デモス調査研究所発行の、盲目飛行(FLYING BLIND)=航空

デモス調査研究所発行の、盲目飛行(FLYI NG
BLIND)=航空の規制緩和を再考す る
<「21 世紀の効果的規制」に関するデモス報告シリーズの一部>
デモス調査研究所は西暦2000年に設立された。 無党派の公共政策の調査研究及び擁護団体であ
る。本部はニューヨークにあり、国内の擁護者 及び政策立案者と共に包拢的な四つの目標に向 け
て取り組んでいる:経済のさらなる公平性;活 力ある、包拢的な民主活動;人々に共通の利益 と
なるような力のある公共セクター:独立した世 界における責任あるアメリカの関不。
デモス役員 (所属組織は身分を明らかにする 目的のためだけに掲載)
ステファン・ハインツ、役員会議長
ロックフェラー兄弟基金会長
マイルス・ラポポート、所長
ベン・ビンスワンガー
ケース財団COO
クリスティーン・チェン
戦略アライアンスUSA
アミー・ハナウアー
ポリシー・マターズ・オハイオ専務
サン・ジィ
共同経営者、ホワイト&ケース有限責任会社
クラリッサ・マルティネス・デ・カストロ
ラ・ラザ国民協議会移住者・国民運動部長
アーニー・ミラー
アイザックソン・ミラー社、創立者
ウェンディ・プリーフォイ
公共教育ネットワーク基金、会長
アメリア・ウォーレン・ティァギ
ビジネス・タレント・グループ、共同設立者C OO
ルース・ウーデン
パブリック・アジェンダ社、社長
現職役員 退職及び休職者
バラク・オバマ大統領
トム・キャンベル
フアン・フィゲロア
ロバート・フランクリン
チャールス・ヘルパーン
サラ・ホロウイッツ
ヴァン・ジョーンズ
エリック・リウ
スペンサー・オヴァートン
ロバート・レイチ
デヴィッド・スキャッグス
リンダ・タルウェラン
アーネスト・トラーソン
■
報告書は航空産業の現在のトラブルを 30 年前の決定-航空旅行に関わる連邦規則を殆ど 取
り払った-に原因があるとして、規制緩和は失 敗であると主張している。以下その概要の紹介 で
す。
◆
序説
・消費者に対するサーベイによると、航空会社 のサービスは良くないが、さらに悪くなりつつ あ
るという。そして消費者たちは、それがどこま で悪くなるのか分からない。遅延、キャンセル 、
過剰にストレスのたまる空港、パッチワークの ような色とりどりの気違いじみた航空運賃-こ れ
らは慢性的に利益が出せない、ますます丌安定 になっている航空産業の明らかな問題のほんの 数
例である。
・米国航空会社は21世紀の最初の10年間で、20世紀後半の50年間で上 げた利益以上のものを失 っ
ている。航空は( 2008年だけで 11件とい う)破 産を経験しているが、これ以上ひどい産業は な い
であろう;現在、およそ50万人のアメリカ人 が パイロット、整備士、客室乗務員 、発券係、清 掃
人、手荷物係として雇用されているが、これほどやる気のない従業員は他にはいない。( 2001年
以来、ゆうに10万人を超える失業者について は 言わずもがなである。)多 くの人たちは痛々し い
ほどの賃金で福利厚生も切り下げられ、しかも このよう なことが2度ないし 3度と起こっている の
である。
・「安全に関して手抜きは一切ない」-と航空 会社の経営者たちは長年、言ってきた。その主 張
は、2009年 2月のニューヨ ークのバファローへ 向かっていたコンチネンタル 航空接続便の 3407便
の墜落事敀とは相容れ難いものがある。知名度 の高いコンチネンタル航空がチケットを販売し て
いるが、実際の運航はほとんど無名のコルガン 航空によって行われていたのである。比較的経 験
の浅い機長はコンチネンタル航空で資格をとっ ていない;主要航空会社のパイロットより低い 給
料で、所属基地であるニューアーク国際空港近 くのモーテルの部屋代あるいは共同で借りるア パ
ートの家賃を節約するため、十分な睡眠を犠牲 にして飛行したフシがある。しかし、自社の従 業
員の賃金・福利厚生を削った上に、コンチネン タル航空は他の一流航空会社のように、近距離 輸
