おかしのすきな まほう使い

平成22年度授業力向上研修(小・中)
実践のまとめ(3年 音楽)
平成22年9月14日(火)
指導者 妙高市立新井中央小学校
教諭
1
今井 和歌子
題材名
「いろいろな音のちがいをかんじとろう」
~教材曲「おかしのすきな まほう使い」~
2
題材の目標
○
音の特徴や音色の違いを感じ取って、想像豊かに聴いたり表現したりすることができる。
○
イメージに合った音を探して、表現の仕方を工夫することができる。
3
題材と児童
(1) 題材について
本題材は、学習指導要領の内容「A表現(3)ア 声や身の回りの音の面白さに気付いて音遊
びをすること。
」にかかわる学習である。
楽曲「おかしのすきなまほう使い」では、自分のもつ魔法の音のイメージに合う音を探して表
現したり友達と音を重ねたりする創造的な活動を中心に学習を進める。鑑賞曲「金かんがっきの
音楽」では、3つの楽器の音色を味わったり聴き比べたりする。こうした学習を通して、注意深
く耳を傾けながら音を工夫したり、音の違いを感じ取ったりして、音楽づくりを楽しむ子どもの
姿を目指す。
そこでまず、様々な楽器に触れて、音色に注目する活動を入れる。1つの楽器でも奏法によっ
ていろいろな音が出ることを発見させる。楽器の打ち方やならし方を試しながら、音に注目させ
る活動を十分にさせる。それにより、自分の表現のイメージを広げ、自由な発想を生かして音を
選び重ねて表現する楽しさが味わえる活動につながっていくと考える。
さらに、鑑賞曲と結びつけることで、音楽表現の質も高めることができると考える。
(2) 児童の実態(男子19名、女子18名 計37名)
元気いっぱい、素直で明るく、意欲的である。3年生でクラス替えがあり、3クラスが2クラ
スに減ったため、学級の人数は昨年より2倍近くになった。ペア学習など友だちと協力する学習
では、仲良く活動できる児童が多い反面、自分勝手に行動する児童もいる。
3年生からリコーダーの学習が始まり、リコーダーの学習が大好きである。練習を重ねるうち
に、きれいな音で友達と合わせられるようになったことに喜びを感じている様子である。
歌唱については、全体的にはきれいな声で歌う子が多いが、調子が出てくると地声が目立つ。
これから自然で無理のない発声の指導をしていく。
音づくりの学習については、低学年で、伴奏に合わせて鍵盤ハーモニカや打楽器を演奏する経
験はあるが、音づくりの経験はほとんどない。いろいろな楽器に興味を持ち、演奏することは好
きであるが、音が出ることだけで満足している児童が多い。注意深く音を聴いたり、楽器の音の
鳴らし方を工夫したりする力を育てたい。どの児童も思いや意図を持って表現できるように、一
緒に考えたり、分かりやすいヒントを提示したりしたい。
4
教材の価値
○「おかしのすきなまほう使い」
少しあわてんぼうな魔法使いの様子をユーモラスに描いた歌詞の曲。ABの二部形式で、Bの
部分は歌詞を替えて再度歌うようになっている。ナレーションや台詞も示され、また、歌詞の中
に「まほうの音」を入れたくなるような部分があり、子どもたちが様子を思い浮かべて歌ったり、
まほうに似合う音を作って表現したりする楽しさを味わうことが期待できる。初めて音づくりを
する子どもたちにとって、適切な楽曲である。
○「茶つみ」
(文部省唱歌)
共通教材として、1学期に歌っている。ホルン、トロンボーン、トランペットで演奏した茶つ
みを聴き、それぞれの音色の違いを感じ取り、音色による感じ方の違いを味わわせる。
○「歌劇『魔だんのしゃ手』からかりうどの合唱」
(ウエーバー 作曲)
ホルンが印象的に用いられている。ホルンと男声合唱が同じ旋律を演奏する場面では、その音
色の違いに注目しながら聴かせる。
○「バイエルン」
(ポルカ ローマン 作曲)
トロンボーンが笑い声のような音型を演奏している。太くて朗々としたトロンボーンの音色や
美しい響きを味わうとともに、グリッサンドが盛んに用いられている中間部以降の部分にも関心
をもって聴かせる。
○「トランペットふきの休日」
(アンダソン)
この曲は、トランペット吹きの若者が仕事から解放された休日に心ゆくまでトランペットを楽
