米国 IT 業界動向 2005 年 10 月 JETRO, New York 1. 企業動向 (1)アップルコンピュータ アップルは韓国サムスン電子と進めていた 38 億ドル規模の NAND 型フラッシュメモリ製 造の共同投資計画から撤退した。同社は、人気携帯楽曲プレーヤの最新版「i ポッド・ナ ノ」にフラッシュメモリを採用している。【10 月 17 日】 一方、アップルは、動画を視聴できる i ポッドを発表した。製品は 60 ギガバイト版と 30 ギガバイト版の2種類。価格は 399 ドルおよび 299 ドル。さらに、ネット楽曲配信サービス 「i チューンズ・ミュージック・ストア」も刷新し、2000 本に上る音楽ビデオを配信する。 動画配信サービスへの移行を進めるアップルは、コンテンツ配信業者との提携も強化し ている。例えば、メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニーの契約では、ディズニー傘下 ABC テレビの人気番組の配信を開始。番組は放送日の翌日に購入でき、価格が1本1ドル 99 セントとなっている。利用者は i チューンズで購入した後に、パソコン上や i ポッドに転 送して視聴できる。アップルとディズニーの提携は、「旧メディア」のビジネスモデルを 揺るがす試みと考えられている。 同社はまた、デスクトップ・パソコン「i マック G5」の最新版を発表した。同機種では、 デジタル楽曲や DVD などをリモコンで遠隔操作できるほか、TV 会議用カメラを標準搭載 しているのが特長。1.9 ギガヘルツのプロセッサを搭載した 17 インチディスプレイ型の価格 は 1299 ドル。一方、2.1 ギガヘルツの 20 インチ型が 1699 ドルとなっている。 アップルの第4四半期(7−9月)の決算は、大幅な増益となった。同四半期の i ポッド 販売台数は、前年同期の 200 万台から 650 万台に急増し、関連売上高は前年同期比で 2.3 倍 の 12 億 1000 万ドル。 さらに、i ポッド人気を受けて、本業のパソコン事業も好調。出荷台数は同比 48%増の 123 万台に、同事業の売上高は 31%増の 16 億 1000 万ドルだった。【10 月 14 日】 好調な業績が続くアップルだが、新楽曲プレーヤ「i ポッド・ナノ」に対する不満も出て いる。アップルのオンライン掲示板に寄せられている苦情によると、同製品のスクリーン は傷がつきやすく、画面表示に異常が表れるという。 これに対して、アップルは、原因は製造過程での問題であり、不良品の割合はこれまで 販売した製品のうち 0.1%以下であることを強調している。ユーザーの苦情を受けて、同社 は、破損品について無償交換を行うことも明らかにしている。【9 月 28 日、30 日】 スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は9月、インテル製プロセッサを搭載し たパソコンの出荷開始時期について、これまで通り 2006 年6月を目標にしていることを改 めて強調した。07 年末までにはすべてのマッキントッシュのプロセッサをインテル製プロ セッサに切り替える方針だ。【9 月 22 日】 (2)シスコシステムズ シスコは、ソフト大手マクロメディアからウェブ会議ソフト「ブリーズ(Breeze)」の技 術ライセンスを取得。新しいウェブ会議プログラム「シスコ・ミーティングプレイス・エ キスプレス(Cisco MeetingPlace Express)」を中規模企業向けに開発していく。価格は7万 ドルから。今年末までに新ソフトを発表する予定だ。ブリーズは、ウェブ会議を利用する のに、マクロメディアのフラッシュ・ソフトをダウンロードするだけで済む。マクロメデ ィアによると、ネットに接続されたパソコンの 95%がフラッシュを搭載しているという。 同社は、アドビシステムズが買収することになっている。【9 月 22 日】 (3)デル デルは、ゲーム使用向けに開発した高級ブランド「XPS」を発表した。価格はデスクトッ プ型が 1100 ドルから、ノートブックで 2700 ドルからとなっている。同製品ラインでは、高 性能のスペックを搭載するだけではなく、手厚い顧客サービスも提供される。