千葉市富士見地区向け防犯カメラシステムの納入

昭 和 電 線 レ ビ ュ ー
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Vol. 54, No. 1 (2004)
千葉市富士見地区向け防犯カメラシステムの納入
Supply and installation of the security camera system
保科浩之
朝香和彦
山崎信哉
Hiroyuki HOSHINA
Kazuhiko ASAKA
Shinya YAMAZAKI
近年の治安の悪化は急速に全国に広がっている。その結果自衛手段としての監視カメラの需要が高くなって
いる。しかしながら監視カメラだけでは,もはや犯罪を抑止する効果は得られない状況に至っている。今回,
新たに通報装置付きの防犯カメラシステムを納入したのでその結果を報告する。
The aggravation of the peace in recent years escalates in the whole country rapidly. As a result, the demand of the monitoring camera as self-defense measures is required. However the effect that deters crime is not sufficient, with just any
monitoring camera. We hereby report the result because the security camera system with an emergency call device is
newly delivered.
(表 1 参照)は,その機能について非常に満足のできるも
のであるとの声が高い。今回,緊急時に使用するシステム
1.は じ め に
として,①誰でも,②簡単に,③間違えなく使用できるも
近年の治安の悪化に伴い,各所で監視カメラの導入が進
のとなることを主眼に置き,開発目標を検討した。
現行の防犯システムの概要
んでいる。しかしながら,そのほとんどは監視カメラだけ
2.1
の設置である。映像は VHS テープで一週間程の保管管理
現行の主な防犯システムの概要比較を表 1 に示す。これ
を行う程度で,十分な犯罪抑止効果が得られているとは言
らの防犯システムにはそれぞれ課題が残っている。この課
いがたいものである。最近では警察主導で防犯灯システム
題と状況を表 2 にまとめた。
防犯カメラシステムの目標設定
の設置が進んでいるが,初期導入費用が掛かることで十分
2.2
な数量のカメラが設置されるまでにはまだ相当の期間を要
表 2 の防犯システムの課題を検討し,防犯カメラシステ
することが想定される。また,防犯灯システムはパソコン
ムの要求目標とそれに対する対応を表 3 にまとめた。
の操作で対応する形式をとっており,操作講習を受けた人
3.システム構成
でしか対応できない等の課題が残っている。
今回開発した当社の防犯カメラシステムは,従来の防犯
灯システムと監視カメラの良い機能を考慮して開発した。
防犯カメラシステムの開発目標から,システムを構成し,
主要構成機器の機能を検討する。
3.1
2.防犯カメラシステムの開発目標
現在警察主導で設置が計画されているスーパー防犯灯
基本システム
拡張性を考慮し IP 方式を採用して構成した基本システム
を図 1 に示す。
カメラ映像は黄色の線のように同一ネットワーク A 内の
表 1 主な防犯システムの概要比較
シ ス テ ム の 概 要
防犯灯システム
(スーパー防犯灯)
防犯灯システム
(子ども緊急通報)
警察主導で設置が進められている 24 時間のドーム型監視カメラと警察への直接通報ができるシステム。通報時に受付側でパソコン操作
を必要とし,監視カメラ映像がモニタに映し出される。その他,通報位置,通報履歴等はパソコン操作で確認する。
上記スーパー防犯灯の機能から主に 24 時間のドーム型監視カメラが削除されたものである。
監視カメラ
カメラの映像を制御室に設置するモニタで監視できるもので,一定期間の映像保管ができる。単に映像を監視/記録するだけの機能で,
カメラはドーム型ではなく,固定型カメラを採用する場合が一般的。
弊社の防犯カメラシステム
防犯灯システムと同様,24 時間のドーム型監視カメラと警察への直接通報ができるシステム。ただし,通報/受付に IP 電話を採用し,操作
