり?」
近くかどうか分からないが、とりあえず周りを見る。
キュイィィィ。
視力4.0発動。
ゲートの方、1km先。
米粒大の何か。
彼女にはくっきり見える。
足場板を持ち上げている警官が。
たんこ「ひょっとして、(そのお巡りさん)鉄板持ってる?」
ハナ「え?あ、うん。」
たんこ「すぐ行くわっ!!」
オートバイが一台倒れている。
憧れのあの御方、たつみのロケットⅢと重なる。
市街地でのテロリスト制圧用新型オートバイ。
ウィンドシールドは防弾特殊樹脂で銃窓付き。
エンストを避けるためオートマ。
エンジンをかける。
たんこ「あれ?」
音がしない。
防音措置はパーフェクト。
ヨリを後ろに乗せ走る。
たんこ「ククク、気付いていない。」
獲物(善良なるおまわりさん)の近くで飛び降りる。
たんこ「トウ!」
ヨリはハンドルに飛び付き、ブレーキ。
何とか無事に停止。
ヨリ「ふうっ・・っって、いけね、ヤツを野放しにしてはっ!!」
ダッシュで追う。
ヨリ「ま、待てっ。アンタの”説明”じゃ無くて!!あたしのマンストッパーのLOWモードでっ!!」
しかし、時代ってヤツは待ってくれないもの。
たんこ「お巡りがっ!!単独行動が命取りよっ!!」
ハナをやさしく穴からだし、無線で連絡しようとする警官。
ふと、後ろを振り返ると、目の前に、空中で半回転ひねりをしている女子高生がいた。
その少し後ろに、十字を切る女子高生も一人見えた。
首を踵で刈り潰す。
瞬間、意識が途切れ、倒れた。
たんこ「必殺、潰頸踵槌。」
焼け野原。
夕日の逆光。
技の名。
流れるように舞う型。
カメラ目線、決めポーズ。
ヨリ「や、やっちまったよ。」
林に逃げる3人。
入れ替わりで現れたのは世芭。
ゴリッ。
警官の無線機に足を乗せ、静かに破壊。
瓦礫の影に巡査が二人倒れている。
猪突猛進のたんこに回りは見えていなかった。
世芭がたんこを守るため手刀で気絶させた。
音も無く静かに。
世芭「次期当主はお嬢様をおいて他に無い。」
歴史は有れど財界では中堅の吉備家。
それを良しとし、粛々と歩んできたのが今まで。
だが、これからは違う。
早く本家に迎え、王道を歩んでいただかなければ。
その、5分後。
町田の携帯がなる。
レコード(盗聴サーバー)からだ。
警察などの通信を盗聴し、登録したキーワードを発見すると、特定の相手に連絡する。
レコード「キーワード・しょうじょ・えんしゅうじょ・が・ヒット 1けん」
"1"キーを押す。
レコード「さいせい・・演習場内で少女3名逃走中。・・え?女の子、が、逃走中なのか?・・あ
あ、けっ飛ばされたよ。・・封鎖される前に入っちゃって、怒られると思っているのかな?・・あ
ー、そうかも。倒れたときかな?無線機も壊れちゃって。・・(笑)しょうがないな。マスコミに
見つかるとやっかいだ、パトカーでこっそり・・」
"#"キーを押し、中断した。
町田「3人?」
すでに演習場の近く。
バスを止め、DURA-JACKを放った。
【第一章】
先進国各地でdFORCE7000が姿を現した。
目撃者はいない。見えないか、見たものは全て消される。
主に過疎地、人口の少ない場所のライフラインを破壊していた。
電気、ガス、水道、通信回線、道路、鉄道。
慎重に選びながら破壊している。
軍事施設を襲撃したとき、爆薬やロケットランチャーを運び出していた。
火を放ったのは、それを隠蔽する意味もあった。
成瀬の端末に各地から問い合わせが殺到する。
事前に入手していた情報と、実際の配管が著しく異なっているところがあった。
成瀬「300m戻った地面をめくって、そこの配管がどうなっているか教えて。」
壊した後にそれが判明することもあった。
破壊すべきではないものを壊しても、直す準備はない。
計画を部分的に再構築して、新しいプランを指示する。
汗だくの成瀬。
長髪を後ろで縛る。
上着を脱ぎ、端末に向かう。
アミノバイタルのゼリーを口にくわえて、猛然とキーをたたく。
ジャミングできていない軍事衛星があることが判った。
レコードのサブシステム、cマッスルカーブの担当に連絡をとる。
彼も気づいていた。
3分以内にシステムをのっとり、保存されたデータも消去するという。
3台のdFORCE7000が確認されてしまった。
まもなく偵察機がやってくるはずだ。
撤退を指示する。
命と引き換えでも、作戦を実行したいという現場の科学者。
いや、1台の敗北は敵に情報を与え、作戦全体をつぶしてしまう。
説得をする。
そして、計画の第一章は完了した。
寸断されたライフラインの先、多くの人が途方にくれていた。
こんなとき、いつも水や食料、発電機などを運んできてくれる軍隊が、今はいない。
道、線路、ズタズタにされている。
軍用車両でもなければ走破できない。
電話すら通じない。
・・・・・
成瀬に対する、仲間の支持は高まった。
大事な日にいない町田に対しては、不満がささやかれた。
女の子一人を確保。リーダーがすべき仕事ではないと。
【ラフレシア散る】
ハナ達が隠れている演習場。
マスコミのヘリコプターは追いだされていた。
野次馬の少ない塀を飛び越えて進入するDURA-JACK。
TITANIOを積んだユニック。
演習場をちょっと大きな河が横断している。
そこにかかる橋を渡っている。
近くに潜み様子を伺うDURA-JACK。
町田「教授、私は、TITANIOを破壊します。」
そのロボットは、教授が残した、形あるメッセージ。
今、攻撃目標に選択した。
ユニックに衝撃。
車上に突如現れる白銀のロボット。
そのとき。
橋の下からせり上がって来る、禍々しい姿の特殊ヘリ。
それは、1982年ロイ・★ャイダー主演の映画に登場した、ブ▲ーサンダーそのもの!!!!
パイロットは、専用ヘルメットを装着した蛹山。
蛹山「去年、国に120億(円)ほど出させて作っちゃったのよね、趣味でぇ~。」
ヘルメットの動きに合わせて、20mmエレクトリックキャノンが狙いをあわせる。
蛹山「国民にばれると問題だからって、使わせてくれなかったの・・」
トリガーをはじく。
蛹山「・・を、かってに持ってきちゃった。本部長、どんな顔で怒るのかしら?たのしみぃー。」
ドガバララララララ!!!!
クソ重い音。
巨大な弾丸を力任せに高速でばら撒く。
姿を消すDURA-JACK。
橋を離れ、木の陰に隠れる。
町田「ヘリの音なら、DURAのセンサーが感知するはず。なぜだ。」
蛹山「映画どおりに作ったから、静音モードも赤外線カメラもフル装備よ。ちなみにソフトウェア
だけで40億くらいかかってンのよっ(自慢)。」
静音モードをオフにし、ジェットエンジンを始動する。
蛹山「フルパワーで行くわよ。」
たつみ「驚いたわ。本当にロボットが。」
たつみは副操縦席でカメラを操作している。
SF映画のCGではない。
2人乗りなので、たろさんは座席の後ろの隙間に挟まっている。
たつみ「(ロボットの)位置情報送ってるけど、見てる?」
蛹山「愚問!何でそんなこと聞くの?」
たつみ「見事なくらい弾が当ってないからよ。ガンナーは私がやるわ。」
蛹山「イヤよ。これは私のおもちゃよ。」
胸の谷間から携帯を取り出し、たろさんに渡す。
蛹山「ハナちゃんに電話して。私の携帯は使わないで。」
※普通なら渡された携帯をひと舐めなりするものだが、たろさんはしなかった。
渡された携帯からハナの番号を探し、自分の携帯で番号を打つ。
ハナ達の現在位置を確認する。
たろう「ところでハナさん。」
ハナ「なぁに?」
たろう「僕の携帯に番号登録した?番号を手入力したら、ハナさんのフルネームが表示されたんで
すけど。」
ハナ「たろうちゃんは寝ているときに携帯使わないでしょ?」
たろう「ま、使いたくても使えないけど。」
ハナ「じゃ、そういうことよ。」
昼寝しているときにこっそりかよっっ!!
電話を切った。
蛹山「そーそー。わたしとたろちゃんの番号、交換しといて。」
ナチュラルにするっと言ってみた。
たろ「・・」
交換したふりをして返す。
蛹山「今、両手塞がっているから、たろちゃんがしまってっ。」
胸をたろさんの方へつきだす。
エロオーラが立ち登り、空間が歪みだす。
たろさんは携帯を母たつみにトス。
たつみスパイク。
胸の谷間に見事なゴール。
ぶるん、ぶるん。
蛹山「はう!き、効く。」
たろさんのサービスと思っている。
そして、トリガーをはじきまくる蛹山。
いとも簡単によけるDURA-JACK。
町田「信じがたいが、あのヘリ、音を殺せるらしいな。しかし、その状態ではスピードが出ず、D
URA-JACKを追い込めない。通常の状態なら音が大きく、DURA-JACKの自動回避パ
ターンが機能する・・ってところかな。音を殺した状態もログが取れているはず。どちらにしろ今
までに無い敵だな。リビルドしてみるか。」
パターンをリビルド(再構築)する間ヘリから逃げる。
弾を避けるとき、難視運動が破状。
警官に姿を見られた。
警官の頭を握り潰す。
パトカーのドアをむしり、ヘリに投げる。
バキン!
はじき返す特殊ヘリの装甲。
蛹山「映画どおりだっつーのよ。マシンガン程度なら・・って、え?ええっ!!?」
パトカーをひっくり返し、ドライブシャフトをもぎ取っている。
槍のように投げる。
蛹山「ヤバイ!!」
回避。
左側のカメラが潰された。
全速力で逃げる。
最高速度はヘリの方が上。
引き離す。
抵抗するたろうの顔を自らの胸に導こうとしながら。
蛹山「あんた(たつみ)、どうせ操縦できんでしょ。」
エロ女の横っ面を殴り飛ばしながら。
たつみ「10年くらい飛ばしてないわよ。」
1分30秒後。
TITANIOの有る橋。
脇にある林。
TITANIOのコントローラーを握り、木の陰に潜む蛹山。
彼女を置いて飛び去る特殊ヘリ。
蛹山「早く、帰ってくンのよ。」
突然、何かに殴り飛ばされるTITANIO。
蛹山「来たわね。」
攻撃をまともに食らわないよう、細かく動かし続ける。
町田「だれか操作しているな。あの女か?」
闇雲に振り回した腕が、偶然JACKにかする。
蛹山「お、軽く、手応えなかった?」
かなり善戦したが、取り押さえられた。
馬乗り、殴り壊そうとした瞬間。
止まる。
DURA-JACKのカメラが捕らえたもの、TITANIOに取りつけられた、無数のセンサー。
町田「くそっ!!データを取られた。」
良く見れば、幅広のビニールテープで固定している。
さっき付けたのか?
特殊ヘリの副操縦席。
電子機器を慣れた手つきで操り、TITANIOから送られてくるデータをチェックするたろう。
町田はあせる。
TITANIOからヘリへのデータ送信を妨害できない。
準備をしてこなかった。
TITANIOと戦えば戦うほど、後々不利になる可能性がある。
蛹山「気付かれたか?」
動きの止まったDURA-JACKを蹴り飛ばすTITANIO。
消えるDURA-JACK。
ドオオオオオオオオオ!!!!
満ちる移動音。
不気味、不気味。
自分を探している。
恐怖。
葉の音に過敏に反応。
乾ききる喉、眼球。
耐えきれず、コントローラーを放り出し、逃げる蛹山。
町田「そこか、」
ロボットの人差し指にはじかれる。
ぼろ雑巾のように20m飛び、地面にたたきつけられ、一度跳ねた。
町田「ハナちゃん・・だったかな。もう、あのヘリに助けられたろう。」
ペイント弾でベタベタのTITANIOが立っている。
DURA-JACKは待機状態。
チタニウムボディに教授の姿が重なる。
特殊ヘリが戻ってくる。
2人乗りに5人。
操縦席にたつみ。
副操縦席にたろう。
たつみとたろうの間、両座席にまたがって座るたんこ。
たんこは憧れのたつみの肩に、うっとりと頭をもたれていた。
微妙に嫌がるたつみ。
たんこの膝の上にハナ。
大興奮でたろうさんにちょっかいを出す。
ジャマでしょうがない。
ヨリは座席の後ろの隙間で、今日あった事について、悩んでいた。
粉々に粉砕されたTITANIOが見えた。
レーダーをチェック。
敵ロボットはすでに撤退していた。
しかし、
たろ「母さん、これ・・」
カメラの映像をたつみのヘルメットに送る。
たつみ「皆には見せないで。」
少し、離れたところにヘリを着地させる。
たつみ「皆、ここを動かないで。」
蛹山のところまで、200m進む。
土に指で書きかけた文字。
"ニュー|"
【許された男】
成瀬から報告を聞き、指示し、布団に入った。
疲れた。
今にも眠りそうなのに、眠れない。
そのとき。
何も考えていなかったと思う。
しかし、何かを見た気がした。
そして、何を見たのか判っている気がする。
・・気がする。
町田「教授も、これを見たのか。きっと、自分以外の誰かにも、これが見えるか確かめたかった。」
自分自身が高速で、一方向に進んでいるように感じる。
全てが微細な波の干渉に見える。
その波は、今まで、考えもしなかった動きをしている。
意識は更に深く進む。
町田「入れ物なんか無いではないか。」
周囲と自分の境目を感じない。
自分が、濃い偏りに見える。
意識は速度を増し、深く落ちていく。
町田「なるほど、教授のおっしゃった通りだ。私は理解を許された一人になった。真実は、人が命
がけで大事にしてきたものを全て吹き飛ばす、受け入れがたいものだ。だから、神は真実を壷に入
れ、知るべき人だけが開けてよいシステムをつくられたのかもしれない。真実は常につらく厳しい。
だから、人は夢を見る。」
眠りに落ちる瞬間、つぶやく。
町田「はかない・・。」
【独りになる】
朝、階段を下りてくる町田。
下の階、テーブルには二人。
成瀬と古淵。
町田「やあ、古淵君、来ていたのか。」
古淵「・・・」
町田の、やけにゆっくりと感じる動作。
歩みの速度は変わらない。
理想的に無駄が無く、余計な動きが無いから。
控えめで深い表情。
目が恐ろしい、ただ、真っ直ぐ真実のみを捉え、見る。
時折、虚空に何かを探すよう。
脱力された躯。
それは、まるで、
町田「どうした、二人とも。」
成瀬「教授と見間違えました。」
町田「ああ、別に真似をしているわけではないんだが・・気にしないでくれ。」
教授と同じものを見た。
それを確信する。
成瀬「衛星に撮影された画像ですが、肝心のところはロボットかどうか判別不能なほどぶれていた
そうです。もちろん、削除はしておきました。」
町田「そうか、特殊ヘリに乗っていた二人は、私が何とかしよう。」
古淵「他のものに任せたほうがいいと思いますが。」
町田「いや、私がやるべき仕事だ。」
成瀬「古淵君、間違いがあってはならない仕事だと思うわ。」
古淵「そうですか。私はこれで失礼します。」
出口に向かう古淵を呼び止める。
町田「丁度いい、Cro-Mo COMPを持っていってくれ。」
古淵「・・判りました。」
テーブルに着く男。
朝食を出す女。
見れば見るほど、教授と重なる。
成瀬「教授は偉大でした。あまり、気にされないほうがいいと思います。」
町田「ん?フッ、ははは。」
成瀬「心配しているのです。その、笑い方までそっくり。」
トーストが美味しい。
昨日までは、味など判らなかった。
ただ、胃に詰めこんでいた。
町田「教授は、皆が思うほど善人ではなかったようだ。特に科学者を名乗る者には意地悪で、厳し
いと思う。この世にいない、今でもね。」
成瀬「・・」
町田「成瀬君。君たちはこのプロジェクトが完了したら、全て忘れ、ヒトの等身大の科学をしなさ
い。」
成瀬「あなたは、」
町田「私?さぁ、」
きっと、私達の悪、全ての責任を負うつもりだ。
いや、世界中の罪を。
全てが終わった後、世界は彼を悪人にすることで、自身の罪から目を背ける。
彼を”悪”と指差し、自らの行ってきた悪に気付かない。
広い世界、悪は一人。
それを彼は望んでいる。
だめ。
彼一人は。
成瀬「私も、」
一口のパンを飲み込む。
町田「君には、判らない。」
成瀬「教えて下さい。」
町田「(教えるのは)無理だ。」
【被害状況】
ライフラインを絶たれ、取り残された人々。
平地の続く田園は良いが、山に囲まれた地域は陸の孤島となった。
店に残る、缶詰、瓶詰、ソフトドリンク、スナック、酒、ライター、マッチ。
井戸水、川。
畑の作物。
とりあえずは良い。
しかし、いつまでももたないのは明白。
安全が確認できるまで、少なくとも陸からの救援は来ない。
軍用機はほぼ破壊された。
残りも警戒にあたっている。
ドクターヘリや民間のヘリが、食料を投下していった。
しかし、彼らが欲しいものは、当面の食料ではない。
ワンセグやラジオで被害の状況はそれなりに判っていた。
レスキュー隊員が、状況を把握するため、無線機を担ぎ、寸断された道を乗り越えてやってきた。
取り残された人々は、食料を担ぎ、町へ出ようと進んでいた。
彼らはレスキュー隊員に駆け寄る。
「どこへ行けば、休めるのか。」
「診療所に病人が残っている、助けて欲しい。」
襲撃を受けた全ての国が、莫大な費用を必要としていた。
本来、復興の費用を援助する先進国全てが、自国の分すら用意できそうに無い。
金が用意できたとしよう。しかし、施工業者は全ての地域を一度に復旧することはできない。
時間も必要だ。
【空母撃沈】
町田「まだかな。」
成瀬「フォイクト博士からは、まだ、なにも。」
盗聴サーバーから着信。
某国の空母がA-10とアパッチをごっそりと積んで日本に向かっている。
すでに東京湾から300kmの距離まで来ている。
成瀬「ロボットと戦うのは始めて。自国では失敗出来ない。日本でテストするつもり?」
町田「私たちの動きに気付いたかな。次の拠点は人気がない場所だ。30mmガトリング砲もロケ
ット弾も撃ち放題だな。民間人を撒きこむ心配が無いからね。私たちが引っ越したのを確認して、
攻撃してくるつもりだろう。」
成瀬「・・・」
町田「なに、問題は無いじゃないか。」
携帯のブラウザを開き、ブックマークから「FLITE」を選択。
座標、時刻の入力欄と確定ボタンしかない、シンプルな画面。
成瀬に渡す。
町田「全く、私達の望む通りには動いてくれないね。200km地点、原子炉とできればタービン
も無傷で・・なんていうのかな?詳しくないのだが・・その後ろの、プロペラシャフトや変速機に
相当する部分だけ狙えるかな。」
成瀬「計算してみます。」
空母、東京湾から200km地点。
艦橋、一人、一筋の飛行機雲を見つけた。不自然に低い位置にだ。
格納庫。
ババン!!
突如、壁面と床に現れた大穴。
整備員が覗く。
ドォッ!!
衝撃。
梯子に登っていた者は落ちた。
テーブルの上の物は舞った。
まともに立っていられない。
やがて収まる。
間。
艦橋が騒がしい。
船は減速し、にわかに傾きだす。
「浸水!!浸水!!」
灼熱の弾丸は、空母を貫通。
野球で言えばほとんどライナーで飛んで来るように見えた。
海中を10km以上疾り、海底に着弾。
半径2kmが巻き上げた土で濁った。
船は沈む。
総員退艦。
しばらくして、船首を上に海面から現れた。
音量がものすごすぎて、何も聞こえない。
身体に感じる音の振動。
たまに耳鳴り。
垂直に船の4分の一以上が海上に突き出た。
私はてっきりヤ△トは生きていて、■動エンジンを再始動し、また宇宙へ飛び立つのかと思いまし
た。
しかし、空母は再び暗い水の底へと消えていった。
ありがとう、ヤ△ト。
数多の苦難を乗り越え、共に戦った青春の象徴。
今、君は安らぎを得た。
今、君はここに眠る。
この一時だけ、涙を許せ。
さらば、友よ。
さらば、宇●戦■ヤ△ト。
チキショー!!ヤ△トォオオオオオッッ!!!!
・・と、判りやすく言えばそういった気持ちで、青い目の海兵達は沈む空母を見ていた。
【ブレインRW+】
たつみに空母撃沈の連絡が入る。
たつみ「(相手が使った)武器は判っていないのね。」
水槽に浮かぶたろう。
たろうの父(やすひろ)は“忘却”の研究をしていた。
比較的平和な研究のはずだった。
しかし、その過程で、脳の情報を自在に書き換える技術の可能性を発見。
それは、遺伝子操作と並び、非常にデリケートな問題を有し、神だけに許された行いと言われた。
そのアイディアは公から姿を消す。
日本国の裏で、研究は進められてきた。
たろうさんへのロボットの知識ベースの登録が完了。
蛹山が残した仕様書。
たつみはSFかぶれの戯言程度に思った。
仕様は不足だらけ、間違いだらけ。
その検証と修正はたろうのやすひろ、やすひろが行った。
現在オーストラリア。
護衛付きでホテルの中。
安全が確認できるまで日本に帰れない。
重要人物。
手持ちの機材で実現可能という報告。
と、言うか、今居る部屋に有る、非常に高価な最先端機器の数々。
たつみ「あの女、自分の趣味で、どれだけ税金を使っていたのよ。」
やすひろとの通信はヨリの携帯のソフトを使った。
ソフトをCDに焼き、やすひろに送った。
超音波で会話。
やすひろの作った設計図とソフトは、その携帯を介してファイル転送。
それほど大きくはないファイルなのだが、通信速度が低く、時間がかかる。
転送開始から37分。
後30秒もあれば送りきれる。
やすひろ「あらぁ?気付かれた、かな?」
データが送れない。
レコード(盗聴サーバー)の責任者、矢部だ。
握手すると折れてしまいそうな指。
超音波の通信に気付いた。
レコードの設定を変更する。
矢部「サーバーの負荷が上がるけど、」
設計図は全て受取れたがソフトウェアを受信できなかった。
幸いなことに受取り途中のワークファイルが残っていた。
仕様書と付き合わせると95%は受取れている。
残りは日本で何とかするしかない。
やすひろの部下たちが不足するコードを保管する。
並行してハードを組上げる。
2日後に完成した。
システムを起動。
たつみはいまだ半信半疑。
マイクを手に取る。
たつみ「(たろう)右手を挙げなさい。」
ゆっくり腕があがる・・ハナの右腕が。
横に並んで水槽がもう一つ、中に浮かぶのはハナ。
スピーカーからたろうの声が聞こえる。
たろう「母さん、気持ちが悪いよ、吐きそう。」
”やはり”というたつみの表情、問題はある程度予測できていた。
乗り物酔い、VR酔いと同じ症状がでている。
しかし、手応えは感じた。
たつみ「しっかりしなさい。あなたの仕事は、それ(たろう自身とハナ、2つの体を制御する)だ
けじゃないのよ。」
たろうに訓練メニューを指示し、実験室を去るたつみ。
たろうちゃんの意思で、自分の手足が動いている。
ぐー、ちょき、ぱー。
照れくさそうに見ていた。
ちょっと、可愛かった。
教授の事件は蛹山亡き後、暫定的にたつみが引き継いだ。
経歴から部長待遇。
補佐に武藤という男が付いた。
加藤が良かったのだが、腐れと関わることを強烈に拒んだ。
武藤はTITANIOの製造を担当している。
加藤が分解したときの記録。
こなごなに破壊された破片。
それらを手がかりに、ハードウェアは猛スピードで作られていった。
たつみがやってくる。
武藤「ああ、ハードは順調ですよ。でも、ソフトウェアはどうしましょうか?手がかりなしですが。」
見た目といい、性格といい、話し方といい、加藤、漆条と瓜二つ。
世界には同じ顔の人間が3人いるというが、それか。
蛹山が漆条へ送ったメールのプリントアウトを渡すたつみ。
コントローラーの改造仕様書だ。
漆条が担当していた製作の履歴もある。
武藤「これは。」
たつみ「そっ、(ソフトウェアなんて)ほとんど無いのよ。」
人が動かさざるを得ない、原始的な操り人形。それがTITANIO。
CPUなんて、電気炊飯器に入っていそうな、簡単な石っころが一つ付いているだけだ。
武藤「コントローラーの改造担当に聞けばなんとかなりそうだ。ひょっとしたら、ファームウェア
のコピーを持っているかも。」
【科学者の兵器】
空母を一撃で沈めた兵器が見つかった。
緊急のTV会議。
たつみ「10段式ガスガン!?」
それは、高台にある、廃止された駅に横たわっていた。
一見、倒れた巨大な煙突に見える。
長さ240m。
タングステン鋼の芯に劣化ウラン、タングステン鋼、耐熱セラミックを順に被覆した、直径45c
m7mmの砲弾が発見された。
これを10段階に加速。
初速と有効射程は計算中。
発見された砲身は、78N/mm2(800kgf/cm2)の超高強度コンクリートで被覆され
ていた。
砲身を押さえ込むウェイト兼、膨張による破壊防止のための補強に違いない。
それでも、何箇所か砕けており、異型鉄筋D41とD22、6mm150□のワイヤーメッシュが
露出している。
もう2度と弾丸を発射することはできない。
制御装置は持ち去られていた。
急いでいたのだろう、谷底に転がっていた砲弾一つだけ、忘れていった。
敵の武器はロボットだけではない。
相手は科学者である。
最も恐ろしいのは、科学兵器と細菌兵器。
たつみ「ところで、シャフトに当たったのは偶然?それとも、狙ったの?」
”超”が10個付く遠距離の精密射撃。
空気の密度、横風、コリオリの力。そんな情報収集、計算が可能なんて、信じたくない。
しかも、それはただの大砲ではない。
魔法か奇跡か、未知の技術。
この謎を解き明かせる天才はただ一人。
たつみ「240m、10段目。きれいに制御したのよね・・夫を日本に返して!!すぐに!!」
【第2章直前】
山間に取り残された人々は全員保護された。
ライフラインの復旧には莫大な費用がかかり、援助を期待できる国は無い。
そこで、2年以内に復旧でき無い地域は、国が土地を買い取ることにした。
そのほうが安くすむ。
もちろん、本人の希望があればだが、皆を説得可能だと考えてた。
それらの土地はライフラインの復旧が未定なばかりでなく、病院も学校も無い。
無人島で生活するのに等しい。
2年以内に復旧可能な地域も場合によっては土地を買い取り、復旧されない地域で土地を必要とす
る農家などに売る。
これは、フォイクト博士を中心とする、”大規模テロによるライフラインの広域破壊事後対応検討
委員会”の提案だった。
これに沿って、区の統合計画など実際の対応策が作成される。
復旧後も効率的であるように、計画は組み立てられていく。
彼は盗聴サーバーに感知されるよう、最小限の情報を妻に電話で話した。
盗聴サーバー班がTITANIO復活の情報を入手した。
彼らは人のいなくなった田舎町に拠点を移していた。
今までは2、3人で行動していたが、現在は5、6人集まっている。計画通りだ。
町田が出動する。
見送りは成瀬。
成瀬「全てが終わったら、dFORCE7000を引き渡すの?」
町田「ああ、計画書の通りだ。なぜ、今聞くのだね?」
成瀬「いえ・・」
町田「フォイクト博士の尽力で世界は期待した方向に進んだ。第2章が始まる。」
立ち去る背が幽霊のように滲んでいる。
行かせてはならない。
成瀬「皆、リーダーが行くべきではないと、思っているわ。」
DURA-JACKと1台のdFORCE7000を積み、トレーラーのエンジンをかけた。いつ
もの大型バスではない。
町田「私は答えを見なければならない人間なのだ。」
下校時刻。
校門から出てくるたんことヨリ。
世芭のロールスロイスが出迎える。
が、50m先に巨大単車ロケットⅢ発見。
たんこ「ああン!!御りりしぃー!!」
ボッ、ボッ、ボッ。
近付いてくる。
たつみ「・・・」
たつみとたんこの間に世芭が割り込む。
世芭「瀬瀬たつみ様と御見受けします。」
その巨乳大女の睨み返す視線に背筋が凍る。
世芭「くっ、」
彼女は格闘家ではない。
相手に対する、敬意、思いやり、全て無い。
野獣。
いや、彼等は生きるために殺す。
殺すにも理由がある。
しかし、その巨大な乳の所有者は、やるか、やられるか。
生と死。
その境界線を歩く者。
世芭「お嬢様に何か御用でしょうか。私がお伺いします。」
たんこ「セバスチャンはでしゃばらないで。私達二人を結ぶ赤い糸が見えないのっ!?」
見えたら怖いよ、たんこさん。
世芭「この女・・例えるなら、死神が世に現れるための器。関わってはなりません。」
その死神が鼻で笑う。
たつみ「大げさね。彼女は吉備家のお姫様。判っているわ。」
”吉備家”に反応する少女。
たんこ「運命の御方に逆らいたくないけど、あたしわ糸錐家の女です。」
たつみ「わかひめにそっくり。」
たんこ「え!?」
ギャアアアアアア!!!!
ど迫力のマックスターン。(マッドマックス参照)
アアアアアア!!!
ゴムの焦げる匂い。
野太いタイヤでアスファルトに半円を書き、たんこの真横にリヤシートが来るように止まる。
”乗れ”と。
目が輝く。
たんこ「はいっ!!光栄です!!」
もじもじとリヤシートに乗る。
たつみの背中を前に動きが止まるたんこ。
たつみ「どうしたの、摑まって。」
たんこ「は、はひいぃ~。」
肌の接触面積がMAXになるように抱きつく。
リヤタイヤをかきむしり、走り出す。
ヨリ「じゃ、いってらっしゃ、グエ!!」
たんこに胸ぐらを捕まれたヨリ。
左腕一本で強引にぶっこ抜かれる。
なんちゅーパワー。
世芭「死神に食われるお嬢様でもないか。鷹の子として生まれ、鷹として生きるのみ。」
ドサアアァッ。
リヤシートに座らされるヨリ。
ヨリ「げほっ、げほおっ。」
たんこ「ありがとう、来てくれるのね。」
うるうるの目。
ヨリ「判ったわよ。あんた放っておいたら何するか判らないものねっ!!警官蹴り倒したりとかね
っ!!」
後ろの二人が騒がしいので運転しづらい。
ため息。
たつみ「ところであなた・・」
たんこ「”たんちゃん”とお呼び下さい。」
ヨリ「オイ!」
たつみ「たんちゃん??」
たんこ「きゃー、」
たつみ「(なんか疲れるわね)・・は・・何か格闘技の経験あるの?」
たんこ「バーチャと鉄拳を少々。」(うっとり顔)
たつみ「そう。てっきり、あの執事に鍛えられたのかと思ったわ。」
半分当たっている。
たんこの父は彼女が11歳のとき死んだ。
その知らせと共に、母親が迎えに来た。
11歳。
普通ならだまって母についてゆく。
しかし、彼女は違った。
吉備家を徹底的に拒んだ。
父の残した金、贅沢をしなければ困らない。
しかし、それだけでは小学生一人で生活をしてゆけない。
保護者が必要だった。
世芭の兄はたんこの父の部下であった。
会社のバーベキュー大会や趣味の釣等でよく会っていた。
葬式で、たんこは世芭兄弟の側から離れようとしなかった。
兄は家族がある。
たんこは父と過ごした家を離れようとしない。
結局、世芭が住み込みで彼女の身の回りの世話をし、吉備家の母親が財産の管理やさまざまな手続
きを裏で行うことになった。
たんこは今でこそ世話を焼く世芭に冷たいが、そのころは世芭の通う道場に、よく顔を出していた。
彼を追いかけていったのだ。
かまって欲しくて。
かまって欲しくて。
一緒に居たくて、道場でみんなの邪魔をしていたのだ。
そんな気持ちを彼女はいつからか、忘れてしまった。
いや、あたりまえすぎて、その気持ちに鈍感になってしまったのかもしれない。
世芭を”吉備家の手先”などと邪険にするのも、甘え。
たんこ「いえいえ、たんなる天然殺法ですぅ。必殺技は、そのときのノリと雰囲気で・・必殺、敬
転愛抱。」
ぎゅ、ぎゅぎゅぎゅーっとたつみの背に抱きつき幸せそう。
その姿を見て、顔の筋肉が引き攣るヨリ。
ヨリ「今すぐ、そっちの世界から戻ってきなさい。さもないと、安全の確認されていない(開発中
の新型護身用具)プロトタイプの実験台にするわよ。」
たつみ「宵田ヨリ。」
”彼女の父親の作る護身用具は、その性能と人質などを巻き添えにできる安全性から、軍用、官用
に広く転用されている。”
もう一人の少女の情報を頭の中で復唱した。
基地では特殊ヘリにTITANIOを吊るしていた。
なんか、首をかしげながら作業している。
整備士「ヘリでこんなものが持ちあがるんですか?」
その横の薄情そうな青年が答える。
武藤「フフッ、当然そう思うわなぁ。」
整備士「上がっちゃうんですか?」
目を丸くして、特殊ヘリを見上げる。
整備士「このヘリ自身、相当重いんスよ。」
武藤「台車を付けて、300mくらい滑走すれば、たぶん。取説を読んだら、ジェットエンジンの
排気口が30度下を向くって書いてあったから・・上がるよ。たぶんね。」
整備士のため息。
整備士「背広の人は何にしろ”たぶん”までしか考えない。作業服が全て何とかするって思ったら、
大間違いっすよ。」
【3つ目の意味】
警察は”教授”の行方を全力で追っていた。
不明点ばかりの敵だが、教授と呼ばれる首謀者の存在はなぜか、判った。
敵テロ組織の規模は一万人程度と見積もられていた。
実際は内部メンバーと外部の協力者含めて100名に満たない。
プロジェクト実行後、協力者のつてで多少人数は増えたが、非常識に少ない人数で活動をしている
のだ。
”教授”はそのカリスマ的指導者なのか。
”教授”というコードと、日本に拠点があること以外は全く判らない。
本名、国籍、年齢、全て不明。
CIA、MI5、BND・・。
日本国内での活動が活発になる。
すでにこの世にいない教授を探す。
事実上、踊らされている。
彼らの目的は何か。
何の要求も無い。
犯行声明もない。
明らかに今までのテロとは違う。
蛹山の残した"ニュー|"、これも全く判っていない。
たろうのやすひろへ帰国命令。
彼の活動は、今や自身の研究分野を超えている。
彼が切り札。
盗聴サーバーの存在は認識されている。
多少危険でも、日本へ戻るしかない。
これを知った町田は瀬瀬やすひろ帰国の妨害を決断。
町田「我々が表舞台から去った後、瀬瀬君は世界を背負う一人。しかし、帰国を阻止できなければ
殺してよい。」
【出動準備】
たつみ「(たろうちゃんの戦闘服が)できていない。ですって?」
武藤「(とぼけて)え?あれ、必要なんですか?」
たつみの目が強烈に訴える。
戦闘服が先ずあり、それを我が子に着せる言い訳として作戦があると。
武藤「ううっ、」
彼はごく普通の神経を持った、ごく普通の男。
蛹山の負の遺産、そのデザインは常軌を逸していた。作ってしまえば、人間失格。
たつみ「ないなら、出撃しないわ。」
その悪魔のごとき迫力。
男は真っ青になり、しどろもどろ。
武藤「あの、えぇ・・でも、作るのに1週間はかかってしまいますし、その・・」
たつみの表情がいっそう険しくなる。
武藤「ええっ!!だって、あなたのダンナを確保する作戦なんですよ!!」
たつみの怒りは臨界点に達していた。
ゴゴゴ!!
見える!見える!!
たつみの背後に死神が、舌なめずりをして俺を見ている。
これ以上何か言ったら、殺すよりひどいことをされる。
武藤「かっ!代わりを用意しますっ!!」
ガレージに走る。
ダンッ!!
VWゴルフラリーのルーフに赤色回転灯を設置。
鳴り響くサイレン。
緊急車両と化し、渋滞をかき分け、大人のお店へ向かう勇士。
格納庫。
特殊ヘリにくくりつけられたTITANIOを見て心の疲労を感じるたつみ。
メカニック「300mくらい滑走すれば浮くって、言ってましたよ。」
たつみ「滑走?」
排出口を斜め下に向けるから、勝手に前に進んじゃうだけでしょう、と思っていた。
たつみ「?」
TITANIOの右腕だけ、傷だらけでペイント弾の汚れがある。
メカニック「ああ、右腕ね。破壊されたとき、遠くに飛ばされて、無事だったんです。無事ってい
うのも変か?製造(部)が”使えるものは何でもよこせ”ってゆーから。ここだけ、オリジナルの
TITANIOです。」
休憩室。
携帯で遊んでいるたんことヨリ。
89式小銃をたんこに渡すたつみ。
たつみ「レバーは通常"ア"、撃つときは"タ"よ。」
ヨリにも渡す。
ヨリ「よ、よーし、なにか狂って来たぞー。」
ロケットⅢのキーをたんこに渡す。
たんこ「あたし、免許ないですけど。」
きぃっ・・、
中庭に続く窓をおもむろに開けるたつみ。
あまりにも青い空、淡い光と影に心踊る雲が。
見上げる。
雄大な美が心清めるよ。
風が心地良いではないか。
髪を撫で、鼻をくすぐる。
たつみ「単車はね・・自由よ。」
たんこ「はひ?」
ヨリ「ひょっとして、お母様、無免許?」
たんこ「ヨリッ!!このお方への無礼は、アタシが許さないわよっ!!このお方はねっ!!持って
いるのよっ!!」
ヨリ「免許を?」
たんこ「それよりもっとすごい!!永遠の!!魂のフリーパスをよっ!!」
中庭から正門が見える。
ドギャアアア!!!