たとえば、 問い合わせに対しては、待ち時間も短く、経験豊富な担当者が対応する仕組みだ。例えば、 XPS の顧客サービスに電話した際の待ち時間は、一般ユーザーの7∼8分に対し5分以内 にとどめる予定。【10 月 4 日】 デルはまた、アップルの「i ポッド・シャッフル」と競合する、フラッシュメモリ内蔵型 携帯デジタル楽曲プレーヤ「DJ ディッティ(DJ Ditty)」を発売した。価格は 99 ドルと差 はないが、楽曲の圧縮率を高めることで、512 メガバイトの容量に約 220 曲を収録できる。 同価格で同容量の i ポッド・シャッフルは、約 120 曲に留まっている。さらに、1インチの LCD 画面を採用した楽曲リストや FM ラジオの受信でも差別化を図っている。【9 月 22 日】 ネット接続サービスでは、携帯電話会社大手シンギュラー・ワイヤレスと提携した。提 携により、自社のノートブックをシンギュラーの高速無線ネット接続技術「EDGE」に対応 させていく。デルは先に、EV-DO を使用するベライゾン・ワイヤレスと同様の契約を結ん だばかり。【9 月 23 日】 (4)ヒューレット・パッカード(HP) HP は、娯楽大手タイムワーナー傘下のアメリカ・オンライン(AOL)と提携。HP のパ ソコンと AOL のブラウザを抱き合わせで販売していく。HP は、来年から北米で販売して いくコンパック・ブランドのパソコンに AOL 製ブラウザ「ネットスケープ」を搭載してい く計画だ。パソコン購入者は、デフォルト・ブラウザとして、マイクロソフトの「インタ ーネット・エクスプローラ(IE)」か、ネットスケープを選択できる。ネットスケープ最 新版は、オープンソース・ブラウザ「ファイアー・フォックス」のコードを採用している。 【10 月 4 日】 (5)IBM IBM は、個人の遺伝子情報を企業の各種審査に使わない方針を明らかにした。対象には、 健康保険や福利厚生の適用なども含まれている。遺伝子工学の発展により、最近では、個 人の遺伝情報が簡単に調べられるようになっている。しかし、それらの中には、将来、特 定の病気になる確率を示すものもあり、医療費などの高騰を受けてこれらの情報が雇用条 件に適用されてしまうとの懸念が高まっている。個人の遺伝子情報に対する保護を明確に 打ち出したのは、30 万人以上の従業員を抱えるグローバル企業で IBM が初めて。【10 月 12 日】 (6)インテル インテルの7−9月期決算は増収増益となった。市場の8割を押さえるプロセッサの出荷 が好調だったことが奏功した。 【10 月 19 日】 インテルは、サーバ向けデュアルコア・プロセッサ「ジーオン・パックスビル (Paxville)」を出荷した。新プロセッサの動作周波数は毎秒 2.80 ギガヘルツで、価格は1 個あたり 1043 ドル。デル、HP、IBM が近く、新半導体を搭載したサーバやワークステーシ ョンを発売する予定だ。 同社はまた、薄型サーバ(ブレードサーバ)向けジーオンの最新版2種類を発表した。 最後のシングルコア・プロセッサとなるが、従来のサーバ・プロセッサに比べて消費電力 が小さいのが特長となっている。 携帯機器向けプロセッサ分野では、熱処理の効率を高める 65 ナノメートル線幅加工技術 を開発した。トランジスタの改良などによって、電流の漏れを 1000 分の1に軽減できるの が特長。商用化は 2007 年初頭になる見通しだ。同様の技術開発を進めている競合のテキサ ス・インスツルメンツ(TI)も9月 21 日、電流漏れを防ぐ「スマートフレックス (SmartFlex)」を発表したばかり。【10 月 12 日、9 月 28 日、9 月 23 日】 一方、インテルは、マイクロソフトとともに、東芝などが提唱する次世代 DVD 規格の 「HD-DVD」を支持すると発表している。両社は、現行 DVD との互換性や生産コストなど の面で、パソコンに搭載する次世代 DVD としては、「ブルーレイ」よりも HD-DVD の方 が優れていると判断したようだ。両社は、東芝規格を支持する企業で構成する普及促進団 体「HD-DVD プロモーショングループ」に加入している。【9 月 28 日】 (7)マイクロソフト マイクロソフトは独禁法訴訟で、コンテンツ配信技術大手リアルネットワークスに総額 7億 6100 万ドルを支払うことで和解した。