第4学年 道徳指導案

第4学年
道徳指導案
授業者 教諭 島貫 愛
1 主題名
わたしの命 みんなの命
2 ねらい
○ 生命の尊さを感じ取り,生命を大切にしようとする心情を育てる。
3 主題の設定に当たって
(1) 主題について
本主題は,内容項目3-(1)を受け「生命の尊さを感じ取り,生命あるものを大切
にする」ことをねらいとしている。
低学年
中学年
高学年
中学校
生きることを喜び,
生命がかけがえの
生命の尊さを理解
生命を大切にする心
ないものであるこ
し,かけがえのない
をもつ。
とを知り,自他の
自他の生命を尊重す
生命を尊重する。
る。
人にも動物にも植物にも,かけがえのない生命がある。人は時に,人間以外の動物,
植物の命の軽重を自分の都合で判断することがあるが,すべての生き物は精一杯自分の
生命を生きている。他の生命を軽んじ,弄ぶことは許されない行為である。しかし,そ
の当たり前ともいえる事実が,最近では軽視されている傾向がある。
生命あるすべてのものとの共生を図りながら生きる人間にとって,人間ばかりでなく,
それらをかけがえのないものとして尊重していく心を育てていくことが大切である。
(2) 児童について
本学級は,男子17名女子19名計36名で構成されている。
男女の仲が良く,お互いを思いやる言動がたくさんの場面で見られる学級である。乱暴
な言葉もあまり聞かれず,穏やかに過ごしていることが多い。しかし,全体的に幼く,教
師の指示を素直に聞くものの,自発的に判断し,より良い行動をとっていこうとする児童
は尐ない。
「生命観把握尺度(田沼茂紀《2007》)」を引用した事前アンケート(資料参照)か
ら考えられる児童の実態として以下のことが考えられる。
・ 自他を理解し,互いに尊重し高めあおうとする「社会的側面としての充実感」につ
いてのポイントが期待値を大きく上回り,普段から友だちと仲良く活動しようとす
る児童の姿が分かる結果となった。
・ 生命の有限性や固有性を理解する「生物的側面としての充実感」についてはほとん
どの児童が期待値を上回ってはいるものの,個人差が大きく,飼育経験はあるもの
のこれまで飼った生き物が「虫や魚」だと回答した児童のポイントが低かった。
・ 連綿と引き継がれてきた文化や生命への畏敬の念を持つ「文化的側面としての充実
感」は,他の因子よりも低いポイントとなった。期待値を下回る児童がクラスの 4
分の1おり,生への執着,死への恐怖感が低いものと考えられる。
(3) 資料について
① 資料名
「ヒキガエルとロバ」
出典 道徳教育推進資料(指導の手引き)3
小学校 読み物資料とその利用
「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」
文部省(現文部科学省)
中心項目3-(1)
② 内容項目
③ 資料のすじ
学校帰りの子どもたちが,わだちのできたどろ道を帰る時,醜いヒキガエルを見つける。
子どもたちはおもしろ半分に石を投げつけ,ヒキガエルは必死の思いでわだちの水たまりに
逃げ込み,傷を癒そうとする。ところが,そのわだちに沿って重い荷車を引いたロバが苦し
そうにやってくる。ヒキガエルに気が付いたロバは歩みを止め,鞭を打たれながらも,ヒキ
ガエルが去るまで待とうとする。ところが,精根尽き果てたヒキガエルは身動きできない。
子どもたちは,荷馬車にヒキガエルがひき殺される場面を固唾をのんで待ち続ける。ところ
が,ロバは最後の力を振り絞り,深く窪んだわだちから荷車をそらせてひき始め,とうとう
ヒキガエルを救った。
(4) 指導にあたって
本校道徳指導の重点
3 自然に親しみ生命を大切にする子
① 各教科や特別活動および総合的な学習の時間との関連
国語
生命の尊重
4月
道徳(価値項目3-(3))図工 4月
「こわれた千の楽器」
模写「星野富弘さんの世界」
「ふしぎ」「よかったなあ」
・生きることの意味,尊さを考え
・身の回りのさまざなま命について
描がかれた作品を味わう。