しんで吹いている様子を描いたものである。3本のトランペットの美しい響きやトランペットと
オーケストラが掛け合うように演奏される様子が楽しく、開放感に満ちている軽快な曲である。
トランペットの音色や音の重なり合う楽しさを味わって聴かせる。
5
題材展開の構想
(1) 研究テーマ
思いや意図をもって表現する活動を通して、基本的な表現の能力を伸ばす指導の工夫
(2) テーマ設定の意図
新学習指導要領では、「音楽のよさや楽しさを感じ取るとともに、思いや意図をもって表現し
たり、味わったり聴いたりする力の育成をすること」「音楽と生活とのかかわりへの関心をもっ
て、生涯にわたり音楽文化に親しむ態度を育むこと」が改善の基本方針としてあげられている。
また、
「聴き取る」(知覚)と「感じ取る」(感受)の両方を大事にする授業づくりが求められて
いる。例えば、
「どんな感じ?」という感受だけでなく、なぜそう思ったのか音程やリズムの働
きが生み出すよさや面白さ、美しさを感じ取ること(知覚)を大事にすることで、音楽を受け止
める力を育てることができる。
そこで、音楽づくりの活動において、具体的な思いを表現に結び付けられるように、楽器の音
や奏法に注目させてから、音作りに取り組ませる。鑑賞では、楽曲の変化や曲想を感じ取れるよ
うに、発問を工夫し、口ずさんだり、体を動かしたりして感覚的にとらえさせる。また、ペア学
習、グループ学習など学習形態を工夫し、伝え合う、深め合う活動を充実させる。友だちの意見
を聞き、自分の思いをさらに深め、表現に生かしていくことが、表現の能力を伸ばすことにつな
がると考える。
(3) 研究テーマに迫るために
① 楽器の種類や奏法による音色の違いを感じ取るための手立て
楽器の研究
「まほうに似合う音」を探すための音の材料を増やすために、楽器の種類や奏法により音色
の違いを感じ取る活動を行う。例えば、シンバルなど、一つの楽器を用意して、「前の人が出
したものと違う音を出す」というルールで、様々な音を探すゲームをする。マレットでたたい
たり、こすったり、様々な奏法を知る。また、自分で1つ楽器を選び、1つの楽器から何種類
の音が出せるのかを研究させる。このような活動を通して、様々な音の高さや響きの違いに気
付き、音づくりのアイディアが広がっていくと考える。
② 自分のイメージするまほうの音をつくるための手立て
音づくりのポイントの提示
「まほうに似合う音」は、どんな音だろうと、一人ひとりで考えさせる。初めてなので、教
師が模範を見せ、子どもたちと共に考えていく。その時に、音の高さや強弱、速さなどに注目
させ、「こうしたら自分でもできそう」と子どもたちのヒントになるような工夫するポイント
(速さ、リズム、大きさ、高さなど)を提示し、考えさせる。
図形楽譜の活用
「こんな音がいいなぁ」とイメージができてきたら、図形楽譜に表してみる。これも初めて
なので、教師が模範を示し、いろいろな図形の例を提示する。自分で見つけたり考えたりした
音のイメージを図形楽譜に書き表すことで、はっきりとしたイメージがふくらみ、音作りがス
ムーズに進められると考える。
③ 伝え合う、深め合う活動の手立て
付箋紙を活用して意見交換
友達の発表を聴いた感想を意見交換して、活動を振り返る場を設定する。工夫していた点や
よかった点を探し、付箋に書き、意見を出し合う中で、成就感が持てたり、今度やってみよう
という意欲付けになったりすると考える。
(4) 研究テーマ達成にかかわる評価
「自分のイメージをもって、まほうの音づくりができた、と自己評価する児童の割合が80%を
超える。
」
6
単元の評価基準
音楽への関心・意欲・態度
音楽的な感受や表現の工夫
表現の技能
鑑賞の能力
・音の特徴に関心をもっ
・音色や響きの違いを感
・楽器を使
・楽器の音色
て、進んで聴いたり表現
じ取って、イメージに合
って、イメー
の違いや美
したりしようとしてい
った音の出し方や組み
ジを生かした
しさを感じ
る。
合わせ方を工夫してい
表現をするこ
取りながら
る。
とができる。
聴くことが
できる。