また、マイクロソフトのネット事業「MSN」で リアル社の楽曲配信サービス「ラプソディ」を提供することでも合意に達している。【10 月 12 日】 マイクロソフトはここに来て、これまで様々な分野で競合してきた企業との歩み寄りを 見せている。例えば、同社とヤフーは、インスタント・メッセージング(IM)を世界規模 で相互交換できるようにすることで合意している。また、携帯機器メーカー大手パームと も提携し、長年続いた競合関係に終止符を打った。パームとの提携では、マイクロソフト の「ウィンドウズ・モバイル 5.0」を使用するスマートフォン「トレオ」の新機器を発表す る計画。【10 月 12 日、9 月 27 日】 一方、マイクロソフトは、企業向けセキュリティ・ソフトおよびサービスの新製品をウ ィンドウズ・ユーザー向けに今年末までに試験提供していく。製品は、個人認証と顧客の アクセスを管理する「クライアント保護技術」が組み込まれている。 同社はまた、セキュリティ分野での新たな試みとして、業界団体「セキュア IT 連盟 (Secure IT Alliance)」の結成している。同団体には 30 社が加盟し、シマンテックなどセ キュリティ大手も名を連ねている。【10 月 7 日】 中小企業向けのサービスでは、電話会社大手クエスト・コミュニケーションズと提携。 電話、電子メール、ネット接続、インスタント・メッセージなどさまざまなサービスを1 台のコンピュータで管理できるサービスを提供していく計画。クエストは 2006 年内に提供 を開始する予定。【9 月 22 日】 様々な分野に進出するマイクロソフトだが、いずれの分野も激戦区。ウィンドウズやオ フィス製品のように市場を掌握するのはたやすくない。こうした競争激化を背景に、同社 は、これまでの7事業部門を3部門に再編するとともに、新最高技術責任者に大きな権限 を与える方針を明らかにしている。それぞれは、①ウィンドウズ、サーバやツール、MSN のオンライン分野を統括するマイクロソフト・プラットフォーム・プロダクツ&サービス 部門、②統合ソフト「オフィス」製品や、中小企業向けの製品を束ねるマイクロソフト・ ビジネス部門、③X ボックスのゲーム・コンソールや他のゲーム製品、携帯機器などを扱う マイクロソフト・エンタテインメント&デバイシズ部門となっている。【9 月 22 日】 (8)オラクル オラクルの6−8月期決算は、純益が微増にとどまった。販売関連費用が増加したのが原 因。売り上げは、堅調な増収となった。ピープルソフトの買収が完了し、ソフト販売やサ ービス事業が堅調に推移したという。【9 月 26 日】 (9)サン・マイクロシステムズ サンは、予定していたオープンソースのオフィス統合ソフト「オープンオフィス」の新 バージョン公開を、直前のバグ発見のために延期した。バグは、グラフィック機能の表示 に関するもの。正式なバージョン「2.0」は、他のバグが見つからなければ近々公開される 見込みだ。 同社はまた、ネット検索最大手グーグルとオープンソース型プログラムの普及を図るの を目的に提携した。将来的には、オープンオフィスの普及などで協力していく。【10 月 17 日、10 月 6 日】 主な企業の決算報告: 企業名 アップル 四半期売上高 36.8億ドル 前年同期比 56.00% 四半期純益 前年同期比 4.3億ドル 305.66% インテル 99.6億ドル 18.00% 20億ドル 5.00% オラクル 27.68億ドル 25.00% 5.19億ドル 2.00% 2.パーソナル・コンピュータ(PC)と OS (1)調査会社大手 IDC とガートナー2社によると、世界におけるパソコンの出荷台数が今 年第3四半期、前年同期比約 17%増に達した。出荷台数の伸びは、米国よりも海外市場の 方が強く、両社とも消費者が低価格パソコンやモバイル・パソコンへ移行し、買い替えを 促進した点を挙げている。 一方、IDC によると、米国市場では出荷台数が同比 11.0%増の 1697 万台に達した。シ ェアでは、デルが HP に大きく水を開けた。