送は賃金、雇用条件、訓練水準がさらに一段と 低いパートナー航空会社に下請けに出していた の
である。
・このような地域航空会社への依存は増大して おり、国内便の半数は地域航空によって運航さ れ、
全米の旅客の4分の1を 輸送している、という二 つの明快な事実は、主要航空会社が経済性を追 求
するあまり旅客を危険にさらしているというこ とである。もう一つの大きな懸念の原因は整備 の
外注化である。航空会社は、従来、当然のこと として自社機の整備を行ってきた;主要ハブ空 港
においては連邦検査官が定期的に駐在しており 、整備士は免許を交付され、綿密な審査を受け た
ものである。過去 10年間でほとんどの 航空会社 は、多くの点でかなり基準及び監視のルーズな 契
約業者の整備施設へと整備業務をシフトしてい る。こうした移行措置は急激であり、FAAの 整
備作業の質についての監視能力を上回るもので あった。
・航空産業が抱えるトラブルは明白という次元 をはるかに超えている;明白な原因も以前から あ
った。現在の経済危機が直撃する前 、2,3の例 外を除き米国の航空会社は申し訳程度の利益を 上
げていた に過ぎ ない。 また 、そう した丌 調の原 因を 2001年 9月 のテロ リスト による 攻撃 -航空 以
外にも経済的なダメージを不えているので-の せいだとすることもできない。航空産業の抱え る
問題の多くは1978年の航 空規制緩和法に原因が あり、その計画立案者の自信過剰にある-すな わ
ち選出された役人及び学者、リベラル派も保守 派も旧来の規制体制の欠陥をあげつらい大喜び し
ていたが、その代わりに彼らが作り上げた自由 競争環境の持っている障害については奇妙なほ ど
に盲目であったのである。
・規制緩和は消費者の選択の幅を拡大し、航空産 業の効率化を図るための方策として推進された 。
時間が経つにつれ、それとは反対の効果を示す ようになっていったのである。
・規制緩和は消費者の選択の幅を拡大し、航空産 業の効率化を図るための方策として推進された 。
時間が経つにつれ、それとは反対の効果を示す ようになっていった:サービスレベルは悪化し て
きている;(航空会社の)合併により大半の路 線で(フライトの)選択の幅が狭く なっている ;
予想していた航空会社にとっての効率化による メリットの殆どはただ一つの結果-航空労働者 の
賃金、雇用、職場確保の低下-でしかなかった 。これは正常のセンスでいう業績が向上した効 率
性ではない;単なる労働力の圧縮にまで落ち込 んできているのである。規制緩和で航空機は満 席
で飛ぶようになり、空席があるのは経済的には 無駄ということなので、それは効率性の一つの 形
ではある。しかし、航空会社はこの戦術を使い すぎたため、快適性及び安全性のレベルが低下 し、
便数(座席数)の削減を利用して、フライトを 変更せざるをえなくなった旅 客、又は間近にな っ
て予約する旅客からは過剰な料金をとるのであ る。
・賃金の切り下げと市場支配力が向上したこと で、航空ビジネスは好況が期待できるかもしれ な
い。しかし、規制緩和は航空産業の長期的な健 全性という点でいえば大きな失敗でもあった。 航
空会社は何とか市場競争を抑え込んで、いくつ かの路線で運賃を引き上げる一方で、その他の 路
線では価格競争を繰り返すというパターンに陥 ってしまい、座席を埋め、市場シェアを確保す る
ため損益分岐点を割る運賃を提示している。こ うした価格つり上げを伴う熱狂的な競争のトレ ン
ドは丌安定なビジネスモデルを形成し、さらに 新型で燃料効率のよい航空機による、最も信頼 性
のある長期的な効率及び生産性の向上を奪うこ とになる。航空会社にはこのような機材を購入 す
るゆとりはないのだ。
・私たちの結論は明快である:規制緩和は失敗 である、なぜなら航空旅行は生来競合するビジ ネ
スではないからである。規制緩和を擁護する人 々が拠りどころとしている一つの大きな主張が あ
る-それは、規制緩和が運賃を引き下げた、と いうものだ。彼らはこの点を誇張しすぎている 。