ゴルフラリーが帰ってきた。
そこら中ぶつけた跡がある。悲惨だ。
窓から突き上げた手に、戦闘服(代理)が握られていた。
ヨリ「バカだ・・今、ここには、バカしかいねぇ。」
ま、てめーもだがな。
実験室。
訓練プログラム完了。
水槽から出るたろうとハナ。
全身に力なく、座り込み、咳き込むたろう。
目眩がする。
吐きそうだ。
背中をさするハナ。
一向に良くならない。
ハナ「た、たろうちゃん。しっかりして、井和糠たろうちゃん!!(”わたしの大事なたろうちゃ
ん”と言いたい)」
ぐったりする。
ハナ「いやああっっ!!獣医さあああぁぁん!!(”お医者さん”と言いたい)」
たろう「かんべんしてくれ。」
準備は整った。
はず。
【第2章:前半】
簡単である。
人気のない田舎。
国へ売却の決まった住宅、施設を破壊するだけである。
まだ売却をしていない者の多くも、この事件におびえ、土地を売った。
売られた物件を更に破壊する。
こうして、広大な国有地が完成してゆく。
成瀬の心は不安で壊れそうだった。
町田に電話をした。
成瀬「やはり、TITANIOの破壊は、あなた以外のメンバーが行うべきです。私が代わります。」
町田「くどいね。」
成瀬「あなたに万が一のことがあったら、プロジェクトは失敗します。戻ってください。」
町田「君がいるじゃないか。そうでなくても計画は完璧だ。怖いほどにね。」
成瀬「会議では多くのことが議論されました。聞きたくないことも。」
町田「企画フェーズの話だね。」
成瀬「人は最後の一人になっても、種を残す努力をすべきだ。すばらしい、でも、そういう意見ば
かりじゃなく・・違う・・」
町田「落ち着きなさい。」
成瀬「人の能力の差を主張するメンバーもいました。」
町田「ああ、」
成瀬「詳しくは口にしたくありません。でも、そういう人も少なからずいるのです。それでも全員
が同じ目的を共有できているのは、あなたがいるからです。皆、万が一のことを恐れている。そし
て、あなたがきっと何とかしてくれると思っている。皆が潜在的にあなたを必要としている。」
町田「教授は"思いもよらないすばらしい何か"が起こると言った。私だけがそれに気づくことがで
きる。TITANIOといなければならない。」
成瀬「あなたと教授の間には、だれも入り込めない。」
震える声が涙を伝えた。
【父帰国作戦:オーストラリア】
メルボルンの高級ホテル。
ホテル内ヘルスクラブ。
汗を流すやすひろ。
ひょろっと痩せ型。
そこそこ長身。
童顔。
めがね。
仕事の予定は完了。
帰国の許可が下りない。
日々、暇である。
ふと、2人の男が両脇に立つ。
日本人。屈強。やすひろの護衛。
やすひろ「どうか、したの?」
左側の男がそばを離れないよう、耳打ち。
彼が隊長だ。
ヘルスクラブを出るとき、入り口にいた別の日本人にそれとなく合図をする。
彼は足元のバッグを少し開き、すばやく中を確認、すぐに締めた。
全身に緊張が走る。
頭部に貼り付けられた骨伝導スピーカーのテストをする。
か細い銅線は肌色のテープで固定され、脇のホスルターにある無線機本体へと接続される。
襟にはマイク。
廊下、エレベータに向かう3人。
隊長「帰国命令です。」
やすひろ「ほぉん、帰れるんだぁ。」
隊長「安全は保証されていません。むしろ危険です。」
やすひろ「ふうん、」
隊長「強行し、どうしても帰国していただきます。従って、帰国許可ではなく命令です。」
やすひろ「なんか、大変なんだねぇ。」
隊長「ええ、大変です。敵ロボットはすでに・・」
ヘルスクラブの方から破壊音。
隊長の表情。
緊張感は一気に頂点へ。
隊長「ついてきて下さい。」
走る。
もう一人の隊員は最後尾。
後ろを振り返った。
ロボットと戦った経験は無論無い。
壁を隔て、見えるわけ無いが、無意識に目が探す。
分厚いマニュアルにすら、1行も書かれていない、未知の恐怖を。
恐怖と、戦う者としての、多少の興味。
隊長「何している、来い!」
ヘルスクラブ内。
何かがいる。
はね飛ばされる器具。
100kgのバーベルが天井に刺さった。
何かが何かを探している。
逃げ惑う人々。
出口に殺到する人の波。
先ほどの隊員が立つ。
いる何かはロボット。
探している何かはたろうの父、やすひろ。
ならば、人の群れを追ってくる。
バッグから89式小銃を取りだし、何かが動き回る空間に乱射する。
中空で弾丸が弾かれる。
手応えはあった。しかし、全く効いていないようだ。
バッグから手榴弾をいくつか取りだし、3m間隔で放る。
爆煙で煙る。
目の前。
dFORCE7000、その銀色の手が隊員を捕らえる。
隊員「来ると思ってたぜ。」
手に手榴弾。投げたのはオトリだ。
爆発。ほぼ同時に消える7000。
外装は大分傷ついたが、致命的な被害は無い。
大量に浴びた血が彼の執念のよう。
カメラレンズの保護フィルムを一層剥がし、人の群れを追う。
廊下の先、エレベータ。
中にいた客が隊員に放りだされていた。
そのとき一瞬振り返ったやすひろの顔を、認識システムがピックアップ。
発見!!
追うが、ドアは閉まる。
行き先は上。
ドアを破壊し、シャフト内に入る。
レールを破壊しながら、やすひろの入っている篭を追いかけ上る。
銃撃。
篭の床を突き破り浴びせられる5.56mm。
豪雨のような弾幕。
執拗な攻撃はついに左肩の装甲を貫通した。
篭の床を蹴り破る7000。
中には小銃2丁、無数の弾倉、隊員1人の死体。
隊長とたろうの父(やすひろ)はいない。
篭側のドアが破壊されている。
7000のオペレータは考える。
・途中の階。外にいる別の隊員が廊下側のドアをこじ開ける。
・篭側のドアは中から破壊。
・隊員一人残し、隊長とやすひろは脱出。
・廊下側のドアは再び閉じる。
計られた、逃げられた。
猛スピードで他のエレベータ、階段を探すロボット。
いない。
下か?
今ごろ1階からホテルを出て、車に乗っているかもしれない。
作戦の失敗を予感しつつ、7000を向かわせるオペレータ。
あせる。
ロボットの進路上にいる者は皆、肉片となり飛び散った。
ホテルの外。
望遠カメラが偶然、空中に何かを発見する。
隊長とやすひろ。
ホテルの屋上にはメンテナンス用のクレーンがある。
この先にパラシュートのハーネスを使って、二人、ぶら下がっている。
階段でもなくエレベーターでもなく、クレーンを使っていたとは。
まもなく屋上に到着しそうだ。
モニュメントを破壊し、その破片を二人に向かって投げる。
隊長が自動小銃で撃ち落とす。
階段から屋上に向かうロボット。
隊員が一人待機していた。
階段を爆破。
破片に埋もれるロボット。
上からGLOCK19の9mmパラベラム弾。
右腕で大きめの破片を掴み、16発全て受け止める。
弾倉交換のため、手すりの影に隠れた隊員。
ロボットの投じたコンクリートの破片は、2度壁を跳ねて隊員の頭部を潰した。
起きあがるロボット。
別な階段も隊員がいるだろう。
時間が無い。
ヘルスクラブに戻り、バーベルのシャフトを5本束ねて握る。
ここで左腕は機能停止。
窓をぶち破り外へ出る。
外壁にバーを突き刺す。
片腕だが、壁に足をかけられる凹凸もあり、猛烈なスピードで登る。
屋上から銃撃。
無反動砲、
全てかわす。
屋上に待機していたヘリが離陸。
壁面のdFORCE7000、身体をそらし、シャフトを投げる。
同時に支えを失い、落下していく。
体を傾け壁面に寄り、ガラスを割り、指をかけた。
ヘリは撃墜。
それを見てロボットは消えた。
10分後。
別なヘリが到着。
クレーンの影からやすひろと、墜落したヘリの本来のパイロットが現れた。
洋上の護衛艦へと向かう。
隊長の機転だった。
ロボットがいないと推測されるニュージーランドから、B-2で日本へ飛び立つ。
成瀬から失敗の報告。
町田「彼には気にするな、と伝えてくれ。瀬瀬博士は私が何とかする。」
オーストラリアのメンバーは死体の確認をしなかった。
さらに、壁を登りロボットの姿を公にさらしてしまった。
町田「やはり、僕らは科学者だ。殺しのプロにはなれない。特に予定外の作戦ではね。オーストラ
リアチームと盗聴サーバー班に伝えてくれ。可能な限り、公となった情報を処理しろ、と。2章は
順調に進んでいる。残すは3章と4章。私は、今回の失敗を致命的な問題とは考えていない。」
【父帰国作戦:日本】
日本。
滑走路にアプローチして来るB-2。
軍施設は何処もズタズタ。
民間の空港、滑走路を1本封鎖。
人払いをする。
着地寸前。
フォークリフトが飛んで行く。
その行く先、陽炎の向こう、B-2のコックピットがゆらいで見える。
DURA-JACKがB-2を破壊するために投げた。
横から影。
B-2に当たる直前、フォークリフトを蹴り飛ばす。
鈍く怪しいチタンの光。
体を反らせB-2の鼻先をかわす。
ロボットのカメラとパイロットの目があう。
B-2の背に着地。
B-2のタイヤも地に付く。
突然、機体を揺さぶる振動。
いつのまにかTITANIOは、機首・・コックピットの直前に移動している。
おや?2つの人の形をした影が、空中を遠ざかっている。
何かを投げ飛ばしたようだ。
先ほどのは、その振動と理解。
B-2は無事停止。
直後、再び振動が襲う。
人型をしたチタンの光は宙に溶けて消えた。
”それ”がジャンプした衝撃だったか。
ゴオオオオオォォ!!
ボバアアアアアバアアアアァッッ!!
頭上を禍々しい形の青い影が通過。
青黒いガーゴイル。
たつみの駆る特殊ヘリ。
たんこ「今よ!早く!!」
いつのまにか巨大な単車がB-2の横に。
女子高生?
いや、閉鎖されたこの滑走路にいるということは、偽装した自衛官か。
やすひろが外に出てきた。
やすひろ「なーんか、可愛い子が来たねぇ。」
ヨリ「う、」
にわかに変わる表情。
見た目若いけど、見た目若いけど・・
体力落ちてそうな風体。
緊張感の無いしゃべりかた。
極めて微妙なファッション。
社会人的に右に倣えの髪型。
本当はどうでも良いくせに、形だけ気を使った笑顔。
ぼけっとして、とろっくさい反応。
『THE OUYAJIE』
きっと、きっと、食とか細くて、肉とか苦手で、朝食のとき新聞読んでて正面に座ると顔が見えな
くて、テレビのナイター中継で微妙に燃えてて、贔屓の球団が勝つと機嫌が良くて、立つとき"よっ
こらしょ"って言って・・
そして、そして、落ち着いてて、色々知ってて、失敗しても笑って許してくれて・・
んで、んで、んで・・・・・・
ヨリ「ス、ストライク・・」
たんこ「え?」
ヨリ「ぐずぐずしないで、行くわよ!この御方を守るわよ!!」
たんこ「ぐずぐ・・?このおか・・?お?おおお??」
やすひろ「あれー?これ、ウチのロケットⅢだよねぇ。家族3人乗れるように、リヤシートが延長
してあるやつ。定員はぁ、2名だけどねぇ。」
リヤシート、ヨリの後ろに座るやすひろ。
ハートに甘酸っぱい何かを噛締めるヨリの両手には、のちに伝説となる2丁の89式小銃が握られ
ていた。
真っ赤。
ヨリ「あの・・」
やすひろ「なんだい?」
なんだい?
なんだい?
なんD・・
ズキュキュキューゥゥ~ン。
ヨリ「あたしに、しっかり捕まっていてください。」
何かが始まってしまった。
それを象徴するように、タービンはうなり、タイヤは焼け、ロケットⅢは未来へと加速する。
「最大全速で真直ぐ走れ」
それが作戦。
スピードが高まれば、ロボットは直線的に追ってこざるをえない。
目視で確認できる。
反撃も可能だ。
逃げるロケットⅢ。
車体にしがみつく三人。
強烈な加速。
血液が進む体に置いていかれる。
瞬断する意識。
間など無く200km/hを超える。
追うdFORCE7000。
走る。
一蹴りでおよそ20m。
毎分200回地を蹴る。
その値は徐々に増え、スピードは増す。
7000を追うTITANIO。
ジリジリと追いぬき、反転。
横に飛ぶ7000。
追従するTITANIO。
背後、DURA-JACK。
町田「驚いた。トップスピードで負けるとは。」
巨大な拳。
当たる。
TITANIOの左腕が引きちぎれ、空に舞う。
残った右腕で、DURAの伸びきった腕を掴み、投げる。
投げた勢いのまま体をひねる。
DURAのカメラに写る右腕。
トレーラーの中。
モニターに映るそれ。
ペイントの汚れを指でなぞる。
町田「教授、教授、オリジナルです。」
地に這いつくばるDURAを踏み台に飛ぶ。
空中の左腕をオーバーヘッドキック。
左腕は激しく回転しながら飛ぶ。
ロケットⅢに向かって飛ぶ。
風にはためくやすひろの背広をかすめ、後輪のわずか3mm後ろ。
開いた手を上に地に突き刺さる。
その衝撃で開いた手は人差し指を残して握られ、左右に揺れる。
まるで”ちっちっちっ”と敵を小ばかにしているよう。
直後。
トラックの交通事故のごとき破壊音。
粉々になった左腕の破片がやすひろの頬をかすめ、ロケットⅢのミラーを破壊。
振り返る。
空中に無力に漂う7000。
スピードが出すぎていたため、突然目の前に立ち塞がった腕を避け切れなかったようだ。
一蹴り20m以上。飛んでいる間は方向を変えにくい。
ふとスピードメーターを見るたんこ。
280km/hを超えていく。
ぞっとした。
恐怖ですくみ、内股に力が入らずむずむずする。
ヨリ「どうしたの?」
はっとする。
たんこ「加速が遅くて、イライラしているだけよ。って、ああっ!!」
バックミラー。
空中の7000が腕の破片を掴み、投げようとしている。
やすひろとヨリも気付く。
袖口を向けて叫ぶ。
ヨリ「ウルトラホワイトッッ!!崩壊出力っっ!!!!」
たんこはバックミラーから目を背ける。
ヨリは防弾アイウェアを装着し、やすひろの頭を抱き寄せる。
やすひろ「ぶふうっ。」
ボンッ!!
ウルトラホワイトのフラッシュライトが破裂した。
ヨリ「っちぃぃ!!」
手の甲が痛熱い。
7000は破片を投げそこない、着地のときによろけた。
ロケットⅢを追って走り出すが、動きがぎこちない。
無駄に跳ね上がってしまい、遅い。
たんこ「やったあ!!」
やすひろ「いーやぁ、他のセンサーが機能を代替するとおもうよぉ。でも、すぐには切り替われな
いんだね。これは良い情報。」
再びスムースな動きを回復し、あっという間に迫り来る7000。
身をよじり、不器用に89式小銃を撃つヨリ。
しかし、連射に驚き、片方を落としてしまう。
レバーを”タ”にするよう言われたが忘れ、”レ”にしていた。
もう片方を撃つ。
しかし、あっという間に弾切れ。
弾倉を入れ替えるが、うまく入れられず落としてしまう。
やすひろ「僕のほうが、ちょっと慣れているかな。」
銃と弾倉を受け取るやすひろ。
やすひろ「揺れるよ。」
身を翻し後ろを向く。
その動きに車体はやや傾く。
300km/h近い。
転倒=死。
たんこは必死でハンドルを押える。
しがみつくヨリ。
女の子二人には前につめてもらう。
片膝をついて座る。
首に下げている社員カードをとる。
靴を脱ぎ捨てる。
足先を延長したシートにストラップで縛りつける。
弾倉を口にくわえ、銃を構え、狙う。
冷間鍛造アルミニウムの巨体。
ギラギラと光り、迫る。
やすひろもプロではない。
いやな汗が吹き出る。
その額の汗が一滴。
時速300kmの風に乗る。
7000のカメラにぽつり。
その静寂。
薄く広がった汗に映るやすひろの顔。
引き金を絞る。
軽い音。
連なって空を疾る弾丸。
それを避けない7000。
右手で弾を受け加速を続ける。
町田「追いついたとき、腕は無くても良い。」
無数の銃弾が徐々に指を削る。
慣れた手つきで弾倉を交換する。
しかし、5.56mmではロボットを止めることは出来ないと感じていた。
それでも撃つしかない。
弾丸を浴びせつつ、ヨリから後ろ手に弾倉を受け取る。
やすひろ「まずいねぇ。」
7000がぼろぼろの右手の影から無傷の左手を伸ばす。
やすひろ「こりゃぁ、捕まる、か、なぁ。」
たんこ「セバスチャン。」
世芭「お嬢様、私の出番は、このタイミングでよろしかったでしょうか?」
ロケットⅢに真直ぐ突っ込んでくるロールスロイスリムジン。
ニトロシステム起動。
5t近い車体。
ダンプカー並みの容量のサスペンションシステム。
そのフロントが持ち上がり、リヤが沈む。
一気に時速400kmを超えた。
たんこ「二人とも!!捕まってっ!!」
たんこに抱きつくヨリ。
ヨリごとたんこに抱きつくやすひろ。
ヨリ至福時間。
たんこ「ぬううぅ~・・・ふんぬらぐわらりゃああぁっっ!!!!」
力任せにハンドルを引き、巨大なバイクの鼻っ面を持ち上げジャンプ。
世芭「さすがお嬢様。」
リムジンの上を走り、反対側に走り抜ける。
やすひろ・ヨリ「ぎゃああぁぁっっ!!落ちる!!落ちるぅっっ!!」
ロボットも当然ジャンプ。
世芭はプッシュアンダーを発生させた状態で突っ込んできていた。
加速しながら、フロントのグリップを回復させる。
ぶわ・・
右に回頭しつつ横転。
跳び箱のようにまたごうとするロボット。
世芭「そうはいきませんよ。」
前輪をこじって倒立。
ロボットの足を引っ掛けた。
バランスを崩すが、柔道の受身のように着地。
4回転がったあと、転がる勢いで立ち上がり、何事もなかったかのように走り出した。
リムジンは2回横転したあと、上下正しい状態で120mほどスケートのように滑走して止まった。
転がっても、なるべくタイヤを下に止まるよう設計されている。
また、シートベルトがロックされていない座席と運転席はエアバッグが動作しない。
世芭「これは手強そうだ。」
ロボットを追って走り出す。
7000はロケットⅢを猛追。
三度追いつく。
再び後ろ向きに座し銃を構えるやすひろ。
急にその7000が消えた。
消える動き(難視運動)をすれば、単車に追いつけ無いのに。
理解を外れる敵の行動。
不安。
ビイイイイイ。
この音。
スコールのように降り注ぐ砲弾。
丁度7000が消えた辺り。
舗装がズタズタ。
特殊ヘリのエレクトリックキャノン。
たつみはトリガーを弾かず、押しっぱなしにした。
消えたのは、回避行動か。
地を叩く、20mm弾。
重い鉄の塊。
衝撃は地を揺らし、振動はロケットⅢに届く。
蛇行。
かなりの減速。
背後にロボットの気配。
追いつかれる。
たんこ「やあああああっっ!!もーーっっ!!ロケットスリイィッッ!!なんとかして!!なんと
かして!!なんとかしてええっっ!!!!」
全開のアクセルをさらに開けようとする。
しかし、天性の才能。
ターボの特性を本能で理解している。
レッドゾーンまで余裕があっても、加速が鈍る直前でギヤを上げる。
速い。
ヘリの操縦席にたつみの姿を見つけるやすひろ。
手を振る。
安堵。
前向きに座りなおし、ヨリに銃を返す。
やすひろ「ふぃー、よかった。いやぁ、体力が続かないねぇ。やっぱぁ、年かな。」
ヨリ「!!」
”ふいー”&”年かな”その黄金文字列に腐れの魂が、ふ・る・え・た。
雄雄しく戦う姿には無反応だったのに。
ヨリ「あの、」
やすひろ「うん?」
ヨリ「戻ったら、じゅ・・銃の使い方を教えてください。」
やすひろは少年のころ、息子同様”鮫の餌”状態だった。
ここで言う”鮫”とは、平たく言えばだが、腐れ恥女を示す。
従って、獲物を狙う猛獣の目は馴染みがある。
しかし、この目は・・その・・初めてだ。
世界屈指の情報量を誇るやすひろの頭脳に登録の無い、数少ないデータの一つ。
しどろもどろ。
やすひろ「・・あ、ああ。それじゃあ、家内が元プロだから・・え?あれ?」
ヨリの目。
ヨリ「じゃあ、いーです。」
ぷいっと横を向く。
機嫌を損ねたもよう。
やすひろ「えええ?え?なんで。」
特殊ヘリのプレッシャーで単車を追いきれない7000。
応援のため、DURAが追撃。
ロケットⅢの後ろに7000とDURA。
これを追い抜くTITANIO。
速い。
ロケットⅢと並走。
やすひろを見つめるTITANIOのカメラ。
やすひろ「たろう・・」
そのロボットの動き、雰囲気は息子にそっくりだった。
バク転するTITANIO。
敵の頭部を狙う6Al-4Vチタン合金の脚。
よける2台のロボット。
一転。
地に手をつき、2台の膝の裏を蹴る。
大きく体勢を崩す。
たつみの口元に死神の微笑。
照準は常に合わせていた。
チャンスへの歓喜がトリガーを押しつぶす。
かわせず砲弾を受ける7000。
しかし、機能が失われる前に、DURA-JACKを空中に投げた。
右側40%を失うdFORCE7000。
ヘリの間横に現れるDURA。
鼻先のエレクトリックキャノンを破壊。
操縦桿を倒す。回避。
機体横に突き出す集合カメラユニットにDURAの指がかかる。
もぎ取られた。
2つにちぎり、単車とヘリに投げる。
ロケットⅢを襲う破片。
TITANIOが蹴るが、かするのが精一杯。
やすひろがヨリから小銃を取り上げ、襲いかかる破片に銃底をつきだす。
無力に弾き飛ばされる。
やすひろ「痛っ!!」
リヤタイヤがバースト。
破片が当たったようだ。
前輪なら即座に横転、全員即死だった。
蛇行。
ここで、急ブレーキをかけてしまう。
前輪がロック。
前まわりに吹き飛ぶロケットⅢ。
後ろから捕まえ、抑え込むTITANIO。
背にDURA-JACK。
頭部のセンサーが精密な位置をたろうに伝える。
単車をかばいながら、敵の拳を皮一枚でかわす。
ジュラルミンとチタン、表面0.1mmが接触。
2色の火花。
時速80km/hを切った。
単車から手を放し、DURAと対峙する。
激突するジュラルミンの拳×チタンの脚。
その向こう。
テールローターを破壊され、回転しながら不時着する特殊ヘリ。
火花を散らして地を疾る。
たつみ「こんな早くにコイツを失うなんてっ!!」
ロケットⅢはバーストしたタイヤでヘリへ走る。
24年型柄付手榴弾4本を腰に下げ、ツヴァイシュス・ゲヴェーア(Mauser M1918)
とハチヨン(84mm無反動砲)を両手にぶら下げたたつみが降りてくる。
たんこ「あああっ!!お母様が、お母様がっっ!!あんなにおりりしぃー!!」
やすひろ「えええっ!!??」
たんこのテンションに驚く。
世界屈指の情報量を誇るやすひろの頭脳に登録の無い、数少ないデータの一つ。
またしても目の前に展開されていた。
ヘリまで100m強、ホイールが割れロケットⅢついに止まる。
降りてたつみへと走る3人。
たつみ「伏せろぉおおおっっ!!」
ロケットⅢから降りて来た3人の後ろ、体の40%を失った7000。
まだ、しばらくは動ける。
片足でジャンプ。
やすひろに襲い掛かる。
ヨリ「あなたと一緒なら、死も本望よ!!」
やすひろに抱きつく。
やすひろ「何ィ!?なんだってぇ??」
二人を押し倒し地に伏せるたんこ。
ハチヨンを構えるたつみ、しかし。
たつみ「だめ、弾が届く前にやられる。」
恐怖で座り込むたんこ。
たんこ「セ!セバスチャン!!」
世芭「ここに居りますよ。」
7000を轢き潰す。
ロボットのパーツがホイールハウスに噛み込んでリムジンも走れなくなった。
大きくため息をつき、構えていたハチヨンを下げるたつみ。
世芭が降りてくる。
世芭「皆さん。お怪我はありませんか。おや?あなたは瀬瀬博士、お会いできて光栄です。」
たんこ「挨拶は後にして、セバスチャン。」
やすひろ「せばすちゃん??」
走る4人。
ヘリからたろうとハナが降りてくる。
おそろいの衣装。
と、ゆーか、
やすひろ「た、たろう・・」
涙を禁じえない。
たんこ「おおお、すっごーい。」
どこからどう見ても、
”ちょっぴりエッチ系の美少女アイドルユニット”
特にたろうさんは色白で唇が赤く、華奢で透明感があり、どこかはかなげである。
こ、こ、こんな可愛い子が、女の子なわけないじゃないですか!!
たんこ「絶対、ヤバイって。アレ。」
ヨリ「ハナ、あんた彼氏に負けてるわよ。」
たんこに氷水の入ったボトルを渡す。
たつみ「かけてあげて。」
親指でハナを指差す。
人を超えた速さでコントローラーを操作。
ハナはオーバーヒートしていた。
ヨリを不時着したヘリに乗せる。
たつみ「モニタのここ、ERRORが表示されるか画面が消えたら、たろうに知らせて。」
うなづくヨリ。
それは対通信妨害システムのステータス表示。
妨害を探知するか一定時間毎に安全な帯域へ切りかえる。
法規は無視。
墜落した今、いつ使えなくなるか判らない。
現実味のないロボット同士の戦い。
を見ている。
武藤「部長おおおおっっ!!」
派手なスキール音。
ゴルフラリー。
武藤「見つけましたあああ!!」
たつみ「距離は!?」
武藤「ざっとお3km!!」
じっとハチヨン(84mm無反動砲)を見る。
たつみ「500mで撃つ!!」
世芭に手榴弾をあるだけ渡す。
世芭「心得ました。」
たつみの間横をゴルフラリーがドリフトで通過。
背中からボンネットに倒れこむたつみ。
フロントウィンドウを転がりあがる。
ルーフで膝を立て静止。
室内で”ボコッ”と音を聞く。
たろうに視線。気付く子。
ツヴァイシュス・ゲヴェーア(Mauser M1918)を投げるたつみ。
空中をTITANIOへ向かうM1918。
気に止めないDURA。
たつみ「やっぱり(放棄された銃は、弾が尽きたと判断するのね)。」
それをモニタで見ている町田。
町田「自立行動ロジックの、理解が進んでいるようだ。」
新規でコマンドを組み立てて、阻止する時間は無い。
後ろ手にM1918を得るTITANIO。
たんこ「ううーっ!!(お母様が)おりりしすぎて、けしから~ん。」
ハナ「あの、水、止めて。」
大人のお店製、ヤヴァイ衣装が透けるほどかけてしまった。
その思ったより乳のあるボディーラインをヘリの中から見る親友。
ダム!
防弾ガラスをたたく。
ヨリ「おのれぇ~。いつのまにぃ~。裏切り者っ!!」
よりちゃん、貧も需要あるから、がんばれっ。
町田のトレーラー。
近付いて来る大型バスが1台。
携帯電話のアプリから短距離用の無線を選択。
社内のホストに Bluetooth 接続。
町田「成瀬くんだね。帰りたまえ。」
無応答。
バスはトレーラーまで5分の距離。
バスの下に影。
MAG-HFが出る。
ロボットなら1分以内に着く。
たつみの狙いはトレーラー。
戦闘が始まってしばらく、特殊ヘリは戦いに参加していなかった。
相手に悟られぬよう、怪しい車両を探索していた。
候補9台の位置をUSBメモリに入れ、紙にくるんでゴルフラリーの上に落としたのだ。
今、たつみを乗せたゴルフラリーは1.5km先に迫る。
MAG-HFがトレーラーに到着。
ナパーム弾を手に空港に入った。
それは成瀬の発行したコマンドではない。
成瀬「制御を返して下さい。」
町田「すまない。ちょっと、借りるよ。」
成瀬のモニタに表示。
”特権ユーザーによりロックされています”
それは町田の意思ですらなかったのかもしれない。
対峙するDURAとTITANIO。
町田のモニタに映るたろう達の姿。
ピンクのふりふり超ミニスカ、ナース風。
町田「まさに、迷える姿だ。」
DURAとMAGにコマンドを送信。
モニタの表示、
”自立メインへ遷移中”
”切断中”
5秒後、
”切断完了”、接続プロンプト。
町田「この世は迷える魂のゆりかごだ。」
ハチヨンを構えるたつみ。
我が手をじっと見る。
感が鈍っていないことを祈る。
運転席の武藤。
表情に出ないが緊張しているに違いない。
たつみ「武藤。」
返事が無い。
たつみ「武藤!!」
武藤「はい!?」
ひどく緊張をしているらしい。
たつみ「外したらあんたのせいよ。」
武藤「うぐっ。そんな、カンベンしてください。」
たつみ「まっすぐ走って、500m地点で合図。それだけよ。」
武藤「判ってますよ。」
たつみ「それだけで、良いのよ。」
武藤「・・判りました。」
”それだけ”・・すこし、気が楽になった。
町田「言葉を生み出した瞬間、人々は、迷うことを始めたのかもしれない。」
通信が入る。
反撃をしない男を問い詰める女。
成瀬「なぜなの・・」
町田「知っているからだ。」
成瀬「・・何を、全てを?」
町田「真実を示す言葉は無い。知る者が極端に少なく、言葉のイメージを共有できないからだ。も
し、この世を愛しているなら、迷い続けなさい。やり尽くすな。私は・・」
火を吹くハチヨン。
町田「この世に悪は、私一人。」
成瀬「事実じゃないわ。」
町田「私達が問う罪、その加害者は人類の殆ど全てだ。この世では罪も罰も問うのは困難だ。」
成瀬「この世では?天国と地獄があるというの?」
町田「君はどう思う?とにかく罪は私が持っていくよ。その資格は先日得たんだ。」
成瀬「判らない事を言わないで。あなた・・戻ってきて・・」
町田「時間だ。」
トレーラーに着弾。
炎上。
成瀬「!!!!」
声にならない。
町田は曲がったフレームに下半身を挟まれて動けない。
生きながら身を焼かれる。
町田「知っているものほど、”それ”に逆らえない。”私の思いもよらない事”とは・・教授、フ
フッ。判っていたのでしょう。ただ、言葉に出来ないだけで。強いて言うなら、バランスか。知る
ことを許された私には実現できない。すまない。しかし、これで始ま・・ ・ ・
・」
MAG-HFは破壊されたdFORCE7000にナパーム弾を投下。
直後、走るDURA-JACK。
たろう達から離れていく。
TITANIOに背を向けて。
銃を構えるTITANIO。
足を腕を次々に撃ちぬく。
その悲しい後ろ姿。
腹部のアクチュエーターを撃ち抜かれ体勢を崩す。
もはや、自力で走れない。
白い影。
肩をかすMAG-HF。
立ち上がる。
二人で走る。
行く先にナパームの業火。
身を投じるDURA-JACK。
見届け、去るMAG-HF。
大型バスに戻る。
そして、残された女。
涙が枯れるまで、動けない。
【ニュートリノ】
研究室。
電気がつく。
やすひろ、一人。
十台ほどPCが並ぶ。
やすひろ「へぇ、こいつぁ渋いなぁ。」
IBM PS/V Masterの初代。
Linuxが立ち上がる。
やすひろ「BSDじゃないのか・・。」
リポジトリから事件の資料を取得し、回覧するやすひろ。
すっ・・、
テーブルの上に冒険活劇飲料サスケが1本置かれる。
たつみ「どう?」
やすひろ「うん、これは・・」
一つのウィンドウを最大化する。
地面に指で書かれた”ニュー|”の画像。
マウスカーソルでぐるぐると示す。
やすひろ「・・ニュートリノだろうね。ふつうにさ。」
パキュ。
ポカリスエット初代ボトルのキャップを開けるたつみ。
たつみ「カミオカンデとか・・」
やすひろ「いーやぁ、ニュートリノを放出する装置をつくったんだなぁ。これが。」
たつみ「装置?施設でなく?」
やすひろ「ああ、3~4mのロボットに負担無く搭載可能な、恐ろしくコンパクトな装置さ。」
たつみ「ありえないわ。」
やすひろ「どうやって造り得たのかねぇ。でも、そうじゃないと説明が出ぇー来ないんだよ。」
たつみ「・・」
やすひろ「盗聴も妨害も出来ない、彼らの通信方法をね。無線といっても極めて特殊。受信機にニ
ュートリノを打ち込むことで成立する。盗聴のためニュートリノをキャッチするなら、受信側に同
期して別なニュートリノを打ち込む必要がある。それ事態困難だが、ロボットでも運用しているか
ら、位置と距離を特定する測量をやはりニュートリノで行っているはず。それまでごまかすとなる
と・・エラー検出が完璧なら、盗聴できるのはせいぜい1パケットかな?」
その頭脳。
知識のテーブルの上。
盛り付けられた”解答”。
やすひろ「ま、だぁれもそんな方法で通信すると思わないからー、そもそも盗聴も通信妨害も不可
能だったわけさぁ。今までわね。」
たつみ「今までは?」
虎の眼光。
やすひろ「え?な、なに。」
怯えきった仔猫の目。
たつみ「今後は可能なのね。アナタがいるから。」
やすひろ「いやっ、と、そこまでは・・ええ~、」
机に押し倒されるやすひろ。
たつみ「少なくとも、通信妨害は簡単よね。」
やすひろ「そう、そこなんだねぇ。」
【検査】
病院。
たろうとハナの精密検査。
ハナは酷い筋肉痛。
階段がつらい。
だるく、頭がぼーっとする。
たろうにちょっかいをだす元気も無い。
薬を飲む。
武藤「どうです?」
医者「お嬢ちゃんの方は、筋繊維がズタズタですねぇ。」
にわかに怯えるハナ。
医者「ああ、ほっとけば治るんだよ。ただの筋肉痛さ。」
ほっとする。
ハナ、たろうに向かって笑顔。
照れて目をそむけるたろう。
軽くむっとして、下を向くハナ。
武藤「全く、ちびっこどもは可愛いのう。」
医者「まぁ、1週間は無茶なことをせんで下さい。」
武藤「1週間TITANIOなし、か。で、たろう君は?」
医者「首から下は問題無いですよ。ま、強いて言えば胃がちょっと荒れているかな・・ストレスか
な?脳波は東からファイルを預かってます。データだけお渡しすればいいのですよね。」
封筒の中身を確かめる。
CDが一枚と、そのプリントアウト。
武藤「ありがとう。これでいいです。」
【敵は未来】
研究室。
瀬瀬夫妻。
たつみ「で、判ったことは他にも有るの?」
やすひろ「多段式ガスガンの精密射撃の秘密は、たぶん・・判った。」
たつみ「・・」
やすひろ「あの砲弾の後ろには、簡単な姿勢制御装置が付いていたのさ。おそらく圧搾ガスかエア
ブレーキだろうねぇ。ほぉら、この画像さ、何かを固定するための凹みが有るだろぉ?」
たつみ「(目標と砲弾の)位置を調べる方法は有る。(砲弾も)かなり良い精度で撃ちだせる。あ
とは、ほんの一寸だけ、ずれを修正する手段が有れば良いというわけね。」
やすひろ「あいつらー、わざと砲弾を捨て行ったんじゃないかな。混乱させるためにね。姿勢制御
ユニットを取り外して、さも、置き忘れたようにさぁ。」
たつみ「かもね。彼らの盗聴能力に付いてはどう?」
やすひろ「あれだけ、何でもかんでも盗聴しているとなるとねぇ。詳しい説明は省くけど・・クラ
ッキング云々はさておき、最終的には、大量の暗号を瞬時に解読する技術に、話は行きつくと思う
んだよ。」
たつみ「常識的には不可能ね。」
やすひろ「理論なら、皆、知っているだろぉ?」
たつみ「量子コンピュータ、って言いたいの?」
やすひろ「どぉーかな。さすがに断言は出来ないよー。でも、もしそうなら、僕らが戦っている敵、
それは”数十年先の未来”・・かもね。」
【反撃の準備】
河川敷の滑空場。
グライダーなどが利用している。
草むらをならしただけの飛行場。
測量士が来て、杭を打っていった。
間もなく数台のダンプ。
砂利を敷き詰めだす。
並行して外周に松板をまわす大工。
転圧。
数台のミキサー車。
土間コン。
なんと3日目の朝に、飛行場が完成していた。
当面はへリポートとして運用。
ジェット機には長さが足りない。
続けて滑走路延長の工事が始まる。
やすひろの帰国作戦のとき、滑走路を借りた飛行場からクレームがあった。
民間の施設内で戦闘をした。
一般市民をまきこむ可能性があった。
滑走路は銃撃などでズタズタ。
クレームは当然。
代わりの飛行場が必要だった。
滑空場の回りは見渡す限り田んぼだけ。
田の一角を借りた。
土で埋め、締め固め、厚さ15mmの鋼板を敷く。
2階建てのプレハブ小屋×3。
大型のディーゼル発電機×2。
仮設トイレ。
LPガスのタンク。
給水車。
無線機、パソコン、アンテナ等、機材が揃う。
兵隊が集まる。
滑空場の河側に土嚢が積み上げられる。
少々の増水なら、これで絶えられる。
数機のヘリが着陸する。
トヨタ・センチュリーの要人向け改造車が到着。
男が一人降りる。
手袋をしている。
総員敬礼。
現場の責任者らしき男が駆け足でやってくる。
手袋の男が先ず聞く。
「ヘリがロボットを撃破したレポートは全員読んだか。」
皆、読んだと答えた。
土手を超えて滑空場に行くための仮設ロングスパンリフト。
組み立て中のそれを見て「スクランブル時には遅くて使えない。滑空場側に、待機できる小屋を新
設せよ。」と指示した。
ヘリと銃を確認する。
「使えるものが少ないな。敵ロボットは時速300kmで走り、有効な攻撃は空からの機銃掃射。
13mm未満の弾丸は無力だ。貴様、レポートを読んでいるといったな。それで、これか。部下を
無駄死にさせる気かね!?」
トレーラー。
「来たか。」
修理、モディファイされたTITANIOが積まれている。
整備士の持つファイルには「TITANIO-SL」と書かれている。
男はフッと微笑んだ。
「瀬瀬(たつみ)君はね、非常に優秀な部下だった。公表は出来ないが、実践経験が有る。多くの
ね。時を経て、彼女の息子と共に戦えるとは。フフッ。聞けばまだ高校生。あの戦果だよ。判るか
ね?きっと、筋骨隆々。狼のような目をした、ほれぼれするような良い漢だよ。楽しみだ。」
見上げた空。
青雲。
【父と母と】
射撃場。
もくもくと引金を引くヨリ。
目的はただひとつ。
認められ、やすひろの警護を一手に任されること。
出張時は二人きりになれるはず。
思わず妄想。
弾丸は的を外れ、天高く消える。
果たして、彼女の弾丸は未来を射たろうか。
それを見るたつみ。
壁を背に、何かの上に座る。
手に梅コーラ。(基本的に某焼肉屋でのみ、入手可能だったはずだが・・)
ゲップ。
現役時代を思い出していた。
・・・・・・・・・・
手袋の男、霹蔵(ひゃくぞう)。
当時まだ一等陸尉。若い。
まだ手袋はしていない。
その部下にたつみ。
銃を手に、ひたすら蹴りの訓練をする。
ぼろぼろの立ち木。
屈強の男に囲まれ、死を傍らに、極めてストイックに、ハードボイルドに生きる。
霹蔵「よっ、准陸尉。あっという間に出世するな。いつか、追い抜かれるかもなぁ。」
たつみ「・・・・。」
霹蔵「君の蹴りなら軽く1t有る。ましてやその脚の長さ。俺たちは市街戦が多いから、突撃銃に
足技のスタイルはありかもな。」
たつみ「・・。」
霹蔵「フフッ、キツイ女だな。また、話に来るよ。」
去る霹蔵。
無言で立ち木を蹴る女。
やすひろは大学院生。
所属した研究室、その博士は脳科学の権威だった。
海外出張。
6人のチームの一人として、若き日の父は参加していた。
彼らがテロリストに狙われているという情報が入る。
かなり緊急という。
博士には、なぜ自分が狙われるのか、判らない。
現地の軍隊が彼らを保護してくれることになった。
しかし、なるべく早く帰国して欲しい。
テロリストを逮捕するまでは、民間の空港を使わないで欲しい。
等の希望。
6人を引き取るため、外務省と警察の担当者を空軍が運ぶ話になる。
特戦の霹蔵に声がかかる。
たつみもメンバーに入った。
現地の兵が6人を保護するために急ぐ。
なぜ、その博士が狙われるのか、だれにも判らない。
それが、情報入手の遅れた原因だったか。
敵が巧妙だったのか。
爆破。
テロリストは階が2つ上の部屋にいた。
一つ上と一つ下は、やすひろの護衛がいた。
テロリストは、バスルーム横に貫通している、比較的広いパイプシャフトを利用し、6人の泊まる
部屋を狙った。
十数時間後、空しく遺体を引取りに来る霹蔵達。
犯人もすでに捕まっていた。
しかし、現地の担当者は2人だけ生きているはずと言う。
死体の数が足りないらしい。
学生であったやすひろと友人は、異国を楽しむため町に出ていた。
当時は携帯電話が一般的ではない。
ましてや海外。
犯行声明。
博士の思想を悪く言うが、それが爆破の目的とは思えない。
とある、テロ組織の資金源である企業。
その最重要プロジェクトに、博士は都合の悪い存在だった。
彼の進言によって、国の許可が下りない。
若き父と友人は捕らえられていた。
捕らえられた実行犯と交換するつもりだ。
で、霹蔵達の活躍により助かる。
長くなるので、今は詳しく書かない。
機会があれば書いてみたい。
女性に見えるとは言わないが、十分高校生に見える、童顔の父。
屈強の男に囲まれ、死を傍らに、極めてストイックに、ハードボイルドに生きているたつみ。
彼女にとってやすひろはショッキングな生き物だった。
目が追ってしまう。
日本の地に足をおろすころ、真実の自分を見つけていた。
腐れの世界。
半年後、出来ちゃったので責任を取った、たつみが。
霹蔵に報告に行く。
たつみも幹部となり、久々に会う。
霹蔵「なんだね、そのマタニティーワンピースは。でかい腹は。」
たつみ「そうね、いわば闘志の現れかしら。」
良い笑顔。
霹蔵「へぇ、変わったなぁ。ま、おめでとう。」
出産後復帰し、出世もしたが、まもなく正式に除隊した。
・・・・・・・・・・
今。
ヨリが引き金を引く姿を見ている。
たつみ「あの子、だいぶサマになってきたじゃない。」
立ち上がり、尻の下に敷いていたものを持ち上げる。
短く、徹底的に軽くカスタマイズした89式小銃2丁と、背中に背負うタイプのホルスター。
【第2章終了】
各国にメールが配信される。
ある施設の設計図。
本文の一部
“人は、奇跡的に永い期間存在しつづける種となるか?