【10 月 17 日】 表1:2005 年第 4 四半期における世界パソコン販売 企業名 デル HP レボノ エイサー 富士通・富士通シーメンス その他 合計 レボノ(合併) 05Q2出荷台数 (単位:1000台) 9,483 8,464 4,072 2,493 1,995 26,303 52,810 4,072 05Q2 市場シェア 18.0% 16.0% 7.7% 4.7% 3.8% 49.8% 100.00% 7.7% 04Q2年出荷台数 (単位:1000台) 8,050 7,178 1,163 1,622 1,735 25,347 45,095 3,602 表2:2005 年第 4 四半期における米国パソコン販売 04Q2年 市場シェア 17.9% 15.9% 2.6% 3.6% 3.8% 56.2% 100.00% 16.0% 前年同期成長率 17.8% 17.9% 250.2% 53.7% 15.0% 3.8% 17.1% 13.1% 企業名 デル HP レボノ エイサー 富士通・富士通シーメンス その他 合計 レボノ(合併) 05Q2出荷台数 (単位:1000台) 5,638 3,450 1,082 757 737 5,305 16,969 757 05Q2 市場シェア 33.2% 20.3% 6.4% 4.5% 4.3% 31.3% 100.00% 4.5% 04Q2年出荷台数 (単位:1000台) 5,023 3,133 800 0 510 5,826 15,292 711 04Q2年 市場シェア 32.8% 20.5% 5.2% 0.0% 3.3% 38.1% 99.90% 4.6% 前年同期成長率 12.2% 10.1% 35.2% N/A 44.6% -8.9% 11.0% 6.4% 注:出荷台数は流通チャネルおよびエンドユーザーを含む。なお OEM は販売されたブランド 名で換算 注2:パソコンには、デスクトップ、ノートブック、ウルトラ・ポータブル、X86 サーバを含 むが PDA やハンドヘルド・コンピュータを含まない (出典:IDC) (2)携帯機器大手パームは、「ブラックベリー」を開発するカナダの競合リサーチ・イン・ モーション(RIM)と提携した。提携により、パームは自社製スマートフォン「トレオ 650」に RIM の無線携帯機器用ソフトを導入する。新製品は、2006 年初めには店頭に並ぶ 予定だ。トレオは、グッド・テクノロジーの「グッドリンク(GoodLink)」を含む様々な 携帯プラットフォームで使用されているが、ブラックベリーとは互換性がなかった。一方、 RIM はソフト事業を拡大するため、同社の「ブラックベリー・コネクト」のライセンス販 売に注力してきた。【10 月 17 日】 (3)米国では、身体的特徴を利用した生体認証(バイオメトリックス)システムの導入が遅 れている。経費やプライバシーの問題が障害として指摘されている。また、現在のカード と暗証番号(PIN)を使うシステムが一般消費者の間に浸透しているため、バイオメトリ クスのメリットを説得しなければならない。 逆に、以前から ID カードなどにも指紋を使っている南米では ATM(自動預金支払機) への導入も進んでいる。例えば、チリの銀行は指紋で本人認証のできる ATM をダイボー ルド(Diebold)から購入しているほか、NCR は 04 年に 4000 台の関連 ATM をコロンビア に設置している。北米では約 350 銀行が、顧客が金庫のある部屋に入るための認証システ ムとしてダイボールドの手型認証システムを導入している。【10 月 13 日】 (4)衛星 TV 放送事業者エコスター(EchoStar)は、TV 番組や映画、音楽を視聴でき、デジ タル写真を保存できる携帯メディア・プレーヤ「ポケットディッシュ(PocketDish)」を 発売した。製品は、画面サイズが最大で7インチ、記憶容量が最大で 40 ギガバイト。TV やコンピュータ、DVD プレーヤ、ポータブル・ビデオレコーダなどから映像や音楽、デー タを記録できるのが特長だ。小売価格は、最低価格 329 ドルからハイエンド機種が 599 ド ルとなる。【10 月 13 日】 (5)リサーチ・イン・モーション(RIM)は、連邦高裁が同社の求めていた特許侵害の賠償 金の再考を退けていた問題で、連邦最高裁に上告する方針だ。