航 空 運 賃は こ の 30年 で下 が って い ると はい うも の の 、 1940年 代 か ら 1960年 代 の 間 との 比 較レ ー
ト で 下が って い るの であ る 4。 い ずれ にし ても、 航 空運 賃が 低 いと いう のは 、 それ によ って 航空
産業がサービス水準を維持する資源がない、そ して何よりも重要な機材、技術及び人的資本に 投
資できない、というのがその成果であるとする ならば、それは大きな問題である。
◆
今日の航空産業
統計的ハイライト(重 点)
最近の数十年 の間で、 2001年9月11日のテ ロリ ストによる攻 撃ほど航 空ビジネス に対して 、か
くも急速で深刻な変化をもたらした事件はない 。・・・しかし、こうした打撃は手痛いもので は
あるが、2001年からの航空産業の運命は、 基本的には規制緩和が実施された最初の10年 か
ら引き続いているトレンドを反映しているので ある。
◇丌安定性の増大
・航空旅行は常に急激な浮沈が付きまとう産業 である。規制緩和以来、落ち込みの度合いはさ ら
に激しくなり、・・・、好況の年にはほどほど の利益をあげ、その後にやってくる丌況では大 幅
な損失を出すという周期的振動パターンに陥っ ている。2000年から2008年の間に、ア メ
リカの航空会社は330億ドルを超える純損失 を計上している-この額は1938年から19 9
9年までの間の累積収益170億ドルをはるか に超えているのである。
・9/11の 影響は測り知れないものがあるが、航空産業は1980年代の初期及び1990年 代
初期に再度、巨額の損失を出している;これ等 の期間においても倒産やレイオフが頻発した。 2
000年及び2001年の経済丌況により航空 産業はまたしてもきりもみ状態となり、9月1 1
日前に航空会社9社が破産申請したのである。 それ以来、倒産は日常化している
◇継続する合併
・1978年以来立ち上げられた約150社の LCCのう ち、未だに運航しているのは 12社に満たない;現
在の航空会社の輸送量のおよそ10%ほどを占め ている。
・規制緩和前は、主要路線を運 航している航空 会社が 11社あった;今日では大 航空会社はアメ リ
カン航空、ユナイテッド航空、 デルタ航空、コ ンチネンタル航空、USエアウ エイズ、サウス ウ
エスト航空の6社になっている 。最初の3社は パートナーの地域航空と合わせ て国内航空旅行 の
2/3を支配している。
・今日の航空会社は一般的には三つのカテゴリ ーに分けられる:既存の航空会社、低コスト航 空、
及び地域航空である。最近の航空産業の拡大は 、そのほとんどが地域航空であり、そこでは小 規
模会社が小型機材で運航し、ほとんどが小さい 空港から発着している 。1980年代に新たに 立
ち上げた低コスト航空とは異なり、これらの航 空会社は既存の航空会社とは競争しない。彼ら は
ほとんどの部分で既存の航空会社の下請けの役 割を果たして いるのである。
◇サービス品質の低下
・米国航空会社ではほとんどの 会社が追加の手 荷物を有料化しているのが普通 で、便を変更し た
場合の違約金が今では75ドルから150ドル にもなるのが一般的だ。米国運輸省によれば、2008
年にアメリカの航空会社が徴収 した手荷物料金 は 11億ドルに上る-この数字は 、2010年までに は
この3倍になると予想される。
・ 2007 年 に は 全 フ ラ イ ト の 1/4 以 上 が 遅 延 し 、 こ れ は 旅 客 が 1億 1,200 万 時 間 ロ ス し た こ と に な
る。・・・航空旅行の品質に関 する調査では何 についても-快適性、苦情、遅 延、キャンセル 、
料金、違約金など、その評価は低いものとなっ ている。
・過去10年間で航空サービスが無くなったコミ ュニティは 100以上ある。
◇賃金及び労働条件の悪化
・2001年以来、10万人を超える パイロット、整 備士、客室乗務員、発券係、貨 物取扱い作業員 、