7月 資料「1番の幸せとは」
・命を失うと悲しむ人がいることに気づ
き,命を大切にしていこうとする。
理科 4 月・7月・10 月
「あたたかくなると」「暑くなる
国語 7月
と」「すずしくなると」
「夏のわすれもの」
・身近な家族の死と生について考
える。
総合的な学習の時間
9月 資料「ヒキガエルとロバ」
・命の尊さを感じ取り,命を大切
にしていこうとする。
・今の自分を見つめ,自己肯定感
を高めながらこれまでの成長を
・動植物の生命力に触れ,生命の
力強さを実感する。
体育
10 月
11 月
「育ちゆくわたし」
「二分の一成人式」
振り返る。
る。
12月 資料「バルバオの木」
・受け継がれる命のたくましさに感動し,
・体の成長について知り,生命の
連続性について考える。
命を大切にしていこうとする。
理科
12 月・3 月
「寒くなると」「生き物の 1 年を
3月 資料「走れ江ノ電 光の中へ」
ふりかえって」
・生のかけがえのなさを感じ取り,生
・動植物の生命力に触れ,生命の
を大切にしようとする。
力強さを実感する。
生命は尊いものだ。 自分の命もみんなの命も大切にして行こう。
② 指導の工夫
○ 資料を提示する工夫
「つかむ」段階で前半部分,「考える」段階で後半部分を提示することで,内容を
豊かにイメージし,「ロバ」のとった行動について,より深く考えられるようにする。
○ 板書を生かす工夫
「アドルフ」の気持ちを想像する活動が中心となるが,児童の思考がスムーズに行
えるように場面絵を提示するタイミングや板書のレイアウトに配慮する。
○ 説話の工夫
「深める」段階において,絵本の読み聞かせを行う。(「わたしのいもうと」著
者 松谷みよ子 偕成社)単に動植物への愛護に終わらず,人間同士の共生や他者
の命に思いを巡らすことについて児童が考えを広げられるようにする。(松谷氏は,
「ヒキガエルとロバ」の原作を引用してあとがきを書いている。)
4 準備物
<授業者> ヒキガエル写真
読み物資料(前半/後半),場面絵,ワークシート
絵本「わたしのいもうと」(松谷みよ子 偕成社)
新聞記事「いじめている君へ(松谷みよ子)」(朝日新聞 2006 年 12 月 5 日掲載)
<児 童> 道徳ファイル
5 指導過程
段階
学習活動と主な発問
教師の支援(・)評価(□)
1 資料の内容に興味・関心を持つ。
気 ・事前アンケートで回答の多かった苦手な生き物の写真 ・事前アンケートをもとに指
づ
名し,発表することで授業
を見て話し合う。
く
への意欲を持たせる。
③ 予想される児童の反応
分 「気持ち悪い」「やだ」「追い払う」「殺虫剤!」
2「ヒキガエルとロバ」(前半)を読んで話し合う。
・教師の範読を聞く。
発問①―1
ヒキガエルに石を投げつけたアドルフたちの気
持ちを考えよう。
つ
か
む
⑫
分
予想される児童の考え
「気持ち悪いからあっちに行け」
「カエルくらい,別にいいじゃないか」
発問①―2
荷車にひかれそうなヒキガエルを見ているアド
ルフたちの気持ちを考えよう。
予想される児童の考え
「ひかれそうだ」
「おもしろそうだ」
・資料前半配布
・解説が必要な言葉を絵や写
真で補足説明する。
「ヒキガエル」「わだち」「ロバ」「荷車」
・場面絵①提示
・ワークシートに自分の考え
を書かせ,発表に自信を持
たせる。
・発表を通して,アドルフた
ちの気持ちに同化させ,偏
見やその安易さにも気づか
せる。
・場面絵②提示
・興味本位で残酷なことに気
づかずにいるアドルフたち
の様子に気づかせる。
考
え
る
⑮
分
3「ヒキガエルとロバ」(後半)を読んで話し合う。
・教師の範読を聞く。
・ロバの置かれている困難さや苦しさを押さえる。
としをとったロバ たくさんの荷物
たえずむちで打たれていた つらい仕事
つかれはて,へとへと
・ ロバが傷を負ったヒキガエルに気づき,とった行動
を確認する。
友だちを見るような優しい目でじっと見つめ・・・
自分に残ったすべての力をしぼるかのように・・・