7
指導計画(全10時間、本時8/10時間)
次
学習内容
学習活動
1
歌詞を覚えて、様子を
・範唱に合わせて、表情豊かに歌
歌詞の内容に対するイ
2
思い浮かべながら歌
ったり身体表現をしたりする。
メージをふくらませ、表
ったり身体表現をし
・一人で歌い発表をする。
たりする。
3
音づくりのための「楽
器の研究」を行う。
4
一人で、「まほうに似
5
合う音」を探す。
6
班の中で、音を発表し
主な評価の観点と方法
情豊かに歌ったり身体
表現をしたりしている。
・
「楽器の研究」をして、いろいろ
【歌唱聴取】
な楽器から出る音の特徴や音色
いろいろな奏法を試し
の違いを感じ取る。
て音探しをしている。
・いろいろな楽器を試して、
「まほ
【ワークシート】
うに似合う音」を探す。
・図形楽譜に書く。
いろいろな音色を試し
・班の中で発表をし合う。
て、イメージに合った音
合い、付せんを書く。
を探すことができる。
【行動・ワークシート】
7
8
グループで音を重ね
・グループで音の重ね方を工夫し
友だちと協力して音を
る。
て、
「まほうに似合う音」を入れ
重ねて、発表したり、よ
音の重ね方を工夫し、
ながら、全体を通して歌い、発
さを見つけたりするこ
歌に合わせて表現す
表する。
とができる。
る。
(本時)
9
発表会をする。
【行動・ワークシート】
・全員で発表したり、聴き合った
りする。
10
金管楽器の音の特徴
・金管楽器の音色の違いを感じ取
や音色の違いを感じ
って聴き、それぞれの美しい音
て聴くことができる。
取って想像豊かに聴
色を味わう。
【発言・ワークシート】
音色の違いを感じ取っ
く。
8
本時の計画
(1) ねらい
・音の重ね方を工夫して、グループで「まほうに似合う音」をつくることができる。
・友だちの発表を聴いて、よさや工夫を見つけることができる。
(2) 展開の構想
○ 図形楽譜の活用
一人で「まほうに似合う音」づくりをしたときに考えた自分の図形楽譜(ワークシート)
を持ち寄り、グループで合わせる。その時に、お互いのよさを確認したり、もっと工夫して
変えたりするときに、ワークシートに書き込めるようにする。
○
音を重ねるポイントの提示
グループで音を重ねる活動に入る前に、
「音を出す順番を変える」
「拍に合わせる」などの
工夫のポイントを教え、考えさせる。それにより、即興表現の仕方が具体的に見えてくると
考える。また、実際に試してみて、新たな発見をしたり他の工夫もやってみようという意欲
づけになったりすると考える。
○
意見交流の場の設定
友達の発表を聴き、よかったところや工夫していたところなどを書けるように、付せんを
用意する。交流することで、自分たちの成就感をもつことにつながると考える。
(3) 展開
学習活動
時間
教師の働きかけ・予想される反応
・留意点
分
5
10
□評価 ○支援
1「おかしのすきなまほ
リズムや拍の流れにのって、発声
う使い」をナレーショ
や表情に気をつけて歌うように
ンを入れて歌う。
声をかける。
前時で困ったことを聞きだす。音
○具体的に子ど
の重ね方で工夫するポイント(わ
もと一緒に、
友だちと音を重ねて、も
ざ)を提示し、模範を見せる。
試してみる。
っ と ま ほ う の音 に 似
・順番にやってみようかなぁ。
合う音を作ろう
・拍に合わせることが大事だな
2
今 日の 学 習課 題 を
確認する。
ぁ。
15
3
グ ルー プ 練習 を す
る。
どの工夫を取り入れるかを選ば
・音が混雑しな
せるようにする。
いように、場
歌とまほうの音をつなげて、発表
の工夫をす
できるように練習させる。
る。
自分たちのイメージに合う音に
(音楽室・家庭
なっている、考えながら練習させ
科室)
る。
・わざを使ってみよう。
□音の重ね方を
・だんだんみんなの音が合ってき
たよ。
15
4「まほうに似合う音」
発表会を行う。
工夫して、音
づくりをして
各グループの発表を聴き、工夫し
いたか。
(ワー
ている点やよかったと思う点な
クシート、発
どをワークシートに書かせる。工
表の様子か
夫するポイントを手がかりに、よ
