The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science http://www.aaas.org/ Headquarters 1200 New York Avenue, NW Washington, DC 20005 Phone: +1-202-326-6440 Fax: +1-202-789-0455 合せ先:Ginger Pinholster 1-202-326-6440 [email protected] Science 2005 年 7 月 22 日号ハイライト FLESH-EATING CATERPILLAR SPINS DEADLY SILK WHY FEMALE PARROTS OUTSHINE THEIR MATES ROCKS STAYED COOL ON MARS RIGHT WHALES IN CRISIS 論文を引用される際には出典が「Science」誌および AAAS であることを明記してください。 Flesh-Eating Caterpillar Spins Deadly Silk(死の糸を紡ぐ肉食イモムシ):ハワイの熱帯雨 林で、カタツムリを絹状の糸で葉上に縛り付け、動けなくなったところでその肉を食すとい うイモムシ(体長 7∼10mm)が発見された。これはカタツムリなどの軟体動物を食べるこ とが確認された初のイモムシである。それと同時に、クモのように糸を使って獲物の動きを 封じ込めることが報告された初のイモムシでもある。Hyposmocoma 属に属する同イモムシ は、ハワイのみで生息が確認されているカタツムリを葉の上に糸でしっかりと固定し、葉か ら落ちて逃げられないようにする。続いて、糸で作った自分の鞘(ケーシング)から出てき てカタツムリの軟組織を食べる。後に残るのは空っぽの殻だけだ。また、同イモムシはケー シングの周りに、恐らくカモフラージュの一種として、空になったカタツムリの殻を飾り付 けていることもある。Daniel Rubinoff と William Haines によると、ハワイ諸島は地球上で最 も隔離された島であり、カタツムリを食すイモムシが発見されたことで、一風変わったハン ティング術など新しい特異的性質の進化には隔離が重要であることを証明する新たな証拠が 得られたという。カタツムリを狙うこのイモムシは、待ち伏せして獲物を捕らえるイモムシ や空中で獲物を串刺しにするクモなどハワイの珍しい捕食動物の仲間である。 "Web-Spinning Caterpillar Stalks Snails," by D. Rubinoff and W.P. Haines at University of Hawaii in Honolulu, HI. Why Female Parrots Outshine Their Mates(メスのインコがオスより派手な理由):トリの 世界では一般にメスよりオスの方が派手な外見をしている。しかし、オーストラリアの熱帯 雨林に生息するオオハナインコ(Eclectus roratus)は例外のようだ。オオハナインコのオス は緑色、メスは派手な赤と青の羽をまとっている。あまりにも異なる外見のため、当初これ らは別の種であると考えられていた。メスがオスより派手な外見をしている場合、性的分業 が逆転していることが多い。たとえば、オスが子育てをして、メスがオスを巡って争うのだ。 しかし、Robert Heinsohn らは、色の違いが性的分業の逆転ではなく、ライフスタイルの違い によることを証明した。メスは 1 年のほとんどを巣がある木で過ごし、「人気物件」を獲得 しようとする他のメスから巣穴を守ることに時間の大半を費やす。一方、オスは巣に餌を運 ぶため長距離を移動する。トリとヒトでは色の見え方が異なるため、著者らはトリの視覚モ デルを使って検証した。葉を背景にした場合、オスよりメスがハッキリと目立って見える。 これにより、他のメスに対して自分たちの巣の存在を主張しているのではないかと著者らは 結論している。またこれらの結果から、オスが葉を背景にすると見えにくくなるのは狩りを している間捕食者から身を守るのに役立っていると考えられ、一方、木の幹を背景にした場 合は比較的よく目立つようになっていて他のオスと繁殖を巡って争う際に役に立っているこ とが示された。 "Extreme Reversed Sexual Dichromatism in a Bird Without Sex Role Reversal," by R. Heinsohn and S. Legge at Australian National University in Canberra, Australia; and J.A. Endler at University of California-Santa Barbara in Santa Barbara, CA and at James Cook University in Townsville, QLD, Australia. Rocks Stayed Cool on Mars(火星の岩は冷たいまま):火星の隕石を調査した研究から、火 星の一部では表面温度が過去数十億年にわたり摂氏零度に近い状態であったことが示唆され た。David Shuster と Benjamin Weiss は、数個の他の隕石と共にナクライトと呼ばれる隕石の 部類の鉱物中における、アルゴン(温度への依存が極めて高い)の分散をモデル化した。彼 らは、これらの隕石が結晶化した 20∼40 億年前以降、摂氏 0 度以上に熱せられた可能性が ないことを証明した。著者らは、火星地殻の上層部数キロ以内の長期平均温度は今日ほど高 くなく、このため純粋な液体の水は過去 40 億年の間、火星表面で安定した状態になかった と結論している。 "Martian Surface Paleotemperatures from Thermochronology of Meteorites," by D.L. Shuster at California Institute of Technology in Pasadena, CA; D.L. Shuster at Berkeley Geochronology Center in Berkeley, CA; and B.P. Weiss at Massachusetts Institute of Technology in Cambridge, MA. Right Whales in Crisis(危機に瀕するセミクジラ):今号の「Policy Forum」によると、最近 のタイセイヨウセミクジラの死亡数増加を受けて、同種が直面している絶滅の危機に注目が 集まっている。個体数約 350 頭を数える同クジラは、世界で最も絶滅の危機に瀕している動 物の 1 つである。Scott Kraus らによると、個体数の増加率は 1980 年以降低下しており、ヒ トによる殺戮を抑える取り組みや最近の出産増加傾向にもかかわらず、低下傾向はさらに加 速しているようだ。セミクジラの死因の多くは、船との衝突や漁具への絡まり事故である。 著者らは、死亡率を低下させるための緊急対策を直ちに実行に移す必要があると述べている。 このような方策の遅れは科学的・法的使命を無視することになり、セミクジラを絶滅に追い 込むことになるであろうと著者らは述べている。 "North Atlantic Right Whales in Crisis," by S.D. Kraus, M.W. Brown, P.K. Hamilton, A.R. Knowlton, and R.M. Rolland at New England Aquarium in Boston, MA; H. Caswell and M.J. Moore at Woods Hole Oceanographic Institution in Woods Hole, MA; C.W. Clark at Cornell University in Ithaca, NY; M. Fujiwara at University of California-Santa Barbara in Santa Barbara, CA; R.D. Kenney at University of Rhode Island in Narragansett, RI; S. Landry and C.A. Mayo at Provincetown Center for Coastal Studies in Provincetown, MA; W.A. McLellan and D. A. Pabst at University of North Carolina-Wilmington in Wilmington, NC; D.P. Nowacek at Florida State University in Tallahassee, FL; and A.J. Read at Duke University in Beufort, NC.
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