資料2 明石市水産業振興計画策定業務 第2回委員会 資料 ~ 明石市水産業の現状・課題・対応方向について ~ 平成22年10月7日 株式会社 水 土 舎 明石市の漁業生産の現状と課題 (1) 漁業生産力等 漁業生産面における課題と対応方向 ・明石市内 5 漁協の組合員の合計数はやや減少傾向(図1)。 ・漁業就業者の平均年齢は 52.3 歳と全国平均に比べて若い(表1、図2)。 ・「ノリ養殖業」+「底びき網 or 刺網 or 一本釣 or 船びき網」が主な操業パターン。数名の協業体で営むケースが多い。 → ノリ養殖による比較的安定した収入が経営基盤を支えている。しかし、ここ数年は・・・ 明石市では、20~40 代の漁業就業者も多く、現状から判断すると、将来的にも 安定した漁業生産力が維持される可能性が高いと予測される。しかし、近年のノリ の色落ち問題によりノリ価格の低迷が続いており、これまで経営基盤を支えてきた ・変動性の強い船曳網漁獲物(イカナゴ、シラス)を除くと、漁船漁業の漁業生産量・金額は比較的安定している(図3)。 ノリ養殖からの収入が減少しつつあり、こうした状況が続くと、安定した漁家経営 ・ノリ(養殖)の生産量は全国の約 6%、県全体の約 40%を占める。 は妨げられることになる。 明石市の漁業生産力を維持するためには、労働に見合った漁業所得の確保が大前 (2) 資源および漁場環境の保全・改善・管理 提となる。そのためには、(1)生産量の維持・増大、(2)魚価の向上、(3)漁業経費 ①水産資源環境の保全、改善に関する取り組み ・資源回復計画の推進(サワラほか)、昼市委員会等による自主的な資源管理(小型魚のリリース等) ・ヒラメ、マコガレイ、オニオコゼなどの種苗放流、マダコ増殖事業(産卵用タコ壺の投入) ・禁漁区(イカ産卵場、稚魚育成漁場)の設定と管理 の削減が重要な課題である。 (1)生産量の維持・増大 明石市では様々な資源および漁場環境の保全・改善対策が実施されている。これ ②漁場整備、開発に関する取り組み ・魚礁設置、増殖場造成(魚礁・増殖場・投石) :「鹿ノ瀬漁場開発事業」※漁業としての利用度は低い ・海底耕耘の実施 ら取り組みを維持・強化することで、明石市全体としての漁業生産量の維持・増大 を実現する。 ①資源の適正な管理と利用 ③ノリの色落ち問題の解決に関する取り組み ・アサリの放流:ナルトビエイの捕食により効果は? → ナルトビエイによる食害対策 ・施肥ロープ・散布:補助金を活用して実施 ②漁場環境の保全・改善(魚礁・増殖場の整備、海底耕耘など) ③未利用・低利用資源の活用 (2)魚価の向上 漁業収入の維持・増大を実現するには、資源管理等の観点から今後急激な生産量 (3) 漁獲物の品質管理 ・明石もの(特に活魚)は品質面での評価が極めて高い(図4)。一方で、地域によるばらつきを指摘する仲買業者もいる。 ・ノリ養殖については、平成以降、色落ち問題が発生。施肥等の対策が実施されるが、費用面から根本的な解決には至ってい ない の増大は望めないことから、魚価の向上が不可欠。一方、ここ数年主要な魚種(タ イ、スズキ、サワラ類、ノリなど)において魚価が低下している。産地段階での品 質管理を強化することで、明石ものの付加価値の維持・向上を図る。 ①産地段階での漁獲物の品質管理 ②ノリの色落ち問題の解決 (4) 漁業施設 ・新たに必要な施設はみあたらないが、ノリ加工施設、ノリ網保管用冷凍施設等の老朽化が著しい。 ※魚価の向上については、販売・流通対策が重要であるが、これについては「販 売・流通面における対応方向」に示す。 → 自動乾燥機、刈り取り船の導入支援 (3)漁業経費の削減 明石市の場合、協業化による効率的な漁業運営が既に実施されていることから、 (5) 漁家経営 ・魚価低迷により漁業の収益性が低下 → ノリ養殖業に対する水道料金補助を実施 ・収入の不安定性・・・全国平均を下回る共済加入率(ノリ養殖業を除く)(表2) 【漁獲共済加入率】兵庫県:57.1% 全都道府県平均:64.3% ※特定養殖共済(ノリ養殖)の加入率:92.6% 経費削減の対策は限られる。 ①省エネ対応型漁具への転換等による漁業経費削減 (4)漁業経営安定対策 漁業経営の安定対策として漁業共済への加入を推進する。 (6) 漁協経営 ・明らかに構造的な赤字体質に陥っている漁協はないが、魚価の低迷は漁協経営にもダメージ。 (7) 未利用・低利用資源 明石市漁業が目指す姿(案) 高品質な水産物の安定供給と ・人工魚礁にメバル等が蝟集しているが、漁網が傷むこと、魚価が安いことから、あまり漁獲されていない。 ・旬(春)以外のアイナメは価格が安く、あまり漁獲されていない。(図5) 責任ある漁場管理の確立 明石市の水産物流通の現状と課題 (1) 産地での販売体制 水産物流通面における課題と対応方向 ・明石浦:市場開設(昼市) ※活魚販売に特化。近隣市場より多少高価格(表3) ・他 4 漁協では、一部漁協共同出荷や仲買業者への相対販売があるが、大半は個人出荷(明石市場、神戸市場) 明石市の漁業者が水揚げする漁獲物(ノリを除く)は、漁協の運営する産地市場(明 ・タコについては業者固定で相対販売 → 「言い値」で販売 石浦市場)を介して流通するルートと、漁業者が直接明石市公設市場に持ち込むルー ・船曳網漁獲物(イカナゴ、シラス)は淡路、和歌山の加工業者への生売り主体。イカナゴは一部くぎ煮向けの生需要が増大。 トに大別される。この他、漁協による共同出荷も一部みられる。公設市場は、現状 ・明石浦漁協ではミルクイ、タイラギ等の買取販売を実施 → 「買い支え効果」 の取扱実態をみるかぎり消費地市場的な性格が強い。明石ものを取り扱うことで神 ・林崎漁協では H21 年度に活ダコの共同出荷(東京、名古屋)を実施するが、定着はしていない。 戸市場等との差別化を図っているが、取扱量は近年急激に縮小している。明石浦お ・ノリは全量漁連共販 → 高級品(贈答品)需要の縮小により価格は下落基調。 よび公設市場の機能・役割を明確化し、産地流通構造を再検討する必要がある。 また、小売段階では、全国的な傾向同様に量販店が主体となりつつあり、魚の棚 商店街に代表される鮮魚小売店の「市民の台所」的な位置づけが低下している。ま (2) 明石公設市場 ・H21 年度の鮮魚取扱は 6,223t(うち、漁師物 657t)、10 年間で 42%減少(図7)。※鮮魚の取扱量は神戸市場の約 1/6 の水準 た、量販店ではタコとタイ、イカナゴ以外の明石ものはほとんど店頭に並ばず、市 ・愛媛県・高知県(養殖タイ・養殖ブリ)、北海道・宮城県(サンマ等)からの移入魚が 75%。漁師物(淡路~姫路)は約 10%(図8)。 民の明石ものの購入機会が減少しているという課題もある。 ・仲買業者数の減少(H12 年 27 社→H22 年 22 社) 。 一方、明石ものの魚価向上のためには、域外出荷も重要である。タイ、タコをは ・多くの仲買業者がスーパー納めの比率を拡張 → セリ取引割合の低下(図9) → 品質評価の機能低下 じめ、関西における明石ものの評価は高い。しかし、高級魚の需要が停滞している ・公設市場を経由する明石産の遠方(関東方面)出荷はあまり多くない(参考:表4)。 → 大量入荷時の値崩れの原因 状況下において、従来のような高価格はなかなか期待できない。市場規模の拡大と ともに、品質主導の販売戦略を継続し、ブランド価値を維持することが重要である。 (3) 産地加工機能 ・地元加工はボイルタコ程度で、近年はサンマの加工が主。→ 地元漁獲物への原料依存度が低い (1)産地における市場の二重構造の解消 漁協市場と公設市場の協力関係を構築し、二重構造による非効率を解消する。 原因:水揚量、仕入価格が不安定 ①効率的な産地販売体制の構築 → 漁協間の販売事業連携 ②明石市公設市場における地魚販売力の強化 (4) 小売業の現状 ・鮮魚小売店の減少と量販店の発展 ※全国統計では水産物の約 80%はスーパーで購入されている。 ・量販店では移入ものを主体とする品揃え。タイとタコ以外の地魚は市内スーパーではほとんど売っていない。(表5) ・魚の棚商店街(鮮魚店 約 10 店舗)が明石の魚(主に丸もの)を販売。 明石の昼網の魚を売ることでスーパーと差別化を図るが、 地元外客(観光客、県外業務筋)の比率が高まっている。 →「市民の台所」的な位置づけの低下 (2)域内流通(明石市内)の再構築 絶対量の不足する明石市民が手軽に地魚を購入する窓口を増やし、地魚の地産地 消の推進を図る。 ①地産地消対策 ②地魚加工の強化 ③直売事業の継続・拡充 (5) 漁協の直売事業 ・明石浦漁協では、漁協が移動販売所を所有し地魚販売を実施 明石市内JA:火~土曜日、しあわせの村:毎週日曜日 ・6~8 月に、漁業者有志が月 1 イベントとして「漁師魚市」を実施 鮮魚(タコ、タイ、アジ、サバ等)の販売、女性部によるタコ飯・タイ飯の無料提供 (3)明石ブランドを活用した付加価値の実現(広域流通) 明石ブランドを PR し、市場を拡充するとともに、品質主導の販売戦略を継続し、 明石もの全体の付加価値の底上げを図る。 ①品質主導の販売戦略の継続 ②明石ブランドの PR と保全 → 価格主導の販売を回避が実現(生産者による価格形成) 明石市の水産物流通が目指す姿(案) (6) 明石ブランド ・明石タイ、明石タコ、明石ノリなどの地域ブランドが定着。全国的に知名度が高い。 ・タコは兵庫県平均より単価が高いが、タイは近年付加価値が縮小(図4)・・・獲れすぎ? 仲買業者の買受能力の低下? 消費者視点による水産物販売体制の構築と 明石ブランドの保全 明石市の水産物消費の現状と課題 (1) 魚の消費嗜好 水産物消費面における課題と対応方向 ・全国的な傾向として若い世代を中心に魚離れが進行(表6、図 10) → 地元小学生を対象に市場見学を実施し、明石の魚に対する愛着心を刺激 但し、市場見学の時間が取引終了後に設定されているため、実際の取引実態が見学できず、効果は? (2) 魚食文化 ・魚の食べ方が分からない・・・ → 明石浦漁協婦人部、県漁連、コープこうべなどの連携による「イカナゴくぎ煮」文化の創造 漁協女性部連合会による料理講習会(いずみ会、小中学校)、おさかな普及協会による魚の捌き方等の講習会(市内高校生) (3) 社会的背景 ・女性の社会進出、核家族化の進行(世帯人数の減少)により、外食の増加(表7)、家庭内での調理時間が短縮、ゴミの有料化 → 調理しやすく、ゴミの出にくい手軽な食材が好まれる(食の簡便化嗜好) 全国的に若い世帯を中心とする「魚離れ」が進行しつつある。その背景には、肉 食主体の欧米型食文化の定着・広まりがあるが、女性の社会進出や核家族化の進行 等の社会的背景の変化による影響も大きい。 明石市では、古くから魚の消費推進による町の活性化が進められ、明石市公設 市場の市場関係者で組織された「明石おさかな普及協議会」が日本人の体質にあ った米飯・魚食主体の食生活を推進、また、近年では、漁協女性部連合会が市内 小中学生や婦人団体を対象に、地魚を使った料理講習会を実施するなど、魚食普 及に努めている。20 年程前には、明石浦漁協婦人部や県漁連、コープこうべ等 が連携し、「イカナゴくぎ煮」文化を創造したという実績もある。こうした取り 組みは継続することが課題であり、そのためには明石市の支援が必要となる。 今後も、地元の水産物を地元で消費する「地産地消」を推進し、明石市民の豊か な食生活の実現と、 「魚の街」としての魚に対する市民のプライドを刺激することに よる地元水産物の消費拡大が求められる。 また、消費者ニーズの創出とライフスタイルにあった魚食普及も重要な課題であ る。生産者、漁協、市場関係者等が協力し、現代のライフスタイルにあった簡便な 調理方法を提案すること、地魚商品を開発することも明石市民への魚食普及に重要 水産業に関わるその他の現状 (1) 海岸清掃活動 ・漁協の女性部が中心となり、月1回の海岸清掃活動を実施 である。 (1) 魚食文化の継承・創出と子供たちの漁業への関心向上 イカナゴくぎ煮を特産品として定着させた経験を活かし、新たな地域固有の魚食 文化を創出する。また、次世代を担う子供たちを対象に、明石市が誇る魚への愛着 心を刺激する体験教育プログラムを実施する。 地域の活力を醸成するには、青年組織や女性組織による活発な活動が必要であり、その継続においては明石市 ①地域固有の魚食文化の継承・創出 の支援が求められる。また、海岸清掃活動等においては漁業者のみならず、市民がその活動に参加し、浜の環境 ②漁業体験・見学、市場見学の実施 を守る意識を市民が個々に持つことが重要である。 (2)ライフスタイルにあった魚食普及 「食の簡便化嗜好」にマッチした調理方法の提案や商品開発を行い、現代のライ フスタイルにあった魚食普及を実行する。 (2) 海洋レジャー ・都市近郊かつ資源が豊かであることからプレジャー船が多く、漁船との衝突、トラブルが多発している。 効率的な漁業活動や漁業者の安全操業において、プレジャー船とのトラブル回避は重要な課題の一つである。 プレジャー船の組織化を促進するとともに、明石市が調整役となり、両者による海面の利用秩序を整理し、レジ ャー客のモラルの形成にも積極的な役割を果たす必要がある。 ①地魚を活用した簡便な調理方法の提供 ②調理しやすく、ゴミの出にくい商品の開発 明石市市民が目指す姿(案) 「魚の町」に住む明石市市民のプライドの構築
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