連邦高裁は先に、RIM の 「ブラックベリー」が NTP の特許 11 件を侵害しているとした、2002 年の判決を下してい た。今後は、バージニア州の連邦地裁に差し戻され、10 月 14 日から審議を再開する予定 だ。RIM の米国内でのブラックベリー販売や使用を、NPT の特許が失効する 2012 年まで 禁止する差し止め命令を出すかが争点となる。差し止め命令が下されれば、RIM は、売り 上げの 70%以上を失うことになる。これに対して、NPT は、差し止め命令を求める姿勢を 強めている。【10 月 10 日】 (6)台湾のコンピュータ・メーカー、A オープン(AOpen)は、アップルの「マック・ミ ニ」のような小型デスクトップ・パソコン「パンドラ」を米国で発売する。 パンドラは、ホーム・エンタテインメント向けパソコンで、高さが2インチ。OS には、 Linux とウィンドウズ XP の2種を採用した。米国では、再販業者を通して販売していく。 価格は、Linux 搭載のミニ・タワーが 399 ドル、ウィンドウズ XP を採用したボックス型が 499 ドル。 パンドラは、前面に CD ドライブや電源ボタン、3つの USB スロットを持ち、背面に キーボードの差し込み口とシリアルポートを搭載する。また、無線ネットワーク・コネク タも内蔵する。マザーボードには、インテルの最新チップ「ペンティアム D」を採用して いる。【10 月 4 日】 (7)ウォルト・ディズニーは、MP3プレーヤ「ミックス・スティックス」を発表した。価 格は 49 ドルで、6∼12 歳の子供を対象に販売していく。製品には、「ティンカー・ベ ル」のキャラクター・デザインを箱状に施したものなど、4つのモデルがある。通常の MP3プレーヤ同様に、ネットからダウンロードした曲や CD からコピーした曲を再生でき るほか、「ミックス・クリップス」と呼ばれる切手大のメモリカードに記録された CD1 枚分の音楽も、プラグ&プレーで再生できる。【9 月 30 日】 3.インターネットとメディア・ビジネス (1)グーグルは Google.org を立ち上げ、9億ドル相当を超える株式と利益の一部を投じる社 会貢献計画を発表した。具体的には、世界の貧困、エネルギー、環境問題に重点を置き、 プロジェクトの運営予算には、株式の1%と年間利益の1%を充てていく。 予算のうち株式の部分は、約 300 万株にあたり、時価で約9億 2000 万ドル相当となる。 株式はグーグルが保有し、必ずしも売却はしないが、評価額を現金で Google.org に提供す る。グーグルが投じる金額は、米国企業の多くが設立している財団などに比べて、資産高 の点で上回っている。ファンデーション・センターの調べによると、企業財団の中ではア ルコアのアルコア財団がトップで、2003 年末時点で4億 5000 万ドルの資産高を報告して いる。【10 月 13 日】 一方、多角化に乗り出したグーグルは、無線高速 LAN 技術「Wi-Fi」サービスの試験を 行っていることも明らかにしている。試験はグーグル本社があるカリフォルニア州マウン テンビュー周辺に設置した2ヵ所のアクセスポイント(ホットスポット)で実施している。 同社はこれまで、サンフランシスコのショッピング地域で新興企業フィーバ(Feeva)と、 スポンサー形式のホットスポットを設置している。【9 月 22 日】 (2)ハイテク企業 27 社は、無線高速 LAN 技術「Wi-Fi」の高速規格「802.11n」策定に向け て、コンソーシアム「エンハンスト・ワイヤレス・コンソーシアム(Enhanced Wireless Consortium:EWC)」を結成した。異なる無線通信規格が乱立する中、業界で規格の統一を 図ろうとする試みの一環で、参加企業には、無線チップ・メーカー大手ブロードコム、イ ンテル、シスコ、レノボ、ソニー、東芝などが名を連ねている。当面の目標として、でき るだけ早い時期に「802.11n」を承認していく。新規格は早ければ 2006 年末にも完成予定 で、製品は同年上半期中にも発表できる見込み。新規格は、複数のアンテナや、無線が届 く範囲を効率良く使うことで性能を向上させ、これまでの「802.11a」や「同 b」、「同 g」よりも2∼10 倍高速になる。