大地は姿を変え、環境は変わる。
今、温暖化を問題にしているが、はるか未来、氷河期と戦っているかもしれない。
人の姿を変えているかもしれない。
現在の私たちと、どんなに変わっていても、それを人と言うのか?
この時代に考えるべきは何か?“
メールの最後に、文字盤が黒塗りされた時計のアプレット。
”合格者には、文字盤付きの時計を送る。”
このアプレットは何の時計かという質問をメールするが、答えは無かった。
億年スケールの飛躍した内容。
それ自体に、興味を示す国は無かった。
テロ組織との接点。
目的を示す何か。
その意味のみで、メールは分析された。
【たろうの可能性】
武藤が病院から預かってきたデータは、その病院で測定したものではない。
戦闘中に測定したデータだ。
病院はデータを整理しまとめた。
それが出来る先生が居た。
研究室でたろうの脳波データを分析する父と母。
戦闘中に得た、他のデータと付き合わせる。
やすひろ「注目すべきは2点。」
たつみ「・・。」
やすひろ「一つ目は戦いの前半。敵ロボットの最高速度を旧式のTITANIOが超えたところだ
ね。」
たつみ「敵ロボットの走行パターンは、机の上で計算したもの。」
やすひろ「そう、知りうる限りの環境の変化に対応しているはずだが、結局は最大公約数的な動き
にならざるを得ない。たろうは“今、その場所で、ロボットをどう動かしたら最も良い”か、探し
出した。自動制御よりロボットを効率良く動かすことが出来た。」
たつみ「たしかに、自立システムには限界がありそうね。」
やすひろ「二つ目は、位置の補完。最初、たろうは敵ロボットの位置をTITANIOのカメラや
センサーで常に追い続けていた。しかし終盤、ヘリが墜落したあたりからかな?部分的にカメラや
センサーでチェックするだけで、途中の位置情報はたろうの脳が作り出している。特に興味深いの
は、脳の負荷が下がっていることだね。」
たつみ「本当ね。たろうの脳が補完した位置データと、センサーのログがほぼ一致しているわ。信
じられないのは、攻撃してくるタイミングまで、正確に補完していること。ありえるの?」
やすひろ「さぁ、ただ、目の前にある事実は、否定できないかな。」
【引継】
防衛省。
霹蔵「十年ぶりかな。」
たつみ「忘れたわ。」
副官「君!!」
霹蔵「いいのだ。瀬瀬君、民間人でありながら、良くやってくれた。礼を言う。」
たつみ「腐れ女が・・」
霹蔵「ん?」
たつみ「ちょっと、ケツを拭いてやろうかなって、思っただけよ。」
霹蔵「フフフ。そうか。後は私に任せてくれ。もっと早く、こうしたかった。」
たつみ「(あなた英雄中の英雄だもの。傷を付けるような使い方、)上の連中がするわけないでし
ょ。」
霹蔵「とにかく君達には無理をさせた。で、君の息子のたろう君とは、いつ合えるのかな?」
たろう「・・・」
ずっと、母親の横に座っていた。
ブレザー姿で。
会議室、テーブルに隠れ、ズボンかスカートかは判らない。
霹蔵「この娘も君の子かい?口元がそっくりだが。」
たつみ「私の子供は男の子の”たろうちゃん”ただ一人よ。」
霹蔵「え!!?」
たろう「・・・」
ハナ「・・・」
たんこ「・・・」
ヨリ「・・・」
武藤「・・・」
やすひろ「すいません・・・」
今一度、たろうさんの顔を見る。
だから!!こんな可愛い子が女の子なわけないっつってんだべっっ!!
霹蔵「ううむ、」
たろう「・・・」
ハナ「・・・」
たんこ「・・・」
ヨリ「・・・」
武藤「・・・」
やすひろ「あの、申し訳無いです・・・」
立ち上がり、たろうに迫る霹蔵。
威圧感。
左手を差し出す。
霹蔵「握手は左手で頼むよ。」
手を握るたろう。
霹蔵「もっと、強く握るものだ。」
必死で握る。
霹蔵「・・よし!君が頼りだ。共に戦おう。もう一人、ハナちゃんはだれかな?」
ハナ「はい、」
霹蔵「戦いは、怖かったろう。今後は我々が盾となり守る。怖い思いはさせない。皆、本当にあり
がとう。質問がいくつか有る。それに答えてくれたら、引継ぎは完了だ。元の生活に戻ってくれ。」
たつみ「たんちゃんとヨリを使ってあげて。」
霹蔵「女子高生の二人かい?難しいと思うが。」
ヨリ「お願いします!!」
認められ、やすひろに近付くチャンス。
食い下がる。
やすひろをちら見。
たんこ「マイマスターのご命令なら。」
霹蔵「危険なことはさせられないし、そもそも入隊できないと思う。」
たつみ「もう十分、危ないことをしているわ。それに、たろうとハナちゃんはどうなの。敵ロボッ
トに対して有効だとわかったとたん、手のひらを返して待遇が良くなったのも気に入らないけど。」
霹蔵「ううむ・・判った。君が言うなら、考えておこう。」
ヨリ、小さくガッツポーズ。
たんこはたつみに向かい、胸に手を当て会釈、忠誠のポーズ。
夜。
ベランダ。
たろうと霹蔵。
霹蔵「私はね、軍人という職業が好きではない。」
たろう「・・」
霹蔵「人殺しは犯罪で職業ではない。自衛隊という考え方に誇りを持っている。しかし、私の隊に
限っては、多くの血を見てきた。そういう役目だった。」
たろう「う・・ん、」
霹蔵「なんだね?」
たろう「食べるために牛を殺すのも、悪いこと?」
霹蔵「フフ、おじさんを慰めてくれるのかい?優しいな。その通り。人は、全く善にも、全く悪に
もなれ無い。」
たろう「悪いことをするな、とは言わないのですか?」
霹蔵「言うね。他人にも、自分にも、日々、言う。」
たろう「なるべく善い事だけをするためにですか?」
霹蔵「バカタレ、完璧を目指さんか。」
たろう「はぁ、」
霹蔵「人生の汚れは取れない。良き人ほど、汚れの落とし方を知らない・・いや、誤魔化し方か。
隠さず、胸をはって生きろ。」
霹蔵の携帯にメール。
メールの内容。
驚愕。
霹蔵「用ができた。また、話そう。」
たろう「はい・・」
肩を叩き、去る。
父とは違うタイプのおじさん。
ちょっと、あこがれた。
【分裂】
成瀬「第3章は予定通り行う。終了後、私達は全てのロボットを処分。あなた達はロボットと共に
潜伏。第4章は私達が実行を目指して再検討。これで良いわね。」
古淵「ああ。CARBON-LOGICはもって行って良いのか?」
成瀬「ええ。」
古淵「どうせ処分するなら、他のロボットもくれないかな。」
成瀬「だめよ。」
古淵「ふうん。俺は処分せずに持っていたほうが良いと思うよ。ロボット。」
成瀬「その話しはやめましょう。それより・・」
古淵「良いよ。その話しこそしたくない。」
成瀬「矢部君は・・」
古淵「やめよう。これで別れよう。喧嘩になりそうだ。」
小屋を去る古淵。
闇の中、大型バスにCARBON-LOGICを運ぶCro-Mo COMP。
動きも形も人に最も近いロボット。
その艶かしいシルエット。
去るバスのテールランプ。
ため息が解く緊張。
成瀬「壊れていく、完璧だったプロジェクトが、組織が。あなたが、教授が目指したバランスって、
何?」
翌日の朝。
コンクールコンディションのRenault Alpine A110。
シートをなでる成瀬。
涙が出るのは諦めた。
キーをひねる。
吠える。
ラリーを戦う戦闘機だから。
そう言っていた。
彼を真似、薬指にシフトノブを引っ掛けた。
走り出す。
【事故】
つかの間の日常。
ひさびさにサドルに跨るたろう。
軽くクランクをまわす。
風が気持ち良い。
太陽の暖かさ。
山に登ろう。
渋滞の横を走る。
たろう「あ。」
ガソリンスタンドに入ろうとしたワゴン車に当てられた。
車はウィンカーを出していなかった。
後方を確認していなかった。
自転車のホイールはひしゃげ、フレームは折れた。
ワゴン車は逃げた。
【ベレG】
トヨタ・センチュリーで自宅に向かう霹蔵。
ロボットが数台、ED川駐屯地に向かっているという連絡が入る。
急ぎ電話をする。
霹蔵「シノブか。俺だ。」
シノブ「はぁ、なんですか?」
霹蔵「今、どこにいる。」
シノブ「ED川ですが。」
霹蔵「着いたか。安心した。」
昨日、移動の手続きをしたばかりだった。
シノブ「ええ。ほんっと右から左へと簡単に。自分は物じゃないんですよ。(空自から引き抜かれ
たときから、)ずっと、こうだ。」
霹蔵「敵が迫っている。聞いているな。」
シノブ「そういう話しなら、今田さんにしてくださいよ。」
霹蔵「ん?お前、隊長だろう。」
シノブ「は?今田さんのほうが、階級、上ですよ。」
霹蔵「・・・・・・・・。確認するが、お前より上は、今田だけか。」
シノブ「そうみたいですね。たぶん。」
霹蔵「判った。」
切る。
今田に電話をする。
霹蔵「今田か。俺だ。お前、今すぐ休暇を取れ。1週間やる、のんびりして来い。」
今田は内心ほっとしていた。初めての実践を前に、胃に穴が開きそうだった。
そそくさと駐屯地を去る今田。
見送るシノブ。
シノブ「あーあぁ、やれやれ。」
とても軍人には見えない。
長身、痩身、長髪。
ノーメイクでエロ顔。
シノブ「時間も無いし、仕事すっかなぁ・・。」
顔に不つり合いな怒声。
シノブ「ウラアッッ!!クソ共!!そして、バカ共!!オレ様の前に!!集合じゃああぁぁっ
っ!!!!」
ド迫力。
霹蔵は自宅に到着。
運転手「それでは、明日、7時半にまいります。」
去るトヨタ・センチュリー。
これで、今日は帰宅したことになった。
ガレージに向かう。
3台は駐車できそうな広さ。
そこにあるのはカバーをかぶった1台のみ。
メルツェデスはあいつ(家内)が乗っていったか。
しかたなく、残った一台のカバーを取る。
そこにはべレット1600GTR(車名はGTtypeR)がうずくまっていた。
オレンジ、ボンネットはマットブラック。
永く眠っていた。
まぶしい日の光にも気付かず、未だ目を覚まさない。
そんな感じだ。
整備は常にしている。
マニュアルトランスミッション。
自分の右腕を左手で触る。
手首を握って引いてみる。
納得したのか、タイトなバケットに身をおさめ、ドアをばしゃんと閉める。
峠を駆け上がるベレット。
バアアアアアア!!!!!!
ボン、ボッ!!(4→3→2)
キャアアア!!キョ!キャキャアアアアアア!!!
バボバァアアアア!!!!
アァアアアアアアアア!!!!(2→3)
形式名PR91W、いすゞ(ISUZU) ベレット(Bellett)
1600GTR。
サーキットでの戦いの中から生まれた技術を、その身に投入された、特別なグラントゥーリズモで
ある。
117クーペより移植されたG161WK型直列4気筒DOHCエンジンは、2ステージのチェー
ンドライブ、2連装のソレックス ダブルチョークキャブレターを有し、120psのパワーを6
400rpmで、14.5kgmのトルクを5000prmで発生させる。
その、フレキシブルにして強靭な心臓は、970kgのボディーを時速190kmへ導き、0-4
00mをわずか16.6秒で駆け抜ける。
強化されたスプリングがそのパワーを受け止めるのに十分なことは言うまでもない。
・・・・・、
そして、峠をかけあがり、着いた先。
カフェバー ロマン。
道に覆いかぶさる木々。
輝く木漏れ日。
それは、ボディに写りこみ、詩的な影絵を見せる。
霹蔵「ほう。」
美しいRenault Alpine A110。
隣に、べレットを止めた。
【代わりのいない少年】
たろうが搬送された救急病院。
たつみから駐屯地へ電話。
シノブ「はぁ?交通事故ぉ?」
たつみ「ハナちゃんに準備しておくように言って。」
シノブ「いーよ、もう。彼女一人で戦えってゆーのぉ?」
たつみ「いつも通りよ。」
シノブ「ああっ!?」
たつみの台詞、その意味に気付く。
シノブ「へへっ、そうですか。惚れそうですよ、大先輩。」
手術室。
台車に機材を積み強引に押入る母。
病院側とひと悶着。
押しきる。
通信はPHSのみ許されたが速度が足りない。
病院の光回線を使う。
駐屯地側もIPで設定。
手術内容を確認。
膝の骨折。
腹部の裂傷。
腹筋が裂けているので、ただ閉じない。
切開し内臓の損傷が無いか確認する。
たつみ「局所麻酔でいいのね。」
我が子の首に、トランスミッターを取りつける母。
不安そうなたろう。
たろう「母さん。ねり飴・・」
血で汚れたTImBUK2の中を探す母。
赤いiPOD nano 8GB(第3世代)を取り出す。
ビデオ再生。
たつみ「これで、いい?」
たろう「うん、ありがとう。」
ヘッドホンから襲いかかる熱血ボイス。
ネット界きっての超自由90%+背水の陣10%ボーカル。
ガムさんとねり飴さんの動画。
8GBに詰め込んだ。
駐屯地。
18機のヘリコプター。
AH-1Sコブラはわずか4機。
多くの隊員は14機のUH-60JAに得物を担ぎ乗りこんだ。
(12.7mm重機関銃M2、84mm無反動砲、110mm個人携帯対戦車弾、01式軽対戦車
誘導弾、焼夷手榴弾 など)
UH-60JA自身も12.7mm重機関銃M2をドアガンとして持つ。
有効な戦力であるはずだ。
その様子を横目で見るシノブ。
彼の前に立つたんことヨリ。
女の子たちを見てため息。
シノブ「なんとね、実践経験が有るのは、女子高生3人だけだよ。ハァ。」
ヨリ「ハナを守れば良いのね。」
霹蔵からは女の子達に危ないことをさせるなと言われていた。
しかし、緊張でガチガチに固まった隊員の顔を見て不安になった。
女子高生3人のほうが、肝が座っていて、動きが良い。
ハナを守れるのはこの二人だと思った。
けど、
シノブ「銃はそれでいいのかい?5.56mmじゃロボットを倒せないよ。」
ヨリ「倒す気無いもん。」
黙々と足元に弾倉10個を並べる。
何度もマガジン交換の動作を繰り返し、位置を微調整する。
シノブ「たんこちゃんにいたっては、それ、銃ですらないよね?」
そっぽを向くたんこ。
長さ3m、直径約42.7mmの単管を担いでいる。
シノブ「まぁいいや。信じてるぜ。」
シモノフPTRS1941を手にする。
その3人に守られるハナ。
起動するシステム。
たろうと繋がる。
たろうはガムさんの”さくら”を聞いていた。
ゆっくりと立ちあがるTITANIO-SL。
軽量化(スーパーライト)したTITANIO。
5台のdFORCE7000とCro-Mo COMPが現れた。
7000は通信装置を外してある。
完全に自立して行動している。
通信装置の有った場所には、別なものが埋め込まれている。
手にBarrett M82。
ロボットが持ちやすいよう、グリップと引金を改造してある。
駐屯地の10km先。
堂々と、その身をさらしている。
【デジタルシグナルプロセッサ】
やすひろの元へレポートが届く。
”暗号解読を補助するDSPの可能性”
レポートの担当者に会いに行く。
担当「いや、まさか力任せの暗号解読はないだろうと思っていたので、そのセンでは調査していな
かったんですよ。先日の瀬瀬博士のレポートを見て、あなたが言うなら・・と。」
やすひろ「しかし、DSPとは。申し訳無いんですけど、ぴんとこないですねぇ。」
担当「判ったのはレポートに有る内容までです。私達も判断に困ったので、あなたの意見を聞きた
かった。”有りえない”とおっしゃるなら、そういうことです。」
やすひろ「うーん。2年ほど前、AND社にM大学のH研究室からDSP製造の依頼。H研究室は
M大学に存在しない。AND社が預かったDSPのデータ、試験結果等は全て紛失・・原因は不明。
担当者の記憶によると、行列演算のためのDSPに思えた。約2000個を納品した。NG品も提
出。全工程立ち合い。全数数えていた。」
整理するためにつぶやく。
担当「どうです?」
やすひろ「うーん。やっぱ、あやしいかもねぇ。暗号解読に使ったかどうかは判らないけど、これ・・
彼らだと思うよ。」
担当「あの、良ければ手伝ってはもらえませんか?どうも、鼻の利く人間がいなくて。」
やすひろ「ごめんねぇ。例の、各国に送られたメールの解析をしないといけないんだよねぇ。それ
なりに裏がありそうでね・・手いっぱい。」
【苦戦】
ロボットは駐屯地の東10km。
銃を手にしている。
銃、それを聞き、攻撃命令を撤回。総員待機。
ヨリ「で、これから、どうするんですか?」
シノブ「どうすっかなぁ。勝てそうにねぇ。」
ハナの前に仁王立ち。微動だにしないたんこ。
4分で奴等はやってくる。
たんこ「なにも思いつかないんなら、逃げたほうが良いかもよ。」
シノブ「ああ、あんなの持ってちゃ、しょうがないな。おめーらのやった”時速300kmで逃げ
ながら戦う”って手も無駄だな。つか、今まで銃器を持っていなかったほうが不思議だっつーの。」
軍事施設を襲撃したときに使っていたが、彼が読んだレポートには記述が無かった。
1分経過。
決める。口惜しいが、
シノブ「撤退だ。」
すぐさま通信が返る。
陸曹長「副隊長、今逃げて、いつ戦うのですか。」
シノブ「勝てるようになってからだ。おめぇ、さっきよ、恐怖でちびりそうだったくせに何言って
んの?バカ?」
確かに怖い。
しかし、仲間の敵を討ちたい。
自衛隊としての役目を果たしたい。
いかつい身体を震わしても、心は折れていなかった。
シノブ「責任とれねー。撤退だ。」
しかし。
18機全て離陸し、敵の来るほうへ頭を向けた。
シノブ「ケッ!くだらねぇ。”かっこいい”を履違えてる。女の子だって”逃げたほうが良い”っ
て判ってる。戦いを知ったからだ。」
もうすぐ3分。
ヨリ「ねぇ、もう、逃げられないんじゃない?」
シノブ「おめーら、ホント判ってるな。大先輩(たつみ)がおいてったわけだよ。」
たつみは”経験”の重要性を誰よりも判っていた。
これからのために、経験を育てていきたかった。
シノブ「あいつら、ハナちゃんのことを考えず、仲良く飛んでいきやがった。」
ヘリだけなら、いつでも逃げられる。
全機離陸してしまった。
ヘリを戻して、ハナを逃がす時間が無い。
唯一、TITANIOを敵ロボットと互角に戦えるスピードで操作できる人間。
やれることは少ないが、作戦を指示する。
シノブ「AH-1の装備なら有効射程で有利だ。4機横に並び距離を保って撃て。UH-60は高
度1000mで待機。チャンスを見てロボットの後方へ降下。攻撃後ただちに高度1000mへ戻
れ。TITANIOはヘリが撃てないから、敵ロボットの群れに突撃して欲しくない。ヘリがプレ
ッシャーをかける。はぐれてきた敵ロボットを捕まえて破壊しろ。地道に突き崩せ。」
ハナに合図。
たろうはTITANIOからの情報で状況を知る。
TITANIOが走る。
ヘリにも攻撃命令。
シノブ「おめーらも、行くなら行け。ここからなるべく離れたところでやれ。判ってンな。」
曹長を先頭に全機、全速で進行。
ハナを見るシノブ。
W△iのそれに似たコントローラー。
カーボン製で、非常に軽く作ってある。
反応も極端に敏感で、普通の人では動かしすぎてしまう。
シノブはTITANIOのコントロールシステムに繋がった、ネットワークケーブルを気にしてい
た。
ハナとたろうをヘリに乗せ、安全な上空1500mでTITANIOを操作させる。
それが、本来想定したパターン。
今回は、ハナを移動させるとき=TITANIOの放棄。
不安要素は多い。
シノブ「さすがのオレも、キンタマ縮み上がるつーの。」
遠くで機関砲の音。始まったようだ。
ふと、整備場の方へ歩いていくたんこ。
ドウン!!
ドッ、ドッ、ドッ。
HONDA CB1300、通称”イチサン”。
尋常ではない音を発している。
かなりいじってある様子。
リヤシートに座るヨリ。
シノブ「へぇ、いいもの持ってんじゃん。ヘリをあらかた片付けるまで、ロボットはここに来ない。
もし(ロボットが)来たら、ハナちゃんを連れて逃げろ。」
たんこ「あたしわ、あのお方の命令しか聞かないの。」
シノブ「ん?じゃあ、突撃するのかい?」
たんこ「危なくなったら、逃げる。」
シノブ「あっそ。やっぱ逃げるんだ。疲れるな。」
1.5km先。
4機のコブラのファイヤパワーは有効なプレッシャーになっている。
dFORCE7000の自立システムは、十分な安全マージンを見込んだ回避行動をとらざるをえ
ない。
UH-60のヒットアンドウェイも効いている。
一見五分五分の押し合い。
隊員の心にがんばれば勝てるという気持ちが生まれつつあった。
1機のUH-60が粘る。
撃墜される。
敵の射程内に居すぎた。
現実。
再び恐怖の沼に突き落とされる。
ヘリの動きが悪くなる。
攻撃はTITANIOに集中。
軽量化によりわずかに向上した運動性能が幸いし、致命的なダメージは受けていない。
通信。
シノブ「なんだおめーら、もう、ちびり切ったのか?代えのパンツは早い者勝ちだぞ。」
回転翼もTITANIOも、敵の攻撃に少しずつ消耗していくのか。
【カフェバー ロマン】
峠の頂。
カフェバー ロマン。
成瀬が霹蔵を見つけ、手招きする。
じろじろと見る霹蔵。
成瀬「・・。」
霹蔵「驚いたな。美人だ。」
成瀬「そんなに珍しいかしら?」
霹蔵「君は私のことを何でも知っているだろうが、私は君のことを何も知らない。興味深くてね。」
成瀬「知らないことも有るわ。」
霹蔵「ほう、何だね。」
成瀬「その右腕。現代の技術なら電動の義手だってつけられる。なぜ、木製なの。」
霹蔵「フフッ。これでもハイテク嫌いでね。」
ため息をつき、立ちあがる成瀬。
去ろうとする。
霹蔵「人を呼びつけておいて、もう、帰るのかね。」
成瀬「嘘をつくなら、話しはできないわ。」
霹蔵「なぜ、ウソと。」
成瀬「嘘が苦手な人間は、知らずと相手にサインを送るのよ。自分は今、嘘を言っていますと伝え
るの。」
霹蔵「・・・・判った。座ってくれ。」
今一度座る。
霹蔵「右腕は、私の罪全てを握りしめ、地獄へ落ちた。もう、動く右腕はいらない。義手は、自分
で木を彫った。それだけだ。」
成瀬「都合の良い話ね。」
霹蔵「言いたくなかった。」
成瀬「英雄の罪・・記録には輝かしい過去以外、無いようだけど。」
霹蔵「英雄など、半端なものだ。対立する2者の片方を生かし、もう片方を殺す。神なら双方生か
し、悪魔なら双方殺す。」
成瀬「後悔しているの?」
霹蔵「いや、後悔はしない。しかし、もし、また、同じ状況に直面したなら、より良い方法を選び
たい。」
成瀬「神・・より良い方法・・嫌な言葉。」
【スイッチ】
江戸川駐屯地。
苦戦。
シノブは悪化していく状況を無言で睨む。
メカ単体で比較するなら、敵ロボットよりAH-1の方がはるかに強い。
人が操縦するということが、メカのパフォーマンスを下げている。
そう見える。
たろうも焦りを隠しきれない。
そして、曲は、ガム×ねり飴の”おっくせんまん”へ。
拳をきゅっと握るたろう。
助手「血圧、心拍数上昇。」
執刀医「ちっ、こんなに面倒な”ただの骨折手術”は初めてだ。」
高まる闘争本能。
たろうの気持ちがハナに伝播する。
身体が熱くなる。
ゆらりと立つTITANIO。
凹み傷だらけの装甲。
割れたヘッドライト。
強制冷却用のファンが曲がった装甲にこすれ、ガリガリと鳴る。
撃ちぬかれた肩、脚。
漏れたオイルが焼ける。
正面にCro-Mo、背後に2機の7000。
3方から付きつけられる銃口。
たろう「うううっ!!チキショウ!!」
全身をかけめぐるアドレナリン。
暴れるたろうを押さえつける母。
210・・220・・
天井知らずに上がる心拍数。
闘争本能が極限を超える。
鼓動が、神経を伝う信号が、ハナと同調する。
大きく息を吸うハナ。
たろうの聞いている歌が、自分にも聞こえる。
音楽のサビがゆっくりと聞こえてくる。
初めて聞く歌なのに、歌詞がわかる。
ガム・ねり飴『君が・・』
左後ろのdFORCE7000。
音を立てぬよう、慎重に引金を引く。
ガム・ねり飴『・・くれた・・』
ヨリ「え・・」
コントローラーを操作する、ハナの手の動きが見えない。
ガム・ねり飴『・・勇気わ・・』
振り返り空中の弾丸をつまむ。
弾丸はチタンの指を少し溶かし、1cmにじり進み止まる。
たろう、冷や汗。
弾丸を真上へ弾く。
奮い起こし、叫ぶ。
たろう・ハナ「おっくせんまん!!」
向けられた銃口へ、迷わず飛ぶ。
【天才の思い】
天才の情熱。
時代をせきたてる。
遅い、遅いと尻を叩く。
手塚治虫が予定したアトムの誕生日2003年4月7日はすでに過ぎた。
1985年、アーサー・C・クラークは未来予言クイズに解答している。
膨大な知識と理性。
選択式のクイズ、彼が選んだ答の意味。
現実を正確に射る目。
深い。
20年経た今見てうなる。
しかし、特定の分野に関しては、やはり、情熱を抑えきれない。
そう感じた。
39)今夜は1999年12月31日の大晦日。何人が宇宙でシャンペンのコルクを抜いているだ
ろうか?