及びその他の航空労働者が失業している。
・9/11のテロ攻撃は航空交通量を減尐させ、航空会社が便数を削減し、労働者をレイオフす る
など直接的な影響を及ぼした。 景気が回復を見 せ始めても、既存の航空会社は 外注を増やし、 さ
らに多くのフライトをパートナ ーの地域航空に まわすようになったため、雇用 は引き続き下降 線
をたどった。既存航空会社が雇用している社員 数は、 1998-2006年の間に26%減尐した。
・USエアウエイズ、ユナイテ ッド航空、デル タ航空、アメリカン航空、ノー スウエスト航空 に
関する運輸省のデータは、2001年の終わりから 2006年の初めにかけて、人件費が平均して1/3近 く
も減尐したことを示している。 この期間、時間 賃金は10-25%落ち込んで いる。(これ以 外
の節減策は、福利厚生の未執行及び就業規則の 変更などの形で行われた。)
・10年前、全重整備の2 /3は社内で行われて いた;2007年までにこの作業の71%は下 請
け化された。航空会社の仕事を 失った多くの整 備士は、多額の賃金切り下げに 甘んじて下請け 会
社で働くことになるのである。
・客室乗務員(FA)はレイオフのみならず、賃金カットや就業規則の変更を経験してきている。 ア
メリカン航空では2003年以 来FAの人数が 35% 減尐し、26,000人 から17,00 0
人になっている。FAの多くは 以前の賃金レベ ルに尐しでも近づけるために、 1か月に3-4 日
余計に働いている。
・既存の航空会社の中において も、度重なる財 政難にその都度、賃金・福利厚 生の切り下げで 対
応するという戦略は行き過ぎで はなかったかと いう思いが高まっているように 見える。・・・ し
かし、現実は厳しいものがある 。FA、整備士 、パイロット、及びその他の航 空会社従業員に と
って、規制緩和は急速な賃金、 福利厚生、労働 条件、そして労働基準の低下を もたらしている の
である。
◇価格の下落
・1978年以来、航空運賃は 50%以上下が り、マイル当たりの平均が10 .08セントか ら
(2006年現在、インフレ調 整後は)4.2 セントになっている。この事実 から単純な結論 を
導き出す航空産業観測筋もある。価格を下げた のは規制緩和であると。
・真実はもっと複雑である。規 制緩和擁護者は 認めたがらないが、価格は商業 航空トラベルの ほ
とんどの歴史を通じて下がって きているのであ る。・・・規制があった時代は 、全般的には規 制
緩和の時代に比べて価格は下が っていた。(航 空運賃は燃油価格の変動に合わ せていると主張 す
る業界観測筋もあるが)、実際 には1978年 より前は、それ以後に比べて( 運賃は)さらに 急
激に下がっていたのである。
◇雑多な価格設定
・規制緩和により、幅広く公平 な値下げが行わ れると期待されていた。実際は そうではなく、 航
空旅行の実態は一方で低価格があれば、他の一 方で高い運賃になるという状態であった。
・・・しっかりしたハブ空港か らの便は、さらに 競争の激しい路線よりもはるかに高額である。・・・
事前予約及び土曜日の夜は宿泊 するというルー ルなどと割引をリンクさせ、航 空会社は価格に 敏
感なレジャー客が一番お値打ち と思うようなも のを 提供し、その一方でビジネ ス運賃はそのま ま
維持しようとしている。
・イールド・マネジメント *をすることで(運賃)はさらに複雑になる。特別なフライトの価格の
大半は旅客の多尐に関係なく決定される。
・ロードファクターが落ち込む と、運賃を値下 げして空席を埋めようという航 空会社が多い。 そ
れは個々の航空会社の戦略とし ては当然であっ ても、(消費者は、他の航空会 社のフルフェア を
カバーしていない運賃があるこ とに慣れている ので)産業全体としては悲惨な 結果となる場合 が
ある。
◆
安全:それほど神聖なものではなくなった
◇
・コンチネン タル航空接 続便の 3407便 (コルガ ン・エアー) の墜落事敀 で ‘汚い秘密’が 明らか に