【10 月 12 日】 (3)ヤフーは、ネット配信されるラジオ番組「ポッドキャスト」に対応した新サイト ( http://podcasts.yahoo.com/ )を開設した。利用者はサイトを基点として、好みの番 組を効率的に探したり、ダウンロードしたりできる。サイトは、数千のポッドキャスト番 組を含み、それぞれ、音楽や野球、ニュース、ビジネスなどジャンル別に分類されている。 【10 月 12 日】 (4)社交ネットワーキングのサービスを手がける 24 アワー・ランドリー(24Hour Laundry)が、ウェブサイト「ニング(Ning)」を開設した。ウェブ開発者やブログ運営 者などの間で関心を呼んでいる。同社は、ネットスケープの創設者、マーク・アンドレッ セン氏が設立したことから注目を集めていた。 ニングでは、「ソーシャル・アプリケーション」を開発するための無料オンライン・サ ービスとうたっている。ニングは、ユーザーが写真や批評などのコンテンツを作って、そ れを他人と共有することで、ネットワークを広げていくための「遊び場」だという。ウェ ブ開発者に対してツールも提供し、一からプログラムを作ったり、既存のサービスを真似 してプログラムを作ったりできるようになっている。【10 月 10 日】 (5)ブライトコーブ(Brightcove)は TV・コンテンツのオンライン利用を目的としたサービ スを開始する。同社は、「コールドフュージョン」「フラッシュ」の開発に携わったジェ レミー・アレール氏が設立した。 サービスは、相互に関連した3つのサービスから成り、TV 番組のプロデューサーが、 ビデオ・コンテンツをサーバにアップロードしてネット上で公開し、視聴料や広告料を徴 収するのを助ける。また、ビデオ制作者とウェブサイトの間を取り持つ仲介業も手がける。 現在、同社が開発したツールを試験導入している企業は 40 社近くあり、その中にはバ イアコム、A&E ネットワークスなど、大手メディアも含まれている。【10 月 9 日】 (6)メディア大手タイムワーナー傘下のアメリカ・オンライン(AOL)は、ブログの引き立 て役となったウェブログス(Weblogs)を 2500 万ドルの現金で買収する。ウェブログスは、 フリーのブログ専門家を 100 人以上雇用しており、毎週 1000 件以上が更新される。最も 一般的なブログでは、贅沢(ぜいたく)品や、ハイテク、自動車、ゲームなどのトピック がある。買収後、ウェブログスは AOL の独立完全子会社として参加に加わる。編集作業 など運営もすべてウェブログスが手がける。AOL はウェブログスから 85 種のブログ・サ イトを資産として引き継ぎ、自社コンテンツとリンクさせていく。【10 月 7 日】 (7)ヤフーは、複数の提携先とコンソーシアム「オープン・コンテント・アライアンス (OCA)」を結成。共同で書籍やマルチメディア・コンテンツのオンライン・データベー ス構築を進めている。同コンソーシアムには、アドビシステムズ、HP、出版社や教育機関、 さらに研究者や一般向けにデジタル文書を作成している非営利組織インターネット・アー カイブも加わっている。 OCA は、すでに、版権切れとなった作品や、非営利組織クリエイティブ・コモンズ (Creative Common)が策定する比較的緩やかな著作権を適用した作品もデジタル・データ として取り込んでいくと同時に、出版社や著者などとも著作権が有効な作品のオンライン 提供に関して交渉を進めている。【10 月 5 日】 4.電子商取引 (1)デジタル・コンテンツ配信大手のラウドアイ(Loudeye)は、オンライン決済の新興企 業ペッパーコイン(Peppercoin)の少額決済(マイクロペイメント)技術を採用する。 ペッパーコインのサービスは多様で、前払い形式のものから、定期利用、低価格の決済 などがある。【10 月 13 日】 (2)地理検索サービス大手マップクエストは、自社の GPS サービス「ファインド・ミー」 を電子メール機器「ブラックベリー」に対応させた。最新サービスを利用すると、自分自 身の所在地だけでなく、同僚や家族、友人、また店の所在地情報なども使えるようになる。 現在対応する機種は、携帯電話大手スプリントが提供する「ブラックベリー7520」。 利用者は、プライベートなグループを設定し、グループ管理者になれる。