彼は「e.51人ないし100人。」と夢を見た。
【新関数】
シノブ「アイドリング、うるせーよ。あっち行ってろ。」
シノブの横に置かれたテーブル。
PCのモニタに戦況が映し出される。
覗きこむたんこ。
TITANIO、捨て身の突撃。
3方から、弾丸。
かわす方法は無くはない。
しかし、たろうがハナをコントロールする現在の方法では、必要なパフォーマンスが出ない。
自分の身体であるからこそ、引き出せる限界がある。
必要に迫られ、たろうの脳が既存のプログラムを組み合わせて作り出した、新たな機能。
それをCALLし、ハナに情報を送る。
脳内に映し出される、共有のイメージ。
走るTITANIOと弾丸の軌道。
作戦を伝える。
たろう「ハナさん。ここを・・、」
ハナ「ちょっ・・」
たろう「お願い、やって!?」
ハナ「もー、しょうがないわねぇ。」
リアルタイムの情報をハナに送る。
弾丸の位置、TITANIOの姿勢などだ。
ハナ「・・、」
コントローラーの動き。
柔らかく、繊細で、正確。
静かで、速い。
弾丸の1発目は後頭部下にヒット。
2発目は腹部アクチュエーターの隙間を通す。
最後の弾丸は太股に命中。
ハナ「っ・・」
太股内に弾丸が直進して、貫通できる隙間は無い。
しかし、あるポイントで脚を捻ると・・
たろう「そう、そこ・・」
太股の中を進む弾丸は、
オイルクーラーの配管をかすめ、
ツイストペアケーブルに並行して進み、
束ねられたパワーケーブルの小さな輪をくぐり・・
ここで、捻った脚を戻す。
たろう「いいよ、ハナさん・・」
強制排気ファンを通り、外に出る。
その弾丸はCro-Mo COMPへ向かう。
頭を軽く倒す。
クロームモリブデンの柔らかな銀色。
チンッ。
弾は一筋の傷のみ残していった。
ハナ「はひいいっっ・・」
どっと全身を襲う疲労。
たろう「いけそうかも、」
非常識な運動量。
体温が上昇し、意識が朦朧とするハナ。
じょぼぼ
氷水を頭にかけるたんこ。
ヨリ「がんばれ。あんたの大事な柴犬男もメロメロよ。」
たろう「ハナさん!すごいよ!!」
ハナ「・・・」
顔・・。
ヨリ「なんて、なんて、だらしない顔。」
たんこ「ハナ、顔の筋肉寝てるわよっ。」
シノブ「おいチビ女、足元に”女”落としたぞ、拾えー。」
しゅしゅしゅすぱパーン。
彼女の手の中、踊るコントローラー。
もはや銃はTITANIOを止める脅威では無い。
前進。
そして、ついにdFORCE7000の前に立つ。
拳の、脚の届く間近に。
TITANIOの装甲に無数の弾痕。
しかし、中のメカはほぼ無傷。
反撃のとき。
【伝えられた言葉】
カフェバー ロマン。
成瀬と霹蔵。
コーヒーをすする。
無言。
ふと、テーブルに置かれた鍵に気付く。
霹蔵「なんと、あのアルピーヌは君のであったか。」
成瀬「借り物よ。」
霹蔵「なんにせよ、良い趣味だ。実は私もベレッタで来たのだが、ちょっと走らんかね。」
ため息。
成瀬「敵を前に、慣れたものね。」
霹蔵「フフッ、そんなつもりは無い。敵か・・。」
成瀬「・・。」
霹蔵「さて、ここのコーヒーが旨いのは十分判った。そろそろ本題に移りたい。私から話しても良
いのかな?」
成瀬「話し合いはしないわ。」
霹蔵「・・」
成瀬「私たちが”第3章”と呼ぶ次の作戦。邪魔をしないで。これ以上の犠牲は必要ないわ。それ
に、第3章の後、私たちと自衛隊は行動を共にする可能性があるわ。」
霹蔵「どういうことだ?」
成瀬「信じて。その一心で、こうして身をさらしているの。判って・・」
テーブルに金を置き席を立つ。
呼び止める。
霹蔵「各国に送った例のメール。ありゃ、なんだい?」
女は、口元に笑みを浮かべ、去る。
夕暮れに溶ける背中。
コーヒーをもう一杯頼む。
霹蔵「せっかくだ、一寸走ってから帰るか。」
【ヨメ発言】
ハナが弾丸をかわした動き。
そのトレースデータ。
たろうは既存システムで処理し、さらに1000通り以上のパターンを作成。
自らの脳に保存。
これで、ハナとほぼ同じパフォーマンスで操作できる。
たろうがハナの身体を操作する形態に戻す。
彼女の脳への(物理的、心的)負担を減らせる。
すでに少女の筋繊維はズタズタ。
体は限界に達しつつある。
TITANIOの指が7000のカメラを貫いた。
敵ロボットはTITANIOに銃が通用しないことを学習いている。
他のロボットが走り、群がり、襲い掛かる。
絶対的なピンチ。
極限の集中。
たろうの全身が勝利への道を探す。
その意識の奥深く。
状況を鳥瞰する誰かがいる。
”誰か”は、ほんの少し未来すら、見ていたかもしれない。
誰かの見たシーンがそのまま、現実に起こっている。
すでに知っている未来の通り、脚を払い、投げ、捌く。
ふらりと立つ隙のない姿。
何時動きを止めてもおかしくないほど、損傷したボディ。
その周りに敵ロボットが集まり、全てが手玉に取られ、体勢を崩している。
シノブ「い・・」
たんこ「いまよっ!!」
マイクを取り上げる。
シノブ「だっ!!おめ!!かえせっ!!」
マイクを取り合う。
シノブ「突撃だ!!突撃!!」
たんこ「行け!!行け!!早く!!」
回転翼全機、機首を下げ、全速。
たんこ「撃て!撃て!じゃんじゃん撃て!!」
下から7000の1機が銃を向ける。
恐怖。
ヘリの速度が落ちる。
たんこ「なにしてんの!!ち○こ付いてんのっっ!!」
シノブ「バカかてめーらっ!!敵は12.7mmだぞ!?即死だから痛くねーんだよ!!ナニ心配
してんのっ!!行けよっ!!」
二人でマイクの奪い合い。
お互いに先を譲るようなヘリのカユイ突撃にエキサイト。
シノブ「てめえ・・」
隊長がかまそうとした喝!より早く、少女がぶちかます。
たんこ「あんたら!全員!!ケツの穴に手榴弾突っ込んで!!粉微塵にしてやるああっっ!!」
シノブ「お、おお~。」
ヨリ「たんこさん。へんな伝説増えるから、やめようよ。」
と、地鳴りのような音が響いてくる。
嵐のような銃撃。
破壊音。
そして、
全隊員の雄叫び。
3台の7000が大破。
1台は片腕とライフルを失っている。
行動不能となった3台の7000は自爆。
巻き込まれ、TITANIOは下半身を失う。
70001台とCro-Moは無傷。
走る。
狙いはハナ。
上半身のみのTITANIO。
拳を握り、ファイティングポーズをとった。
7000の放つ12.7×99mm弾が容赦なく貫く。
全弾撃ち込む。
ライフルを捨てる。
破壊されつつCro-Moを捕らえるTITANIO。
脚にしがみつき離さない。
2台のdFORCE7000はハナへと走る。
Cro-Moを狙うAH-1S。
TITANIOの肩を打ち抜くCro-Mo。
右胸の制御基盤を破壊され、完全に動けなくなる。
ヘリに取り囲まれる寸前、逃げる。
追撃するAH-1S。
シノブ「追うな戻れ。」
一言だけ言い放ち、マイクを放り投げた。
2台の7000が向かってきているはず。
シノブ「ふたっつはキチーなぁ。」
600m先。
スラリと現れる、刀身のような姿態。
研ぎ澄まされた男。
手には6尺余りの棒。
世芭「1台は私がお相手します。」
7000。
1台はハナを狙いに。
1台は攻撃目標を世芭に。
棒を構える世芭、しかし。
世芭「何っ。」
難視運動。
前回、空港での戦いでは見ていなかった。
彼の動体視力、聴力は並ではない。
ロボットの大体の位置は把握できる。
速いことは知っていたが、予測できない、追いきれないとは思っていなかった。
しかし、これほど不規則かつダイナミックに、高速で移動されると。
世芭「くっ。」
彼ほどの体術を持ってしても対応しきれない。
この速度を超えられる人間は世界にただ一人、ハナ。
やられる、そのとき。
軍曹「そこの民間人!!何をやっている!!逃げんかあっっ!!」
7000を追って、ヘリが戻ってきた。
銃を持たぬ7000を取り囲む。
ロボットは自爆。
軍曹「ばかものがーっっ!!お前が余計なことをしなければ2台とも追いついて取り囲めたの
だ!!」
顔を真っ赤にして、怒っている。
世芭「なんということか。私は我が道たる五衆の名に泥を塗った。」
歯を食いしばり、棒を握り締める。
しかし、真直ぐに立ち、軍曹に頭を下げた。
そして、敵ロボットにも。
前回の勝利で、たかをくくってしまった。
技を交える相手を軽んじてしまった。
武人として、何たる無礼。
心得を知っているのに、実行できなかった。
己を許せない。
モニタをチェックするシノブ。
シノブ「よーし、いっこになった。じゃ、なんとかすっかぁ。オレ、隊長さんだしねぇ!」
7000が来るはずの方向にシモノフPTRS1941を構える。
たんこ「違うわよ、こっち。」
ハナの頭上あたりを狙わせる。
シノブ「・・判った。信じるよ。」
ヨリ「ふうっ・・」
2丁のカスタム89式小銃を構える。
ハナはシステムをシャットダウンし、疲労でよろけながらイチサンに座る。
ひどい脱水。
水を飲む。
・・・・・
病院。
汗まみれ。放心状態のたろう。
たつみが息子の上から退く。
執刀医「え?えええ???」
いつのまに!!
どうやって!!
チアガール姿のたろう。
可愛いと言うか。
文字通り(ベッドの上で)一戦終えた後の表情。
エロくてしょうがない。
執刀医「あの、コレ、どうにかなりませんか?」
たつみ「・・」
母なりにどうにかしてみる(チャレンジ)。
ただでさえギリギリのミニスカートをアウトコース一杯まで捲り上げた。
執刀医「おうわあああっっ!!」
写メを撮らんと携帯電話を取出す白衣の天使達。
たつみ「喝!!ただで撮ろうなんて、100兆年早いわっっ!!」
・・・・・
再び駐屯地。
ハナ、たんこ、ヨリ、シノブ。
何かが来る。
すぐ近くに、何かがいる。
ヨリ「ええと、多分・・」
飛行場での戦い。
恐怖により記憶に刻まれたロボットの動き。
世芭が読めなかった極秘のレポートも頭に入っている。
か弱き少女ゆえ、逆に油断はない。
巻き上がる土起こり。
音。
最後の跳躍がチャンス。
どの土煙がそれなのか。
ヨリ「ふぅー、ふっっ!!」
片膝をつき、マガジン交換の順序を頭の中でおさらい。
ロボットの頭の位置をイメージし、撃つ。
まさに弾幕。
か弱い身ならではの、容赦ない徹底した攻撃。
よどみなく交換される弾倉。
あっという間に10個使い切る。
超密度。
ゴウッという音。
ヨリ「やったわ、多分。」
銃を放り投げ、地に伏せるヨリ。
たんこ「必殺!!筒突岩投!!」
足元の短管を蹴り弾く。
縦に真直ぐ立ち上がる。
ゴキン!!
何かに当たり、くの字に曲がった単管がブーメランのように飛んでいく。
腰に手を当て仁王立ちのたんこ。
すっと空中を指差す。
地上10m、dFORCE7000。
左の手首から先がボロボロ。
頭部1/3に被弾の跡。
ヨリの鉛弾が食い込んでいる。
シノブ「自爆するぞ!!隠れろっ!!」
イチサン(CB1300)に3人しがみ付き、格納庫に滑り込む。
シモノフPTRS1941。
初速1010m/sで発射される14.5mm弾。
破壊力。
7000の頭部をあっけなく吹き飛ばした。
そして自爆。
急いで通信機を載せていたテーブルを蹴り倒し、影に潜り込む。
テーブルごと爆風に吹き飛ばされる。
地を転がる。
気絶する間際、叫ぶ。
シノブ「ヒャアッホオウッッ!!!!ざまあっっ!!」
・・・・・
シノブは隊員全員を集め、戦闘での行動の悪さをまくし立てる。
列の後ろのほうで、陰口をたたく者。
隊員A「できる人なんだろうけど、もうちょっと言い方あるよな。」
隊員B「最後の突撃は、結局だれも死ななかったから、作戦としては良かったのだろうけど、あの
通信はカチンと来るよね。」
隊員C「あんな人でなしじゃなきゃ、命なんて、重くて預かれないのさ。」
喉が枯れるほど罵り尽くしたシノブ。
シノブ「ぜっ・・は・・きょ、今日は、これ位にしておいてやる。と、最後に大事な連絡がある。
あー・・たんこはオレのヨメです。指一本でも触れたら・・ゴキブリの子供を耳から入れて縫い付
ます。以上。」
たんこの横に立っていた隊員。
肩が触れていることに気づき、飛びのいた。
:
:
たんこ「ああ゜っ!?アイツ、なんつったぁ!?」
【原子力掘削機】
プラネットランという計画が有った。
地下100mの真空チューブを走る超音速鉄道である。
試作機のみ作られ中断した。
50兆円に迫るイニシャルコストもそうだが、ランニングコストで航空機にかなわなかった。
燃料(エネルギー)の費用ではない。
地下100m、真空。
安全を確保し、車内を快適に保つ費用がだ。
アメリカ。
OE社。
荒野にポツリと有る実験施設。
3機のdFORCE7000が押入る。
格納庫の奥。
誇りをかぶっている巨大マシン。
プラネットラン計画で試作された掘削機。
タングステン製の仮設壁。
プラスチック製の本設壁。
OE社が当時開発した建築向け構造用特殊FRP。
健在としては流行らなかった。
プラネットランで巨額の開発費用を回収できるはずだった。
(※この件はフィクションです)
ロボットは全て奪っていった。
2時間後。
渓谷。
その谷底に掘削機はあった。
起動する原子炉。
赤熱するヒートパイプ。
この掘削気は岩盤を溶かし、前進する。
(※実際もこの仕様です)
E-2Dアドバンスドホークアイが位置を特定したときは、すでに地中を100m進んでいた。
操作は全てロボットが行う。
この作戦のため、ロボットにスイッチ等を操作するためのマニュピレーターを取付けていた。
軍はM39(MGM-140)ATACMSを坑内に水平発射し、同時に入り口をダイナマイトで
塞ぐ作戦を考えた。
【メール】
頭を使うと、水が欲しくなる。
大量にだ。
机の上に並ぶ空きビン、空き缶、空きパック。
アミノ酸リッチ・アイソトニックドリンクTERRAの横、新たに置かれた空きビン。
ホワイトコーラ。
各国に配信されたメールの解析。
モニタの前、父は煮詰まっていた。
気分転換にDSPのレポートを見る。
DSPが暗号解読用だと仮定し、機能を予測してみる。
やすひろ「DSPの内部に膨大な素数表があるとする。それは1の桁から、さらに長さでソートさ
れたDBになっている・・とする。2桁以上の素数の1の位は・・1、3、7、9?かな。マップ
で解決で来そうな、出来なさそうな。」
畑違いの数学。
FOSの矢部が得意とする分野。
やすひろ「やつらの盗聴している(想定される)データ量を考えると、たかだか数百万回の計算で
暗号を解いているはずだもんねぇ。候補を絞りきって、総当りで探す。それができないならDSP
は無いかな?」
ため息。
間。
時計の音。
やすひろ「案外、有りかな。僕みたいな門外漢ではお手上げだし、数学の先生、紹介しちゃおっか
な。」
盗聴システムの調査チームに自分の予想と紹介文をメール。
やすひろ「”彼”も読むのかな?」
矢部「瀬瀬ってヤツ、なかなかやるね。」
盗聴サーバー(レコード)。
その心臓部。
12台の暗号解読サーバーにそれぞれ128個のDSPが搭載されている。
コードネームはコーラス。
摂氏4度、湿度20%、無塵に保たれたサーバールーム。
覗き窓から眺める。
矢部「解ったからって、ボク達を止めるのは不可能。そうだろう?」
やすひろは天井を見上げたまま、長い間ぼーっとしていた。
ふと、本題のメールを見た。
ぱっと見た。
やすひろ「あ・・これ・・」
【情熱の進む先】
古い雑誌。
有名人の記事を読むのは面白い。
1983年2月号のメカニックマガジン。
Dr.パソコン宮永氏による、ソフトバンク孫氏のインタビュー。
25才。
人は年齢ではない。
幅広いソフトの流通経路について、彼は語っている。
ダウンロード販売など、当時では言い得なかった形態は有るが、方向として、そう来た。
”誰でも思いつく、なるべくしてなった”と軽く読み流すのは簡単。
今は、良くも悪くも多くの挑戦者の情熱でこうなった。
なるべくしてなる、情熱が作る。
ひょっとして、同じ意味なのか。
【緊急防衛ライン】
病院。
たろう、入院中。
入れ替わり立ち代り、必要以上に世話をやく白衣の天子達。
を、迎撃するハナ。
同じ病院に入院中。
3度味わった命の危険。
治るとはいえ、数日間続く痛みとだるさ。
今回は初めて、自分の意思=自分の責任でコントローラーを操作した。
そのストレス。
いつか、気持ちが爆発して、コントローラーを放り投げてしまうかもしれない。
”もう、二度とやらない”
そう言って。
戦闘後の精密検査で、メンタル面の問題が懸念された。
2~3日おきに通院してくれれば良かったのだが、たろうさんの貞操防衛作戦のため、入院した。
たつみはその様子を見て、家に戻ることにした。
彼女に任せておけば、たろうちゃんが鮫(攻撃系恥女)どもに食われる心配は無いと確信した。
たつみ「お風呂とトイレは危険よ。メスブタどもに任せないで。」
ハナ「はい、お母様。」
ぴく・・
ぴく、ぴく!ぴく!!
ハナを吊るし上げる。
たつみ「調子に乗らないで。(あなたに)”お母様”と呼ばれることは一生無いわ。」
【科学者の気持ち】
たつみ「事件から手を引く?」
やすひろ「うん、まぁね。」
たつみ「あなたがいないと、(進むべき)方向が決まらないわ。間違った道を選んでいる暇は無い
のよ。」
やすひろ「あのメール・・あれさ、遺言だよ。彼らの。」
たつみ「・・ちょっと、話しましょう。」
冷蔵庫から7UPオレンジを取り出す。
やすにろ「あ、ボクはカプリソーネ(無論江崎グリコ版)がいいな。」
テーブルを挟みソフトドリンクを口にする二人。
やすひろ「なんというか・・その・・基礎研究というのはね、多くの人が汗水流して稼いだ、少し
ずつ積み上げたお金を一瞬で使ってしまう。でも、全てがモノになるわけではないだろ。」
たつみ「そうね。」
誤解を恐れて、回りくどく話している感じがする。
やすひろ「多くの科学者、研究者は、自らの存在を美化して・・その・・」
夫の頭を抱く。
判ってる。
信じてる。
小ぶりな頭蓋骨が巨乳に埋まる。
空気と身体を伝わって、声が聞こえてくる。
やすひろ「やり方の良し悪しは別だよ。彼らは見出した真実に立ち向かい、戦っている。命を名誉
を捨てて、残る者達に遺言を残してね。判るかい?その心意気に奮えるんだよ。」
たつみ「あなたは、真面目すぎるわ。」
頭にキスをする。
たつみ「彼らは何をしようとしているの?」
やすひろ「階層化した閉鎖生態系の安定化さ。地球、地域、時代・・時代は説明が必要だね。氷河
期とか、酸素濃度とかね、環境の変化・・というか、その、変化していく過程かな。」
科学者の頭脳が考えそうな動機。
合点が行く。
たつみ「なるほどね。でも、彼らはテロリストよ。」
やすひろ「・・例えば・・そうだな、ほら、映画でよくあるパターン。例えばだよ?ボクが近い将
来、地球が滅亡する原因を作る人間だったとしようよ。君だけが神様にそれを教えて貰ったとする。
ボクに悪意は無く、誰も将来ボクがやってしまうことを証明できない。ボクは今時点で罪人ではな
いし、だれも束縛できない。君はボクを殺せば地球が助かることを知っている。」
正直、たつみは地球なんてどうでも良い。
神様に真実を聞かされても”へー”で終わりである。
たつみ「彼らは決断をしたのね。」
やすひろ「時代が追いつくのを待とうとしなかった天才達・・かな。」
たつみ「やつらの屁理屈は、理解できた気がするわ。」
やすひろ「改めて思うよ。科学は宗教だよね。その中で定理をどうこうできる人間。”教授”は、
言わば現人神・・もしくは神の使いって、ところかな。」
たつみ「・・・・」
やすひろ「霹蔵さんに話すのかい?」
たつみ「万が一会って、万が一質問されたらね。」
世界なんかどうでも良い。
夫が元気なさそうだから、話しを聞いただけ。
日常の似合わない女。
自分は普通の男には受け入れられない怪物。
家族が全て。
その、似合わないエプロン姿。
【野獣】
刑務所。
最も奥に有る独房。
たろうを轢いて逃げた犯人がいた。
扉の前に現れる霹蔵。
犯人「あの・・」
霹蔵「心配は無用です。」
青ざめた顔。
ほとんど手をつけていない昼飯。
霹蔵「今日一日、辛抱して下さい。終われば、帰れますよ。」
独房の周囲に20人、中に4人の警官が配置されている。
彼を守るために。
シノブ「へっへー。」
二人、フル装備の隊員をつれている。
霹蔵「・・どこで聞いた。」
シノブ「あっはっはっ!!」
霹蔵「笑い事ではない。」
シノブ「10年ブランクの有る、三十後半のおばさんを警戒して、これですか?」
霹蔵「帰れ。」
シノブ「”イヤ”・・だ。」
霹蔵「お前には何もできん。帰れ。」
シノブ「瀬瀬先輩に会える。こんな、衝撃的な状況で。すばらしい。」
霹蔵「では、銃とナイフを外せ。」
見ると、どの警官も非武装。
霹蔵「保護対象を身体をはって守り、反撃せず、説得せよと命じてある。」
シノブ「あー・・まあね。女相手に。判りました。」
霹蔵「・・・・」
隊員二人にも武装を解除させる。
ガシャーン!!
鉄板が吹き飛ばされる音。
シノブ「あれ?来た?」
ゆっくりと歩いてくるたつみ。
霹蔵「瀬瀬、話し・・」
シノブ「お待ちしていましたよ!!」
叫びながら霹蔵の前に出る。
霹蔵「・・」
シノブ「先輩!!お会いできて光栄です。この二人は握手代わりです。」
たつみに襲いかかる隊員。
こめかみを蹴られ、あっという間に気絶。
シノブ「すばらし・・って、このしゃべり方も疲れるなっあーと。っらあぁっっ!!」
たつみの腰に蹴り。
よろめく。
ニヤリ。
脚技には脚技。
背中にかかとを落とす。
コンクリート剥き出しの冷たい床に叩きつけられるたつみ。
”蹴りとはこういうものだ”と言いたげな顔。
しかし、たつみは床に右の頬をつけたまま微笑む。
左足を軽く曲げ、捻ったかと思うと、
・・・
宙にいた。
つま先が顎をかする。
シノブ「・・・ぁぁ、」
揺すられた脳。
全身の感覚が消えていく。
意識が遠のく。
地に倒れることを拒む心。
負けることを拒む心。
たつみへ伸びる手。
しかし、掴んだのは巨乳だった。
たつみ「蹴りは下の下だけど、根性だけは一人前ね。」
シノブ「くっ、」
屈辱。
プライド。
支えていたものが折れた。
霹蔵「よくやった。寝ていろ。」
たつみの前に立ち塞がる。
拳を上げ、構える。
霹蔵「話し合いで解決するつもりだった。今、状況が代わった。国防の面目を保つ。」
戦いに向かない制服。
全盛期に比べ、やや、出た腹。
たつみのあきれた視線。
霹蔵「なあに、いわば闘志の現れだよ。」
たつみの脚がしなう。
霹蔵「ぐうっ」
倒れない。
繰り返し、繰り返し、身を打つ脚。
ありえない音がする。
人を叩いて、そんな音がするなんて。
”ぴしゃん”など、軽い音ではない。
重く、身の毛もよだつ音だ。
あんな音でたたかれて、なぜ霹蔵の肉は飛び散らず、骨に付いていられるのだろうか。
息を飲む警官。
霹蔵の右手が吹き飛んだ。
警官の眉間にヒット。
警官「あっ!」
驚いて体勢を崩し転がる。
皆、浮き足立つ。
霹蔵「慌てるな!義手だ!!」
髪を振り乱し、息は上がっている。
しかし、倒れない。
たつみ「さすがに鍛え方が違うわね。」
全体重を乗せ、床を踏み打つ。
地震のごとき揺れが、警官達の足の裏に伝わる。
その威力、理解できない。
ただ、感じる恐怖。
たつみ「ふうっ!」
震脚の威力に手応えを感じる。
霹蔵「・・ウォーミングアップは終わりか?」
見ているほうがのどが乾く。
無造作に歩み寄るたつみ。
細かい蹴りで体勢を崩す。
ジャンプ。
捕まえようとする霹蔵。
空中で身を翻す。
顔の前に野武士の分厚い手。
指の隙間。
瞳孔の開ききった目と目。
野生と野生。
指は、瞼を撫で、鼻を掴みそこない、離れていった。
たつみの膝が後頭部を打ちぬいていた。
霹蔵「ぐふうっ!!」
普通なら即死。
鍛えたものでも即座に気を失う。
しかし、霹蔵の意識はまだ有った。
霹蔵「ぬあああああっっ!!」
そのおたけび。
気迫が、気を失うまで0.5秒を作った。
彼女の腰に左腕を回す。
自身倒れながら、女を床に叩きつける。
全体重を乗せて。
見るものの背に悪寒が走る。
自分なら、すでに数回死んでいる。
どんな戦いなのか、判る。
たつみ「ぐあ、はっ!!ぜっ・・ぜっ・・」
世界がぐにゃりとしながら回る。
戦場にいた本能。
意識が朦朧としながら、霹蔵の下からはいでる。
身を低くし、周囲を警戒しながら後ずさりする。
ぼやける視界。
判別できない聴覚。
しかし、彼女には判った。
犯人が、十分すぎるほど恐怖を味わい、後悔していることを。
たつみ「怯え続けていろ!!」
コンクリートの壁、床、天井。
声は響き、反射する。
野獣として生まれた人間がいる。
それを思い知った。
無意識に、声に怯える自分がいる。
力が抜け膝をつく犯人。
逃走経路を走り去るたつみ。
自宅にたどり着いて気づく、その辺りのことは殆ど思い出せない。
いや、もともと無かった。
極度の緊張の中、必要最小限以外の情報は、脳が切り捨てていた。
シノブはとっくに回復し、壁を背に座っていた。
技、力、スピード。
全て勝ているのに、己の攻撃は致命的な打撃を与えない。
はるか昔に現場を去った二人の攻撃は、速やかに命を絶つ。
腹に霹蔵の腕が当たる。
シノブ「ふうっっ!!」
霹蔵「か細い腹だな。女か?必要なところに筋肉が無いから打撃が軽く、回転も遅い。必要ないと
ころに肉があるから動きが重い。間接を決めないから打撃は身体の芯に届かない。皆、負けて強く
なる。良かったな。」
霹蔵は怯える犯人を落ち着かせ、他言無用を命じた。
【第3章】
成瀬「あいつら、駐屯地を襲ったそうね。」
秦野「一応、死人は出ていないようですよ。」
成瀬「ファイブゴールドは?」
秦野「使われてません。先日リリースされたばかりの、LSSAO(※造語です)。僕も心配した
のですが。」
成瀬「約束した範囲内なら、何でもやると。そう言うわけね。」
秦野「犠牲者が出ないことを祈っています。」
成瀬「そうね。」
秦野に指示し、自室に戻る。
iPOD touch。
写真を見る。
教授。
町田。
自分。
下手糞な笑顔。
平和だった。
幸せだったと思う。
成瀬「私は優秀じゃない。善人でもない。必死でついて来ただけ。戻ってきて。私の居場所をつく
って。」
彼女の世界。
過去は鮮やかに輝き、
今は色を失う、
未来は・・・・。
第3章が始まった。
第2章で作り出した、広大な無人の野。
始めの一手。
その一部を隔離し森林に割り当てる。
森林は環境的に重要。
その能力を発揮するためには、一定以上のサイズ(面積)が必要。
しかし、局所的に有るより、点在したほうが効率が高い。
より多くの人間が住むには、地域毎に計算されたサイズの森林を持つべき。
彼らの正義”バランスシート”に従い河川を中心に区画する。
電信柱。
人間を追い出した後、放棄されたプラント、牧場に残った資材。
土木工事をするロボット。
ロボットに襲撃された各国の生き残りの軍隊。
襲われていない国から取り寄せた軍備。
GPS系は使えない。
絨毯爆撃しかない。
霹蔵は各国に攻撃を待つよう訴えた。
なぜか、何人かの科学者も同じように異を唱えた。
霹蔵も数人の科学者も根拠を言わなかった。
止めることは出来なかった。
シノブ「あれ?ウチって、爆撃機、持ってたっけ?」
駐屯地、体幹を鍛える特訓中。
シノブ「ま、いっか。今回は空自の仕事だ。」
正式にED河駐屯地の隊長となっていた。
携帯電話が鳴る。
この着メロは・・
電源を切った。
自分の携帯を手に副官が走ってくる。
シノブ「いないと言え。」
副官「”いるのは判っている”とのことです。」
電話に出る。
霹蔵「お前、元空軍だったよな。」
シノブ「はぁ!?話を聞く前で恐縮ですが!お断りします!!」
霹蔵「まぁ、待て。お前の携帯、動画見れたよな?URLを送った。」
ギクリ!!速攻でチェック。
瀬瀬母に瞬殺される映像。
乳を掴んでいるところもくっきり。
シノブ「うおおおおおお!!!!」
覗き込む副官。
を、ヘッドバット。
シノブ「てめぇ!!こんなことして!!」
霹蔵「刑務所のカメラに偶然写っていた。作戦終了後マスターを渡す。」
アメリカ。
掘削機の進む横穴。
M39ATACMSが到着。
また、引き金が引かれる。
【メーリングリスト】
メールを見た科学者。
数名が、成瀬たちを敵と認識できなくなっていた。
テロ行為には反対であり、彼らは罰せられるべきだと思っている。
しかし、自分が縄を打てと言われたら、できない。
彼らは個人のメアドで連絡を取りあった。
メーリングリストの題目は”新しい屋内スポーツの提案”。
自分達は体力で劣り、既存のスポーツでは不利だ。
体力の差が出ず、なおかつ身体を気持ち良く動かせるスポーツが良い。
人間がコマでルールが複雑なオセロゲームのようなものが提案されていた。
その添付ファイル。
画像。
pngをBMPに変換。
特定のビットをフィルターで残す。
0を白、それ以外を黒にする。
文字が浮かび上がる。
彼らは意見を交換しあった。
主催は瀬瀬博士。
決定。
”時計”を受け取ろう。
【C-X】
ロボットが住民を追い出した土地。
そこへ続く高速道路。
直線。
料金所は無人。
バリゲードで閉鎖され、車は無い。
ディーゼルエンジンをうならせる重機。
中央分離帯を解体中。
一台、近付いてくる車。
くたびれた日産ADワゴン。
社名がプリントされている。
--帝国中央重機--
作業着の男が降りる。
バリゲードで隊員に案内される。
基地設営作業の中、一人、サンドバッグを蹴る男。
長髪、エロ顔。
違和感。
この男なのか?
八華田「お世話になっております。帝国中央重機の八華田と申します。」
名詞を差し出す。
技術課長 八華田 そう、書いてある。
シノブ「技術課長?どこの部の?住所も電話番号も本社の代表?」
八華田「はぁ、申し訳有りません。詳しく書いてしまうと・・」
シノブ「で、何?」
八華田「爆撃機2機、納品の立会いで。」
シノブ「おいおい、卸したてかよ。」
八華田「いえいえ、もう20時間は不具合無く飛んでいる機体ですから。」
シノブ「・・あのさぁ、なんか、開発中のテスト機に聞こえるんですけどぉ。」
八華田「ええ、そうですが。」
シノブ「フザけんなよー!!もうー!」
八華田「ええ!?いえ、でもっ!!」
困惑。その後ろに立つ男。
霹蔵「とある国が使えと言ってきた。」
しきりに頭を下げる八華田。
シノブ「わかんねーし。つか、なにしに来たんですか?」
霹蔵「なぜ、日本に他国の軍事基地が有る。」
シノブ「そりゃ、日本の首に・・なーるほど・・へぇ。」
国防・救援・復興に特化した、次世代輸送機として表向きのC-Xとは別に開発されたその機体。
スペックシートに記述は無いが、高性能の爆撃機にもなれる。
その国は気付いていた。
日本より詳しく知っている。
先日、会議の席で助言が有った。
『開発中のSTOL機。使うべきときかもしれない。』
それ以上言わなかった。
それ以上聞かなかった。
その詳細をシノブは知らない。
しかし、大筋は想像に難くない。
シノブ「性能、信頼性、お墨付きってわけだ。ふーん、じゃ、使うわ。いつ来んの。」
八華田、営業スマイル。
八華田「GPSは敵の手中に落ちたようですが、私共のシステムには全く関係有りません。戦車か
ら潜水艦まで、武装をして断りも無く日本国に近付くやからは、全て無に返してご覧にいれます。
ま、カムフラージュ用のC-Xとはデザインこそほぼ同じですが、中身はエンジンからシートのク
ッションまで・・ええ、全くの別物ということです。」
控えて空の一点を示す手のひら。
コォ・・オオオォォォォ・・・
聞こえる。
機影、2つ。
【時計希望】
MLRSにM39ブロックⅠを1発。
A-10とAH-64が護衛。
不気味なほど敵の気配が無い。
掘削機はすでに1km進んだようだ。
恐ろしく速い。
固い岩盤。
原子炉の熱による溶解。
後方へ流れ、タングステン製の仮設壁との境で固まる。
何時まで持つかは判らないが、仮設撤去後も崩落せずにトンネルの形を成している。
敵の通信手段はニュートリノ。
ロボットが電動なら掘削機の動力で発電をしているはず。
掘削の目的は不明だが破壊すべき。
入り口にダイナマイトのセットを完了。
敵に動きは無い。
気付いている筈なのに。
M39発射。
同時に入り口を爆破。
950個のM74が炸裂する音。
さらにトンネルの上方が崩落。
落ちてきた岩がMLRSを叩く。
皆、あっけなさすぎると思っていた。
大規模な崩落。
仕留めた手応えはある。
しかし、掘削機は今なお前進を続けている。
敵ロボットは傷一つ無い。
皆がそう思う。
不安だけが残る。
地上のロボットたち。
dFORCE7000の一部が森の樹木の植え替えを始めた。
先ず大木を平均の間隔の1.4倍の距離に離す。
次に4本の大木の中央に若い木を移す。
アスファルトを剥ぐ。
他の目的で使う区画から、木々を運ぶ。
多少スカスカだが、見た目上広大な森を作る。
深呼吸を始める大地。
各国、爆装した固定翼が発進。
A-10やF-15Eに混じってA-4もいる。
本職のB-2。
成瀬「やはり来るのね。(弾道弾も爆撃機も)何の役にも立たないのに。」
上空に向かってミサイル剥き出しのランチャーを構えるロボット。
ミサイルの側面。
”FIVE GOLD”のプリント。
発射。
火花をアルミの装甲に叩きつけ、高く駆け上る。
数発を打上げた後、また、黙々と作業を続ける。
メール。
宛先は成瀬。
送信者は瀬瀬博士。
件名は”時計を受取ります”
本文は”プロジェクトの早期中止を望みます。大意は受継ぎます。生きてください。”
胸が熱くなる。
希望。
しかし、彼女は感情を押さえ込む。
冷めた表情。
成瀬「ペーパーテストは、合格よ。」
【病室の攻防】
たろうの見舞いに、たんことヨリがやってくる。
そして見た。
体温計を振りかざす白衣の天使と、ベッドの上に立ちファイティングポーズを取るハナを。
ヨリ「げ!!」
看護婦「ちょっと、どいて頂戴。」
ハナ「あたしが測るから、その体温計をわたして頂戴。」
看護婦「プロの私が正確に測定する必要があるの。どいて。」
ハナ「だって!また!!どさくさにまぎれてあちこち・・」
言いながら真っ赤。
ハナ「ううう~~!!変なとこ触る~!!」
ヨリ「え!?」
看護婦「触るって・・しょうがないでしょう!診察なんだから!!」
ハナ「違うもん!変な触り方したもん!!」
看護婦「ってゆーか何よ!ちょっとくらい!気持ち良いだけで、減るわけじゃないでしょっっ!!」
ヨリ「おえええ!!こえぇ。」
たんこ「えらいところに来てしまった。」
たろう「早く退院したい。」
VAIO Type U上のエミュレーターで、ひたすらにチーターマンⅡをプレイし、気持ちを
静める。
液晶に自衛隊員の姿が映りこむ。
たんこの後ろ。
二人。
彼女にしてみれば全くのうかつ。
ビバチッッ!!
