平成24年度 新産業創出研究会「研究成果報告書

平成24年度
新産業創出研究会「研究成果報告書」
「超耐熱性石油樹脂製造用の次世代錯体触媒の開発」
[岡山大学・講師]
[岡山大学・コーディネーター]
[押木俊之]
[齋藤晃一]
1.はじめに
石油樹脂とは、ナフサから得られる C5 留分(ジシクロペンタジエン等)あるいは C9 留分(インデン等)を重
合して得られる樹脂である。石油樹脂は、これらの留分をモノマーとして用い、触媒による重合反応により、
得ることができる。
熱硬化性の石油樹脂を成形する方法として、RIM 成形法がある。RIM とは Reaction Injection Molding
の略であり、日本語では反応射出成形と呼ぶ。RIM 成形においては、成形用の金型に、触媒を含むモノ
マー液と、触媒の活性化剤を成分とする液などを注入する。この注入直前に、複数の液体成分を混合し、
金型内で触媒反応(モノマーの重合反応)を起こし、樹脂化と同時に成形を完了する。
ジシクロペンタジエンをモノマーとする RIM 成形法は、射出成型法などと比べ、成形時に多量の熱や圧
力を必要としない、省エネルギー型の樹脂成形法である。さらに石油樹脂そのものも、汎用エンプラ並み
の強度を有しつつ、本質的に軽量で(比重が軽い)、サーマルリサイクルが可能なことなど、環境調和型の
特性をもつ。石油樹脂の RIM 成形法はさまざまな要素技術の集合体であるが、中核技術のひとつがモノ
マーの重合を起こす触媒(錯体触媒)技術である(図 1)。
本研究会では、石油樹脂が本質的に備える「超耐熱性」を引き出すための実用触媒の研究開発をテー
マとした。企業側のニーズ(超耐熱性石油樹脂の実用化)に即した触媒技術に関して、大学のシーズ(錯
体触媒の製造と解析技術)を組み合わせることにより、産学共同で研究開発を進めた。特に、RIM 成形用
の錯体触媒を実用的に製造するための技術開発に絞って検討した。
2.概要
RIM 成形に適した実用製造錯体触媒の技術について研究開発を進めた。岡山大学の産学連携拠点
(産学官融合センター)で、錯体触媒を合成し、製造拠点の水島地区で触媒性能の評価を進めた。
3.研究成果および今後の課題
本研究会において設定した、超耐熱性石油樹脂用の錯体触媒開発に関わる当初研究開発目標を期
間中に達成した。また、関連する現行実用触媒に関する学術的知見もあわせて集積した。
研究会は予定通りに3回(5 月、10 月、2 月)に開催した。岡山大学研究推進産学連携機構幹部も多数
参加し、企業側からも石油樹脂の新たな用途展開の見通しが具体的に提示されるなど、非常に活発な議
論がなされいずれも盛会であった。
研究会とは別に、海外の研究開発および市場動向をさぐるための「日仏次世代石油樹脂開発推進会
議」を 11 月に設立した。
さらに、中国経済連合会等が主催した「中国地域国立 5 大学連携事業化学分野における大学研究シ
ーズ説明会」に本研究会構成員が全回参加した。本研究会がまさに中国地域の産学連携体であることを
踏まえて、具体的な提案を事務局に提出したところ、中国経済連合会より「事業としては見送り。理由は、
ちゅうごく産業創造センターから、平成 25 年度「研究会」の中で実施されるという話があったため、ちゅうご
く産業創造センターが対応する。」旨の回答を得た。すなわち、ちゅうごく産業創造センターは、25 年度以
降も継続する本研究会に対して、中国経済連合会等を上回るさらなる格段の協力を惜しまないとのことで
あるので、たいへんに期待している。また、異業種との連携(橋渡し)について、23 年度よりちゅうごく産業
創造センターが取り組むことを再三明言しているので、25 年度中にこの課題解決を強く希望する。
4.おわりに
本研究会は、研究開発成果として所期の目標を達成するとともに、参画機関の連携をより強固にするこ
とができた。成功の要因は、実用化へ向けた企業側の積極的な関与である。
5.本研究の今後の計画
本研究会における研究開発成果をもとに、企業主導で次世代石油樹脂の実用化へ向けた研究開発を
加速する。そのために、岡山大学産学官融合センター産業技術開発本部(一つ屋根の下)において、触
媒製造用の設備を整備した。この設備は企業側が投資し、その設備を大学内に置き、共に実用化研究
開発を進めるものであり、岡山大学としては最初の事例である。
6.その他
(1)出願特許(タイトル・出願番号・発明者・特許権者など)
(2)投稿論文(タイトル・学会名等)

ちゅうごく産業創造センター会報 93 号「岡山大学産学官融合センターにおける私の地域産学連携
研究」 (2012 年 7 月)

岡山大学知恵の見本市 2012「錯体触媒法による石油樹脂の新たな実用製造技術の共同開発」
(2012 年 11 月 2 日、岡山大学)

中国地域国立 5 大学連携事業 化学分野における大学研究シーズ説明会 (中国経済連合会等)
「低炭素社会を先導する革新的触媒技術開発」 (2012 年 11 月 16 日、岡山大学)
(3)本研究会の参加企業・団体名
RIMTEC 株式会社
ゼオンリム株式会社