専用サイトに 登録会員の電話番号を入力すると、コードが電話機に送られ、各メンバーが所在地を管理 者に伝えられるようになる仕組みだ。特定のグループ・メンバーになるには、初回登録時 に本人承諾が必要になるだけ。他のメンバーを探すこともできる。サービス料は、電話1 台につき月額3ドル 99 セントとされている。【10 月 5 日】 (3)オンラインの古本販売が、古本市場全売り上げの3分の2を占めるまでに成長し、既存 の古本屋の存在が脅かされている。民間非営利組織(NPO)のブック・インダストリー・ スタディ・グループ(BISC)が報告した。 同団体の調査によると、米国で一般書古本の売り上げが停滞する中、オンライン販売額 は年間 30%の速度で増加しているという。オンラインでは古本が売りやすく、在庫目録が 簡単に作成できることが要因として挙げられている。 2004 年、書籍全体の売り上げは 263 億ドルで、古本はこのうち8%の 22 億ドルを占め た。書籍全体の売り上げは、03 年から 11%増。【10 月 3 日】 (4)富士フイルムと小売りチェーン大手ウォルマートが、消費者向けデジタル写真サービス を拡大し、新たに宅配サービスを提供することで合意した。今後、ウォルマートとサム ズ・クラブ(Sam's Clubs)の 3400 店舗に、富士フイルムのキオスク「デジタル・ドロッ プボックス(Digital Dropbox)」を設置する。新サービスでは、キオスクで現像する写真 を保存した記録媒体を持っていくか、ウェブサイトで写真をアップロードする。両社のウ ェブサイトで写真をアップロードすると1時間以内に現像される。【9 月 28 日】 (5)新興企業ミュージックジャイアンツ(MusicGiants)は、CD の楽曲とほぼ同質の楽曲フ ァイル配信サービス「ミュージックジャイアンツ・ネットワーク」を導入する。新サービ スでは、レコード会社大手のデジタル録音楽曲を販売する。同社によると、アップルコン ピュータの「i チューンズ」などの楽曲に比べ音質が7倍高いという。ただし、ファイル 容量は大きく、ダウンロードには時間がかかる。 サービスでは、ユーザー・アカウントを作成する際に 50 ドルを前金として徴収する。 楽曲ファイルは、1曲あたり1ドル 29 セント。楽曲数は、数十万曲になる見込み。しか し、ほとんどの消費者が購買行動を通し MP3 ファイルで音質は十分と判断しているため、 どこまで需要があるのか疑問視されている。【9 月 28 日】 (6)2005 年上半期におけるネット広告の売上高は、2004 年後期から 26%増の 58 億ドルに 達した。ネット広告業界団体インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロ(IAB)と プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が報告した。 好調な売り上げは、検索エンジンの検索結果に付属した広告が牽引する格好となった。 検索広告はネット広告費全体の 40%を占め、費用は、昨年後期から 27%増の 23 億ドルと なった。また、バナー広告やクラシファイド広告がこれに続き、それぞれ 20%と 18%と なっている。【9 月 28 日】 5.半導体 (1)デジタル・カメラなどに使われるメモリカード技術をめぐり、デジタル機器製造会社 「レキサー・メディア」が東芝と米子会社を相手に損害賠償を求めた訴訟で、カリフォル ニア州の地裁は、東芝側に総額約4億 6500 万ドルの支払いを命じた同地裁陪審の評決を 支持した。東芝側の事実上の敗訴となった。今後は、東芝側が上訴すると見られている。 【10 月 17 日】 (2)米軍に超高性能半導体を供給しているマイクロセミは、米軍のイラク戦争が長引くに連 れ、業界平均をはるかに上回る成長を遂げている。同社の過去1年間の成長率は、四半期 ごとに最低でも 17%に達している。アナリストらは、マイクロセミが向こう1年間で、業 界平均の7%に対して、引き続き2ケタ成長を続けると予測している。 最大の要因は、1990 年代に軍市場が鈍化した際、多くの半導体メーカーが同市場から 撤退した。