ら)
さを見つけるように促す。
(4) 評価
・ 友達と協力して、音を重ねて「まほうに似合う音」をつくることができたか。
・ 友達の発表を聴いて、よかったところや工夫したところを見つけることができたか。
9
実践を振り返って
(1) 授業の実際
① 前時まで
「おかしのすきなまほう使い」の曲は、子どもたちは大好きで、歌詞から様子を考えて身体
表現をしながら歌い、ほとんどの子が歌詞をすぐに覚えてしまうほどだった。
「早くまほうの音を楽器で考えたい。
」と子どもたちから声があがり、そのためにまず、
「楽
器の研究」を行った。子どもたちは楽器を使うことが大好きだが、考えなしに遊んでしまう子
もいる。教師が1つの楽器で手本を見せ、いろいろな奏法(たたく、手で押さえてたたく、こ
するなど)を子どもたちと確認してから活動させた。個人差はあったが、楽器に耳を傾けて音
を注意深く聴く姿が見られ、様々な音の高さや響きの違いを感じ取らせることができた。
次はいよいよ「まほうに似合う音」づくり。初めての音づくりの学習なので、どうやって作
ったらよいか分からないという子もいた。そこで、子どもたちと一緒に「どうすると魔法に似
合う音になるのだろう」とタンバリンや木琴で試しながら考えさせた。私が1つの音で強弱な
しにたたくと、子どもから「それじゃ、魔法っぽくない。もっと速く。」
「シャラランの違う音
もいれて」
「階段をあがるみたいにいろんな音を使えば」など、どんどんアイディアが出てき
た。それをまとめて、『音づくりの技』として提示し、そのヒントを見ながら子どもたちは、
一人で音づくりをしていった。どこを工夫したかがはっきり分かるように「失敗」と「成功」
の2つの音を作るようにした。しかし、ヒントを使いながら想像豊かに音づくりをしていく子
に対して、
「失敗と成功の違いがよく分からない」と悩む子が多くいた。そこで、欲張らずに
「成功の音」1つのみを作ることにして、子どもたちの負担を減らし、全員が自分なりの思い
をもって音づくりをすることができた。
しかし、自分が作った音に対して「これでいいのかなぁ」と自信をもてなかったり恥ずかし
がったりしている様子だった。それだけ、この学習は子どもたちにとって、自分で考えて工夫
する難しい学習だということを感じた。そこで、音を重ねるときのグループは、気の合う人と
2、3人グループで気兼ねなく、楽しく行えるようにした。
② 本時
前時にグループの友だちと音を重ねてみて、ど
うだったかを聞いてみた。
「うまく合ったと思
う」が全体の3分の1、「うまく合わない」が半
分、
「正直よく分からない」が少しで、全体的に、
困っている様子だった。「今日は音を重ねる技を
勉強しよう」と、あらかじめ頼んでおいた2人の
子をモデルにした。「Kさん、Nさんそれぞれが
こんな音を作ったんだよ。この2つの音をどうや
って重ねる?」と、①順番にやる ②一緒にやる
の2つをさせた。その際、教師がさりげなく手拍子をとった。すると「合ってる、すごい」と
いう声。
「どうして合っていたのかな。」と考えさせて、『拍に合わせる』ということを学習し
た。そして、全員に実際に手と足で拍を感じさせてから、グループ練習に入った。
~あるグループの様子~
Yさん、Aさん、
(鉄琴)Mさん(トライアングル)の3人グループ。
「合わなかった人」に
自信なさそうに手を挙げていたAさん。Yさんがリーダーになり、
「順にやってみよう」
「一緒にやってみる?」と声をかけ、試しながら音を重ねていった。2
人で1台の鉄琴を使っていたので「ぶつかるね」と、Aさんが高い音に動き、バチを変えてみ
ると「いいね。
」と満足した様子。Mさんが「拍忘れていたよ」に対してYさん「やっていた
よ」と個々の中で拍を意識して重ねていた。完成しても「どうなんだろう」といいかどうか分
からない様子で聴き合い、そこで教師がトライアングルのリズムを拍に合わせるように支援し
たことで拍にぴったり合ってきた。
発表の場面では、友だちに「リズムがよかった」「順番に演奏していたところがよかった」
と言われて、Yさんはにっこり。Yさんは、首でリズムを取り、他のグループの発表でも首で