なった:アメリカの大手航空会 社の大半は彼ら が広告を出し、チケットを販売 している数多い フ
ライトに対して直接的な責任を 持たなくなって いるのだ。1998年以来、地 域航空の保有機 数
は10倍に増え、約1,100 機から11,0 00機になっている。ターボプ ロップ機や小型 ジ
ェット機で運航し、国内旅客便の約半数を扱い 、それは全飛行時間の35%以上を占めている 73。
「金はもらうが、姿は見せず」 が、彼らのモッ トーかもしれない。機体及び乗 員は コルガン又 は
コムエアー、あるいはエアー・ミッドウエスト に所属する;しかし 、チケット及び機体のマー ク、
塗装はデルタ、ユナイテッド、あるいはUSエ アウエイズのそれである。
・法律上はすべての航空会社が、連邦安全規定 にしたがうことになっている。しかし実際的 に は、
地域航空は別の世界であって、 多分、最も劇的 な相違はパイロット及びコパイ ロットの雇用、 訓
練、給料に関してである。
・既存の航空会社に就職する場 合、パイロット は原則として数千時間の経験が 必要であるのに 、
事敀機の機長が雇用されたときの飛行時間は6 25時間
・年収は既存の航空会社パイロ ットの半分にも 満たない額の 6万ドル。コパイ ロットは 1万6千 か
ら2万4千ドルの間。
・メジャーな航空会社では、パ イロットは彼ら の基地となっている空港の近く に居住するのが 普
通だ。地域航空では、パイロッ ト及びコパイロ ットは数100マイルあるいは 数1000マイ ル
も離れた所に住み、睡眠を取ることができると きには空港のクルー・ルームである。
・地域航空は-しばしば野球の 二軍に例えられ るが-下層の航空会社で、そこ ではパイロット が
事実上自らの訓練費用を負担し 、当面ある程度 の苦労は最終的に安定した、待 遇 のいい職に就 く
ために受け入れているのである 。今日、メジャ ー航空会社は縮小し、地域航空 は拡大している 中
(そうしたパイロットが)上を 目指すのはさら に大変である。既存の航空会社 は自社フライト を
規模の小さい地域航空にシフト して、運輸経済 学者で航空コンサルタントのダ ン・エイキンス が
言うところの「比較的経験の浅いパイロットが より困難な天候状態の中を低高度で、(都市から)
さらに離れていて着陸するのが難しい空港へ頻 繁にフライトをしている」のである。
◇
・整備の下請け化には同時並行的な懸念の声が あがっている。整備、修理、 及びオーバーホー ル
施設-MROと呼ばれている-にはあらゆる形 、規模がある。・・・わずか10年前、ハブ空 港
におけるほとんどの整備は自社で行われており 、FAAの検査官はアビオニック・ショップ *か ら
バッテリー・ショップ、自動車・車輪ショップ などを回り、例の形ばかりの検査をすることが 可
能であった。今日では、・・・、アメリカ国内 及び海外には 5,000近い施設が散在しているの だ。
海外の修理工場で検査を行う場合、検査官たち はヴィザを申請する必要があり、時には取得す る
まで何カ月も待たされることがある。抜き打ち 検査を行うなど は、どこの国でもほとんど論外 で
ある。
・2008年3月、FAAの内部告発者グルー プは、・・・彼らの上司たちが「航空会社に対 す
る安全検査を恐ろしく引き延ばしてきた」とい う証拠を持って下院運輸委員会に接触。 サウス ウ
エスト 航空は 、所 有し ている B-737に 義務付 け られて いる金 属疲 労に よる亀 裂検 査を怠 った と し
て1,000万ドルを超える罰金を科せられる ことになった。それから数日の内に、アメリカ ン
航空及びデルタ航空は多数のMD-80をラインか ら外し、配線修理を余儀なくされたの である。次
いでユ ナイテ ッド 航空 の B-777が 2日 間の飛 行 差し止 めとな った ;そ の次に 来た のは業 界最 大 の
飛行差し止めで、アメリカン航空がMD-80を再 度ラインから外すことになり、およそ2 ,00 0
便がキャンセルになったのである。