発問②(中心発問)
何も言わずにヒキガエルとロバのすがたをなが
めていたアドルフたちの気持ちを考えよう。
・資料後半配布
・場面絵やキーワードを提示
し「ロバ」の置かれている
状況や行動のイメージを膨
らませる。
・場面絵③提示
・ワークシートに書くことで
ロバの行動とアドルフの気
持ちについてじっくりと考
えさえる。
予想される児童の考え
□自分の苦しさよりも,ヒキ
「ぼくは間違っていた。」
ガエルの生命を救おうとし
「生き物にはすべて大切な命があるんだ。」
たロバの行動を理解するこ
「ロバがヒキガエルのためにしたことに比べたら,ぼく
とができたか。(ワークシ
はなんてことをしていたんだろう。」
ート,発表)
深
め
る
⑩
分
あ
た
た
め
る
⑤
分
4 生命の尊さについての思いを深める。
・絵本「わたしのいもうと」を読む。
(担任による読み聞かせ)
・新聞記事「いじめている君へ」を読む。(資料配布)
・資料と絵本の関連に気づか
せる。
□生命の尊さを感じ取ること
ができたか。(発表,表
情,ワークシート)
5 授業の感想を書く。
・感想をワークシートに記入し,本時の学習をまとめる
とともに生命を尊重していこうとする思いをあたため □自分の生命も他の人の生命
も大切にしていこうとする
る。
ことができたか。(ワーク
シート)
6 評価
観 点
道徳的心情
道徳的判断力
道徳的実践意欲・態度
方 法
発表,表情
① 命の尊さを感じ取ることができたか。
ワークシート
②自分の苦しさよりも,ヒキガエルの生命を救おうとした ワークシート
ロバの行動を理解することができたか。
③自分の生命も他の人の生命も大切にしていこうとするこ ワークシート
とができたか。
日常の様子
7 板書予定 (【資料①】参照)
内
容
8 資料分析,資料等
資料名
「ヒキガエルとロバ」
【場面】
価 値
【主人公(アドルフ)の心の動き】
学校帰りのアドルフたち
・
の前に,ヒキガエルが一
・ 気持ち悪い!
ぴき飛び出してきた。
・ あっちに行け!
生命の尊重
【発問】(発問の意図)
おどろかせるな!
(起)
アドルフたちは,ヒキガ
・
あたった、あたった!
エルめがけて小石を投げ
・
おもしろいぞ。
つけた。
・
もっとやろう!
・
ヒキガエルのやつ,ひ
(承)
としをとったロバが荷車
かれてつぶれるぞ。
をひきながらやってき
て,くぼみに逃げたヒキ
・
おもしろそうだ。
・
(予想しなかった
ヒキガエルに石を投げつけた
アドルフたちの気持ちを考え
よう。
荷車にひかれそうなヒキガエ
ルを見ているアドルフたちの
気持ちを考えよう。
ガエルに近づく。
ロバは,残ったすべての
光景に驚く)
力をふりしぼってヒキガ
ロバがとった行動を整理しま
しょう。
エルをよけていく。
(転)
アドルフたちは,くぼみ
・
ぼくはなんてひどいこ
の中で小さく息をしてい
とをしていたんだろ
るヒキガエルと,遠く去
う。
っていくロバをいつまで
もながめていた。(結)
・
ヒキガエルにも命があ
るんだ。
何も言わずにヒキガエルとロ
バのすがたをながめていたア
ドルフたちの気持ちを考えよ
う。
【資料① 板書計画】
場面絵③
ひ
ど
い
こ
と
を
し
て
し
ま
っ
た
ぼ
く
は
ま
ち
が
っ
て
い
た
ふ
り
し
ぼ
る
か
の
よ
う
に
自
分
に
残
っ
た
す
べ
て
の
力
を
友
達
を
見
る
よ
う
な
優
し
い
目
で
つ
か
れ
は
て
へ
と
へ
と
つ
ら
い
仕
事
た
え
ず
む
ち
で
う
た
れ
て
と
し
を
と
っ
た
た
く
さ
ん
の
荷
物
場面絵②
お
も
し
ろ
そ
う
だ
ひ
か
れ
そ
う
だ
場面絵①
あ
っ
ち
へ
行
け
気
持
ち
悪
い
ヒ
キ
ガ
エ
ル
と
ロ
バ
【資料②
児童用ワークシート】
道徳プリント
9月1日
名
前
「ヒキガエルとロバ」
①ヒキガエルに
② (発問2)
石を投げつけたアドルフの気持ちを考えよう。(発問1-①)