リズムを取りながら楽しく聴いていた。
グループ練習では、37人の音が混在しないように、2つの部屋を使い、グループの場所を
決めて行った。その際、
『音を重ねる技』を2つの部屋に提示しておき、意識させた。それに
より、手拍子をしながら音を合わせている様子が見られた。
発表では、4つのグループが発表した。よさを付せんに書かせる予定だったが、時間がない
ことや授業の流れを止めてしまうことを考え、口頭でよさを伝え合った。最後に、みんなから
推薦された1つのグループが前に出て、全員の歌に合わせて発表し、子どもたちの満足した表
情で授業を終えることができた。
③
本時以降
全部のグループの発表を行い、お互いによさを伝え合うことができた。
金管楽器の鑑賞の学習では、耳を傾けて、子どもたちなりの感じ方(高い、低い、なめらか、
速い・・・)で音色の違いを感じ取って聴くことができた。
(2) 研究テーマについて
<評価>
自分のイメージをもって、まほうの音づくりができた、と自己評価する児童の割合・・・91%
~振り返りカードから~
・
自分で今までできなかった音を作ることができて、うれしかった。
・
最初は全然合わなかったけど、拍に合わせたらあったのでうれしかったです。
・
3人で合わせるのが大変だった。なかなか合わなかった。
・
初めてで緊張したけれど、みんなの前で恥ずかしがらずに発表できてよかった。
・
自分で工夫してまほうっぽい音をつくることが、難しかった。
<考察>
常に子どもの実態に合わせてねらいを達成するために、指導案を修正しながら取り組んでき
た。特に、有効であった手立ては、
「音づくり」や「音の重ね方」のポイント(技)の提示で
ある。
「音づくり」では、子どもたちと一緒に考えながら、技を考え提示した。ここで、共通事項
(速度、リズム、強弱、高さ、音色、反復など)を支えとして指導していった。始めは「まほ
うに似合う音」をどう作っていいのか分からないといっていた子も、板書の技のヒントを見な
がら音づくりを工夫して行うことができた。
「音の重ね方」では、あらかじめ頼んでおいた子どもをよいモデルにしたことで、「なるほ
ど、自分にもできそうだ」と子どもたちが納得できていた。また、「拍に合わせる」というこ
とをしっかり教え、手足で感じ取らせたことで、拍というものを体感し、グループ練習でも意
識することができた。
大事なポイントをしっかりと教えた上で、一人ひとりに考えさせた。それにより、「いい音
を作ろう」と思いをもって一生懸命音作りに取り組むことができた。思いや意図をもって表現
し、基本的な表現の能力を伸ばす指導として、手立ては有効だったと言える。
(3) 今後の課題
楽器が大好きだった子どもたちが、この学習を通して更に楽器に興味をもち、音に対して注
意深く耳を傾けることができるようになった。しかし、本時で拍を教えて、すぐに自分の作っ
た音を拍に合わせられた子に対して、手拍子を打ってあげてもなかなか拍に合わせられない子
が数人いた。決められたリズムを打つことはできても自分で考えるところでつまずいてしまう。
音づくりの最初から拍に合わせて行うようにすべきだった。そして、やはり低学年から、拍を
感じながら歌ったり、身体表現をしたりする経験を積むことが大事だということを感じた。
また、伝え合い深め合う活動で、友だちに対して「きれいな音だね」「いいね、うまいね」
というだけの評価では、深め合うことはできない。どこを工夫していたのか、が聴いている側
にも伝わり、
「リズムを工夫しているね。
」と認めたり「繰り返してみたら」などアドバイスし
たりと、教えた共通事項に基づいた伝え合いができると、深め合うことができるのではないか、
と思う。そのためには、日頃から、歌唱や器楽やどの学習においても、「どう感じたのか、な
ぜそう思ったのか」
「どう、歌ったらよいか」
「もっと様子が伝わるためには」などと考えさせ
ながら、学習を進めていくことが必要であると感じた。
「聴き取る」
(知覚)と「感じ取る」
(感
受)の両方を大事にする授業づくりを意識して、これからも子どもたちに楽しく音楽を学ばせ
ていきたい。