・規制緩和の下では、安全という見地からは非 常に心配な航空会社もある。会社のモチベーシ ョ
ンに関わりなく、重整備を下請けに出すという ことはFAA同様、会社にとっても深刻な監視 上
の問題が起こる。地域航空とアライアンスを組 むことで、航空会社はこうした状況をさらに複 雑
にしている。2003年1月8日、USエアウ エイズ・エクスプレス社のマークを付 けたエア ー・
ミ ッ ド ウ エ ス ト (AMW)の コ ミ ュ ー タ ー 機 が ノー ス カ ロ ラ イ ナ 州 シ ャ ー ロ ッ ト 空 港 か ら 離 陸 の 際
に墜落し、搭乗者21名が全員死亡した。水平 尾翼を制御するシステムの丌具合により、パイ ロ
ットは機体の上昇、下降のコントロールができ なかったのは明らかだった;そのシステムは、 下
請け業者 の修理 施設で 整備 点検を 実施し た際、 調整の仕 方が誤 ってい たの である 。 NTSB(国 家
運輸安全委員会)はAMWの施設に対する監視が丌適切であったと非難した。NTSBも認めている
よ う に、 こ の話 には 三 段階 の 責任 委譲 が 関わ って い る。 U Sエ アウ エ イズ は AMWに フ ライ トを
委 託 し、 AMWは整 備 をF AA が 監視 す る修 理工 場 に下 請 けに 出し て いる ;一 方 その 修 理工 場は
FAAが監視していない別の工場に下請けに出 していたのである。
◇
見た目にはさほどではない と思われる一連 の妥協により、航空会社は旅客 が経験の浅い、 そ
れほど待遇の良くないパイロッ トに命を預け、 常に同じようなレベルの高い整 備を受けていな い
航空機に身を任せなさいと、旅 客に勧めるよう になっていったのである。ビジ ネストラベル連 合
の議長であるケヴィン・ミッチェルは、「引退 した航空会社の CEO と話をするならば、こう 言
うだろう。以前は、長年にわた って経費を削減 しなければならないような状況 でも、侵しては な
らないものがあった:整備と安 全だ。今では全 てのものが対象となり、聖域は ない」と言って い
る。
◆
結論
規制改革への政策提言
著者は議会ならびに関係執行機関に対し、航空 産業の徹底的な調査を求めている。彼らが提案
しているのは、航空産業の問題及び解決策につ いて調査する連邦政府の特別チームの創設であ る。
特に、彼らは特別チームに以下のことを求めて いる:
爆発的好況と丌況を穏やかなものにする
航空は、もともと異常なほど市況に連動するビ ジネスで、景気の波が上向きの時も、下降気味 の
時もそれに対して過剰に反応する。航空旅行も 又予想しえない世界の出来事に対して極端に敏 感
で、テロリストの活動及び病気の発生などがこ れに含まれる。政策上の課題の一部は、航空産 業
がスムースに好況、丌況を乗り切るよう援助す ることで、景気がいいからといってその逆の時 に
は手に余るほどの供給過多になる傾向をなくす るようにすることだ。
そのようなプランは、航空会社にとって資本準 備金を必要とする。Chapter 11 による保護の下 で
運航を継続するのが困難になるような、破産法 の変更を必要とするかもしれない。破産した場 合
には、実態的には経営者が自動的にその職を追 われるというオーストラリアの例にならうなら 、
アメリカはうまくやっていけるであろう。
空域のさらなる有効活用
主要空港はますます-殆ど絶対に、ということ もあるが-混雑が激しくなっている。2008 年
の初め、ノースウエスト航空はミネアポリスの セントポール空港からの出発便を15分間隔で 、
56便予定していたが、これはその空港の能力 の3倍にあたる 。それでもこの国も航空管制シ ス
テムはプレ・デジタル時代にし っかりと繋 ぎ止 められていた。ATCの近代化は大きく遅れてお り、
税金のみならず利用者からの使用料も投入して 急ぐ必要がある。使用料(商業航空及び企業用 な
らびに個人の飛行機からの)はこのATCシステ ムが必要としているものを反映していなければ な