スタンガン。
たんこ「んぎ!?」
そろーりと振り返る。
たんこ「おのれ・・必殺・・ひっさ・・ひぃ・・」
膝が崩れる。
ヨリ「・・!!」
カスタム89を抜く。
しかし、9mm拳銃の銃口がすでにこちらを向いている。
隊長に言われていた。
「寝癖みたいに跳ねまくったボブの娘から、銃口をそらすな。」
もう一人が、たんこの手足を縛る。
ヨリは相手が陸自の隊員であることを認識。
ヨリ「なーんだ。」
銃を下げる。
担いで連れ去られる。
たんこ「やーだー!!たすけれーっ!!」
ハナ「ど、どうしよう。」
ヨリ「大丈夫よ。たぶん、次の作戦に呼ばれていっただけよ。」
看護婦「いまよっ!!」
たろうさんの寝巻きをがばっと開く。
たろう「ぎゃーっ!!」
体温計を・・・
無い。
すれ違いざま、ハナが掏り取っていた。
が、それはある意味好都合。
看護婦「しょ、しょうがないから、きょうわ、とくべつなほうほうで、たいおんをはかろうかしら。」
たろう「ひっ!ひええっっ!!」
ちゅいん。
一発の5.56mm弾。
たろうさんに向かう卑猥な人差し指の爪をかすめ、積み上げられた雑誌に突き刺さる。
ビスン。
ほのかに立ち上る煙。
看護婦「きゃ、きゃああああっっ!!」
逃げた。
ハナ「すご・・・・あの、ありがと。」
そわそわと辺りを見回すヨリ。
ヨリ「ね、ねっ。瀬瀬くん。おじ様は、どこ?」
【いろいろ到着】
C-Xのアプローチ。
主翼とルーフが一体となり角度が変わる。
空荷の着陸に関しては、VTOLと言って差し支えないほど。
どよめき。
八華田「ふふん、」
眼鏡のブリッジを人差し指で押す。
キラリと光る。
シノブ「で、なんの用ですか?現場に来るなんて。」
霹蔵「攻撃命令が出るのは、早くて二日後だ。」
シノブ「電話ですむ内容ですよね?」
霹蔵「ロボットが出現した場所は無人の国有地。駐屯地の事件は陸自の圧勝。瀬瀬博士の暗殺は未
遂。その他国内の事件は決定的な証拠が無い。」
シノブ「証拠って・・明らかに・・つか、なんで今更ぁ?」
霹蔵「焦る必要は無いということだ。」
何かたくらんでいる時の顔だ。
ため息。
シノブ「なーにまた暗躍してるんですか。いいけどさー。」
足を投げ出して、リンゴをかじる。
霹蔵「(攻撃命令が出た後も)出撃は延ばせ。」
シノブ「日本だけ?印象悪くね?」
霹蔵「そうだな、全てが終わる前に、形だけでも出たほうが良い。一回な。」
帰り際、見渡す。
現場に隙が無い。
背中に憂いの無い有難さ。
1台のジープがやってくる。
シノブの前に手足を縛られたたんこが置かれる。
シノブ「ふっ・・」
たんこ「”こんなとこまでついて来やがって、困ったやつだ・・”みたいな顔!!しないで!!ち
ょおおお!!だいっっ!!」
シノブ「ぷっ・・」
たんこ「”てれるなよ、こいつぅー”見たいな顔わ!!さらに!!禁止!!きめぇからっ!!」
シノブ「へへ・・」
たんこ「ニヤニヤすんなっ!!ムカツク!!この状態でもやれんのよっっ!!あたし必殺!!双戈
底掌!!」
足を揃える(縛られているのでそうするしか無い)。
両手を揃え、頭上に構える。
膝を落としながら、掌底を打ち下ろす。
打撃の瞬間腕をつっかえ、へそで全体重を乗せる。
腹部に決まる。
シノブ「ぐぼああっっ!!」
霹蔵「へぇ、”女は28から34”とほざいていたあいつが、なんと高校生にね。」
現場を去るトヨタ・センチュリー。
霹蔵「戦ってはならん。例え敵を殲滅しても、我々を待つのは敗北だと知れ。」
【実験施設】
レポートを書く瀬瀬博士。
同志は世界に12人。
成瀬が配信したメールに有った”実験施設”。
皆で意見を出し合った。
瀬瀬博士が代表してまとめる。
概要はこうだ。
人は牛や馬より生産性が高いと思い、機械を使った。
生産能力という点ではそうだった。
脅威的な能力と引き換えに支払ったものが多くあった。
正と負、全てを合計したとき、人類はそれほどの利益を得ていない。
少なくとも彼らは、そう考えている。
正だけを今得て、負を子孫へ投げ捨ててはいけないと。
彼らはその対策案とES細胞の可能性を示した。
彼らの示す実験施設とは、クローン技術を応用した生物アクチュエーターの実用化を目指すための
もの。
彼らが確保した国有地の一部は、エネルギーを得るための農場に割り当てられるはずだ。
彼らは強制執行人であり、犯罪者であり、超越した頭脳である。
複雑な存在である。
やすひろ「古の偉人たちも無茶やってたけど、やっぱ、同じ時代で隣り合わせちゃうと・・強烈だ
よね。」
背後に気配。
とっさにウィンドウを最小化。
振りかえるとヨリ。
やすひろ「や、やぁ。こんにちわ・・ってゆーか、な、何か用かな?」
ヨリ「あの・・瀬瀬君の着替えを取りに来ました。」
表情と台詞に関連は全く無い。
ほんのり赤く染まる頬。
もじもじとする仕草。
ヨリ「古いのを持ってきて・・ハナは迎撃任務が有るからって。それで、あたしが・・。」
上目使いに潤んだひとみで攻撃。
おじさんは一歩後退。
やすひろ「ふ、ふーん。じゃ、じゃあ、家内が一階のリビングにいるからさ、」
ヨリ「はい、もう、新しいのに交換してもらいました。現奥様に。」
膨らんだトートバッグを見せる。
やすひろ「そう、ええと、すると何の用でボクに・・え?現??」
真意は不明だが、長く居座られそうな予感。
とりあえず、その目は止せ。
【シノブVS世芭】
たんこを引き取りに来た世芭。
病院での立ち回りは避けた。
世芭「お嬢様を追い回さないでいただきたい。」
シノブ「へぇ、こりゃまた真面目そうなのが来たな。お前さ、冗談通じないだろ。」
世芭「少なくとも今日は、微塵の冗談も無しで参りました。」
シノブ「あんたに俺の行動を制限する権利は無いね。」
世芭「では、お嬢様が貴方の半径1km以内に入らぬよう、取り計らいます。」
怒りがこみあげ、血管が切れかかる。
過去例が無い真剣さで、彼女にアプローチしている。
それをゴキブリ扱いかよ。
しかも、一方的な物言い。
シノブ「気に入らねーな。」
世芭「私の用件は以上です。お時間を頂戴いたしました。」
一礼し、去る。
シノブ「待て、おい、待ぁてぇよ。」
踏みだした右足を戻す。
シノブ「つまんねー奴だな。じじぃになるまで使いたくなかった台詞なんだけどよ。”こんの若造
が!!”」
上着を脱ぎ捨て立ちはだかる。
手合わせしようぜと、目が言う。
構える世芭。
世芭「武器を用いるなら、好きにしてくれて結構。」
シノブ「へへっ。そいつぁ、お互いに・・だな。いーよ、早くやろーぜ。」
先に動いたのはシノブ。
自在に変化する、蛇のような腕。
想定外の方向から襲いかかる拳。
距離を取り構えなおす世芭。
シノブ「・・」
2つの点で合点が行かない。
1つ目は”こいつがこんなに遅いわけがない”
2つ目は”遅いのに、全てかわされている”
世芭が間合いに踏みこんできた。
相手の動きに対し、ベストの対応をするシノブ。
攻撃と防御。
しかし、拳をかわすうちに、何故か追い詰められる。
その謎を解く時間はくれない。
世芭「この一手までです。」
顎の下1mmに世芭の掌底が止まっている。
勝負あり。
相手が認知可能なぎりぎりのスピードで動き、自らの動作を見せ、相手の行動を誘導する。
それが、彼の”五衆術”。
シノブ「見事。突き込まれていたら、飯が食えなくなっていたな。」
負け惜しみではなさそうだ。
負けを受けいれる男には見えないが。
世芭「あなたの拳。多様な変化には驚きました。一度引かざるを得なかった。屈辱です。私も含め、
必ず勝てる人はいないでしょう。」
シノブ「それがなぁ、いるのよ、バケモノクラスの先輩がさ。赤子の手を捻るように軽くあしらわ
れたよ。」
あっけらかんとしている。
彼は自分より強い者を知っている。
今も、負けると判って立ち向かってきたか?
いや、世芭の言語で語りかけてきたのか?
なるほど、悪くは無い。
世芭「貴方がお嬢様に近付こうとするのは勝手。私が遠ざけようとするのも同様に勝手。それでよ
ろしいか。」
シノブ「始めからその顔で言えっつーの。対等で上等じゃねーか。つうか、後悔すんなよ。」
握手を求める。
硬く握り返す世芭。
と、次の瞬間、床に寝そべり天井を見ていた。
一瞬でひっくり返された。
世芭「人が悪い。これほど見事な投げ技をお持ちなら、使えばよかったのに。」
シノブ「こう見えて、スーパーマルチパーパスな格闘家でね。あんたが打撃系なのはすぐに判った
かんな、俺も打撃で応えたまでよ。」
そう、言いつつ、見とれていた。
立ちあがるその動作。
彼の人間が現れている。
心身を鍛えれば、両者は密に繋がり、体は心に、心は体に現れる。
世芭「気が変わりました。しばらく、お世話になります。」
シノブ「11号のタコ部屋に空きがある。使うといい。」
世芭「恐れ入ります。」
後ろ姿が名残惜しい。
もう少し、話していたい。
シノブ「俺に弟がいたら、あんなかなー。」
【ファイブゴールド】
dFORCE7000が放ったファイブゴールド。
空中で5つに別れ、漂う。
F/A-18。
目視で何かが等間隔に有ることに気付く。
レーダーを確認。
反応無し。
誘導地対空ミサイルか?
どちらにしろ、かなり接近してしまった、かわすしかない。
”何か”同士はかなり離れているので、間をくぐりぬけるのは容易そうだ。
前進するとゆるゆる離れていく。
パイロットは不思議に思った。
偵察用の何かか?
無線で正体不明の何かがあるとだけ一報。
さらに前進すると、今度は1つが急接近。
残りは離れていく。
F/A-18より遅いようだ、突っ切れると確信。
ファイブゴールドが排気口付近まで近寄る。
と、言っても20m近く離れている。
爆発。
無数のニードル。
エンジンを破壊。
脱出。
降下中にBarrett M82で狙撃される。
ニードルを打ち出すギミックは連絡されないほうが良い。
残ったファイブゴールドは、また、等間隔で並び敵機を待ち受ける。
ロボットは追加のミサイルを打上げる。
成瀬のモニタ。
今、戦場となっている全ての国。
敵機の現在位置を点で表示。
B-2もある。
成瀬「ステルスってほんとによく見えるわね。」
呆れ顔。
成瀬「マルチスタティック・レーダーといった方法もあるけど、位置を特定する方法はいくらでも
あるわ。全ての電磁波を撹乱出来ていないし。今回は配備されている場所と目的地、発進日時が判
っていたから、より楽だったわ。」
B-2を示す点が消えた。
撃墜されたのだ。
世界中でこのようなことが起こっている。
成瀬「莫大な開発費、無駄だったわね。ステルス機を補足するシステムと誘導ミサイルを作るのに、
その千分の一も必要なかったわ。」
饒舌なのは、彼女の強がり。
世界中の情報が彼女のモニタに表示される。
次々と点が消えていく。
ゲームではない。
聞こえるはずの無い、パイロットたちの悲鳴が頭に響く。
耳を塞ぐ。
血の気が引いていく。
10パーセント以上を撃墜。
点が遠ざかっていく。
撤退を開始したのだ。
ほっとする。
成瀬「恐ろしいのは自衛隊のC-X。なのにあの男、攻撃してこないなんて・・。」
瀬瀬博士にメール。
キャリアのシステムに侵入し、霹蔵の携帯へ留守電をセット。
A110に乗る。
日本の空だけは血に染まらなかった。
【古淵の正義】
古淵のモニタ。
dFORCE7000からの映像。
地中。
掘削機。
ロボットへのコマンドをタイプし周囲を見回す。
まだ、かなり土ぼこりが舞っている。
もともと入り口は塞ぐつもりだった。
M74が届く前に、トンネルの内壁を崩した。
積み上がった岩の壁がM74を全て止めた。
しかし、米軍の起こした爆発は予想以上に派手であった。
岩の壁は掘削機から50m離れた場所に作ったが、かなり掘削機側に押され、崩れている。
真近に大きな岩がいくも転がっている。
爆発で弾かれ、飛んできたようだ。
土ぼこりがおさまる。
掘削機後方に十分な作業スペースがあるのを確認。
ほっとする。
古淵「掘削作業は続けられそうだ。」
衝撃からトンネル内部を守るために組上げた本設の壁。
一枚外して見る。
岩がぼろりと一塊落ちる。
その場所を確認する。
掘削機の熱で一度溶け、また固まった、溶岩状の表面。
それのみにクラックが入り、剥離しただけのようだ。
掘削作業を再開する。
古淵「ふうっ。ま、いいだろう。」
モニタから視線を外し、立ち上がる。
古淵「掘削機は俺の大事な保険だからな。」
部屋を出る。
誰かの家だった隠れ家。
台所の棚をあさると、安そうな日本酒。
紙コップに注ぐ。
古淵「俺はバランスシートの真意を知らぬ餓鬼に、後を任せる気はない。」
【ハナの契約書】
日々が修羅場。
その病室。
うっとうしい日々の現実逃避。
吉野家シンガポールのHPに入り浸るたろう。
に、ちょっかいを出し続けるハナ。
を、なんとか排除しようとたくらむ看護婦。
やすひろが見舞いにやってきた。
ヨリと。
少女は、いとしのおじ様と並んで歩いているのかと思うと、もはや自分を抑えることができなくて、
その腕をぎゅっと抱きしめるのである。
彼は紳士足らざることにロリコンではないので、甘えん坊の犬にまとわりつかれている程度にしか
思っていない。
しかし、病院へ移動するまでの42分。
彼女の言動は、その強烈な思い込みによって、息子の友人から、おじ様の愛人へと変化して言った。
さすがに何か変だと気付いたよ、おじ様は。
やすひろ「よ・・よーぅ。えーと、げ、元気ぃ?」
たろう「なんで、ぎこちないの?」
原因は無論、横でうっとりしているヨリ。
彼女は2秒、たろうを見た。
小さな声で言う。
ヨリ「お母さんって、呼んでもいいn・・(モゴモゴ)」
間。
やすひろ/たろう/ハナ「はあぁっっ!!!!」
声が小さく、聞き取りにくかったし、聞き間違いでは?
きっとそうでは?
ヨリに集まる視線。
照れて、おじ様の後ろに隠れた。
3人とも、忘れることにした。
言葉は無かったことに。
たろうに容態を聞く父。
早く家に帰りたいという。
後、1週間くらいかかると答える父。
リハビリまで3ヶ月の長期入院プランを勧める看護婦。
看護婦「たろうちゃんの事は、安心して、全て任せてください。」
ハナ「1つも安心じゃないわ。」
看護婦「・・たろうちゃんは、あなたのものじゃないでしょ?」
ハナ「あたしのだもん。」
やすひろ「およよ~、言ったねぇ。」
鼻で笑う看護婦。
むっとするハナ。
ハナ「ロボットを操縦する報酬として貰ったんだもん。」
たろう「なにっ!!」
その、契約書を見せる。
やすひろ「うわー・・書いてあるよぉ。本物だぁ・・ほんと、無茶するねぇ。」
契約書の文面に食い入るヨリの目が言う。
”あたしもこういうの欲しい”
おじ様の背に悪寒ひとすじ。
思わず奪い取ろうとするたろうと看護婦。
しかし、手の速さでハナにかなうわけが無い。
父にすがる息子の目。
肩をすくめる父。
たろう「ありえないだろ!!」
やすひろの携帯からメール受信の音。
4つ(ドコモ、au、SB、WC)持っている端末のうち、今日はWX321J。
ORTLIBE VELOCITYからFlipStartを取り出す。
病院なので、数ある通信カードの中からAIREDGE”DD”を選択。
成瀬からだ。
【戦闘は続く】
独軍は次の作戦を用意していた。
陽子加速器を改造し、ニュートリノビーム発射機を作成。
物理的な破壊能力は無い。
成瀬たちの通信を妨害する装置。
ロボットを狙い、ユーザーのコマンドが届かないようにできる。
極秘であった。
作戦の指示は全て口頭で行われた。
用いられるPCは全てネットワークへの接続を禁止された。
ミーティングは全て走行中の車内。
ニュートリノビーム発射機を作っているらしいということは、成瀬も瀬瀬博士も判っていた。
そういった、通信妨害があるだろうと成瀬たちは予想していた。
しかし、その詳細、そして、実行部隊の動きを成瀬たちは掴んでいない。
ハノーファー。
カフェ。
Gilde Pilsenerを飲む男。
チーズとハムをつまむ。
車が1台来る。
ここではありふれた車。
OPEL ASTRA STATION WAGON。
窓が開く。
男がふざけた顔で手を振る。
助手席に座る。
振り返るとリヤシートに二人。
おどけて握手。
他の4人は?と聞く。
一人が答えた。
「さぁな?誰も彼らが現れるのを見ない。誰も彼らがここにいるのを知らない。」
苦笑。
最後の一説は、全員で言う。
「彼らが作戦を終えたとき、彼らがここにいたいかなる証拠もない。」
笑いで、言葉は途切れ途切れ。
【仮想現実のハナ】
科学者によるロボットを用いた一連のテロ。
軍部、諜報機関は彼らを必要以上に抽象的に呼んだ。
コードネームすらない。
絶対的な盗聴技術を恐れた。
科学者達個人の特定はほぼ調査できていた。
公表はしていない。
マスコミはターミネーター等有名なSF映画になぞらえた。
被害総額などがテレビで新聞で記事になる。
過去の地震、ハリケーン、そして戦争と比較された。
兵器としての自立型ロボットも議論された。
剣、弓に始まり、戦車、原潜、ICBM、スターウォーズ計画。
ロボットは陸上で、戦術的目標の破壊及び戦略目標の制圧と占領に効果があると評価された。
歩兵では困難な大型の対地、対空兵器も取り扱える。
ロボットのサイズも1.5m、4m、10mとCG動画でシュミレート。
戦車型ロボットと人型ロボットの違いも説明。
SF映画に登場した兵器の可能性。
宇宙の戦士のパワードスーツ。
宇宙船間ヤマトの波動砲。
スターウォーズのライトセーバーなど。
各国が開発中の最新兵器。
有識者達の解説。
よく出来ている。
興味深い。
しかし、問題を並べるだけ。
何も解決していない。
知識をぶちまけているだけ。
成瀬や古淵、他のメンバー。
気になって見たが、3分でウィンドウをクローズした。
成瀬「ほんと・・答えの出せない連中。意気地なしばかり。ロボットは兵器じゃないわ。根本がず
れている。」
TITANIOの存在は極秘中の極秘。
日本以外にとってもそのほうが都合が良い。
現在唯一、確実に効果の期待できる対抗手段。
パイロットの問題で1台しか稼動できない。
世界で日本だけ。
世論がどう反応するか判らない。
全ての国が等しく、必要な数装備できるものが必要だ。
隠蔽すべき情報。
しかし、ネットでは陸自の戦闘ロボットの噂が流れていた。
敵と同じ3~4mマシン。
胸部に操縦席がある。
女子高生がパイロット。
確証は無い。
早速スレが立つ。
国防上の問題を公にしないほうがいいと言う者。
女子高生は入隊できないという者。
アニメで設定が似ているロボットの画像を貼る者。
荒し。
善意悪意理性本能全てがある。
パイロットは可愛いか?が主な議題のとき。
有力情報が投下される。
”名前のイニシャルがHであることまで判明。小柄で普通の子らしい。”
落書きのようなふざけた予想図で遊ぶ。
深夜2時、神の腕を持つ男の1枚の絵が降臨。
多くのファンが付き、事実上の標準となった。
ポリゴンの動画を作る職人が登場。
病室、VAIO Type Uで見るたろう。
たろう「なんというか・・」
ハナ「なに見てるの?」
たろう「これ、ハナちゃんらしいよ。」
ハナ「え?」
真っ赤。
媚びに媚びた服。
色と装飾は微妙にミリタリー。
陸自の誰が、ふりふりのミニスカをはくのか?
ぱんてー見えてんぞコレ。
ヨリ「良かったじゃん。本物の倍わ可愛い。」
たろう「名前はHちゃんだっ・・」
ハナ「なんですってえええぇぇっっ!!」
VAIO Type Uを振りかざす。
たろう「ち、ちげ!!イニシャルだから!!バイオ返してぇ!!」
ハナ「むーっっ!!」
ハナの手からVAIO Type Uを取り投稿されている”いろいろ”を見るやすひろ。
やすひろ「どっから情報が洩れるのかな?まずいよねぇ。」
霹蔵に電話をする。
TITANIOが公になれば失態。
霹蔵はすぐに対応すると約束した。
たろう「あ、父さん!ついでにハナちゃんの契約書を無効にするよう頼んで!」
父は即座に電話を切った。
たろう、信じられないという顔。
やむを得ない。
契約書を無効にすれば、ハナはTITANIOのコントローラーを握らない。
ハナは”父親のほうはなんとかなる”と拳を握り、ヨリは親友に”お義母さん”と呼ばれてしまう
事態に対して、心の準備をしていた。
【FOS】
ネットに流れたもう一つの情報。
今回のテロ。
組織、作戦、共に正式な名称は無い。
計画段階のコードネームは有った。
-- 筑波宇宙開発同好会 FOS --
この名前に多くの人が反応した。
聞いたことがあった。
課題は火星のテラフォーミング。
建前はニューフロンティアへの卓上の挑戦。
実態は実現不可能な課題を酒の肴に、学会のセレブ共が無駄に知識を競い合う飲み会。
そう、思われていた。
実際は数十年先の技術を実用化。
バランスシートを作り出した。
古淵「バランスシートとは人類の地球環境に対する貸借対照表。今、人類は借金にまみれている。
生き物を作る材料、居るに適した環境は限られている。増え続けたいなら、もっと、効率よく住ま
う必要がある。ましてや借金を返すことを考えれば、今、増えようなんて・・。」
ネットではFOSで教授と呼ばれていた男に話題が集中。
同好会のトップだと目される。
しかし実名が判らない。
候補者の名前が挙がる。
町田の名もある。
FOSの組上げたナレッジベースの名だという者も現れた。
古淵「教授、何故、町田だったのです。あんな腰抜け。TITANIOに入れあげた挙句、死にま
したよ。何もせずにね。」
矢部「町田先生は腰抜けじゃない。」
青白い肌、目の下に隈、細く色の薄い猫毛、目の色も薄め。
七部丈のパンツ。
薄い脛毛。
身長は同じくらいのはずなのに、比較的にがっちりした古淵より2まわり以上小さく見える。
町田の研究室に所属していた大学院生。
優秀。
古淵「町田派なら成瀬について行け。」
矢部「あの女は嫌いだ。」
古淵「解らないな?成瀬は良くやっている。頑なに町田流を貫き通そうとしなければ、袂を分かつ
ことも無かった。同じ研究室だし、何かあったのか?」
矢部「何も無いです。ただ、成瀬さんが嫌いなんだ。」
古淵「良く判らんが、俺の考えには賛成なんだな。」
頷く。
矢部「町田先生の理想は、ぼくがこの手で実現する。他人の手は借りない。」
キーが高めの張りの無い声。
空気にとけてしまいそうな青年。
思いは強烈。
【通信妨害】
ドイツ
FOSの隠れ家から16km地点。
15kmより近付くと偵察に来る。
別の部隊が事前に確かめてある。
2台のOPEL。
8人の男。
普段着。
上着の裏。
SIG Pro。
無線機を仕込む。
イヤホンはワイヤレス。
耳に押しこみテープで止める。
隠れ家の前にdFORCE7000が2台。
他のロボットは平均で50km離れている。
いかなる攻撃が有っても、2台で15分近くを持ちこたえるつもりか?
ロボットはオペレーターが攻撃目標を何らかの方法で指定している。
攻撃目標はロボットに内蔵されたセンサーが捕らえたものから選ばれる。
独軍はそう結論した。
オペレーターとロボットの通信を妨害できれば攻撃されることは無い。
軍用機、軍用車両は発進した時点でロックされる。
衛星などと連動しているのか?
民間の航空機はどうか。
彼らの地対空ミサイルがロボット以外から発射できないなど考えにくい。
そうでなくても航空機には過敏。
隠れ家を守るロボットは増え、ガードが固くなる。
残された可能性。
隠れ家に向かい車を走らせる。
敵ロボットの現在位置を知りたいが無線は使えない。
FOSに知れてしまう。
あと10km。
空気を割る音。
いる。
資料にあった現象。
1台か?
アクセル全開。
攻撃してこない。
改造陽子加速器から連続的に打ち出される膨大なニュートリノ。
隊長「へぇ」
田舎道を時速160km超えて走る。
足回りはWRカー並みにしてある。
ぴたりと付いてくるdFORCE7000の気配。
一人がつぶやく。
「5分か・・」
改造陽子加速器が連続稼動できる時間は5分。
テールを振り乱し、砂利を跳ね飛ばし進む。
1分後、オペレーターが妨害に気付き50km先のロボットを呼び戻す。
隠れ家に残っている1台で機材をトレーラーに積む。
基地からの無線。
「気付かれた。急げ。」
隠れ家が見えた。
走り出すトレーラー。
改造陽子加速器はニュートリノビームを振り、ロボット2台の通信を妨害する。
オペレーターの通信機も妨害。
日本。
成瀬のモニタにワーニングメッセージ。
成瀬「大量のニュートリノを連続して撃てるの?しかも軌道を変えて?彼らの目は塞いであるのに、
どうやって照準をあわせているの?」
フランスのメンバーに指示。
ドイツ。
強張った表情でロボットの攻撃が無いことを確認。
隊長「よーし・・無線機・・発報していいぞぉ。」
リヤシートにGLOCKフィールドナイフを突き立てる。
パンツァーファウスト3。
組み立てる。
早い。
サンルーフを開ける。
まだ、車内で待機。
逃げるトレーラー。
追うワゴン車。
残り1分。
ドイツチームに代わり、妨害を受けていないロボットにコマンドを発行するフランスチーム。
トレーラーとワゴン車の距離、目測だが200m。
射程距離は500m。
舌を噛みそうなひどい揺れ。
道は曲がっている。
50m以下に近付きたい。
改造陽子加速器は予定より早く限界を迎えつつあった。
無線で知らされる。
「”少なくとも5分”って聞いたよなぁ!?」
100mの距離で撃つしかない。
「無茶だ。」
しかし、
「クイズだ。俺たちがいる意味ってなんだ?」
【次の課題】
病院の中庭。
成瀬からのメールを見る瀬瀬博士。
時計のアプレットが添付されている。
実行する。
インストールが始まった。
添付ファイルが削除される。
メーラーは”受信時サーバーから消さない”に設定してある。
しかし、サーバーに有るファイルも消えた。
やすひろ「あたたぁ、しまったよぉー。」
インストールされた時計を実行する。
何も起こらない。
焦る。
インストールされた実行ファイルのサイズが4KBしかないことに気付く。
知り合いのプログラマに実行ファイルを送り解析してもらう。
起動されたら即座に終了するプログラムのようだ。
なにか暗号文のようなコードが282Byte有るらしい。
やすひろ「それだなぁ。何かPCを特定するコードを送ったな?で、PCにはキーを残して全部削
除したと・・。あいたぁー、FlipSTART固定は痛いなぁ。これでしか使えないのかぁ。デ
スクトップか、せめてノートPCにしておきたかったなぁ。」
本文を読むと、その辺りの注意書きが有る。
やすひろ「・・・。」
説明書を読まないタイプ。
がっくり。
続く本文を読む。
・・・・・。
やすひろ「次は実施試験って感じかな?難しいなぁ・・。」
背後に甘いオーラ。
ヨリ「あの、そろそろ帰ろうかな・・と。」
やすひろ「ああ、今日はありがとう、助かったよ。」
すごく嬉しそうな少女。
何度もしつこく挨拶をしながら帰っていく。
おじ様はその都度、挨拶をお礼を言わざるをえない。
どっと疲れて動けないおじ様。
足取りが軽いヨリ。
彼女は今日、おじ様と結ばれ、子供が二人できるまでの泣き笑い人生を、2時間かけて妄想した。
物語は大詰め。
遅すぎる進行。
本流から外れていく主人公達。
出番の無い主役ロボ。
迷走する作者の思考。
現実もフィクションも全ては成る様にしか成らない。
それが世の真実。
リアルだと悟った。
【精鋭】
山頂、
郊外にポツリと立つ高層ビル、
鉄塔、
見通しの良い高所に望遠鏡。
独軍が設置した。
その数10。
ノートPCに接続。
その一箇所、とある山の頂。
サーボモーターの音。
捕らえる映像。
30km先。
2台のワゴン車、
2台のdFORCE7000、
1台のトレーラー。
モニタを見るのは2人。
一人は技術者。
もう一人、立ち合いの男。
望遠鏡に近付こうとする。
「わっと、ダメ!ダメ!!」
「え?」
「人がそばに立つだけで、微妙に地面が傾くんですよ。」
三脚には水平器があり、正確に調整されている。
コンマ1度の狂いが30km先で何mになるのか想像した。
忍び足で戻ってくる。
「いや、凄いレンズだなぁと思って。ソフトウェアとかも凄いんでしょ?どうやってるの?」
「企業秘密です。」
敵ロボットの位置情報を送信するのも、同じ会社のレンズを用いた赤外線通信機。
10km毎にリレーをする。
狼煙や手旗信号のよう。
今回の作戦のために作られた。
改造陽子加速器へと情報を送る。
不思議そうに首をかしげる立ち合い人。
全く、勉強してから来て欲しい。
「せいぜい50000bpsで良いと伺いましたので。」
「なんでも当たり前の様に言うね。」
「レンズの値段を聞いたら、”それくらいできて当然”って言いますよ。っと、通信機のレンズは
覗かないでください。焼け死にますから。」
OPEL ASTRA STATION WAGON、
車内。
隊長が怒鳴る。
「時間が無い!!撃つぞ!!」
「当たりゃしませんよ。」
「止まれ!!」
急ブレーキ。
「HEAT弾は3発づつ持っていたな。」
「どうする気ですか。」
「なに、訓練通りの事をするだけさ。特殊部隊流のな。」
パンツァーファウスト3を持つ2人が車を降り構える。
その横に残り2組づつのHEAT弾を担いだ兵。
隊長が運転手に指示。
「車の向きを変えろ。リアハッチをもぎ取れ!!」
遠のいてゆくトレーラー。
自立プログラムにより、兵士達の監視を続けるロボット。
襲ってこないと判っていても強烈なプレッシャーを感じる。
本部より無線。
改造陽子加速器停止まで10秒。
隊長「っていっっ!!」
引き金。
その横。
狂ったように次弾を組上げ、渡す。
その間、目はトレーラーを睨んだまま、身体の芯はずらさない。
即座に撃つ。
最後の一発はすでに組み上がっている。
機械のように、ただ、撃つ。
早送りのビデオを見るようだった。
ほとんど時間差なく放たれたHEAT弾は、ほぼ5m間隔で飛ぶ。
監視のため、それを追うロボット。
監視結果(データ)を送るため、先ずビーコンを発射。
通信妨害のため、エラーが返る。
HEAT弾への対応が出来ない。
トレーラー
運転する科学者。
バックミラーをちら見。
震えあがる。
アクセルを踏む。
錯乱した無茶な運転。
避けようとハンドルを切る。
横道を探すが無い。
頭が真っ白になる。
6発の内、2発が命中。
双眼鏡で確認する隊長。
「退却だ!!」
車に乗り全速で逃げる。
トレーラーは横転。
1回転半。
コンテナが破裂。
外にばらまかれる。
コンピューター。
武器。
ロボットの部品。
人。
皆、ほぼ即死。
車体は路面を滑走。
前を下に少し立ちあがる。
激しい火花。
ドオンと落ちる。
また、横に1回転。
そして止まった。
改造陽子加速器は停止。
焦げ臭い。
無理をした。
二度と使えない。
座りこむ汗だくの技術者。
彼らも必死で戦った。
現場の兵士は判っていないが。
逃げる2台の改造ファミリーカー。
ハーネスで左右のCピラーに身体を固定し、荷室からMG3で後方を狙う兵士。
立位を取る高さがないので座す。
床にずらりと並べた120発リンクの弾薬箱。
7.62mmだが、オーストラリアのレポートを分析し、効果があると判断。
サンルーフから身を乗りだす兵士。
BOSHのバッテリーインパクトドライバー。
屋根に台座をビス止めし、MG3を設置。
「隊長。オペレーターは倒したのでしょう。機材を回収すべきでは?」
「覚えておけ。今、それをしないのがプロだ。」
盗聴サーバーチームが軍事衛星を乗っ取り、dFORCE7000の位置をフランスチームに伝え
る。
それだけでは精度が足りないので、ビーコンを発射し正確に特定。
フランスチームとドイツのロボットとのネゴシエーションが完了。
コマンドが発行される。
2台のOPELは攻撃目標に設定された。
ロボットが追ってくる。
「ホントだ追ってきた。誰が操作しているんだ?」
「考えるな!!引金を引け!!」
シノブの書いた陸自発のレポートに有った注意事項。
”敵より先に撃て”
ロボットも銃を持つ。
回避と攻撃は別のステータス。
回避のほうが優先順位が高い。
マクロを含むカスタムのコマンドを発行されない限り、回避中は攻撃してこない。
そう、分析されていた。
地対空ミサイルが確認された今、攻撃ヘリも攻撃機も出せない。
逃げる改造ファミリーカー。
しかし、ロボットのほうが速い。
運転手が言う。
「こんな田舎道、いくらパワーが有ってもスピードは出せない。」
敵の一発。
ルーフのMG3が吹き飛ぶ。
回転し兵士の額を割る。
脳震盪。
ひどい流血。
膝の力が抜け、車内に落ちてくる。
助手席の兵士。
消毒液を乱暴にかけ、
ガーゼを乗せ、
ガムテープでぐるぐる巻き。
負傷兵を床に転がし代わりにサンルーフから頭を出す。
「おおっ!!銃が無ぇーっっ!!」
運転席の兵士。
「コレしかねーぞ!!」
H&K G11をわたす。
そのとき、
荷室の兵が撃たれる。
へそから下が無い。
上半身はハーネスで宙に浮いている。
意識を失いながら叫ぶ。
「うあああああぁぁ・はぁ・・」
死体は前周りに回転。
光を失った目が運転席を睨む。
苦痛に歪んだ表情に目をそむける。
湖が見えた。
桟橋を走る。
車の床を撃ち、いくつも穴を空ける。
そして、迷わず飛び込んだ。
生きている兵士は皆、運転席、助手席に移る。
「ちきしょう、早く沈め・・。」
弾丸が飛んでくる。
運転席と助手席の背もたれのみ、分厚い強化プラスチックを仕込んである。
水中に消える2台のファミリーカー。
ガソリンと血が清らかな湖面を汚す。
湖底。
造りかけの漁船。
上屋の無い船体のみ。
湖底から3m離れ、逆さまに浮いている。
6箇所に鎖。
繋がれたウエイト。
湖底にスクーバ・タンク50本余り。
下から潜り込むと空気がたまっている。
中には当面のタンク5本と食料、電灯など。
「失敗を考えて用意したが、まぁ、役に立ったな。」
TITANIOの仕様から、敵ロボットも水中での行動は困難と予測。
「迎えは6時間後か。」
隊長が労う。
「皆、良くやった。なんらかの形で奴らにダメージを与えることが目的だった。達成できた。」
一人がぶるっと奮える。
「っああぁぁ、クソしてぇ。」
タンクを一本そいつの方へ転がす。
レギュレーターとウェイトを投げる。
「離れたところでして来い。」
「水中かよ!!」
【逮捕】
自衛隊に、独軍に、FOSの惨敗。
直後、多くのメンバーが古淵へ流れた。
ロボットが無敵であったころ。
世界を理想通りに創り変える自信があった。
教授はロボットの数、人数の不安を語った。
そのときは、そうかなと納得して聞いた。
しかし実際にやってみて、そう思ったことは無い。
無敵だった。
今は違う。
各国の軍隊は勢いづいている。
真実はどう有れ皆が思った。
不安が加速する。
多くの犠牲を払い、プロジェクトに賭けた。
全てが終わった後、罰を受ける覚悟はある。
自分達は居なくなる。
それまでに世界を・・正しき流れを完成させる。
できなければ、世界は振り出しに戻る。
許せない。
ネットにFOSの名が流れたことも、彼等の危機感を煽る。
各国の諜報機関。
テロに参加した科学者の名はほぼ判っていた。
極秘であったが、じわりと漏れていった。
ネットに上がれば、嘘にしろ真にしろ、膨大な情報が集まる。
爪の先ほどの情報が成長し形を成していく。
心が追い詰められていく。
六浦の霊園。
13区画。
墓の前に立つ女。
霹蔵「待ったかな?」
振り向いたのは成瀬。
霹蔵「町田の墓か。」
手を合わせる。
成瀬のキツイ目。
霹蔵「他意はないよ。私は人殺しだ。安らかに眠る彼は敵ではない。」
成瀬「今日は取引に来たわ。」
墓を見る霹蔵。
線香が、だいぶ短くなっている。
女の少し赤い目。
霹蔵「そうか・・」
成瀬の携帯にメール。
町田と成瀬に理解のあるメンバーから。
”多くのメンバーが古淵に流れた。第4章の実行は困難。”
手が震える。
霹蔵「大丈夫か?」
携帯をしまう。
成瀬「私を逮捕しなさい。」
男は驚くが表情には出さない。
どう答えたものか、ウソもハッタリも苦手だ。
霹蔵「・・私に逮捕権は無い。」
成瀬「ロボットMAG-HFと共に投降し、捜査に協力するわ。条件はあなたの管理直下であるこ
と、私にMAG-HFを操縦する権利があること。」
霹蔵「難しい条件だ。」
成瀬「・・・・」
霹蔵「・・判った。検討しよう。ただし、ロボットのコントローラーは渡せない。君がロボットへ
の命令を指示し、コントローラーは私が選んだ隊員が操作することになる。それと・・」
成瀬「それと?」
霹蔵「君と行動を共にする者は、町田の命を奪った女になるだろう。」
成瀬「町田を・・撃った・・女!!??瀬瀬!!」
霹蔵「そうだ。良いか?」
【二人はここに居る】
景色が淡い。
知っているはずの場所。
しかし、どこであるのか・・。
小さな丸いテーブル。
教授と、
町田と・・、
いや、ここは・・、
太陽は・・。
ティーカップ。
口をつけるが減らない紅茶。
不思議に感じない。
二人が何か話している。
しかし、声が聞こえない。
1m離れていないのに。
聞きたい。
ぐっと二人に近寄る。
それでも聞こえない。
町田の間横に椅子を寄せる。
話す口元のすぐ近くに耳を近付ける。
町田は気にする様子もない。
聞こうとしても聞こえない声。
聞きたいと、ただ、願う。
すると、
心に聞こえてくる。
教授「多くの人は、人や犬が見せるような自我しか知らない。理解しない。」
町田「脳だけが考えると決め付けている。自分は一つの命らしい。はたして、そうか?」
成瀬「また、判らないことを言いだしたわね。」
町田「欲と理性が自我かい?もっと別な方法で知覚し感じ、結果、物理的な影響を起こす知性が有
りえる。そう、思わないかい?」
教授「植物が地球が、鋼鉄の塊が、私達の知思いも寄らぬ方法で世界を感じ、能動的に影響する。
彼らも神を思うのかな?」
成瀬「うふふ、相変わらずなのね。」
言葉尽きることなく話し続ける二人。
傍らで紅茶をいれる。
ふと、思い出したように訊く。
成瀬「ねぇ、”より良いこと”って何?」
顔を見合わせる二人。
町田「例えば、君かな。」
真っ赤になっておたおたする。
教授「理解できないもの、受け入れ難いものに、正々堂々と向かい合いなさい。上手くやったり、
勝つのが目的ではないよ。」
・・・・・・・・・・
硬い廊下を歩く靴の音。
冷えた壁に響く。
目、薄く開く。
鉄格子。
女性の看守。
誰かに挨拶をしている。
霹蔵が来た。
もう一人、遅れて現れる。
ゆっくりと。
大女が巨乳を揺らして歩いて来る。
成瀬「・・・!!」
奥歯がぎりりと鳴る。
目尻がつり上がって行くのが自分で判る。
霹蔵が優しく声をかける。
霹蔵「ここは寝苦しかったろう。今夜からはホテルで寝れるよ。」
彼女は大女を睨み、視線を外さない。
相手は全く意に介していないようだが。
それが怒りの火に油を注ぐ。
心配そうな霹蔵。
霹蔵「妙なことは考えないでくれよ。」
この無骨な男。
言葉の感じがあの二人と似ている。
思想も生き方も全く違うのに。
思い出す。
夢で聞いた、教授の言葉。
噛みしめる。
静かで深い目が見上げる。
霹蔵「ほう・・」
たつみ、気圧された。
霹蔵「大丈夫そうか?」
たつみ「読めない顔してるわね。保障できないわ。」
尋ねた方は色よい返事を期待した。
残念。
霹蔵「そうか、君が駄目なら・・」
成瀬「待って!!」
たつみ「あんた、切れる上に、自分にも嘘をつけるでしょ。確実に信じられるところが無いの。」
成瀬「・・・あるわ、」
たつみ「・・・・」
成瀬「あなたが信じることが一つ、有るわ。」
たつみ「・・・・」
成瀬「私は町田の期待を裏切らない。絶対に。」
たつみ「・・・・」
成瀬「お願い!!あの人が望んでいないことが起きるの!!」
たつみ「・・・・」
霹蔵「どうする?」
たつみ「・・・・」
成瀬「お願い・・」
くるりと向きを変えるたつみ。
長い脚が前へ伸びる。
去ってゆく。
崩れ落ちる成瀬。
無言で見送る霹蔵。
成瀬「う・・、うう・・。」
たつみ「上で、待ってるわ。」
【副作用】
病院。
たろうさん、明日、退院予定。
お手洗いに行こうとするハナ。
の、袖をきゅっと捕まえるたろう。
理由は・・、
獲物を狙う、例の看護婦の視線。
今日、一日に賭けている。
物陰に潜み機会をうかがう。
小動物型のその少年。
今、容易には動けない身。
この2週間、ハナだけが頼りだった。
ヨリ「あたしが見てるわ。」
ジャコン!!