しかし、マイクロセミは留まったことによって、他社の事業を一手に引き受け ることになったという。同社の売り上げの約 42%は防衛産業関連製品。【10 月 16】 (3)リサーチ・イン・モーション(RIM)は、携帯電子メール機器「ブラックベリー」の新 機種に、インテルの携帯機器向けマイクロ・プロセッサ「PXA9xx」(コードネーム・ハ ーモン)を採用する。これにより、マルチメディア機能やネット・アプリケーションの機 能の向上を図る。【9 月 29 日】 6.その他 (1)任天堂アメリカは、マクドナルドと提携し、全米の店舗で、携帯ゲーム・システム「任 天堂 DS」の利用者向けに、高速無線 LAN「Wi-Fi」接続を無料で提供していく。 サービスは 11 月までに開始する予定で、「マリオ・カート DS」と「トニー・ホーク ス・アメリカン SK8 ランド」を用意する。また年内に2本のゲームが追加される予定。 マクドナルドはすでに、世界 6000 店舗でノートブック向けに Wi-Fi サービスを有料で 提供しているが、今回の提携では、ノートブックを使用しないでもゲームを楽しめる。 【10 月 18 日】 (2)調査会社マネー・ツリー・サーベイによると、今年上半期にベンチャー・キャピタル (VC)が ID 詐欺対策ソフトを手がける会社に投資した金額は、総額 7000 万ドルに上った。 昨年は通年で1億 100 万ドルだった。ID 詐欺の懸念が高まっているのを受けた格好だ。 例えば、ペイ・バイ・タッチ・ソリューションズ(Pay By Touch Solutions)は最近、1 億 3000 万ドルの資金調達を受けている。また、バイオパスワード(BioPassword)は、今 年すでに 550 万ドルを資金調達したが、今月さらに 800 万ドルの投資を VC から得る予定 だ。さらにフォーティーファースト・パラメーター(41st Parameter)も今年春に 440 万ド ルの投資を得た。インフォグライド・ソフトウェア(Infoglide Software)が年内に 1000 万 ドルの投資を得る予定だ。【10 月 17 日】 (3)コミュニケーション・テクノロジーズ(Communication Technologies:コムテック)はバ ージニア州マナサス市で、電力線を使ったブロードバンド接続(BPL)のサービスを開始 した。同社は、1万 2500 世帯に月額 38 ドル 95 セントでサービスを提供する。売り上げは 市と共有する。 コムテックは、新たに9都市で同技術の導入を図るべく交渉中。さらに、今後は電力線 を使って IP 電話も提供していく考え。【10 月 10 日】 (4)スプリント・ネクステルは、IP 電話大手ボナージュほか数社を特許侵害で連邦地方裁 に提訴した。データ・ネットワーク上で通話の音声信号を送信する技術に関して、7件の 特許侵害があったとしている。訴えられた企業には、このほか、Theglobe.com とその親会 社のボイスグロー・ホールディングズも含まれている。 ボナージュは 100 万世帯以上の顧客を抱え、ボイスグローは約 500 万人の顧客を抱えて いる。スプリント・ネクステルは、問題の特許技術の今後の使用の差し止めと、賠償金を 求めている。【10 月 6 日】 (5)大容量ファイルをダウンロードするためのピア・ツー・ピア(P2P)ソフトを開発する ビットトレント(BitTorrent)は、ベンチャー・キャピタルから 875 万ドルの資金を獲得し た。獲得した資金でインフラを向上させ、同社の配信技術をハリウッドに売り込んでいく 考えだ。同社はすでに映画配信会社や著作権者と交渉中だという。【9 月 30 日】 (6)米下院のサイバーセキュリティ小委員会のダン・ラングレン委員長(共和)は、適切な サイバーセキュリティ基準を取り入れた企業に対して、税金の優遇措置をとる可能性を明 らかにした。 一方で同委員長は、サイバーセキュリティのガイドラインを法律化する上で、高圧的な 規制は改革の目をつぶすため避けるべきとの見解を示した。 同小委員会は現在、サイバーセキュリティのツールを開発するため民間セクターと共同 で作業しているという。【9 月 29 日】
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