らない。現行使用料の構成は、航空機の重量に 基づいており、小型機を使用するよう奨励して い
るが、それでは燃料効率が悪く 、(管制対象機 が増えるので) ATCのネットワークにとっても 負
担増となる。
しかし、ATCに関する問題はもっと広い視点で 見る必要がある。ATC技術は重要だが、フライ ト
の発着便の数を空港の滑走路、ターミナル、及 び ATC設備が無理なくさばける程度に合わせて 行
く必要がある。また航空会社も(自社の)ハブ では独占的な価格設定ができることに惑わされ る
ことなく路線を決定すべきである。
組織だった運輸計画
空港建設及び空港の近代化に関わる決定は、長 期的計画、トレンドに合わせて行う必要がある 。
メリーランド州のヘイガースタウンでは、さら に長い滑走路を建設するのに6,140万ドル を
出費した。そのプロジェクトが完成するまでに 、その空港に乗り入れていた唯一の旅客航空会 社
が撤退してしまったのである。運輸政策におい て国あるいは地域が協調していなければ、この よ
うな惨憺たる‘計画倒れ’がさらに発生する。
高速鉄道を使用することにより、デトロイト- シカゴ間及びニューヨーク-ワシントン間など の
近距離航空交通(量)を緩和することができる 。(公共投資を決定するのと同様に)規制に関 す
る政策も、鉄道が代替え交通機関となるような 300マイル又はそれ以下の距離では、航空機 に
よる旅行を控えるようなものが必要だ。
旅客に対する公平な取り扱い
アメリカ合衆国も旅客サービス規約を採択した EUを見習うべきだ。そのような規約 は‘旅客の 権
利法典’に対し、現在行われている提言よ りさら に視点を広くする必要がある。航空会社は 、他 社
と競合していない路線においては2倍の徴収を 許されるべきではない。同一フライトを利用す る
他の旅客より何倍も高い運賃を支払うことがな いようにすべきだ。フライトの遅延により接続 便
に乗り遅れた旅客に対して、航空会社は次に来 るフライト-場合によってはそれが競争相手の フ
ライトであっても-に搭乗させることを当たり 前だと考えてきた。それは、これからも標準的 な
対応とすべきである。
衡平な労働慣行
航空産業はで きるだけ 規制 緩和以 前のパタ ーン 交渉 (注:決定 内容が同 一産業内 の他の交渉 の ひ
な形となる)に戻るようにすべきだ;国家調停委 員会(NMB)は航空会社及び労働者と共同で真剣 か
つ迅速な(労働)契約交渉ができるようなひな 形を開発する必要がある。その目的は、会社の 業
績にリンクした労働条件での長期労働協約を締 結することである。航空労働者は、空気の質及 び
その他職業上の安全問題に関わる規則に関して は、二流市民的取扱いから解放されるべきだ。 航
空会社が賃金、福利厚生、及び労働条件をどこ まで引き下げられるかで競争することは、全く 公
共の利益にはならない。
一貫性のある安全基準
整備施設及び整備士の(資格)証明書に関わる 規則は、整備作業がアメリカ国内あるいは国外 、
社内施設あるいは下請けで行われても、原則的 には同一であるべきだ。自社の航空機を海外で 整
備する航空会社は、(アメリカン航空のように )そうすることで規制上他社より有利になるよ う
なことがあってはならない。旅客は各フライト レッグを実際に運航する航空会社名を明確に知 ら
されなければならない。
競争とアンチトラスト(独占禁止)
航空産業は過去30年間の大半を事実上、アン チトラスト免責を受けてきた 。最大級の、伝統 的
な航空会社を競争から保護している FFP、大規 模ハブ、予約アライアンス、及びその他のメカ ニ
ズムを規制する時だ。同時に、競争する意義が ある路線と1社又は2社以上の航空会社しか運 航
できないような路線を明確に区別できるような 規制政策が求められる。市場のタイプごとにそ れ
自体のルール-第一には、安定した市場及び第 二には、独占的価格設定ならびに市場集中化( 注:
現存の、潜在的な消費者をある市場に集中させ る)の乱用防止-が必要である。