マンストッパー ハイアウトプットを構える。
忍者のようにスッと消える看護婦。
ほっとするたろう。手を離す。
頼れる親友は、いつもタイミング良くやってくる。
父と・・。
お手洗いから帰ってきたハナ。
長いすに座る。
大魔王ジョロキアをおいしそうに食べる。
ぎょっとする親友。
ヨリ「ええっっ!!」
ハナ「なに?」
ヨリ「なにって、あんた、辛いの蝶苦手だったじゃん。」
ハナ「えへへ、いま大好き。」
はっとするやすひろ。
やすひろ「ハナちゃん、辛いのダメなはずなの?」
ハナ「ちょっと苦手だったかも。」
ヨリ「何言ってるのよ。寿司はわさび抜き、辛子も七味も使ったことないし、カレーは甘口、キム
チ厳禁。ホント、そんなの食べるなんて信じられないわ。」
やすひろ「そう・・」
ハナをじっと見る。
やすひろ「他に好みが変わったり、身に覚えのない体験がリアルな記憶で残っていたことはない?」
少し怖い、目が。
お菓子の袋の口をクリップで留める。
うつむく。
ハナ「わからない。」
やすひろ「そう・・」
ヨリ「ハナ、どうかしたんですか?」
親友は声帯を乙女モードにチェンジして尋ねた。
やすひろ「もう、TITANIOを操縦しない方が良いね。」
ハナ「え?」
たろうも驚く。
やすひろ「正確に言うと、もうこれ以上、たろうと接続しないほうが良い。」
たろう「どういうこと?」
やすひろ「辛いものが好きなのは、ウチの家系さ。ボクも家内も、ボクと家内の父も、爺さんも、
皆、舌が焼けようなヤツが大好きでね。学生のころ、ご飯の上に山葵とメンタイコを乗せたお茶漬
けとか好きだった。病気だよね。」
メモを取るヨリ。
”ダーリンは蝶辛いものが好き。”
話を続ける。
やすひろ「もちろん、たろうもそうさ。・・な?」
たろう「う、うん。」
やすひろ「ハナちゃんは少しずつ”たろう化”している。理由は判らない・・だから、どうなって
しまうかも判らない。今、やめるべきだ。」
【別の道】
古淵「無意味に人を殺すつもりはない。プロジェクトが完成すれば、自然と人口は適切な数値へと
向かう。」
矢部「前置きはいいよ。また、やるんだろ?」
古淵「そうだ、TITANIOとMAG-HFは破壊する。期限はニュートリノ通信機と冷間小滴
油圧鍛造技術を盗まれる前。破壊の範囲はロボットとそのパーツ、金型、専用工作機械、仕様書等
あらゆる情報、かかわった技術者、オペレーターだ。」
矢部「その、計画書を作ればいいんだね。」
古淵「もうひとつ。」
矢部「・・・」
古淵「武装を補充、強化する。そのための材料を調達する。」
矢部「必要なんですか?」
古淵「プロジェクトを守り、全てがスムーズに進むようにするために必要だ。メンバーが望んでい
る。バランスシートの示す世界を実現するためのフォースだ。」
不健康に痩せた青年は、表情無く、虚空に目を泳がす。
狭い肩幅。
ぺたんこの尻。
矢部「そっちは、僕には、作れない。」
古淵「では、俺が作ろう。参加もしたくないか?」
矢部「皆がやるなら、やるよ。」
自室に戻り、パソコンに向かう。
先ず、ターゲットを設定する。
オペレーターの項目。
成瀬の名を入力する。
たろう、ハナの名。
技術者として、瀬瀬やすひろ。
TITANIO製造主任の岸田文夫。
同担当の梶洋一、赤石清彦。
コントローラー担当の井出光博。
最後に集中治療室で生死の境をさまよう蛹山。
加藤と武藤は所有するデータさえ抹消すれば安全とした。
その他の項目を新設。
瀬瀬たつみと入力する。
成瀬と瀬瀬たつみの担当に自分の名を入力。
色の薄い瞳に怪しい光。
【退院】
たろうさん退院。
ギブスは取れたが松葉杖。
例の看護婦は涙で目を腫らしている。
看護婦「やだぁ。」
たろう「・・」
看護婦「ね、一回だけぎゅっとさせて。」
と、ハナにお願いする。
しょうがないわねぇ、という顔のハナ。
2週間、戦い続けた強敵(とも)への置き土産か?
それを不思議そうに見る少年。
自分の意思は組み込まれていない。
結局、看護婦に抱きしめられている。
看護婦「何か有ったらすぐに来るのよ。他の病院行ったらダメだからね!!」
正直答えづらい。
正門で手招きする父。
その横。
恋人の距離でそっと立つヨリ。
昨日、ダーリンは辛いものが好きというニュー情報を加味し、甘い生活を2時間かけて妄想しなお
した。
父の手に自転車。
嬉々として急ぐ息子。
倒れそうになる。
横から支えるハナ。
MERLIN SYRENE。
チタンの肌に美しい彫刻。
基本的に前のWORKS CRと同じアッセンブルだが、ホイールはフレームとデザインの合うニ
ュートロンウルトラに変更。
ペダルは怪我をしていないほうだけ付いている。
シューズを履き、父に抱かれて、コンコールライトにまたがる。
ハナ「片足で大丈夫なの?」
やすひろ・たろう「えっへっへぇ~。」
車で自転車の後ろを付いてゆく。
片足でも25km/h以上出ている。
坂も登っていく。
信号待ちでは器用にスタンディングスティル。
骨折をした足は無残に筋肉がそげ落ち、ぶらぶらとだらしなく下がっている。
ヨリ「へー、やるじゃん。」
やすひろ「鍛えているヤツはさぁ、体幹が出来ているし、ペダリングも綺麗だからねぇ。わざわざ
片足で走る練習も有るくらいでさ、そこそこ平気なんだよねぇ。」
ハナ「ふーん。」
やすひろ「まぁ、今日は1時間くらいで我慢してもらうけどね。」
【取引】
ホテルの一室。
入り口に警官。
やってきたのは、
たろう、やすひろ、ハナ、ヨリ。
用件は何も教えられずやってきた。
中に入ると霹蔵、たつみ、成瀬。
ヨリを止める霹蔵。
霹蔵「すまんな。」
たつみ「入って。」
霹蔵「おい。」
今回は危険すぎる。
男の目が言う。
たつみ「是非参加してもらうわ。」
7人でテーブルを囲む。
先ず、やすひろがハナちゃんの事情を説明する。
霹蔵「判った。しかし、TITANIOを動かす方法は無いか、考えて欲しい。」
この時点でたろうとハナは帰宅。
配布された資料。
やすひろは向かいに座る女性が成瀬だと知り驚く。
平静を装ったが、たつみには気付かれた。
成瀬が条件を伝える。
たつみが答える。
それに神経を逆撫でされ、キッと霹蔵を見る成瀬。
霹蔵「警視庁の管轄だ。私は立ち合いで居るだけだ。」
成瀬「・・・・」
霹蔵「安心しろ。瀬瀬君は話しの解る女だ。」
蛹山の代打で立ちまわった実績が幸いし、瀬瀬たつみを本件の責任者にできた。
霹蔵「警視庁の下請けだが、自衛隊も参加する。その責任者も私の愛弟子だ。」
たつみ「愛弟子・・?」
眉をしかめる。
駐屯地。
兵器に囲まれ、トリコロールカラーのパラソルの下。
たんこと向かい合ってランチ。
シノブ満面の笑み。
たんこ「やだもぉ!こいつぅううっっ!!セバスチャン!!もー帰るわよっ!!」
黙々と鍛錬を続ける世芭。
世芭「決戦は間近です。吉備家の次期当主たるもの、敵と逆の方向へ進んではなりません。」
たんこ「あたしわあっ!!糸錐家の女ですっっ!!」
条件の交換が終わり、書類にサインしたところで、霹蔵は去る。
やすひろもMAG-HFのオペレーターとして参加することになった。
FOSの技術を盗むことが目的なのは明白だが了承する。
彼が継ぐべき人間だから。
やすひろも本来なら断るところだが、逮捕されたのは成瀬。
他の誰にも任せるわけには行かない。
翌日の予定を確認し、瀬瀬夫婦も去ろうとする。
引きとめる。
やすひろに意見を聞きたいという。
成瀬「夢の中で、恩師が自分の知らない事実を告げる。この現象、あなたならどう説明する?」
やすひろ「過去に耳にして知っていたが、忘れていたことを、必要に迫られ夢の中で思い出すとき、
自分ではなく、自分が最も言うに相応しいと考える恩師が告げた・・かな?」
成瀬「・・他には無いかしら。」
やすひろ「そうだなぁ・・”知らない事実”は君が思い付いた。夢の中で、君が答えを出しうると
思った恩師になりきった。事実を導き出し、それを君が確信するために・・とかは・・どうかな?」
成瀬「・・そうね、う・・ん。いいえ、もっと、もっと、恐ろしいほどリアルな答えのはずよ。」
目、たつみが気圧された、あの目。
やすひろ「一寸待った。幽霊とか、そういうのは無しだよ。冷静になろうよ。ねぇ?君らしくない
んじゃないかな?たぶんねぇ。」
【同じ道を選ぶ】
夜。
入り口に二人見張りが付くが、成瀬は拘束されず、一室を自由に使える。
隣の部屋に瀬瀬夫妻が泊る。
さらに隣にヨリ、シャワーを浴びている。
皆、成瀬が少なくとも今、逃げるとは考えていない。
彼女は自衛隊の力を必要としている。
むしろ、裏切り者への報復。
外からの襲撃に備える。
泊まる部屋は42階建の最上階。
屋上にはヘリ。
戦いになる前に逃げる。
念入りに手順を打ち合わせる母。
地上に機動隊。
150名が交代で目を光らせる。
SATを中心に銃器対策部隊、銃器対策レンジャー部隊などが参加。
装備はニューナンブM60とMP5。
気休めだ。
重火器は陸自が担当する。
機動隊は肩に下げたカバンの探知機で警戒。
哨戒機も飛ぶ。
自衛隊と機動隊の事情に詳しい瀬瀬たつみが全指揮を取る。
心狂う満月。
成瀬は、夢を見ている。
二人と会う。
・・・・・
何を言っているのか、自分でも判らない。
必死に訴えている。
二人の輪郭がにじんでいる。
それに対し、話し続けている。
夢の中だと認識している。
二人を強く求める。
願う。
何かを叫ぶ。
形がはっきりとしてくる。
何かを話している。
聞き漏らすまいと耳を傾けるが音が無い。
焦る。
・・・・・
聞こえてきた。
しかし、気を抜くとまた、消えていきそう。
教授「・・とえば・・買い物をして、レジに行く。店員は商品を見て瞬時に適切な大きさのレジ袋
を選ぶ。人間は入れ方を決めないのにレジ袋の大きさを決めることが出来る。コンピューターは、
おそらく、入れ方を決めないと選べない。しかし、膨大な計算を瞬時に完了し、再現性が有る。さ
て、どちらが”より良い”かな?」
成瀬「TITANIOと私達のロボット?」
町田「人は間違える。自分と違う意見は大切だ。支離滅裂でなければ、それが別の道だ。」
成瀬「私と古淵?」
町田「でもね、いつかはどちらかに決めて進まなければいけない。」
教授「神なら両方同時に進めるが、私達は人間だ。自分の意思で行く道を選ぶと言えば聞こえが良
いが、まぁ、止まれないし、二兎も追えないのだよ。」
成瀬「・・・・」
町田「心配するな。」
成瀬「ねぇ、あなた達なんでしょう?」
町田「・・・・」
成瀬「夢から醒めたくない。」
町田「がんばれ。」
成瀬「もう、いや・・。」
町田「がんばれ。」
成瀬「あなた達といたい・・。」
町田の肩を叩く教授。
ため息を付く町田。
町田「では、君も許されるのだ。待っているよ。」
成瀬は肩を奮わせ、泣き、何度も肯いた。
本物か、心が作った幻か。
二人が呼んでいる。
うれしい。
うれしい。
うれしい。
【ヨリ】
夜遅く、瀬瀬夫妻の部屋を訪ねるヨリ。
ヨリ「あの・・明後日は私がお守りします。」
やすひろ「顔、近いよ・・。」
ヨリの浮ついた表情に母の顔色が変わる。
まるで遠足気分。
たんこ「全く判っていないようね。」
怒っている。
やすひろ「ほら、まだ子供なんだし・・はは。」
たつみ「悪魔はミスを見逃さない。」
母の手を握る父。
やすひろ「判ってる。」
まだ怒っている。
顔を上げられないヨリ。
困る父。
やすひろ「ヨリちゃん。タクシー呼んであげるから帰りな。ね?」
ヨリ・たつみ「え?」
驚いた。
何か言おうとする母を制するように下手糞な説明を始める。
やすひろ「僕も上手い例えを思いつけないけど、今までみたいにドンパチだけやっていればいいっ
てヤツじゃないんだ・・多分ね。極秘だけど、その結果は内外から注目される。厳しい目でね。ち
ょっとした気の緩みが大惨事に発展する可能性がある・・のかも。一人のミスが全員を、ひょっと
したら一般市民をも危険にさらす・・とかね。霹蔵さんが君を帰そうとした理由はそれなのかな?」
その間中、母が脇腹を肘でつつく。
たつみ「・・・・」
やすひろ「ここに集まったメンバーは皆、エリート中のエリート。思想、責任感、技術、実績、全
てが一流。ヨリちゃん、彼らと同じに出来る?」
少女は首を横に振る。
父に冷たいことを言われて涙目。
母は睨んでいる。
やすひろ「さあ、帰る用意をしようか?でも、これに懲りちゃダメだよ。」
優しい声。
大好き。
ヨリ「あたし、やります。」
ほっとする母。
その様子を見て”本当にヨリちゃんとたんこちゃんを大事にしているんだな”と思い、声を殺して
笑う父。
母はキリっとした表情に戻り言う。
たつみ「時間を作って必要なことを教えるわ。」
ヨリ「・・判りました。」
その目、その声に手応えを感じ、握手。
しかし、エネルギーの源は下心。
【シノブ、たんこ】
駐屯地、テント内。
C-Xの兵装で打ち合わせ。
シノブ「植木家やってるロボを一掃したいんだけどさ。」
八華田「はい。対戦車(の装備)ですと・・デスグリーナーかバンブルビートルがございます・・
開発コードですが。」
作りかけのカタログを見せる。
八華田「ええと、実際の製品はこちらとこちらになります。」
シノブ「誘導ミサイル?撃ち落とされると思うぜぇ~。ナパームとか、クラスター爆弾が良いよ。」
八華田「航空自衛隊様でご用意いただくか、有償でしたら・・。」
帝国中央重機がC-X2機を急遽貸し出すときの提案があった。
開発中の兵装を使うなら無償で提供する。
霹蔵からは”できるだけ金は使うな”と言われている。
シノブ「ぐうっ。っつか、ちゃんと動くの?コレ。なぁ?」
八華田「恐れながら無償、無保証でございます。私どもの試験結果はお渡しできますが。」
シノブ「例によって、良いデータだけな。」
と、携帯にメール。
シノブ「瀬瀬先輩から?」
添付は動画ファイル。
再生すると画面に20文字ほどが表示される。
文字はころころと変わる。
どうやら赤い文字を読みつなげると言葉になるようだ。
テント内で作業中の隊員に命令。
シノブ「おい、おめーさ、たんこちゃん呼んできてくんね?」
使いを受けた隊員。
たんこ発見。
隊員「姉(あね)さ~ん。」
たんこ「!!!!」
駐屯地で彼女はインラインスケートを愛用していた。
ROLLERBLADE MARATHON CARBON W。
シノブからのプレゼントで唯一使用しているものでもある。
で・・、
ズアアアッ!!
歩いてくる隊員に突進。
隊員「ひいいっっ!!」
その体を駆け上がり、空中。
パタ・・パタ、パタ。
服がはためく。
何という高さ。
見ている者からどよめき。
隊員「おお、姉さぁ~ん。」
たんこ「うがあっ!!二度目は死!!必殺!!騎手的脚!!」
上体を起こす。
右足と右腕を延ばす。
左足をたたみ、左腕は脇に。
迫る恐怖に叫ぶ。
隊員「ぎゃああああっっ!!」
着信音。
国家。
たんこ「はっ!!あの御方!!」
空中で即座に向きを変える。
当てるつもりは無かったが、隊員のベルトを引き裂きつつ着地。
重力に従うズボンとパンツ。
着地したたんこは勢い余って横にすっとぶ。
転倒を避けるためジャンプ。
側転しながら携帯電話を取り出す。
たんこ「はい、貴方の僕、た・ん・ちゃんです。」
着地。
ズガガガガッ!!
腰を落とし、アスファルトを滑走。
たんこ「ええ、何時でも、何でも、ごめいれいください。」
勢いは止まらず惰性で進む。
その先にテーブル、
隊員が3人休憩している。
一人が椅子を空ける。
お尻がすっぽり収まる。
たんこ「とととっ・・」
椅子が倒れそうになる。
隊員「ああ、姉さんっ!!」
支える。
裏拳が飛んでくる。
隊員「そ、そんな、支えたのに。ひでぇ。」
たんこ「変な呼び方デフォにしないでっ!!」
脚を組む。
偉そう。
瀬瀬たつみの声を聞いているときだけ可愛い。
たんこ「らじゃです。メール拝見します。」
電話を切り、メールチェック。
赤い文字を追って読む動画。
ギラリと目が光る。
猛然と走り出す。
目の前に人。
蹴りどかして直進。
目の前にジープ。
ジャンプして直進。
目の前にヘリ。
ジャンプして、側面に貼り付く。
うがうがとかチキショーとか言いながらよじ登り直進。
目の前にトレーラー。
ジャンプ。
どう考えたら、飛び越えられると思うのか?
高さが全然足りない。
コンテナを蹴る形になる。
ゴウン!!
運転手「っらあ!?なんだぁっ!!」
揺らせただけで、人として企画外。
たんこ「ぐ・・”下をくぐる”が正解だったか。」
脳天に付きぬける衝撃。
落ちる。
運転手「姉さん大丈夫ですか!!どこに行くんですか!!」
たんこ「次の任務が・・あねさんいうな・・」
隊員「送りますよ。水臭いですよ姉さん。」
たんこ「・・てめぇらぁ。集合場所は秘密だから一人で来いって。拉致られてきたからイチサン(C
B1300)無いし。」
シノブ「話しは先輩から聞いたよ。それにしても目的地まで160km。インラインスケートで走
りきるつもりかい?流石、俺のお嫁さんだね。」
朦朧として横たわる彼女を起こす。
キャメルバッグを背負わせる。
シノブ「食料も入れるね。でも・・一番詰まっているのは俺の愛かな?」
彼女は立ちあがり、その場にいた全員を蹴り倒した。
シノブのみ2発。
目的地へ向かう。
一般車両に混じり、高速道路を爆走する。
群がるパトカーを蹴散らして進む。
隊員「あーぁ、行っちゃった。寂しくなりますね。」
肩を叩くシノブ。
シノブ「明日は決戦だ。やることやったら、早く休め。期待してるぜっ。」
隊員A「なんか、姉さん来てからさ。隊長、良くなったよね?」
隊員B「ちょっぴり背中でかくなったよ。」
その様子を黙って見ている世芭。
優しき微笑み。
【たろう、ハナ】
朝。
成瀬の部屋。
朝食を運んできたのは、瀬瀬やすひろ。
やすひろ「食べたいものがあったらさ、言ってくれていいんだよ。」
成瀬「朝食は瀬瀬たつみと一緒かと思っていたわ。」
母とヨリはヨリの部屋で朝食。
ヨリに色々と伝授中。
やすひろ「・・話があるなら呼んで来るよ。」
成瀬「いえ・・。」
何かを言い出せないでいる。
つまり、彼女が父と続けてきたやり取りについてだ。
やすひろ「ウチのヤツは気付いているよ、きっとね。」
成瀬「そう、バレちゃったの・・。もう、お終いかしら。」
トーストとスープ、サラダを並べる。
やすひろ「コーヒーはお砂糖とか入れたほうが良い?」
はぐらかして、答えない父。
成瀬「・・・」
女は不満の顔。
やすひろ「見くびらないで欲しいよねぇ。」
成瀬「!?」
いつも微笑みを顔に貼り付け、言葉の柔らかい男。
心の底は知れない。
やすひろ「僕は瀬瀬たつみを信じ、彼女は僕を信じている。何時いかなる時も、どんな場合でも。
だからさ、あの続は今話してくれても良いよ。」
女は難しい顔。
言葉を捜しているようだ。
やすひろ「まぁ・・食べてからにしようか。おいしいよ。」
トーストを口にしようとして、皿に戻す。
成瀬「食べたくないわ。」
強いストレス。
やすひろ「じゃあ、お腹がすくまで、ちょっと話をしようか。」
成瀬「・・・」
自分用に持ってきたCal-Kingを一口飲んで会話をつなげる。
やすひろ「そーだなぁ、えーとねー、」
成瀬「わかったわ。無理にでも食べるわ。」
・・・・・
やすひろ「TITANIO。必要だと思うかい?」
成瀬「必要よ。昨日は何も言わなかったけど、(あの子たちが帰るのを)引き止めるべきだったわ。」
やすひろ「たろうの脳にMAG-HFのエミュレーターと、TITANIOシステムへのコマンド
変換機を作ったらどうかなぁ?とか思ってるんだけど。」
成瀬「人が動かしてこそのTITANIOよ。あの古い機体が何故、最新のシステムを圧倒したの
か。」
やすひろ「ですよねぇ~。はぁ、僕もヤキが回ったな。」
成瀬「たろう君とハナちゃんを接続するシステム。やっつけで、それしか選択肢が無かったのかも
しれない。でも、結局、最良だったのよ。」
やすひろ「困ったなぁ。MAG-HFのハードはすぐにコピれそうに無いし・・いくらマグネシウ
ム製だからって、あの機体は軽すぎる。ジョイント部の油膜の保持製、極圧の低さ・・マグネシウ
ムのプレートがどうなっているのかは予測できるんだけど、でもさ、どうやって作っているのかは
見当も付かないんだよねぇ。」
答えを求めるように顔を近付ける。
どうにも憎めない笑顔。
おじさんのくせに。
トーストを一切れ取り、父の口に突っ込む。
フガフガと顔を引っ込める。
成瀬「考えるのは後よ、二人を呼んで。いなければ、どうにも出来ないんだから。」
やすひろ「そうだね。」
・・・・・
数時間後。
トレーラーで運ばれてくるTITANIO。
2台目と同じSL仕様で組まれた。
たろうとハナがパトカーで到着。
そして、もう一人。
やすひろ「ああ、東先生。忙しいところスイマセン。」
町田との戦闘の後、たろうの脳波を分析してくれた先生。
東「ハナちゃんにたろう君の好みが現れているんだって?」
やすひろ「ええ・・。まぁ、直接脳を接続するようなことはしているんだけど・・具体的な原因や
影響が、全く判らないんだよねぇ。僕は、他に仕事があるし。」
東「ふーん、それが判ればいいの?」
やすひろ「えーと、できれば、打開策も。TITANIO動かして欲しいな。」
東「ホラ来た、全く。」
【たつみ、成瀬】
成瀬「皆の命は助けてくれるのね?」
たつみ「保証は出来ないわ。」
成瀬「・・・」
たつみ「全員自首させなさいよ。抵抗しなければ死ぬことは無いのよ。お互いにね。」
成瀬「それが出来れば・・」
たつみ「じゃあ、判るわね。」
成瀬「町田は生きながら、身を焼かれて死んだわ。」
たつみ「だから、何?」
母の頬を平手打ち。
銃を構えるヨリ。
止める父。
ノートPCを振り上げ、幾度も母に叩き付ける。
泣き崩れる。
たつみ「職務から外れて、言わせてもらうわ。その程度の覚悟だったの!?」
憎き相手。
でも、この女となら、目的を達成できる。
理性はそう、確信した。
判る。
しかし、しかし、今は感情を抑えられない。
二人は矢部の暗殺計画を知らない。
4人の技術者と蛹山が狙われているが、護衛は無い。
彼女は一度死んだ。
病院に搬送中、奇跡的に息を吹き返した。
容態は徐々に悪化。
心臓が止まり絶望視されたが、再び生き返った。
先日2度目の手術を終えたばかり。
絶対安静。
【矢部】
FOS日本チーム。
第2章で住民を追い出した土地の消防署が今の拠点。
ガレージ。
ヌードカーボンの地肌。
アルミハニカムをカーボンプレートでサンドイッチにした。
平面を組み合わせ、H”の効いたデザイン。
部分的にクロモリやポリカーボネートを用いている。
色々と実験的な試みや迷走の後が見える。
TITANIOの次に造られた機体。
性能は高くない。
CARBON-LOGIC。
猛然と、そのプログラムと動作パターンを作成する矢部。
ふと、黒い巨体を見上げる。
矢部「僕にとって、先生の形見・・」
細く長い指がキーの上を滑る。
モニタ。
彼がプログラムに用いているのは高級言語ではない。
アセンブラですらない。
メモリエディタによる16進ダンプ打ち込み。
それを後ろから見ているメンバーが一人・・。
レジナルド「おぉ、イェーブ(矢部)、私はなんと叫んで驚けば良いんだい。君のモニタにそれ(驚
きの言葉)を表示するという君の助けが必要だよ。」
肩をすくめる。
矢部「これが一番パフォーマンスが出せますからね。」
レジナルド「それと同じ事が出来る人間を私は知らないよ、君の外にね。」
首を大げさに振りながら、指で痩せた青年をチョーンと指し示す。
矢部「U2は完成しましたか?」
レジナルド「ああ。4台のU2が完成し、テストを合格したよ。ハハハ。試験の項目を疑ったよ、
君のプログラムが障害をまったく出さないから。」
まるで目の前にある巨大なボールを、下から何度もなで上げるようなジェスチャー。
矢部「それは良かった。」
振りかえると4台のU2がハンガーに固定されている。
何時運ばれてきたのか。
夢中で気が付かなかった。
レジナルド「・・私は悲しい、U2の様な戦闘のためだけのロボットを造ったなんて。なぁ、イェ
ーブ、君もそう思うだろ?いや、判ってる、判ってるさ。そうとも、判っている。」
顔を覆う。
矢部「・・」
こいつは手を動かさずに話せないのかと思う。
手話なのか?
レジナルド「ところで。何故、君はU2を使わないんだい?CARBON-LOGICは・・その・・
十分な能力を持っているわけではない、残念なことにね。」
矢部「僕のプログラムがあればMAG-HFには勝てるよ。」
レジナルド「そうだな。うむ、MAG-HFにそうするのはそうだね。君は同じようにTITAN
IOにそうできるかな?」
腕を組み、右の手のひらを宙に泳がせる。
最後、やや首をかしげるように。
矢部「ハードウェアの性能は改造された今のTITANIOとほぼ同じでしょう。もし、両者が戦
うことがあれば、それはお互いの思想を懸けたものになりますね。正義の計画と信念の無い行き当
たりばったり。僕は勝たなければならない。」
ガリガリに痩せた胸に拳を置きウィンクして言う。
レジナルド「その通り。君ならできる。さぁ、お互いに寝よう。なぜなら私達は明日は早く起きる
必要があるし、君の書いたプログラムは完璧だからね。」
レジナルドが去った後、古淵がフォークリフトで何かを運んでくる。
矢部「それ、本当に使うんですか。」
U2の20mmガトリングガンに使うマガジン。
古淵「必要に応じてだ。」
矢部「今後はU2を作るの?」
古淵「ああ、一組の金型しか無いが、必要な台数は用意できると思う。君には感謝している。成瀬
の7000が選ばれたからU2は色々と未完成だった。それより、黒いヤツは土木作業にまわして、
せめて7000を使え。」
矢部「僕は、カーボン以外使わない。」
古淵「町田が関わったハードだからか?君は7000のソフト開発も拒絶していたな。」
矢部「盗聴サーバーで忙しかったからだよ。」
古淵「そうだったかもな。」
去ろうとする古淵。
矢部「あの女側のメンバーはどうするんですか?」
古淵「いまだ数人が成瀬のやり方を支持しているが、全員が問題なわけではない。成瀬にメールで
情報を送っているのは一人。彼だけを処分する。」
矢部「彼も泳がされているのを判っていて、命を駆けてメールしているんだね。」
古淵「優秀な男だからな、すぐには拘束されないと判っているのさ。もう行くぞ。お休み。」
運ばれてきたマガジンを見る矢部。
再び呼び止める。
矢部「ねえ、科学兵器を使って、ボク達に大義は有るのかな?」
古淵「大義にはいろいろな意味、場合がある。私達の行動はそのどれかにきっと当てはまるだろう。
従って、答えは”有る”だ。」
振り向きもせず去った。
矢部「くっ・・くくく・・あははは!・・・町田・・先生・・」
すすり泣く声。
【父】
FOS内の成瀬の支持者からメール。
成瀬「・・、」
ため息。
やすひろ「ちょっぴり、悪いニュース・・かな?」
成瀬「とうとう・・人殺し専用のロボットを造ってしまった。」
彼は彼女達の本当の理想を知っている。
たつみ「で?」
成瀬「(情報をくれた仲間は)目を付けられている様で、詳しくはわからないわ。解っているのは
固定武装を持つハードが数台、矢部君が全てのソフトを担当した・・それだけよ。」
やすひろ「矢部君?」
FOSの判明しているメンバーリストを見る。
大学院生。
成瀬「新型は彼無くして造り得なかったでしょうね。」
たつみ「ハード持つの細かい問題も、その子のプログラムが吸収したのね。」
成瀬「彼はプログラムの天才よ。間違いなく日本一。2位以下を大きく突き放してね。」
やすひろの表情が変わる。
やや張りつめる空気。
眼鏡のレンズに光が強く映りこむ。
フレームに沿って光の粒が走り、角で十字に光る。
それを見てヨリはきゅん死。
床に横たわる。
人差し指を左右に振る男。
やすひろ「ちっ、ちっ。そいつはきっと・・日本で2番目だと思うよ。」
成瀬「じゃあ、日本一は誰だと言うの?」
親指を立てる。
ゆっくり。
自らを指し示す。
【世芭】
たんこ「あんた、また、こっそり跡をつけてきたのね。」
嬉しいくせに。
高速道路の路肩で休憩中、見覚えのあるロールスが近付いてくるのを見て、緩む口元を必死にこら
えていた。
世芭「今日は、お暇を頂戴しに参りました。」
ぎくり。
たんこ「(ロボットと)戦いに行く気ね。」
世芭「はい。」
たんこ「そうだ、私達と一緒に戦いなさいよ。敵の組織を丸ごと壊滅させるのよっ。」
首を振る男。
世芭「私は、ロボット1台と手あわせできれば十分なのです。」
指を一本立てる。
たんこ「ED河のこと、気にしているの?」
世芭「287年。我が五衆術の歴史は浅うございます。が、それを立派に背負いたい。我等が道に
置いてしまった岩を排除いたします。」
少女は必死で抱きつく。
男を止めるため、しがみ付く。
世芭「岩を置いたのは私、ならば、どかすのも私。」
誰よりも信じ、頼りにしていた。
体高4m、鋼鉄のロボットに素手。
死は見えている。
たんこ「一人にしないで・・」
”お兄ちゃん”声には出さなかったが、はっきりと聞こえた。
世芭「私が知りたかったことが、今、判った。」
たんこ「え?」
彼女の面倒を見てくれる人は居る。
自分が彼女にとって兄なら代わりはいる。
心配はいらない。
世芭「良い日だ。」
去った。
気が強い少女というと、犬の無駄吠えを連想する。
失礼ながら、まず、たかをくくってしまう。
その少女は強い体を与えられた肉食獣。
言動に関わらず、事実強い。
しかし今、か弱く泣き崩れ、無力。
泣き声を聞いた兄が、涙を拭きに戻ってきてくれますように。
そして、今まで通り優しい微笑みで、自分を守ってくれますように。
願うのみ。
FOSの拠点のひとつを突き止めた。
モデルガンを構え近付く。
警戒システムに感知される。
ロボットが一台、現れた。
難視運動を続けるdFORCE7000。
世芭「武器を用いるなら、好きにしてくれて結構。」
男の研ぎ澄まされた感覚の前で、それは小細工。
ハッキリと見えなくてもおおよその位置は判る。
目で追う。
出方を伺う世芭。
そして・・
ロボットが攻撃してきたのは判る。
しかし、避けない。
やや、上体を捻るのみ。
左胸の半分、腕ごと失った。
普通の人間なら即死。
キシリウム(自立システム)は彼を狙い続けていたが、オペレーターがマニュアルで、攻撃目標か
ら世芭を外した。
難視運動が止まる。
この瞬間を待っていた。
日々辛い修行に耐えてきた。
日々苦しみぬいた。
楽を知らぬ体と心。
誇張無く鋼の如し。
ロボットの腰のブラケットに飛び乗る。
世芭「この・・一手までっ!!!!」
それは、彼らしい、最後の一撃。
曲げず。
変化せず。
最短距離を真直ぐ。
右踵を打ちこむ。
衝撃は3tに及んだ。
吹飛ぶロボットの頭部。
断じてそれより後、世芭の膝から先が潰れる。
左足一本で敵の前に立つ。
獣のように本能に狂いたたず。
神のように絶対的に圧せず。
人として、礼節を持って、そこに立つ。
それが、彼の目指す人だった。
ロボットはカメラ、センサーを失い帰還不能。
自爆を選択。
見届けて男は倒れた。
絶命するまで、背は真直ぐ、微塵も振れることは無かった。
倒れるときすら前へ。
死に顔は静か。
初めて得た安らぎか。
自ら定めた人たる試験に合格した、達成感か。
【消えるFOS】
北米のdFORCE7000が消えた。
突然。
FOSのメンバーと共に。
原子力掘削機の行方も知れない。
オーストラリア。
砂漠。
日光浴に来た家族。
焼け溶けた、巨大なアルミの塊を発見。
ヨーロッパ。
常に監視し、ロボットの位置を把握していた。
全てフィンランドに向かっている。
東部、湖水地方。
森と湖。
カメラに写らない、わずかな隙。
レーダーから消えた。
水中に入れないはず。
どこへ・・
アジア。
国境を越えある国へ入る。
その国はロボットの侵入を否定
世界中から、その姿を消すFOS。
メンバーは小型のニュートリノ通信機を分解。
トランクに楽々納まる。
システムを暗号化し携帯用ハードディスクにコピー。
トランク一つ持って、消えた。
消えた。
日本以外では。
古淵「多少早いが、予定通りだ。日本チームはすべきことがある。町田がだらしなかったせいでな。」
【10月22日】
〔AM6:00〕
7両編成の特別な新幹線。
要撃目的に製作された。
時速275kmで走る。
ミッドナイトブルーのボディー。
1両目は通信・レーダー室。
2、3両目は隊員室。
作戦を前に休む。
プレッシャーと戦っている。
緊張で電車に酔うものが出た。
トイレに駆けこむ。
それを笑う者はいない。
4、5、6両目は貨物車。
封鎖及び制圧用の銃器対策警備車。
追跡用にNSXのパトカー、GSF1200P。
従って、高速隊も参加している。
たんこのイチサン。
MAG-HF。
TITANIO。
7両目は指令室。
窓から上空をちら見する父。
閉めきっているので、真上は良く見えないが、何がいるのかは知っている。
やすひろ「日本てさ、自由の国だよねぇ。あのヘリ・・」
護衛はユーロコプター ティーガー。
たつみ「評価用に1機、極秘で日本に来ていたのよ。」
一番隅の席に座る成瀬。
テーブルの一点を見る。
やすひろ「大丈夫かい?」
成瀬「大丈夫よ。すべきことはやるわ。」
ヨリ「ううう、大人のオトコの余裕ある優しさ。」
成瀬はまた、うつむく。
考えていた。
昨晩見た夢。
教授「安全に対する意識は際限無く厳しくなるね。人の能力は自らの分全てを背負いきれるのかな。
成瀬君、生産物が投入資源以上であるシステムはあるのだろうか・・これを考えるのは無意味なこ
とかな。たまたま偶然、世界中の人が良き事しか行わなず、平等であり問題が起こりえなかったと
しよう。それでもルールは存在する。なぜだか判るかな?」
町田「バランスシートの事実。教授は決して仰れ無かったことがある。思い出す。3人で星空を見
上げた日。いつだったか・・流星を、三人で沢山数えたね。」
答を得れば自分は許される。
もう夢で二人には会えない。
答えを得る前に死んでも会えない。
そう感じた。
〔AM6:00〕
新幹線出発と同時刻。
河川敷きの駐屯地。
AH-1 2機が出撃。
〔AM6:12〕
東先生、瀬瀬やすひろに相談。
東「たろう君の脳に直接TITANIOを接続する方法はだめなのかい?」
やすひろ「やった・・けど、動きがね、ギクシャクしちゃうんだ。不思議だろ。」
東は顎をしきりに撫でる。
考えている。
東「・・そうかもな。脊髄反射・・いや、もっと多くの臓器が、その刹那、適切に判断をしている
のか?」
やすひろ「腕の操作を介すると動きが滑らかになり、結果、パフォーマンスが上がる。」
東「その能力に特に優れているのがハナちゃんかい?」
やすひろ「そうかもね。」
ぶつぶつと呟きながら室内を落ち着き無くうろつく東。
東「アセチルコリン、ドーパミン、グルカゴン・・」
やすひろ「・・たぶん永くは持たないよ、その方法はね。」
東「しかし、動く。事例も確証も無いが・・。俺の機材、病院から持ってこれるかな?」
〔AM6:19〕
高速道路の高架下。
新幹線が止まる。
誰かが飛び降りる。
ドウン!