性を向上させた。また,光無線機を採用して工期の短縮を計った。
千葉市富士見地区向け防犯カメラシステムの納入
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表 2 防犯システムの課題
システムの課題
状 況
防
犯
灯
シ
ス
テ
ム
① 初期導入費用
② プライバシーの問題
③ パソコンの操作性
④ 専用の通信線の確保
スーパー防犯灯の機能については満足できると言う声が高い。しかしながら,初期導入費用が高めである。また,カメラ
映像の管理は警察で行われるため,プライバシーの問題が発生する可能性がある。架空線禁止区域での通信ルートの施設に
長期間の土木工事が伴う。受付については,パソコン操作で対応する。通報の絶対数が少ないためシステムのソフト操作に
慣れるまでに時間が掛かる。
監
視
カ
メ
ラ
① 犯罪抑止効果が低い
② 犯人に威嚇する手段がない
③ 映像の検索に時間が掛かる
④ 警察への通報手段がない
数年前までは監視カメラだけの設置でも犯罪抑止に大きな力を発揮していたが,昨今の治安の悪化でその抑止効果は低下
している。特に固定型カメラは一目で撮影の死角がわかってしまう欠点がある。犯罪が発生した場合,被害が発生する前に
犯罪を止めるすべがない。
表 3 防犯カメラシステムの開発目標
目標特性
プライバシー
シ ス テ ム の 概 要
映像データの管理を商店街,映像再生に必要なカギは
役所で管理する
表 4 防犯カメラシステムの主要構成機器
構成機器名
ドームカメラ
(図 3)
機 能 / 特 長
パン・チルト・ズーム付 360 °の視界シーケンス撮影
方式。夜間撮影可能
赤色灯(図 3)
緊急時に警報ブザーと赤色灯が点灯
光無線機(図 4)
ノイズ,電波障害,セキュリティに強い伝送距離
150m
光無線機の採用
IP 電話(図 5)
自動通話記録機能,通話者同士の顔を認識できるモニ
タ/カメラ付
システムの拡張性
IP 方式の採用
死角を少なくする
ドーム型カメラの採用
ネットワーク
レコーダ
2 週間分のカメラ映像の保管。映像記録の検索機能付
警察に通報できる
通報装置の設置
映像検索が容易
通報時間の記録
簡単に操作できる
通報装置,受付装置に IP 電話を採用
工事期間の短縮
専用通信線確保
図 1 基本システム構成
制御装置のネットワークレコーダに記録し,通報はネット
ワーク外にある警察署に直接つながるようにした。これで
防犯カメラの最大の課題であるプライバシーの問題も,商
店街の映像を商店街自身が保管することで,外部に漏れな
い構成とした。
3.2
図 2 通報装置
主要構成機器
防犯カメラシステムの開発目標と基本システムから,主
要構成機器の機能を表 4 の通りとした。また,通報装置を
表 5 工事数量表
図 2 に示す。
装 置
4.設 置 工 事
設置工事はまず,地域内での監視ポイントを決定した。
通報装置
監視ポイントを撮影するためのカメラ設置位置は光無線を
採用しているため,光無線機同士がお互いを視認できる位
10 基
ドームカメラ
10 台
光無線機
18 台
ネットワークレコーダ
制御装置
置になるように決定した。これらの工事数量を表 5,現場
設置状況を図 6 に示す。
主要設置機器数量
通報装置付ポール
受付装置
2台
制御用 PC
1台
モニタ
1台
IP 電話
1台
デジタルレコーダ
1台
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Vol. 54, No. 1 (2004)
5.ま と め
一昔前までの「安全はただ」の常識が崩れ,防犯関係の
需要がさらに増大するものと考えられる。本防犯カメラシ
ステムは監視カメラに通報機能を付加させたシステムとし
て今後の需要の伸びが期待される。
6.謝 辞
本件の納入にあたり,千葉市市民局地域振興課ならびに
富士見商店街協同組合の皆様より多大なるご協力を頂き完
了することができましたことをここに感謝申し上げます。
図 5 IP 電話
図 3 赤色灯(上)とドームカメラ(下)
図 6 通報装置現場設置状況
保科 浩之(ほしな ひろゆき)
ワイヤレスユニット 開発グループ 主査
1983 年入社
新製品の開発業務に従事
朝香 和彦(あさか かずひこ)
ワイヤレスユニット 開発グループ 主幹
1974 年入社
新製品の開発業務に従事
山崎 信哉(やまざき しんや)
ワイヤレスユニット 開発グループ 主査
2002 年入社
新製品の開発業務に従事
図 4 光無線機