7両目の屋根に衝撃。
ヨリ「お、たんこ到着?」
たつみ「出発。」
やすひろ「おい、たんちゃんまだ外だよ。」
たつみ「着地の音・・いい音だったわ。」
やすひろ「だから?」
たつみ「あれだけ鍛えているなら、大丈夫よ。」
たんこはてっきり中に入れてもらえるつもり。
下を覗くが迎えが出てこないので、飛び降りようとした。
そのとき。
たんこ「るがあっ!!」
動き出した。
スピードは順調に上がり時速275km。
とりあえず屋根にしがみつく。
たんこ「セバスチャン、あたしも生きて帰るから、あんたも戻ってくんのよ。」
〔AM6:30〕
母がたろうとハナに戦闘服を着せようとしている。
蛹山デザイン。
ついに完成した。
社会的な何かを捨てる必要が有るそれ。
たろうとハナの心は逃亡。
怯える。
やすひろ「ま、まった。」
父はその犯罪的な布切れに目を疑った。
人体を覆う?
いや、人体の持つ何かを強調するための色、紐使い、そして装飾。
それを服とするなら、作者は病気である。
母は着せる気満々。
やすひろ「やばいっ!!」
思わず、そう、思わず、
近くに有った、開発中の戦闘用高機能ウェアのサンプル品を着せた。
デモ用なので色は目立つ赤。
軽く、温度湿度調節機能を持ち、裂けけにくく多少の防弾性も有する。
大きな4つのボタン。
それはフィジカルデータの収集装置。
黒いブーツ。
地雷の衝撃と熱から脚を守る。
やすひろ「さ、さー、完了。二人ともあっちいこーねー。」
たつみ「待ちなさい。」
ぎくぅう。
母が取りだしたのは軽量テント用の布。
切る。
二人の首に巻く。
やけに長い黄色いマフラー。
〔AM7:00〕
高速道路の駐屯地。
E-2C 1機、F-2 2機、離陸。
シノブ「じゃあな、先に行ってるぜ。」
彼はE-2Cに搭乗。
〔AM7:04〕
隠れ家の消防署。
U2 2機、移動開始。
蛹山のいる病院に向かう。
CARBON-LOGIC、U2 2機、移動開始。
ミッドナイトブルーの新幹線に向かう。
〔AM7:05〕
新幹線
U2の移動を補足。
二手に分かれたのは予想外。
たつみ「しまった。」
やすひろ「彼らの狙いは他にも有ったわけだ。」
成瀬「MAG-HFを出しましょう。」
やすひろ「僕らに向かってくる3機はどうするんだい?」
父以外の全員、たろうとハナを見る。
やすひろ「おい、おい。」
たつみ「TITANIOの無線は高出力だけど、せいぜい5kmが限界。MAG-HFは最低20
0km届くわ。そうでしょ?」
成瀬「ええ。」
〔AM7:09〕
新幹線、時速60kmに減速。
MAG-HF、2機のU2を追う。
手にBarrett M82。
新幹線、時速275kmまで加速。
指令室内に設置したサーバーラックを撫でる父。
FOSの自立システム再構築システム。
高速なハードにセットアップ。
それを7台。
DBMSを2台。
共有のストレージは、DDR3を200GB敷き詰めたボード4枚をストライピング。
電源を落とせないので大容量のUPS。
空き時間を利用し、4TBのRAIDへバックアップ。
ネットワークは開発中のサンプルNICを拝借。
ラック内のサーバー同士用。
NICから太いファイバケーブルが直接伸びる。
専用のスイッチに接続。
やすひろ「日本一なんてほざいちゃったしさ、頼むよぉ。」
たろう「父さん。たしか・・プログラム、ほとんど書いてないよね。」
ぎくり。
やすひろ「し、真に悟りを得た、究極のプログラマはコードを書かないものなのさ。」
都合よく光を放つ眼鏡。
たろう「へぇ。」
息子の視線が痛い。
〔AM7:14〕
新幹線停止。
U2とカーボンが迫っている。
たつみ「線路を切断されている可能性が有るわ。」
隠れ家まで50km。
コンテナが開く。
車両を降ろす。
東が手配した機材が到着。
F15が投下。
パラシュートが開く。
ハナが操作しTITANIOで回収。
たつみが外に出る。
たんこ「とう!!」
新幹線の屋根から降って来る。
たんこ「必殺!故愛有我!!」
首に抱き付いて、なんか泣いている。
隠れ家から大型バスとトレーラーが出ていったと情報が入る。
その追跡隊を編成。
NSXのパトカー。
ドライバーは高速隊。
陸自の隊員とSATから1名ずつ搭乗。
GSF1200P。
イチサン。
たんこ「あうー、せっかく会えたのにぃ。」
たつみ「目的は逮捕。戦いは避けて。合図するまで待機。」
〔AM7:16〕
MAG-HFがU2に接触。
モニタを見るやすひろ。
やすひろ「お、始まったな。」
サーバーはフル稼動。
成瀬「1秒間に自立行動システムを千回以上リビルド可能。ひょっとして、リアルタイムでロボッ
トの組込みシステムを更新する気?」
やすひろ「それは・・非現実的方法だね。」
成瀬「じゃあ、なんのために・・」
やすひろ「最適解と同じ結果を得られる、既存システムのコマンドの組み合わせを探して、送るの
さ。完璧な回避行動を取るために、一時的に空飛ぶ蚊を再優先の攻撃目標に設定したりとかね。」
成瀬「よく思い付くわね。」
U2の1台がMAG-HFを交わし、逃げる。
行き先は蛹山のいる病院。
成瀬「どうするの。」
やすひろ「1台ずつ倒すよ。それにしても1対1で勝てるつもりなのかな。ボクのシステムに。」
成瀬「ほぼ全て私達のシステムでしょ。貴方が作ったのは、多分、つなぎのちっさなプロセスだけ
よね?」
〔AM7:19〕
追跡隊は待機中。
コンテナ内に透明なテント(緊急手術用ビニール・ケース)を組む。
空気で膨らませる方式。
中に組立式の手術台。
たろうがTITANIOのコントローラーを握って寝ている。
医師、東。
黒いコート姿。
コートの裏には無数のメスと鉗子。
白衣に着替え、ビニール・ケースに入る。
影が写り込んで、顔の向かって右半分が黒く見えた。
助手はかなり小柄なおかっぱの女性。
東「さて、ぼつぼつはじめるか。」
たろう「あれ?あの、ひょっとして・・」
東「ナムサン!!」
ハナが心配そうに見ている。
気持ちはもうひとつ。
自分の手にコントローラーが無い。
寂しい。
CARBON-LOGIC等3機は10kmより近付いてこない。
FOSのメンバーを逃がすため、時間稼ぎをしたいようだ。
ティーガーは一時着陸。
給油する。
成瀬「こちらの動き次第といったところね。」
たつみ「TITANIOの準備が出来次第、追跡隊突撃。ED河に連絡して援軍を。」
たんこがイチサンのエンジンを始動する。
爆音に多くの者が驚く。
医師東は眉一つ動かさず作業に集中。
〔AM7:20〕
高速道路上の駐屯地。
C-X 2機、爆装したF15J
2機、出撃。
ロボットが作業をしている森林。
目標から距離をおき、E-2Cが旋回。
dFORCE7000は9機が確認された。
増えている。
E-2Cは合流地点へ移動。
AH-1が待機している。
シノブ「予定通りだな。」
と、敵ロボットが移動開始。
シノブ「・・・」
レーダーが捕らえた9機を見つめる。
どうする?
他国のFOSは姿を消した。
追うべきか。
それとも罠か?
指示を待つ隊員。
シノブ「・・・」
MAG-HFがU2と交戦中と情報が入る。
援軍要請。
二手・・奴らには、やることが有る?
シノブ「ロボットが停止するまで待機。C-Xとの合流地点は変更無し。」
隊員「突然消えるかも。」
シノブ「バ~カかぁ?駐屯地に連絡して、待機中のヘリ全機、先輩の所へまわせ。」
〔AM7:22〕
MAG-HFはU2の攻撃を避けるだけで精一杯。
Barrett M82は弾き飛ばされた。
薄い装甲は凹み、傷だらけ。
モニタを見る父と成瀬。
開いているウィンドウの一つ。
ウィンドウタイトルは”Diff・・11%”。
表示は左右二つに分かれている。
文章が延々とスクロール。
所々赤や青で表示。
別なウィンドウ。
”共有ディスク使用率 40%”と表示。
やすひろ「ううう、容量の見積もりミスったか?」
タイトルが”Diff・・5%”になった。
成瀬「95%合致したわ。」
父がプログラムを起動する、恐る恐る。
共有ディスクの使用率が一気に90%を超えた。
成瀬「・・・」
冷や汗。
使用率は96~98%で安定。
やすひろ「せぇふ。」
速度も落ちていなさそう。
成瀬「動きそうね。さて・・勝率95%のシナリオ。彼(矢部)は超えてくるかしら?」
〔AM7:23〕
住宅街。
並ぶ戸建住宅。
中層マンション。
ワンルーム、アパート。
コンビニ、100円ショップ。
駅前に映画館をもつ中規模のショッピングモール。
住民は避難。
非常線は警察が管理。
情報は瀬瀬やすひろが提供。
高架を電車が走っている。
止まるか前進するかしか出来ない。
警察の指示で、比較的大きい2つ先の駅で乗客を保護する。
乗客が見守る先。
ロボット同士の戦い。
MAG―HFと50mの距離を保つU2。
20mmガトリング砲で狙う。
成瀬「さっき追加していた行動パターンは何?」
やすひろ「ああ、せっかくのマグネシューム合金だからさ。素材を生かそうかと思ってね。」
成瀬「板前?」
やすひろ「それにしても、驚いたよ。ロボットの行動をここまで人語に近い命令で定義できるなん
てさ。」
木造アパートの2階、中央の部屋。
玄関を蹴破り入るMAG―HF。
やすひろ「うわ。」
カメラが映し出したもの。
無数の美少女フィギュア。
数えきれない数のエロゲ。
壁と天井一面の痛いポスター。
痛パソ。
アク●スの液晶大画面に映し出される痛い映像。
床を殴り壊す。
その床も、痛かった。
パネル式の絨毯をこつこつと染め抜き、敷き詰めた力作。
寝具も文房具も隙無く全てが痛い。
逆に、ここまで可能なのか?と思う。
やすひろ「能力と情熱を前向きに使えていない種類の部屋・・」
ガトリング砲の音。
1階へ降りるMAG―HF。
粉微塵になるフィギュア。
ダム!!
無反動砲の音。
アク●スを直撃した。
部屋は跡形も無い。
その音にまぎれてU2と反対側の道に抜け出るMAG―HF。
音を立てぬよう、ゆっくりと移動。
新幹線から逃走中のトレーラーとバス。
そのバス内。
蛹山等殺害担当のメンバー。
MAG-HFと戦闘中のU2のモニタを見ている。
敵ロボットをロストしたが、意に介さない。
「そっちの装甲の薄さは分かってる。」
U2の自立システムに任せる。
アパートの1階、壁を一気に突き破り、反対側に出るU2。
そこに立つMAG―HF。
待ち伏せ。
左手にフライパンを持っている。
矢部の作成したシステムは即座に反応。
待ち伏せした相手に先制攻撃のパンチ。
U2の拳を左にかわすMAG―HF。
やや避けきれず、かする。
マグネシューム合金の削り屑。
飛び散り、U2の頭部センサーの前に浮かぶ。
すぐ下にMAG―HFの右手。
U2のシステムはそれを無視。
なぜなら、殴っても、壊れるのは装甲の薄い・・
いや、指を弾いた。
火花。
燃え上がる削り屑。
カメラのフラッシュ。
閃光!
U2の光学センサが無効になるその一瞬。
MAG―HFはU2の頭部に乗った。
オイルを含めわずか682kgの超軽量ボディ。
U2は腕の無反動砲を向ける。
両腕、計4門。
ゴズッ・・
押し潰れるU2の頭部。
放たれる無反動砲。
を、ジャンプしながらフライパンで撃ち落とす。
スパコ~ン!
ギャグ漫画か。
U2の右肩付近で爆発。
右腕が落ちた。
もうもうと立ちこめる粉塵。
ひゅう・・
風、そして、粉塵の切れ目。
そこになだれこむ日の光。
優しき白色の肌。
光を反射し、眩しく揺らめく。
まるで、マグネシュームが燃えているよう。
手にBarrett M82。
一発目でニュートリノ通信機、
二発目でバックパックから電力を得るパワーチューブ、
それぞれ撃ちぬいた。
倒れるU2。
ターゲットを失い、だらりと銃を下げるMAG-HF。
成瀬「残り一台ね。追うわよ。」
やすひろ「・・あ、あれぇ?」
成瀬「なに?」
やすひろ「いや・・」
成瀬「はっきり!言いなさい!」
こ、怖えぇ。
やすひろ「いや、あの陽炎なにかなーって・・」
モニターの一箇所を指でいじいじする。
なんか可愛い・・このオヤジは・・
U2に近付く。
腰の後ろの取りつけられた、ガトリング砲のマガジン。
その一つから何か液体が出ている。
少量、いや、さっきまでもっと多くあったのか?
盛んに蒸発している。
あっという間に消えてなくなった。
〔AM7:25〕
”ナムサン”と言うほどのことは無い。
たろうの血液の入れ替えが完了した。
排出された血液は200ccパックに6つ。
それにびびるたろう。
だが、やけに意識がはっきりしている。
東「君の脳にはプログラムを配置することが出来、元々君は超高速でロボットの動作をスケジュー
ル出切る。TITANIOというハードの性質上、間接的なハンドリングを行いたい。しかもハナ
ちゃん抜きでだ。そこで、私が開発した超高性能血液”RED”を1.5リッター注入し、代わり
に君の血を1.2リッター抜いた。」
たろう「なんで入れたほうが多いの?」
少年の質問に黒い医師は、渋く、こう、答えた。
東「はい、あーんして。」
口を空けると、奥歯に何かを付けられた。
東「今噛むなよ。」
助手の女性が点滴の用意をする。
奥歯のカプセルを舌で触る。
たろう「なんですか?これ。」
東「興奮剤の一種さ。危険なほど強烈なね。」
たろう「危険・・」
東「重症な副作用はめったに無いはずだ。」
たろう「重症って限らない場合は?」
東「ドーピングはね、凡人に行っても激的な効果は無い。幸い君は自転車乗りで、有る程度強力な
心肺機能を持っている。が、今回必要なパフォーマンスはやけに高い位置に有る。従って点滴でサ
ポートする。敵ロボットとの戦闘になったら、ある言葉を叫び、口に入れたカプセルを噛み割れ。」
たろう「ある言葉って何?」
東「それは・・」
〔AM7:26〕
やすひろ「ロボットの右肩に火が有ったのにさ、あの液体は燃えなかったよね。」
成瀬「少なくとも、”爆発的”、”激しく”、はね。」
たつみを呼ぶ。
録画画像を見せる。
青ざめる。
たつみ「科学兵器よ。」
即座に現地の警察に連絡する父。
たつみ「対策本部へも連絡して。」
電話で話しながら肯く父。
成瀬「どうするの。」
うつむき、手は奮えている。
仲間が戦闘用ロボットを作り、科学兵器まで作ったショック。
たつみ「MAG―HFはもう一台の新型を追って。戦闘になったら、可能な限り、住民避難させる
時間を作って。」
その言葉を聞き、電話をしながらキーボードを操作する父。
U2の腰のブラケットを撃ち、20mmガトリング砲を切り離す。
駐車場のチェーンを引きちぎる。
Barrett M82とガトリング砲をまとめて背負う。
走る。
時計を見る母。
たつみ「応援のヘリが到着するのは7時35分から40分。」
成瀬「応援を待つの?」
たつみ「隊員を無駄死にさせるわけには行かない。でも・・」
決定の言葉が続かない。
たつみの手を握るやすひろ。
何も言わず笑顔で見つめる。
成瀬の目が狂気に曇る。
この女は自分から奪ったものを、持っている。
〔AM7:29〕
対策本部。
室囲警視正。
眼球廻りの微妙な緊張。
キュッ、ピクッと動く頬。
瀬瀬やすひろからの報告を聞く。
室囲「確証は無いのだな。だが万が一のことがある、十分注意してくれ。」
受話器を置く。
回線の向こう。
やすひろ「”万が一”だってさ!」
珍しく声を荒げ、携帯電話を床にたたきつける。
室囲「科学兵器、か。」
微妙に動く口元。
室囲「本庁に連絡する。第八機動隊を出動させ、新型ロボットの残骸を調査だ。」
後方の席から声。
霹蔵「瀬瀬君が化学兵器だと言ったら、化学兵器ですよ。」
話は室囲の応答で概ね推察できた。
細かく確認をしていたからだ。
室囲「いらしていたんですか。」
霹蔵「事実が判明したころには、数千人が死んでいますよ。」
間。
微妙に動く警視正の眉間の皺。
室囲「証拠無い限り力を行使しない。それが警察だ。」
ゆっくりと室囲の席に歩み寄る霹蔵。
霹蔵「確かに、そう有るべきです。」
室囲「自衛隊も専守防衛が基本理念。それを違えて力を行使すべきではない。」
ニヤリと笑う霹蔵。
室囲の目の廻りと口元が微妙に動く。
霹蔵「フフ・・、警視正。私はね、証拠は十分に有ると言っているのです。
〔AM7:30〕
5分後、C-Xと合流予定。
無人の町。
温泉宿が並ぶ。
9台のロボットはそこで停止。
シノブ「気に食わないな。何故、その町で止まった?何故、他じゃダメだった?」
瀬瀬たつみに連絡。
地名を伝える。
シノブ「なんだか知らねーが、俺は煮ても焼いても食えねーぞ。」
同時刻。
ミッドナイトブルーの新幹線。
TITANIOとティーガーが先頭。
続いて銃器対策警備車3台。
3列目に追跡隊。
時速50kmで前進。
たんこ「喉が渇くわね。」
緊急手術用ビニール・ケースの傍らにヨリ。
ハナは7号車。
たろうを見ている。
寂しくて、涙がにじむ。
目標まで1km。
停止。
ロボット3台を確認。
いまだ動かず。
たつみ「総員、突撃。」
新幹線他時速50kmで進行。
〔7:37〕
応援のUH-60JA、10機到着。
他のヘリはパイロットが足りず離陸できない。
ロボットの襲撃で、多くの隊員を失ったのは事実。
数少ない隊員をやりくりしている。
たつみ「23分か、20km強か・・。」
逃走中のトレーラーの位置を測る。
〔7:41〕
総員突撃の号令。
直後。
応援のヘリに連絡。
たつみ「全機、逃走中の車両を追跡。市街地を暴走中の新型ロボットの即時停止を要求せよ。聞き
いれられない場合、邀撃として全車両を攻撃、ニュートリノ通信機の破壊を確認せよ。」
無線のマイクを弾き飛ばしたのは成瀬。
形相。
成瀬「逮捕。そういう約束よ。」
なだめるやすひろ。
やすひろ「信じて・・」
成瀬「信じる?」
やすひろ「ああ、僕達を信じて。・・さぁ、もう一台の新型に追い付かないと。」
決して正義ではない視線がたつみを射る。
成瀬「約束は守らせるわ。必ずね。」
返事は無い。
マイクを拾い、続ける。
たつみ「城■銀行ビルに張込のSAT隊員がいる。屋上ヘリポートで合流せよ。」
無線は古淵等も聞いていた。
U2 2機はトレーラーの護衛に戻る。
古淵「(空中をまっすぐ進める)ヘリの方が速い。」
トレーラーとバスを止める。
バスの下方から1台。
トレーラーのコンテナから1台。
dFORCE7000発進。
両手にBarrett M82。
古淵「10分で追いつかれる。隠れる場所を探すぞ。」
メンバーが衛星写真を必死でチェックする。
古淵「温泉の7000の内、3台を戻せないか?」
別のメンバーがコマンドを発行。
E-2C。
C-Xによる攻撃の1分前。
隊員「3台、高速で南下しています。」
シノブ「ん?なんだぁ。」
モニタを覗く。
シノブ「ああ、なるほどな。」
AH-1に連絡。
シノブ「ロボットを南に行かせるな。・・ああ、そうだ。そう、そう、見えた?3台。テキトーに
鉛弾ばら撒いて遊んでおけ。」
マイクを放り投げる。
シノブ「牧羊犬代わりにヘリ連れてきて正ぇー解。」
新幹線。
たった1台、立ち塞がるCARBON-LOGIC。
U2と同じ、20mmガトリング砲を手に持つ。
矢部「あの女だけは・・」
TITANIO。
Mauser M1918を携える。
奥歯でカプセルを噛み割るたろう。
そして、東に教えられた言葉を叫ぶ。
たろう「kskそおおおおぉぉぉ・・・・ちッッ!!!!」
TITANIOは強烈に背を丸めた姿勢から、ジャンp・・姿を捉えられない。
CARBON-LOGICも肉眼では捉えられない移動パターンへ。
やすひろ「息子よ、その台詞は・・10年早いぞ。」
【高速隊 超技術】
新幹線は停止。
向かって右が国道。
国道の右は丘が続く。
左手はやや狭い旧道。
その左は畑。
もう15km進むと、軌道も道も引き裂かれている。
それより手前の軌道を、今日、破壊されなかったのは幸運。
東はたろうを助手に任せ、ハナのところへ行く。
寂しそうな目が黒い医師を見上げる。
ハナ「味の好みが変わる程度なら、あたし・・」
東「たろう君のこと、好きかい?」
目をそらし、やや、肯く。
ちびっこめ、可愛い。
東「心が男性化したら、その気持ちが消えるかもよ。」
どきりとする。
貨物車への通路を歩いていく。
扉の覗き窓ごしに見えるたろう。
身体にかかる負荷に苦しんでいる。
自分がコントローラーを握ってあげれたら・・。
東「もっと悪いシナリオも有る。」
気持ちは剥ぎ取られる。
新幹線に近付こうとするCARBON-LOGIC。
その黒いロボットが今、使っている弾倉。
M50か、それとも、科学兵器の特殊弾か?
いずれにせよ、新幹線に銃口を向けさせてはならない。
ティーガーが上空から30mmリボルバーカノンを掃射。
足が止まったところでHOT3発射。
誘導弾に追い回される黒いロボット。
前転しながらガトリング砲を撃つ。
空中で爆発する光学誘導ミサイル。
パイロット「通常弾か・・少なくとも今は・・」
起き上がるCARBON-LOGIC。
背後にTITANIO。
執拗な下段の蹴り。
バランスを崩したところで首を刈りに行く。
上段の蹴り。
が、腹部まで貫通する首を前に倒し、頭部を逃がす。
たろう「ええっ?」
逆にガトリング砲の砲身で、振り上げた脚を払われ、地を転がる。
ティーガーの20mm機関砲による援護。
たろう「早い。ロボットのスピードじゃなく、瞬間の判断が早い。」
それは矢部のプログラム。
しかし、たつみの最初の指示は果たせた。
敵ロボットを国道側にどかす。
たつみ「十分よ。」
たんこ、たつみに敬礼。
イチサンは全開で加速。
前輪がリフト。
たんこ「うぎゃぎゃぎゃぎゃきゃああああっっ!!!」
アスファルトにブラックマーク。
常に騒がしい女。
旧道を突き進む。
GSF1200PとNSXが続く。
ずっと遅れて、銃器対策警備車。
ティーガーとTITANIOに抑えられているCARBON-LOGIC。
行く車両を見送るしかない。
間もなくGSP1200PとNSXに追いぬかれるたんこ。
コーナーの処理が桁違いに上手い。
ハンドルを切るたびに置いて行かれる。
直線の加速で追い付く。
たんこ「コーナーで遅れを取るなんて、屈辱。」
ロボットが第2章で道を引き裂いた区間。
瓦礫の山。
張り込みのSAT隊員が迂回路を探してある。
左に回頭。
畑を突き進む3台。
山を一つ超える。
その下り。
明らかなオーバースピードでコーナーにアプローチするNSX。
たんこ「死ぬ気?」
白黒ツートンのパンダNSX(パトカーですしね)。
サイドにとうf・・いや、”栃木県警察”の文字。
ユーロビート系の・・聞こえる?
そして、インベタ。
貼り付くように曲がっていく。
たんこ「いったい、何が起こったの・・」
そのとき、NSXのイン側前輪は、たしかに、溝に落とされていた。
【たつみ出陣】
たろうのいるコンテナ。
64式小銃を下げた母。
小銃はテーピング済。
東の助手を司令室へ帰す。
その中に居れば比較的に安全。
たろうは酷い汗。
うつろな目。
時計を見る母。
全力を超えた状態で2分30秒。
たつみ「無理しなくていいわよ。後は、私に任せて。」
ぐったりして、返事は無い。
外に出る。
戦場。
新幹線の下から、敵の居る反対側を覗く。
不敵な笑み。
立ち上がる。
たつみ「彼等に勝ち目は無いわ、私達の圧勝よ。今日、我が隊で死ぬヤツが居るとしたら・・そう
ね、”私達”くらいかしら。」
母の横にヨリ。
ヨリ「ダーリンのために死ねるなんて・・なんて完璧な人生かしら。」
彼女の引金は軽く、愛は重い。
しかし、やはり少し震えている。
その手を握る暖かい手。
たつみ「成瀬に聞いたわ。あの黒いロボットの装甲は、近距離なら5.56mmで撃ちぬけるらし
いわよ。」
ヨリ「信じるの?成瀬さんは隊長を恨んでいるわ。」
成瀬が小さなはめ殺しの窓からこっちを見ている。
冷たい目。
たつみ「信じられない。」
ヨリ「・・・・」
たつみ「じゃあ、成瀬を信じている瀬瀬やすひろを信じて。」
あの御方(やすひろ)をむやみに信じる・・しかも命を賭けて・・甘い衝撃にとろける。
霧散する死の恐怖。
ズガン!!
その黒いロボットに投げ飛ばされ、貨物車に激突するTITANIO。
たつみ「終わったようね。」
時計を見る。
たろうは4分以上苦しみに耐えた。
たつみ「行くわよ。」
まるで乾杯をするように、お互いの銃を合わせる二人。
たつみ「ヘリが攻撃している辺りに黒いロボットが居るはずよ。」
ヨリ「了解。」
見えにくいロボットの動きに、かなりなれてきた。
走る。
貨物車内。
たろうから点滴の針を外す東。
背後に気配。
東「君は戻っていなさい。」
ハナも来ていた。
目が赤い。
たろうは神経も筋肉もずたぼろ。
酷い汗。
力無く息をしている。
少年を背負い指令車に戻る東。
東「ハナちゃん。早く戻りなさい。」
貨物車の壁がTITANIOの形に少し凹んでいる。
じっとそれを見る。
東「ハナちゃん!!」
迷ったが、ハナはコントローラーを握りしめ、司令室に戻った。
【室囲】
室囲「現場の調査、事実の確認が先です。」
霹蔵「それが、決定ですか。」
街中を疾走する、U2。
腰の弾倉、黄色のペンキで”C”と書かれたものが特殊弾。
部下に指示する室囲。
室囲「瀬瀬君に、敵ロボットに追い付いても何もするなと伝えろ。」
霹蔵「・・・・」
室囲「むやみに刺激するのは危険です。」
霹蔵「・・・・」
室囲「拳銃は最後の武器です。我々は警察官です。」
霹蔵「なるほど。その通りですな。」
立ち去る霹蔵を呼びとめる。
室囲「貴方はまだ、全てを話していない。」
霹蔵「確証が有りませんので・・」
室囲「それは、私が決めます。」
霹蔵「・・いいでしょう。」
モニタに地図を映し出させる霹蔵。
霹蔵「敵ロボットはこの国道を南下、まっすぐ行けば・・」
部下の一人が驚く。
「こ、皇居!!」
鼻で笑う霹蔵。
霹蔵「しかし、もし、この交差点で右折したとする。その先にあるのは・・」
1つの病院を指差す。
室囲「蛹山君か!?」
霹蔵「もしそうなら、蛹山君を移動・・そうですな、O井埠頭が良いでしょう。事態は我々に有利
になります。」
部下の2~3人が皇居が目標だと叫ぶ。
室囲「蛹山君は重体だ。どうやって移動するんですか。」
霹蔵「さぁ、どうやってでしょうなぁ。私が言えるのはここまでです。」
対策本部を去る。
モニタでU2の現在位置を確認する室囲。
万が一にも間違った判断は出来ない。
FOSの目的はいまだ不明。
新型ロボットの目的は?
他国のFOSは姿を消した。
つまり、今、彼らがしたいことは・・
意を決する。
室囲「O井埠頭に非常・・」
突然、本庁から電話。
酷く怒っている。
皇居が狙われていると言っている。
部下の一人がこそこそと退出。
ヤツが勝手に電話をしたようだ。
一方的に命令される。
電話を切る。
唇を強く、強く結ぶ。。
立ちあがる。
室囲「機動隊のほとんどが皇居の警備にまわる。O井埠頭はわずかな人数で封鎖するしかない。私
が現場で指揮を取る。病院へ連絡し、手段を問わず、蛹山君をO井埠頭につれて来い。」
パトカーの後部座席で地図を開く。
室囲「少人数を見越して、O井埠頭を教えてくださったのか?しかし、それにしても・・」
振り返ると、付いて来るのはたった4台のパトカー。
室囲「少なすぎる。」
【スナイパー】
3方向からの射撃に、ただ逃げ回るしかないCARBON-LOGIC。
矢部「あの女達、狙いが正確すぎる。背の低いほうは引金イカレてるのか?ばら撒く弾の量が狂っ
てる。こうなるとガトリング砲は重過ぎるな。」
コマンドを入力。
ガトリング砲を放り投げる。
新幹線に向かって全力疾走。
たつみ「私を倒してからゆけえっっ!!」
叫び、横方向からロボットに向かって走る。
矢部「さすが、先生のハード・・エレガントだ。」
新幹線の屋根にジャンプする、黒いロボットの放物線にうっとりする。
7両目、司令室の上で20mmガトリング砲を手にする。
母はヨリの手を引き、新幹線の下に隠れる。
たつみ「しまった。」
ティーガーは攻撃できずにただ旋回する。
手持ちの武器が強力すぎる。
新幹線を破壊してしまう。
屋根の上1cm、銃口を突きつける黒いロボット。
室内の成瀬を狙う。
たつみ「うおおおっっ!!」
飛び出し、引き金を引く。
矢部「ああ、あれも標的だったなぁ。」
最優先の攻撃目標にたつみを指定。
3本の砲身がたつみを狙う。
微動だにせず打ち続けるたつみ。
矢部「死体は見たくないなぁ。」
手でモニタを覆う。
ガウン!!
重い銃声。
貨物車の屋根を突き抜けて来た銃弾が、黒いロボットの膝を打ち抜いた。
TITANIOのMauser M1918。
コントローラーを握るハナ。
ハナ「当たったかしら?」
矢部「TITANIOッッ!!」
片足のみでTITANIOの相手は不可能。
CARBON-LOGICは、まもなく破壊される。
矢部はそう判断した。
新たなコマンド。
黒いロボットは銃口を屋根に向けなおす。
母が撃つ7.62mm。
ヨリが撃つ5.56mm。
ハナが撃つ13mm。
CARBON-LOGICは蜂の巣。
矢部「あの女だけは・・」
火を噴くガトリング砲。
敵の銃撃、自らの兆弾で、カーボンの肌が崩れ落ちてゆく。
屋根に開いた穴から成瀬の姿が少し見えた。
狙う。
逃げる成瀬の背中をかすめる。
やすひろ「皆!!1号車へ逃げろ!!」
東がたろうを父が成瀬を背負い通路を走る。
それを追う様に銃弾が飛んでくる。
黄色でCと書かれた弾倉をとり、車内に突っ込む。
握りつぶす。
そこで黒いロボットは動かなくなった。
だらだらと流れ落ちるオイル。
滴るそばから蒸発する毒ガス。
走り逃げる母とヨリ。
ティーガーは降下、ローターの風で二人を守る。
蒸発する狂気の液体。
成瀬の出血がひどい。
父の手は血でべっとり。
先頭車両。
運転手に、2両目以降を切り離して発進するように言う。
東の助手が緊急手術用ビニール・ケースを膨らませている。
東「万が一のことがある、しばらくここに入ってましょう。運転手さんも!!」
6人ぎゅうぎゅう詰めで入る。
こ走りでやってくる運転手。
が、たどり付く前に倒れ息耐えた。
急いでビニール・ケースの入口を閉める。
10km先で線路は終わっている。
TITANIOのシステムは貨物車。
呼べない。
やすひろがたつみに電話、事情を説明。
たつみ「解ったわ。私が何とかするから、外には出ないで。」
残り5km。
突然、推進力を失う新幹線。
わずかに減速。
ティーガーの後席に無理やり入り、先回りした母とヨリ。
先ず母がパンタグラフを狙撃した。
そしてヨリ。
丁度、線路が無くなる位置に立つ。
ヨリ「フー。」
タバコをふかす真似。
可能な限り目を細める。
レザーアイズ。
ぴっ。
タバコを捨てる真似。
ヨリ「私の後ろに立たないで。」
だれもいない。
だれもいないよ、ヨリさん。
目標に対し斜めに立つ。
スチャっという効果音で構える。
出来るだけ新幹線を減速させたところで車輪を狙撃。
その音はもちろん。
ズキューーンン・・・・。
たった一発。
5.56×45mmは魔法のシステム。
新幹線はきれいに脱線。
旧道を横切り、畑に突っ込む。
やや、斜めに傾き、停止した。
【数字の申し子】
矢部はモニタを見ている。
それは、古い、古い、剥き出しのブラウン管。
11インチのグリーンモニタ。
矢部「美しい放物線・・」
黒いロボットのログデータ。
そのモニタが表示できるのは、横80桁、縦25行のアルファベットと数字、少々の記号だけ。
緑色の文字がだらだらと流れていく。
色の薄い瞳に映る。
彼にだけは、流れるキャラクタが人や建物、車に見えている。
矢部「数値だからこそ、事実を正確に表現できる。」
彼は情報処理のためだけに生まれた。
細い体は非力で病気がち。
人付き合いは苦手。
他には何も出来ない。
数字は人が作りだしたもの。
数学は人が神である宇宙。
彼はその宇宙の情報処理の世界で、全知全能の存在。
矢部「敵にすご腕が居る。」
Happy Hacking Keyboardの刻印の無いキーを細長い指がすべる。
蛹山の担当者から、特権ユーザーでU2の使用権限を横取りする。
矢部「僕はまだ、先生のために何も出来ていない。」
ログを解析し、MAG―HFのアルゴリズムを推測する。
彼は集中していた。
だから、無意識につぶやいた自身の独り言には、気付いていない。
矢部「あの少女とTITANIOは、勝ち続ける宿命なのではないか。」
CARBON―LOGICは明らかに優勢だった。
ハナが小さな窓から覗き、撃った一発。
貨物車のコンテナが射線上に有るなんて思わなかった。
目視で屋根の上を狙った。
ある意味あてずっぽだ。
コンテナが銃を構えるTITANIOを隠さなければ、避けられていた。
ハナは必死で、必死で、隠れるとか・・。
【綱渡り】
新幹線。
司令室の弾倉はTITANIOで投棄。
屋根を破壊し、ヘリの風で毒ガスを飛ばした。
UH-60JAを二機戻す。
成瀬。
出血が酷い。
うつぶせに寝かせ、東とやすひろが手足を抑え付ける。
背中の傷は大きい。
成瀬「わたし・・まだ・・死ねな・・」
たつみ「当たり前よ。アンタを死なせたら、日本の立場が無くなンのよ。」
1.5リットルペットボトルの水で傷を洗う。
小毒薬。
成瀬「ぐあっ!!ああっっ!!」
もだえる。
タオルで拭く。
止血剤をスプレー。
やすひろ「(血が)止まらないな。」
血を拭き、別の小さなスプレー缶。
水と反応する医療用接着剤。
成瀬「うっ!ううっ!!」
傷口をメリメリと捕まれるような感触。
ヘリに乗せる。
たつみ「何か有ったら電話して。」
ヨリが一緒に乗る。
やすひろと一緒に居たいが、命令に逆らわない。
命令に反すれば、今後の作戦から外され、結果、彼の側にいられなくなる可能性がある。
少女は未来を見ている。
たつみはその小さな肩を掴み、今一度言う。
たつみ「判ってるわね。」
病院に向かい、離陸。
もう一機のヘリ。
給油が完了したところ。
たろうを背負い東が乗る。
やすひろ「先生、たろうを頼みます。」
東の助手が台車でTITANIOシステムを運んでくる。
コントローラーはハナが握っている。
やすひろ「ハナちゃん。東先生にコントローラーを渡して。」
首を振り、ヘリに乗る。
たつみ「・・・・」
ハナ「・・・・」
パイロットに言う。
たつみ「出て。」
飛び立つUH-60JA。
長距離の移動になる。
TITANIOのバッテリーを交換した。
移動途中にバッテリーを交換する必要がある。
バッテリー運搬のため、もう一機ヘリを呼び戻す。
やすひろ「MAG―HFのバッテリーはさ、TITANIOと同じ重さなのに、3倍はもつんだな。」
なぜか、ため息が出た。
ハナが操作しTITANIOが走る。
ヘリはハナが有視界で操作できるように低空飛行。
あの距離・・たろうと違い、ロボットのセンサーと脳が直接繋がっていないハナ。
有視界で操作するしかない。
せいぜい100m。
遮蔽物が無いという条件でだ。
絶望的な行動半径。
やすひろが叫ぶ。
やすひろ「ハナちゃん!!がんばれーっ!!」
ヘリの音で聞こえるわけない。
判っている・・。
たつみ「東さんに賭けるしかないわ。」
UH-60JA内。
たろうを寝かせる。
東「ハナちゃんのおかげで、たろう君を休ませることが出来るよ。」
ハナはTITANIOの操作に必死。
TITANIOの速度が時速120kmから上がってこない。
ハナ「遠いと難しいわね。」
ヘリをギリギリまで下げる。
時速200km近くまで上がった。
ハナ「いつもは自分がTITANIOになったような感じだったから・・なんか、難しい。」
たろうならその感覚を実現できる。
しかし、ハナの応答速度でなければスピードが出ない。
東「やはり、二人で一つなのだ。」
ティーガーのガンナーを降ろし、変わりに搭乗するたつみ。
ガンナーはやすひろを護衛。
やすひろ「無理はしないでくれよ。」
たつみ「勝って来るわ。」
ティーガー全速。
7機のUH-60JAと2機のdFORCE7000はすでに交戦中。
2機のU2が到着する。
ティーガーが追いつくまで分が悪いだろう。
指令室に戻るやすひろ。
システムをチェックする。
サーバーが壊れている。
やすひろ「7台中4台アウトかぁ。ああっ、クソ!ファイヤストレージシステムもかよぉ。」
生きているサーバで再設定。
MAG―HFは市街地を走る。
自立システムがあるので、とりあえずサーバー無しでも問題ない。
やすひろ「パフォーマンスが出ないなぁ。予測を浅くするしかないかあ。困ったなあ。ま、動くだ
けマシってことで・・。」
ステータスをチェックする。
やすひろ「うう、トップスピードが低い・・。やっぱり、ガトリング砲は重かったかな?」
たつみは機内でシノブからの報告を聞く。
決着が付いたようだ(後述)。
運転手の殉職も含め、室囲に報告する。
【決戦の場所】
今一度、地図を見る室囲。
たつみの報告で、敵が毒ガスを使うことは確定した。
室囲「やはり少なすぎる。」
部下が「平和の森公園とか平和島公園はどうです。」と提案する。
室囲「もっと広い場所が必要だ。化学兵器を使われても、一般市民の犠牲者を出さないようにな。
そして、少人数で封鎖でき、できれば銃弾を受け止める、壁などに囲まれた場所。それが望ましい。」
自らの言った言葉にはっとする。
有る。
室囲の指が地図の一点を示す。
部下が不可能だという。
室囲「交渉は私がする。責任も私が取る。」
無線を取る。
室囲「目的地を変更する。大井競馬場だ!!」
病院。
警官が3人やってくる。
蛹山の病室。
そこで会ったのは。
霹蔵「やあ、来ましたね。」
技術者が5人、医者と打ち合わせをしている。
警官「これは・・」
霹蔵「彼女を生かしたまま移動するのは不可能ですよ。」
何を言い出すのか、驚く警官。
技術者の・・責任者か?
蛹山に顔を近付けて何か説明している。
意識はあるのだろうか?
彼女のベッドの隣。
ステンレス製の棺桶のようなものが有る。
警官「何をしているのですか?」
霹蔵「あの棺桶を持ち出すのに苦労しましたよ。」
技術者の一人を手招き。
霹蔵「警察の方が見えた。説明をよろしく。」
軽く挨拶をして、去る。
技術者「あれはコードネームでタイムマシンと呼ばれる機械です。テロや自然災害などの有事に、
重態で入院中の要人を安全な場所に移動するためのシステムです。」
警官「は、はぁ。」
きょとんとした表情。
技術者「今、彼女を移動すれば10分程度で死亡します。」
警官「あの、タイムマシンの中に居れば死なないのですか?」
技術者「いえ、死亡します。ああ・・多少、死亡までの時間が伸びるかもしれませんが。」
警官「?」
技術者「あの中にいれば、死亡後3時間以内の術式で蘇生可能です。」
警官「つまり、死者の時間を止める機械。」
別の警官が言う。
警官「いったい、わが国には、いくつの隠し玉があるのだ?」
技術者がまじめな顔で答える。
技術者「私が思うに・・我が国は世界に対し”平和ボケした世間知らずな島国”であるべきです。
1位ではなく、実質1位より益の有る2位であるべきだと。」
警官「爪は隠せ、出すなら袖の下でこっそり出せ・・ですか。」
【全方位迎撃機】
C―2と同じ形に偽装し、開発されたこの機体。
今や公となり、iXと呼ばれる。
爆装、雷装がついでに可能ならより良い、という要求から始まった企画。
八華田のマニアックな解釈でそれは再定義された。
空中、地上、海上、海中。
その全ての場所のいかなる敵をも迎え撃ち、無に帰する。
そう、開発されてしまった。
iXによる邀撃は始まっている。
地を這う低空飛行。
シノブ「なあ、お宅の会社の狙いは宣伝かい?」
八華田は答えにくそう。
八華田「あー、実はですね、今回の兵器は販売しないのですよ。」
シノブ「特許かな?または、お宅に作って”頂く”しかない、特別な部品が有るとかさ。」
八華田「もう、このあたりで許していただけませんか?」
話を打ち切りたがる。
シノブ「ま、オレに見せたカタログが作りかけみたいだった理由は判ったよ。プレゼン用を超急ぎ
で編集したわけだ。」
八華田「兎に角、操作手順はお間違いにならないよう、今一度、徹底をお願いします。」
シノブ「へっへ。ま、恥はかかせないつもりだよ。」
7000がミサイルランチャーを構える。
FIVE GOLD発射。
八華田「ふん。」
鼻で笑う。
オペレーターがトラックボールを操作し、空中の数箇所をポイントする。
大昔、ミサイルコマンドというゲームがあったが、それに似ている。
レバーが一本多いが。
iXの左側胴体左。
ミサイル数発を発射。
オペレーターがポイントした地点で起爆。
ゴウッ!!
ゴウッ!!
ゴウッ!!
ゴウッ!!
一発当たり4回の爆発音。
空一面を迎撃する兵器。
91発の20mm弾を4段、ミサイル一発当たり計364発を発射する。
逃れようが無い。
FIVE GOLDを殲滅。
八華田「クッ、クッ・・可愛いものですね。」
iXのレーダーは全てのロボットの位置を正確に捕らえている。
八華田「1チーム4機の設定でお願いします。面割りはランダムで・・。」
胴体下部が開く。
バンブルビートル発射。
一見、羽の大きな対地誘導ミサイル。
1~7機のチームで目標を狙う。
水平(事実上斜め上)を6つの方位、それに真上。
一発がそのいずれかを受け持つ。
同期を取り共通の目標を同時に攻撃する。
ロックオンとマニュアル誘導を選択できる。
マニュアル誘導時は親となる一機だけを誘導すればよい。
1チーム1機の設定なら一般的な光学誘導ミサイルとして運用できる。
まだ見ぬ、未来の陸上兵器への対応を考え、このシステムを開発した。
さまざまな未来の兵器を想像し、対策を検討。
その中から、現状必要十分であるシステムと互換性があるものを選択。
八華田「未来からようこそ。お待ち申し上げておりました。」
こんな早くに会えるとは、思っていなかった。
【犠牲2人】
都心。
走るU2。
避難警報。
U2の巡航速度は街中でも時速200km近い。
10分以内に到達可能な範囲は、半径で33km程。
その円に埼玉や千葉も含まれる。
避難対象は最大で130万人、警報発令後の延べで250万人に及ぶ予想。
新幹線運転手の死。
化学兵器の特殊弾。
存在は確実となった。
室囲「調査は引続き行う。毒ガスの種類を確定する。」
とりあえずは、やすひろに状況を確認。
サリン、ソマンを想定。
合計6,300セットのPAMとアトロピン。
ヘリに積みU2を追うように飛ぶ。
避難状況。
はじめはパニックに近かった。
なぜか母親が災害時グッズを背負って歩く親子。
父親に(携帯で)電話するが回線がパンクし繋がらない。
繋がった者は不安で電話を切れない。
皆焦っている。
交差点での事故が多発。
道路は麻痺する。
広めの歩道を走る軽自動車。
お年寄りを跳ねた。
ひったくりが多発する。
皆、貴重品を手に避難をしているに決まっている。
鉄道とバスは対象の区間が運転見合わせとなる。
タクシーもいない。
警戒区域内にサーバーを持つ企業はデータをどうするか判断できず避難が遅れる。
病院は対応に困っている。
問い合わせると自衛隊を派遣するというが、人手が足りず来ない。
ロボットが黙って通りすぎるのを祈る。
やがてロボットが通り過ぎるまで、ほんの1時間、遠くにいればよいのだと理解する。
車や自転車で移動、喫茶店、ファミレス、ネットカフェなどで時間をつぶす。
ワンセグを視聴可能な、携帯電話などの端末が普及していたことは幸いだった。
ロボットの現在位置と避難対象地域を放送。
何より状況を正しく伝えることが出来、最悪のパニックを避けられた。
"多少の義性は覚悟で敵を駆逐"
その考えは日本ではありえない。
銃を手にし、敵の位置を把握しながら、引金を引けない。
突如、交差点を曲がるロボット。
ムラーカエンジニアリグ本社社屋。
一部の主任~室長の避難が遅れている。
派遣、重役、部下を非難させ顧客などへ連絡。
破壊音。
砕け散るカーテンウォール。
それを行ったロボットはすでに去った。
ビルの中。
岸田、梶の死体。
赤石、井出は避難していた。
TITANIO製作の関係者が狙われた。
霹蔵「しまった。岸田君、梶君・・。」
自分への怒りで顔は真っ赤。
赤石と井出、その他狙われる可能性の有る技術者数名の場所を確認し確保。
室囲に連絡。
室囲「私も迂闊でした。申し訳有りませんが、全員大井競馬場へ向かうよう、手配してください。
私のほうは手が足りず対応できません。」
霹蔵「了解した。」
亡くなった二人。
遺族になんと伝えればよいのか思い付かない。
彼等は戦士ではない。
この間に、MAG-HFとTITANIOがU2との距離を詰める。
目的地は競馬場。
ステンレスの棺桶”タイムマシン”は蛹山を収める。
救急車に積む。
パトカーの先導で競馬場へ。
【八華田】
4発で1チーム。
ロボットを狙うミサイル-バンブルビートル。
dFORCE7000。
ミサイルの票的が自分であると認識する。
2発を撃ち落とす。
残り2発も避ける。
振り向きざまに撃ち落とす。
iX(C-X)機内。
八華田「次は1チーム5、6、7機を組み合わせてお願いします。」
1台のみよけ損ねていた。
片足を失ったロボット。
八華田「もう、1台壊れたのですか。」
出来るだけ多くのテストをしたい。
もてあそばれ、散る、9台。
次第に数を減らす。
八華田「ここまで持ちこたえるとは。良いデータが取れます。」
バーコード禿。
だらしない腹。
営業スマイル。
残っているdFORCE7000は5機。
オペレーターのところに行く。
八華田「申し訳ありません。ちょと、私にやらせていただけないでしょうか?」
オペレーター「いや、民間人に引金を・・と、ちょっと。」
無理やりコントローラーを奪う。
バンブルビートルのチーム編成作成画面を開く。
最大12種類登録できる。
F1~F12キーを押すことで、チーム編成を切りかえることが出来る。
八華田「それでわ・・」
Ctrl+Alt+Space同時押し。
左下に不自然に空いていた余白に入力BOXが現れる。
他はラジオボタンやチェックボックス、リストボックスなのだが、その入力BOXだけはフリーに
文字を打ち込めるテキストボックス。
八華田「こんなのは、どうでしょう?」
キーボードから文字を入力。
A{*2[1,1]0-20%(),[2,1]300-20%(20cm),*1[3,3]0
-20%(),*3[4,0]30(),[5,5]30(20cm)}90m
確定ボタン。
モニタを見る。
ロボットが動いている。
八華田「もうちょっと、右に行っていただけませんかね?」
全くの偶然だが、ロボットは右に移動した。
八華田「ええ、そこです。」
引金を引く。
プライオリティー1のマスターミサイルから反時計回りに2つ隣の方向、1つ目のミサイルに30
0ミリ秒遅れでもう一発。
その2連ミサイルの一発目が狙われるように、4方向中2方向は30ミリ秒遅らせてある。
まんまと2連の2発目が命中。
オペレーター「こんな設定が出来るのか。」
技術屋はパイロットの隣にいる。
八華田「さて、地上50m、あのロボットの真上を飛んでください。」
パイロット「バカを言うな・・あっ!!」
レバーを勝手に操作。
バランスを崩すiX(C-X)。
パイロット「判ったよ!やるよ!!何も触らないでくれ!!」
7000の手持ちの武器はBarrett M82。
発砲。
コックピットを狙うが傷一つつかない。
八華田「お手数ですが、後2~3回やってください。エンジンとか狙ってくれないと、試験になり
ませんので。」
勝利は目前。
一人悩む隊長。
シノブ「問題は、何故ここなのか?」
時計を見る。
シノブ「コブラを長く飛ばしすぎたな。しばらく現場に残したかったが、仕方が無ねえ。」
パラシュートを掴む。
【最後の3人】
古淵らを追う7機のUH-60JA。
前にはdFORCE7000、2機。
後ろにはU2、2機。
有効射程は同じか不利。
狙いは敵ロボットのほうが正確。
たつみからはティーガーが到着するまで”待て”の指示。
ティーガーが到着する直前。
U2が2台とも古淵の方(トレーラーと大型バスが停車している場所)へ向かい、走る。
無理に追ったヘリが1機、ガトリング砲で撃墜された。
別のヘリが救援に向かう。
幸い死者は無い。
残りのUH-60JAは5機。
2機の7000は距離を一定に保ち威嚇射撃。
たつみ「時間稼ぎか?下らない。」
最大全速で突撃するティーガー。
距離をとろうとするロボット。
リボルバーカノン、機関砲、引き金を弾く。
弾幕でロボットの動きを封じる。
そのスピードで一気に距離を詰める。
ゴッ!!
攻撃ヘリによるボディスラム。
衝撃でライフルを放る。
アスファルトに押し付けられるロボット。
時速240kmで引きずり回される。
彗星の尾のように、dFORCE7000の背から火花。
焦げ臭い。
ヘリを殴るロボット。
ボディーが凹む。
斜めに傾き、ロボットを引きずったまま蛇行。
ガードレールに接触。
つんのめる様に横転しかけるティーガー。
たつみ「ねぇ?楽しんでる!?」
より強く地面に押し付ける。
間も無くロボットの頭部から煙。
動作停止。
熱で基盤が焼けたのだ。
気がつけば、ロボットは3分の2の薄さになっている。
上昇していくヘリ。
たつみ「もう1台は頼んだわよ。」
U2を追う。
古淵「まずいな。敗走しながら潜伏は予定通りだが、目的(TITANIO製作関係者の暗殺)は
果たせず・・」
矢部「あなたがヘリにびびって、U2を2台とも戻すからだ。」
古淵「ま、全員逃げきるのは無理だな。」
その言葉の意味・・怒りを覚える。
矢部「何を言っているんだ・・アンタ・・」
U2が到着。
古淵「迷っている暇はない。」
抜け道から旧道に戻ってくるたんこのイチサン。
たつみ発見時に限り、視力8.0。
たんこ「いや~ん!おりりしぃ~!!」
ティーガーに合流。
前方。
大型バスとトレーラーが逃げている。
なぜかU2がいない。
たつみ「不自然ね・・でも、追わないわけには行かないわ。周囲に十分注意して!!」
イチサン、NSX、GSF1200Pが追う。
たんこ「ぬああっっ!!ターボッッ!!ターボッッ!!ターボッッ!!ターボッッ!!」
ヒュイイイイイ!!
タービンの音。
ボボオおおゥッッ!!
マフラーが張り裂けそう。
パワーでタイヤがたわむ。
ゴガアアアアアッッ!!!!
たんこ「ぎゃー!!こえーっっ!!」
血が偏る加速。
ブラックアウトしかかる。
トレーラーを追いぬく。
たんこ「女は常に一瞬に賭ける生き物なのよっっ!!」
それは違うと思うし、何を言いたいのかは判らない!!
本人にも判っていいない!!
180度回頭!!
加速!!
たんこ「必殺!!四筒走弾!!」
自身は後ろに飛びながら、バイクを全開で前方に射出。
トレーラーに激突するイチサン。
バランスを崩し、ブレーキ。
後ろに続いていたバスと接触。
2台は停止する。
たつみ「良くやったわ。」
彼女は時速80kmで落ちた。
アスファルトに転がっている。
NSXが停車。
隊員がたんこの顔を覗き込む。
隊員「大丈夫か?」
たんこ「なぁ、火あるかい?」
隊員「・・未成年者は喫煙禁止だ。」
冗談を言う余裕にあきれる。
捕らえたメンバーは6人。
成瀬が提出したメンバーリストとあわせる。
古淵と矢部、レジナルドが居ない。
メンバーは黙秘。
吊し上げようとするたんこを止める。
慎重に取り扱う必要が有る。
隊員「(トレーラーを発見した現場に)戻って、調べますか?」
たつみ「そうね。彼らは連行して。」
7000と戦っているUH-60JAの内2機を呼ぶ。
GSF1200Pの隊員に連行させる。
バイクにはたんこが乗る。
たつみ「ひょっとして、もう、(古淵達を)見付けているかも。」
古淵達3人は温泉地にいた。
U2で移動。
1台は古淵と矢部。
もう 1 台はレジナルドとサーバー。
それぞれを脇に抱える。
見回す。
dFORCE7000の残骸。
古淵「急いで回収してくれ。その内自衛隊が来る。」
レジナルドがコマンドを発行。
U2が残骸の中から必要なパーツを集めてくる。
古淵「要らないロボットは処分できたし、恐れていたC-Xのデータは取れた。」
矢部「捕まった皆は大丈夫かな。何時助けに行くの?」
古淵「そうだな・・」
気のない返事。
矢部「(助けに行くって)約束したよね。」
古淵「ああ、暫くは無理だがな。」
いらだつ矢部。
矢部「町田先生が死んで、あなたは加速度的に横柄になって行く。」
古淵「そうかな。気がつかなかったな。」
矢部「いや、今判った。貴方は町田先生を真似ようとしているんだ。自らの罪に苦しみ、それでも
強く皆を導いた、先生の劣化コピー。それが貴方だ。」
古淵「俺とお前では町田の見方が違うな。しかも、お前にとって町田は最高の存在だ。それは絶対
の基準で、町田との違いは全て減点対象だ。」
矢部「もう、いいよ。話にならない。で、潜伏するんだね」
古淵「ああ。次の準備が有るからな。我々の目標はまだ遠い。」
矢部「理想は捨ててないんだね?救いがあるよ。」
古淵「理想など誰もが持っている。月並みな利己主義の安い偶像だからな。下らん物差しを使うな
よ。私は今回の戦いは負けたが、プロジェクト全体としては問題無いと言っているのだ。」
矢部「いいさ、掘削機が来るまで約4ヶ月、超低負荷カプセルの中で殆ど身動きせずにすごすんだ。
話し合う時間はたっぷり有る。」
古淵「4ヶ月後のリハビリが大変だ。筋肉も脂肪も削げ落ちて、骨と皮だけになるからな。一日の内
の殆ど寝ているわけだから、私と話したいなら、起きる時間は合わせてくれよ。」
200m先。
旅館の一室。
窓から覗く男。
単指向性高感度マイク付き双眼鏡。
シノブ「もう100m近付かないと、雑音が・・微妙に聞こえなくは無いのはスゲェなコレ。」
傍らに気配。
はっとして銃を向ける。
誰も居ない。
シノブ「・・・」
気のせいか?
声を聞いた気がする。
ぞっとする。
瞳孔が開く。
汗。
動けない。
ふとプレッシャーから開放される。
少し、考えている。
シノブ「1回、だけだぞ。」
【友来る】
大井競馬場。
客の誘導に手間取る。
一部の客が抵抗している。
関係者も十分には納得していない。
室囲の話し方。
悪意はない。
むしろ正しい。
簡潔で正確。
だが、誤解される。
完璧すぎる。
大衆の心に届かない。
タイムマシン到着。
蛹山の脈はすでにない。
人がごった返し、中に入れない。
警官「なにをやっているんだ?この状態で戦うつもりなのか?」
救急車を見付け走ってくる室囲。
呆れ顔の警官に言葉が無い。
と、銃声。
緊張が走る。
葵縞「は~い!!皆さん注~目!!」
現れた、一人の巡査部長。
葵縞「もうすぐ、これ(銃)のもっとでかいのを持ったロボットが、ここにやってきます。」
てめーらがなんとかしろ!など、相変わらずの罵声。
葵縞「あのねぇー、ロボットは時速300kmで走るんですよ?判ってます?」
檻にでも閉じ込めろと野次られる。
葵縞「ロボット用の檻、宇宙人用の檻、怪獣用の檻。警察には、そんなもの事前に作るお金も人も
余ってません。ってゆーかさ、あんたら逃げなくて良いの?ロボットが暴れてる横で競馬するの?」
避難警報。
後10分でU2が来る。
文句を言う人は減らないが、避難が始まる。
葵縞「すいませんねぇ~。恩にきます~。」
他の警官も行く人に頭を下げ、誘導。
室囲、黙って頭を下げる。
頼もしき友の背に。
入口にテープ。
大急ぎで場内をチェック。
非難完了。
へとへとだが休む間もなく入口に立つ。
コースに入り中央で止まる救急車。
赤石、井出ら数名を乗せたタクシーが到着。
パトカー2台に乗り換え、救急車の隣に停車。
U2が間近に迫っている。
罠だと知っているが来る。
蛹山が競馬場に向かうという情報は、盗聴サーバーに捕らえられるよう仕組んで流された。
事実上の挑戦状。
室囲「来るぞ。」
いや。
すでに居る。
独特の空気を割る音。
コースにU2。
だれも気付かなかった。
室囲「逃げろっ!!」
救急車、パトカー2台。
急発進。
出口に向かう。
U2の無反動砲が狙う。
しかし、放たれた榴弾は空中で爆発。
ライフルで狙撃された。
U2はそれを行った相手のほうへすでに向かい、走る。
太陽を背に観客席最上段に立つMAG-HF。
純白のボディーが陽に溶ける。
やすひろ「あら?」
ロボットの腹部にチェーンが巻き付いたままである事に気付く。
取ろうとするが、変に絡まっており、引き絞ってしまう。
腹部のパラレルリンクが伸びきる。
上体が伸びあがる。
ウエストが極端に細くなる。
やすひろ「え、ええと。ベ!ベルトよ~~ッッ!!」
じゃ、なくって。
チェーンを引きちぎる。
やすひろ「よ、よし・・と。」
漢やすひろ、緊張感とは生涯無縁。
【バランス】
やすひろ「やっぱり強いねぇ。」
U2の装甲と矢部のプログラムの応答速度に翻弄されるMAG-HF。
”タイムカン【十年間保存計画】カップヌードル2000~2010”を開けるやすひろ。
やすひろ「TITANIOが来るまで、もつといいけどぉ。」
呑気に麺をすする。
と、同時に何やらプログラムを書いている。
先ほど東に依頼された。
右手は割り箸。
左手はキーを猛然と弾く。
モニタは見ていない。
頭の中にすでに出来上がっているプログラムを左手に伝えるだけ。
見ていないのに、自分のタイプミスに気付き、修正、あとを続ける。
天才。
なおかつ箸の尻でMAG-HFのタッチパネルをちょいちょいと突っつく。
攻撃はふりだけ、のらりくらりと身をかわす。
やすひろ「サーバーのパワーが足りないねぇ。奴の判断の早さを出し抜けるシナリオを、探し出せ
ないよ。あー!!こんなことならサーバー20枚くらい、かっぱらってくるんだった~!!」
と、プログラムを書き終わる。
ビルド。
ノーエラー。
やすひろ「こんなものかな?じゃ、送信。」
東先生。
パソコンの前で待機。
メール受信。
東「来たっ!!」
ライターでたろうの脳に登録する。
東「これで、TITANIO制御以外の情報はフィルタでこされ、ハナちゃんの脳へ行かないよう
に出来る筈だ・・たぶん。」
たろう「先生はなんで常に語尾に怪しさをかもし出すんですか?」
黒い医師はダンディーに答えた。
東「正直者・・だからかな。」
たろうとハナを接続。
東「気をつけてくれ。感情や微妙なニュアンスが伝わらない分、動きはわずかにギクシャクする。」
たしかに、わずかな違和感。
しかし、ハナには分っていた。
フィルタを通過したわずかな情報に込められた、たろうの思い。
だって、だって・・それは・・。
ラ・・・・・・ラ、ラブ?
まじで?ラ、ラブナノ?
いやん!ばかん!きゃいんんっ!!
フザケンナ!!チビ共!!コノヤロ!!
走る。
その一歩ごとに動きは滑らかになってゆく。
競馬場に到着。
そら高く飛ぶ。
身を捻り、気持ちよさそう。
この一体感。
東「おかしい。計測器が示す同調率は20%を越えていないのに。なぜ、あんな動きを。」
たろうとハナ。
暗闇で指だけを触れているよう。
でも、お互いを信じている。
判っている。
あ、ああ、あーいっっ!!!!
チイイィッッ!!
フザケンナ!!
曲がったおやじが書けるか!!甘キモイそんな!!
ぎゃーっっ!!
ダメオヤジのプライドにかけて書かぬわっ!!
わーっ!!二人とも、キック■フすんな!!
やめろ!!キック■フわ!!
たろう「ハナちゃん」
ハナ「たろうくん」
ハートマーク飛び交うな!!
見つめ合いに1ページ費やすな!!
ふぎゃーっっ!!
やすひろ「じゃ、僕は下がるよ。」
傷と凹みだらけのMAG-HFはTITANIOの後ろへ。
すれ違いざまにライフルを渡す。
MAG-HFの被害状況をチェック。
アクチュエータ、ラジエータ、破損箇所多数。
よく戦っていた。
やすひろ「ひどいなぁ・・と、いいますか、これ、僕らの技術で治せるのかな?」
U2はMAG-HFの倍近い重量がある。
アクチュエーターの出力は倍以上。
装甲も戦闘向けに厚い。
格闘も強いが、基本的に火力で圧倒するよう設定されている。
ガトリング砲と無反動砲の弾幕。
たろう「正確なだけで、意外に単調なんだな。父さんのプログラムでなくて良かった。」
やすひろ「へっぐしっッ!!んあ?」
やすひろのプログラムなら逃げた場所を狙って撃つ。
軽いステップ。
最小限の動きで避けるTITANIO。
腰のガトリング砲を捨てるU2。
向かってくる。
ライフルを撃つが当たらない。
たろう「やばい、やっぱ速い。」
逃げる。
コースの隅に追い詰められた。
格闘戦。
拳が飛んでくる。
避けるが、U2のシステムが反応。
瞬時に向きを変え拳を振りぬく。
避け切れない。
ダッシュのために上げていた脚。
振り上げ、拳の上にそっと置く。
U2のパンチの勢いを使いジャンプ。
40m以上の距離を稼ぐ。
無線。
やすひろ「逃げてばかりじゃ、その内やられると思うよ。」
たろう「判ってますっ!!」
コース中を逃げ回る。
ハナ「あ・・熱い・・。」
オーバーヒート。
東が氷水の入った水筒を取り出し、ハナにかける。
焦りを強く感じるたろう。
一瞬、ギラリとまぶしい光がカメラに射し込む。
たろう「・・東先生。医療用のスプレー持ってきてます?」
東「一寸待って。」
パイロットに聞きにいく。
東「有ったよ!ヘリの備えが1缶!」
無線。
たろう「父さん!父さん!」
やすひろ「ん?なんだい?」
MAG-HFは隅っこの柵にちょこーんと座っていた。
上からスプレー缶と水筒が落ちてくる。
たろう「かけてぇ~!!」
TITANIOが猛然と迫ってくる。
やすひろ「だああーっっ!!待て!待て!コマンド発行が間に合わ~んっっ!!」
と、言いつつ神速のオペレーション。
TITANIOの頭部と胸の一部に水をかけスプレー。
たろう「あっちに投げて!!」
TITANIOが指差す。
やすひろ「だから!コマンド発行する時間をくれっ!!なんつって、出来ました。死ねっ。」
一本背負い。
しかし、目の前にTITANIOを追ってきたU2。
体当たりされる。
吹き飛ぶ超軽量マグネシウムマシン。
やすひろ「あああっ!僕のMAG-HFがーっ!」
振り返ったU2のカメラの左隅、池に飛び込むTITANIOが写った。
追いかける。
池。
光が反射してTITANIOの位置を特定できない。
銃声。
水面から銃弾が現れた瞬間、U2は回避行動を行った。
しかし、U2が逃げた位置は、続けて水面から現れた弾丸の到達地点だった。
その位置はやすひろのシステムが計算した。
やすひろ「破壊を免れたログに、同等の条件がたまたま残っていてねぇ。ゴメンよー。」
メイン基盤を貫通。
池から上がるTITANIO。
たろう「あああっ!!接着剤が剥がれてるぅ!!」
ハナの操作で犬のように身を震わすTITANIO。
ヘリの風で乾かす。
たろう「基盤がショートするぅ!!僕のTITANIOがぁー!!」
ハナ「親子ね。」
最後のdFORCE7000。
3機のUH-60JAとつかず離れず。
銃器対策警備車に搭乗していた自衛隊員と機動隊員が展開。
挟み撃ち。
一斉射撃。
自立システムは逃げ場を見出すことが出来なかった。
たつみに無線。
シノブ「FOSの3人発見。部品を回収しているもよう。」
たつみ「25分で行くわ。」
シノブ「ホテルニューサンシキの315号室にいます。待ってますよ、先輩。」
勢いの無い声に違和感。
23分後、ティーガー到着。
古淵たちは去った後。
シノブ「一寸、遅かったですね。」
いつもの迫力がない。
たつみ「どうしたの?」
この男が敵の逃走をただ、黙って見ているなんて考えられない。
シノブ「面目無い。」
たつみ「並以上の仕事はしているわ。私が連れてきた全隊員を使っていい。徹底的に捜索して。」
シノブ「了解。」
苦笑い。
少なくとも今、彼らを捕らえる気は無い。
たつみもそれにうすうす気付いている。
世芭の亡骸を発見。
シノブ「馬鹿が、お前は間違っている。」
頬をつたう涙。
ひとすじ。
また、ひとすじ。
シノブ「お前と同じ事が出来る人間は、この世界に何人もいないんだぞ。」
その喪失感。
意地を張り合う相手。
認めた男。
お気に入りの弟分。
翌日の葬式で会ったたんこはやつれていた。
今は悲しみをごまかさない方が良い。
あまり、慰めなかった。
ただ、判ると伝えた。
長い一日。
戦いは終わった。
しかし、事件は終わらない。
殆どのメンバーはまだ世界各地に潜伏し、捕まっていない。
協力者が居るに違いない。
今後、メンバーが増えていく可能性が有る。
ロボットによるテロの危険。
科学兵器の存在。
多段式ガスガンの脅威も忘れられない。
盗まれた原子力掘削機の用途は?
FOSが手を付けた土地は、軍に管理されている。
古淵にFOSの理想を実現する能力は無いかもしれない。
しかし彼は永い期間逃げ、組織を存続させ続けるだろう。
”彼等の土地”から生じるプレッシャー。
シノブ「バランスか。何故、それが正しいと思えたのか・・あの瞬間。」
事件解決を目指すなら、古淵を拘束し、他のメンバーを成瀬に説得させるべきだった。
彼はFOSを追い続けることになる。
夜。
筑波山。
頂上の駐車場。
町田「か細い糸の上で綱渡りを続け、バランスを保ちつづける。
古淵君が適任だ。
成瀬君にはすまない事をしてしまった。
彼女は我々の罪を償いつづけることになる。
助けてあげたい。」
教授「漆黒の宇宙。
挑戦して欲しい。
知恵は進化の究極ではない。
無くても良いものだ。
文明の幻が生命の真実を見失わせる。
人は生命のなんたるかを知りもせず、自らを命の頂点に置いた。
愚かだ。」
町田「先ずは見えぬふりをして子孫に積み上げてきた借金を返す事。
そして、隣人に不必要な迷惑をかけない癖を付けなければいけない。
さもないと、人は宇宙でソーラーシステムを蝕む。
教授、貴方はずっとそらを見上げていた。」
教授「私は天を仰ぎ、妄想の過程で考えた。
一つ、エネルギーへの変換含み、累積で巨大な質量を移動してはいけない。
二つ、位置が管理不可能な質量を自ら生じさせてはいけない。
三つ、有機物、水、大気など生命のリソースは所有する星に十分寿命が有る限り、長期間持ち出
してはならない。
巨大な質量、長期間などは算出方法を検討する必要が有る。
しかし、私はこれを提案するつもりは無い。」
町田「あさましい利権争いの前ではルールなんて無いも同じですからね。多くの一般市民が正しき
を知り、愚かな指導者を許さない。それが必要だ。成瀬君、瀬瀬君に期待している。」
教授「宇宙に住むヒトは、徐々にその姿形を変えるだろう。
だが、同じ人類として手を取り、共通の歴史を紡いで欲しい。
私達は真実を知っている。
常人には受け入れがたく、理解し得ない真実をね。
が、今話してきた言葉は真実に対し論理的と言い難い。
フフッ、ただのヒトの言葉だ。」
有と無の狭間。
それは、存在し得た会話。
突然だが、
おでは今、モニタの前で土下座をしている。
↓↓↓↓土下座開始
・・・約1分・・・
↑↑↑↑土下座終了
”おじさん向け”を掲げる以上、あれをやらなければならない。
終われない。
それは、ここでは何の脈絡も無い。
ストーリー的には裏切り行為だ。
だが、だがっ!!
昭和を裏切ることは出来ないっっ!!
おで、お、おでには出来なっっ!!!!!!
のっ!!がっっ!!たわっっ!!
う、うぐぐ。
では行きます。
競馬場。
夕日を背に立つTITANIO。
それを挟むように立つたろうとハナ。
白いツナギ着用。
たろう「じゃ、いっちょいくかぁ。」
ハナ「ええ!!」
隅っこにMAG-HF。
そのスピーカーから声。
やすひろ『勝利のポーズ!!』
たろう「ヤッター!!」
ハナ「ヤッター!!」
(後略)
十分です。
元号Sに不義理をせずに済みました。
ありがとうございました。